(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】水素含有水生成装置、及び電極交換時期の予測方法
(51)【国際特許分類】
C25B 15/00 20060101AFI20240214BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240214BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240214BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
C25B15/00 302
C02F1/461 Z
C25B1/04
C25B9/00 A
(21)【出願番号】P 2019210403
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 昭人
(72)【発明者】
【氏名】三川 玄洋
(72)【発明者】
【氏名】大久保 典浩
(72)【発明者】
【氏名】井町 昌宏
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-218907(JP,A)
【文献】特開2014-147886(JP,A)
【文献】特開2017-031467(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109264829(CN,A)
【文献】国際公開第2018/097069(WO,A1)
【文献】特開平09-001147(JP,A)
【文献】特開2018-012076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167984(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0259102(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0093194(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 15/00
C02F 1/461
C25B 1/04
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極を含み
給水ヘッダから供給される水から水素含有水を生成する通常電解槽と、
前記給水ヘッダに対して前記通常電解槽と並列に設けられ、前記第一電極より表面積が小さい第二電極を含み
前記給水ヘッダから供給される水から水素含有水を生成する加速用電解槽と、
前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電気的に接続され、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電圧を印加する電源部と、
を備える、水素含有水生成装置。
【請求項2】
第一電極を含み水素含有水を生成する通常電解槽と、
前記第一電極より表面積が小さい第二電極を含み水素含有水を生成する加速用電解槽と、
前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電気的に接続され、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電圧を印加する電源部と、
前記電源部を制御し、前記第二電極が故障するまでの前記電源部が電圧を印加している累積された稼働時間に基づいて前記第一電極が故障するまでの稼働時間の予測値を算出する制御部
と、
を備える
、水素含有水生成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第一電極の表面積と、前記第二電極の表面積と、前記第二電極が故障するまでの前記電源部が電圧を印加している累積された稼働時間とに基づいて、前記第一電極が故障するまでの稼働時間の予測値を算出する、
請求項2に記載の水素含有水生成装置。
【請求項4】
前記第一電極が故障するまでの稼働時間の予測値は、(前記第二電極が故障するまでの稼働時間)×(前記第一電極の表面積)/(前記第二電極の表面積)に示す式によって算出される、
請求項2又は3に記載の水素含有水生成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記加速用電解槽には電圧の印加をせず、前記通常電解槽にのみ電圧の印加をするように制御可能である、
請求項2から4のいずれか1項に記載の水素含有水生成装置。
【請求項6】
前記加速用電解槽と前記加速用電解槽に給水するための給水路との間に設けられるバルブを備え、
前記制御部は、前記加速用電解槽には電圧の印加をせず、前記通常電解槽にのみ電圧の印加をする場合、前記バルブを閉じるように制御する、
請求項5に記載の水素含有水生成装置。
【請求項7】
前記通常電解槽及び前記加速用電解槽が共通に接続され前記通常電解槽及び前記加速用電解槽のそれぞれに給水するための給水路と、
前記通常電解槽及び前記加速用電解槽が共通に接続され前記通常電解槽及び前記加速用電解槽のそれぞれから排水するための排水路と、
を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の水素含有水生成装置。
【請求項8】
第一電極を含み水素含有水を生成する通常電解槽と、
前記第一電極より表面積が小さい第二電極を含み水素含有水を生成する加速用電解槽と、
前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電気的に接続され、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電圧を印加する電源部と、
を備える水素含有水生成装置の前記第一電極を交換する時期を予測する方法であって、
前記第一電極の表面積及び前記第二電極の表面積を記憶するステップと、
前記第二電極が故障するまでの前記電源部が電圧を印加している累積された稼働時間を記憶するステップと、
前記第一電極の表面積と、前記第二電極の表面積と、前記第二電極が故障するまでの前記電源部が電圧を印加している累積された稼働時間とに基づいて、前記第一電極が故障するまでの稼働時間の予測値を算出するステップと、
を含む、電極交換時期の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素含有水生成装置、及び電極交換時期の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解作用を利用して、水道水等の原水から水素を含有する水である水素含有水を生成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、陽極と陰極とに印加された電流の利用効率の低下を抑制する水素含有水生成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電気分解においては、陽極部で電子を放出するイオン化反応が起こる。この反応によって、陽極部は、母材が溶出して劣化するので、交換が必要となる。また、同じ電極であっても、水質等によって劣化具合が異なるため、予め運用時と同程度の、例えば1000時間以上等の長い試験に基づいて電極の交換時期を予測したり、頻繁に点検を行ったりする必要があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、劣化による電極の交換時期を容易に予測することができる水素含有水生成装置、及び電極交換時期の予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水素含有水生成装置は、第一電極を含み水素含有水を生成する通常電解槽と、前記第一電極より表面積が小さい第二電極を含み水素含有水を生成する加速用電解槽と、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電気的に接続され、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電圧を印加する電源部と、を備える。
【0007】
前記水素含有水生成装置において、前記電源部を制御し、前記第二電極が故障するまでの前記電源部が電圧を印加している累積された稼働時間に基づいて前記第一電極が故障するまでの稼働時間の予測値を算出する制御部を備えることが好ましい。
【0008】
前記水素含有水生成装置において、前記制御部は、前記第一電極の表面積と、前記第二電極の表面積と、前記第二電極が故障するまでの前記電源部が電圧を印加している累積された稼働時間とに基づいて、前記第一電極が故障するまでの稼働時間の予測値を算出することが好ましい。
【0009】
前記水素含有水生成装置において、前記第一電極が故障するまでの稼働時間の予測値は、(前記第二電極が故障するまでの稼働時間)×(前記第一電極の表面積)/(前記第二電極の表面積)に示す式によって算出されることが好ましい。
【0010】
前記水素含有水生成装置において、前記制御部は、前記加速用電解槽には電圧の印加をせず、前記通常電解槽にのみ電圧の印加をするように制御可能であることが好ましい。
【0011】
前記水素含有水生成装置は、前記加速用電解槽に給水するための加速用電解槽と前記給水路との間に設けられるバルブを備え、前記水素含有水生成装置において、前記制御部は、前記加速用電解槽には電圧の印加をせず、前記通常電解槽にのみ電圧の印加をする場合、前記バルブを閉じるように制御することが好ましい。
【0012】
前記水素含有水生成装置は、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽が共通に接続され前記通常電解槽及び前記加速用電解槽のそれぞれに給水するための給水路と、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽が共通に接続され前記通常電解槽及び前記加速用電解槽のそれぞれから排水するための排水路と、を備えることが好ましい。
【0013】
本発明の電極交換時期の予測方法は、第一電極を含み水素含有水を生成する通常電解槽と、前記第一電極より表面積が小さい第二電極を含み水素含有水を生成する加速用電解槽と、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電気的に接続され、前記通常電解槽及び前記加速用電解槽に電圧を印加する電源部と、を備える水素含有水生成装置の前記第一電極を交換する時期を予測する方法であって、前記第一電極の表面積及び前記第二電極の表面積を記憶するステップと、前記第二電極が故障するまでの前記電源部が電圧を印加している累積された稼働時間を記憶するステップと、前記第一電極の表面積と、前記第二電極の表面積と、前記第二電極が故障するまでの前記電源部が電圧を印加している累積された稼働時間とに基づいて、前記第一電極が故障するまでの稼働時間の予測値を算出するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、劣化による電極の交換時期を容易に予測することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る水素含有水生成装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る水素含有水生成装置を構成する電解槽の電極の例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る水素含有水生成装置の通常電解槽の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る水素含有水生成装置の加速用電解槽の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る陽極部及び陰極部の一部を示す模式拡大図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る陽極部及び陰極部の開口の模式拡大図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る水素含有水生成装置の制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る水素含有水生成装置100の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一構成には同一符号を付し、異なる構成には異なる符号を付すものとする。
【0017】
(水素含有水生成装置の構成)
まず、水素含有水生成装置100全体の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る水素含有水生成装置100の構成例を模式的に示す図である。
図1において、水素含有水生成装置100は、1つの加速用電解槽DK0と、通常電解槽DK1、DK2、DK3、DK4、DK5と、空気抜き弁AV0、AV1、AV2、AV3、AV4、AV5と、循環ポンプP0、P1、P2、P3、P4、P5と、フロースイッチFS0、FS1、FS2、FS3、FS4、FS5と、給水流量計FMと、制御基板SK0、SK1、SK2、SK3、SK4、SK5と、制御部CLと、入力部IPと、表示部DPと、を備える。
【0018】
各構成要素は、給水路WR1と、排水路WR2と、戻し配管WR3、WR4と、によって接続される。給水路WR1は、第1給水ヘッダHH1を含む。排水路WR2は、第2給水ヘッダHH2を含む。水素含有水生成装置100は、給水装置W1から浴槽BTへの給水路WR5の間に設けられる。給水路WR1及び排水路WR2は、給水路WR5に接続する。
【0019】
水素含有水生成装置100は、給水路WR5上に設けられるバルブV1が閉じて、給水路WR1上に設けられるバルブV2と排水路WR2上に設けられるバルブV3とが開くことにより、バルブV2を介して給水装置W1から給水され、バルブV3を介して浴槽BTへ水素含有水Rを供給する。水素含有水生成装置100は、バルブV1を開いて、バルブV2、V3を閉じることにより、給水装置W1からの給水が遮断される。この際。給水装置W1は、浴槽BTへ直接給水する。水素含有水生成装置100は、さらに、水素含有水生成装置100内の水を抜くためのドレンバルブDVが設けられる。
【0020】
第1給水ヘッダHH1は、給水点WP1において給水路WR1に接続されて、給水路WR1の一部を構成する。第2給水ヘッダHH2は、排水点WP2において排水路WR2に接続されて、排水路WR2の一部を構成する。第1給水ヘッダHH1及び第2給水ヘッダHH2は、水素含有水生成装置100内の他の部分の配管よりも内径が大きな管によって構成されている。第1給水ヘッダHH1は、給水路WR1側から給水点WP10~WP15及び循環ポンプP0~P5を介して、加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5へ水を供給する。第2給水ヘッダHH2は、加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5から流出する水を、フロースイッチFS0~FS5及び排水点WP20~WP25を介して排水路WR2側に排出する。
【0021】
加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5は、第1給水ヘッダHH1と第2給水ヘッダHH2との間に並列に設けられている。加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5は、それぞれが別々の水素含有水生成部として機能する。加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5は、後述する電極10を備えており、この電極10に直流電圧(以下、電圧)を印加することにより、水素含有水Rを生成することができる。第1給水ヘッダHH1の給水点WP10と循環ポンプP0との間には、バルブV0が設けられる。水素含有水生成装置100は、バルブV0を閉じることによって、加速用電解槽DK0には給水せず、通常電解槽DK1~DK5のみに給水することができる。
【0022】
空気抜き弁AV0は、加速用電解槽DK0に溜まった空気を抜くために設けられている。空気抜き弁AV1~AV5は、通常電解槽DK1~DK5に溜まった空気を抜くために設けられている。
【0023】
循環ポンプP0~P5は、加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5それぞれの給水路WR1側に設けられている。循環ポンプP0~P5は、第1給水ヘッダHH1の給水点WP10~WP15から、対応する加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5へ給水を行う。循環ポンプP0~P5は、対応するフロースイッチFS0~FS5の状態によって動作する。
【0024】
フロースイッチFS0~FS5は、加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5それぞれの排水路WR2側に設けられている。フロースイッチFS0~FS5は、対応する加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5から、第2給水ヘッダHH2の接続点である排水点WP20~WP25への流水量に基づいて、循環ポンプP0~P5を動作させるための制御信号を出力する。
【0025】
フロースイッチFS0~FS5は、対応する加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5の排水路WR2側の水量が減少すると給水量を増加させるように制御信号を出力し、循環ポンプP0~P5を動作させる。また、フロースイッチFS0~FS5は、対応する加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5の第2給水ヘッダHH2側の水量が増加すると給水量を減少させるように制御信号を出力し、循環ポンプP0~P5を動作させる。したがって、フロースイッチFS0~FS5及び循環ポンプP0~P5によって、加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5に流れる水量を制御することができる。
【0026】
戻し配管WR3、WR4は、第1給水ヘッダHH1と第2給水ヘッダHH2との間に直接接続されている。戻し配管WR3は、並列に6個並んだ加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5のうち、加速用電解槽DK0に隣接して設けられている。加速用電解槽DK0は、排水路WR2に接続されている第2給水ヘッダHH2への排水点WP2から最も遠い排水点WP20に排水する位置に設けられている。戻し配管WR4は、並列に6個並んだ加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5のうち、通常電解槽DK5に隣接して設けられている。通常電解槽DK5は、排水路WR2に接続されている第2給水ヘッダHH2への排水点WP2から最も遠い排水点WP25に排水する位置に設けられている。
【0027】
複数並んだ電解槽のうち、排水点WP2から遠い位置の排水点に排水する電解槽について、その排水点の近傍に一端を接続した戻し配管を設ける必要がある。排水点WP2に比較的近い位置の排水点に排水する電解槽については、その排水点の近傍に一端を接続した戻し配管を設けなくてもよいし、設けてもよい。電解槽が複数個設けられている場合において、第2給水ヘッダHH2への排水点WP2から最も遠い位置に排水する電解槽について、その排水点の近傍に一端を接続した戻し配管を設けることで、各電解槽への給水を均等にすることができる。つまり、第2給水ヘッダHH2への排水点WP2から最も遠い位置の排水点の近傍は水圧が高まる可能性があるので、その近傍から第1給水ヘッダHH1へバイパスする戻し配管WR3、WR4を設けることにより、圧力を逃がして各電解槽への給水を均等にすることができる。
【0028】
給水流量計FMは、水素含有水生成装置100への給水の流量を計測するために設けられている。
【0029】
制御基板SK0~SK5は、制御部CLから出力される制御信号に基づいて、加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5に電圧を印加する。制御部CLは、制御基板SK0~SK5を制御するための制御信号を出力する。加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5に電圧を印加した状態で循環ポンプP0~P5を動作させることにより、水素含有水Rを生成することができる。
【0030】
制御部CLは、入力部IPから入力された所定の操作信号に基づいて、加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5に電圧を印加する。制御部CLは、入力部IPから入力された所定の操作信号に基づいて、通常電解槽DK1~DK5のみに電圧を印加する。すなわち、制御部CLは、加速用電解槽DK0に電圧を印加せず、通常電解槽DK1~DK5のみに電圧を印加させるように、制御基板SK0~SK5を制御するための制御信号を出力することができる。また、制御部CLは、加速用電解槽DK0に電圧を印加しない場合、バルブV0を閉じるよう制御することができる。
【0031】
制御部CLは、さらに、加速用電解槽DK0の電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間T0に基づいて、通常電解槽DK1~DK5の電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間Tの予測値を算出する。加速用電解槽DK0の電極10が故障するまでの稼働時間T0は、入力部IPから入力されてもよい。制御部CLは、タイマーを含んでもよい。タイマーは、例えば、水素含有水生成装置100の稼働時間をカウントする。稼働時間は、電極10を交換した後の、加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5に電圧を印加している時間を累積した時間である。制御部CLは、例えば、加速用電解槽DK0に電圧を印加せず、通常電解槽DK1~DK5のみに電圧を印加させるように入力部IPから入力された場合、その瞬間の稼働時間を加速用電解槽DK0の電極10が故障するまでの稼働時間T0として記憶してもよい。制御部CLは、算出した稼働時間Tの予測値の情報を含む映像信号を表示部DPへ出力する。
【0032】
入力部IPは、水素含有水生成装置100のメンテナンスを行う作業者等からの入力を受け付け可能である。入力部IPは、例えば、水素含有水生成装置100を稼働させる際に加速用電解槽DK0に電圧を印加させるか否かの情報を受け付け可能である。入力部IPは、例えば、通常電解槽DK1~DK5の電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間Tの予測値を算出するための各種のパラメータを受け付け可能である。入力部IPは、例えば、加速用電解槽DK0の電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間T0を受け付け可能であってもよい。制御部CLがタイマーを含む場合、入力部IPは、例えば、メンテナンスを行う時刻tmiを入力可能である。入力部IPは、入力された情報を、制御部CLへ出力する。
【0033】
表示部DPは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等を含む表示装置である。表示部DPは、制御部CLから取得した映像信号に基づいて、通常電解槽DK1~DK5の電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間Tの予測値を表示する。表示部DPは、制御部CLから取得した報知情報に基づいて、報知情報を表示する。制御部CLがタイマーを含む場合、報知情報は、例えば、予め設定された稼働情報に基づくメンテナンス期に基づいて、作業者等にメンテナンスを行うように促す情報を含んでもよい。制御部CLがタイマーを含む場合、表示部DPは、水素含有水生成装置100の稼働時間を表示してもよい。表示部DPがタッチパネル式ディスプレイである場合、表示部DPは、入力部IPを含んでもよい。
【0034】
(電極の構成)
加速用電解槽DK0及び通常電解槽DK1~DK5は、水素含有水生成用の電極10を備えている。本実施形態において、加速用電解槽DK0の電極10と通常電解槽DK1~DK5の電極10とは、後述のとおり電極10の長手方向Eの長さを除いて互いに同じ構成であるため、まとめて説明する。なお、以下の説明において、加速用電解槽DK0と、通常電解槽DK1、DK2、DK3、DK4、DK5とをそれぞれ区別する必要がない場合には、電解槽DKと記載される。
図2は、本実施形態に係る水素含有水生成装置100を構成する電解槽DKの電極10の例を示す斜視図である。電極10は、水の電気分解作用を利用して、原水Wから、水素を含有する水である水素含有水Rを生成する。原水Wは、給水装置W1から給水路WR1、第1給水ヘッダHH1及び循環ポンプP0~P5を介してそれぞれの電解槽DKに供給される温水等である。水素含有水Rは、中性を示す水である。
【0035】
図2に示すように、電極10は、陽極部12と、陰極部14とを有する。陽極部12及び陰極部14は、いずれも円筒状の導電体である。陽極部12は、陰極部14の内側に同心状態に設けられて、陰極部14と離間している。電極10、より具体的には陽極部12及び陰極部14は、両方の端部にそれぞれ開口部としての下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBを有している。陽極部12と、陰極部14とは、下部スペーサ52及び上部スペーサ54(
図3及び
図4参照)によって、陽極部12及び陰極部14の間の距離(電極間隙間と称する。)を維持される。
【0036】
本実施形態において、陽極部12及び陰極部14の電極間隙間の大きさは、0.1mm以上1mm以下とすることが好ましい。電極間隙間の大きさを前述した範囲とすることで、電極10が水素含有水Rを生成する際に、陽極部12と、陰極部14とに印加する電圧の電位差が比較的小さくても、電極10は、十分な量の水素を発生させることができる。電極間隙間の大きさが前述した範囲であれば、電極10に印加される電圧が比較的低電圧でも、電極10は、十分な量の水素を原水Wに溶存させて多くの水素を溶存した水素含有水Rを生成することができる。また、水素含有水Rに溶存する水素の量が同一であれば、電極10は、消費電力を抑制することができる。
【0037】
本実施形態において、陽極部12及び陰極部14は、チタン(Ti)に白金(Pt)をめっきしたものである。めっきは、例えば、白金-イリジウム(Ir)めっきであってもよい。本実施形態において、チタンは純チタンである。陽極部12及び陰極部14は、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料(例えば、バナジウム(V))であることが好ましい。本実施形態においては、陽極部12及び陰極部14の両方がめっきされているが、陽極部12のみをめっきし、陰極部14はめっきしなくてもよい。これにより、電極10の製造コストを低減することができる。
【0038】
陽極部12及び陰極部14は、複数の線状の部分である線状部分16が交差した、網状の部材である。陽極部12は、側部に複数の開口12Hを有している。陰極部14は、側部に複数の開口14Hを有している。複数の線状部分16で囲まれる部分が、陽極部12及び陰極部14の開口12H及び開口14Hとなる。陽極部12が有する複数の開口12Hは、陽極部12の側部を陽極部12の厚み方向に貫通している。陰極部14が有する複数の開口14Hは、陰極部14の側部を陰極部14の厚み方向に貫通している。陽極部12及び陰極部14の線状部分16の詳細な形状については後述する。
【0039】
陽極部12は、長手方向E、すなわち筒状の部材である陽極部12が延びる方向に向かうスリット12SLを有している。陰極部14は、長手方向E、すなわち筒状の部材である陰極部14が延びる方向に向かうスリット14SLを有している。電極10は、陰極部14の外側に複数の拘束部材18を備える。拘束部材18は、例えば、樹脂製の結束バンド、金属の線材等である。拘束部材18は、耐食性が高く、かつ原水Wに溶け出さない材料であることが好ましい。拘束部材18は、陽極部12のスリット12SL及び陰極部14のスリット14SLを閉じて、陽極部12及び陰極部14を陽極部12及び陰極部14の周方向Cから拘束する。拘束部材18を取り外すことによって、電極10は、陽極部12と、陰極部14とに容易に分解することができるので、保守、点検、補修及び部品交換が容易である。
【0040】
陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、いずれも棒状の導電体である。陽極用給電部材20は、陽極部12に電気的に接続されている。陽極用給電部材20は、電源30の陽極と電気的に接続されている。陰極用給電部材22は、陰極部14に電気的に接続されている。陰極用給電部材22は、電源30の陰極と電気的に接続されている。電源30は、直流電源である。このような構成によって、陽極部12は、電源30の正極と陽極用給電部材20を介して電気的に接続され、陰極部14は、電源30の負極と陰極用給電部材22を介して電気的に接続される。電源30は、例えば、制御基板SK0~SK5から与えられる。電源30から印加される電圧の大きさは、全ての電解槽DKにおいて同一であるものとする。
【0041】
陽極用給電部材20は、例えば、溶接等の接合手段によって、陽極部12に接合されて、取り付けられるが、陽極部12に電気的に接続されれば、スポット溶接に限られず、任意の接合手段が用いられてよい。陰極用給電部材22は、例えば、溶接等の接合手段によって、陰極部14に接合されて、取り付けられるが、陰極部14に電気的に接続されれば、スポット溶接に限られず、任意の接合手段が用いられてよい。
【0042】
本実施形態において、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、陽極部12及び陰極部14と同様に、チタンに白金をめっきした部材である。めっきは、例えば、白金-イリジウムめっきであってもよい。陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、陽極部12及び陰極部14と同様に、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料であることが好ましい。本実施形態においては、陰極部14はめっきを施さなくてもよいが、この場合、陰極用給電部材22もめっきを施さなくてもよい。
【0043】
(電解槽の構成)
次に、電解槽DKの構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る水素含有水生成装置100の通常電解槽DK1~DK5の例を示す断面図である。
図3に示すように、通常電解槽DK1~DK5は、槽本体40と、下側基台42と、上側基台44と、給水管46と、排水管48と、下部スペーサ52と、上部スペーサ54と、接合管50と、を備える。
【0044】
槽本体40は、透明な円筒状の槽である。槽本体40の内部には、電極10が設けられる。電極10は、長手方向Eが鉛直方向となる向きで配置されている。槽本体40が透明に設けられているので、使用者は、槽本体40の外側から電極10、特に、槽本体40と対面する位置に設けられる陰極部14を視認することができる。槽本体40の下端部は、下側基台42に覆われて固定される。槽本体40の上端部は、上側基台44に覆われて固定される。
【0045】
下側基台42は、槽本体40の下端部と、陽極用給電部材20と、陰極用給電部材22とを固定する。陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22は、陽極部12及び陰極部14の下端部側開口部10HAより下方に一部が突出している。下側基台42は、陽極用給電部材20の突出部分20P及び陰極用給電部材22の突出部分22Pに、水密状態で貫通される。下側基台42は、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22を介して陽極部12及び陰極部14を固定する。これにより、水素含有水生成装置100は、槽本体40の外部から陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22を介して電極10へ給電することができる。また、電極10は、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22を介して下側基台42及び槽本体40に固定される。上側基台44は、上端部側が閉塞する円筒状の基台である。上側基台44は、槽本体40の上端部を固定する。上側基台44には、空気抜き弁AV1~AV5と電極10の内周部10Siより内側とを連通させる接合管50が貫通する。
【0046】
給水管46は、槽本体40に原水Wを給水するI字状の配管である。給水管46は、槽本体40の側部を水密状態で貫通して設けられる。給水管46の下流端部側の開口部である給水部46Hは、電極10の外周部10Soより外側に設けられる。給水部46Hは、内周方向に向けて原水Wを給水する。
【0047】
排水管48は、槽本体40の水素含有水Rを排水するI字状の配管である。排水管48は、槽本体40の側部を水密状態で貫通して設けられる。排水管48の上流端部側の開口部である排水部48Hは、電極10の外周部10Soより外側に設けられる。排水管48は、外周方向に向けて水素含有水Rを排水する。
【0048】
接合管50は、空気抜き弁AV1~AV5と電極10の内周部10Siより内側とを連通させる。接合管50は、上側基台44を貫通して固定される。接合管50の上端部は、空気抜き弁AV1~AV5に連通する。接合管50の下端部は、電極10の内周部10Siより内側の上端部側開口部10HBより下方に連通する。空気抜き弁AV1~AV5は、槽本体40の内部の圧力が所定値を超えた場合、空気Gを放出する。例えば、空気Gは、槽本体40内の水の電気分解反応によって発生した酸素ガスを含む。このような構成によって、通常電解槽DK1~DK5は、酸素ガスを優先的に槽本体40から排出できる。通常電解槽DK1~DK5は、酸素ガスを優先的に槽本体40から排出することによって、槽本体40内の水への酸素溶存量を抑制して、水素含有水Rを生成する。
【0049】
上述したように、陽極部12と、陰極部14とは、下部スペーサ52及び上部スペーサ54によって、電極間隙間を維持される。下部スペーサ52は、円筒状であり、下端部側開口部10HAにおいて、陰極部14の内周部と陽極部12の外周部との間に配置される。上部スペーサ54は、円筒状であり、上端部側開口部10HBにおいて、陰極部14の内周部と陽極部12の外周部との間に配置される。上部スペーサ54は、上端部に内周方向側に突出する内鍔部54Fiを有する。内鍔部54Fiは、電極10と接合管50との距離を所定距離とする。上部スペーサ54は、上端部に外鍔部54Foを有する。外鍔部54Foは、径方向と外側に突出し、周方向Cの全周に設けられている。外鍔部54Foは、電極10と槽本体40の内周部40Siとの距離を所定距離とする。
【0050】
図4は、本実施形態に係る水素含有水生成装置100の加速用電解槽DK0の例を示す断面図である。
図4に示すように、加速用電解槽DK0の基本的な構成は、通常電解槽DK1~DK5と同様であるため、共通部分の説明は省略する。加速用電解槽DK0は、通常電解槽DK1~DK5に比べて、電極10の長手方向Eの長さが短い。これに伴い、加速用電解槽DK0は、通常電解槽DK1~DK5に比べて、槽本体40、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22の長手方向Eの長さが短い。
【0051】
加速用電解槽DK0は、電極10の下部スペーサ52及び上部スペーサ54が取り付けられる部分を除く長手方向Eの長さL0が、通常電解槽DK1~DK5の電極10の下部スペーサ52及び上部スペーサ54が取り付けられる部分を除く長手方向Eの長さLより短い。具体的には、本実施形態において、L0≒L/10である。加速用電解槽DK0の電極10は、通常電解槽DK1~DK5の電極10と同径である。したがって、加速用電解槽DK0の電極10の表面積は、通常電解槽DK1~DK5の電極10の表面積の約1/10である。
【0052】
(電解槽の電気分解)
次に、電解槽DKにおける原水Wの電気分解について説明する。水素含有水生成装置100は、電極10が原水Wに浸漬され、電源30によって電極10に電圧が印加されて、陽極部12と、陰極部14との間に電位差が発生させることによって、原水Wを電気分解し、水素含有水Rを生成する。
【0053】
水素含有水生成装置100は、電極10の陽極部12と、陰極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陽極部12において、下記式(1)の反応が生じる。
【0054】
2H2O→O2+4H++4e-・・・(1)
【0055】
水素含有水生成装置100は、電極10の陽極部12と、陰極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陰極部14において、下記式(2)の反応が生じる。
【0056】
4H++4e-→2H2・・・(2)
【0057】
水素含有水生成装置100は、電極10の陽極部12と、陰極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陽極部12及び陰極部14の全体において、下記式(3)の反応が生じる。
【0058】
2H2O→O2+2H2・・・(3)
【0059】
水素含有水生成装置100において生成され、すなわち電解槽DKの排水部48Hから流出する水素含有水Rは、例えばpH7以上7.5以下程度の中性になる。陽極部12で発生する電離した水素イオンH+は陰極部14側に集まり、陰極部14には水素ガス(H2)の気泡が生成される。この気泡は、直径がナノメートルオーダーの微小な気泡である。酸素ガス(O2)は、陽極部12の内周部(電極10の内周部10Si)に気泡となって集まり、陽極部12の内周部に沿って又は陽極部12の内周部より内側を上昇して、接合管50を介して空気抜き弁AV0~AV5から水素含有水生成装置100の外部に放出される。
【0060】
(電極の開口の構成)
次に、電極10の形状について、より詳細に説明する。
図5は、本実施形態に係る陽極部12及び陰極部14の一部を示す模式拡大図である。
図6は、本実施形態に係る陽極部12及び陰極部14の開口12H、14Hの模式拡大図である。
図7は、
図5のA-A断面図である。
【0061】
図5及び
図6に示すように、本実施形態において、陽極部12及び陰極部14が有する開口12H及び開口14Hは、菱形形状である。開口12H及び開口14Hは、一方の対角線である第1対角線TLlが他方の対角線である第2対角線TLsよりも長い。開口12H及び開口14Hは、第1対角線TLl上の頂部Pa、Pbでの角度が、第2対角線TLs上の頂部Pc、Pdでの角度よりも小さい。開口12H及び開口14Hは、第1対角線TLlが、陽極部12及び陰極部14が延びる方向、すなわち長手方向Eに向かう。第2対角線TLsは、円筒形状の陽極部12及び陰極部14の周方向Cに向かう。
【0062】
陽極部12及び陰極部14は、複数の開口12H及び開口14Hを有するので、開口12H及び開口14Hを通して電気力線を内側と外側とに回すことができる。これにより、陽極部12及び陰極部14は、両面を電気分解に利用することができるので、水素を効率的に発生させることができる。また、陽極部12は、線状部分16で囲まれた開口12Hによって、自身が生成する酸素の気泡のぬれ角を小さくすることができるので、酸素の気泡を速やかに離脱させることができる。すなわち、生成される酸素と陽極部12の表面との間に生じる吸着力が、点接触に近い状態になって表面張力が抑制されるので、結果として、陽極部12は、酸素の気泡を速やかに離脱させ、酸素の気泡を効率的に外部へ放出することができる。また、陰極部14は、線状部分16で囲まれた開口14Hによって、自身が生成する水素の気泡のぬれ角を小さくすることができるので、水素の気泡を小さい状態で離脱させることができる。すなわち、生成される水素と陰極部14の表面との間に生じる吸着力が、点接触に近い状態になって表面張力が抑制されるので、結果として、陰極部14は、水素の気泡を小さい状態で離脱させて、多くの水素の気泡を溶存した水素含有水Rを生成することができる。
【0063】
図7に示すように、本実施形態において、陽極部12及び陰極部14の線状部分16は、断面が長方形(
図7の例では正方形)となっている。陽極部12は、線状部分16が有する角部16Tによって、酸素の気泡のぬれ角をさらに小さくして表面張力を抑制することができる。これにより、陽極部12は、酸素の気泡を線状部分16から速やかに離脱させ、酸素の気泡を効率的に外部へ放出することができる。また、陰極部14は、線状部分16が有する角部16Tによって、水素の気泡のぬれ角をさらに小さくして表面張力を抑制することができる。これにより、陰極部14は、水素の気泡をより小さい状態で離脱させることができるので、より小さい水素の気泡を溶存させた水素含有水Rを生成することができる。また、陰極部14は、断面が長方形の線状部分16を有するので、水素の発生に利用することができる表面積を大きくすることができる。これにより、陰極部14は、水素を原水Wに溶存させる効率が向上する。
【0064】
(電極交換時期の予測方法)
次に、本実施形態の水素含有水生成装置100において、通常電解槽DK1~DK5の電極10の劣化に伴う交換時期を予測する方法について説明する。通常電解槽DK1~DK5の電極10の故障までの稼働時間の予測値をTとし、加速用電解槽DK0の電極10の故障までの稼働時間をT0とし、通常電解槽DK1~DK5の電極10の反応部分の表面積をSとし、加速用電解槽DK0の電極10の反応部分の表面積をS0とすると、下記式(5)が成立する。
【0065】
T=k×T0×(S/S0)・・・(5)
【0066】
反応部分の表面積とは、下部スペーサ52及び上部スペーサ54が取り付けられる部分を除く領域の表面積である。通常電解槽DK1~DK5の電極10と、加速用電解槽DK0の電極10とは、同径であるので、周方向Cの長さが等しい。したがって、加速用電解槽DK0の電極10の長手方向Eの長さをL0とし、通常電解槽DK1~DK5の電極10の長手方向Eの長さをLとすると、下記(6)が成立する。
【0067】
(S/S0)=(L/L0)・・・(6)
【0068】
なお、上述したとおり、長さL及び長さL0は、下部スペーサ52及び上部スペーサ54が取り付けられる部分を除く。
式(5)及び式(6)より、下記式(7)が成立する。
【0069】
T=k×T0×(L/L0)・・・(7)
【0070】
kは、後述のとおり予め試用実験によって算出された係数である。係数kと、加速用電解槽DK0の電極10の長手方向Eの長さL0と、通常電解槽DK1~DK5の電極10の長手方向Eの長さLとが既知である水素含有水生成装置100では、加速用電解槽DK0の電極10の故障までの稼働時間T0から、通常電解槽DK1~DK5の電極10の故障までの稼働時間Tを予測することが可能である。
【0071】
図8は、本実施形態に係る水素含有水生成装置100の制御部CLの処理の一例を示すフローチャートである。より詳しくは、
図8は、通常電解槽DK1~DK5の電極10の故障までの稼働時間Tの予測値を算出するまでの制御部CLによる処理を示すフローチャートである。
図8に示す処理では、本実施形態の水素含有水生成装置100について、係数kが予め試用実験によって算出されているものとする。また、水素含有水生成装置100の稼働開始を時刻0とした場合のメンテナンスを行う時刻tmi(i=1、2、3、・・・)は、予め設定されているものとする。
【0072】
ステップST101において、制御部CLは、初回から次回までのメンテナンスの回数iをi=0として記憶する。制御部CLは、電解槽DKの稼働開始を時刻0とした場合の時刻tをt=0として、カウントアップタイマーを開始させる。カウントアップタイマーは、電解槽DKに電圧が印加されている時のみ作動するものとする。制御部CLは、ステップST102に移行する。ステップST102において、制御部CLは、次回メンテナンスを行う時刻tmをtm=tmiとして記憶する。制御部CLは、ステップST103に移行する。
【0073】
ステップST103において、制御部CLは、時刻tが次回メンテナンスを行う時刻tmを過ぎたか否かを判定する。制御部CLは、時刻tが次回メンテナンスを行う時刻tmを過ぎていないと判定した場合(ステップST103;No)、所定の周期毎にステップST103を繰り返し実行する。制御部CLは、時刻tが次回メンテナンスを行う時刻tmを過ぎたと判定した場合(ステップST103;Yes)、ステップST104に移行する。ステップST104において、制御部CLは、メンテナンスを行うよう促す報知情報を報知する。より詳しくは、制御部CLは、メンテナンスを行うよう促す報知情報を含む制御信号を表示部DPへ出力する。表示部DPは、メンテナンスを行うよう促す報知情報を表示する。制御部CLは、ステップST105に移行する。
【0074】
ステップST105において、制御部CLは、メンテナンスが開始されたか否かを判定する。制御部CLは、例えば、入力部IPがメンテナンスを開始したことを示す所定の操作を受け付けたことを示す操作信号を取得した場合、メンテナンスが開始されたと判定する。制御部CLは、メンテナンスが開始されていないと判定した場合(ステップST105;No)、ステップST104に戻り、所定の周期毎にステップST104~ST105を繰り返し実行する。制御部CLは、メンテナンスが開始されたと判定した場合(ステップST105;Yes)、ステップST106に移行する。ステップST106において、制御部CLは、メンテナンスを行うよう促す報知情報の報知を停止させる。より詳しくは、制御部CLは、メンテナンスを行うよう促す報知情報の報知を停止させる制御信号を表示部DPへ出力する。表示部DPは、メンテナンスを行うよう促す報知情報の表示を停止する。制御部CLは、ステップST107に移行する。
【0075】
ステップST107において、制御部CLは、加速用電解槽DK0に電圧を印加しないように設定されたか否かを判定する。より詳しくは、制御部CLは、入力部IPが、加速用電解槽DK0に電圧を印加せず通常電解槽DK1~DK5のみに電圧を印加させるようにする所定の操作を受け付けたことを示す操作信号を取得した場合、加速用電解槽DK0に電圧を印加しないように設定されたと判定する。制御部CLは、加速用電解槽DK0に電圧を印加しないように設定されていないと判定した場合(ステップST107;No)、ステップST108に移行する。制御部CLは、加速用電解槽DK0に電圧を印加しないように設定されたと判定した場合(ステップST107;Yes)、ステップST110に移行する。
【0076】
加速用電解槽DK0に電圧を印加しないように設定されていないと判定した場合(ステップST107;No)、ステップST108において、制御部CLは、メンテナンスが終了されたか否かを判定する。制御部CLは、例えば、入力部IPがメンテナンスを終了したことを示す所定の操作を受け付けたことを示す操作信号を取得した場合、メンテナンスが終了されたと判定する。制御部CLは、ステップST105でメンテナンスが開始されたと判定した後に(ステップST105;Yes)、初めて電解槽DKに電圧が印加された場合、メンテナンスが終了されたと判定してもよい。制御部CLは、メンテナンスが終了されていないと判定した場合(ステップST108;No)、ステップST107に戻り、所定の周期毎にステップST107~ST108を繰り返し実行する。制御部CLは、メンテナンスが終了されたと判定した場合(ステップST108;Yes)、ステップST109に移行する。ステップST109において、制御部CLは、初回から次回までのメンテナンスの回数iのカウンタ値を1つ増やして、i=i+1として記憶する。制御部CLは、ステップST102に戻り、ステップST107でYesと判定されるまで、ステップST102~ST109を繰り返し実行する。
【0077】
加速用電解槽DK0に電圧を印加しないように設定されたと判定した場合(ステップST107;Yes)、ステップST110において、制御部CLは、カウントアップタイマーの現在の時刻tを加速用電解槽DK0の電極10の故障までの稼働時間T0として記憶する(T0=t)。なお、メンテナンス中は、電解槽DKへの電圧の印加が停止されているため、時刻tも停止している。したがって、加速用電解槽DK0の電極10の故障までの稼働時間T0は、メンテナンスを開始した時点での時刻tに等しいものとする。制御部CLは、ステップST111に移行する。
【0078】
ステップST111において、制御部CLは、式(7)により、通常電解槽DK1~DK5の電極10の故障までの稼働時間Tの予測値を算出する。制御部CLは、ステップST112に移行する。ステップST112において、制御部CLは、算出した通常電解槽DK1~DK5の電極10の故障までの稼働時間Tの予測値を報知する。より詳しくは、制御部CLは、算出した通常電解槽DK1~DK5の電極10の故障までの稼働時間Tの予測値の情報を含む映像信号を表示部DPへ出力する。表示部DPは、制御部CLから取得した映像信号に基づいて、通常電解槽DK1~DK5の電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間Tの予測値を表示する。制御部CLは、
図8に示すフローチャートの処理を終了する。
【0079】
作業者は、例えば、通常電解槽DK1~DK5の電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間Tの予測値に基づいて、以降のメンテナンスのスケジュールを設定する。例えば、次回のメンテナンスまでの時間は、(T-T0)に所定の安全率を乗じて算出した時間に設定してもよい。
【0080】
(係数kの算出方法)
電極10の交換時期の予測方法では、予め、加速用電解槽DK0と通常電解槽DK1~DK5の少なくともいずれか1つとを用いて、それぞれの電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間T0、Tを測定する。そして、試用実験によって測定された稼働時間T0、Tと、それぞれの電極10の長手方向Eの長さL0、Lとから、式(7)により係数kを算出する。kは、例えば、拘束部材18、陽極用給電部材20、陰極用給電部材22、槽本体40、下側基台42、上側基台44、給水管46、排水管48、下部スペーサ52、上部スペーサ54、又は
図3において省略された他の構成部品の大きさ、形状、電極10に対する位置関係等によって変動する。kは、同一の水素含有水生成装置100では、電源30による印加電圧の大きさ及び原水Wの水質によらず、ほぼ一定の値である。係数kは、同一の水素含有水生成装置100について、ほぼ一定の値であるため、繰り返し試用実験及び算出をする必要はない。
【0081】
表1は、電極10の長手方向Eの長さL0、Lに対する、電極10が故障するまでの水素含有水生成装置100の稼働時間T0、Tの試用実験結果の一例を示した表である。本試用実験において、電極10の故障とは、電極10の表面に穴開きが発生することを示す。式(7)より、kは、表1に示す試用実験結果において、約1.0である。
【0082】
【0083】
以上のように、本実施形態の水素含有水生成装置100は、長手方向Eの長さLを有する電極10を含む通常電解槽DK1~DK5と、長さLより短い長手方向Eの長さL0を有する電極10を含む加速用電解槽DK0と、制御部CLと、を備える。制御部CLは、加速用電解槽DK0の電極10が故障するまでの稼働時間T0に基づいて、通常電解槽DK1~DK5の電極10が故障するまでの稼働時間Tの予測値を算出する。
【0084】
本実施形態の水素含有水生成装置100によれば、加速用電解槽DK0の電極10が故障するまでの稼働時間T0分の所要時間で、通常電解槽DK1~DK5の電極10が故障するまでの稼働時間Tを予測することができる。加速用電解槽DK0の電極10は、表面積が通常電解槽DK1~DK5の電極10の表面積より小さい分、水の電気分解反応時の電流密度が小さい。このため、通常電解槽DK1~DK5の電極10より早く劣化する。したがって、早期に通常電解槽DK1~DK5の電極10の交換時期を予測することができる。また、加速用電解槽DK0の電極10が故障するまでの稼働時間T0を取得した後は、算出された通常電解槽DK1~DK5の電極10が故障するまでの稼働時間Tの予測値に基づいて、以降のメンテナンス時期を設定できるので、メンテナンスの頻度を少なくすることが可能である。
【0085】
また、本実施形態の水素含有水生成装置100は、制御部CLが、加速用電解槽DK0には電圧を印加せず、通常電解槽DK1~DK5にのみ電圧を印加するように制御可能である。また、本実施形態の水素含有水生成装置100は、加速用電解槽DK0と給水路WR1との間に設けられるバルブV0を備え、制御部CLが、加速用電解槽DK0には電圧を印加せず、通常電解槽DK1~DK5にのみ電圧を印加する場合、バルブV0を閉じるように制御する。これにより、電極10が故障した後の加速用電解槽DK0への給水及び電圧の印加を停止させることができる。
【0086】
本実施形態において、試用実験に基づいて算出した係数kを利用して、通常電解槽DK1~DK5の電極10の故障までの稼働時間Tの予測値を算出したが、k=1.0として稼働時間Tの予測値を算出してもよい。この場合、例えば、次回のメンテナンスまでの時間を算出する際に乗算する安全率の値を小さめにすることが好ましい。
【0087】
本実施形態において、メンテナンスを行う時刻tmiは、電解槽DKの稼働時間をカウントするタイマーによって計測したが、互いに異なるタイマーによって計測してもよい。また、メンテナンスを行う毎に、次回のメンテナンスまでの時間を設定してもよい。
【0088】
本実施形態において、加速用電解槽DK0の電極10が故障するまでのメンテナンス間隔が長い場合、加速用電解槽DK0の電極10の故障までの稼働時間T0と、メンテナンスを開始した時点での時刻tとの誤差が大きくなる可能性がある。これに対し、メンテナンス間隔に基づいて、稼働時間T0に対し、補正値eによって誤差補正を行ってもよい。例えば、式(7)の代わりに、下記式(8)によって通常電解槽DK1~DK5の電極10の故障までの稼働時間Tを算出してもよい。
【0089】
T=k×(T0-e)×(L/L0)・・・(8)
【0090】
本実施形態において、水素含有水生成装置100は、5つの通常電解槽DK1~DK5を備えるが、通常電解槽DK1~DK5の数は5つに限定されず、1つ以上であればいくつ備えていてもよい。
【0091】
本実施形態において、加速用電解槽DK0の電極10と、通常電解槽DK1~DK5の電極10とは、同径かつ長手方向Eの長さが異なるが、長手方向Eの長さが同じかつ径が異なるものであってもよい。より詳しくは、加速用電解槽DK0の電極10の表面積S0が通常電解槽DK1~DK5の電極10の表面積Sに比べて十分に小さいのであれば、どのような形状であってもよい。
【0092】
本実施形態において、陽極部12、陰極部14、及び槽本体40の形状は、いずれも円筒状であるが、これに限定されるものではなく、筒形状であればどのような形状でもよい。また、電極10は、下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBを有していなくてもよいし、下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBのいずれかのみを有していてもよい。
【0093】
本実施形態において、電極10は、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22を介して下側基台42及び槽本体40に固定されるが、固定方法は特に限定されない。また、本実施形態では、筒形状の陽極部12、陰極部14、及び槽本体40の軸方向が鉛直方向と平行となる向きで配置することで、槽本体40内の水の流れを好適に制御でき、水素含有水Rを好適に排出することができる。なお、陽極部12、陰極部14、及び槽本体40の向きは、軸方向が鉛直方向と平行となる向きに限定されないが、軸方向に沿った向きで配置することが好ましい。
【0094】
本実施形態において、陽極用給電部材20は、突出部分20Pとは反対側の端部が上端部側開口部10HBの近傍まで延びるが、陽極用給電部材20の陽極部12に取り付けられる部分の長さは、陽極部12の長手方向Eの寸法の半分以下でもよい。陰極用給電部材22は、突出部分22Pとは反対側の端部が上端部側開口部10HBの近傍まで延びるが、陰極用給電部材22の陰極部14に取り付けられる部分の長さは、陰極部14の長手方向Eの寸法の半分以下でもよい。これらの場合、例えば、電極10は、陽極用給電部材20が設けられている側とは反対側に、陽極用給電部材20と同じ形状の陽極用支持部材が設けられてもよい。また、電極10は、陰極用給電部材22が設けられている側とは反対側に、陰極用給電部材22と同じ形状の陰極用支持部材が設けられてもよい。陽極用支持部材及び陰極用支持部材は、陽極用給電部材20及び陰極用給電部材22と同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0095】
陽極用給電部材20は、本実施形態のような棒状の形状でなくてもよく、任意の形状にしてもよい。また、陽極用給電部材20は、下端部側開口部10HAにおいて陽極部12に接続されることに限られず、導電体として陽極部12と電気的に接続されていれば、接続箇所は任意である。陰極用給電部材22は、本実施形態のような棒状の形状でなくてもよく、任意の形状にしてもよい。また、陰極用給電部材22は、下端部側開口部10HAにおいて陰極部14に接続されることに限られず、導電体として陰極部14と電気的に接続されていれば、接続箇所は任意である。
【0096】
本実施形態においては、陽極部12と、陰極部14とが下部スペーサ52及び上部スペーサ54を介して離間して設けられるが、陽極部12と、陰極部14との間に、側部に複数の開口を有する円筒状の絶縁体を介在させてもよい。絶縁体は、例えば、陽極部12の外周部及び陰極部14の内周部と接する。
【0097】
本実施形態においては、電極10が、内側に陽極部12を有し、外側に陰極部14を有するが、内側に陰極部14を有し、外側に陽極部12を有してもよい。この場合、給水管46の給水部46Hは、内側に配置された陰極部14の内周部より内側に設けられ、鉛直方向の上方に向けて給水することが好ましい。また、排水管48の排水部48Hは、内側に配置された陰極部14の内周部より内側に設けられ、給水部46Hの上方において、陰極部14の上端部側開口部10HBより下方の水素含有水Rを取水することが好ましい。また、接合管50は、陽極部12の外周部より外側に連通する上側基台44の内部空間に連通することが好ましい。
【0098】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態によってこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0099】
10 電極
12 陽極部
14 陰極部
20 陽極用給電部材
22 陰極用給電部材
30 電源
40 槽本体
100 水素含有水生成装置
DK 電解槽
DK0 加速用電解槽
DK1~DK5 通常電解槽
CL 制御部
WR1 給水路
WR2 排水路
V1~V3 バルブ
R 水素含有水
E 長手方向