(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】プリプレグ、プリント配線基板および半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20240214BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08J5/24 CFC
H05K1/03 610L
(21)【出願番号】P 2019219244
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智行
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雄基
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-231222(JP,A)
【文献】特開2014-032979(JP,A)
【文献】特開2000-349439(JP,A)
【文献】特開2015-070025(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033731(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
B32B 1/00-43/00
C08J 5/04-5/10
C08J 5/24
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物が繊維基材に含浸したプリプレグであって、
当該プリプレグの厚みは12~25μmであり、
当該プリプレグを5枚重ねたものを、開始温度60℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hzで溶融粘度を測定したときの、測定開始時の溶融粘度をη
0、最低溶融粘度をη
1としたとき、η
1/η
0は0.035以下であ
り、
前記熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含み、
前記無機充填材は、平均粒径が100nm以下であるナノシリカ粒子を含む、プリプレグ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む、プリプレグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂を含む、プリプレグ。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の比率は、80質量%以下である、プリプレグ。
【請求項5】
請求項
1~
4のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
前記無機充填材の少なくとも一部は、前記繊維基材を構成する繊維の間に存在している、プリプレグ。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
前記繊維基材の厚さは、20μm未満である、プリプレグ。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
前記繊維基材の坪量は、19g/m
2未満である、プリプレグ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
前記繊維基材は、複数の経糸が集合した経糸束と、複数の緯糸が集合した緯糸束とが、互いに交差するように織成して構成されたものである、プリプレグ。
【請求項9】
請求項
8に記載のプリプレグであって、
前記経糸束の密度が80本/25mm以上であり、前記緯糸束の密度が80本/25mm以上である、プリプレグ。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
前記繊維基材はガラス繊維基材である、プリプレグ。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
η
1が100~3000Pa・sである、プリプレグ。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
前記測定において、測定開始から最低溶融粘度に到達するまでの時間t
1が600~2100秒である、プリプレグ。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
前記測定において、測定開始から、再び溶融粘度がη
0になるまでの時間t
2が2400秒以上である、プリプレグ。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載のプリプレグの硬化物で構成された絶縁層を備えるプリント配線基板。
【請求項15】
請求項
14に記載のプリント配線基板に半導体素子を搭載した半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、プリント配線基板および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等の製造において、熱硬化性樹脂組成物が繊維基材に含浸した「プリプレグ」がしばしば用いられる。
【0003】
一例として、特許文献1には、強化繊維(A)、硬化物の曲げ弾性率が2.8GPa以上5.7GPa以下であるエポキシ樹脂組成物(B)および硬化物の曲げ弾性率が3.1GPa以上6.0GPa以下であるエポキシ樹脂組成物(C)からなるプリプレグが記載されている。このプリプレグにおいて、エポキシ樹脂組成物(C)の硬化物の曲げ弾性率は、エポキシ樹脂組成物(B)の硬化物の曲げ弾性率より大きく、また、エポキシ樹脂組成物(C)はエポキシ樹脂組成物(B)より表面側に偏在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子機器の一層の高機能化、軽量化、小型化要求にともなって、プリント配線基板には一層の薄型化が求められている。そのため、プリプレグにも薄型化が求められている。
【0006】
プリント配線基板の製造においては、プリプレグを高温高圧条件でプレスすることにより、プリプレグ中の樹脂成分を溶融/流動させて凹凸のある回路基板を埋め込むことがある。しかし、単純にプリプレグを薄型化すると、(プレスの際に溶融/流動する樹脂の量が減るなどして)回路基板の埋め込み性が悪化する可能性がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、埋め込み性が良好な薄型のプリプレグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0009】
本発明によれば、
熱硬化性樹脂組成物が繊維基材に含浸したプリプレグであって、
当該プリプレグの厚みは12~25μmであり、
当該プリプレグを5枚重ねたものを、開始温度60℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hzで溶融粘度を測定したときの、測定開始時の溶融粘度をη0、最低溶融粘度をη1としたとき、η1/η0は0.035以下である、プリプレグ
が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
前記プリプレグの硬化物で構成された絶縁層を備えるプリント配線基板
が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、
前記プリント配線基板に半導体素子を搭載した半導体装置
が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、埋め込み性が良好な薄型のプリプレグが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】溶融粘度の測定により得られる溶融粘度-時間のグラフの概形を示す図である。
【
図2】プリント配線基板の構成の一例を示す断面図である。
【
図3】半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図4】実施例の「埋め込み性の評価」において、加熱プレスの条件(温度と圧力のプロファイル)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に
図2以降において、
図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
【0015】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0016】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0017】
<プリプレグ>
本実施形態のプリプレグは、熱硬化性樹脂組成物が繊維基材に含浸したプリプレグである。
本実施形態のプリプレグの厚みは12~25μmである。
本実施形態のプリプレグを5枚重ねたものを、開始温度60℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hzで溶融粘度を測定したときの、測定開始時の溶融粘度をη0、最低溶融粘度をη1としたとき、η1/η0は0.035以下である。
【0018】
本発明者らは、厚みが12~25μmという比較的薄いプリプレグにおいても、そのプリプレグを加熱したときの最低溶融粘度が十分に小さくなるように、プリプレグを設計した。別の言い方として、本発明者らは、上記条件での測定における溶融粘度η1を、埋め込み性を良化させる制御因子として設定し、そのη1の値がη0よりも十分小さくなるプリプレグを、(厚み12~25μmという制約の中で)設計した。
η1/η0が0.035以下であることにより、厚みが12~25μmという比較的薄いプリプレグにおいても、プリント配線基板の製造で通常適用される加熱プレス条件で、プリプレグ中の樹脂成分が十分に流動することとなる。そして、良好な埋め込み性が得られる。
【0019】
ちなみに、溶融粘度の測定において、プリプレグを「5枚」重ねている理由は、プリプレグ1枚では薄すぎて、定量的で再現性のあるデータが取得しにくいためである。
【0020】
厚みが12~25μmであり、かつ、η1/η0が0.035以下であるプリプレグは、熱硬化性樹脂組成物の素材や組成などを適切に選択すること、繊維基材の素材や厚みなどを適切に選択すること、適切な製造条件を選択すること、等により製造することができる。
特に、(i)熱硬化性樹脂の少なくとも一部として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いること、(ii)熱硬化性樹脂組成物に適切な無機充填材(典型的にはシリカ粒子)を適量含めること、(iii)繊維基材として厚さ、重さ、繊維の密度などが適当なものを用いること、(iv)適切な方法により繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させること、等のうち1または2以上の工夫により、本実施形態のプリプレグを製造することができる。
【0021】
以下、本実施形態のプリプレグの素材、物性等について説明を続ける。
以下では、まず、繊維基材に含浸した「熱硬化性樹脂組成物」の構成成分について説明する。その後、繊維基材について説明する。
【0022】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含むことができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などが挙げられる。
【0023】
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂を含むことで、特に埋め込み性を良好とすることができる。
【0024】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2~4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0025】
エポキシ樹脂は、実質的にハロゲン原子を含まないものであってもよい。「実質的」にハロゲン原子を含まないとは、エポキシ樹脂の合成過程において使用されたハロゲン系成分に由来するハロゲンが、ハロゲン除去工程を経てもなお、エポキシ樹脂に残存していることを許容することを意味する。実質的にハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂において、ハロゲン原子の含有量は、例えば30ppm以下とすることができる。
【0026】
熱硬化性樹脂組成物は、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFと、エピクロルヒドリンとの縮合反応により得られるエポキシ樹脂)を含むことが好ましい。本発明者らの知見によれば、特にこれら樹脂の溶融時の粘度は小さいため、η1/η0を0.035以下と設計し、そして良好な埋め込み性を得るために好ましく用いられる。
【0027】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂と、他のエポキシ樹脂とを併用することで、良好な埋め込み性を得つつ、プリプレグの硬化物の耐熱性や難燃性を高めることができる場合がある。
【0028】
特に併用することが好ましいエポキシ樹脂として、アラルキル型エポキシ樹脂を挙げることができる。アラルキル型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(1)で表される。
【0029】
【0030】
一般式(1)中、AおよびBは、ベンゼン環、ビフェニル構造等の芳香族環を表す。AおよびBの芳香族環の水素は置換基により置換されていてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられる。nは繰返し単位数を表し、例えば1~10の整数である。)
【0031】
アラルキル型エポキシ樹脂としてより具体的には、以下一般式(1a)または(1b)で表されるものが挙げられる。
【0032】
【0033】
一般式(1a)中、nは、1~5の整数を示す。
【0034】
【0035】
一般式(1b)中、nは、1~5の整数を示す。
【0036】
上記以外のエポキシ樹脂としては縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。
【0037】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、テトラフェン、またはその他の縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂である。縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、複数の芳香環が規則的に配列することができるため低熱膨張性に優れる。また、ガラス転移温度も高いため耐熱性に優れる。さらに、繰返し構造の分子量が大きいため従来のノボラック型エポキシ樹脂に比べ難燃性に優れる。
【0038】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、フェノール類化合物、アルデヒド類化合物、および縮合環芳香族炭化水素化合物から合成された、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したものである。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含んでもよい。また、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂とを併用してもよい。
【0040】
エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、シアネート樹脂を好ましく挙げることができる。
シアネート樹脂は、分子内にシアネート基(-O-CN)を有する樹脂であり、シアネート基を分子内に2個以上を有する樹脂を用いることができる。このようなシアネート樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
シアネート樹脂を用いることにより、プリプレグの硬化物の線膨張係数を小さくしやすい。また、プリプレグの硬化物の電気特性(低誘電率、低誘電正接)、機械強度等を高めやすい。
【0041】
シアネート樹脂としては、ノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニルアルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型シアネート樹脂が好ましく、ノボラック型シアネート樹脂がより好ましい。
ノボラック型シアネート樹脂を用いることにより、プリプレグの硬化物の架橋密度が増加し、耐熱性が向上する。この理由としては、ノボラック型シアネート樹脂は、硬化反応後にトリアジン環を形成することが挙げられる。さらに、ノボラック型シアネート樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。また、ノボラック型シアネート樹脂を含むプリプレグの硬化物は優れた剛性を有する。よって、プリプレグの硬化物の耐熱性をより一層向上させることができる。
【0042】
ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
【0043】
【0044】
一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。nは特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。nが上記下限値以上であると、ノボラック型シアネート樹脂の耐熱性が向上し、加熱時に低量体が脱離、揮発することを抑制できる。また、nは10以下が好ましく、7以下がより好ましい。nが上記上限値以下であると、溶融粘度が高くなりすぎるのを抑制でき、プリプレグの成形性を向上させることができる。
【0045】
シアネート樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、特に限定されないが、500以上が好ましく、600以上がより好ましい。Mwがこの下限値以上であると、絶縁樹脂層を作製した場合にタック性の発生を抑制でき、絶縁樹脂層同士が接触したとき互いに付着したり、樹脂の転写が生じたりするのを抑制することができる。Mwの上限は特に限定されないが、4,500以下が好ましく、Mw3,000以下がより好ましい。Mwがこの上限値以下であると、反応が速くなるのを抑制でき、プリント配線基板とした場合に、成形不良が生じたり、層間ピール強度が低下したりするのを抑制できる。
シアネート樹脂などのMwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
シアネート樹脂を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、シアネート樹脂のほか、ベンゾオキサジン樹脂も好ましく挙げることができる。ベンゾオキサジン樹脂は、例えば、下記一般式(c1)または(c2)で表される。
【0047】
【0048】
一般式(c1)および(c2)において、
Rは一般式-A1-x-A2-で表される基であり、ここでA1およびA2は、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示し、また、xは結合基であり、直接結合、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、-S-、-CH2-CH2-、-C=C-、-C≡C-、-CO-、-CO-O-、-CO-NH-、-CH=N-、-CH=N-N=CH-、-N=N-または-N(O)=N-の群から選ばれる2価の置換基であり、
R'は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキニル基である。
A1、A2は各々独立して、ベンゼン環を有する炭素数6~12の炭化水素基、ナフタレン環を有する炭素数10~20の炭化水素基、ビフェニル構造を有する炭素数12~24の炭化水素基、ベンゼン環を3個以上有する炭素数12~36の炭化水素基、縮合芳香族基を有する炭素数12~36の炭化水素基、炭素数4~36の脂環式複素環基から選択されるものであることが好ましい。
【0049】
A1、A2の具体例としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、シクロヘキシル、ピリジル、ピリミジル、チオフェニレン等が挙げられる。また、これらは無置換であってもよく、脂肪族炭化水素基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などの置換基を有する誘導体であってもよい。
【0050】
xとしては、例えば、直接結合、-CH2-、-CH2-CH2-、-C=C-、-C≡C-、-CO-O-、-CO-NH-、-CH=N-、-CH=N-N=CH-、-N=N-または-N(O)=N-の群から選ばれる2価の基が好ましい。
【0051】
熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の全固形分中、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。熱硬化性樹脂の量が適度に多いことで、ハンドリング性が向上し、絶縁樹脂層を形成するのが容易となる。また、埋め込み性を一層良くすることができる。一方、熱硬化性樹脂の量が多すぎないことで、絶縁樹脂層の強度や難燃性が向上したり、絶縁樹脂層の線膨張係数が低下し半導体装置の反りの低減効果が向上したりする場合がある。
【0052】
熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、全ての熱硬化性樹脂中のエポキシ樹脂の比率は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~60質量%である。このとき、熱硬化性樹脂の残分は、好ましくは上述のシアネート樹脂やベンゾオキサジン樹脂などである。
熱硬化性樹脂組成物がビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂を含む場合、全てのエポキシ樹脂中のビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂の比率は、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~30質量%である。このとき、エポキシ樹脂の残部は、好ましくは上述のアラルキル型エポキシ樹脂である。
熱硬化性樹脂の種類およびその量を調整することで、加熱プレスの際の樹脂成分の溶融/流動性が最適化され、埋め込み性などの諸性能が一層高まる。
【0053】
(硬化促進剤)
熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。これにより硬化性を向上させることができる。硬化性の向上はプリント配線基板の生産性向上などの点で好ましい。
【0054】
硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させるものである限り特に限定されない。硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、およびオニウム塩化合物から選択される1または2以上を挙げることができる。
【0055】
硬化促進剤を用いる場合、その量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分中、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上である。ある程度の量の硬化促進剤を用いることで、熱硬化性樹脂組成物の硬化性をより効果的に向上させることができる。
一方、硬化促進剤を用いる場合、その量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分中、例えば2.5質量%以下、好ましくは1質量%以下である。硬化促進剤の量が多すぎないことにより、熱硬化性樹脂組成物/プリプレグの保存性が高まる。
【0056】
(無機充填材)
熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含むことができる。これにより、プリプレグの機械的強度の向上を図ったり、プリプレグの熱膨張率を適切に調整したりすることができる。
無機充填材としては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカなどの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などを挙げることができる。
【0057】
無機充填材としては、加熱による発生ガス(気体)量が少ないものが好ましい。好ましい無機充填材は、タルク、ベーマイト、シリカ等である。中でもシリカ(シリカ粒子)が、入手容易性、表面処理のしやすさ(シランカップリング剤との相性の良さ)および表面処理による他成分との相溶性向上などの観点で好ましい。シリカ粒子のなかでも、特に溶融シリカ、とりわけ球状溶融シリカが、低熱膨張性に優れる点で好ましい。溶融シリカの形状には破砕状および球状がある。繊維基材への十分な含浸性や埋め込み性の点では、球状シリカが好ましい。
【0058】
無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。無機充填材の粒径が適度に大きいことで、繊維基材に含浸させる前の熱硬化性樹脂組成物がワニス状であるときに、その粘度が高くなるのを抑制でき、プリプレグ作製時の作業性を向上させることができる。
一方、無機充填材の平均粒径は、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。無機充填材の粒径が大きすぎないことで、繊維基材に含浸させる前の熱硬化性樹脂組成物がワニス状であるときに、ワニス中で無機充填剤の沈降を抑制でき、より均一なプリプレグを得ることができる。
【0059】
一態様として、無機充填材は、平均粒径が100nm未満のナノシリカ(特に球状ナノシリカ)を含むことが好ましい。このようなナノシリカは、粒径の大きい無機充填材の隙間や繊維基材のストランド中に存在できる。よって、ナノシリカを含むことにより、充填材の充填性をさらに向上させることができる。
ナノシリカの平均粒径は、100nm未満であればよく、具体的には30~80nm、より具体的には40~70nmである。
【0060】
無機充填材の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定することで求めることができる。測定は通常湿式で行われる。無機充填材の濃度が高い場合には、メチルエチルケトン等で適宜希釈して測定する。
【0061】
無機充填材の量は、熱硬化性樹脂組成物の全体中、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。無機充填材の量が多すぎないことにより、熱硬化性樹脂等の加熱により溶融/流動する成分を十分多く用いることができるため、埋め込み性の一層の向上を図ることができる。
一方、無機充填材の量は、熱硬化性樹脂組成物の全体中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。ある程度の量の無機充填材を用いることで、機械的強度の向上や熱膨張率の調整など、無機充填材を用いることによる効果を十分に得ることができる。
【0062】
(カップリング剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤は熱硬化性樹脂組成物の調製時に直接添加してもよいし、シリカなどの無機充填材にあらかじめ添加しておいてもよい。カップリング剤の使用により無機充填材と他成分の相溶性が向上し、加熱時の流動性が向上すると考えられる。よって、埋め込み性が一層向上すると考えられるまた、カップリング剤を用いることにより、銅箔、銅配線、その他、プリント配線基板の製造時にプリプレグと接触しうる他材料との密着性を向上させることができる。
【0063】
カップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。本実施形態においては、シランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0064】
シランカップリング剤としては、各種のものを用いることができるが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン等が挙げられる。
具体的な化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうちの一種または二種以上を組み合せて用いることができる。これらのうちエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシランが好ましく、アミノシランとしては、1級アミノシラン又はアニリノシランがより好ましい。
【0065】
カップリング剤を用いる場合、その含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分中、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上である。カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、無機充填材とカップリング剤とが十分に反応し、十分な相溶性向上効果が狙える。一方、カップリング剤を用いる場合、その含有量の上限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分中、例えば3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。カップリング剤の含有量が多すぎないことで、カップリング剤が熱硬化性樹脂の硬化反応に悪影響を与えることが抑えられると考えられる。そのため、プリプレグの硬化物の曲げ強度等の低下を抑制することができると考えられる。
【0066】
(その他成分)
熱硬化性樹脂組成物は、緑、赤、青、黄、黒等の染料、黒色顔料等の顔料、低応力剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤、UV吸収剤等の添加剤のうち、1または2以上を含んでもよい。これらの中でも、レベリング剤やUV吸収剤が好ましく用いられる。
【0067】
レベリング剤の使用により、例えば、プリプレグの製造の際(熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させる際)に、熱硬化性樹脂組成物のハジキが抑えられ、表面欠陥の発生が抑えられるメリットがある。
レベリング剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のBYK361N、BYK350、BYK352、BYK354、BYK355、BYK356、BYK358N、BYK380N、BYK381、BYK392、BYK394などの、(メタ)アクリル系のレベリング剤が好ましく挙げられる。
【0068】
UV吸収剤については、例えば、ソルダーレジスト開口形成時に不要な部位を露光しないように配合することができる。
具体的には、プリント配線基板の製造において、銅回路形成後にソルダーレジストを基板表面にラミネート、UV露光、現像、の一連の工程により開口を形成することがある。このとき、基板表面において銅回路がない部分はプリプレグが露出しており、仮にプリプレグが紫外線を吸収しない場合、反対面のソルダーレジストに紫外線があたってしまい、不要部分を露光し適切な開口形成ができない可能性がある。このような不具合を避けるためにUV吸収剤が好ましく用いられる。
UV吸収剤としては、高圧水銀灯から発せられる紫外線やi線などを吸収する化合物を特に制限なく用いることができる。
【0069】
顔料としては、カオリン、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青等の無機顔料、フタロシアニン等の多環顔料、アゾ顔料等が挙げられる。
【0070】
染料としては、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、インジゴイド、オキサジン、キナクリドン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン、フタロシアニン、アゾメチン等が挙げられる。
【0071】
(繊維基材)
熱硬化性樹脂組成物に関する説明の次に、繊維基材について説明する。
【0072】
繊維基材の材質は特に限定されず、ガラスクロスなどのガラス繊維基材、ポリベンゾオキサゾール樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維などのポリアミド系樹脂繊維基材、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維などのポリエステル系樹脂繊維基材、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維などを主成分として構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙などを主成分とする紙基材などの有機繊維基材などが挙げられる。
これらの中でも、強度、吸水率、適切な線膨張係数などの点から、ガラス繊維基材が好ましい。ガラス繊維基材としては、Tガラス、Sガラス、Eガラス、NEガラス、および石英ガラスからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0073】
繊維基材は、織布、不織布などであることができる。繊維基材は、好ましくは、複数の経糸が集合した経糸束と、複数の緯糸が集合した緯糸束とが、互いに交差するように織成して構成されたものである。このような繊維基材には、熱硬化性樹脂組成物が均一に含浸しやすいと考えられる。そのため、埋め込み性や機械的強度のムラが小さいプリプレグを製造することができると考えられる。
【0074】
繊維基材が、複数の経糸が集合した経糸束と、複数の緯糸が集合した緯糸束とが、互いに交差するように織成して構成されたものである場合、経糸束の密度は、好ましくは80本/25mm以上、より好ましくは85本/25mm以上であり、緯糸束の密度は、好ましくは80本/25mm以上、より好ましくは85本/25mm以上である。
経糸束および/または緯糸束の密度が80本/25mm以上であることにより、繊維基材が薄い場合であっても十分な強度を得やすい。
別観点として、密度が80本/25mm以上であるということは、繊維の1本1本が非常に細いということである。細い繊維により繊維基材が構成されることで、繊維基材がしなやかに変形しやすい。このことは、埋め込み性の一層の向上に効果的である。
経糸束の密度および緯糸束の密度の上限値は特にない。ただし、コスト等を考慮すると、経糸束の密度および緯糸束の密度の上限値は、例えば150本/25mm、具体的には125本/25mmである。
【0075】
繊維基材の厚さは、プリプレグ全体の厚みが12~25μmである限りは任意の厚みであることができる。具体的には、繊維基材の厚さは、20μm未満であることが好ましく、18μm未満であることがより好ましく、15μm未満であることがさらに好ましい。
繊維基材の厚さが20μm未満であることにより、全体の厚みが25μm以下のプリプレグを設計しやすい。また、プリプレグ全体中の熱硬化性樹脂の比率を高めることができ、埋め込み性のさらなる向上につながる。
繊維基材の厚さの下限値は特にないが、コスト、入手性、強度などの点で、例えば1μm、好ましくは5μm、より好ましくは10μmである。
【0076】
繊維基材の坪量(1m2あたりの繊維基材の質量)は特に限定されないが、坪量は、19g/m2未満であることが好ましく、8.5~13g/m2であることがより好ましく、8.5~11g/m2であることがさらに好ましい。
坪量が19g/m2未満であるということは、(繊維基材の厚みにもよるが)繊維基材の密度がある程度小さいということを意味する。坪量が19g/m2未満である繊維基材を用いることにより、繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物が含浸しやすくなる。このことは、ボイドの発生抑制や、プリプレグの均質性向上の点で好ましい。
坪量の下限は特にないが、コスト、入手性、強度などの点で、例えば3g/m2、好ましくは5g/m2、より好ましくは7g/m2である。
【0077】
繊維基材の使用枚数は、典型的には1枚である。ただし、薄い繊維基材を複数枚重ねて使用してもよい。この場合、複数枚合計したときの厚み、坪量などが上記範囲内となることが好ましい。
【0078】
(繊維基材と熱硬化性樹脂組成物の両方に関係する事項)
無機充填材の少なくとも一部は、繊維基材を構成する繊維の間に存在していることが好ましい。繊維の間に無機充填材が存在することで、繊維間の空隙が少なくなる。このことは、プリプレグの硬化物の強靭性向上に寄与する。特に、本実施形態のプリプレグは薄いため、プリプレグの硬化物の強靭性向上は重要である。また、繊維間の空隙が少なくなることにより、プリプレグの硬化物の高弾性化と低線膨張係数化の両立を図りやすい。
無機充填材の少なくとも一部が、繊維基材を構成する繊維の間に存在しているか否かは、例えば、プリプレグの断面を顕微鏡で観察することにより確認することができる。
【0079】
プリプレグ全体中の、繊維基材と無機充填材との合計比率は、好ましくは55~90質量%、より好ましくは70~85質量%である。繊維基材と充填材との合計が上記範囲を満たすと、加熱してプリント配線基板に適用する際の成形性や埋め込み性と、プリプレグの硬化物の剛性とを両立しやすい。
【0080】
本実施形態において、η1/η0は0.035以下であればよいが、η1/η0は好ましくは0.030~0.008、より好ましく0.025~0.010、さらに好ましくは0.018~0.008である。
η1/η0が小さすぎないことにより、常温におけるプリプレグのタック性が小さくなる傾向がある。タック性の小ささは、プリプレグの取り扱い性や、プリプレグの保管安定性の点で好ましい(プリプレグを重ねた状態で保管したり、プリプレグをロール状として保管したりする場合の結着が抑えられる)
【0081】
本実施形態において、η1は、好ましくは100~3000Pa・s、より好ましくは300~2000Pa・s、さらに好ましくは400~1000Pa・sに設計される。η1が100Pa・s以上であることにより、埋め込みの際の過度な流動が抑えられ、流動した樹脂成分のはみ出し等を抑えやすい。η1が2000Pa・s以下であることにより、例えば、高さ5μm程度の高さの銅回路パターンが形成された基板を埋め込む際に、十分な埋め込み性・成形性を得ることができる。
【0082】
上述の溶融粘度の測定において、測定開始から最低溶融粘度に到達するまでの時間t1は、好ましくは600~2100秒である。t1がこの程度の数値となるようにプリプレグを設計することで、通常採用されるプリント配線基板の製造条件(プレス温度、時間等)において、特に良好な埋め込み性の効果を得やすい。
【0083】
上述の溶融粘度の測定において、測定開始から、再び溶融粘度がη0になるまでの時間t2は、好ましくは2400秒以上、より好ましくは2400~3200秒、さらに好ましくは2400~2800秒である。t2が2400秒以上となるようにプリプレグを設計することで、流動した樹脂成分が回路基板上の凹凸を埋め込むのに十分な時間を確保することができる。つまり、埋め込み性が一層高まると考えられる。
【0084】
参考のため、
図1にて、溶融粘度の測定により得られる溶融粘度-時間のグラフの概形と、η
0、η
1、t
1およびt
2を示す。
【0085】
<プリプレグの製造方法>
本実施形態のプリプレグの製造方法は特に限定されない。熱硬化性樹脂組成物が繊維基材に含浸した状態のプリプレグが製造される限り、任意の製造方法を適用することができる。
【0086】
プリプレグは、例えば、(1)ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を調製し、(2)その組成物を繊維基材へ含浸させること、により製造することができる。以下、この製造方法について簡単に説明する。
【0087】
(1)ワニス状の熱硬化性樹脂組成物の調製は、上述した熱硬化性樹脂組成物の各成分(熱硬化性樹脂、無機充填材等)を、適当な溶剤に溶解または分散させることにより行うことができる。
溶剤は、典型的には有機溶剤を含む。好ましく用いられる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等を挙げることができる。溶剤は単独溶剤であっても混合溶剤であってもよい。
各成分を溶剤に溶解または分散させる際には、各種の装置を用いてもよい。例えば、超音波分散装置、高圧衝突式分散装置、高速回転分散装置、ビーズミル装置、高速せん断分散装置、自転公転式分散装置などの各種混合装置を用いることができる。
【0088】
ワニス状の熱硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、(2)の含浸が可能な限り特に限定されないが、通常30~80質量%、好ましくは40~70質量%である。これにより、(2)の含浸の作業性や、成膜性が良好となる
【0089】
(2)の含浸については、例えば、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を、スキージ等を用いて外力を加えながら繊維基材に含浸させる方法を挙げることができる。このように、外力を加えながら含浸処理をすることで、無機充填材の少なくとも一部を、繊維基材を構成する繊維の間に存在させやすい。
その他、含浸の方法・条件については、公知技術を適宜適用することができる。
【0090】
含浸後、例えば80~200℃で1~10分処理して、溶剤を乾燥させることにより、プリプレグを得ることができる。乾燥の方法・装置は特に限定されず、熱風乾燥、赤外線加熱など公知の方法を適用することができる。
【0091】
<プリント配線基板、半導体装置>
本実施形態のプリント配線基板は、上記のプリプレグの硬化物で構成された絶縁層を備えることができる。
本実施形態において、プリプレグの硬化物は、例えば、通常のプリント配線基板のコア層やビルドアップ層やソルダーレジスト層、コア層を有しないプリント配線基板におけるビルドアップ層やソルダーレジスト層、PLPに用いられるコアレス基板の層間絶縁層やソルダーレジスト層、MIS基板の層間絶縁層やソルダーレジスト層等であることができる。
絶縁層は、複数の半導体パッケージを一括して作成するために利用させる大面積のプリント配線基板において、そのプリント配線基板を構成する層間絶縁層やソルダーレジスト層であることもできる。
【0092】
プリント配線基板の一例(プリント配線基板300)を、
図2(a)(b)を参照しつつ説明する。
プリント配線基板300は、プリプレグの硬化物で構成された絶縁層を備える。プリント配線基板300は、
図2(a)に示されるように、絶縁層301(コア層)と絶縁層401(ソルダーレジスト層)とを備える構造を有していてもよい。また、上記プリント配線基板300は、
図2(b)に示すように、絶縁層301(コア層)、絶縁層305(ビルドアップ層)および絶縁層401(ソルダーレジスト層)を備える構造を有していてもよい。これらのコア層、ビルドアップ層のそれぞれは、例えば、本実施形態のプリプレグの硬化物で構成することができる。
【0093】
プリント配線基板300は、片面プリント配線基板であってもよいし、両面プリント配線基板または多層プリント配線基板であってもよい。両面プリント配線基板とは、絶縁層301の両面に金属層303を積層したプリント配線基板である。また、多層プリント配線基板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により、コア層である絶縁層301に、ビルドアップ層(例えば、絶縁層305)を2層以上積層したプリント配線基板である。
【0094】
ビアホール307は、層間を電気的に接続するための孔であればよく、貫通孔および非貫通孔いずれでもよい。ビアホール307は金属を埋設して形成されてもよい。この埋設した金属は、無電解金属めっき膜308で覆われた構造を有していてもよい。
【0095】
金属層303は、例えば、回路パターン、電極パットなどのうちいずれかである。金属層303は、例えば、金属箔105および電解金属めっき層309の金属積層構造を有していてもよい。
金属層303は、例えば、薬液処理またはプラズマ処理された金属箔105または、プリプレグの硬化物からなる絶縁層(例えば、絶縁層301や絶縁層305)の面上に、SAP(セミアディティブプロセス)法により形成される。例えば、金属箔105または絶縁層301,305上に無電解金属めっき膜308を施した後、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより電解金属めっき層付けを行い、めっきレジストの除去とフラッシュエッチングによる電解金属めっき層309をパターニングすることにより、金属層303を形成する。
【0096】
次に、半導体装置の一例(半導体装置400)について説明する。
図3(a)(b)は、半導体装置400の構成の一例を示す断面図である。
半導体装置400は、プリント配線基板300と、プリント配線基板300の回路層上に搭載された、またはプリント配線基板300に内蔵された半導体素子と、を備えることができる。
【0097】
例えば、
図3(a)に示される半導体装置400は、
図2(a)に示されるプリント配線基板300の回路層(金属層303)の上に、半導体素子407が搭載された構造を有する。一方、
図3(b)に示される半導体装置400は、
図2(b)に示されるプリント配線基板300の回路層(金属層303)の上に、半導体素子407が搭載された構造を有する。半導体素子407は、封止材層413に覆われている。このような半導体パッケージは、半田バンプ410および金属層303を介して、半導体素子407が、プリント配線基板300と電気的に接続するフリップチップ構造であってもよい。
【0098】
半導体装置の構造としては、上記フリップチップ接続構造に限定されずに、各種の構造を有してもよいが、例えば、ファンアウト構造を用いることができる。本実施形態のプリプレグの硬化物からなる絶縁層は、ファンアウト構造を有する半導体パッケージの製造プロセスにおいて、基板反りや基板クラックを抑制することができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
熱硬化性樹脂組成物が繊維基材に含浸したプリプレグであって、
当該プリプレグの厚みは12~25μmであり、
当該プリプレグを5枚重ねたものを、開始温度60℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hzで溶融粘度を測定したときの、測定開始時の溶融粘度をη
0
、最低溶融粘度をη
1
としたとき、η
1
/η
0
は0.035以下である、プリプレグ。
2.
1.に記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む、プリプレグ。
3.
1.または2.に記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂を含む、プリプレグ。
4.
1.~3.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含む、プリプレグ。
5.
4.に記載のプリプレグであって、
前記無機充填材は、シリカ粒子を含むプリプレグ。
6.
4.または5.に記載のプリプレグであって、
前記無機充填材は、平均粒径が100nm以下であるナノシリカ粒子を含む、プリプレグ。
7.
4.~6.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の比率は、80質量%以下である、プリプレグ。
8.
4.~7.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記無機充填材の少なくとも一部は、前記繊維基材を構成する繊維の間に存在している、プリプレグ。
9.
1.~8.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記繊維基材の厚さは、20μm未満である、プリプレグ。
10.
1.~9.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記繊維基材の坪量は、19g/m
2
未満である、プリプレグ。
11.
1.~10.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記繊維基材は、複数の経糸が集合した経糸束と、複数の緯糸が集合した緯糸束とが、互いに交差するように織成して構成されたものである、プリプレグ。
12.
11.に記載のプリプレグであって、
前記経糸束の密度が80本/25mm以上であり、前記緯糸束の密度が80本/25mm以上である、プリプレグ。
13.
1.~12.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記繊維基材はガラス繊維基材である、プリプレグ。
14.
1.~13.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
η
1
が100~3000Pa・sである、プリプレグ。
15.
1.~14.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記測定において、測定開始から最低溶融粘度に到達するまでの時間t
1
が600~2100秒である、プリプレグ。
16.
1.~15.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記測定において、測定開始から、再び溶融粘度がη
0
になるまでの時間t
2
が2400秒以上である、プリプレグ。
17.
1.~16.のいずれか1つに記載のプリプレグの硬化物で構成された絶縁層を備えるプリント配線基板。
18.
17.に記載のプリント配線基板に半導体素子を搭載した半導体装置。
【実施例】
【0100】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
【0101】
<材料の準備>
プリプレグの製造のため、以下を準備した。
【0102】
(無機充填材)
SC4050:アドマテックス社製、平均粒径1.1μmの球状シリカ
アドマナノ:アドマテックス社製、平均粒径50nmの球状シリカ
【0103】
(カップリング剤)
A-187:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、エポキシ系シランカップリング剤
【0104】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂1:P-d型ベンゾオキサジン(四国化成社製、以下構造のベンゾオキサジン化合物)
【0105】
【化6】
熱硬化性樹脂2:NC3000H(日本化薬社製、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、前掲の一般式(1b)に該当)
熱硬化性樹脂3:830S(DIC社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)
熱硬化性樹脂4:YL6810(三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
熱硬化性樹脂5:PT-30(ロンザ社製、ノボラック型シアネート樹脂)
【0106】
(硬化促進剤)
TBZ(四国化成社製、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール)
【0107】
(レベリング剤)
BYK361N(ビックケミー・ジャパン社製、アクリル系レベリング剤)
【0108】
(UV吸収剤)
HR-50(中央合成化学社製、ピラゾリン骨格を有する化合物)
【0109】
(ガラス繊維基材)
#1007:日東紡社製、WEA1007、坪量9.2g/m2、厚み11μm、経糸束の密度105×本/25mm、緯糸束の密度105本/25mm
#1027:日東紡社製、WEA1027、坪量20g/m2、厚み20μm、経糸束の密度74本/25mm、緯糸束の密度75本/25mm
【0110】
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
高速撹拌装置を用いて、後掲の表1に示される各成分を同表に記載の割合で、メチルエチルケトンの混合溶剤に溶解または分散させて混合液を得た。濃度については、不揮発成分濃度が70質量%程度になるようにした。その後、混合液をポアサイズ10μmのフィルターに通して、混合液をろ過した。
以上により、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
表1における各成分の配合割合を示す数値は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対する各成分の配合割合(質量%)を示している。
【0111】
<プリプレグの製造>
ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を繊維基材上に塗布し、その後、170℃の加熱炉で2分間乾燥処理を施すことで、熱硬化性樹脂組成物が繊維基材に含浸したプリプレグを得た。
プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の含有量については、後掲の表に記載した。
【0112】
<溶融粘度の測定>
Anton Paar Germany GmbH社製の装置「Physica MCR 301」を用い、プリプレグを5枚重ねたものの溶融粘度を、開始温度60℃、昇温速度3℃/分、周波数1Hzの条件で測定した。
測定開始時をt=0として、溶融粘度と時間との関係をプロットしてグラフを得た。得られたグラフから、η0、η1、t1およびt2を求めた。
【0113】
<無機充填材の一部が繊維基材を構成する繊維の間に存在していることの確認>
各実施例のプリプレグを220℃で2時間熱処理した硬化物の断面を電子顕微鏡で撮影した(倍率1000倍)。断面写真より、熱硬化性樹脂組成物が繊維基材を構成する繊維の間に十分含浸し、その結果、無機充填材の一部が繊維基材を構成する繊維の間に存在していることを確認した。
【0114】
<埋め込み性の評価>
評価用の回路基板(プリプレグを埋め込む対象)として、銅厚6μm、残銅率50%の銅配線が表面に形成された基板(0.5mm×0.5mmの正方形状の銅パターンや、縦横0.5mmピッチの網目状の銅パターンが形成されている)を準備した。
この評価用の回路基板の銅配線が形成された面に、プリプレグを接触させ、真空プレス装置を用いて加熱しながら押圧することで、評価用の回路基板とプリプレグの硬化物との積層体(プリント配線基板)を製造した。加熱プレスの具体的条件(温度と圧力のプロファイル)は、
図4に示されるようにした。
【0115】
室温まで冷却された積層体(プリント配線基板)を顕微鏡で観察した。ボイドが全くなかった場合を○(良い)、ボイドが1つでもあった場合を×(悪い)と評価した。
【0116】
<タック性の評価>
室温下、各実施例のプリプレグ2枚を重ね、5cm×5cmあたり100gの荷重をかけて、1日静置した。このとき、2枚のプリプレグが引っ付かなかったものを○(良い)、2枚のプリプレグが引っ付いたものを×(悪い)と評価した。
【0117】
熱硬化性樹脂組成物の組成、繊維基材に関する情報、プリプレグの厚み、η1/η0等の各種数値、評価結果などをまとめて表1に示す。
【0118】
【0119】
表1に示されるとおり、厚みが12~25μmであり、η1/η0が0.035以下である実施例1~6のプリプレグの、埋め込み性は良好であった。
一方、厚みは12~25μmであるものの、η1/η0は0.035超である比較例1および2のプリプレグの、埋め込み性の評価結果は芳しくなかった。
【0120】
ちなみに、参考例として挙げたプリプレグ(繊維基材として#1037を使用)の埋め込み性およびタック性評価は良好であったが、このプリプレグの厚みは25μmを超えるものであり、近年の薄型化の要求に十分に応えられるものではない。厚みが12~25μmであり、かつ、η1/η0が0.0250.035以下であるプリプレグを製造するには、熱硬化性樹脂組成物と繊維基材の両方を全体として最適化することが重要である。
【0121】
実施例をより詳細に見ると、実施例6と実施例1~5の対比より、η1/η0がある程度大きいことで、埋め込み性に加えてタック性も良好となることが理解される。
【符号の説明】
【0122】
300 プリント配線基板
301 絶縁層
303 金属層
305 絶縁層
307 ビアホール
308 無電解金属めっき膜
309 電解金属めっき層
400 半導体装置
401 絶縁層
407 半導体素子
410 半田バンプ
413 封止材層