(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】診断装置、分電盤、制御盤、診断方法及び機械診断プログラム
(51)【国際特許分類】
H02K 11/00 20160101AFI20240214BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
H02K11/00
H02P29/024
(21)【出願番号】P 2019213418
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 紀子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】町田 悟志
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-147791(JP,A)
【文献】特開2006-271159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/00- 11/40
H02P 29/00- 29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械装置に供給される電気情報を入力する電気情報入力部と、
前記機械装置が1サイクル動作する際に入力された前記電気情報に基づき、前記機械装置の状態を診断する診断部と、
を備え、
前記診断部は、
時系列的に異なる複数回の1サイクル動作でそれぞれ計測された前記電気情報同士を比較し、比較結果に基づき、前記機械装置の状態を診断
し、
前記電気情報は、前記1サイクル動作時の前記機械装置の電力量及び電流の値の少なくとも一方に対応する電気情報であり、
前記診断部は、時系列的に前後する2回の前記1サイクル動作でそれぞれ計測された前記電力量同士及び前記電流の値同士の少なくとも一方を比較し、
前記診断部が、前記電力量同士を比較した場合、時系列的に後の前記1サイクル動作で計測された前記電力量が、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電力量より増えている場合と、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電力量より減っている場合とで、互いに異なる異常原因を推定し、
前記診断部が、前記電流の値同士を比較した場合、時系列的に後の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値が、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値より増えている場合と、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値より減っている場合とで、互いに異なる異常原因を推定する、診断装置。
【請求項2】
前記電気情報入力部は、前記機械装置に接続される配電用機器で計測される電気情報を入力する請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記診断部が前記機械装置の状態が異常と診断された場合、前記機械装置に異常が発生していることを示す報知情報を報知する報知部を備える請求項1
又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記機械装置は、圧延加工装置、搬送機、プレス機、溶接機、洗浄機、又は半導体製造装置である請求項1から
3の何れか一項に記載の診断装置。
【請求項5】
請求項1から
4の何れか一項に記載の診断装置を備える分電盤。
【請求項6】
請求項1から
4の何れか一項に記載の診断装置を備える制御盤。
【請求項7】
診断装置が、
機械装置に供給される電気情報を入力するステップと、
前記機械装置が1サイクル動作する際に入力された前記電気情報に基づき、前記機械装置の状態を診断するステップと、
を含み、
前記診断するステップにおいて、前記診断装置は、時系列的に異なる複数回の1サイクル動作でそれぞれ計測された前記電気情報同士を比較し、比較結果に基づき、前記機械装置の状態を診断
し、
前記電気情報は、前記1サイクル動作時の前記機械装置の電力量及び電流の値の少なくとも一方に対応する電気情報であり、
前記診断するステップにおいて、前記診断装置は、時系列的に前後する2回の前記1サイクル動作でそれぞれ計測された前記電力量同士及び前記電流の値同士の少なくとも一方を比較し、
前記診断するステップにおいて、前記診断装置が、前記電力量同士を比較した場合、時系列的に後の前記1サイクル動作で計測された前記電力量が、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電力量より増えている場合と、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電力量より減っている場合とで、互いに異なる異常原因を推定し、
前記診断するステップにおいて、前記診断装置が、前記電流の値同士を比較した場合、時系列的に後の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値が、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値より増えている場合と、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値より減っている場合とで、互いに異なる異常原因を推定する、診断方法。
【請求項8】
コンピュータに、
機械装置に供給される電気情報を入力するステップと、
前記機械装置が1サイクル動作する際に入力された前記電気情報に基づき、前記機械装置の状態を診断するステップと、
を実行させ、
前記診断するステップにおいて、前記コンピュータは、時系列的に異なる複数回の1サイクル動作でそれぞれ計測された前記電気情報同士を比較し、比較結果に基づき、前記機械装置の状態を診断
し、
前記電気情報は、前記1サイクル動作時の前記機械装置の電力量及び電流の値の少なくとも一方に対応する電気情報であり、
前記診断するステップにおいて、前記コンピュータは、時系列的に前後する2回の前記1サイクル動作でそれぞれ計測された前記電力量同士及び前記電流の値同士の少なくとも一方を比較し、
前記診断するステップにおいて、前記コンピュータが、前記電力量同士を比較した場合、時系列的に後の前記1サイクル動作で計測された前記電力量が、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電力量より増えている場合と、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電力量より減っている場合とで、互いに異なる異常原因を推定し、
前記診断するステップにおいて、前記コンピュータが、前記電流の値同士を比較した場合、時系列的に後の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値が、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値より増えている場合と、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値より減っている場合とで、互いに異なる異常原因を推定する、機械診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械装置などの診断を行う診断装置、分電盤、制御盤、診断方法及び機械診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動機駆動装置から電動機へと入力される操作信号の操作量と、この操作量と所定の相関関係にある電動機の状態量とに基づいて、電動機及び電動機の附帯設備などの機械装置の劣化に伴う異常を診断する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、機械装置に供給される電流、電力などの電気情報を長期間計測して設備の異常を診断するため、長期間に亘る膨大な電気情報などを保持するためのメモリ、サーバなどが必要になる。さらに、長期間記録された電気情報の中から、必要な情報を切り出し正常な値と比較し、設備の異常の有無を判定するなどの作業が必要になる。このように、機械装置の診断をするためには大量の電気情報を利用するためのリソースが必要になるだけでなく、記録された情報を加工するなどの作業が必要になるため、機械装置の状態を診断する上での改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、機械装置などの状態を容易に診断できる診断装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本開示に係る診断装置は、機械装置に供給される電気情報を入力する電気情報入力部と、前記機械装置が1サイクル動作する際に入力された前記電気情報に基づき、前記機械装置の状態を診断する診断部と、を備え、前記診断部は、時系列的に異なる複数回の1サイクル動作でそれぞれ計測された前記電気情報同士を比較し、比較結果に基づき、前記機械装置の状態を診断し、前記電気情報は、前記1サイクル動作時の前記機械装置の電力量及び電流の値の少なくとも一方に対応する電気情報であり、前記診断部は、時系列的に前後する2回の前記1サイクル動作でそれぞれ計測された前記電力量同士及び前記電流の値同士の少なくとも一方を比較し、前記診断部が、前記電力量同士を比較した場合、時系列的に後の前記1サイクル動作で計測された前記電力量が、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電力量より増えている場合と、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電力量より減っている場合とで、互いに異なる異常原因を推定し、前記診断部が、前記電流の値同士を比較した場合、時系列的に後の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値が、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値より増えている場合と、時系列的に前の前記1サイクル動作で計測された前記電流の値より減っている場合とで、互いに異なる異常原因を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、機械装置などの状態を容易に診断できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本実施の形態に係る診断装置と、診断対象である機械装置とを示す図
【
図1B】本実施の形態に係る診断装置と、診断対象である機械装置とを示す図
【
図4】診断装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図5】診断装置の動作を説明するためのタイミングチャート
【
図6】診断装置の動作を説明するためのタイミングチャート
【
図7】診断装置の動作を説明するためのフローチャート
【
図8】診断装置の動作を説明するためのタイミングチャート
【
図9】診断装置の動作を説明するためのタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について図を用いて説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の図の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。また、以下に示す実施の形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1A及び
図1Bは本実施の形態に係る診断装置と、診断対象である機械装置とを示す図である。診断システム100は、サーバ1と、配電盤に設けられる商用系統の主幹配線用遮断器である配線用遮断器2と、第1機械装置300-1と、第2機械装置300-2と、分電盤101-1に設けられる複数の盤内機器と、分電盤101-2に設けられる複数の盤内機器と、診断装置4とを備える。なお、診断システム100は、サーバ1に代えてPLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの制御装置を備える構成でもよい。また、診断システム100は、分電盤101-1及び分電盤101-2のそれぞれの代わりに制御盤を備える構成でもよい。
【0011】
第1機械装置300-1及び第2機械装置300-2は、例えば製造ラインに設置される装置、例えば、圧延加工装置、搬送機、プレス機、溶接機、洗浄機、半導体製造装置などである。例えば、第1機械装置300-1が圧延加工装置であり、第2機械装置300-2がプレス装置の場合、所定の板厚を有する金属の加工材料が圧延加工され、圧延加工されたワークの中から部品を打ち抜くという工程が含まれる。第1機械装置300-1及び第2機械装置300-2は、シーケンスプログラム、基本ルーチンなどに従い、1サイクル動作する装置である。1サイクルは、「1ショット」又は「一工程」と称される場合がある。以下では、分電盤101-1及び分電盤101-2を区別しない場合、「分電盤101」と称する場合がある。また、第1機械装置300-1及び第2機械装置300-2を区別しない場合、「機械装置300」と称する場合がある。
【0012】
分電盤101に設けられる複数の盤内機器は、配電用機器である。盤内機器は、例えば、分電盤101内の主幹配線用遮断器である配線用遮断器5と、配線用遮断器5の二次側に接続される2つの配線用遮断器6a,6bと、配線用遮断器6aの二次側に接続される電磁接触器7aと、配線用遮断器6bの二次側に接続される電磁接触器7bと、電磁接触器7aの二次側に接続される過負荷リレー8aと、電磁接触器7bの二次側に接続される過負荷リレー8bとを備える。
【0013】
配線用遮断器2の一次側には、系統電源200が接続され、配線用遮断器2の二次側には、電線16を介して、配線用遮断器5の一次側が接続される。配線用遮断器5の二次側には、接続電線18を介して、配線用遮断器6a及び配線用遮断器6bのそれぞれの一次側が接続される。
【0014】
配線用遮断器6aの二次側には、接続電線18を介して、電磁接触器7aが接続される。電磁接触器7aの二次側には、接続電線18を介して、過負荷リレー8aが接続される。過負荷リレー8aの二次側には、接続電線18を介して、負荷9が接続される。負荷9は、例えば系統電源200(三相交流電源など)から供給される電力で駆動するモータ、当該モータを駆動する駆動装置などである。
【0015】
配線用遮断器6bの二次側には、接続電線18を介して、電磁接触器7bが接続される。電磁接触器7bの二次側には、接続電線18を介して、過負荷リレー8bが接続される。過負荷リレー8bの二次側には、接続電線18を介して、負荷9が接続される。
【0016】
配線用遮断器6a、電磁接触器7a、及び過負荷リレー8aは、いずれかが電気量を収集する機能と、収集した電気量の内容を示す電気情報を診断装置4に送信する通信機能を備える。電気量は、例えば、電流、電圧、電力などである。
図1A及び
図1Bは、過負荷リレー8aが上記機能を有する場合を示す図である。
【0017】
センサ14は、電気量を検出して診断装置4へ送信する電気量検出センサであり、分電盤101内のあらゆる箇所に設置可能である。センサ14は、電流を検出する電流検出手段を備える場合、例えば電磁接触器7bと過負荷リレー8bとの間に配線される接続電線18に流れる電流を検出し、検出した電流の値を示す情報を電気情報として、通信線17を介して診断装置4へ送信する。またセンサ14は、電力を検出する電力検出手段を備える場合、例えば、接続電線18に印加される交流電圧の瞬時値と、負荷9に流入する交流電流の瞬時値とを検出し、それらの検出値から電力を算出し、算出した電力の値を示す情報を電気情報として、通信線17を介して診断装置4へ送信する。
【0018】
診断装置4は、電気情報を収集し、収集した電気情報に基づき、負荷9を備える機械装置300の状態を診断する。診断方法の詳細は後述する。なお、診断装置4での診断結果は、通信回線3を介して、例えばサーバ1に送信してもよい。通信回線3の通信方式は、無線通信方式や有線通信方式を問わず適用可能である。また、診断装置4の診断および通信機能は、分電盤または制御盤101に搭載される盤内機器に実装してもよい。
【0019】
次に
図2を参照して、盤内機器の一例である過負荷リレー8aの構成例を説明する。
【0020】
図2は過負荷リレーの構成例を示す図である。過負荷リレー8aは、メカニカルリレーのような有接点リレーか、半導体リレーのような無接点リレーを備えた電子式過負荷リレーである。過負荷リレー8aは、例えば、上記で説明したメカニカルリレーか半導体リレーのいずれかによるリレー接点22a、演算部22b、電源部22c、電磁石部22d、診断装置4へ電気情報を送信する手段である情報送信回路22g、及び電圧センサ22fを備える。これらの構成要素は、例えば基板50に実装される。
【0021】
演算部22bは、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。
【0022】
電流センサ19は、接続電線18に流れる電流を検出するためのシャント抵抗などの電流検出素子である。なお、電流センサ19は、電流を検出できるものであればよくCT(Current Transformer)やロゴスキーコイル等のセンサでもよい。電流センサ19で検出された電流の値を示す情報である電流情報は、演算部22bに入力され、演算部22bは、電流情報を、診断装置4に対して有線又は無線で情報を送信する。
【0023】
電流情報を入力した演算部22bは、所定の閾値電流に達する電流を検出したとき、電源部22cにトリップ信号4aを入力する。電源部22cは、電荷を蓄えるトリップ用コンデンサを有し、トリップ信号4aを入力したとき、トリップ用コンデンサに蓄えられた電荷を放電する。これにより、電磁石部22dを駆動して接点機構(リレー接点22a)をトリップ動作させる。リレー接点22aがトリップ動作することで、電磁接触器7aのコイルの励磁が解かれて、接続電線18が開路される。トリップ動作後に所定時間が経過すると、演算部22bは、電源部22cにリセット信号を入力することで、電源部22cのリセット用コンデンサの放電によって電磁石部22dを駆動して接点機構(リレー接点22a)がリセット動作を行う。
【0024】
電圧センサ22fは、例えばU相、V相、W相の各接続電線18に直接接続された電圧検出用の配線から電圧情報を取得し、演算部22bに入力する。なお、
図2には、電流情報を電気情報として送信する構成が示されるが、検出した電流と電圧から電力を算出して電気情報として送信する構成を採用してもよい。
【0025】
次に、
図3を参照して診断装置4の構成例を説明する。
図3は診断装置の機能構成を示す図である。診断装置4は、負荷9に接続される配電用機器で計測される電気情報を入力する電気情報入力部41と、機械装置300の運転を指示する指令である運転指令を生成する、または、サーバ1からの運転指令を中継する運転指令生成部42と、電気情報及び運転指令に基づき、負荷9の状態、負荷9を含む機械装置300の状態などを診断する診断部40とを備える。なお、運転指令は、
図1Bに示すように、サーバ1から直接電磁接触器7a又は電磁接触器7bに入ると共に、分岐した運転指令信号が診断装置4に入るものでもよいし、
図1Aに示すように、診断装置4を経由して、電磁接触器7a又は電磁接触器7bに入るものでもよい。
【0026】
運転指令は、始動指令及び停止指令を含む。始動指令は、機械装置300に対して1サイクル動作の開始を指示する指令である。停止指令は、機械装置300に対して1サイクル動作の終了を指示する指令である。例えば機械装置300への始動命令が出たタイミングを「1サイクル」の開始時点、機械装置300への停止命令が出たタイミングを「1サイクル」の終了時点とし、開始時点から終了時点までの一連の動作を「1サイクル」とみなす。なお、「1サイクル」は、上記の開始時点から終了時点までの一連の動作に限定されず、例えば機械装置300への始動命令が出た開始時点から、当該開始時点の後に再び機械装置300への始動命令が出た開始時点(次の開始時点)までの一連の動作でもよい。
【0027】
診断装置4は、機械装置300の1サイクル毎の電気情報を取得し、取得した電気情報と、過去に取得した電気情報、予め設定された電気情報などと比較・分析することによって、1サイクル単位での生産効率向上、機械装置300の絶縁劣化、機械装置300の不具合発見を支援する。
【0028】
例えば、プレス装置の場合、1サイクル動作は、始動指令が入力されることで工具が金属板に向かって進み、ワークに工具が押し付けられてワークが切り出されて、停止指令が入力されることでワークを切り出した工具が所定の位置に戻る動作などである。またポンプの場合、1サイクル動作は、始動指令が入力されてから停止指令が入力されるまで水の圧送を続ける動作である。なお、運転指令は、診断装置4の外部機器から送信されるものでもよい。診断部40は、機械装置300が1サイクル動作する際に入力された電気情報に基づき、機械装置300の状態を診断する。
【0029】
また診断装置4は、盤内機器から取得した電力の積算値を1サイクル毎に算出する1サイクル電力量算出部43と、1サイクル電力量を保持する1サイクル電力量保持部44と、1サイクル電力量の値を示す情報を例えばサーバ1へ送信する通信機能である通信部45とを備える。
【0030】
診断部40は、電力量差算出部46a、推定部46b、報知部46d、電流差算出部47a、推定部47b、及び報知部47dを備える。
【0031】
電力量差算出部46aは、機械装置300が1サイクル動作する際に正常と定義された1サイクル電力量に基づき、時系列に異なる時点での1サイクル電力量の差(電力量差)を算出する。
【0032】
推定部46bは、電力量差算出部46aで算出された電力量差を入力し、電力量差と電力量閾値46cとに基づき、機械装置300の異常原因を推定する。電力量閾値46cは、例えば、機械装置300の正常時に取得した電気情報に基づき設定されたものである。
【0033】
報知部46dは、推定部46bで推定された異常原因を示す内容を、例えば診断装置4の外部に設けられるサーバ1に報知する。
【0034】
電流差算出部47aは、時系列に異なる時点で機械装置300が1サイクル動作する際に正常と定義された1サイクル電流情報に基づき、1サイクル動作時の電流の差(電流差)、例えば、1サイクル期間内の電流の最大値、最小値、平均値の差を算出する。
【0035】
推定部47bは、電流差算出部47aで算出された電流差と電流閾値47cとに基づき、機械装置300の異常原因を推定する。電流閾値47cは、例えば、機械装置300の正常時に取得した電気情報に基づき設定されたものである。
【0036】
報知部47dは、推定部47bで推定された異常原因を示す内容を、例えば診断装置4の外部に設けられるサーバ1に報知する。
【0037】
次に
図4から
図9を参照して、診断装置4の動作を説明する。以下では、
図4から
図6を参照して電力を利用した診断動作を説明した後、
図7から
図9を参照して電流を利用した診断動作を説明する。
【0038】
図4は診断装置の動作を説明するためのフローチャート、
図5は診断装置の動作を説明するためのタイミングチャート、
図6は診断装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4から
図6は、電力量差算出部46a、推定部46b、及び報知部46dにおける動作を説明するための図である。
【0039】
図5及び
図6に示すように1ショット動作時の運転指令が生成されると(ステップS1)、電気情報(電力量)が診断装置4に入力される(ステップS2)。
【0040】
電力量差算出部46aは、例えば、時刻t1で始動指令が入力されてから、時刻t2で停止指令が入力されるまでの1サイクル動作中に計測される電力量の値と、次の1サイクル動作中に計測される電力量の値と比較し、これらの2つの1サイクル動作時のそれぞれに計測される電力量の値の差分を算出する(ステップS3)。「次の1サイクル動作」は、例えば、時刻t3で始動指令が入力されてから、時刻t4で停止指令が入力されるまでの動作である。なお、電力量差算出部46aで利用される電力は、時系列的に連続したタイミングで計測された1サイクル動作時の電力量同士でもよいし、時系列的に不連続の任意のタイミングで計測された1サイクル動作時の電力量同士でもよい。
【0041】
推定部46bは、電力量差が電力量閾値46cを超えるか否かを判断する(ステップS4)。電力量差が電力量閾値46c以下の場合(ステップS4,No)、ステップS1以降の処理が繰り返される。電力量差が電力量閾値46cを超える場合(ステップS4,Yes)、ステップS5の処理が実行される。
【0042】
ステップS5において、推定部46bは、時系列的に異なるタイミングで計測された2つの1サイクル動作時のそれぞれの電力量の値を比較することにより、電力量が増加傾向にあるか否かを判断する(ステップS5)。
【0043】
図5に示すように、例えば時刻t3から時刻t4までの1サイクル動作時の電力量が、例えば時刻t1から時刻t2までの1サイクル動作時の電力量よりも増加傾向にある場合(ステップS5,Yes)、推定部46bは、第1異常原因が発生していると推定する(ステップS6)。第1異常原因は、例えば、プレス機の工具が摩耗したことで、ワーク(被加工物)の加工時に工具の駆動電力が一時的に増加したことが考えられる。
【0044】
図6に示すように、例えば時刻t3から時刻t4までの1サイクル動作時の電力量が、例えば時刻t1から時刻t2までの1サイクル動作時の電力量よりも減少傾向にある場合(ステップS5,No)、推定部46bは、第2異常原因が発生していると推定する(ステップS7)。第2異常原因は、例えば、プレス機の工具の歯車に割れ、欠損などが生じたことで、ワークの加工時に工具の駆動電力量が一時的に低下したことが考えられる。
【0045】
報知部46dは、推定部46bで推定された異常原因をサーバ1などに報知する(ステップS8)。報知部46dからの報知情報を受信したサーバ1は、例えば報知内容に対応するメッセージ情報を、表示手段に表示させてもよいし、スピーカーなどの音再生手段を通して、例えば報知内容に対応する音声やアラーム音を発生させてもよい。
【0046】
図7は診断装置の動作を説明するためのフローチャート、
図8は診断装置の動作を説明するためのタイミングチャート、
図9は診断装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図7から
図9は、電流差算出部47a、推定部47b、及び報知部47dにおける動作を説明するための図である。
【0047】
図8及び
図9に示すように1サイクル動作時の運転指令が生成されると(ステップS11)、電気情報(電流)が診断装置4に入力される(ステップS12)。
【0048】
電流差算出部47aは、例えば、時刻t1で始動指令が入力されてから、時刻t2で停止指令が入力されるまでの1サイクル動作中に計測される電流の値と、次の1サイクル動作中に計測される電流の値と比較し、これらの2つの1サイクル動作時のそれぞれに計測される電流の値の差分を算出する(ステップS13)。なお、電流差算出部47aで利用される電流は、時系列的に連続したタイミングで計測された1サイクル動作時の電流同士でもよいし、時系列的に不連続の任意のタイミングで計測された1サイクル動作時の電流同士でもよい。
【0049】
推定部47bは、電流差が電流閾値47cを超えるか否かを判断する(ステップS14)。電流差が電流閾値47c以下の場合(ステップS14,No)、ステップS11以降の処理が繰り返される。電流差が電流閾値47cを超える場合(ステップS14,Yes)、ステップS15の処理が実行される。
【0050】
ステップS15において、推定部47bは、時系列的に異なるタイミングで計測された2つの1サイクル動作時のそれぞれの電流の値を比較することにより、電流が増加傾向にあるか否かを判断する(ステップ15)。
【0051】
図8に示すように、例えば時刻t3から時刻t4までの1サイクル動作時の電流が、例えば時刻t1から時刻t2までの1サイクル動作時の電流よりも増加傾向にある場合(ステップS15,Yes)、推定部47bは、前述した第1異常原因が発生していると推定する(ステップS16)。
【0052】
図9に示すように、例えば時刻t3から時刻t4までの1サイクル動作時の電流が、例えば時刻t1から時刻t2までの1サイクル動作時の電流よりも減少傾向にある場合(ステップS15,No)、推定部47bは、前述した第2異常原因が発生していると推定する(ステップS17)。
【0053】
報知部47dは、推定部47bで推定された異常原因をサーバ1などに報知する(ステップS18)。報知部47dからの報知情報を受信したサーバ1は、例えば報知内容に対応するメッセージ情報を、表示手段に表示させてもよいし、スピーカーなどの音再生手段を通して、例えば報知内容に対応する音声やアラーム音を発生させてもよい。
【0054】
図10は診断装置のハードウェア構成を示す図である。診断装置4は、その機能が任意のハードウェア、或いは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。例えば、診断装置4は、ドライブ装置21と、補助記憶装置22と、メモリ装置23と、CPU24と、インタフェース装置25と、表示装置26と、入力装置27とを含み、それぞれがバス29で接続される。
【0055】
診断装置4の各種機能を実現するプログラムは、例えば記録媒体28によって提供される。記録媒体28は、例えば、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、或いは、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型のメモリである。プログラムが記録された記録媒体28が、ドライブ装置21にセットされると、プログラムが記録媒体28からドライブ装置21を介して、補助記憶装置22にインストールされる。また、プログラムは、通信ネットワークを介して他のコンピュータからダウンロードされ、補助記憶装置22にインストールされてもよい。
【0056】
補助記憶装置22は、インストールされた各種プログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。メモリ装置23は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置22からプログラムを読み出して格納する。CPU24は、補助記憶装置22に格納された各種プログラムを実行し、プログラムに従って診断装置4に係る各種機能を実現する。診断装置4を実現する場合、診断装置4用のプログラムを補助記憶装置22に格納しておき、このプログラムをCPU24が実行することにより、診断装置4の診断部40などが実現される。
【0057】
インタフェース装置25は、診断装置4を通信回線3に接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置26は、例えば、CPU24で実行されるプログラムに従って、GUI(Graphical User Interface)を表示する。入力装置27は、診断装置4に関する様々な操作指示を診断装置4の作業者や管理者等に入力させるために用いられる。
【0058】
以上に説明したように、本実施の形態に係る診断装置4は、機械装置に供給される電気情報を入力する電気情報入力部と、前記機械装置が1サイクル動作する際に入力された前記電気情報に基づき、前記機械装置の状態を診断する診断部と、を備える。
【0059】
従来技術は、機械装置に供給される電流、電力などの電気情報を長期間計測して設備の異常を診断するため、長期間に亘る膨大な電気情報などを保持するためのメモリ、サーバなどが必要になる。さらに、長期間記録された電気情報の中から、必要な情報を切り出し正常な値と比較し、設備の異常の有無を判定するなどの作業が必要になる。このように、機械装置の診断をするためには大量の電気情報を利用するためのリソースが必要になるだけでなく、記録された情報を加工するなどの作業が必要になるため、機械装置の状態を診断する上での改善の余地があった。
【0060】
これに対して、本実施の形態に係る診断装置4によれば、上記構成により、診断部40によって、1サイクル動作時に計測される電気情報を利用して機械装置の診断を行うことができる。従って、従来技術のように、診断のために大量の電気情報を利用しなくてもよいため、電気情報を記録する記録媒体の容量が少なくなり、リソースの有効活用が可能である。また、記録媒体に大量に記録された情報を加工する作業が不要になり、機械装置の状態を迅速に診断することが可能である。
【0061】
また本実施の形態に係る診断装置4は、1サイクル動作毎の電力量を把握できるため、工程単位の省エネ管理(EMS)が可能になる。また、正常時に計測される電流の傾向から外れた傾向を検知できるため、機械装置300の異常の事前対策が可能になる。また、機械装置300で加工されるワークなどに不良品が含まれる場合でも、時系列順に計測された1サイクル毎の電気情報を利用することで、製品不良が発生した時点を特定できる。また、1サイクル単位での使用電力量及び電流のトレンドを管理し、設備のクセを保全ナレッジとして蓄積できる。また、1サイクル単位での電流のトレンドの変化傾向を診断することにより、設備の劣化(工具の磨耗など)を把握して品質不良を未然に防止できる。また、電流のトレンドから外れる場合、正常時と異なることを報知できるため、品質不良の発生を未然に防止できる(予防保全)。また、異常、故障などの兆候及び傾向を事前に検知し、点検や保守に活かすことができる(復旧支援)。また、1サイクル単位の消費電力を把握し、細かな省エネや生産効率アップを図ることができる。
【0062】
また本実施の形態に係る診断方法は、診断装置が、機械装置に供給される電気情報を入力するステップと、機械装置が1サイクル動作する際に入力された電気情報に基づき、機械装置の状態を診断するステップとを含む。また本実施の形態に係る機械診断プログラムは、コンピュータに、機械装置に供給される電気情報を入力するステップと、機械装置が1サイクル動作する際に入力された電気情報に基づき、機械装置の状態を診断するステップとを実行させる。
【0063】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 :サーバ
2 :配線用遮断器
4 :診断装置
9 :負荷
40 :診断部
41 :電気情報入力部
42 :運転指令生成部
43 :1サイクル電力量算出部
44 :1サイクル電力量保持部
45 :通信部
46a :電力量差算出部
46b :推定部
46c :電力量閾値
46d :報知部
47a :電流差算出部
47b :推定部
47c :電流閾値
47d :報知部
300-1 :第1機械装置
300-2 :第2機械装置