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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240214BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B3/30
B32B27/00 E
B32B27/32 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019207398
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021079579
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】松沢 孝教
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155824(JP,A)
【文献】特開2014-237288(JP,A)
【文献】特開2000-326458(JP,A)
【文献】特開2012-051216(JP,A)
【文献】特開2012-051217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂基材シート上に、絵柄模様層、第1接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、
少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、
前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、100μm以上150μm以下の範囲内であり、
前記ポリエステル系樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートを含み、且つ、無延伸の層であり、
前記ポリエステル系樹脂層の厚さは、10μm以上250μm以下の範囲内であり、
前記ポリエステル系樹脂層の厚さと、前記透明熱可塑性樹脂層との厚さの合計値は、340μm以上350μm以下の範囲内であり、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含むことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
熱可塑性樹脂基材シート上に、絵柄模様層、第1接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、
少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、
前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上0μm以下の範囲内であり、
前記ポリエステル系樹脂層は、ポリブチレンテレフタレートを含む層であり、
前記ポリエステル系樹脂層の厚さは、50μm以上130μm以下の範囲内であり、
前記ポリエステル系樹脂層の厚さと、前記透明熱可塑性樹脂層との厚さの合計値は、140μm以上180μm以下の範囲内であり、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含むことを特徴とする化粧シート。
【請求項3】
前記透明熱可塑性樹脂層は、前記ポリエステル系樹脂層側に形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層上に形成され、前記第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含んで形成される第2の樹脂層とを備え、
前記第1の樹脂は、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、
前記第2の樹脂は、透明ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記第1の樹脂層の厚さは、10μm以上であり、且つ、前記透明熱可塑性樹脂層全体の厚さの20%以下であることを特徴とする請求項に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐傷付き性や耐摩耗性が求められる部分に使用される化粧シートとしては、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに絵柄印刷を施したものが主流であった。近年では、環境問題への対応を考慮して、燃焼時の塩化水素又はダイオキシン等の有害物質の発生のおそれが少ない、ポリオレフィン系樹脂等の非塩素系樹脂フィルムを使用した化粧シートも開発され、広く使用される様になりつつある。
上記化粧シートには、耐傷付き性や耐摩耗性が求められることがある。具体的には、上記化粧シートには、物をぶつけたり、移動の際に擦ったりした際に表面に傷がつかないことが求められる。
【0003】
耐傷付き性や耐摩耗性を備えた非塩素系の材料としては、例えば、特許文献1に記載のメラミン板があるが、メラミン板は大きさにある程度の規定がある。このため、化粧シートの製品加工時にメラミン板をカットして落とす部分が多いと歩留まりが悪くなることがある。また、メラミン板を用いると、枚葉での貼り合せ加工となるため作業の効率性も悪く、その重さゆえの作業性が悪くなることもある。
また、一般に化粧シートは、板状の基材に貼りあわせて、化粧板として商品化され、現場で施工されることが多く、その場合には、切削加工性やそのほかの施工性も求められることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-188941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、メラミン板を備えない化粧シートであってもメラミン板と同等の耐傷付き性能や耐摩耗性能を付与することができ、且つ、切削加工性等の加工性や歩留まりにも優れた化粧シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る化粧シートは、熱可塑性樹脂基材シート上に、絵柄模様層、第1接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層は、2軸延伸されており、前記ポリエステル系樹脂層の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚さと、前記透明熱可塑性樹脂層との厚さの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内であり、前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含んでいる。
【0007】
また、本発明の別の態様に係る化粧シートは、熱可塑性樹脂基材シート上に、絵柄模様層、第1接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートを含み、且つ、無延伸の層であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚さは、150μm以上300μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚さと、前記透明熱可塑性樹脂層との厚さの合計値は、200μm以上350μm以下の範囲内であり、前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含んでいる。
【0008】
また、本発明の別の態様に係る化粧シートは、熱可塑性樹脂基材シート上に、絵柄模様層、第1接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、少なくとも前記透明熱可塑性樹脂層にはエンボスが形成されており、前記透明熱可塑性樹脂層の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層は、ポリブチレンテレフタレートを含む層であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚さと、前記透明熱可塑性樹脂層との厚さの合計値は、140μm以上350μm以下の範囲内であり、前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る化粧シートであれば、メラミン板を備えた化粧シートと同等の耐傷付き性能や耐摩耗性能を備え、且つ切削加工性等の加工性や歩留まりにも優れた化粧シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る化粧シートの構成を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る化粧シートの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施形態を以下において説明する。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(化粧シート10の構成)
本実施形態の化粧シート10の構造の例を図1及び図2に示す。化粧シート10は、木質系基材、無機質系基材、合成樹脂基材、金属系基材等々の基材へ貼り合わせるオレフィン系化粧シートまたはポリエステル系化粧シートであり、特に、耐傷付き性や耐摩耗性が求められる部分に使用される化粧シートである。以下、化粧シート10の構成について、具体的に説明する。
化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6(6a、6b)、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボス9が形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内である。
【0013】
ポリエステル系樹脂層4は、2軸延伸されており、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であってもよい。また、ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内であってもよい。
また、ポリエステル系樹脂層4は、ポリエチレンテレフタレートを含み、且つ、無延伸の層であってもよい。また、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、150μm以上300μm以下の範囲内であってもよい。また、ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、200μm以上350μm以下の範囲内であってもよい。つまり、ポリエステル系樹脂層4は、ポリエチレンテレフタレートを含んだ無延伸の層であってもよいが、その場合には、ポリエステル系樹脂層4の厚さを150μm以上300μm以下の範囲内とし、ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値を200μm以上350μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0014】
また、ポリエステル系樹脂層4は、ポリブチレンテレフタレートを含む層であり、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であってもよい。また、ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、140μm以上350μm以下の範囲内であってもよい。
また、表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を含んでいる。
なお、透明熱可塑性樹脂層6は、ポリエステル系樹脂層4側に形成され、第1の樹脂を含む第1の樹脂層6aと、第1の樹脂層6a上に形成され、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含む第2の樹脂層6bとを備えてもよい。さらに、第1の樹脂は、例えば、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、第2の樹脂は、例えば、透明ポリプロピレン樹脂であってもよい。
【0015】
以下、上記各層の詳細について説明する。
〔熱可塑性樹脂基材シート1〕
本実施形態の熱可塑性樹脂基材シート1としては、塩化ビニル樹脂以外の種々材質が可能であるが、例えば、無公害性、価格、性能、着色の容易さ等の点から考慮すると、充填剤と着色顔料とを添加したポリオレフィン系材料が好適に使用できる。
【0016】
熱可塑性樹脂基材シート1に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリプテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、共重合ポリエステル樹脂(代表的には1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である通称PET-G)等のポリエステル系樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂や、6-ナイロン、6,6ナイロン、6,10ナイロン、12ナイロン等のポリアミド系樹脂や、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂や、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含塩素系樹脂や、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、またはこれらから選ばれる2種または3種以上の共重合体や混合物を用いることができる。
熱可塑性樹脂基材シート1は、上記の樹脂成分に、着色顔料、充填剤、安定剤等を添加して分散均一化し、シート状に成形したものであってもよい。
【0017】
〔絵柄模様層2〕
熱可塑性樹脂基材シート1の表面には、任意の絵柄が印刷された絵柄模様層2が設けられる。絵柄模様層2のなす絵柄の種類は特に限定されず、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等である。絵柄模様層2の形成に使用する印刷インキの種類は特に限定されず、化粧シートの形成に使用されている公知の印刷インキを使用することができる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂系、ブチラール系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整した印刷インキであってもよい。
絵柄模様層2の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷法が用いられる。印刷インキとしては、それぞれの印刷法に適した印刷インキを用いることができる。
【0018】
〔第1接着剤層3〕
絵柄模様層2の上には第1接着剤層3が形成されている。第1接着剤層3は、絵柄模様層2の上に、第1接着剤層3を形成するための組成物を塗布して形成してもよい。第1接着剤層3に含まれる接着剤は、透明熱可塑性樹脂層6に含まれる透明熱可塑性樹脂との組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択可能である。
【0019】
〔ポリエステル系樹脂層4〕
ポリエステル系樹脂層4は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等が用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが好適に用いられる。また、第1接着剤層3や表面保護層7との密着性を向上させるため、例えば、易接着層を設けたり、適宜コロナ処理などを施したりしてもよい。
ポリエステル系樹脂層4は、2軸延伸処理がなされた層であることが好ましい。また、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。ポリエステル系樹脂層4の厚さが上記数値範囲内であれば、丸鋸あるいはハンドルータを用いた切削に対して切削加工性を高めることができる。
【0020】
ポリエステル系樹脂層4は、上述した樹脂にポリエチレンテレフタレート樹脂を含んだ層であってもよいし、ポリエチレンテレフタレート樹脂のみで構成された層であってもよい。以下、ポリエステル系樹脂層4をポリエチレンテレフタレート樹脂で構成した場合、即ちポリエステル系樹脂層4をポリエチレンテレフタレート樹脂層4aとした場合について、説明する。なお、ポリエステル系樹脂層4がポリエチレンテレフタレート樹脂を含んだ層(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)である場合には、ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量は、ポリエステル系樹脂層4全体の質量に対して、30質量%以上であればよく、50質量%以上であれば好ましく、80質量%以上であればさらに好ましい。
【0021】
ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aは、延伸処理をしていないフィルムで形成されていてもよい。本実施形態において、延伸処理をしていないポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの厚さは、150μm以上300μm以下の範囲内であれば好ましく、200μm以上250μm以下の範囲内であればより好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aに、延伸処理をしていないポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合には、化粧シート10の機械的強度を向上させることができ、且つ、化粧板にした際の耐摩耗性に優れ、例えば丸鋸あるいはハンドルータを用いた切削に対して切削加工性を高めることができる。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの厚さが上記数値範囲内であれば、丸鋸あるいはハンドルータを用いた切削に対して切削加工性をさらに高めることができる。
【0022】
また、ポリエステル系樹脂層4は、上述した樹脂にポリブチレンテレフタレート樹脂を含んだ層であってもよいし、ポリブチレンテレフタレート樹脂のみで構成された層であってもよい。以下、ポリエステル系樹脂層4をポリブチレンテレフタレート樹脂で構成した場合、即ちポリエステル系樹脂層4をポリブチレンテレフタレート樹脂層4bとした場合について、説明する。なお、ポリエステル系樹脂層4がポリブチレンテレフタレート樹脂を含んだ層(ポリブチレンテレフタレート樹脂層4b)である場合には、ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、ポリエステル系樹脂層4全体の質量に対して、30質量%以上であればよく、50質量%以上であれば好ましく、80質量%以上であればさらに好ましい。
【0023】
ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bは、例えば、延伸処理をしていないフィルムで形成されていてもよい。本実施形態において、ポリブチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリブチレンテレフタレート樹脂層4bの厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内であれば好ましく、100μm以上150μm以下の範囲内であればより好ましい。ポリブチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリブチレンテレフタレート樹脂層4bの厚さが50μm未満であると、耐摩耗性が不十分となるおそれがある。また、ポリブチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリブチレンテレフタレート樹脂層4bの厚さが200μmを超える場合には、化粧シート10を基材に貼り合せる際の加工性に問題が生じることがある。
【0024】
上述したポリエチレンテレフタレート樹脂層4aをポリエステル系樹脂層4として備えた化粧シート10は、重歩行用途としても十分な性能を持っている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aをポリエステル系樹脂層4として備えた化粧シート10は、JAS規格に規定する1類浸漬剥離試験には適合するものの、白化を生じる場合があり、床暖房や強い日差しが想定される用途には適さない場合がある。
ここで、特許文献1に記載された化粧シート及び化粧材は、床材用化粧シートにおいて、被着材に起因する不陸の問題、及び温度差に起因する断熱層の凝集破壊の問題を解消しつつ、断熱性、耐傷性、及び耐キャスター性に優れた化粧シート及び化粧材を提案したものである。
【0025】
特許文献1に記載された化粧シートは、これらの問題を解決するために、化粧層の裏面側に合成樹脂バッカー層と発泡樹脂バッカー層を積層したものである。しかしながら、近年床暖房の普及により、表面床材には断熱性が要求されないばかりか、むしろ床暖房効果を阻害する場合もあることが指摘されている。
これに対し、ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bをポリエステル系樹脂層4として備えた化粧シート10であれば、床暖房用としても使用できる耐熱性を有している。
【0026】
〔第2接着剤層5〕
ポリエステル系樹脂層4の上には第2接着剤層5が形成されている。第2接着剤層5は、ポリエステル系樹脂層4の上に、第2接着剤層5を形成するための組成物を塗布して形成してもよい。第2接着剤層5に含まれる接着剤は、透明熱可塑性樹脂層6に含まれる透明熱可塑性樹脂の組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択可能である。
【0027】
〔透明熱可塑性樹脂層6〕
透明熱可塑性樹脂層6は、エンボス9が形成された層であって、例えば、複数層からなるシート状の層である。透明熱可塑性樹脂層6を構成する各層は、絵柄模様層2の絵柄が透けて見えるように、例えば透明な熱可塑性樹脂で形成される。透明熱可塑性樹脂層6に含まれる熱可塑性樹脂は、透明であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂以外の種々の樹脂であってもよい。透明熱可塑性樹脂層6を構成する各層の樹脂の組み合わせは、目的とする特性により、様々な組合せが可能である。
【0028】
透明熱可塑性樹脂層6に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、エチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0029】
透明熱可塑性樹脂層6において、層の数は、4層以上も可能だが、押し出し機の構造が複雑化し作業の煩雑さが大きくなるため、3層までが好ましい。もちろん、図2に示すように、透明熱可塑性樹脂層6は、2層であってもよいし、図1に示すように、透明熱可塑性樹脂層6は、1層であってもよい。
なお、エンボス9は、絵柄模様層2が木目の場合には、自然木の持つ導管を凹みで表現してもよく、木目以外の場合でも砂目や幾何学模様の凹凸で意匠性を高めることが可能である。このように、エンボス9を形成することで、化粧シート10の表面に立体感を与え、意匠性を向上させることができる。また、エンボス9は、透明熱可塑性樹脂層6のみに留まらず、他の層に及んでもよい。エンボス9を形成する方法としては、各層を貼り合せた後に全体を加熱してエンボスロールを押し当てる後エンボス方法や、透明熱可塑性樹脂層6をTダイから押し出してエンボスロールに押し当てる押し出し同時エンボス法等を用いることができる。このように、エンボス9は、表面保護層7を形成する前に形成したものでもよく、あるいは表面保護層7を形成した後に形成したものでもよい。
【0030】
また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内であれば好ましく、100μm以上120μm以下の範囲内であればより好ましい。透明熱可塑性樹脂層6の厚さが上記数値範囲内であれば、エンボス9による凹凸を形成することに支障がないことのほか、耐摩耗性において、物理的な磨耗に対して十分実用範囲である。あるいは、意匠性の面でも、透明熱可塑性樹脂層6の存在が絵柄模様層2と相俟って、より深みや奥行きを感じさせる効果を持つ。具体的には、透明熱可塑性樹脂層6の厚さが50μm未満であると、耐摩耗性、耐傷性能が得られないことがある。一方、透明熱可塑性樹脂層6の厚さが150μmを超えると、製造時の生産性が劣りコスト的にも不利となることがある。
【0031】
また、ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内であれば好ましい。ポリエステル系樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが上記数値範囲内であれば、化粧シート10としての可撓性と機械的強度との両方を損なうことがなく、またインラインでのロールラミネートなど化粧板への加工性、さらに化粧板としての加工性などに支障をきたすことがなく、使い勝手が向上する。
また、ポリエステル系樹脂層4として、延伸処理をしていないポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリエチレンテレフタレート樹脂層4aを用いる場合には、そのポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの厚さと、透明熱可塑性樹脂層6の厚さとの合計値は、200μm以上350μm以下の範囲内であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aと透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが上記数値範囲内であれば、化粧シート10としての可撓性と機械的強度との両方を損なうことがなく、またインラインでのロールラミネートなど化粧板への加工性、さらに化粧板としての加工性などに支障をきたすことがなく、使い勝手が向上する。
【0032】
また、ポリエステル系樹脂層4として、ポリブチレンテレフタレートフィルムで構成されたポリブチレンテレフタレート樹脂層4bを用いる場合には、そのポリブチレンテレフタレート樹脂層4bの厚さと、透明熱可塑性樹脂層6の厚さとの合計値は、140μm以上350μm以下の範囲内であることが好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bと透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが140μm未満であると、耐摩耗性に不安が生じる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bと透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが350μmを超えると、化粧板に加工する際のロールラミネート適性に問題が生じることがある。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂層4bと透明熱可塑性樹脂層6との合計の厚さが上記数値範囲内であれば、化粧シート10としての可撓性と機械的強度との両方を損なうことがなく、またインラインでのロールラミネートなど化粧板への加工性、さらに化粧板としての加工性などに支障をきたすことがなく、使い勝手が向上する。
【0033】
図2では、透明熱可塑性樹脂層6は、ポリエステル系樹脂層4側から、予め定めた樹脂(以下、「第1の樹脂」とも呼ぶ)を含んで構成される第1の樹脂層6a、及び第1の樹脂とは異なる樹脂(以下、「第2の樹脂」とも呼ぶ)を含んで構成される第2の樹脂層6bの2層がこの順に積層されて形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6は、第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bの2層のみで構成されていてもよい。
【0034】
本実施形態において、第1の樹脂層6aの厚さは、10μm以上であればよく、透明熱可塑性樹脂層6全体の厚さの20%以下であればよい。また、第1の樹脂層6aの厚さは、50μm以上であれば好ましく、透明熱可塑性樹脂層6全体の厚さの10%以下であればより好ましい。第1の樹脂層6aの厚さが10μm未満であれば、第1の樹脂層6aの密着安定性が低下する傾向がある。また、第1の樹脂層6aの厚さが透明熱可塑性樹脂層6全体の厚さの20%超であれば、化粧シート10全体の表面強度が低下する傾向がある。つまり、第1の樹脂層6aの厚さが10μm以上であり、且つ透明熱可塑性樹脂層6全体の厚さの20%以下であれば、第1の樹脂層6aの密着安定性を維持しつつ、化粧シート10全体の表面強度を維持することができる。また、第1の樹脂層6aの厚さは、10μm以上であり、且つ第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bの2層のみで構成された透明熱可塑性樹脂層6全体の厚さの20%以下であってもよく、その場合であっても第1の樹脂層6aの密着安定性を維持しつつ、化粧シート10全体の表面強度を維持することができる。
【0035】
また、第1の樹脂層6aに対する透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)は、第2の樹脂層6bに対する透明ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)より大きくてもよい。この場合であっても第1の樹脂層6aの密着安定性を維持しつつ、化粧シート10全体の表面強度を維持することができる。具体的には、第1の樹脂層6aに対する透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)は、80質量%以上であり、第2の樹脂層6bに対する透明ポリプロピレン樹脂の含有率(質量%)より大きくてもよい。
【0036】
第1の樹脂層6aと第2の樹脂層6bとを備えた場合には、第1の樹脂層6aが熱可塑性樹脂基材シート1との接着性を担保し、第2の樹脂層6bが主要部分となって、その他の物性を担うなど、材料の設計の巾を広げることが可能となる。第1の樹脂層6aに透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含めることで、層間の接着性を向上させることができる。また、第2の樹脂層6bを透明ポリプロピレン樹脂を含めた層とすることで、樹脂内部の耐脆化を低減することができる。
なお、第1の樹脂層6aと第2の樹脂層6bの2層からなる透明熱可塑性樹脂層6を形成する方法としては、2軸押し出し機を用いて第1の樹脂層6aと第2の樹脂層6bとを2層同時に押し出して貼り合わせる方法が好ましい。
【0037】
以上のように、第1の樹脂及び第2の樹脂としては、例えば、化粧シート10の表面の耐傷性、耐候性、耐汚染性、耐光性、透明性、折り曲げ性、及び熱成形性等を考慮し、更に材料コスト等を考慮すれば、第1の樹脂は透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が好ましく、第2の樹脂は透明ポリプロピレン樹脂が好ましい。なお、第2の樹脂層6bは、第2の樹脂である透明ポリプロピレン樹脂とともに、紫外線吸収剤及び光安定剤のいずれか一方を含んで構成される層であってもよい。
【0038】
本実施形態の透明なポリプロピレン樹脂としては、例えば、自由末端長鎖分岐を付与したポリプロピレン樹脂(a)と、自由末端長鎖分岐を付与していないポリプロピレン樹脂(b)との混合物で、その混合物の質量平均分子量/数平均分子量として定義される分子量分布Mw/Mnが1以上5以下の範囲内にあり、かつ、そのポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)の混合樹脂の、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数が、1%以上90%以下の範囲内にあるものを用いるようにしてもよい。これにより、化粧シート10を、例えば鋼板基材に貼り合わせた後の折り曲げ加工において、白化や割れを抑制することができる。
【0039】
ここで、分子量分布は、分子量Miの分子がNi個存在する場合に、数平均分子量Mn=Σ(Mi×Ni)/ΣNi、質量平均分子量Mw=Σ(Ni×Mi2)/Σ(Ni×Mi)の比、Mw/Mnとして定義される値である。1に近いほど分子量の分布が狭く、均一性が高くなる。この分子量分布が5以下になるようにすれば、分子量を必要十分な大きさに揃えることができ、白化や割れの抑制に寄与するようになる。一般的には、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
【0040】
また、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数は、ポリプロピレン樹脂中の結晶化度を調べる指標として有用である。具体的には、試料を沸騰n-ヘプタンで一定時間抽出を行い、抽出されない部分の質量(%)を求めてアイソタクチックインデックスを算出する。詳しくは、円筒濾紙を110±5℃で2時間乾燥し、恒温恒湿の室内で2時間以上放置してから、円筒濾紙中に試料(粉体またはフレーク状)8g以上10g以下を入れ、秤量カップ、ピンセットを用いて精秤する。これをヘプタン約80ccの入った抽出器の上部にセットし、抽出器と冷却器を組み立てる。これをオイルバスまたは電機ヒーターで加熱し、12時間抽出する。加熱は、冷却器からの滴下数が1分間130滴以上であるように調節する。続いて、抽出残分の入った円筒濾紙を取り出し、真空乾燥器にいれて80℃、100mmHg以下の真空度で5時間乾燥する。乾燥後、恒温恒湿中に2時間放置した後、精秤し、(P/Po)×100によりアイソタクチック指数を算出する。ただし、Poは抽出前の試料質量(g)、Pは抽出後の試料質量(g)である。
【0041】
アイソタクチック指数を90%以下にすることで、ポリプロピレン結晶起因によるシート剛性を抑制することができる。アイソタクチック指数を下げる方法としては、例えば、非晶質ポリプロピレン成分(シンジオタクチックポリプロピレンやアダクチックポリプロピレン等)を一部に使う方法や、エチレンやα-オレフィン等のオレフィンモノマーを1種類以上ランダム共重合させる方法、各種ゴム成分(例えばエチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等の成分)を添加する方法を用いることができる。
【0042】
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合樹脂の溶融張力(2.0mm径のノズルキャピラリーレオメーターを用い、温度条件230℃、60mm/分で押し出し、2mm/分で引き取るときの張力)は、100mN以上500mN以下の範囲内にあることが望ましく、300mN以上400mN以下の範囲内にあることがより望ましい。500mNを超えると、溶融粘度が高くなりすぎて、安定した成膜ができなくなる。また100mN以下では、長鎖分岐成分が不十分となり、所望の性能を得難い。
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合物の、JIS-K6760にて規定される230℃におけるメルトフローレートが5g/10min以上50g/10min以下の範囲内にすることで、分子量をある一定値以上で、かつ安定的な製膜状態を保持することができる。より好適なメルトフローレートの範囲は、10g/10min以上30g/10min以下の範囲内であり、更に好ましくは10g/10min以上25g/10min以下の範囲内である。メルトフローレートが50g/10minを超えると、Tダイによる溶融押し出し時に、Tダイから溶融押し出しされた樹脂が、中央に集まろうとする効果(ネックイン)が大きくなり、Tダイから溶融押し出しされた樹脂の端部厚さが増大してしまう。端部の厚さ増大は冷却効率の低下と巾方向の厚さ安定性に影響を与えるため、安定した製膜がしづらくなる。また、5g/10minよりも低いと、溶融樹脂のドローレゾナンスが悪くなり、Tダイから出た直後の溶融樹脂の速度(初速)と冷却ロールに触れた直後の樹脂の速度とのギャップに溶融樹脂が対応できなくなってしまい、安定した製膜がしづらくなる。
【0043】
また、透明熱可塑性樹脂層6に添加する紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等から適宜選定する。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール,2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を用いることができる。
【0044】
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を用いることができる。
【0045】
さらに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、オクタベンゾンや変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。イソシアネート添加による架橋による樹脂成分との結合を望めるため、紫外線吸収剤としては、特に、水酸基を有するものが適している。添加部数は、所望の耐候性に応じて設定すればよいが、樹脂固形分に対して0.1%以上50%以下の範囲内、好ましくは1%以上30%以下の範囲内とする。
また、透明熱可塑性樹脂層6に添加する光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を用いることができる。
【0046】
添加部数は、所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1質量%以上50質量%以下の範囲内、好ましくは1質量%以上30質量%以下の範囲内とする。
上記以外では、例えば、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等を添加してもよい。熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]-プロピオネート、2、4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトに代表される燐系酸化防止剤等やこれらの混合物、つまり、1種、または2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
【0047】
また、難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機系化合物や燐酸エステル系の難燃剤等を用いることができる。さらに、ブロッキング防止剤としては、例えば、珪酸アルミニウム、酸化珪素、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム等の無機系ブロッキング防止剤、脂肪酸アミド等の有機系ブロッキング防止剤等を用いることができる。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内が好適である。
【0048】
〔表面保護層7〕
表面保護層7は、化粧シート10の最表面にあって、化粧シート10に対する直接の外力、たとえば物がぶつかったり、移動の際に擦ったりといった外力に対して化粧シート10を保護する役割を果たす。つまり、表面保護層7は、化粧シート10の表面物性を向上させるものであり、化粧シート10表面に耐傷性や耐汚染性、滑り性等を付与し、艶、触感等に影響を与えるものである。
表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を含むことが好ましい。具体的には、表面保護層7の材料としては、例えば、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂(UV硬化型樹脂)との混合物(ブレンド樹脂)が好ましい。このように、表面保護層7は、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂、つまり、硬度が高い樹脂を含むため、表面に露出した表面保護層7によって、化粧シート10の耐傷性を向上できる。また、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることができる。
【0049】
熱硬化型樹脂としては、例えば、化粧シート10の変形追従性、耐擦傷性等を考慮すれば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を用いるのが好ましい。
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることができる。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることができる。
【0050】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートを用いることができる。多価イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートを用いることができる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。なお、上記イソシアネートにおいて脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好にできる点で好ましく、例えば1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを使用できる。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。
【0051】
〔プライマー層8〕
プライマー層8としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの混合物等を使用することができる。更に、ポリオールとイソシアネートによる2液タイプにすることで、熱可塑性樹脂基材シート1とプライマー層8との密着性及びプライマー層8自体の凝集力が向上する。ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′ジフェニルメタンジイソシアネートといった芳香族系、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートといった脂肪族系が挙げられる。反応性の早さの点、耐熱性の点で芳香族系のポリオールが好ましい。
プライマー層8の厚さは、1μm以上が好ましく、10μm以下が好ましい。プライマー層8の厚さは1μm未満となると接着剤の溶剤種によっては溶解してしまい、プライマー層8が消失することから密着性が向上しないことがある。
【0052】
(化粧シート10の製造方法)
以下、化粧シート10の製造方法について簡単に説明する。
まず、熱可塑性樹脂基材シート1上に、例えば、印刷によって絵柄模様層2を形成する。
その後、その絵柄模様層2上に、ポリエステル系樹脂層4をドライラミネーションにて貼り合わせる。次に、ポリエステル系樹脂層4上に、溶融した透明熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を多層押し出し機から押し出して形成した複数の層を積層することで、透明熱可塑性樹脂層6、即ち第1の樹脂層6a及び第2の樹脂層6bを形成する。次に、透明熱可塑性樹脂層6にエンボス加工を行う。最後に、エンボス加工が施された透明熱可塑性樹脂層6上に、例えば、ウレタン系樹脂に、硬化剤、紫外線吸収剤及び光安定剤を添加した樹脂組成物を塗布した後、その樹脂組成物を乾燥させて表面保護層7を形成する。こうして、本実施形態に係る化粧シート10を製造する。
なお、本実施形態に係る化粧シート10の製造方法では、絵柄模様層2とポリエステル系樹脂層4との間に第1接着剤層3を形成する工程を含んでもよい。また、ポリエステル系樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層6との間に第2接着剤層5を形成する工程を含んでもよい。
【0053】
(本実施形態の効果)
本実施形態の化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボスが形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4は、2軸延伸されており、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内である。また、表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂を含んでいる。
このような構成であれば、メラミン板を備えた化粧シートと同等の耐傷付き性や耐摩耗性を備え、且つ加工性や歩留まりにも優れた化粧シートを提供することが可能となる。
【0054】
本実施形態の化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボスが形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4は、ポリエチレンテレフタレートを含んだ無延伸の層(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)であり、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、150μm以上300μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、200μm以上350μm以下の範囲内である。また、表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂を含んでいる。
このような構成であれば、メラミン板を備えた化粧シートと同等の耐傷付き性や耐摩耗性を備え、且つ加工性や歩留まりにも優れた化粧シートを提供することが可能となる。
【0055】
本実施形態の化粧シート10は、熱可塑性樹脂基材シート1上に、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、透明熱可塑性樹脂層6、及び表面保護層7がこの順に積層されている。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層6にはエンボスが形成されている。また、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4は、ポリブチレンテレフタレートを含んだ層(ポリブチレンテレフタレート樹脂層4b)であり、ポリエステル系樹脂層4の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲内である。ポリエステル系樹脂層4(ポリブチレンテレフタレート樹脂層4b)の厚さと、透明熱可塑性樹脂層6との厚さの合計値は、140μm以上350μm以下の範囲内である。また、表面保護層7は、紫外線硬化型樹脂を含んでいる。
このような構成であれば、メラミン板を備えた化粧シートと同等の耐傷付き性や耐摩耗性を備え、且つ加工性や歩留まりにも優れた化粧シートを提供することが可能となる。さらに、床暖房や強い日差しが想定される用途においても、化粧シート表面の白化が生じにくいため、床暖房用の化粧シートとして使用できる。
【0056】
また、本実施形態の化粧シート10に備わる透明熱可塑性樹脂層6は、ポリエステル系樹脂層4側に形成され、第1の樹脂を含んで形成される第1の樹脂層6aと、第1の樹脂層6a上に形成され、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂を含んで形成される第2の樹脂層6bとを備えていてもよい。また、第1の樹脂は、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であってもよく、第2の樹脂は、透明ポリプロピレン樹脂であってもよい。
このような構成であれば、第1の樹脂層6aが熱可塑性樹脂基材シート1との接着性を担保し、第2の樹脂層6bが層の主要部分となって、その他の物性を担うなど、材料の設計の巾を広げることが可能となる。第1の樹脂層6aを、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含んだ層とすることで、熱可塑性樹脂基層との接着性を向上させることができる。また、第2の樹脂層6bを、透明ポリプロピレン樹脂を含んだ層とすることで、第2の樹脂層6b内部の耐脆化を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態の化粧シート10に備わる第1の樹脂層6aの厚さは、10μm以上であり、且つ、透明熱可塑性樹脂層6全体の厚さの20%以下であってもよい。
このような構成であれば、第1の樹脂層6aの密着安定性を向上させつつ、化粧シート10全体の表面強度を維持することができる。
また、本実施形態の化粧シート10の製造方法は、上述した化粧シート10の製造方法であって、熱可塑性樹脂基材シート1上に、印刷によって絵柄模様層2を形成し、その絵柄模様層2上にポリエステル系樹脂層4をドライラミネーションにて貼り合わせた後、溶融した透明熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を多層押し出し機から押し出して形成した複数の層を積層することで透明熱可塑性樹脂層6を形成し、透明熱可塑性樹脂層6にエンボス加工を行う。
このような構成であれば、塩化ビニル樹脂で得ていたような柔軟性、耐汚染性、耐薬品性、耐候性、耐傷性、透明感を主体とする意匠性等の特性を得、再現性に優れたエンボスを形成することができる。
【0058】
(第1実施例)
〔実施例1-1〕
熱可塑性樹脂基材シート1として厚さ55μmのポリオレフィン系無機充填シート(リケンテクノス(株)製「OW」)を用い、表面側にグラビア印刷法によって木目模様を印刷して絵柄模様層2を形成した。
続いてこの絵柄模様層2上に、あらかじめコロナ処理を施した厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製「ルミラーT60」)をドライラミネートし、第1接着剤層3及びポリエステル系樹脂層4を形成した。
続いて、このポリエステル系樹脂層4上に、ウレタン樹脂系接着剤を塗布し温風乾燥して第2接着剤層5を形成した。
【0059】
続いて、この第2接着剤層5上に、溶融した2層の透明熱可塑性樹脂を多軸エクストルーダーを用いてTダイで押し出して透明熱可塑性樹脂層6を形成した。第1の樹脂には、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(理研ビタミン(株)製)を用い、第2の樹脂には、ポリプロピレン樹脂100質量部にフェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「IRGANOX1010」)を0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)を0.3質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)を0.5質量部添加した樹脂を用いた。
【0060】
2層からなる透明熱可塑性樹脂層6を形成するのと同時に全層を導管エンボス版とゴムロールでニップして、図2に示したような熱可塑性樹脂基材シート1、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、及び透明熱可塑性樹脂層6からなる積層体を得た。ここで、第1の樹脂層6aの厚さは15μmとし、第2の樹脂層6bの厚さは85μmとした。
この積層体のエンボス面に表面処理を施した後、トップコート樹脂としてウレタン系樹脂(東洋インキ(株)製「URV238ワニス」)100質量部に対して硬化剤(東洋インキ(株)製「UR150Bワニス」)を10質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)を0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)を1質量部添加した樹脂組成物を、グラビアコートで乾燥後の塗布量が5g/mとなるように塗布し、直ちに紫外線を照射して硬化させて表面保護層7を形成した。
【0061】
熱可塑性樹脂基材シート1の裏面に表面処理を施した後、この面にポリオール(東洋インキ(株)製「ラミスターEM」)100質量部に対して、シリカを10質量部、イソシアネート(東洋インキ(株)製「LPNYB硬化剤」)を3質量部添加した樹脂組成物をプライマー塗工液として、グラビアコートで乾燥後の塗布量が3g/mとなるように塗布、乾燥してプライマー層8を形成した。
このような手順により、実施例1-1の化粧シート10を形成した。
【0062】
〔実施例1-2〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを188μmとした以外は、実施例1-1と同様にして化粧シート10を形成した。
〔実施例1-3〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを100μmとした以外は、実施例1-1と同様にして化粧シート10を形成した。
〔実施例1-4〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを125μm、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを150μmとした以外は、実施例1-1と同様にして化粧シート10を形成した。
〔実施例1-5〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを188μm、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを50μmとした以外は、実施例1-1と同様にして化粧シート10を形成した。
【0063】
〔比較例1-1〕
ポリエステル系樹脂層4を、延伸処理を施していないポリエチレンテレフタレート(A-PET)とした以外は、実施例1-1と同様にして化粧シート10を形成した。
〔比較例1-2〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを75μm、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを150μmとした以外は、実施例1-1と同様にして化粧シート10を形成した。
〔比較例1-3〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを100μm、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを200μmとした以外は、実施例1-1と同様にして化粧シート10を形成した。
〔比較例1-4〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを100μm、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを75μmとした以外は、実施例1-1と同様にして化粧シート10を形成した。
【0064】
以上得られた9種類の化粧シートを、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン型接着剤を用いて厚さ6mmのMDF(中密度木質繊維板)に貼り合わせて化粧板とした。
化粧シートと化粧板を用いて以下の評価試験を実施した。
【0065】
〔耐摩耗性〕
化粧板をフローリングの日本農林規格(JAS)に規定する摩耗試験機にかけ、柄の消失が始まるまでの回転数を確認した。1000回転毎に研磨紙を新しいものと交換した。
◎:3000回転以上
○:2500回転以上3000回転未満
△:2000回転以上2500回転未満
×:2000回転未満
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0066】
〔耐傷性〕
化粧板を、JIS K 5600に規定される鉛筆硬度試験にかけ、傷の付き方を確認した。
◎:7H以上で傷なし
○:4H~6Hで傷なし
△:H~3Hで傷なし
×:Hより軟らかいレベルで傷なし
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0067】
〔加工性〕
化粧シートを化粧板に加工する際に選定可能な方法について確認した。
◎:インラインでのロールラミネート可能
○:インラインでのロールラミネート可能だが、加工にやや慎重性を要する
△:インラインでのロールラミネート可能だが、加工にかなりの慎重性を要する
×:ロールラミネート不可。枚葉での貼り合せのみ可能
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0068】
〔切削性〕
化粧板に対して丸鋸による切断加工と、ハンドルータによるMDFに達する切削加工を行い、化粧シートのバリの発生状態を確認した。
◎:バリが発生しない
○:バリが一部見られるが、容易に修正可能
△:バリが一部見られ、修正が必要
×:バリがほぼ全面に発生し、手作業での修正も困難
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0069】
〔生産性〕
透明熱可塑性樹脂層6を押し出し積層する際の生産のし易さを確認した。
◎:安定して生産可能
○:◎よりは生産に気を配る必要があるが、安定して生産可能
△:ロングラン生産時、経時でロールとられ等の可能性があり、生産に慎重性を要する
×:皺の発生やロールとられ等があり、生産は非常に困難
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
以上の評価結果を表1にまとめた。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の「2軸延伸の有無」の欄では、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、即ちポリエステル系樹脂層が2軸延伸されている場合には、「○」と表記した。また、延伸処理を施していないポリエチレンテレフタレート、即ちポリエステル系樹脂層が2軸延伸されていない場合には、「×」と表記した。
この結果から分かるように、本実施例に係る化粧シートは、耐傷付き性能や耐摩耗性能を備え、且つ、加工性や歩留まりにも優れた化粧シートである。
【0072】
(第2実施例)
〔実施例2-1〕
熱可塑性樹脂基材シート1として厚さ55μmのポリオレフィン系無機充填シート(リケンテクノス(株)製「OW」)を用い、表面側にグラビア印刷法によって木目模様を印刷して絵柄模様層2を形成した。
続いてこの絵柄模様層2上に、あらかじめコロナ処理を施した厚さ190μmの延伸していないポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製「ルミラーT60」)をドライラミネートし、第1接着剤層3及びポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)を形成した。
【0073】
続いて、このポリエステル系樹脂層4上に、ウレタン樹脂系接着剤を塗布し温風乾燥して第2接着剤層5を形成した。
続いて、この第2接着剤層5上に、溶融した2層の透明熱可塑性樹脂を多軸エクストルーダーを用いてTダイより押し出して透明熱可塑性樹脂層6を形成した。第1の樹脂には、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(理研ビタミン(株)製)を用い、第2の樹脂には、ポリプロピレン樹脂100質量部にフェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「IRGANOX1010」)を0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)を0.3質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)を0.5質量部添加した樹脂を用いた。
【0074】
2層からなる透明熱可塑性樹脂層6を形成するのと同時に全層を導管エンボス版とゴムロールでニップして、図2に示したような熱可塑性樹脂基材シート1、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、及び透明熱可塑性樹脂層6からなる積層体を得た。ここで、透明熱可塑性樹脂層6の厚さは90μmとした。
この積層体のエンボス面に表面処理を施した後、トップコート樹脂としてウレタン系樹脂(東洋インキ(株)製「URV238ワニス」)100質量部に対して硬化剤(東洋インキ(株)製「UR150Bワニス」)を10質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN326」)を0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製「TINUVIN622」)を1質量部添加した樹脂組成物を、グラビアコートで乾燥後の塗布量が5g/mとなるように塗布し、直ちに紫外線を照射して硬化させて表面保護層7を形成した。
【0075】
熱可塑性樹脂基材シート1の裏面に表面処理を施した後、この面にポリオール(東洋インキ(株)製「ラミスターEM」)100質量部に対してシリカを10質量部、イソシアネート(東洋インキ(株)製「LPNYB硬化剤」)を3質量部添加した樹脂組成物をプライマー塗工液とし、グラビアコートで乾燥後の塗布量が3g/mとなるように塗布、乾燥しプライマー層8を形成した。
このような手順により、実施例2-1の化粧シート10を形成した。なお、ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)の厚さと透明熱可塑性樹脂層6の厚さの合計値は280μmである。
【0076】
〔実施例2-2〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを250μmとし、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを100μmとし、ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)の厚さと透明熱可塑性樹脂層6の厚さの合計値を350μmとした以外は、実施例2-1と同様にして化粧シート10を形成した。
〔実施例2-3〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを150μmとし、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを100μmとし、ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)の厚さと透明熱可塑性樹脂層6の厚さの合計値を250μmとした以外は、実施例2-1と同様にして化粧シート10を形成した。
【0077】
〔実施例2-4〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを190μmとし、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを150μmとし、ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)の厚さと透明熱可塑性樹脂層6の厚さの合計値を340μmとした以外は、実施例2-1と同様にして化粧シート10を形成した。
〔実施例2-5〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを190μmとし、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを50μmとし、ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)の厚さと透明熱可塑性樹脂層6の厚さの合計値を240μmとした以外は、実施例2-1と同様にして化粧シート10を形成した。
【0078】
〔比較例2-1〕
ポリエステル系樹脂層4を、2軸延伸処理を施したポリエチレンテレフタレートで形成した層とし、その厚さを95μmとし、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを100μmとし、ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)の厚さと透明熱可塑性樹脂層6の厚さの合計値を195μmとした以外は、実施例2-1と同様にして化粧シート10を形成した。
【0079】
以上得られた6種類の化粧シートを、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン型接着剤を用いて厚さ6mmのMDF(中密度木質繊維板)に貼り合わせて化粧板とした。
化粧シートと化粧板を用いて以下の評価試験を実施した。
【0080】
〔耐摩耗性〕
化粧板をフローリングの日本農林規格(JAS)に規定する摩耗試験機にかけ、柄の消失が始まるまでの回転数を確認した。1000回転毎に研磨紙を新しいものと交換した。
◎:3000回転以上
○:2500回転以上3000回転未満
△:2000回転以上2500回転未満
×:2000回転未満
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0081】
〔耐傷性〕
化粧板を、JIS K 5600に規定される鉛筆硬度試験にかけ、傷の付き方を確認した。
◎:7H以上で傷なし
○:4H~6Hで傷なし
△:H~3Hで傷なし
×:Hより軟らかいレベルで傷なし
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0082】
〔加工性〕
化粧シートを化粧板に加工する際に選定可能な方法について確認した。
◎:インラインでのロールラミネート可能
○:インラインでのロールラミネート可能だが、加工にやや慎重性を要する
△:インラインでのロールラミネート可能だが、加工にかなりの慎重性を要する
×:ロールラミネート不可。枚葉での貼り合せのみ可能
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0083】
〔切削性1〕
化粧板に対して丸鋸による切断加工と、ハンドルータによるMDFに達する切削加工を行い、化粧シートのバリの発生状態を確認した。
◎:バリが発生しない
〇:バリが一部見られるが、容易に修正可能
△:バリが一部見られ、修正が必要
×:バリがほぼ全面に発生し、手作業での修正は困難
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0084】
〔切削性2〕
化粧板に対して丸鋸による切断加工と、ハンドルータによるMDFに達する切削加工を行い、化粧シートのポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの凝集破壊の発生の有無を確認した。
◎:ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの凝集破壊は発生しない
〇:ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの凝集破壊が一部見られるが、容易に修正可能
△:ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの凝集破壊が一部見られ、修正が必要
×:ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの凝集破壊がほぼ全端部に発生し、修正も困難
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0085】
〔密着強度〕
ポリエステル系樹脂層4(ポリエチレンテレフタレート樹脂層4a)と透明熱可塑性樹脂層6との間の密着強度を確認した
◎:密着強度が2.0kgf/cmより大きく、十分にある
×:密着強度が2.0kgf/cm以下で強度が十分にない
なお、「◎」の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0086】
〔生産性〕
透明熱可塑性樹脂層6を押し出し積層する際の生産のし易さを確認した。
◎:安定して生産可能
○:◎よりは生産に気を配る必要があるが、安定して生産可能
△:ロングラン生産時、経時でロールとられ等の可能性があり、生産に慎重性を要する
×:皺の発生やロールとられ等があり、生産は非常に困難
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
以上の評価結果を表2にまとめた。
【0087】
【表2】
【0088】
表2から、見て取れるように、実施例2-1~実施例2-5は全ての評価項目において「△」の評価以上であるが、ポリエチレンテレフタレート樹脂層4aの厚さが、150μmを下回っている比較例1においては、切削性2及び密着強度において「×」の評価であり、実用性に乏しい結果となった。
この結果から分かるように、本実施例に係る化粧シートは、化粧板にした際の耐摩耗性に優れ、丸鋸あるいはハンドルータを用いた切削に対しての切削加工性に優れた化粧シートである。
【0089】
(第3実施例)
〔実施例3-1〕
熱可塑性樹脂基材シート1として厚さ55μmのポリオレフィン系無機充填シートを用い、表面側にグラビア印刷法によって木目模様を印刷して絵柄模様層2を形成した。
続いてこの絵柄模様層2上に、あらかじめコロナ処理を施した厚さ130μmのポリブチレンテレフタレートフィルムを、接着剤を用いてドライラミネートし、第1接着剤層3及びポリエステル系樹脂層4(ポリブチレンテレフタレート樹脂層4b)を形成した。
【0090】
続いて、このポリエステル系樹脂層4上、にウレタン樹脂系接着剤を塗布し温風乾燥して第2接着剤層5を形成した。
続いて、この第2接着剤層5上に、溶融した2層の透明熱可塑性樹脂を多軸エクストルーダーを用いてTダイより押し出して透明熱可塑性樹脂層6を形成した。第1の樹脂には、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を用い、第2の樹脂には、ポリプロピレン樹脂100質量部にフェノール系酸化防止剤を0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を0.3質量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.5質量部添加した透明樹脂を用いた。
【0091】
2層からなる透明熱可塑性樹脂層6を形成するのと同時に全層を導管エンボス版とゴムロールでニップして、図2に示したような熱可塑性樹脂基材シート1、絵柄模様層2、第1接着剤層3、ポリエステル系樹脂層4、第2接着剤層5、及び透明熱可塑性樹脂層6からなる積層体を得た。ここで、第1の樹脂層6aの厚さは15μm、第2の樹脂層6bの厚さは75μmとした。
この積層体のエンボス面に表面処理を施した後、トップコート樹脂としてウレタン系樹脂100質量部に対してベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部添加した樹脂組成物を、グラビアコートで乾燥後の塗布量が7g/mとなるように塗布乾燥し、さらにアクリル系紫外線硬化型樹脂をグラビアコートで7g/mとなるように塗布し、直ちに紫外線を照射して硬化させて表面保護層7を形成した。
【0092】
熱可塑性樹脂基材シート1の裏面に表面処理を施した後、この面にポリオール100質量部に対してシリカを10質量部、イソシアネートを3質量部添加した樹脂組成物をプライマー塗工液として、グラビアコートで乾燥後の塗布量が3g/mとなるように塗布、乾燥しプライマー層8を形成した。
このような手順により、実施例3-1の化粧シート10を形成した。
【0093】
〔実施例3-2〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを200μmとした以外は、実施例3-1と同様にして化粧シート10を得た。
〔実施例3-3〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを50μmとした以外は、実施例3-1と同様にして化粧シート10を得た。
【0094】
〔実施例3-4〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを130μmとし、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを150μmとした以外は、実施例3-1と同様にして化粧シート10を得た。
〔実施例3-5〕
ポリエステル系樹脂層4の厚さを130μmとし、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを50μmとした以外は、実施例3-1と同様にして化粧シート10を得た。
【0095】
〔比較例3-1〕
ポリエステル系樹脂層4として厚さ190μmの2軸延伸処理を施していないポリエチレンテレフタレート(A-PET)樹脂フィルムを用い、透明熱可塑性樹脂層6の厚さを100μmとした以外は、実施例3-1と同様にして化粧シート10を得た。
【0096】
以上得られた7種類の化粧シートを、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン型接着剤を用いて厚さ6mmのMDF(中密度木質繊維板)に貼り合わせて化粧板とした。
化粧シートと化粧板を用いて以下の評価試験を実施した。
【0097】
〔耐摩耗性〕
化粧板をフローリングの日本農林規格(JAS)に規定する摩耗試験機にかけ、柄の消失が始まるまでの回転数を確認した。1000回転毎に研磨紙を新しいものと交換した。
◎:3000回転以上
○:2500回転以上3000回転未満
△:2000回転以上2500回転未満
×:2000回転未満
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0098】
〔耐傷性〕
化粧板を、JIS K 5600に規定する鉛筆硬度試験機にかけ、傷の付き方を確認した。
◎:7H以上で傷なし
○:4H~6Hで傷なし
△:H~3Hで傷なし
×:Hより軟らかいレベルで傷なし
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0099】
〔加工性〕
化粧シートを化粧板に加工する際に選定可能な方法について確認した。
◎:インラインでのロールラミネート可能
〇:インラインでのロールラミネートは可能だが、加工にやや慎重性を要する
△:インラインでのロールラミネートは可能だが、加工にかなりの慎重性を要する
×:ロールラミネート不可。枚葉での貼り合わせのみ可能
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0100】
〔切削性1〕
化粧板に対して丸鋸による切断加工と、ハンドルータによるMDFに達する切削加工を行い、化粧シートのバリの発生状態を確認した。
◎:バリが発生しない
〇:バリが一部に見られるが、容易に修正可能
△:バリが一部に見られ、修正が必要
×:バリがほぼ全面に発生し、手作業での修正も困難
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0101】
〔切削性2〕
化粧板に対して丸鋸による切断加工と、ハンドルータによるMDFに達する切削加工を行い、化粧シートのポリエステル系樹脂層4の凝集破壊の発生状態を確認した。
◎:ポリエステル系樹脂層4の凝集破壊が発生しない
〇:ポリエステル系樹脂層4の凝集破壊が一部見られるが、容易に修正可能
△:ポリエステル系樹脂層4の凝集破壊が一部見られ、修正が必要
×:ポリエステル系樹脂層4の凝集破壊がほぼ全端部に発生し、修正も困難
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0102】
〔生産性〕
透明熱可塑性樹脂層6を押し出し積層する際の生産のし易さを確認した。
◎:安定して生産可能
〇:◎よりは生産に気を配る必要があるが、安定して生産可能
△:ロングラン生産時、経時でロールとられ等の可能性があり、生産に慎重性を要する
×:皺の発生やロールとられ等があり、生産は非常に困難
なお、「△」以上の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0103】
〔密着強度〕
ポリエステル系樹脂層4と透明熱可塑性樹脂層6との間の密着強度を確認した
◎:密着強度が19.6N/cmより大きく、十分にある
×:密着強度が19.6N/cm以下で強度が十分にない
なお、「◎」の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
【0104】
〔一類浸漬剥離試験〕
化粧板についてJASに規定する一類浸漬剥離試験を実施し、表面状態を確認する
◎:白化しない
×:白化する
なお、「◎」の評価であれば実用可能レベルであるため、「合格」とした。
以上の評価結果を表3にまとめた。
【0105】
【表3】
【0106】
この結果から分かるように、本実施例に係る化粧シートは、シートの生産性や化粧板に加工する際の加工性、化粧板とした時の諸物性においてバランスが取れており、熱や日照にさらされる床暖房用床材の化粧シートとして有用である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本実施形態の化粧シートは、建築物の床面、壁面、天井等の内装、家具、各種キャビネット等の表面装飾材料、建具の表面化粧、車両の内装等に用いる表面化粧用として利用が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1:熱可塑性樹脂基材シート
2:絵柄模様層
3:第1接着剤層
4:ポリエステル系樹脂層
4a:ポリエチレンテレフタレート樹脂層
4b:ポリブチレンテレフタレート樹脂層
5:第2接着剤層
6:透明熱可塑性樹脂層
6a:透明熱可塑性樹脂層(第1の樹脂層)
6b:透明熱可塑性樹脂層(第2の樹脂層)
7:表面保護層
8:プライマー層
9:エンボス
10:化粧シート
図1
図2