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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】保炎装置及びエンジン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/18 20060101AFI20240214BHJP
   F02C 7/264 20060101ALI20240214BHJP
   F23Q 13/00 20060101ALI20240214BHJP
   B05B 12/08 20060101ALN20240214BHJP
   B05B 1/14 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
F23R3/18
F02C7/264
F23Q13/00 D
B05B12/08
B05B1/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019219463
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021089101
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】長尾 隆央
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光紀
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0237989(US,A1)
【文献】米国特許第05756924(US,A)
【文献】特開平08-068374(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0016169(US,A1)
【文献】特開2004-263695(JP,A)
【文献】特開2012-117535(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025294(WO,A1)
【文献】特開2008-258446(JP,A)
【文献】特開2011-001952(JP,A)
【文献】米国特許第05515681(US,A)
【文献】米国特許第09548585(US,B1)
【文献】特表2016-511387(JP,A)
【文献】米国特許第04302933(US,A)
【文献】特開2012-117533(JP,A)
【文献】特開昭58-133482(JP,A)
【文献】実開昭59-100925(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/18
F02C 7/264
F23Q 13/00
B05B 12/08
B05B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボファンエンジンの再熱器の燃焼場に形成された火炎にレーザ光を照射するレーザ照射器を備え、
当該レーザ照射器は、前記レーザ光を所定の角度ピッチで前記再熱器に複数形成された複数ヶ所の前記火炎に集光させる複数の集光光学系を備え、
前記集光光学系は、燃料噴射ノズルにより近い位置とより遠い位置とにレーザパルスを集光させ、
前記より遠い位置における前記レーザ光の集光位置は、前記燃料噴射ノズルが前記燃焼場に噴射する燃料の噴射中心に対して、前記より近い位置における前記レーザ光の集光位置よりも遠いことを特徴とする保炎装置。
【請求項2】
前記集光光学系は、複数ヶ所の前記火炎毎に設けられることを特徴とする請求項1に記載の保炎装置。
【請求項3】
前記レーザ光は、所定の時間間隔で繰り返すレーザパルスであることを特徴とする請求項1または2に記載の保炎装置。
【請求項4】
前記レーザ照射器は、物体の表面にレーザ光を集光させることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の保炎装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の保炎装置を備えることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保炎装置及びエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ターボファンエンジンのアフターバーナが開示されている。このアフターバーナは、保炎器(保炎板)を設けることにより、アフターバーナにおける火炎の吹き消えを抑制している。この保炎器(保炎板)は、燃料噴射ノズルの下流側に設けられた「くの字」状の耐熱合金製部材であり、前段のタービンから供給される高速の排気ガス中に局所的な低速領域を形成し、この低速領域において火炎を保持(保炎)するものである。なお、ターボファンエンジンでは、アフターバーナだけではなく、主燃焼器にも保炎器(保炎板)が設けられており、前段のコンプレッサから供給される圧縮空気による火炎の吹き消えを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/178477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術における保炎器(保炎板)は、燃焼ガスの流れに対して抵抗として作用するものであり、保炎性能の副産物として燃焼ガスの流速を低減させ得るものである。すなわち、従来の保炎器(保炎板)は、保炎機能の代償としてアフターバーナや主燃焼器の本来的機能を阻害するものである。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、燃焼ガスの流速低減作用を従来よりも緩和することが可能な保炎装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、保炎装置に係る第1の解決手段として、燃焼場に形成された火炎にレーザ光を照射するレーザ照射器を備え、当該レーザ照射器は、前記レーザ光を前記火炎に集光させる集光光学系を備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、保炎装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記火炎が前記燃焼場の複数ヶ所に形成される場合、前記レーザ照射器は、複数ヶ所の前記火炎に前記レーザ光をそれぞれ照射する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、保炎装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記集光光学系は、複数ヶ所の前記火炎毎に設けられる、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、保炎装置に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記レーザ光は、所定の時間間隔で繰り返すレーザパルスである、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、保炎装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記レーザ照射器は、物体の表面にレーザ光を集光させる、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、保炎装置に係る第6の解決手段として、上記第1~第5のいずれかの解決手段において、前記燃焼場はターボファンエンジンの燃焼器である、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、保炎装置に係る第7の解決手段として、上記第1~第5のいずれかの解決手段において、前記燃焼場はターボファンエンジンの再熱器である、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、エンジンに係る解決手段として、第1~第7のいずれかの解決手段に係る保炎装置を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃焼ガスの流速低減作用を従来よりも緩和することが可能なレーザ保炎装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るターボファンエンジンの構成を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る保炎装置の構成を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態の第1変形例に係る保炎装置の構成を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態の第2変形例に係る保炎装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
最初に図1及び図2を参照して、本実施形態に係るターボファンエンジンA及び保炎装置B、Cの構成について説明する。
【0017】
このターボファンエンジンAは、軸Lを中心とする略回転対称形状を有しており、ケーシング1、ファン2、低圧圧縮機3、高圧圧縮機4、燃焼器5、高圧タービン6、低圧タービン7、シャフト8、再熱器9(アフターバーナ)、排気ノズル10及びライナ11を備えている。
【0018】
ケーシング1は、ファン2、低圧圧縮機3、高圧圧縮機4、燃焼器5、高圧タービン6、低圧タービン7、シャフト8及び再熱器9を収容する円筒部材である。このケーシング1は、前側の開口が内部に空気を取り込むためのインテーク1aであり、後側に排気ノズル10が設けられている。
【0019】
このようなケーシング1は、内部にケーシング1の半径方向内側に設けられる流路であるコア流路1bと、半径方向外側に設けられる流路であるバイパス流路1cとが形成されている。コア流路1b及びバイパス流路1cは、図1に示すように、ファン2の下流側においてケーシング1の内部が半径方向に区画されることにより設けられている。
【0020】
コア流路1bは、燃焼器5に空気を案内すると共に燃焼器5から排出される燃焼ガスを高圧タービン6及び低圧タービン7を介して再熱器9に向けて案内する流路である。バイパス流路1cは、ファン2から圧送される空気を、低圧圧縮機3、高圧圧縮機4、燃焼器5、高圧タービン6及び低圧タービン7をバイパスして再熱器9に向けて案内する流路である。
【0021】
ファン2は、ケーシング1の内部における最も上流側に配置されている。このファン2は、シャフト8の後述する低圧軸8aに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング1に固定される静翼からなる静翼例が複数段に交互に配列されてなる。このようなファン2は、シャフト8の回転に伴って動翼が回転され、インテーク1aから取り込まれた空気を下流側に圧送する。
【0022】
低圧圧縮機3は、コア流路1bにおいて最も上流側に配置されている。この低圧圧縮機3は、シャフト8の低圧軸8aに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング1に固定される静翼からなる静翼列が複数段に交互に配列されてなる。このような低圧圧縮機3は、シャフト8の回転に伴って動翼が回転され、コア流路1bに取り込まれた空気を静翼で整流しつつ動翼で圧縮する。
【0023】
高圧圧縮機4は、コア流路1bにおいて低圧圧縮機3の下流に配置されている。この高圧圧縮機4は、シャフト8の後述する高圧軸8bに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング1に固定される静翼からなる静翼列が複数段に交互に配列されてなる。このような高圧圧縮機4は、シャフト8の回転に伴って動翼が回転され、低圧圧縮機3で圧縮された空気を静翼で整流しつつ動翼でさらに圧縮する。
【0024】
燃焼器5は、コア流路1bにおいて高圧圧縮機4の下流に配置されている。この燃焼器5は、不図示の燃料ノズル及び着火装置を備えており、高圧圧縮機4で生成された圧縮空気と燃料とからなる混合気を燃焼することによって燃焼ガスを生成する。
【0025】
このような燃焼器5は、図2(a)に示すように、燃焼器ライナ5a、複数の燃料噴射ノズル5b及び複数のレーザ照射器5cを備えている。燃焼器ライナ5aは、複数の耐熱金属プレートで構成された略円環状(ドーナツ状)の容器であり、内部空間が略円環状(ドーナツ状)の燃焼場である。この燃焼器ライナ5a内には、高圧圧縮機4で生成された圧縮空気が酸化剤として流入する。なお、本実施形態で用いる「燃焼場」という用語は、燃焼現象が発生している空間という意味である。
【0026】
複数の燃料噴射ノズル5bは、このような燃焼器ライナ5aの上流側に設けられており、燃焼器ライナ5a内の下流側に向けて燃料を噴射する。これら燃料噴射ノズル5bは、略円環状(ドーナツ状)の燃焼器5について、周方向に所定の角度ピッチで設けられている。なお、本実施形態では、45度の角度ピッチで8つの燃料噴射ノズル5bが設けられている。
【0027】
ここで、各燃料噴射ノズル5bから燃焼器ライナ5a内に噴射された燃料は、上記酸化剤(圧縮空気)の存在下で燃料することにより、各々に火炎を形成する。すなわち、本実施形態では、略円環状(ドーナツ状)の燃焼器ライナ5aの内部に45度の角度ピッチで、つまり燃焼場の8ヶ所(複数ヶ所)に火炎が各々形成される。
【0028】
複数のレーザ照射器5cは、集光光学系を備え、所定の時間間隔で繰り返すパルス状のレーザ光(レーザパルス)を燃料あるいは火炎に向けて集光かつ照射するものである。レーザ照射器5cは、各々にレーザ発振器と集光光学系とを備え、レーザ発振器が発生させたレーザパルスを凸レンズ等からなる集光光学系で集光させて燃料あるいは火炎に照射する。このような複数のレーザ照射器5cは、各燃料噴射ノズル5bから噴射された燃料への着火、また各火炎に対する保炎(火炎の維持)を行う。
【0029】
これらレーザ照射器5cは、燃料噴射ノズル5bに対応して複数設けられている。すなわち、本実施形態では、略円環状(ドーナツ状)の燃焼器5について、45度の角度ピッチで8つのレーザ照射器5cが設けられている。このようなレーザ照射器5cの集合体は、本実施形態における保炎装置Bを構成している。
【0030】
高圧タービン6は、コア流路1bにおいて燃焼器5の下流に配置されている。この高圧タービン6は、シャフト8の高圧軸8bに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング1に固定される静翼からなる静翼列とが複数段に交互に配列されてなる。このような高圧タービン6は、燃焼器5で生成された燃焼ガスを静翼で整流しつつ動翼で受けることによって動翼が回転し、これによってシャフト8の高圧軸8bを回転させる。
【0031】
低圧タービン7は、コア流路1bにおいて高圧タービン6の下流に配置されている。この低圧タービン7は、シャフト8の低圧軸8aに固定される動翼からなる動翼列と、ケーシング1に固定される静翼からなる静翼列とが複数段に交互に配列されてなる。このような低圧タービン7は、高圧タービン6を通過した燃焼ガスを静翼で整流しつつ動翼で受けることによって動翼が回転し、これによってシャフト8の低圧軸8aを回転させる。
【0032】
シャフト8は、半径方向内側の低圧軸8aと、半径方向外側の高圧軸8bとを備え、これらの低圧軸8aと高圧軸8bとが個別に同軸回転可能な二重軸構造を有している。低圧軸8aには、低圧タービン7の動翼、低圧圧縮機3の動翼及びファン2の動翼が固定されている。このような低圧軸8aは、低圧タービン7の動翼が燃焼ガスを受けて回転されることによって生成される回転動力を低圧圧縮機3の動翼と及びファン2の動翼に伝達し、これらの低圧圧縮機3の動翼と及びファン2の動翼を回転させる。
【0033】
高圧軸8bには、高圧タービン6の動翼と、高圧圧縮機4の動翼とが固定されている。このような高圧軸8bは、高圧タービン6の動翼が燃焼ガスを受けて回転されることによって生成される回転動力を高圧圧縮機4の動翼に伝達し、この高圧圧縮機4の動翼を回転させる。
【0034】
再熱器9は、低圧タービン7の下流に配置されている。この再熱器9は、低圧タービン7を通過した燃焼ガス、及び、バイパス流路1cを通過した空気の混合気に含まれる酸素を用いて燃料を再燃焼させることにより推力を増強させるものであり、複数の燃料噴射ノズル9a及び複数のレーザ照射器9b等を備えている。
【0035】
複数の燃料噴射ノズル9aは、ケーシング1の下流側に向けて燃料を噴射する。すなわち、複数の燃料噴射ノズル9aは、低圧タービン7の排気に対して新たな燃料を供給する。これら燃料噴射ノズル9aは、略円環状のケーシング1について、周方向に所定の角度ピッチで設けられている。
【0036】
なお、本実施形態では、45度の角度ピッチで8つの燃料噴射ノズル9aが設けられている。このような燃料噴射ノズル9aの下流側近傍領域は、燃料が燃焼する燃焼場である。すなわち、本実施形態では、再熱器9の燃焼場における8ヶ所(複数ヶ所)に火炎が各々形成される。
【0037】
複数のレーザ照射器9bは、集光光学系を備え、所定の時間間隔で繰り返すパルス状のレーザ光(レーザパルス)を燃料あるいは火炎に向けて集光かつ照射するものである。レーザ照射器9bは、各々にレーザ発振器と集光光学系とを備え、レーザ発振器が発生させたレーザパルスを凸レンズ等からなる集光光学系で集光させて燃料あるいは火炎に照射する。このような複数のレーザ照射器9bは、各燃料噴射ノズル9aから噴射された燃料への着火、また各火炎に対する保炎(火炎の維持)を行う。
【0038】
これらレーザ照射器9bは、燃料噴射ノズル9aに対応して複数設けられている。すなわち、本実施形態では、図2(b)に示すように、略円環状のケーシング1に対して45度の角度ピッチで8つのレーザ照射器9bが設けられている。このようなレーザ照射器9bの集合体は、本実施形態における保炎装置Cを構成している。
【0039】
排気ノズル10は、ケーシング1の下流側の端部に設けられており、コア流路1bから排気される燃焼ガスと、バイパス流路1cから排気される空気流とを後方に噴射する。ライナ11は、再熱器9内に設けられた円筒状の隔壁であり、バイパス流路1cから燃料が混合されずかつ圧縮されていない低温の空気が流れる流路を形成する。
【0040】
次に、本実施形態に係るターボファンエンジンA及び保炎装置B、Cの動作について詳しく説明する。
【0041】
このターボファンエンジンAでは、ファン2の駆動によってケーシング1のインテーク1aを通じて外部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気がコア流路1bと、バイパス流路1cとに分配される。コア流路1bを流れる空気は、低圧圧縮機3及び高圧圧縮機4によって圧縮されてから燃焼器5に供給される。
【0042】
そして、燃焼器5では、燃料が高圧圧縮機4で生成された圧縮空気を酸化剤として燃焼することによって火炎が形成され、同時に燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスは、コア流路1b、高圧タービン6、低圧タービン7、再熱器9の順で流れ、最終的に排気ノズル10から噴出される。
【0043】
また、バイパス流路1cを流れる空気は、低圧圧縮機3、高圧圧縮機4、燃焼器5、高圧タービン6及び低圧タービン7をバイパスして流れ、再熱器9を経由した後に排気ノズル10から燃焼ガスと共に噴射される。このように排気ノズル10から燃焼ガス及びバイパス流路1cを流れる空気が排気ノズル10から噴出されることによって推力が得られる。
【0044】
ここで、コア流路1bを流れる燃焼ガスが高圧タービン6を通過するときに、高圧タービン6の動翼が回転駆動されて回転動力が生成される。この回転動力がシャフト8の高圧軸8bを通じて高圧圧縮機4に伝達され、これによって高圧圧縮機4の動翼が回転する。また、コア流路1bを流れる燃焼ガスが低圧タービン7を通過するときに、低圧タービン7の動翼が回転駆動されて回転動力が生成される。
【0045】
また、大きな推力が必要な場合には、再熱器9で高圧タービン6及び低圧タービン7を通過した燃焼ガスに対して燃料を供給して再燃焼させることにより、新たな燃焼ガスがケーシング1内で生成される。この新たな燃焼ガスが排気ノズル10から噴出されることによって推力の増強が図られる。
【0046】
本実施形態に係るターボファンエンジンAの全体的な動作は以上の通りであるが、本実施形態に係る保炎装置B、Cは、このようなターボファンエンジンAの全体的な動作に対して以下のように動作する。
【0047】
すなわち、燃焼器5に備えられた保炎装置Bは、ターボファンエンジンAの始動時においては燃料噴射ノズル5bから噴射される燃料に対して所定の時間間隔(パルス周期T1)のレーザパルスを照射することによって着火させる。すなわち、保炎装置Bは、各レーザ照射器5cから各燃料噴射ノズル5bから噴射された燃料にレーザパルスを各々集光させて照射することにより、燃料及び圧縮空気の一部を局所的に加熱して高温プラズマを発生させる。
【0048】
そして、この高温プラズマによって燃料と圧縮空気とが燃焼状態となり火炎が生成される。このような高温プラズマは、燃料噴射ノズル5b毎つまりレーザ照射器5c毎に生成されるので、燃焼器5内では合計8ヶ所で燃料への着火つまり火炎の生成が行われる。
【0049】
また、このような着火後の定常運転状態において、保炎装置Bは、各レーザ照射器5cから各燃料噴射ノズル5bの燃料にレーザパルスを各々集光させて照射することにより、火炎の保持(保炎)を行う。すなわち、保炎装置Bは、各レーザ照射器5cからレーザパルスをパルス周期T1で照射することにより、当該パルス周期T1で高温プラズマを生成させて火炎の保持(保炎)を行う。
【0050】
ここで、上記パルス周期T1は、ターボファンエンジンAの動作状態、燃料の性状及び/あるいは圧縮空気(酸化剤)の圧縮度等の燃焼条件を考慮することにより最適設定される。すなわち、上記パルス周期T1としては、燃焼条件をパラメータとした予備実験等により、保炎性能を最大化する時間間隔が設定される。
【0051】
一方、再熱器9に備えられた保炎装置Cは、再熱器9の始動時においては燃料噴射ノズル9aから噴射される燃料に対して所定の時間間隔(パルス周期T2)のレーザパルスを照射することによって着火させる。すなわち、保炎装置Cは、各レーザ照射器9bから各燃料噴射ノズル9bから噴射された燃料にレーザパルスを各々集光させて照射することにより、燃料及び圧縮空気の一部を局所的に加熱して高温プラズマを発生させる。
【0052】
そして、この高温プラズマによって燃料と圧縮空気とが燃焼状態となり火炎が生成される。このような高温プラズマは、燃料噴射ノズル9a毎つまりレーザ照射器9b毎に生成されるので、再熱器9では合計8ヶ所で燃料への着火つまり火炎の生成が行われる。
【0053】
また、このような着火後の定常運転状態において、保炎装置Cは、各レーザ照射器9bから各燃料噴射ノズル9aの燃料にレーザパルスを各々集光させて照射することにより、火炎の保持(保炎)を行う。すなわち、保炎装置Cは、各レーザ照射器9bからレーザパルスをパルス周期T2で照射することにより、当該パルス周期T2で高温プラズマを生成させて火炎の保持(保炎)を行う。
【0054】
ここで、上記パルス周期T2は、上述した保炎装置Bにおけるパルス周期T1と同様に、ターボファンエンジンAの動作状態、燃料の性状及び/あるいは圧縮空気(酸化剤)の圧縮度等の燃焼条件を考慮することにより最適設定される。すなわち、パルス周期T2については、再熱器9における燃焼条件をパラメータとした予備実験等により、再熱器9における保炎性能を最大化するように設定される。
【0055】
本実施形態によれば、保炎装置B、Cがレーザ光を用いて保炎を行うものなので、つまり保炎装置B、CがターボファンエンジンAで生成される燃焼ガスに対して減速作用を及ぼすものではないので、燃焼ガスの流速低減作用を従来よりも緩和することが可能である。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、燃料と圧縮空気とが存在する気中にレーザパルスを集光させたが、本発明はこれに限定されない。例えば所定のターゲット(物体)にレーザパルスを集光させてもよい。すなわち、本実施形態の第1変形例に係るターボファンエンジンA1は、図3に示すように、上述した燃焼器5に代えて燃焼器5Aを備え、また上述した再熱器9に代えて再熱器9Aを備える。
【0057】
燃焼器5Aは、上述したレーザ照射器5cに代えてレーザ照射器5dを備えるものである。このレーザ照射器5dは、燃料噴射ノズル5bの先端部を上記ターゲットとしてレーザパルスを集光させて照射する。このようなレーザ照射器5dを備える保炎装置B1は、ターゲット(物体)の表面に高温プラズマが発生するので、上述した保炎装置Bよりも保炎性能の向上が見込まれる。
【0058】
再熱器9Aは、新たな構成要素として突起物9cを備え、また上述したレーザ照射器9bに代えてレーザ照射器9dを備える。突起物9cは、燃料噴射ノズル9aの下流側に位置し、ケーシング1の内面から中心に向けて所定高さまで突出する部位である。このような突起物9cは、燃料噴射ノズル9a毎に設けられており、燃料噴射ノズル9aから噴射された燃料に曝されている
【0059】
レーザ照射器9dは、このような突起物9cをターゲットとしてレーザパルスを集光させて照射する。このようなレーザ照射器9dを備える保炎装置C1は、ターゲット(物体)である突起物9cの表面に高温プラズマが発生するので、上述した保炎装置Bよりも保炎性能の向上が見込まれる。
【0060】
(2)上記実施形態では、燃焼器5における各燃料噴射ノズル5b及び再熱器9における各燃料噴射ノズル9aについて、燃料と圧縮空気とが存在する気中の1ヶ所(1点)にのみレーザパルスを集光させたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、レーザパルスを複数ヶ所に集光させてもよい。例えば、本実施形態の第2変形例に係るターボファンエンジンA2は、図4に示すように、上述した燃焼器5に代えて燃焼器5Bを備え、また上述した再熱器9に代えて再熱器9Bを備える。
【0061】
燃焼器5Bは、上述したレーザ照射器5cに代えて2つのレーザ照射器5e、5fを備えるものである。一方のレーザ照射器5eは、燃料と圧縮空気とが存在する気中において燃料噴射ノズル5bにより近い位置にレーザパルスを集光させて照射する。他方のレーザ照射器5fは、燃料と圧縮空気とが存在する気中において燃料噴射ノズル5bにより遠い位置にレーザパルスを集光させて照射する。
【0062】
このような2つのレーザ照射器5e、5fを備える保炎装置B2は、各々の燃料噴射ノズル5bから噴射される燃料について2箇所にレーザパルスを集光させて照射するので、2箇所に高温プラズマが発生させることが可能である。したがって、この保炎装置B2によれば、上述した保炎装置Bよりも保炎性能の向上が見込まれる。
【0063】
再熱器9Bは、上述したレーザ照射器9bに代えて2つのレーザ照射器9e、9fを備えるものである。一方のレーザ照射器9eは、燃料と圧縮空気とが存在する気中において燃料噴射ノズル9aにより近い位置にレーザパルスを集光させて照射する。他方のレーザ照射器9fは、燃料と圧縮空気とが存在する気中において燃料噴射ノズル9aにより遠い位置にレーザパルスを集光させて照射する。
【0064】
このような2つのレーザ照射器9e、9fを備える保炎装置C2によれば、各々の燃料噴射ノズル9aから噴射される燃料について2箇所にレーザパルスを集光させて照射するので、2箇所に高温プラズマが発生させることが可能である。したがって、この保炎装置C2によれば、上述した保炎装置Cよりも保炎性能の向上が見込まれる。
【0065】
(3)上記実施形態では、ターボファンエンジンAに本発明に係る保炎装置を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本願発明に係る保炎装置は、様々な形態のエンジンに適用可能である。例えば、ラムジェットエンジンやスクラムジェットエンジンに適用することが考えられる。
【0066】
(4)上記実施形態では、レーザ光としてレーザパルスを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。特に着火の場合には、レーザパルスに代えて連続レーザ光を採用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
A、A1、A2 ターボファンエンジン
B、B1、B2、C、C1、C2 保炎装置
1 ケーシング
1a インテーク
1b コア流路
1c バイパス流路
2 ファン
3 低圧圧縮機
4 高圧圧縮機
5 燃焼器
5a 燃焼器ライナ
5b 燃料噴射ノズル
5c~5f レーザ照射器
6 高圧タービン
7 低圧タービン
8 シャフト
8a 低圧軸
8b 高圧軸
9 再熱器
9a 燃料噴射ノズル
9b、9d~9f レーザ照射器
9c 突起物
10 排気ノズル
11 ライナ

図1
図2
図3
図4