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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置および流量調整機構
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240214BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240214BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60H1/00 101B
B60H1/22 651C
B60H1/32 611Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019216880
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2020104841
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018243391
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧本 直也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201224(JP,A)
【文献】特開2015-101180(JP,A)
【文献】特開2017-161121(JP,A)
【文献】特開2017-062065(JP,A)
【文献】特開2016-097745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221413(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108556590(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路(20)と、
前記高温熱媒体と車室内へ送風される空気とを熱交換させて前記車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱器(22)と、
前記高温熱媒体と車室外の空気とを熱交換させて前記車室外の空気に放熱する放熱器(23)と、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された高圧の前記冷媒と前記高温熱媒体とを熱交換させて前記冷媒から前記高温熱媒体に放熱させる高圧側熱交換器(12)と、
前記高圧側熱交換器で熱交換された前記冷媒を減圧させる減圧部(13、16)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒に吸熱させて前記冷媒を蒸発させる蒸発器(14、17)と、
前記高圧側熱交換器を流れた前記高温熱媒体の流量に対する前記放熱器を流れる前記高温熱媒体の流量の比である放熱器側流量比(Gw)を調整する流量調整部(25、26、28、45)とを備え、
前記空気加熱器で加熱された空気の温度の最大値である最大吹出温度(THmax)が、前記空気加熱器で加熱された空気の温度の上限値である上限吹出温度(THL1)となるときの前記放熱器側流量比において、前記流量調整部は、前記空気加熱器で加熱された空気の温度の変動幅が許容値(ΔTH1)以下となるように前記放熱器側流量比を調整可能である冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記空気加熱器で加熱された空気、または前記空気加熱器に流入する前記高温熱媒体の温度を検出する温度検出部(66)を備え、
前記最大吹出温度が前記上限吹出温度(THL1)となるときの前記放熱器側流量比において、前記流量調整部は、前記空気加熱器で加熱された空気の温度の変動幅が前記温度検出部の検出温度の誤差幅(ΔTH2)以上となるように前記放熱器側流量比を調整可能
である請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置、およびそれに用いられる流量調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、冷凍サイクルの凝縮器で加熱された冷却液が、ヒータコアとラジエータとに流れる車両用熱管理装置が記載されている。ヒータコアは、車室内へ送風される空気と冷却液とを熱交換させて空気を加熱する。ラジエータは、冷却液と車室外の空気と熱交換させて冷却液を冷却する。以下では、車室外の空気を外気と言う。
【0003】
この従来技術では、冷凍サイクルの第1蒸発器で冷却された冷却液によってインバータ等の電気機器を冷却し、車室内へ送風される空気を冷凍サイクルの第2蒸発器によって冷却するようになっている。
【0004】
第1蒸発器および第2蒸発器で冷媒が吸熱した熱と、冷凍サイクルの圧縮機が発する熱とが凝縮器にて冷媒から冷却液に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願公開第2437955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、凝縮器から冷却液に与えられた熱はヒータコアとラジエータとに分配される。そのため、ヒータコアとラジエータとに流れる冷却液の流量によっては、ヒータコアでの空気加熱能力に過不足が生じてしまう。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、冷媒で加熱された熱媒体を、車室内へ送風される空気の加熱に用いると同時に外気に放熱させる冷凍サイクル装置において、車室内へ送風される空気を適切に加熱できるようにすることを的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の冷凍サイクル装置では、
高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路(20)と、
高温熱媒体と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱器(22)と、
高温熱媒体と車室外の空気とを熱交換させて車室外の空気に放熱する放熱器(23)と、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された高圧の冷媒と高温熱媒体とを熱交換させて冷媒から高温熱媒体に放熱させる高圧側熱交換器(12)と、
高圧側熱交換器で熱交換された冷媒を減圧させる減圧部(13、16)と、
減圧部で減圧された冷媒に吸熱させて冷媒を蒸発させる蒸発器(14、17)と、
高圧側熱交換器を流れた高温熱媒体の流量に対する放熱器を流れる高温熱媒体の流量の比である放熱器側流量比(Gw)を調整する流量調整部(25、26、28、45)とを備え、
空気加熱器で加熱された空気の温度の最大値である最大吹出温度(THmax)が、空気加熱器で加熱された空気の温度の上限値である上限吹出温度(THL1)となるときの放熱器側流量比において、流量調整部は、空気加熱器で加熱された空気の温度の変動幅が許容値(ΔTH1)以下となるように放熱器側流量比を調整可能である
【0017】
これによると、最大吹出温度を考慮して流量調整部の分解能を設定することにより、放熱器側流量比が小さいときであっても空気加熱器で加熱された空気を適切な温度に加熱できる。
【0022】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
図2】第1実施形態における冷凍サイクル装置の電気制御部を示すブロック図である。
図3】第1実施形態における冷凍サイクル装置の制御装置が運転モードの切り替えに用いる制御特性図である。
図4】第2実施形態における冷凍サイクル装置の一部を示す構成図である。
図5】第3実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
図6】第4実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
図7】第5実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
図8】第5実施形態における高温側三方弁の斜視図である。
図9図8のIX矢視図である。
図10図9の模式的なX-X断面図であり、高温側三方弁の作動状態の例を示している。
図11】高温側三方弁の作動状態の例を示す模式的な断面図である。
図12】高温側三方弁の作動状態の例を示す模式的な断面図である。
図13】第5実施形態におけるラジエータ流量比とヒータコア吹出温度との関係を示すグラフである。
図14図13のXIV部拡大図である。
図15】第6実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
以下、実施形態について図に基づいて説明する。図1~4に示す車両用空調装置1は、車室内空間(換言すれば、空調対象空間)を適切な温度に調整する空調装置である。車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10を有している。本実施形態では、冷凍サイクル装置10を、エンジン(換言すれば内燃機関)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド自動車に搭載されている。
【0026】
本実施形態のハイブリッド自動車は、車両停車時に外部電源(換言すれば商用電源)から供給された電力を、車両に搭載された電池(換言すれば車載バッテリ)に充電可能なプラグインハイブリッド自動車として構成されている。電池としては、例えばリチウムイオン電池を用いることができる。
【0027】
エンジンから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機を作動させるためにも用いられる。そして、発電機にて発電された電力および外部電源から供給された電力を電池に蓄わえることができ、電池に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、冷凍サイクル装置10を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給される。
【0028】
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気側蒸発器14、定圧弁15、第2膨張弁16および冷却水側蒸発器17を備える蒸気圧縮式冷凍機である。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
【0029】
第2膨張弁16および冷却水側蒸発器17は、冷媒流れにおいて、第1膨張弁13、空気側蒸発器14および定圧弁15に対して並列に配置されている。
【0030】
冷凍サイクル装置10には、第1冷媒循環回路と第2冷媒循環回路とが形成される。第1冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気側蒸発器14、定圧弁15、圧縮機11の順に循環する。第2冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第2膨張弁16、冷却水側蒸発器17の順に循環する。
【0031】
圧縮機11は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、冷凍サイクル装置10の冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機11の電動モータは、制御装置60によって制御される。圧縮機11は、ベルトによって駆動される可変容量圧縮機であってもよい。
【0032】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させる高圧側熱交換器である。
【0033】
凝縮器12は、凝縮部12a、レシーバ12bおよび過冷却部12cを有している。凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させることによって高圧側冷媒を凝縮させる。
【0034】
高温冷却水回路20の冷却水は、熱媒体としての流体である。高温冷却水回路20の冷却水は高温熱媒体である。本実施形態では、高温冷却水回路20の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。高温冷却水回路20は、高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路である。
【0035】
レシーバ12bは、凝縮器12から流出した高圧冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を下流側へ流出させるとともに、サイクルの余剰冷媒を貯える気液分離部である。
【0036】
過冷却部12cは、レシーバ12bから流出した液相冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する。
【0037】
第1膨張弁13は、レシーバ12bから流出した液相冷媒を減圧膨張させる第1減圧部である。第1膨張弁13は、機械式の温度式膨張弁である。機械式膨張弁は、感温部を有し、ダイヤフラム等の機械的機構によって弁体を駆動する温度式膨張弁である。
【0038】
空気側蒸発器14は、第1膨張弁13から流出した冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発器である。空気側蒸発器14では、冷媒が車室内へ送風される空気から吸熱する。空気側蒸発器14は、車室内へ送風される空気を冷却する空気冷却器である。
【0039】
定圧弁15は、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力を所定値に維持する圧力調整部である。定圧弁15は、機械式の可変絞り機構で構成されている。具体的には、定圧弁15は、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を下回ると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を減少させ、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を超えると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を増加させる。定圧弁15で圧力調整された気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0040】
サイクルを循環する循環冷媒流量の変動が少ない場合等には、定圧弁15に代えて、オリフィス、キャピラリチューブ等からなる固定絞りを採用してもよい。
【0041】
第2膨張弁16は、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第2減圧部である。第2膨張弁16は、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第2膨張弁16は冷媒流路を全閉可能になっている。
【0042】
第2膨張弁16は、空気側蒸発器14および冷却水側蒸発器17のうち空気側蒸発器14に冷媒が流れる状態と、空気側蒸発器14および冷却水側蒸発器17の両方に冷媒が流れる状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。
【0043】
第2膨張弁16は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。第2膨張弁16は機械式の温度膨張弁であってもよい。第2膨張弁16が機械式の温度膨張弁である場合、第2膨張弁16側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第2膨張弁16とは別個に設けられている必要がある。
【0044】
冷却水側蒸発器17は、第2膨張弁16から流出した冷媒と低温冷却水回路30の冷却水とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発器である。冷却水側蒸発器17では、冷媒が低温冷却水回路30の冷却水から吸熱する。冷却水側蒸発器17は、低温冷却水回路30の冷却水を冷却する熱媒体冷却器である。冷却水側蒸発器17で蒸発した気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0045】
低温冷却水回路30の冷却水は、熱媒体としての流体である。低温冷却水回路30の冷却水は低温熱媒体である。本実施形態では、低温冷却水回路30の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。低温冷却水回路30は、低温の熱媒体が循環する低温熱媒体回路である。
【0046】
高温冷却水回路20には、凝縮器12、高温側ポンプ21、ヒータコア22、高温側ラジエータ23、高温側リザーブタンク24、ヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26が配置されている。
【0047】
高温側ポンプ21は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ21は電動式のポンプである。高温側ポンプ21は、吐出流量が一定となる電動式のポンプであるが、高温側ポンプ21は、吐出流量が可変な電動式のポンプであってもよい。
【0048】
ヒータコア22は、高温冷却水回路20の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱器である。ヒータコア22では、冷却水が、車室内へ送風される空気に放熱する。
【0049】
凝縮器12およびヒータコア22は、圧縮機11から吐出された高圧の冷媒を放熱させることによって、車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱部である。
【0050】
高温側ラジエータ23は、高温冷却水回路20の冷却水と外気とを熱交換させて冷却水から外気に放熱させる放熱器である。
【0051】
高温側リザーブタンク24は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部である。高温側リザーブタンク24に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
【0052】
高温側リザーブタンク24は、密閉式リザーブタンクまたは大気開放式リザーブタンクである。密閉式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を所定圧力にするリザーブタンクである。大気開放式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を大気圧にするリザーブタンクである。
【0053】
凝縮器12、高温側ポンプ21および高温側リザーブタンク24は、凝縮器流路20aに配置されている。凝縮器流路20aは、高温冷却水回路20の冷却水が流れる流路である。
【0054】
ヒータコア22およびヒータコア流路開閉弁25は、ヒータコア流路20bに配置されている。ヒータコア流路20bは、高温冷却水回路20の冷却水が流れる流路である。ヒータコア流路開閉弁25は、ヒータコア流路20bを開閉する電磁弁である。ヒータコア流路開閉弁25の作動は、制御装置60によって制御される。
【0055】
高温側ラジエータ23およびラジエータ流路開閉弁26は、ラジエータ流路20cに配置されている。ラジエータ流路20cは、高温冷却水回路20の冷却水がヒータコア22に対して並列に流れる流路である。ラジエータ流路開閉弁26は、ラジエータ流路20cを開閉する電磁弁である。ラジエータ流路開閉弁26の作動は、制御装置60によって制御される。
【0056】
ヒータコア流路開閉弁25は、高温冷却水回路20において、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとの分岐部である高温側分岐部20dと、ヒータコア22との間に配置されている。ヒータコア流路開閉弁25は、ヒータコア22に流入する高温冷却水回路20の冷却水の流量を調整する。
【0057】
ラジエータ流路開閉弁26は、高温冷却水回路20において、高温側分岐部20dと高温側ラジエータ23との間に配置されている。ラジエータ流路開閉弁26は、高温側ラジエータ23に流入する高温冷却水回路20の冷却水の流量を調整する。
【0058】
ヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26は、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水との流量比を調整する高温熱媒体調整部である。ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水との流量比は、高温熱媒体流量比である。ラジエータ流路開閉弁26は放熱器側調整部である。ヒータコア流路開閉弁25は空気加熱器側調整部である。ヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26は、冷却水の流量を調整する流量調整機構(換言すれば、流量調整機構)である。
【0059】
低温冷却水回路30には、低温側ポンプ31、冷却水側蒸発器17、低温側ラジエータ32、電池33、充電器34および低温側リザーブタンク35が配置されている。
【0060】
低温側ポンプ31は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ31は電動式のポンプである。低温側ラジエータ32は、低温冷却水回路30の冷却水と外気とを熱交換させて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱させる吸熱器である。
【0061】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、外気の流れ方向において、この順番に直列に配置されている。高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32には、室外送風機40によって外気が送風される。
【0062】
室外送風機40は、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32へ向けて外気を送風する外気送風部である。室外送風機40は、ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。室外送風機40の作動は、制御装置60によって制御される。
【0063】
高温側ラジエータ23、低温側ラジエータ32および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32に走行風を当てることができるようになっている。
【0064】
充電器34は、電池33に電力を充電するための機器である。電池33および充電器34は、車両に搭載された車載機器であり、作動に伴って発熱する発熱機器である。電池33および充電器34は、作動に伴って発生する廃熱を低温冷却水回路30の冷却水に放熱する。換言すれば、電池33および充電器34は、低温冷却水回路30の冷却水に熱を供給する。
【0065】
低温側リザーブタンク35は、余剰冷却水を貯留する冷却水貯留部である。低温側リザーブタンク35に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。低温側リザーブタンク35は、密閉式リザーブタンクや大気開放式リザーブタンクである。
【0066】
低温冷却水回路30には三方弁36が配置されている。三方弁36は、電池33側へ流れる冷却水の流量と、低温側ラジエータ32側へ流れる冷却水の流量との流量比を調整する低温熱媒体調整部である。電池33側へ流れる冷却水の流量と、低温側ラジエータ32側へ流れる冷却水の流量との流量比は、低温熱媒体流量比である。三方弁36は、低温側ラジエータ32に冷却水が流れる状態と流れない状態とを切り替える熱媒体流れ切替部である。三方弁36の作動は、制御装置60によって制御される。
【0067】
空気側蒸発器14およびヒータコア22は、室内空調ユニット50の空調ケーシング51に収容されている。室内空調ユニット50は、車室内前部の図示しない計器盤の内側に配置されている。空調ケーシング51は、空気通路を形成する空気通路形成部材である。
【0068】
ヒータコア22は、空調ケーシング51内の空気通路において、空気側蒸発器14の空気流れ下流側に配置されている。空調ケーシング51には、内外気切替箱52と室内送風機53とが配置されている。
【0069】
内外気切替箱52は、空調ケーシング51内の空気通路に内気と外気とを切替導入する内外気切替部である。室内送風機53は、内外気切替箱52を通して空調ケーシング51内の空気通路に導入された内気および外気を吸入して送風する。室内送風機53の作動は、制御装置60によって制御される。
【0070】
空調ケーシング51内の空気通路において空気側蒸発器14とヒータコア22との間には、エアミックスドア54が配置されている。エアミックスドア54は、空気側蒸発器14を通過した冷風のうちヒータコア22に流入する冷風と冷風バイパス通路55を流れる冷風との風量割合を調整する。
【0071】
冷風バイパス通路55は、空気側蒸発器14を通過した冷風がヒータコア22をバイスして流れる空気通路である。
【0072】
エアミックスドア54は、空調ケーシング51に対して回転可能に支持された回転軸と、回転軸に結合されたドア基板部とを有する回転式ドアである。エアミックスドア54の開度位置を調整することによって、空調ケーシング51から車室内に吹き出される空調風の温度を所望温度に調整できる。
【0073】
エアミックスドア54の回転軸は、サーボモータ56によって駆動される。エアミックスドア用サーボモータ56の作動は、制御装置60によって制御される。
【0074】
エアミックスドア54は、空気流れと略直交する方向にスライド移動するスライドドアであってもよい。スライドドアは、剛体で形成された板状のドアであってもよいし。可撓性を有するフィルム材で形成されたフィルムドアであってもよい。
【0075】
エアミックスドア54によって温度調整された空調風は、空調ケーシング51に形成された吹出口57から車室内へ吹き出される。
【0076】
図2に示す制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置60は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置60の出力側には各種制御対象機器が接続されている。制御装置60は、各種制御対象機器の作動を制御する制御部である。
【0077】
制御装置60によって制御される制御対象機器は、圧縮機11、第2膨張弁16、ヒータコア流路開閉弁25、ラジエータ流路開閉弁26、三方弁36、室外送風機40、室内送風機53およびエアミックスドア用サーボモータ56等である。
【0078】
制御装置60のうち圧縮機11の電動モータを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、冷媒吐出能力制御部である。制御装置60のうち第2膨張弁16を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、絞り制御部である。
【0079】
制御装置60のうちヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、高温熱媒体流れ制御部である。
【0080】
制御装置60のうち三方弁36を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、低温熱媒体流れ制御部である。
【0081】
制御装置60のうち室外送風機40を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、外気送風能力制御部である。
【0082】
制御装置60のうち室内送風機53を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、空気送風能力制御部である。
【0083】
制御装置60のうちエアミックスドア用サーボモータ56を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、風量割合制御部である。
【0084】
制御装置60の入力側には、内気温度センサ61、外気温度センサ62、日射量センサ63、蒸発器吸込空気温度センサ64、蒸発器温度センサ65、ヒータコア入口冷却水温度センサ66、電池入口冷却水温度センサ67、電池温度センサ68等の種々の制御用センサ群が接続されている。
【0085】
内気温度センサ61は車室内温度Trを検出する。外気温度センサ62は外気温Tamを検出する。日射量センサ63は車室内の日射量Tsを検出する。
【0086】
蒸発器吸込空気温度センサ64は、空気側蒸発器14に吸い込まれる空気の温度TEinを検出する空気温度検出部である。
【0087】
蒸発器温度センサ65は、空気側蒸発器14の温度TEを検出する温度検出部である。蒸発器温度センサ65は、例えば、空気側蒸発器14の熱交換フィンの温度を検出するフィンサーミスタや、空気側蒸発器14を流れる冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ等である。
【0088】
ヒータコア入口冷却水温度センサ66は、ヒータコア22に流入する冷却水の温度THinを検出する熱媒体温度検出部である。
【0089】
電池入口冷却水温度センサ67は、電池33に流入する冷却水の温度を検出する熱媒体温度検出部である。
【0090】
電池温度センサ68は、電池33の温度を検出する電池温度検出部である。例えば、電池温度センサ68は、電池33の各セルの温度を検出する。
【0091】
制御装置60の入力側には、図示しない各種操作スイッチが接続されている。各種操作スイッチは操作パネル70に設けられており、乗員によって操作される。操作パネル70は車室内前部の計器盤付近に配置されている。制御装置60には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0092】
各種操作スイッチは、エアコンスイッチ、温度設定スイッチ等である。エアコンスイッチは、室内空調ユニット50にて空気の冷却を行うか否かを設定する。温度設定スイッチは、車室内の設定温度を設定する。
【0093】
次に、上記構成における作動を説明する。制御装置60は、操作パネル70のエアコンスイッチが乗員によってオンされている場合、空気側蒸発器14の吸込空気温度TEinおよび目標吹出温度TAO等と図3に示す制御マップとに基づいて運転モードを切り替える。運転モードとしては、少なくとも冷房モード、第1除湿暖房モード、第2除湿暖房モードおよび第3除湿暖房モードがある。
【0094】
目標吹出温度TAOは、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である。制御装置60は、目標吹出温度TAOを以下の数式に基づいて算出する。
【0095】
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C
この数式において、Tsetは操作パネル70の温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温度センサ61によって検出された内気温、Tamは外気温度センサ62によって検出された外気温、Tsは日射量センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0096】
目標吹出温度TAOの低温域では冷房モードに切り替える。目標吹出温度TAOが高温になるにつれて第1除湿暖房モード→第2除湿暖房モード→第3除湿暖房モードに切り替える。目標吹出温度TAOの閾値は、空気側蒸発器14の吸込空気温度TEinが高温であるほど大きくなる。
【0097】
冷房モードでは、車室内へ送風される空気を空気側蒸発器14で冷却することによって車室内を冷房する。
【0098】
第1除湿暖房モード、第2除湿暖房モードおよび第3除湿暖房モードでは、車室内へ送風される空気を空気側蒸発器14で冷却除湿し、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気をヒータコア22で加熱することによって車室内を除湿暖房する。
【0099】
第1除湿暖房モードでは、高温冷却水回路20の冷却水の熱量が、ヒータコア22に必要とされる熱量に対して余剰となることから、高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱を高温側ラジエータ23で外気に放熱させる。第1除湿暖房モードは、高温側ラジエータ23で外気に放熱する放熱モードである。
【0100】
第2除湿暖房モードでは、高温冷却水回路20の冷却水の熱量が、ヒータコア22に必要とされる熱量に対して不足することから、不足する熱量を低温側ラジエータ32で外気から吸熱させる。第2除湿暖房モードは、低温側ラジエータ32で外気から吸熱する吸熱モードである。
【0101】
第3除湿暖房モードでは、高温冷却水回路20の冷却水の熱量が、ヒータコア22に必要とされる熱量に対して不足することから、不足する熱量を低温側ラジエータ32で外気から、許容範囲内での最大能力で吸熱させる。
【0102】
制御装置60は、第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを切り替える際に、一時的に移行モードを実施する。
【0103】
移行モードでは、第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを同時に実施する。すなわち、移行モードでは、第1除湿暖房モードと同様に高温側ラジエータ23にて高温冷却水回路20の冷却水から外気に放熱させるとともに、第2除湿暖房モードと同様に低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱させる。これにより、第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとの切り替えがスムーズになる。
【0104】
次に、冷房モード、第1除湿暖房モード、第2除湿暖房モード、第3除湿暖房モードおよび移行モードにおける作動について説明する。
【0105】
冷房モード、第1除湿暖房モード、第2除湿暖房モード、第3除湿暖房モードおよび移行モードでは、制御装置60は、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置60に接続された各種制御機器の作動状態(換言すれば、各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
【0106】
(1)冷房モード
冷房モードでは、制御装置60は、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させる。冷房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路開閉弁25を開弁させ、ラジエータ流路開閉弁26を開弁させる。
【0107】
これにより、冷房モード時の冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、以下のように変化する。
【0108】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0109】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却される。
【0110】
そして、空気側蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0111】
このように、冷房モードでは、空気側蒸発器14にて低圧冷媒に空気から吸熱させて、冷却された空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0112】
冷房モード時の高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0113】
このとき、図1の実線矢印に示すように、ヒータコア22にも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、ヒータコア22における冷却水から空気への放熱量はエアミックスドア54によって調整される。
【0114】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54によって温度調整された空調風が目標吹出温度TAOとなるように決定される。具体的には、エアミックスドア54の開度が、目標吹出温度TAO、空気側蒸発器14の温度TE、ヒータコア22に流入する冷却水の温度THin等に基づいて決定される。
【0115】
冷房モードにおいて電池33を冷却する必要がある場合、制御装置60は、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させるとともに、低温冷却水回路30の冷却水が電池33を流れるように低温側ポンプ31および三方弁36を制御する。
【0116】
これにより、冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。そして、低温冷却水回路30では、図1の破線矢印に示すように、電池33に冷却水が循環して電池33が冷却される。
【0117】
このとき、電池33が目標電池温度に冷却されるように、電池33を流れる冷却水の流量を三方弁36によって調整する。
【0118】
目標電池温度から実際の電池33の温度を減じた温度差が大きいほど、電池33を流れる冷却水の流量を多くする。目標電池温度から実際の電池33の温度を減じた温度差が小さいほど、電池33を流れる冷却水の流量を少なくする。
【0119】
目標電池温度から電池33に流入する冷却水の温度を減じた温度差が小さいほど、電池33を流れる冷却水の流量を多くする。目標電池温度から電池33に流入する冷却水の温度を減じた温度差が大きいほど、電池33を流れる冷却水の流量を少なくする。
【0120】
(2)第1除湿暖房モード
第1除湿暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させる。第1除湿暖房モードでは、ヒータコア流路開閉弁25を開弁させ、ラジエータ流路開閉弁26を開弁させる。
【0121】
第1除湿暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0122】
すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0123】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。
【0124】
そして、冷却水側蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0125】
第1除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、ヒータコア22に高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0126】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が図1の二点鎖線位置に位置してヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0127】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0128】
これと同時に、高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0129】
このように、第1除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0130】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿された空気を加熱する。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0131】
第1除湿暖房モードでは、目標吹出温度TAOが比較的低温の領域で実施されるため、ヒータコア22の吹出空気温度が比較的低くてよい。そのため、ヒータコア22で必要とされる熱量に対して高温冷却水回路20の冷却水の熱量が余剰となる。
【0132】
高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱は、高温側ラジエータ23にて外気に放熱される。
【0133】
第1除湿暖房モードでは、高温側ラジエータ23を流れる高温冷却水回路20の冷却水の流量は、高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱を外気に放熱できるだけの流量でよい。
【0134】
そのため、第1除湿暖房モードでは、高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱を高温側ラジエータ23にて外気に放熱できるだけの開度とされる。
【0135】
したがって、第1除湿暖房モードでは、ヒータコア流路開閉弁25の開度は、ラジエータ流路開閉弁26の開度よりも大きくされる。これにより、ヒータコア22を流れる高温冷却水回路20の冷却水の流量が、高温側ラジエータ23を流れる高温冷却水回路20の冷却水の流量よりも多くなる。
【0136】
第1除湿暖房モードでは、ヒータコア流路開閉弁25の時間平均開度が、ラジエータ流路開閉弁26の時間平均開度よりも大きくされていればよい。
【0137】
ヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26を間欠的に開閉させ、ヒータコア流路開閉弁25の開弁時間の割合をラジエータ流路開閉弁26の開弁時間の割合よりも大きくすることによって、ヒータコア流路開閉弁25の時間平均開度が、ラジエータ流路開閉弁26の時間平均開度よりも大きくされてもよい。
【0138】
例えば、ヒータコア流路開閉弁25とラジエータ流路開閉弁26との開度比は、ヒータコア22における単位時間当たりの空気の吸熱量Paと、ヒータコア22における単位時間当たりの冷却水の放熱量Pwとが同じであるという関係を用いて決定することができる。以下、その理由を説明する。
【0139】
ヒータコア22で空気を目標吹出温度TAOまで加熱するために必要とされる、ヒータコア22における単位時間当たりの空気の吸熱量Paは、ヒータコア22を流れる空気の比熱および密度と、ヒータコア22に流入する空気の温度と、ヒータコア22を流れる空気の流量と、目標吹出温度TAOとに基づいて算出できる。
【0140】
第1除湿暖房モードでは、エアミックスドア54がヒータコア22の空気通路を全開にするので、ヒータコア22を流れる空気の流量は、室内送風機53の送風量と同じである。室内送風機53の送風量は、室内送風機53の回転数または印加電圧に基づいて算出できる。
【0141】
ヒータコア22に流入する空気の温度は、蒸発器温度センサ65が検出する空気側蒸発器14の温度TEと同じと見なすことができる。
【0142】
一方、ヒータコア22で空気を目標吹出温度TAOまで加熱するために必要とされる、ヒータコア22における単位時間当たりの冷却水の放熱量Pwは、ヒータコア22を流れる冷却水の比熱および密度と、ヒータコア22を流れる冷却水の流量と、ヒータコア22に流入する冷却水の温度THinと、目標吹出温度TAOとに基づいて算出できる。
【0143】
ヒータコア22を流れる冷却水の流量は、高温側ポンプ21の吐出流量と、ヒータコア流路開閉弁25とラジエータ流路開閉弁26との開度比に基づいて算出できる。
【0144】
ヒータコア22における単位時間当たりの空気の吸熱量Paは、ヒータコア22における単位時間当たりの冷却水の放熱量Pwと同じであるという関係から、ヒータコア22に流す必要のある冷却水の流量を算出でき、ひいてはヒータコア流路開閉弁25とラジエータ流路開閉弁26との開度比を算出できる。
【0145】
第1除湿暖房モードにおいて電池33を冷却する必要がある場合、制御装置60は、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させるとともに、低温冷却水回路30の冷却水が電池33を流れるように低温側ポンプ31および三方弁36を制御する。
【0146】
これにより、冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。そして、低温冷却水回路30では、図1の破線矢印に示すように、電池33に冷却水が循環して電池33が冷却される。
【0147】
このとき、電池33が目標電池温度に冷却されるように、電池33を流れる冷却水の流量を三方弁36によって調整するのが好ましい。電池33を流れる冷却水の流量の調整の仕方は、冷房モードと同様である。
【0148】
(3)第2除湿暖房モード
第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21および低温側ポンプ31を作動させる。第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させる。第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路開閉弁25を開弁させ、ラジエータ流路開閉弁26を閉弁させる。第2除湿暖房モードでは、制御装置60は、低温冷却水回路30の冷却水が低温側ラジエータ32を流れるように三方弁36を制御する。
【0149】
第2除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印および実線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0150】
すなわち、冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0151】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。
【0152】
そして、冷却水側蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0153】
これと同時に、冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0154】
第2除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、ヒータコア22に高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0155】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が図1の二点鎖線位置に位置してヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0156】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0157】
このとき、ラジエータ流路開閉弁26が閉弁されているので、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。したがって、高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱されない。
【0158】
第2除湿暖房モード時の低温冷却水回路30では、図1の実線矢印に示すように、低温側ラジエータ32に低温冷却水回路30の冷却水が循環して低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0159】
このように、第2除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0160】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿された空気を加熱する。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0161】
第2除湿暖房モードでは、第1除湿暖房モードと比較して目標吹出温度TAOが高温の領域で実施されるため、ヒータコア22の吹出空気温度を第1除湿暖房モードと比較して高くする必要がある。
【0162】
低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱されるので、第1除湿暖房モードと比較してヒータコア22で利用できる熱量を増加させることができ、ヒータコア22の吹出空気温度を高めることができる。
【0163】
第2除湿暖房モードでは、低温側ラジエータ32を流れる低温冷却水回路30の冷却水の流量は、ヒータコア22で空気を目標吹出温度TAOまで加熱するために必要な熱を低温側ラジエータ32で吸熱できるだけの流量でよい。
【0164】
したがって、目標吹出温度TAOからヒータコア22に流入する空気の温度(換言すれば、空気側蒸発器14の温度TE)を減じた温度差が大きいほど、低温側ラジエータ32を流れる低温冷却水回路30の冷却水の流量が多くなるように三方弁36を制御する。
【0165】
第2除湿暖房モードにおいて電池33を冷却する必要がある場合、制御装置60は、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させるとともに、低温冷却水回路30の冷却水が電池33を流れるように三方弁36を制御する。
【0166】
これにより、冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。そして、低温冷却水回路30では、図1の破線矢印に示すように、電池33に冷却水が循環して電池33が冷却される。
【0167】
このとき、電池33が目標電池温度に冷却されるように、電池33を流れる冷却水の流量を三方弁36によって調整するのが好ましい。電池33を流れる冷却水の流量の調整の仕方は、冷房モードと同様である。
【0168】
(4)第3除湿暖房モード
第3除湿暖房モードでは、第2除湿暖房モードと比較して目標吹出温度TAOが高温の領域で実施されるため、ヒータコア22の吹出空気温度を第2除湿暖房モードと比較して高くする必要がある。
【0169】
第3除湿暖房モードでは、第2除湿暖房モードと比較して、低温側ラジエータ32における外気からの吸熱量を多くする。具体的には、第2除湿暖房モードに対して、低温側ラジエータ32を流れる冷却水の流量が最大となるように三方弁36を制御する。
【0170】
これにより、第2除湿暖房モードと比較してヒータコア22で利用できる熱量を増加させることができ、ヒータコア22の吹出空気温度を高めることができる。
【0171】
第3除湿暖房モードにおいて電池33を冷却する必要がある場合、制御装置60は、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させるとともに、低温冷却水回路30の冷却水が電池33を流れるように三方弁36を制御する。
【0172】
これにより、冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。そして、低温冷却水回路30では、図1の破線矢印に示すように、電池33に冷却水が循環して電池33が冷却される。
【0173】
このとき、電池33が目標電池温度に冷却されるように、電池33を流れる冷却水の流量を三方弁36によって調整するのが好ましい。電池33を流れる冷却水の流量の調整の仕方は、冷房モードと同様である。
【0174】
(5)移行モード
移行モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21および低温側ポンプ31を作動させる。移行モードでは、制御装置60は、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させる。移行モードでは、ヒータコア流路開閉弁25を開弁させ、ラジエータ流路開閉弁26を開弁させる。移行モードでは、制御装置60は、低温冷却水回路30の冷却水が低温側ラジエータ32を流れるように三方弁36を制御する。
【0175】
移行モードの冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印および実線矢印のように冷媒が流れ、サイクルを循環する冷媒の状態については、次のように変化する。
【0176】
すなわち、冷凍サイクル装置10では、図1の破線矢印に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0177】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。
【0178】
そして、冷却水側蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0179】
これと同時に、冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0180】
第1除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、図1の実線矢印に示すように、ヒータコア22に高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0181】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が図1の二点鎖線位置に位置してヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0182】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0183】
移行モード時の高温冷却水回路20では、図1の破線矢印に示すように、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0184】
移行モード時の低温冷却水回路30では、図1の実線矢印に示すように、低温側ラジエータ32に低温冷却水回路30の冷却水が循環して低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0185】
このように、移行モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0186】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿された空気を加熱する。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0187】
低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱されるので、第2除湿暖房モードと同様にヒータコア22で利用できる熱量を増加させることができ、ヒータコア22の吹出空気温度を高めることができる。低温側ラジエータ32を流れる低温冷却水回路30の冷却水の流量は、第2除湿暖房モードと同様に調整される。すなわち、三方弁36は、第2除湿暖房モードと同様に制御される。
【0188】
第2除湿暖房モードと同様に、高温冷却水回路20の冷却水の余剰熱は、高温側ラジエータ23にて外気に放熱される。高温側ラジエータ23を流れる高温冷却水回路20の冷却水の流量は、第1除湿暖房モードと同様に調整される。すなわち、ヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26の開度は、第1除湿暖房モードと同様に決定される。
【0189】
移行モードにおいて電池33を冷却する必要がある場合、制御装置60は、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させるとともに、低温冷却水回路30の冷却水が電池33を流れるように三方弁36を制御する。
【0190】
これにより、冷凍サイクル装置10では、図1の実線矢印に示すように、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。そして、低温冷却水回路30では、図1の破線矢印に示すように、電池33に冷却水が循環して電池33が冷却される。
【0191】
このとき、電池33が目標電池温度に冷却されるように、電池33を流れる冷却水の流量を三方弁36によって調整するのが好ましい。電池33を流れる冷却水の流量の調整の仕方は、冷房モードと同様である。
【0192】
移行モードでは、第1除湿暖房モードと同様に高温側ラジエータ23にて高温冷却水回路20の冷却水から外気に放熱させるとともに、第2除湿暖房モードと同様に低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱させる。
【0193】
したがって、第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを切り替える際に、一時的に移行モードを実施することによって、第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとの切り替えがスムーズになる。
【0194】
本実施形態では、制御装置60は、凝縮器12で冷媒から高温冷却水回路20の冷却水に放熱された熱のうち、ヒータコア22にて車室内へ送風される空気を目標吹出温度TAOに加熱するために必要な熱に対して余剰な熱が高温側ラジエータ23にて車室外の空気に放熱される流量比となるように、ヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26を制御する。
【0195】
「凝縮器12で冷媒から高温冷却水回路20の冷却水に放熱された熱のうち、ヒータコア22にて車室内へ送風される空気を目標吹出温度TAOに加熱するために必要な熱に対して余剰な熱」とは、凝縮器12で冷媒から高温冷却水回路20の冷却水に放熱された熱量から、ヒータコア22にて車室内へ送風される空気を目標吹出温度TAOに加熱するために必要な熱量を減じた差の分のことである。
【0196】
これによると、ヒータコア22にて車室内へ送風される空気を目標吹出温度TAOに加熱するために必要な熱がヒータコア22に分配されるようにヒータコア22に熱媒体を流すことができる。したがって、車室内へ送風される空気をヒータコア22で適切に加熱できる。
【0197】
本実施形態では、制御装置60は、ヒータコア22および高温側ラジエータ23の両方に高温冷却水回路20の冷却水を流す場合、ヒータコア22における高温冷却水回路20の冷却水の時間平均流量が高温側ラジエータ23における高温冷却水回路20の冷却水の時間平均流量よりも多くなるようにヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26を制御する。これにより、ヒータコア22での空気加熱能力が不足することを確実に抑制できる。
【0198】
本実施形態では、ラジエータ流路開閉弁26は、高温冷却水回路20の冷却水の流れにおいて凝縮器12と高温側ラジエータ23との間に配置されていて、高温側ラジエータ23に流入する高温冷却水回路20の冷却水の流量を調整する。これにより、余剰な熱を高温側ラジエータ23にて車室外の空気に確実に放熱できる。
【0199】
本実施形態では、ヒータコア22および高温側ラジエータ23は、高温冷却水回路20の冷却水の流れにおいて互いに並列に配置されている。ヒータコア流路開閉弁25は、高温冷却水回路20の冷却水の流れにおいて、高温側分岐部20dとヒータコア22との間に配置されていて、ヒータコア22に流入する高温冷却水回路20の冷却水の流量を調整する。これにより、余剰な熱を高温側ラジエータ23にて車室外の空気に一層確実に放熱できる。
【0200】
本実施形態の冷凍サイクル装置10は、冷却水側蒸発器17を備えている。冷却水側蒸発器17は、第2膨張弁16で減圧された冷媒と低温冷却水回路30の冷却水とを熱交換させて冷媒を蒸発させるとともに低温冷却水回路30の冷却水を冷却する。これにより、上述の作用効果を奏する冷凍サイクル装置10において、低温冷却水回路30の冷却水を冷却できる。
【0201】
本実施形態では、低温側ラジエータ32は、低温冷却水回路30の冷却水と外気とを熱交換させて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱させる。これにより、上述の作用効果を奏する冷凍サイクル装置10において、外気から吸熱してヒータコア22での空気加熱能力を高めることができる。
【0202】
本実施形態では、制御装置60は、第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとの切り替えの際に移行モードを実行する。
【0203】
これにより、高温側ラジエータ23で外気に放熱する第1除湿暖房モードと、低温側ラジエータ32で外気から吸熱する第2除湿暖房モードとをスムーズに切り替えることができる。
【0204】
本実施形態では、制御装置60は、低温側ラジエータ32を流れる低温冷却水回路30の冷却水と電池33を冷却する低温冷却水回路30の冷却水との流量比が、電池33が目標電池温度に冷却される流量比となるように、三方弁36の作動を制御する。
【0205】
これによると、電池33が目標電池温度になるように電池33に低温冷却水回路30の冷却水を流すことができる。したがって、車室内へ送風される空気を加熱しつつ電池33を適切に冷却できる。
【0206】
本実施形態では、電池33は、低温冷却水回路30の冷却水によって冷却される。これにより、電池33を効率的に冷却できる。
【0207】
本実施形態では、充電器34は、低温冷却水回路30の冷却水によって冷却される。これにより、充電器34を効率的に冷却できる。
【0208】
本実施形態では、空気側蒸発器14は、第1膨張弁13で減圧された冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を冷却する。これにより、車室内の除湿暖房を行うことのできる冷凍サイクル装置において、上述の作用効果を奏することができる。
【0209】
(第2実施形態)
上記実施形態では、ヒータコア22と高温側ラジエータ23とが高温冷却水回路20の冷却水の流れにおいて互いに並列に配置されているが、本実施形態では、図4に示すように、ヒータコア22と高温側ラジエータ23とが高温冷却水回路20の冷却水の流れにおいて互いに直列に配置されている。
【0210】
高温冷却水回路20には、バイパス流路27が設けられている。バイパス流路27は、高温冷却水回路20の冷却水が高温側ラジエータ23をバイパスして流れるバイパス部である。
【0211】
高温冷却水回路20の冷却水流路のうち、冷却水がバイパス流路27と並列に流れる部位には、流量調整弁28が配置されている。流量調整弁28は、冷却水流路を開閉するとともに、冷却水流路の開度を任意に調整可能な電磁弁である。流量調整弁28の作動は制御装置60によって制御される。
【0212】
流量調整弁28は、高温冷却水回路20において、バイパス流路27の分岐部であるバイパス分岐部20eと高温側ラジエータ23との間に配置されている。流量調整弁28は、高温側ラジエータ23を流れる冷却水とバイパス流路27を流れる冷却水との流量比を調整する高温熱媒体調整部である。高温側ラジエータ23を流れる冷却水とバイパス流路27を流れる冷却水との流量比は、バイパス流量比である。流量調整弁28は、冷却水の流量を調整する流量調整部(換言すれば、流量調整機構)である。
【0213】
流量調整弁28により、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水との流量比が調整される。
【0214】
バイパス流路27にはバイパス開閉弁29が配置されている。バイパス開閉弁29は、バイパス流路27を開閉する電磁弁である。バイパス開閉弁29の作動は制御装置60によって制御される。
【0215】
流量調整弁28の開度およびバイパス開閉弁29の開度を調整することによって、ヒータコア22を流れる冷却水の流量と高温側ラジエータ23を流れる冷却水の流量との流量比を調整できる。
【0216】
第1除湿暖房モードでは、上記第1実施形態と同様に、ヒータコア側の流量を高温側ラジエータ側の流量よりも多くする。
【0217】
流量調整弁28を閉弁しバイパス開閉弁29を開弁することによって、高温側ラジエータ23に冷却水を流すことなくヒータコア22に冷却水を流すことができる。したがって、上記第1実施形態と同様に、第2、第3除湿モードに切り替えることができる。
【0218】
本実施形態では、ヒータコア22および高温側ラジエータ23は、高温冷却水回路20の冷却水の流れにおいて互いに直列に配置されている。ヒータコア22は、高温側ラジエータ23よりも高温冷却水回路20の冷却水の上流側に配置されている。バイパス流路27は、ヒータコア22から流出した高温冷却水回路20の冷却水が、高温側ラジエータ23をバイパスして流れる。バイパス開閉弁29は、高温側ラジエータ23を流れる高温冷却水回路20の冷却水とバイパス流路27を流れる高温冷却水回路20の冷却水との流量比を調整することによって、ヒータコア22を流れる高温冷却水回路20の冷却水と高温側ラジエータ23を流れる高温冷却水回路20の冷却水との流量比を調整する。
【0219】
これにより、上記実施形態と同様の作動および作用効果を実現できる。
【0220】
(第3実施形態)
上記実施形態では、定圧弁15によって、空気側蒸発器14の冷媒圧力を空気側蒸発器14の冷媒圧力よりも高くしているが、本実施形態では、図5に示すように、冷却水側蒸発器17の出口側に定圧弁15がないので、冷却水側蒸発器17における冷媒圧力が空気側蒸発器14における冷媒圧力と同じになる。
【0221】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、第1除湿暖房モード時に、空気側蒸発器14および冷却水側蒸発器17での吸熱量がヒータコア22で必要な熱量に対して余剰となる場合、余剰熱を高温側ラジエータ23で外気に放熱する。
【0222】
ヒータコア22を流れる冷却水の流量と高温側ラジエータ23を流れる冷却水の流量との流量比、すなわちヒータコア流路開閉弁25とラジエータ流路開閉弁26との開度比は、上記第1実施形態と同様に決定すればよい。
【0223】
(第4実施形態)
本実施形態では、図6に示すように、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが、共通のフィン37によって互いに接合されている。
【0224】
共通のフィン37は、冷却水と空気との熱交換を促進する熱交換促進部材である。共通のフィン37は、金属製(例えばアルミニウム製)の部材である。
【0225】
共通のフィン37は、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とを金属で結合することによって、高温側ラジエータ23から低温側ラジエータ32へ熱を移動させる結合部である。
【0226】
これにより、第2、第3除湿暖房モード後の除霜を行うことができる。第2、第3除湿暖房モードでは、低温側ラジエータ32で低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱するので、低温側ラジエータ32の温度が氷点下になると低温側ラジエータ32に着霜が生じる。そこで、第2、第3除湿暖房モードを実行した後の停車時に、高温冷却水回路20の冷却水に残った熱を利用して低温側ラジエータ32を除霜する。
【0227】
すなわち、高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィン37によって互いに熱移動可能に接続されているので、高温冷却水回路20の冷却水の熱が、高温側ラジエータ23から低温側ラジエータ32に移動する。
【0228】
これにより、低温側ラジエータ32の温度が上昇して、低温側ラジエータ32の表面に付着した霜を融かすことができる。
【0229】
(第5実施形態)
上記実施形態では、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水との流量比をヒータコア流路開閉弁25およびラジエータ流路開閉弁26によって調整するが、本実施形態では、図7に示すように、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水との流量比を高温側三方弁45によって調整する。
【0230】
高温側三方弁45は、冷却水の流量を調整する流量調整部(換言すれば、流量調整機構)である。高温側三方弁45は、高温側分岐部20dに配置され、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとの開度比を調整する。したがって、高温側三方弁45は、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水との流量比を調整する。換言すれば、高温側三方弁45は、凝縮器12で加熱された冷却水の流量に対する、高温側ラジエータ23に流入する冷却水の流量の比Gw(以下、ラジエータ流量比と言う。)を調整する。ラジエータ流量比は、放熱器側流量比である。
【0231】
図8および図9に示すように、高温側三方弁45は、筐体451、弁体452およびアクチュエータ453を有している。筐体451は、冷却水入口451a、ヒータコア側出口451bおよびラジエータ側出口451cを有している。
【0232】
冷却水入口451aは熱媒体入口である。冷却水入口451aは、凝縮器流路20aに接続されている。ヒータコア側出口451bは、ヒータコア流路20bに接続されている。ラジエータ側出口451cは、ラジエータ流路20cに接続されている。
【0233】
筐体451の内部には、冷却水入口空間451d、ヒータコア側空間451eおよびラジエータ側空間451fが形成されている。冷却水入口空間451dは熱媒体入口空間である。冷却水入口空間451dは、冷却水入口451aと連通している。ヒータコア側空間451eは、ヒータコア側出口451bと連通している。ラジエータ側空間451fは、ラジエータ側出口451cと連通している。
【0234】
ヒータコア側空間451eおよびラジエータ側空間451fはそれぞれ、冷却水入口空間451dと連通している。ヒータコア側空間451eおよびラジエータ側空間451fは、互いに隣り合わせになっている。
【0235】
弁体452は、ヒータコア側空間451eおよびラジエータ側空間451fを開閉することによって、ヒータコア側空間451eおよびラジエータ側空間451fと冷却水入口空間451dとの連通状態を変化させる。弁体452は、ヒータコア側空間451eおよびラジエータ側空間451fの開度を調整することによって、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとの開度比を調整する。
【0236】
弁体452は、アクチュエータ453の回転駆動力によって回転操作される。アクチュエータ453の作動は、制御装置60によって制御される。
【0237】
図10~12は、弁体452の作動状態の例を示している。図10に示す例では、弁体452は、ヒータコア側空間451eを開き、ラジエータ側空間451fを閉じている。図11に示す例では、弁体452は、ヒータコア側空間451eを閉じ、ラジエータ側空間451fを開いている。
【0238】
図12に示す例では、弁体452は、ヒータコア側空間451eおよびラジエータ側空間451fのそれぞれを部分的に開いている。
【0239】
弁体452を図10に示す位置と図11に示す位置との間の任意の位置に操作することによって、ヒータコア側空間451eおよびラジエータ側空間451fの開度比を任意に調整できる。したがって、高温側三方弁45は、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水との流量比を任意に調整できる。換言すれば、高温側三方弁45は、ラジエータ流量比Gwを任意に調整できる。
【0240】
高温側三方弁45におけるラジエータ流量比の最小分解能を図13に基づいて説明する。高温側三方弁45におけるラジエータ流量比の最小分解能とは、高温側三方弁45がラジエータ流量比を調整する際における、ラジエータ流量比の最小変動量である。換言すれば、高温側三方弁45におけるラジエータ流量比の最小分解能は、高温側三方弁45におけるラジエータ流量比の最小調整幅である。すなわち、高温側三方弁45の最小分解能が小さいほど、ラジエータ流量比を細かく調整できることを意味している。
【0241】
図13は、ラジエータ流量比Gwとヒータコア22から吹き出される空気の温度TH(以下、ヒータコア吹出温度と言う。)との関係を示している。
【0242】
図13で示すラジエータ流量比Gwとヒータコア吹出温度THとの関係は、次の(1)~(3)の条件下において、ラジエータ流量比が1から0へと減少するように高温側三方弁45を制御したときのヒータコア吹出温度THを測定したものである。
【0243】
(1)外気温Tamが0℃、車室内温度Trが25℃のときに、室内空調ユニット50の吸込モードを内気導入モードとし、室内空調ユニット50内の室内送風機53の送風量が200m/hとする。内気導入モードは、内外気切替箱52が空調ケーシング51内の空気通路に内気を導入させる運転モードである。
【0244】
(2)冷凍サイクル1の吸熱量(換言すれば、除湿能力または電池冷却能力)が一定になるように圧縮機11を制御する。例えば、空気側蒸発器14の温度TEが一定温度(例えば2℃)となるように圧縮機11を制御する。例えば、冷却水側蒸発器17で冷却された冷却水の温度TEが一定温度となるように圧縮機11を制御する。
【0245】
(3)高温側ポンプ21の回転数を一定に制御する。具体的には、高温冷却水回路20において、冷却水による熱の輸送を十分に行うことのできる冷却水流量となるように高温側ポンプ21の回転数を制御する。例えば、冷却水流量が10L/minとなるように高温側ポンプ21の回転数を制御する。
【0246】
図13のグラフのハッチング領域は、ラジエータ流量比Gwの調整範囲を示している。図13のグラフのハッチング領域は、ヒータコア吹出温度THの上限値THL1(以下、上限吹出温度と言う。)を表す直線と、ヒータコア吹出温度THの下限値THL2(以下、下限吹出温度と言う。)を表す直線と、ヒータコア吹出温度THの最大値THmax(以下、最大吹出温度と言う。)を表す曲線とで囲まれた領域である。
【0247】
すなわち、ヒータコア22は、下限吹出温度THL2以上、上限吹出温度THL1以下の温度の空気を吹き出すことが要求される。最大吹出温度THmaxは、ヒータコア22の空気加熱能力が最大になっているときのヒータコア吹出温度THである。
【0248】
上限吹出温度THL1、下限吹出温度THL2および最大吹出温度THmaxは、ラジエータ流量比Gwを用いて次の数式f1~f3で表される。
【0249】
THL1=55 …(f1)
THL2=-1.54Gw+5.3 …(f2)
THmax=5.0052Gw^(-1.173) …(f3)
すなわち、最大吹出温度THmaxは、ラジエータ流量比Gwが小さいほど大きくなる。換言すれば、最大吹出温度THmaxを表す曲線は、負の傾きを有している。
【0250】
最大吹出温度THmaxを表す曲線の負の傾きは、ラジエータ流量比Gwが小さいほど大きくなる。すなわち、最大吹出温度THmaxを表す曲線は、ラジエータ流量比Gwが小さいほど傾斜が大きくなる。換言すれば、ラジエータ流量比Gwの減少に対する最大吹出温度THmaxの増加率は、ラジエータ流量比Gwが小さいほど大きくなっている。
【0251】
図13に示す第1変動幅ΔTH1は、ヒータコア吹出温度THの変動幅の許容値である。本例では、第1変動幅ΔTH1は7℃、より具体的には上限吹出温度THL1を中心として±3.5℃である。第1変動幅ΔTH1は、乗員が不快と感じるか否かの境界と考えられるヒータコア吹出温度THの変動幅である。
【0252】
図13に示す第1調整量Gw1は、最大吹出温度THmaxが上限吹出温度THL1と一致しているときに、ヒータコア吹出温度THの第1変動幅ΔTH1に対応するラジエータ流量比Gwの調整量である。本例では、第1調整量Gw1は、0.014である。
【0253】
高温側三方弁45の最小分解能は、第1調整量Gw1以下になっている。具体的には、高温側三方弁45のアクチュエータ453と弁体452との間のギヤ比の設定等により、高温側三方弁45の最小分解能を第1調整量Gw1以下にしている。
【0254】
これにより、高温側三方弁45がラジエータ流量比Gwを調整したときにヒータコア吹出温度THの変動幅を第1変動幅ΔTH1以内に抑えることができるので、吹出温度の変動によって乗員が不快と感じることを防止できる。
【0255】
高温側三方弁45の最小分解能Gwminは、以下の数式f4~f7で表すことができる。
【0256】
Gwmin≦Gw1 …(f4)
Gw1=Gwa-Gwb …(f5)
Gwa=f-1(THL1-ΔTH1/2) …(f6)
Gwb=f-1(THL1+ΔTH1/2) …(f7)
ここで、Gwaは、図14に示すように、第1変動幅ΔTH1の下限におけるヒータコア吹出温度THに対応するラジエータ流量比Gwである。Gwbは、図14に示すように、第1変動幅ΔTH1の上限におけるヒータコア吹出温度THに対応するラジエータ流量比Gwである。
【0257】
数式f6~f7中のf-1(x)は、数式f3の逆関数である。すなわち、数式f3は、f(x)=5.0052x^(-1.173)という関数で表すことができ、f(x)の逆関数をf-1(x)と表している。
【0258】
以上のことから、高温側三方弁45の最小分解能Gwminは、以下の数式f8の関係を満たしている。
【0259】
Gwmin≦f-1(THL1-ΔTH1/2)-f-1(THL1+ΔTH1/2) …(f8)
図13に示す第2変動幅ΔTH2は、ヒータコア入口冷却水温度センサ66の検出温度の誤差幅である。本例では、第2変動幅ΔTH2は0.4℃、より具体的には上限吹出温度THL1を中心として±0.2℃である。ヒータコア入口冷却水温度センサ66の検出温度は、ヒータコア吹出温度THとみなすことができる。第2変動幅ΔTH2は、ヒータコア吹出温度THを検出するセンサの検出温度の誤差幅であってもよい。
【0260】
図13に示す第2調整量Gw2は、最大吹出温度THmaxが上限吹出温度THL1と一致しているときに、ヒータコア吹出温度THの第2変動幅ΔTH2に対応するラジエータ流量比Gwの調整量である。本例では、第2調整量Gw2は、0.0008である。
【0261】
高温側三方弁45の最小分解能は、第2調整量Gw2以上になっている。具体的には、高温側三方弁45のアクチュエータ453と弁体452との間のギヤ比の設定等により、高温側三方弁45の最小分解能を第2調整量Gw2以上にしている。これにより、高温側三方弁45がラジエータ流量比Gwを調整したときにヒータコア吹出温度THの変動幅を第2変動幅ΔTH2以上にできるので、ヒータコア入口冷却水温度センサ66の検出精度を超えて高温側三方弁45の最小分解能が小さくなることを回避している。
【0262】
本実施形態では、図13に示すように、最大吹出温度THmaxは、ラジエータ流量比Gwが減少するにつれて増加し、ラジエータ流量比Gwの減少に対する最大吹出温度THmaxの増加率が、ラジエータ流量比Gwが小さくなるほど大きくなっている。
【0263】
これによると、高温側三方弁45の分解能を適切に設定することにより、ラジエータ流量比Gwが小さいときであってもヒータコア22で加熱された空気を適切な温度に加熱できる。
【0264】
本実施形態では、図14に示すように、最大吹出温度THmaxが上限吹出温度THL1となるときのラジエータ流量比Gwにおいて、高温側三方弁45は、最大吹出温度THmaxの変動幅が第1変動幅ΔTH1以下となるようにラジエータ流量比Gwを調整可能である。
【0265】
これにより、高温側三方弁45がラジエータ流量比Gwを調整したときにヒータコア吹出温度THの変動幅を第1変動幅ΔTH1以内に抑えることができるので、吹出温度の変動によって乗員が不快と感じることを防止できる。
【0266】
本実施形態では、図14に示すように、最大吹出温度THmaxが上限吹出温度THL1となるときのラジエータ流量比Gwにおいて、高温側三方弁45は、ヒータコア吹出温度THの変動幅が第2変動幅ΔTH2以上となるようにラジエータ流量比Gwを調整可能である。
【0267】
これにより、ヒータコア入口冷却水温度センサ66の検出精度を超えて高温側三方弁45の最小分解能が小さくなることを回避できる。
【0268】
(第6実施形態)
図15に示すように、本実施形態では、ラジエータ流路20cにサーモスタット47が配置されている。サーモスタット47は、凝縮器12から流出した冷却水の温度の上昇に伴ってラジエータ流路20cの開度を増加させる高温熱媒体調整部である。サーモスタット47は、冷却水の温度変化に応じて体積変化するサーモワックスによって弁体を変位させる機械的機構である。
【0269】
これにより、凝縮器12から流出した冷却水の温度が低い場合にサーモスタット47がラジエータ流路20cを閉じることによって、高温側ラジエータ23での放熱を止めることができる。
【0270】
(他の実施形態)
上記実施形態を適宜組み合わせ可能である。上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
【0271】
(1)上記実施形態では、熱媒体として冷却水を用いているが、油などの各種媒体を熱媒体として用いてもよい。熱媒体として、ナノ流体を用いてもよい。ナノ流体とは、粒子径がナノメートルオーダーのナノ粒子が混入された流体のことである。
【0272】
(2)上記実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
【0273】
また、上記実施形態の冷凍サイクル装置10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【0274】
(3)上記第4実施形態では、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが別々のラジエータになっていて、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが共通のフィン37によって互いに接合されている。これに対して、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0275】
例えば、高温側ラジエータ23の冷却水タンクと低温側ラジエータ32の冷却水タンクとが互いに一体化されていることによって、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0276】
(4)高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32が共通の1つのラジエータになっていて、共通の1つのラジエータに高温冷却水回路20の冷却水と低温冷却水回路30の冷却水とが切り替え導入されるようになっていてもよい。共通の1つのラジエータに高温冷却水回路20の冷却水と低温冷却水回路30の冷却水とが任意の流量割合で導入されるようになっていてもよい。
【0277】
導入される冷却水の切り替えや流量割合の調整は、冷却水流路の開閉弁や流量調整弁によって行うことができる。
【0278】
(5)上記実施形態では、電池33に低温冷却水回路30の冷却水が流れることによって電池33が冷却されるが、電池33が図示しない電池冷却器と熱伝導可能になっていて、電池冷却器に低温冷却水回路30の冷却水が流れることによって電池33が冷却されてもよい。
【0279】
図示しない電池用空気冷却器を用いて電池33が冷却されてもよい。電池用空気冷却器は、低温冷却水回路30の冷却水と電池33へ送風される空気とを熱交換させて電池33へ送風される空気を冷却する熱交換器である。
【0280】
(6)上記第1実施形態では、ラジエータ流路開閉弁26およびヒータコア流路開閉弁25は、開度を任意に調整可能な電磁弁である。これに対して、ラジエータ流路開閉弁26およびヒータコア流路開閉弁25は、単純に開閉するだけの電磁弁であって、断続的な開閉によって時間平均開度を任意に調整してもよい。
【0281】
(7)上記実施形態では、ヒータコア流路20bおよびラジエータ流路20cのうち少なくとも一方の開度を調整することによって、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水の流量とを調整する。これに加えて、高温側ポンプ21の吐出流量の調整も併用することによって、ヒータコア22を流れる冷却水と高温側ラジエータ23を流れる冷却水の流量とを調整してもよい。
【0282】
(8)上記第5実施形態では、第2変動幅ΔTH2は、ヒータコア入口冷却水温度センサ66の検出温度の誤差幅であるが、第2変動幅ΔTH2は、ヒータコア吹出温度THを検出するセンサの検出温度の誤差幅であってもよい。
【符号の説明】
【0283】
11 圧縮機
12 凝縮器(高圧側熱交換器)
13 第1膨張弁(減圧部)
14 空気側蒸発器(蒸発器)
16 第2膨張弁(減圧部、冷媒流れ切替部)
17 冷却水側蒸発器(蒸発器)
20 高温冷却水回路(高温熱媒体回路)
22 ヒータコア(空気加熱器)
23 高温側ラジエータ(放熱器)
25 ヒータコア流路開閉弁(高温熱媒体調整部、空気加熱器側調整部)
26 ラジエータ流路開閉弁(高温熱媒体調整部、放熱器側調整部)
60 制御装置(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
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図13
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