(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】乗物用シートリクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/235 20060101AFI20240214BHJP
A47C 1/025 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60N2/235
A47C1/025
(21)【出願番号】P 2019215013
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺口 博明
(72)【発明者】
【氏名】西浦 武史
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215999(JP,A)
【文献】特開2012-176198(JP,A)
【文献】特開2017-210022(JP,A)
【文献】特開2019-196084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/024 - A47C 1/027
B60N 2/22 - B60N 2/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートリクライニング装置であって、
互いに相対回転可能なように軸方向に組み付けられるラチェット及びガイドと、
前記ガイドに設けられた一対のガイド壁により回転方向の両側から支持され、半径方向の外側へ押される移動により前記ラチェットと噛合し該ラチェットと前記ガイドとの間の相対回転をロックする回転方向に並ぶ複数のポールと、
複数の前記ポールを半径方向の内側から外側へと押し動かす単一部品から成るカムと、を有し、
複数の前記ポールのうちの1つは、前記カムにより押し動かされることで一対の前記ガイド壁の双方に回転方向に傾いて当てられるガタ詰めを伴って他のポールよりも先に前記ラチェットの内歯に外歯が入り込むよう押し出される単一部品から成るメインポールとされ、
前記メインポールと該メインポールを半径方向の内側から押圧する前記カムの押圧部との間に、前記メインポールを前記他のポールよりも半径方向の外側へ大きく押し出せるよう互いの当接面のうちの一方を他方に向け
て膨出させる膨出部を有する乗物用シートリクライニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートリクライニング装置であって、
前記膨出部が、前記メインポールと前記押圧部との各当接面のそれぞれに形成される乗物用シートリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートリクライニング装置に関する。詳しくは、シートバックの傾斜角度を調節するための乗物用シートリクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートリクライニング装置として、シートバックの背凭れ角度を一定のピッチ角度で調節可能な有段式のロック機構を備えたものが知られている(特許文献1)。上記乗物用シートリクライニング装置は、シートバックをシートクッションに対して背凭れ角度調節可能なように連結する継手装置として構成されている。具体的には、乗物用シートリクライニング装置は、互いに相対回転可能な形に組み付けられた略円板状の金属部材から成るラチェット及びガイドと、これらの相対回転をロックするロック機構と、を備える。
【0003】
上記ロック機構は、上記ガイドにセットされた複数のポールがラチェットの外周部に形成された内周歯に付勢により押し付けられて噛合されることにより、ラチェットとガイドとの相対回転をロックする構成とされる。上記各ポールは、ガイドにより回転方向の両側から支持されて、半径方向の内外方にのみ移動可能となるように案内されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各ポールの摺動性を確保するためには、各ポールとこれらを回転方向の両側から支持するガイドの各ガイド壁との間に、僅かな回転方向の隙間を設定する必要がある。しかし、上記の隙間が大きいと、各ポールが各ガイド壁の間で傾くなどのガタを生じるおそれがある。そこで、本発明は、ポールの摺動性の確保とガタの抑制との両立が可能な乗物用シートリクライニング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の乗物用シートリクライニング装置は次の手段をとる。
【0007】
すなわち、本発明は、乗物用シートリクライニング装置であって、互いに相対回転可能なように軸方向に組み付けられるラチェット及びガイドと、ガイドに設けられた一対のガイド壁により回転方向の両側から支持され、半径方向の外側へ押される移動によりラチェットと噛合しラチェットとガイドとの間の相対回転をロックする回転方向に並ぶ複数のポールと、複数のポールを半径方向の内側から外側へと押し動かすカムと、を有する。複数のポールのうちの1つは、カムにより押し動かされることで一対のガイド壁の双方に当てられる回転方向のガタ詰め構造を備えたメインポールとされる。メインポールとメインポールを半径方向の内側から押圧するカムの押圧部との間に、メインポールを他のポールよりも半径方向の外側へ大きく押し出せるよう互いの当接面のうちの一方を他方に向けて膨出させる膨出部を有する。
【0008】
上記構成によれば、膨出部により、回転方向のガタ詰め構造を備えたメインポールを他のポールよりも先にラチェットと噛合させることができる。したがって、各ポールと各ガイド壁との間に摺動性を確保するための隙間を設けても、各ポールをラチェットに対して適切にガタ詰めした状態に噛合させることができる。
【0009】
また、本発明は、更に次のように構成されていても良い。メインポールが、膨出部により他のポールよりも先にラチェットの内歯に外歯が入り込むよう押し出される。
【0010】
上記構成によれば、メインポールをより確実にラチェットと噛合させることができる。
【0011】
また、本発明は、更に次のように構成されていても良い。メインポールのガタ詰め構造が、メインポールを半径方向の内側からの押圧により一対のガイド壁の間で回転方向に傾かせて一対のガイド壁の双方に当ててガタ詰めする構造から成る。
【0012】
上記構成によれば、メインポールが、他のポールがラチェットに噛合してからではガタ詰めされにくい傾きタイプの構成であっても、同メインポールをラチェットに対して適切にガタ詰めした状態に噛合させることができる。
【0013】
また、本発明は、更に次のように構成されていても良い。膨出部が、メインポールと押圧部との各当接面のそれぞれに形成される。
【0014】
上記構成によれば、メインポール或いは押圧部のうちの一方にのみ膨出部を形成する構成と比べて、各々に形成する膨出部の大きさを抑制することができる。それにより、各々の基本構造が大きく崩れることを抑制し、強度低下等の不具合を生じさせにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る乗物用シートリクライニング装置が適用された乗物用シートの概略構成を表した斜視図である。
【
図4】乗物用シートリクライニング装置の分解斜視図である。
【
図6】乗物用シートリクライニング装置の外側面図である。
【
図7】乗物用シートリクライニング装置の内側面図である。
【
図8】乗物用シートリクライニング装置の前側面図である。
【
図10】乗物用シートリクライニング装置のロック状態を表した
図8のX-X線断面図である。
【
図11】乗物用シートリクライニング装置のアンロック状態を表した
図10に対応する断面図である。
【
図12】
図11からラチェットがフリー領域へと回された状態を表した断面図である。
【
図13】
図12から乗物用シートリクライニング装置のロック動作が阻止される状態を表した断面図である。
【
図14】ラチェットがロック領域の始端位置へと回された状態を表した断面図である。
【
図16】回転カムが付勢によりガイド壁に押し当てられる状態を表した断面図である。
【
図17】ラチェットの回転位置の変化に伴う各ポールのロック動作の変化を(a)~(d)の場合に分けて表した断面図である。
【
図18】
図17の(a)~(d)における各ポールの乗り上がり突起とラチェットの突出部との位置関係を表した模式図である。
【
図21】シートバックの角度調節範囲を表した側面図である。
【
図22】
図21における乗物用シートリクライニング装置の状態を表した内側面図である。
【
図25】シートバックがトルソアングルから後倒しされた状態を表した側面図である。
【
図26】
図25における乗物用シートリクライニング装置の状態を表した内側面図である。
【
図28】
図26のXXVIII-XXVIII線断面図である。
【
図29】シートバックがトルソアングルから前倒しされた状態を表した側面図である。
【
図30】
図29における乗物用シートリクライニング装置の状態を表した内側面図である。
【
図34】特定のポールのラチェットに対する噛合状態を拡大して表した
図10のXXXIV部拡大図である。
【
図35】第1突起がガイド壁に当たった噛合状態を表した
図34に対応する断面図である。
【
図36】
図35から第2突起がガイド壁と当たる位置までラチェットが図示反時計回り方向に回転した状態を表した断面図である。
【
図37】
図34のXXXVII部の各当接面を拡大して表した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
《シートリクライニング装置4(乗物用シートリクライニング装置)の概略構成について》
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートリクライニング装置4の構成について、
図1~
図37を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、後述するシート1の左右方向を指すものとする。
【0018】
本実施形態に係るシートリクライニング装置4は、
図1に示すように、自動車の右側座席を成すシート1に適用されている。上記シートリクライニング装置4は、シート1の背凭れ部を成すシートバック2を着座部を成すシートクッション3に対して角度調節可能なように連結するリクライニング調節機構として構成されている。具体的には、シートリクライニング装置4は、シートバック2とシートクッション3との間に左右一対で設けられている。各シートリクライニング装置4は、各々が一斉にロック・アンロックの各状態に切り換えられることで、シートバック2の背凭れ角度を固定したり解除したりする構成とされる。
【0019】
詳しくは、
図2~
図3に示すように、シートリクライニング装置4は、シートバック2の左右の側部骨格を成す各サイドフレーム2Fの下端部と、これらのシート幅方向の外側に位置するシートクッション3の左右の側部骨格の後端部に連結された各リクライニングプレート3Fと、の間にそれぞれ介設され、これらを互いに同軸まわりに相対回転させたり回転止めしたりすることのできる状態に連結している。
【0020】
図1に示すように、シートリクライニング装置4は、常時は、シートバック2の背凭れ角度を固定したロック状態に保持されている。上記シートリクライニング装置4は、シートクッション3の車両外側(右側)の側部に設けられたリクライニングレバー5が使用者により引き上げられる操作(
図1の丸付き数字1)によって、それらのロック状態が一斉に解除される。それにより、シートリクライニング装置4は、シートバック2の背凭れ角度をシート前後方向に調節することの可能なアンロック状態へと切り換えられる。上記シートリクライニング装置4は、上述したリクライニングレバー5の操作が戻されることにより、付勢により再びロック状態へと戻される。
【0021】
上記シートバック2の左右のサイドフレーム2Fとそれらの外側に位置する各リクライニングプレート3Fとの間には、それぞれ、シートバック2に前倒れ回転させる方向のバネ付勢力を掛けるリターンスプリング6が掛着されている。これらリターンスプリング6の回転付勢力により、シートバック2は、シートリクライニング装置4による背凭れ角度の固定状態が解かれることで、着座乗員の背部に当たる位置まで起こし上げられる。
【0022】
そして、シートバック2は、着座乗員の背部が前後に傾動される動きに合わせて、その背凭れ角度が前後に自由に調節される(
図1の丸付き数字2)。このように、シートバック2に前回転方向の付勢力を作用させるリターンスプリング6の設定により、シートバック2の背凭れ角度の調節を簡便に行うことができる。具体的には、シートバック2は、
図21に示すように、シートクッション3の上面に畳み込まれる前倒れ位置Paと、後側に略水平状に傾倒される後倒れ位置Pcと、の間の約180度の回転領域をシート前後方向に回動できるようになっている。
【0023】
上記シートバック2を前倒れ位置Paに係止させる構造は、シートバック2の各サイドフレーム2Fの外側面部に結合された各係止板2Fcが、各リクライニングプレート3Fの前側の縁部に突出形成された各前側ストッパ3Fcに当たって係止される構造から成る。また、シートバック2を後倒れ位置Pcに係止させる構造は、シートバック2の各サイドフレーム2Fの外側面部に結合された各係止板2Fcが、各リクライニングプレート3Fの後側の縁部に突出形成された各後側ストッパ3Fdに当たって係止される構造から成る。
【0024】
ここで、上述したシートバック2の回転領域のうち、シートバック2の背凭れ角度が略垂直状に起立した初段のロック位置Pbから後倒れ位置Pcまでの約90度の回転領域は、リクライニングレバー5の引き上げ操作が解かれることでシートバック2の背凭れ角度が固定された状態に戻される「ロック領域A1」とされている。また、シートバック2の背凭れ角度が上記初段のロック位置Pbから前倒れ位置Paまでの約90度の回転領域は、リクライニングレバー5の引き上げ操作が解かれてもシートバック2の角度が固定されることなく解除状態(ロックが無効となる状態)のまま保持される「フリー領域A2」とされている。
【0025】
上述したロック領域A1とフリー領域A2は、それぞれ、後述するシートリクライニング装置4の備える機能により構成される。上記フリー領域A2の設定により、シートバック2は、シート1に人が座っていない状態でリクライニングレバー5が操作されてフリー領域A2に入る位置まで前に倒されたら、そこからはリクライニングレバー5の操作を継続しなくても、前倒れ位置Paまで勝手に倒されるようになっている。
【0026】
上述したシートリクライニング装置4は、具体的には、
図2~
図3に示すように、シートバック2の各側のサイドフレーム2Fの外側面部に一体的に結合されるラチェット10(
図2参照)と、各側のリクライニングプレート3Fの内側面部に一体的に結合されるガイド20(
図3参照)と、を有する。上記シートリクライニング装置4は、ラチェット10とガイド20とが互いの相対回転をロックされたり解除されたりするように切り換えられることで、シートバック2の背凭れ角度を固定したり解除したりする構成とされる。
【0027】
《シートリクライニング装置4の各部な構成について》
以下、上記左右一対のシートリクライニング装置4の各部の構成について、詳しく説明していく。なお、各シートリクライニング装置4は、互いに左右対称となる同一の構成となっている。したがって、以下では、これらを代表して、
図2~
図3に示されている車両外側(右側)に配置されたシートリクライニング装置4の構成について詳しく説明することとする。
【0028】
図4~
図5に示すように、シートリクライニング装置4は、互いに軸方向に組み付けられる略円板形状のラチェット10及びガイド20と、これらの間に組み付けられる3つのポール30及びこれらを半径方向の内外に移動操作する回転カム40と、を有する。更に、シートリクライニング装置4は、回転カム40をガイド20に対してロックの回転方向に付勢するロックスプリング50(スパイラルスプリング)と、ラチェット10とガイド20との外周部間に跨って装着される略円筒形状の外周リング60と、を有する。
【0029】
外周リング60は、ラチェット10とガイド20とを互いに軸方向に組み付けた状態に保持する保持部材として機能するものである。ここで、回転カム40が、本発明の「カム」に相当する。上記ラチェット10、ガイド20、3つのポール30、及び回転カム40は、それぞれ、プレス成形された後に焼き入れ処理されることにより、硬化されて構造強度が高められた構成とされる。
【0030】
《ラチェット10について》
図4に示すように、ラチェット10は、1枚の金属製の板状部材が略円板状の形にカットされると共に、所々が板厚方向(軸方向)に半抜き状に押し出される形に加工された構成とされる。具体的には、ラチェット10は、その円板本体11の外周縁部に、ガイド20への組み付け方向となる軸方向に段付き円筒状に2段階に突出する段付き円筒部が半抜き状に押し出されて形成された構成とされる。
【0031】
上記段付き円筒部の外周側の円筒部分は、内周面全域に内歯12Aが形成された円筒部12として形成される。また、内周側の円筒部分は、上記円筒部12よりも軸方向の突出長さが短い中間円筒部13として形成される。上記円筒部12の内歯12Aは、後述する各ポール30の外周面部に形成された各外歯31をそれぞれ半径方向の内側から噛合させることのできる歯面形状とされる。詳しくは、上記内歯12Aは、各歯面が回転方向に2度ピッチで等間隔に並ぶ形状とされる。
【0032】
また、中間円筒部13の内周面部には、ラチェット10の回転中心Cからの内径寸法や回転方向の長さが個々に設定された3つの領域(第1の領域13A、第2の領域13B及び第3の領域13C)と、各領域間の境界部にて半径方向の内側に突出する第1の凸部13D及び第2の凸部13Eと、が形成されている。
【0033】
上記第1の領域13A、第2の領域13B及び第3の領域13Cは、それぞれ、ラチェット10の回転中心Cまわりに描かれる円弧形状に湾曲した内周面形状に形成されている。詳しくは、
図10に示すように、第1の領域13Aと第3の領域13Cは、それぞれ、第2の領域13Bよりもひとまわり大きな内径寸法を有する同一径の内周面形状とされている。
【0034】
上記第1の領域13Aは、
図10、
図17(a)及び
図18(a)に示すように、ラチェット10の回転角度が後述する3つのポール30のうちの1つであるメインポールP1と回転方向に重なる配置となる時に、同メインポールP1の内歯12Aへの噛合を許容するロック領域A1を成す。その時、第2の領域13Bと第3の領域13Cは、それぞれ、残る2つのサブポールP2と回転方向に重なる配置とされて、これらサブポールP2の内歯12Aへの噛合を許容する逃がし領域A3とされる。ここで、各サブポールP2が、それぞれ、本発明の「他のポール」に相当する。
【0035】
一方、第2の領域13Bは、
図12に示すように、ラチェット10の回転角度がメインポールP1と回転方向に重なる配置となる時に、
図13、
図17(b)及び
図18(b)に示すように、メインポールP1の内歯12Aへの噛合を内周面上に乗り上がらせて食い止めるフリー領域A2を成す。その時、第3の領域13Cと第1の領域13Aは、それぞれ、残る2つのサブポールP2と回転方向に重なる配置とされて、これらサブポールP2の移動を逃がす逃がし領域A3とされる。
【0036】
すなわち、上記ラチェット10の中間円筒部13は、
図10に示すように、その第1の領域13AにおいてメインポールP1のロック作動を許容し、
図12~
図13に示すように、その第2の領域13BにおいてメインポールP1のロック作動を食い止める構成とされる。各ポール30は、
図10に示すように、メインポールP1のロック作動が許容される時には、残る2つのサブポールP2のロック作動も許容される。また、各ポール30は、
図12~
図13に示すように、メインポールP1のロック作動が食い止められることで、残る2つのサブポールP2のロック作動も食い止められる。
【0037】
このように、ラチェット10の中間円筒部13は、上記第1の領域13Aと第2の領域13Bとによって、メインポールP1のロック許容/阻止の制御を行う。そして、第1の領域13Aがロック領域A1として機能する時(
図10参照)には、その他の2つの領域(第2の領域13Bと第3の領域13C)は、それぞれ、残る2つのサブポールP2のロック作動を許容する逃がし領域A3として機能する。また、第2の領域13Bがフリー領域A2として機能する時(
図13参照)には、その他の2つの領域(第1の領域13Aと第3の領域13C)は、それぞれ、残る2つのサブポールP2の移動を逃がす逃がし領域A3として機能する。
【0038】
第1の凸部13Dと第2の凸部13Eは、
図17(c)及び
図18(c)に示すように、メインポールP1がラチェット10の回転によりロック領域A1(第1の領域13A)からフリー領域A2(第2の領域13B)へと移行する際に、半径方向の外側への押し出しが中途半端な状態で第1の領域13Aと第2の領域13Bとの間の段差に回転方向に突き当たってしまった場合に、他の2つのサブポールP2をそれぞれ回転方向に同時に突き当てさせられる位置に形成されている。上記各サブポールP2も同時に突き当てさせることにより、メインポールP1が段差に突き当たった際に受ける負荷を、他の2つのサブポールP2にも分散させることができる。
【0039】
具体的には、第1の凸部13Dと第2の凸部13Eは、ラチェット10の回転によりメインポールP1の乗り上がり突起34が第1の領域13Aと第2の領域13Bとの間の段差に回転方向に突き当てられる時に、残る2つのサブポールP2の乗り上がり突起34とそれぞれ同じ回転方向に突き当てられる位置に形成されている。各乗り上がり突起34の構成については、後に詳述する。
【0040】
上記第2の凸部13Eは、
図14、
図17(d)及び
図18(d)に示すように、ロック領域A1(第1の領域13A)上の回転方向の始端側、すなわちロック領域A1のフリー領域A2(第2の領域13B)と隣る側とは反対側の端部に突出して形成されている。上記第2の凸部13Eは、
図21に示すように、シートバック2がロック領域A1の始端、すなわち後倒れ位置Pcへと倒された時に、
図14、
図17(d)及び
図18(d)に示すように、メインポールP1の乗り上がり突起34と回転方向の配置が重なり得る位置に形成されている。
【0041】
その理由は、次の通りである。すなわち、シートバック2は、
図21に示すように、後倒れ位置Pcへと倒された時には、前述した係止板2Fcがリクライニングプレート3Fの後側ストッパ3Fdと当たって係止される。その際、シートリクライニング装置4及びその周辺部品の建て付けにより、上記係止板2Fcがリクライニングプレート3Fの後側ストッパ3Fdと当たるよりも先に、
図14で示したメインポールP1の乗り上がり突起34が第2の凸部13Eと回転方向に突き当たることがあると、シートリクライニング装置4に大きな負荷が掛かる。そこで、このようなことが起こらないよう、第2の凸部13Eには、メインポールP1の乗り上がり突起34との回転方向の突き当たりを逃がす逃がし凹部13E1が形成されている。
【0042】
上記逃がし凹部13E1は、
図33に示すように、第2の凸部13Eの図示時計回り方向側の角部が略矩形状に肉抜きされた形に形成されている。上記逃がし凹部13E1は、上記建て付けによる寸法ばらつきにより、
図21に示すようにシートバック2が後倒れ位置Pcへと倒されて係止板2Fcがリクライニングプレート3Fの後側ストッパ3Fdに当たって係止される時に、
図33に示すようにメインポールP1の乗り上がり突起34が第2の凸部13Eと回転方向に重なる配置となったとしても、同乗り上がり突起34を第2の凸部13Eと回転方向に突き当てさせないように受け入れる。詳しくは、上記逃がし凹部13E1は、上記乗り上がり突起34を、その図示反時計回り方向側の側面との間に回転方向の隙間Yを持たせた状態として受け入れるようになっている。
【0043】
上記逃がし凹部13E1は、その内部に入り込んだメインポールP1の乗り上がり突起34が半径方向の外側に押し出された際には、同乗り上がり突起34をその内周面上に乗り上がらせて、メインポールP1のラチェット10の内歯12Aへの噛合を阻止する。それにより、メインポールP1の乗り上がり突起34が逃がし凹部13E1内に入り込んだ位置(ロック領域A1を越えた回転位置)でメインポールP1がロックされることを阻止される。
【0044】
図4~
図5に示すように、ラチェット10の円板本体11の中心部(回転中心C上の位置)には、丸孔形状に貫通した貫通孔11Aが形成されている。この貫通孔11Aには、後述する回転カム40の中心部(回転中心C上の位置)に差し込まれて装着される操作ピン5Aが、軸方向の外側から回転フリーな状態に挿通されるようになっている。
【0045】
上記ラチェット10は、
図3に示すように、その円板本体11の外側面がシートバック2のサイドフレーム2Fの外側面に面当接される形にセットされて、互いの当接箇所が溶接されることによりシートバック2のサイドフレーム2Fに一体的に結合されている。具体的には、上記ラチェット10は、その円板本体11の外側面上に突出して形成された3つのダボ14が、シートバック2のサイドフレーム2Fに形成された対応する3つの嵌合孔2Fa内にそれぞれ嵌合されて、円板本体11の外側面がサイドフレーム2Fの外側面上に面当接した状態にセットされている。
【0046】
そして、上記ラチェット10は、上記各嵌合箇所の周囲領域(結合領域A4)がそれぞれサイドフレーム2Fにレーザ溶接されて結合されている。各ダボ14は、
図5に示すように、中間円筒部13の第1の領域13Aと第2の領域13Bと第3の領域13Cとが位置する回転方向の各領域上にそれぞれ1つずつ形成されている。各ダボ14は、それぞれ、ラチェット10の回転中心Cまわりに湾曲する円弧形状に湾曲した形に形成されている。
【0047】
上記ラチェット10の円板本体11の外側面上における各ダボ14の半径方向の外側の領域は、上記サイドフレーム2Fに面当接した状態に当てられてレーザ溶接される結合領域A4とされる。各結合領域A4は、
図7に示すように、それらの外周縁部に形成された中間円筒部13の凹凸形状により、第1の領域13Aと第3の領域13Cとが位置する各箇所の結合領域A4の方が、第2の領域13Bが位置する箇所の結合領域A4よりも半径方向の寸法が拡張された拡張面部11Bを有する構成とされている。
【0048】
すなわち、中間円筒部13に形成された第1の領域13Aと第3の領域13Cとは、前述したように、第2の領域13Bよりも半径方向の外側に拡径された形状とされる。それにより、第1の領域13Aと第3の領域13Cとが形成された各箇所の結合領域A4の方が、第2の領域13Bが形成された箇所の結合領域A4よりも、半径方向の寸法が拡張された構成とされる。上記構成により、ラチェット10の円板本体11の外側面は、第1の領域13Aと第3の領域13Cとが形成された各箇所の拡張面部11Bを有する2つの結合領域A4が、サイドフレーム2Fに対して半径方向の外側へより広く当てられた状態として強固に溶接されるようになっている。
【0049】
上記ラチェット10のサイドフレーム2Fに対する溶接は、各ダボ14を半径方向の外側から回転方向の両サイド領域に跨ってC字状に囲い込むように溶接ビードが入れられる形で行われる。
図3に示すように、上記サイドフレーム2Fには、ラチェット10の中心部(回転中心C上の位置)に形成された貫通孔11Aと軸方向に対向する位置に、丸孔形状に貫通する通し孔2Fbが形成されている。上記通し孔2Fbには、ラチェット10の貫通孔11Aに通される操作ピン5Aが軸方向に貫通して通されるようになっている。
【0050】
《ガイド20について》
図5に示すように、ガイド20は、1枚の金属製の板状部材が上記ラチェット10よりもひとまわり大きな外径をもつ略円板状の形にカットされると共に、所々が板厚方向(軸方向)に半抜き状に押し出される形に加工された構成とされる。具体的には、ガイド20は、その円板本体21の外周縁部に、ラチェット10への組み付け方向となる軸方向に円筒状に突出する円筒部22が半抜き状に押し出されて形成された構成とされる。
【0051】
上記円筒部22は、その内径寸法がラチェット10の円筒部12の外径寸法よりも僅かに大きな形となるように形成されている。詳しくは、上記円筒部22は、その半径方向の肉厚が、後述する外周リング60の板厚よりも薄い形に形成された構成とされる(
図15参照)。より詳しくは、上記円筒部22は、その外周面が後述する外周リング60の段差部63の外周面よりも半径方向の内側に位置する程度に半径方向の肉厚が薄くされた構成とされる。上記ガイド20は、
図9に示すように、その円筒部22内にラチェット10の円筒部12が軸方向に緩やかに嵌合する形にセットされる。
【0052】
それにより、ガイド20は、ラチェット10との間で互いの円筒部22,12同士が半径方向の内外に緩やかに嵌まり合った状態として、互いに相対回転可能に内外に支え合った状態に組み付けられる。そして、ガイド20は、その円筒部22とラチェット10の円筒部12との間に後述する外周リング60が外周側から跨る形に装着されることで、同外周リング60を介してラチェット10に対して軸方向に外れ止めされた状態に組み付けられる(
図2~
図3及び
図6~
図9参照)。
【0053】
図5に示すように、ガイド20の円板本体21の内側面上には、その回転方向の3箇所の位置に、ラチェット10への組み付け方向となる軸方向に略扇形状に突出するガイド壁23が半抜き状に押し出されて形成されている。これらガイド壁23は、それらの半径方向の外側の外周面が、ガイド20の回転中心Cまわりに描かれる同一円周上の円弧を描く形に湾曲した形状とされる。各ガイド壁23は、上記ガイド20の円筒部22内に組み付けられるラチェット10の円筒部12内に緩やかに嵌まり込んだ状態にセットされる。
【0054】
上記各ガイド壁23の形成により、ガイド20の円板本体21の内側面上には、その各ガイド壁23の回転方向の配置間領域に、後述する3つのポール30をそれぞれ1つずつ半径方向の内外にのみ摺動させられる形にセットすることのできる凹状のポール収容溝24Aが形成されている。また、各ガイド壁23によって囲まれた円板本体21の内側面上の中央領域には、後述する回転カム40を軸回転可能な形にセットすることのできるカム収容溝24Bが形成されている。
【0055】
各ガイド壁23は、
図10~
図11に示すように、各ポール収容溝24A内にセットされた対応する各ポール30を、各々の各ポール収容溝24A内に臨む回転方向の両サイド面である各規制面23Aによって回転方向の両側から支持する。それにより、各ガイド壁23は、各ポール30を半径方向の内外方にのみ摺動させられるよう回転方向の両側からガイドした状態となる。
【0056】
また、各ガイド壁23は、上記カム収容溝24B内にセットされた回転カム40を、カム収容溝24B内に臨む半径方向の内周面である支持面23Bによって半径方向の外側から支持する。それにより、各ガイド壁23は、回転カム40をガイド20の円板本体21上の略中心(回転中心C)位置にて回転可能とするよう半径方向の外側からガイドした状態となる。
【0057】
また、ガイド20の円板本体21の中心部(回転中心C上の位置)には、後述するロックスプリング50が内部にセットされる略丸孔形状の貫通孔21Aが軸方向に貫通して形成されている。上記貫通孔21Aには、その孔形状を半径方向の外側に向けて細長く延出させる掛入れ孔21Aaが形成されている。上記掛入れ孔21Aaには、上記貫通孔21A内にセットされるロックスプリング50の外側の端部52が軸方向に嵌め込まれて回転方向に一体的な状態にセットされる。
【0058】
上記ガイド20は、
図2に示すように、その円板本体21の外側面がリクライニングプレート3Fの内側面に面当接される形にセットされて、互いの当接箇所が溶接されることによりリクライニングプレート3Fに一体的に結合されている。具体的には、上記ガイド20は、その円板本体21の外側面上に突出して形成された3つのダボ21Bが、リクライニングプレート3Fに形成された対応する3つの嵌合孔3Fa内にそれぞれ嵌合されて、円板本体21の外側面がリクライニングプレート3Fの内側面上に面当接した状態にセットされている。
【0059】
そして、上記ガイド20は、上記各嵌合箇所の周囲領域がそれぞれリクライニングプレート3Fにレーザ溶接されて結合されている。各ダボ21Bは、
図4に示すように、円板本体21の外側面上における各ポール収容溝24A(
図5参照)の裏側の領域上にそれぞれ1つずつ軸方向に浮島状に押し出された形となって形成されている。
図2に示すように、上記リクライニングプレート3Fには、ガイド20の中心部(回転中心C上の位置)に形成された貫通孔21Aと軸方向に対向する位置に、丸孔形状に貫通する通し孔3Fbが形成されている。上記通し孔3Fbには、ガイド20の貫通孔21Aに通される操作ピン5Aが軸方向に貫通して通されるようになっている。
【0060】
《ポール30について》
図4~
図5に示すように、3つのポール30は、それぞれ、1枚の金属製の板状部材が略矩形状の形にカットされると共に、所々が板厚方向(軸方向)に半抜き状に押し出される形に加工された構成とされる。具体的には、各ポール30は、それらの半径方向の略内側半分の領域を成すオフセット面部30Bが、半径方向の略外側半分の領域を成す本体面部30Aに対して、ラチェット10への組み付け方向となる軸方向に略板厚相当分だけ半抜き状に押し出された形状とされる。
【0061】
上記3つのポール30は、概ね同じような形状とされているが、そのうちの1つがメインポールP1として、他の2つのサブポールP2とは異なる機能を備えた構成とされる。その具体的な構成については、後に詳述することとする。以下、各ポール30に共通する各部の具体的な構成について説明する。
【0062】
各ポール30は、それぞれ、
図10~
図11に示すように、ガイド20の円板本体21の内側面上に形成された各ポール収容溝24A内にそれぞれ1つずつ収められた状態にセットされる。上記セットにより、各ポール30は、各ポール収容溝24Aに回転方向の両側から臨む各ガイド壁23の規制面23Aによって回転方向の両側から面状に支持された状態とされる。それにより、各ポール30は、これらの規制面23Aに沿って半径方向の内外方にのみ移動可能となるように支持された状態とされる。
【0063】
詳しくは、各ポール30は、
図9に示すように、各ポール収容溝24A(
図5参照)内にセットされた状態では、それらの本体面部30Aがガイド20の円板本体21の内側面上に当接した状態にセットされる。それにより、各ポール30は、それらの本体面部30Aの半径方向の外側の位置に、ガイド20の円筒部22内にセットされたラチェット10の円筒部12の内歯12Aが半径方向に対面する状態にセットされる。また、各ポール30のオフセット面部30Bは、ガイド20の円板本体21の内側面上から軸方向に離間した状態にセットされて、ラチェット10の中間円筒部13と軸方向の配置が重なる状態にセットされる。
【0064】
図4に示すように、各ポール30の本体面部30Aの半径方向の外側の外周面には、半径方向の外側に歯面を向ける外歯31が回転方向の全域に亘って連続的に並ぶ形に形成されている。これら外歯31が形成された各ポール30の外周面は、前述したラチェット10の内歯12Aが形成された円筒部12の内周面形状に沿って湾曲する凸湾曲面形状とされている。
【0065】
各ポール30の外歯31は、これらの噛合するラチェット10の内歯12Aと同様に、各歯面が回転方向に2度ピッチで等間隔に並ぶ形状とされている。上記構成により、各ポール30の外歯31は、
図10に示すように、ラチェット10の内歯12Aに半径方向の内側から押し込まれることで、全体が内歯12Aに噛合されるようになっている。しかし、厳密には、
図34に示すように、各ポール30の外歯31は、それらの回転方向の中央の歯面がラチェット10の内歯12Aに最も深く入り込む形に噛合し、そこから回転方向の両端側に向かって、内歯12Aに対する入り込みが漸次浅くなっていくよう歯丈が小さくなっていく構成とされている。
【0066】
それにより、各ポール30は、ラチェット10の内歯12Aに噛合する際、半径方向の外側に真っ直ぐ押し出されても、各外歯31の全ての歯面が内歯12Aの歯面につかえることなく、内歯12Aに適切に噛合できるようになっている。すなわち、各ポール30の外歯31は、それらの中央の歯面は噛合移動の進行方向に向かって真っ直ぐ歯面を向けた構成とされる。
【0067】
しかし、上記外歯31の中央の歯面から回転方向の両端側に向かって並ぶその他の歯面は、上記中央の歯面に対して回転方向に斜めに歯面を向ける構成とされる。そのため、各ポール30が半径方向の外側に押し出された際には、中央の歯面はラチェット10の内歯12Aの対応する歯面に向けて真っ直ぐ進むが、その他の歯は、内歯12Aの対応する歯面に向かって斜めの角度で入り込むこととなる。
【0068】
しかしながら、上述したように、外歯31の歯面が、中央の歯面から回転方向の両端側の歯面に向かって歯丈が漸次小さくなっていく形状とされていることで、中央の歯面以外の歯面が内歯12Aの歯面に対して斜めの角度で入り込んでも、内歯12Aの歯面に突き当てられることなく、内歯12Aの歯面に入り込んだ状態(噛合状態)をとることができる。なお、上記外歯31の歯面形状は、特開2015-29635号公報等の文献に開示されたものと同一のものとなっているため、詳細な説明を省略することとする。
【0069】
図9に示すように、各ポール30の本体面部30Aの内周側の領域には、ガイド20の中心部にセットされた後述する回転カム40が半径方向に対向する形にセットされる。上記セットにより、各ポール30は、各々の本体面部30Aが回転カム40と半径方向に対向し、かつ、各々のオフセット面部30Bが回転カム40と軸方向に対向した状態として設けられる。
【0070】
図5に示すように、各ポール30の本体面部30Aの内周面部には、上述した回転カム40と半径方向に対面して、回転カム40の回転に伴って半径方向の内側から外側へと押圧される被押圧面部32が形成されている。また、各ポール30のオフセット面部30Bの中間部には、回転カム40の対応する各箇所に形成された各引込みピン42が軸方向に差し込まれて、回転カム40の回転に伴って半径方向の内側へと引き込まれるように操作される引込み孔33が軸方向に貫通して形成されている。また、各ポール30の本体面部30Aの中間部には、オフセット面部30Bの押し出し方向と同一方向に突出する乗り上がり突起34が形成されている。
【0071】
上述した各ポール30の被押圧面部32は、
図10に示すように、回転カム40がガイド20との間に掛着されたロックスプリング50のバネ附勢力によって図示反時計回り方向に回されることにより、同回転カム40の外周面部に形成された対応する各押圧部44によって半径方向の内側から外側へと押圧される。それにより、各ポール30は、それらの外歯31がラチェット10の内歯12Aに押し付けられて噛合され、その状態(ロック状態)に保持される。
【0072】
それにより、各ポール30がラチェット10に対して回転方向に一体的に結合された状態となり、各ポール30を介してラチェット10とガイド20との間の相対回転がロックされた状態となる。また、各ポール30の半径方向の押し付けに伴う噛合を介して、ラチェット10とガイド20とが互いに半径方向にもガタ詰めされた状態にロックされる。
【0073】
また、各ポール30の引込み孔33は、
図11に示すように、回転カム40がリクライニングレバー5の操作によりロックスプリング50のバネ附勢力に抗した図示時計回り方向へと回されることにより、回転カム40の対応する各引込みピン42によって半径方向の内側へと引き込まれる。それにより、各ポール30は、それらの外歯31がラチェット10の内歯12Aとの噛合状態から外され、その状態(アンロック状態)に保持される。それにより、ラチェット10とガイド20との間の回転ロック状態が解除される。
【0074】
また、各ポール30の乗り上がり突起34は、
図9に示すように、各ポール30のオフセット面部30Bと略同一位置まで軸方向(図示右方向)に半抜き状に押し出されて、それらの外周面部34Aがラチェット10の中間円筒部13の内周面と半径方向に対面した状態にセットされる。これら各ポール30の乗り上がり突起34は、
図10、
図17(a)及び
図18(a)に示すように、ラチェット10のガイド20に対する回転位置が前述したロック領域A1となる状態の時には、各ポール30が回転カム40によって半径方向の外側に押し出されても、ラチェット10の中間円筒部13の内周面上には押し当てられずに、各ポール30がラチェット10の内歯12Aと噛合する動きを阻害しない。
【0075】
しかし、各ポール30の乗り上がり突起34は、
図13、
図17(b)及び
図18(b)に示すように、ラチェット10のガイド20に対する回転位置が前述したフリー領域A2の状態へと移行することにより、各ポール30が回転カム40によって半径方向の外側へと押し出されることで、ラチェット10の中間円筒部13の内周面上に押し当てられて、各ポール30がラチェット10の内歯12Aに噛合する動きを途中で食い止める。以下、上記構成について詳しく説明する。
【0076】
各ポール30の乗り上がり突起34は、メインポールP1と他の2つのサブポールP2とでは、ガイド20の中心部(回転中心C上の位置)からそれらの外周面部34Aまでの半径方向の寸法、すなわち半径方向の形成位置が互いに異なる構成とされる。具体的には、メインポールP1の乗り上がり突起34が、他の2つのサブポールP2の乗り上がり突起34よりも半径方向の外側に大きく張り出した位置に形成されている。
【0077】
上記メインポールP1の乗り上がり突起34は、
図10、
図17(a)及び
図18(a)に示すように、前述したラチェット10の中間円筒部13の第1の領域13A(ロック領域A1)と回転方向に重なる配置となる時には、回転カム40によって半径方向の外側に押し出されても、第1の領域13A上に乗り上がる位置までは押し出されず、メインポールP1がラチェット10の内歯12Aと噛合する動きを阻害しない。
【0078】
その際、他の2つのサブポールP2の乗り上がり突起34も、回転カム40によって半径方向の外側に押し出されても、これらの位置する第2の領域13B及び第3の領域13C上に乗り上がる位置までは押し出されず、各サブポールP2がラチェット10の内歯12Aと噛合する動きを阻害しない。すなわち、2つのサブポールP2は、メインポールP1の乗り上がり突起34よりも半径方向の内側の位置に形成されている。そのため、2つのサブポールP2は、これらが第1の領域13Aよりも半径方向の内側に張り出す第2の領域13B(逃がし領域A3)及び第3の領域13C(逃がし領域A3)と回転方向に重なる配置となったとしても、回転カム40によって半径方向の外側に押し出された際に第2の領域13B及び第3の領域13C上にそれぞれ乗り上がる位置までは押し出されない。
【0079】
また、
図13、
図17(b)及び
図18(b)に示すように、メインポールP1の乗り上がり突起34は、前述したラチェット10の中間円筒部13の第2の領域13B(フリー領域A2)と回転方向に重なる配置となる時には、回転カム40によって半径方向の外側に押し出されることで、第2の領域13B上に乗り上がり、メインポールP1がラチェット10の内歯12Aと噛合する動きを途中で食い止める。
【0080】
その際、他の2つのサブポールP2の乗り上がり突起34は、対応する第3の領域13C(逃がし領域A3)及び第1の領域13A(逃がし領域A3)とそれぞれ回転方向に重なる配置となっても、回転カム40によって半径方向の外側に押し出された際にこれら第3の領域13C(逃がし領域A3)及び第1の領域13A(逃がし領域A3)上に乗り上がる位置までは押し出されず、各サブポールP2の半径方向の外側への移動を食い止めないようになっている。そのような構成であっても、各サブポールP2は、メインポールP1の移動が途中で食い止められることで、回転カム40の回転が途中で食い止められるため、それ以上、半径方向の外側へ押し出されなくなり、メインポールP1と共にラチェット10の内歯12Aへの噛合移動が途中で阻止されたアンロック状態として保持される。
【0081】
ところで、各ポール30は、
図4~
図5及び
図19~
図20に示すように、それらの乗り上がり突起34とオフセット面部30Bとが、本体面部30Aから互いに同一の軸方向に半抜き状に押し出されて形成されている。上記各ポール30のオフセット面部30Bの成形に際しては、その成形面に精度を持たせる精度管理面Qが、各ポール30のオフセット面部30Bの外周面部にではなく、本体面部30Aの内周面部(被押圧面部32)に設定されている。それにより、各ポール30は、それぞれの被押圧面部32が精度良く形成された構成とされている。
【0082】
また、各ポール30の乗り上がり突起34の成形に際しては、その成形面に精度を持たせる精度管理面Qが、それらの半径方向の外側に面を向ける外周面部34Aに設定されて形成されている。それにより、各ポール30は、それらの外周面部34Aが精度良く形成された構成とされている。このように、各ポール30は、各々のオフセット面部30Bと乗り上がり突起34とが、互いに半径方向に離間して並ぶように本体面部30Aから半抜き状に押し出されて形成されていることにより、上記のように精度管理面Qを互いに表裏別々の側に設定して成形面の精度を出せるようになっている。
【0083】
上記各ポール30の被押圧面部32は、それらの乗り上がり突起34の形成箇所から回転方向の両側に外れた領域が、
図4で前述した回転カム40の対応する各押圧部44によって半径方向の内側から押圧される構成とされる。そのため、各ポール30の被押圧面部32は、それらの乗り上がり突起34と回転方向の配置が重ならない両側の領域に、上述した精度管理面Qが設定されており、乗り上がり突起34と回転方向の配置が重なる領域には精度管理面Qが設定されていない構成とされる。そのような構成とされていることにより、各ポール30のオフセット面部30Bと乗り上がり突起34とが互いに回転方向に重なる配置となっていても、各々に精度管理面Qを適切に設定して各成形面を精度良く成形することができるようになっている。
【0084】
《回転カム40について》
回転カム40は、
図5に示すように、1枚の金属製の板状部材が略円板状の形にカットされると共に、所々が板厚方向(軸方向)に半抜き状に押し出される形に加工された構成とされる。上記回転カム40は、ガイド20の円板本体21の内側面上に形成されたカム収容溝24B内に収容された状態としてセットされる。上記回転カム40は、
図9に示すように、上記各ポール30と略同一の板厚を有した形状とされる。
【0085】
上記回転カム40は、上記ガイド20の円板本体21の内側面と各ポール30の軸方向に半抜き状に押し出されたオフセット面部30Bとの間に軸方向に挟まれる形にセットされる。それにより、回転カム40は、各ポール30の本体面部30Aの内周面部である被押圧面部32によって、半径方向の外側から覆われた状態にセットされる。
【0086】
図5に示すように、回転カム40の中心部(回転中心C上の位置)には、前述した操作ピン5Aが軸方向の内側から差し込まれて回転方向に一体的に連結される貫通孔41が形成されている。上記操作ピン5Aは、回転カム40の貫通孔41内に軸方向の内側から外側へと貫通して差し込まれて、その先で、
図1で前述したリクライニングレバー5と一体的に接続されている。上記組み付けにより、操作ピン5Aは、リクライニングレバー5の引き上げ操作に伴って回転カム40を一体的に回転させるようになっている。
【0087】
上記操作ピン5Aは、
図1で前述したもう一方側のシートリクライニング装置4に差し込まれる操作ピン5Aとコネクティングロッド5Bを介して互いに一体的に連結されている。それにより、リクライニングレバー5が引き上げられる操作によって、双方の操作ピン5Aが一斉に回転操作されて、双方のシートリクライニング装置4の回転カム40が一斉に回転操作されるようになっている。
【0088】
図5に示すように、回転カム40は、ガイド20の中心部(回転中心C上の位置)に形成された貫通孔21Aよりもひとまわり大きな略円板形状に形成されている。上記回転カム40には、そのガイド20の貫通孔21A内に臨む外側面上に、同貫通孔21A内に向かって2本の引掛ピン43が軸方向に突出した形に形成されている。これら引掛ピン43には、
図2及び
図6に示すように、ロックスプリング50の内側の端部51がこれらの間に挟まれる形に引掛けられて固定される。また、
図10に示すように、回転カム40の各ポール30のオフセット面部30Bに面する内側面上には、それぞれ、各ポール30の引込み孔33内に入り込む引込みピン42が軸方向に突出して形成されている。
【0089】
上記回転カム40は、ガイド20に対して、ロックスプリング50を介して弾性支持された状態に組み付けられている。具体的には、次のような手順で組み付けられている。先ず、回転カム40を、ガイド20のカム収容溝24B内にセットする。次に、ロックスプリング50をガイド20の貫通孔21A内にセットし、その内側の端部51を回転カム40の各引掛ピン43の間に引掛けると共に、外側の端部52をガイド20の貫通孔21Aから延びる掛入れ孔21Aa内に引掛ける。以上により、回転カム40が、ガイド20に対して、ロックスプリング50を介して弾性支持された状態に組み付けられる。
【0090】
上記回転カム40は、上記ガイド20との間に掛着されたロックスプリング50のバネ付勢力によって、ガイド20に対して
図10に示す反時計回り方向に回転付勢された状態とされる。上記付勢による回転により、回転カム40は、常時は、その外周面部上の複数箇所に突出して形成された各押圧部44によって、各ポール30の被押圧面部32(
図9参照)を半径方向の内側から押圧して、各ポール30をラチェット10の内歯12Aに噛合させるようになっている。
【0091】
上記回転カム40は、
図1で前述したリクライニングレバー5が引き上げ操作されることにより、
図11に示すように、操作ピン5Aを介して図示時計回り方向に回転操作される。それにより、回転カム40は、その各ポール30の引込み孔33内に差し込まれている各引込みピン42によって、各ポール30を半径方向の内側へと引き込んでラチェット10の内歯12Aとの噛合状態から外すようになっている。具体的には、回転カム40は、その図示時計回り方向の回転により、各引込みピン42が各引込み孔33の内周縁側の立ち上がり状の傾斜面に押し当てられて、各ポール30を半径方向の内側へ引き込むようになっている。
【0092】
上記回転カム40は、
図10に示すように、各ポール30を半径方向の内側から押し出してラチェット10の内歯12Aに噛合させた状態(ロック状態)では、各引掛ピン43に引掛けられたロックスプリング50の内側の端部51が、ガイド20に形成された3つのガイド壁23のうちの図示左上側と図示右上側の2つのガイド壁M1の間の回転領域に配置されるようになっている。
【0093】
その状態では、回転カム40は、ロックスプリング50の内側の端部51から受けるバネ付勢力によって、ガイド20に対する図示反時計回り方向の回転付勢力の他、半径方向の外側へも押し出される偏心方向の付勢力も受けた状態とされる。それでも、回転カム40は、3つのポール30がラチェット10の内歯12Aと噛合していることにより、各ポール30からの支持を受けてガイド20の中心部(回転中心C上の位置)にセンタリングされた状態として保持されるようになっている。
【0094】
上記回転カム40は、
図11に示すように、図示時計回り方向に回転操作されて、各ポール30がラチェット10の内歯12Aとの噛合状態から外されることにより、上記ロックスプリング50の内側の端部51から受ける偏心方向の付勢力により、
図16に示すように、上述した2つのガイド壁M1の内周側の支持面23Bに押し当てられながら、これら2つのガイド壁M1の支持面23B上を摺動するように図示時計回り方向に回転操作される。その時、残るもう1つのガイド壁M2(図示下側のガイド壁M2)は、他の2つのガイド壁M1とは異なり、上記回転カム40の外周面とは接触せず、回転カム40の外周面との間に半径方向の僅かな隙間Tを形成するようになっている。
【0095】
そのような構成となっていることにより、回転カム40がロックスプリング50のバネ付勢力により押し当てられる2つのガイド壁M1において、回転カム40を軸ズレ方向(偏心方向)に移動させないように適切に支持することができる。なおかつ、回転カム40が上記2つのガイド壁M1を支点に残るもう1つのガイド壁M2のある方向に軸ズレ(偏心)する移動を適切に逃がすことができる。したがって、回転カム40を偏心させることなく、スムーズに解除方向に摺動回転させることができる。
【0096】
《外周リング60について》
図4~
図5に示すように、外周リング60は、1枚の金属製の薄板材がリング状に打ち抜かれると共に、外周縁部が軸方向に円筒状に突出する形に絞り加工されることにより、中空円板状の座(フランジ部62)の有する略円筒形状に形成されている。具体的には、外周リング60は、軸方向に真っ直ぐ面を向ける中空円板状のフランジ部62と、同フランジ部62の外周縁部から軸方向に略円筒状に突出する結合部61と、を有する構成とされる。
【0097】
具体的には、上記外周リング60の外周縁部は、軸方向に段付き円筒状に2段階に突出する形に押し出された形状とされる。それにより、上記段付き円筒の外周側の円筒部分が、略円筒形状の結合部61として形成され、内周側の円筒部分が、上記結合部61よりも軸方向の突出長さの短い段差部63として形成されている。
【0098】
上記外周リング60は、次のようにラチェット10とガイド20との外周部間に跨る形に装着されて、これらを軸方向に外れ止めした状態に組み付けられる。先ず、ガイド20に3つのポール30と回転カム40とロックスプリング50とをそれぞれセットする。次に、ガイド20にラチェット10を組み付け、これらを外周リング60の円筒内(結合部61内)にセットする。
【0099】
そして、
図15に示すように、結合部61の突出した先の部分をガイド20の円筒部22の外側面上にかしめる(かしめ部位61A)。以上により、外周リング60の結合部61がガイド20の円筒部22に一体的に結合されると共に、フランジ部62がラチェット10を軸方向の外側からあてがえた状態となる。それにより、外周リング60が、ラチェット10とガイド20との外周部間に跨る形に装着されて、これらを軸方向に外れ止めした状態に組み付けた状態となる。
【0100】
上記の組み付けについてより詳しく説明すると、外周リング60は、その円筒内(結合部61内)にラチェット10からガイド20の順に組み付けられることにより、その段差部63にガイド20の円筒部22が軸方向に突き当てられた状態にセットされる。そして、フランジ部62にラチェット10の円筒部12が軸方向の内側から当てられた状態にセットされる。そして、上記セットにより、外周リング60の円筒状の結合部61内に、ガイド20の円筒部22が軸方向にすっぽりと嵌まり込んだ状態にセットされる。
【0101】
そして、上記セットの後、外周リング60の結合部61のガイド20の円筒部22から軸方向の外側に延出する先の部分(かしめ部位61A)を、半径方向の内側に折り曲げて、上記段差部63との間にガイド20の円筒部22を軸方向に挟み込むように円筒部22の外側面上にかしめる。それにより、外周リング60が、ガイド20と一体的に結合された状態となり、フランジ部62によってラチェット10を軸方向の外側からあてがえて軸方向に外れないように保持した状態となる。
【0102】
詳しくは、上記外周リング60のフランジ部62は、その半径方向の内側に張り出した先端部位が、ラチェット10の中間円筒部13と円筒部12とを繋ぐ部位の軸方向の外側面部に形成された傾斜面13G上に添えられる形にセットされるようになっている。上記傾斜面13Gは、半径方向の外側に斜めに面を向ける形状とされている。したがって、上記傾斜面13G上に外周リング60のフランジ部62の先端部位が添えられることで、ラチェット10の軸方向の外側かつ半径方向の外側へのガタ付きが抑えられた状態となる。
【0103】
図5及び
図7に示すように、上記外周リング60のフランジ部62には、その回転方向の3箇所の位置に、軸方向の内側に斜めに突出する形にかしめられた斜め当接部62Aが形成されている。これら斜め当接部62Aは、ラチェット10の傾斜面13G上の回転方向の3箇所の位置に形成された、軸方向の外側かつ半径方向の外側に斜めに面を向ける形に突出する各突出傾斜面13Hと回転方向に重なる配置となる時に、対応する各突出傾斜面13H上に乗り上がるようになっている。上記乗り上がりにより、各斜め当接部62Aは、ラチェット10の軸方向の外側及び半径方向の外側へのガタ付きをより適切に抑えた状態となる。
【0104】
上記フランジ部62の各斜め当接部62Aは、フランジ部62が段差部63との繋ぎ目を基点に部分的に軸方向の内側へと斜めに折り曲げられることで形成されている。また、ラチェット10の傾斜面13G上に形成された各突出傾斜面13Hは、ラチェット10の半抜き加工時に押し当てられる型形状により、傾斜面13Gと略平行に突出する形に形成されている。
【0105】
上記各突出傾斜面13Hは、それぞれ、傾斜面13G上の回転方向の3箇所の位置に均等配置されている。各突出傾斜面13Hは、それぞれ、約20度の回転方向の長さを有する。各突出傾斜面13Hの回転方向の両サイド部には、各突出傾斜面13Hと傾斜面13Gとの間の段差を傾斜状に繋ぐよう肉盛りされた案内斜面13H1が形成されている。また、外周リング60のフランジ部62に形成された各斜め当接部62Aも、フランジ部62上の回転方向の3箇所の位置に均等配置されている。そして、各斜め当接部62Aも、それぞれ、約20度の回転方向の長さを有する。
【0106】
上記外周リング60は、
図21に示すように、シートバック2の背凭れ角度が、真っ直ぐ起立した姿勢となる初段のロック位置Pbと、トルソアングルPd(約20度)と、の間の角度領域にある時に、
図22~
図23に示すように、フランジ部62の各斜め当接部62Aにラチェット10の傾斜面13G上に形成された対応する各突出傾斜面13Hがそれぞれ乗り上がって当接するようになっている(当接領域B1)。
【0107】
それにより、外周リング60は、各斜め当接部62Aによって、ラチェット10の軸方向及び半径方向のガタ付きを適切に抑えた状態として保持する。その際、
図24に示すように、外周リング60のフランジ部62の一般面は、ラチェット10の傾斜面13Gの一般面とは当接せず離間する非当接状態とされる。上記当接領域B1は、
図21に示すように、シートバック2の背凭れ角度が初段のロック位置Pb(直立位置)から前側に約10度傾斜した角度位置と、トルソアングルPdから後側に約10度傾斜した角度位置と、の間の約40度の角度領域に設定されている。
【0108】
上記の当接領域B1では、
図22に示すように、外周リング60によるラチェット10のガタ抑えが比較的強く作用するため、これらの当接に伴う摺動摩擦抵抗力の作用によって、ラチェット10のガイド20に対する回転移動に抑制力が掛けられやすい。しかし、上記のようにシートバック2が起立した角度領域にある時には、シートバック2を前回転方向に付勢するリターンスプリング6(
図1参照)の付勢力が比較的強く作用する。したがって、上記のようにガタ詰めが強く作用しても、シートバック2を円滑に回転移動させることができる。
【0109】
また、上記外周リング60は、
図25に示すように、シートバック2の背凭れ角度が、
図21で示した当接領域B1から後側に外れた角度領域へと移行した時には、
図26~
図28に示すように、ラチェット10の傾斜面13G上に形成された各突出傾斜面13Hが、フランジ部62の対応する各斜め当接部62A上から回転方向に外れるようになっている。それにより、外周リング60は、そのフランジ部62の各斜め当接部62A上にラチェット10の傾斜面13Gが僅かな隙間をあけた状態となって対面する非当接状態となる(非当接領域B2)。
【0110】
上記の非当接状態では、外周リング60によるラチェット10のガタ抑えが弱められるが、その分、ラチェット10をガイド20に対してスムーズに回転移動させられるようになる。したがって、シートバック2が上記のように後傾した角度領域にある時には、シートバック2を前回転方向に付勢するリターンスプリング6(
図1参照)の付勢力の作用が比較的弱くなっても、シートバック2を円滑に前側に起こし上げることができる。
【0111】
また、上記外周リング60は、
図29に示すように、シートバック2の背凭れ角度が、
図21で示した当接領域B1から前側に外れた角度領域へと移された時にも、
図30~
図32に示すように、ラチェット10の傾斜面13G上に形成された各突出傾斜面13Hが、フランジ部62の対応する各斜め当接部62A上から回転方向に外れるようになっている。それにより、外周リング60は、そのフランジ部62の各斜め当接部62A上にラチェット10の傾斜面13Gが僅かな隙間をあけた状態となって対面する非当接状態となる(非当接領域B2)。
【0112】
上記の非当接状態では、外周リング60によるラチェット10のガタ抑えが弱められるが、その分、ラチェット10をガイド20に対してスムーズに回転移動させられるようになる。したがって、シートバック2が上記のように前傾した角度領域にある時には、シートバック2を後方向に起こし上げるための力が大きくなっても、シートバック2を比較的円滑に後側に起こし上げることができる。
【0113】
《メインポールP1のガタ詰め構造について》
ところで、
図34に示すように、上述したメインポールP1は、回転カム40により押圧されてラチェット10の内歯12Aと噛合される際に、両サイドのガイド壁23の間でつっぱるように僅かに傾けられて回転方向のガタ詰めを行うガタ詰め構造を備える。以下、上記メインポールP1のガタ詰め構造について詳しく説明する。
【0114】
メインポールP1には、その本体面部30Aの図示反時計回り方向側の側部に、対向するガイド壁23に向かって突出する第1突起35Aが形成されている。また、上記メインポールP1の本体面部30Aの図示時計回り方向側の側部にも、対向するガイド壁23に向かって突出する第2突起35Bが形成されている。
【0115】
上記第1突起35Aは、メインポールP1の本体面部30Aの図示反時計回り方向側の側部における半径方向の中央より内側寄りの位置に形成されている。上記第1突起35Aは、メインポールP1の板厚方向の全域に亘って、断面凸湾曲面状に図示反時計回り方向に突出する形に形成されている。第2突起35Bは、メインポールP1の本体面部30Aの図示時計回り方向側の側部における半径方向の外側の端部位置に形成されている。上記第2突起35Bは、メインポールP1の板厚方向の全域に亘って、断面台形状に図示時計回り方向に突出する形に形成されている。
【0116】
上記メインポールP1は、
図35に示すように、その半径方向の内外方への摺動性を確保するため、その両サイドのガイド壁23との間に、回転方向の隙間Sが設定された構成とされる。しかし、上記隙間Sの設定により、メインポールP1は、
図10で前述したように回転カム40により半径方向の外側へと押し出される際に、両ガイド壁23の間で回転方向に傾けられるガタを生じ得る。
【0117】
具体的には、メインポールP1は、
図35に示すように、上述した回転カム40により、その回転方向の中央位置から図示反時計回り方向に偏心した押圧点Rにおいて半径方向の内側から外側へと押圧される構成とされる。そのため、メインポールP1は、上記押圧力により、押圧点Rを支点にそれ自体が両ガイド壁23の間で図示時計回り方向に自転しながらラチェット10の内歯12Aと噛合される位置まで押し出される構成とされる。或いは、メインポールP1は、その中央の歯面がラチェット10の内歯12Aと噛合した後に、その内歯12Aに最も深く噛合する中央の歯面の噛合点Kを支点に、図示時計回り方向に自転し得る構成とされる。
【0118】
上記のようなメインポールP1の自転が生じると、メインポールP1が両ガイド壁23の間でつっぱるように傾けられて、メインポールP1を回転方向にガタ詰めした状態にすることができる。しかし、上記傾きが大きいと、メインポールP1がラチェット10の内歯12Aと最も深く噛合する外歯31の中央の歯面を中心に、一端側の歯面が内歯12Aとの噛合い深さを浅くするように動かされるおそれがある。そこで、そのような問題が起こらないよう、メインポールP1は、両ガイド壁23の間で傾けられた際に、上記第1突起35Aと第2突起35Bとがそれぞれ各側のガイド壁23と当接して、大きく傾けられることなく回転方向のガタ詰めを行うことができる構成とされる。
【0119】
具体的には、
図35に示すように、メインポールP1が回転カム40により半径方向の内側から外側へと押圧されると、メインポールP1が図示時計回り方向の自転を生じる。しかし、この自転により、第1突起35Aが対向するガイド壁23に当たることで、同方向へのメインポールP1の自転が早期に食い止められる。そしてその状態から、メインポールP1がラチェット10の内歯12Aに噛合すると、メインポールP1には、上記押圧点Rから掛けられる力により、外歯31の中央の歯面と内歯12Aとの噛合点Kを中心とする図示時計回り方向の回転力が掛けられる。
【0120】
それにより、メインポールP1は、上記第1突起35Aが当接している側のガイド壁23に上記の回転力に伴う押圧力を作用させる。そして、その反動として、メインポールP1は、上記第1突起35Aとガイド壁23との当接点を支点に、中央の歯面(噛合点K)が当接している内歯12Aを図示時計回り方向へと押し回す回転力を作用させる。そしてそれにより、メインポールP1が、上記第1突起35Aとガイド壁23との当接点を支点に、
図36に示すように、それ自体が図示時計回り方向に僅かに自転しながらラチェット10を同方向に押し回して、第2突起35Bを対向するガイド壁23と当接させる。
【0121】
上記第2突起35Bのガイド壁23への当接により、メインポールP1の自転が早期に食い止められる。そして、上記当接により、メインポールP1が、両ガイド壁23の間で回転方向にガタ詰めされた状態として、ラチェット10の内歯12Aに噛合した状態となる。
【0122】
以上のように、メインポールP1の第1突起35Aと第2突起35Bとが各側のガイド壁23と当接する構造により、メインポールP1が両ガイド壁23の間で回転方向に傾けられるガタが適切に抑制される。それにより、メインポールP1の外歯31の両端側の歯面を、ラチェット10の内歯12Aに対して片方の噛合を浅くすることなくバランス良く噛合させた状態に保持することができる。
【0123】
なお、上記メインポールP1の各側のガイド壁23に対する当接やラチェット10の内歯12Aに対する外歯31の中央の歯面(噛合点K)の噛合は、どの現象が先に起こるようになっていても良い。すなわち、どの現象が先に起こったとしても、それによる反動により、上述したその他の当接や噛合が起こるからである。上記のようにメインポールP1がガイド20に対して回転方向にガタ詰めされた状態としてラチェット10に噛合することで、
図10で前述した他のサブポールP2がガイド20との間に回転方向のガタを有していたとしても、ラチェット10とガイド20との間の回転方向のガタを適切に詰めることができる。
【0124】
《メインポールP1の優先ロック構造について》
上記回転方向のガタ詰め構造を備えるメインポールP1は、回転カム40により、他の2つのサブポールP2よりも先にラチェット10の内歯12Aに噛合する構成とされる。具体的には、
図37に示すように、回転カム40により半径方向の内側から押圧されるメインポールP1の被押圧面部32には、他の2つのサブポールP2の被押圧面部32よりも半径方向の内側に膨出する膨出部32Aが形成されている。なお、同図では、メインポールP1と他の2つのサブポールP2との形状の違いを比較しやすくするため、メインポールP1の被押圧面部32上に他の2つのサブポールP2の被押圧面部32の形状を示すラインL1を仮想線で重ねて示している。
【0125】
また、メインポールP1を半径方向の内側から押圧する回転カム40の押圧部44にも、他の2つのサブポールP2を押圧する押圧部44よりも半径方向の外側に膨出する膨出部44Aが形成されている。なお、これについても、メインポールP1を押圧する押圧部44と他の2つのサブポールP2を押圧する押圧部44との形状の違いを比較しやすくするため、回転カム40のメインポールP1を押圧する押圧部44上に他の2つのサブポールP2を押圧する押圧部44の形状を示すラインL2を仮想線で重ねて示している。
【0126】
上記メインポールP1の被押圧面部32とこれを半径方向の内側から押圧する回転カム40の押圧部44とにそれぞれ膨出部32A,44Aが形成されていることから、メインポールP1は、回転カム40の回転により他の2つのサブポールP2よりも先にラチェット10の内歯12Aに噛合するように押し出される(
図10等参照)。そのため、メインポールP1は、他の2つのサブポールP2がラチェット10の内歯12Aに噛合した後に噛合することがないことから、前述したように回転カム40の回転に伴い両ガイド壁23の間で適切に傾いて回転方向のガタ詰めをした状態でラチェット10の内歯12Aに適切に噛合することができるようになっている。
【0127】
詳しくは、メインポールP1は、上記膨出部32A,44Aの膨出により、他の2つのサブポールP2よりも先に外歯31をラチェット10の内歯12Aに入り込ませるように回転カム40により押し出されるようになっている。したがって、メインポールP1をより確実に他の2つのサブポールP2よりも先にラチェット10の内歯12Aに噛合させることができる。また、メインポールP1の被押圧面部32と回転カム40の押圧部44のそれぞれに膨出部32A,44Aが形成されていることから、どちらか一方にのみ膨出部を形成する構成と比べて、各々に形成する膨出部32A,44Aの大きさを抑制することができる。それにより、各々の基本構造が大きく崩れることを抑制し、強度低下等の不具合を生じさせにくくすることができる。
【0128】
《まとめ》
以上をまとめると、本実施形態に係るシートリクライニング装置4は次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0129】
すなわち、乗物用シートリクライニング装置(4)は、互いに相対回転可能なように軸方向に組み付けられるラチェット(10)及びガイド(20)と、ガイド(20)に設けられた一対のガイド壁(23)により回転方向の両側から支持され、半径方向の外側へ押される移動によりラチェット(10)と噛合しラチェット(10)とガイド(20)との間の相対回転をロックする回転方向に並ぶ複数のポール(30)と、複数のポール(30)を半径方向の内側から外側へと押し動かすカム(40)と、を有する。
【0130】
複数のポール(30)のうちの1つは、カム(40)により押し動かされることで一対のガイド壁(23)の双方に当てられる回転方向のガタ詰め構造を備えたメインポール(P1)とされる。メインポール(P1)とメインポール(P1)を半径方向の内側から押圧するカム(40)の押圧部(44)との間に、メインポール(P1)を他のポール(P2)よりも半径方向の外側へ大きく押し出せるよう互いの当接面のうちの一方を他方に向けて膨出させる膨出部(32A,44A)を有する。
【0131】
上記構成によれば、膨出部(32A,44A)により、回転方向のガタ詰め構造を備えたメインポール(P1)を他のポール(P2)よりも先にラチェット(10)と噛合させることができる。したがって、各ポール(30)と各ガイド壁(23)との間に摺動性を確保するための隙間(S)を設けても、各ポール(30)をラチェット(10)に対して適切にガタ詰めした状態に噛合させることができる。
【0132】
また、メインポール(P1)が、膨出部(32A,44A)により他のポール(P2)よりも先にラチェット(10)の内歯(12A)に外歯(31)が入り込むよう押し出される。上記構成によれば、メインポール(P1)をより確実にラチェット(10)と噛合させることができる。
【0133】
また、メインポール(P1)のガタ詰め構造が、メインポール(P1)を半径方向の内側からの押圧により一対のガイド壁(23)の間で回転方向に傾かせて一対のガイド壁(23)の双方に当ててガタ詰めする構造から成る。上記構成によれば、メインポール(P1)が、他のポール(P2)がラチェット(10)に噛合してからではガタ詰めされにくい傾きタイプの構成であっても、同メインポール(P1)をラチェット(10)に対して適切にガタ詰めした状態に噛合させることができる。
【0134】
また、膨出部(32A,44A)が、メインポール(P1)と押圧部(44)との各当接面のそれぞれに形成される。上記構成によれば、メインポール(P1)或いは押圧部(44)のうちの一方にのみ膨出部を形成する構成と比べて、各々に形成する膨出部(32A,44A)の大きさを抑制することができる。それにより、各々の基本構造が大きく崩れることを抑制し、強度低下等の不具合を生じさせにくくすることができる。
【0135】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、各種の形態で実施することができるものである。
【0136】
1.本発明の乗物用シートリクライニング装置は、自動車の右側座席以外のシートにも適用することができる他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、乗物用シートリクライニング装置は、シートバックをシートクッションに対して背凭れ角度の調節を行える状態に連結するものの他、シートバックを乗物本体側に固定されたブラケット等のベースに対して背凭れ角度の調節を行える状態に連結するものであってもよい。
【0137】
2.乗物用シートリクライニング装置は、ラチェットがシートクッション等の乗物本体側に固定されるベースに結合され、ガイドがシートバックに結合される構成であってもよい。
【0138】
3.ラチェットとガイドとの相対回転をロックするポールは、回転方向に2つ又は4つ以上並んで設けられるものであってもよい。すなわち、メインポールと他のポールとがそれぞれ1つずつ設けられるものや、メインポールが1つに対して他のポールが3つ以上設けられるものであっても良い。また、各ポールの回転方向の配置は、均等配置されるものに限らず、片寄って配置されるものであってもよい。
【0139】
4.各ポールを半径方向の内側から外側へと押し動かすカムは、回転タイプの構成に限らず、特開2014-217662号公報等の文献に示されるような半径方向のスライドにより各ポールを半径方向の外側へと押し動かすスライドタイプの構成であっても良い。また、各ポールを半径方向の内側へと引き戻す操作は、特開2015-227071号公報等の文献に示されるようなレリーズプレート等のカムとは別体の部材を用いて行われるものであっても良い。
【0140】
5.メインポールのガタ詰め構造は、メインポールがカムにより回転方向に斜めに押圧されて両ガイド壁の間でつっぱる形に傾けられる構成であっても良い。また、メインポールのガタ詰め構造は、特開2016-215999号公報等の文献に示されるように、メインポールが回転方向に2分割されて両ガイド壁の間で全体の幅を広げるように摺動してガタ詰めを行うタイプの構成であっても良い。
【0141】
6.膨出部は、メインポールとメインポールを押圧するカムの双方に形成されていても良いが、いずれか一方にのみ形成される構成であっても構わない。また、膨出部の膨出形状は、特定の形に限定されるものではなく、種々の立ち上がり形状を有するものを適用することができるものである。
【符号の説明】
【0142】
1 シート
2 シートバック
2F サイドフレーム
2Fa 嵌合孔
2Fb 通し孔
2Fc 係止板
3 シートクッション
3F リクライニングプレート
3Fa 嵌合孔
3Fb 通し孔
3Fc 前側ストッパ
3Fd 後側ストッパ
4 シートリクライニング装置(乗物用シートリクライニング装置)
5 リクライニングレバー
5A 操作ピン
5B コネクティングロッド
6 リターンスプリング
10 ラチェット
11 円板本体
11A 貫通孔
11B 拡張面部
12 円筒部
12A 内歯
13 中間円筒部
13A 第1の領域
13B 第2の領域
13C 第3の領域
13D 第1の凸部
13E 第2の凸部
13E1 逃がし凹部
Y 隙間
13G 傾斜面
13H 突出傾斜面
13H1 案内斜面
A1 ロック領域
A2 フリー領域
A3 逃がし領域
A4 結合領域
14 ダボ
B1 当接領域
B2 非当接領域
20 ガイド
21 円板本体
21A 貫通孔
21Aa 掛入れ孔
21B ダボ
22 円筒部
23 ガイド壁
23A 規制面
23B 支持面
M1 ガイド壁
M2 ガイド壁
T 隙間
24A ポール収容溝
24B カム収容溝
30 ポール
30A 本体面部
30B オフセット面部
31 外歯
32 被押圧面部
32A 膨出部
33 引込み孔
34 乗り上がり突起
34A 外周面部
35A 第1突起
35B 第2突起
P1 メインポール
P2 サブポール(他のポール)
Q 精度管理面
40 回転カム(カム)
41 貫通孔
42 引込みピン
43 引掛ピン
44 押圧部
44A 膨出部
50 ロックスプリング
51 内側の端部
52 外側の端部
60 外周リング
61 結合部
61A かしめ部位
62 フランジ部
62A 斜め当接部
63 段差部
C 回転中心
Pa 前倒れ位置
Pb 初段のロック位置
Pc 後倒れ位置
Pd トルソアングル
K 噛合点
R 押圧点
S 隙間
L1 ライン
L2 ライン