(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/205 20170101AFI20240214BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240214BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240214BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240214BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20240214BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240214BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240214BHJP
【FI】
B29C64/205
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/295
B29C64/218
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2019221536
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 修弘
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071213(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150186(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236722(US,A1)
【文献】特表2018-524215(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03378619(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含有した線状の造形材を送り出す送出部と、
該送出部より送り出された造形材を対象箇所に押し付ける凹凸部を有した加圧部と、
を備え
、
前記加圧部は、並んで配置された複数の造形材を前記凹凸部で対象箇所に押し付けて互いに接合し、複数の造形材が接合された被押付造形材を形成する、
造形装置。
【請求項2】
前記凹凸部を構成する凹部は、前記造形材と交差する方向の幅寸法が前記造形材の外形寸法より大きい請求項1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記凹部の深さ寸法は、前記造形材の外形寸法より小さい請求項2に記載の造形装置。
【請求項4】
前記凹凸部を構成する凹部は、前記造形材の並び方向に複数設けられ、隣接する一方の凹部の中心から他方の凹部の中心までのピッチは、前記造形材の外形寸法の二倍以下である請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載の造形装置。
【請求項5】
前記被押付造形材の厚み寸法に対する幅寸法の比率を示すアスペクト比を、2以上5以下とする請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載の造形装置。
【請求項6】
前記加圧部より前記造形材の移動方向上流側に前記造形材を加熱する上流側加熱部を備えた請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の造形装置。
【請求項7】
前記上流側加熱部より前記造形材の移動方向下流側に前記造形材を加熱する下流側加熱部を備えた請求項
6に記載の造形装置。
【請求項8】
前記下流側加熱部は、前記加圧部を加熱することにより該加圧部で押し付けられる前記造形材を加熱する請求項
7に記載の造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形材を送り出す造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
造形装置として3Dプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この3Dプリンタでは、ボイドレス強化フィラメントを導管ノズルに送る。強化フィラメントは連続又は半連続のコアと、このコアを取り囲むマトリックス材とを含む。強化フィラメントは、フィラメントを導管ノズルから適用する前に、マトリックス材の溶融温度よりも高くコアの溶融温度よりも低い温度に加熱される。
【0004】
また、フィラメントを用いた造形装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この造形装置は、積層造形表面上に第1の複合フィラメントを堆積させる。軟化した第一の複合フィラメントは成形する能力を保持する。そして、第1の複合フィラメントを平坦化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2016-531020号公報
【文献】US2017/0274585
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、平坦な面の加圧部で加圧して積層する場合と比べ、造形材間の接着力を向上することが可能となる造形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様1は、樹脂を含有した線状の造形材を送り出す送出部と、該送出部より送り出された造形材を対象箇所に押し付ける凹凸部を有した加圧部と、を備えた造形装置。
【0009】
態様2は、前記凹凸部を構成する凹部は、前記造形材と交差する方向の幅寸法が前記造形材の外形寸法より大きい態様1に記載の造形装置。
【0010】
態様3は、前記凹部の深さ寸法は、前記造形材の外形寸法より小さい態様2に記載の造形装置。
【0011】
態様4は、前記加圧部は、並んで配置された複数の造形材を前記凹凸部で対象箇所に押し付けて互いに接合し、複数の造形材が接合された被押付造形材を形成する態様1から態様3のいずれかに記載の造形装置。
【0012】
態様5は、前記凹凸部を構成する凹部は、前記造形材の並び方向に複数設けられ、隣接する一方の凹部の中心から他方の凹部の中心までのピッチは、前記造形材の外形寸法の二倍以下である態様4に記載の造形装置。
【0013】
態様6は、前記被押付造形材の厚み寸法に対する幅寸法の比率を示すアスペクト比を、2以上5以下とする態様4又は態様5のいずれかに記載の造形装置。
【0014】
態様7は、前記加圧部より前記造形材の移動方向上流側に前記造形材を加熱する上流側加熱部を備えた態様1から態様6のいずれかに記載の造形装置。
【0015】
態様8は、前記上流側加熱部より前記造形材の移動方向下流側に前記造形材を加熱する下流側加熱部を備えた態様7に記載の造形装置。
【0016】
態様9は、前記下流側加熱部は、前記加圧部を加熱することにより該加圧部で押し付けられる前記造形材を加熱する態様8に記載の造形装置。
【発明の効果】
【0017】
態様1では、平坦な面の加圧部で加圧して積層する場合と比べ、造形材間の接着力を向上することが可能となる。
【0018】
態様2では、凹部の幅寸法が造形材の外形寸法より小さい場合と比較して、造形材の位置決め容易性を高めることが可能となる。
【0019】
態様3では、凹部の深さ寸法が造形材の外形寸法より大きい場合と比較して、造形材の潰し代の確保が可能となる。
【0020】
態様4は、単数の造形材を押し付けて被押付造形材を形成する場合と比較して、造形効率の向上が可能となる。
【0021】
態様5は、隣接する凹部のピッチが造形材の外形寸法の二倍を超える場合と比較して、被押付造形材に形成される凸部の密度低下の抑制が可能となる。
【0022】
態様6は、アスペクト比が5を超える場合と比較して、被押付造形材の幅方向への広がりの抑制が可能となる。
【0023】
態様7は、下流側からのみ加熱する場合と比較して、凹凸形成の容易化が可能となる。
【0024】
態様8では、上流側からのみ加熱する場合と比較して、被押付造形材の接合容易性の向上が可能となる。
【0025】
態様9では、造形材を加圧部より下流側で直接加熱する場合と比較して、凹凸形成の容易化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第一実施形態に係る造形装置の要部を示す側面図である。
【
図2】第一実施形態に係る造形装置の要部を下方から見た状態を示す斜視図である。
【
図3】第一実施形態に係る造形装置の送出部を造形材の移動方向下流側から見た状態を示す正面図である。
【
図4】第一実施形態に係る造形装置で台の上に造形材を配置した状態を示す断面図である。
【
図5】第一実施形態に係る造形装置の加圧部の高さを調整する構成の一例を示す説明図である。
【
図6】第一実施形態に係る造形装置の加圧部を示す説明図である。
【
図7】第一実施形態に係る造形装置の加圧部の各部の寸法を示す説明図である。
【
図8】第一実施形態に係る造形装置の加圧部で造形材を押し付ける様子を示す説明図である。
【
図10】第一実施形態に係る造形装置で造形材を塗布した状態を示す説明図である。
【
図11】塗布された造形材が
図10より薄肉とされた状態を示す説明図である。
【
図12】被押付造形材のアスペクト比を説明する為の断面図である。
【
図13】第一実施形態に係る造形装置の機能及び構成を示すブロック図である。
【
図14】比較例で用いる加圧部を示す説明図である。
【
図16】第二実施形態に係る加圧部を示す側面図である。
【
図17】第三実施形態に係る加圧部を示す側面図である。
【
図18】第四実施形態に係る加圧部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第一実施形態>
第一実施形態に係る造形装置10の一例を図面に沿って説明する。なお、図中、上方をUHで示し、下方をDHで示す。
【0028】
図1は、本実施形態に係る造形装置10を示す図であり、この造形装置10は、形状データに基づいて立体的な造形物を造形する装置である。
【0029】
造形装置10は、造形物を造形する造形面12を有した台14と、台14に造形材を供給する供給装置16を備えている。
【0030】
供給装置16は、フレーム18に回転自在に支持された四つのリール20と(一つのみ図示)、各リール20から送り出された線状の造形材22をそれぞれ搬送する上流側搬送部24と、各上流側搬送部24で搬送される造形材22をそれぞれ切断する切断部26と、切断部26からの造形材22をそれぞれ搬送する下流側搬送部25とを備えている。また、供給装置16は、下流側搬送部25からの造形材22を送り出す送出部28と、送出部28より送り出された各造形材22を対象箇所に押し付けて形状を調整する形状調整部30とを備えており、送出部28は、通過する各造形材22を加熱する第一上流側加熱部32を備えている。
【0031】
(台)
台14は、一例として図示しない駆動テーブルで支持されており、駆動テーブルは、造形物の形状データに基づいて、台14を水平面に沿うX-Y方向、高さ方向(上方UH及び下方DH)、及び回転方向に駆動する。これにより、供給装置16より台14側に送り出された造形材22によって造形面12上に造形物を造形する。
【0032】
なお、本実施形態では、形状データに基づいて台14を駆動して造形物を造形する場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、形状データに基づいてマニピュレータで供給装置16を駆動して造形物を造形してもよい。
【0033】
(リール)
リール20には、造形材22が巻かれた状態で保持されており、巻かれた造形材22を引出可能に保持する。
【0034】
(造形材)
造形材22は、
図4(
図8参照)に示すように、複数の連続繊維22Aと、連続繊維22Aに含浸された樹脂22Bとを含んで構成されている。連続繊維22Aとしては、一例としてカーボンファイバーが挙げられる。造形材22に含浸された樹脂22Bは、熱可塑性樹脂で構成されている。これにより、造形材22は、加熱すると軟化して変形可能となるとともに、常温で硬化して形状を維持する。
なお、本実施形態では、連続繊維22Aを用いたが、これに限定されるものではなく、短繊維でも良く、また、ガラス繊維を用いてもよい。
【0035】
(搬送部)
上流側搬送部24は、
図1に示したように、切断部26より造形材22の移動方向上流側34に配置された一対の上流側ロール36を備えており、下流側搬送部25は、切断部26より移動方向下流側38に配置された一対の下流側ロール40を備えている。
【0036】
上流側ロール36間には、造形材22が挟まれ、上流側ロール36が回転駆動されることで、リール20からの造形材22を切断部26へ送出する。下流側ロール40間には、切断部26より送出された造形材22が挟まれ、下流側ロール40が回転駆動されることで、切断部26からの造形材22を送出部28へ送る。
【0037】
(切断部)
切断部26は、図示しない制御装置から切断信号を受けた際に、造形材22を上流側搬送部24と下流側搬送部25との間で切断する。これにより、造形材22は、造形に必要な長さに切断される。
【0038】
切断された造形材22は、下流側搬送部25によって送出部28へ送られる。これにより、規定の長さに切断した造形材22を用いて造形物を造形する。
【0039】
なお、本実施形態では、切断部26を備えた供給装置16を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。この切断部26は、なくてもよい。
【0040】
(送出部)
送出部28は、
図2にも示すように、矩形ブロック状に形成されており、送出部28には、
図3に示すように、長さ方向に延びる矩形凹部41が形成されている。矩形凹部41内には、四本の円筒体42が底面に沿って横並びに収容されており、各円筒体42は、矩形凹部41に挿入されたブロック44により離脱が防止されている。
【0041】
各円筒体42の外周部には、図示しない第一上流側加熱部32が設けられている。各第一上流側加熱部32は、一例として電熱線を備えたヒータで構成されており、各ヒータが制御装置からの加熱信号に基づいて対応する円筒体42を加熱することで、各円筒体42内を通過する造形材22を外周部から規定の温度に加熱する。
【0042】
これにより、送出部28は、
図4に示すように、対象箇所の一例である台14の造形面12上に四本の造形材22を隣接して横並びに配置して塗布する。ここで、対象箇所としては、台14の造形面12の他に、台14上に塗布された下層の造形材22が挙げられる。
【0043】
(形状調整部)
図1に示したように、形状調整部30は、フレーム18より下方へ向けて延び出した延出部50と、延出部50の下端部に交換可能に取り付けられた加圧部52とを備えている。延出部50は、フレーム18に固定された延出部本体50Aと、延出部本体50Aより延び出した作動軸50Bとを備え、延出部本体50Aは、図示しない制御装置から作動信号に基づいて、作動軸50Bの延び出し量を調整する。
【0044】
延出部50の先端には、例えば、
図5に示すように、加圧部52の外周面52Aの下部から対象箇所までの距離を測定するレーザ変位計54が設けられている。制御装置は、レーザ変位計54で測定した距離が目標距離となるように作動軸50Bの延び出し量を調整する。形状調整部30は、加圧部52を造形材22に押し付けて造形材22の厚さ方向の形状を調整及び制御する。
【0045】
ここで、加圧部52の外周面52Aから例えば台14の造形面12までの距離を設定する方法は、前述した方法以外にも、加圧部52を造形面12に押し当てた際の初期値を基準として作動軸50Bの延び出し量から距離を算出する方法ある。
【0046】
(加圧部)
加圧部52は、
図6にも示すように、円柱状に形成されており、加圧部52は、
図1にも示したように、中心CLを貫通する軸部56を介して、作動軸50Bに回転自在に支持されている。軸部56が延びる方向は、各搬送部24、25で移動される造形材22の移動方向に対して交差する方向とされている。加圧部52は、台14の上に供給され塗布される造形材22に外周面52Aを接した状態で、当該加圧部52が造形材22の長さ方向に移動するように回転する。
【0047】
加圧部52の外周面52Aには、
図6に示したように、送出部28より送り出された造形材22を対象箇所に押し付ける凹凸部60が形成されている。なお、図面では、凹凸部60を誇張して表している。
【0048】
凹凸部60は、加圧部52の長さ方向に配置された四つの凹部62で構成されており、各凹部62は、周方向に延びるV字溝で構成されている。
【0049】
長さ法方向に配置された各凹部62によって加圧部52の外周面52Aには、凹部62と断面三角形状の凸部64とが交互に形成されており、加圧部52には、各凹部62及び各凸部64によって凹凸部60が形成されている。
【0050】
凹凸部60を構成する凹部62は、
図7に示すように、造形材22と交差する方向、すなわち加圧部52の長さ方向における幅寸法Wが造形材22の外形寸法Gより大きく設定されている(例えばG<W≦2G)。また、凹部62の深さ寸法Dは、造形材22の外形寸法Gより小さく設定されている(例えば0.4G<D<G)。
【0051】
これにより、凹凸部60が造形材22を押し付ける際のばらつきを抑制するように機能する。
【0052】
凹凸部60を構成する凹部62は、造形材22の並び方向に複数設けられ、隣接する一方の凹部62の中心から他方の凹部62の中心までのピッチPは、造形材22の外形寸法Gの二倍以下とされている(例えばG<D≦2G)。
【0053】
具体的に説明すると、本実施形態では、造形材22の外形寸法Gは、0.5mmであり、凹部62の幅寸法Wは、造形材22の外形寸法Gより大きい、1.0mmとされている。また、凹部62の深さ寸法Dは、造形材22の外形寸法Gより小さい、0.4mmとされている。
【0054】
そして、隣接する一方の凹部62の中心から他方の凹部62の中心までのピッチPは、造形材22の外形寸法Gの二倍以下である、1.0mmとされており、一方側の凹部62の一縁から他方側の凹部62の他縁までの凹部全体幅寸法Zは、4.0mmとされている。
【0055】
そして、加圧部52は、
図8から
図9に示すように、対象箇所に並んで配置された複数の造形材22を押し付けて隣接する造形材22同士を接合し、複数の造形材22が接合された被押付造形材66を形成するとともに、被押付造形材66の表面に凹凸を形成する。
【0056】
なお、本実施形態では、複数の造形材22を押し付けて互いに接合し、複数の造形材22が接合された被押付造形材66を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一本の造形材22を押し付けて形成された被押付造形材66を形成してもよい。
【0057】
このとき、制御装置がレーザ変位計54(
図5参照)で測定した距離が目標距離となるように作動軸50Bの延び出し量を調整することで、
図10、
図11(加圧部52による圧力を高めた場合の例)、及び
図12に示すように、被押付造形材66の厚み寸法ZTに対する幅寸法ZHの比率を示すアスペクト比を制御できるように構成されている。そして、被押付造形材66のアスペクト比は、2以上5以下となるように成形されている。このアスペクト比は、2以上5以下が好ましいことが、実験結果より分かっている。
【0058】
ここで、被押付造形材66の幅寸法ZHは、
図12に示したように、被押付造形材66の一側縁66Aから他側縁66Bまでの寸法とする。また、被押付造形材66の厚み寸法ZTは、被押付造形材66の断面積から換算した寸法とし、被押付造形材66の断面積を幅寸法ZHで除算した値とする。
【0059】
ここで、このアスペクト比を調整する方法としては、造形材22の形状の調整、制御する部位の表面形状の変更、加熱温度、及び対象箇所との離間距離による方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0060】
そして、供給装置16は、
図1に示したように、加圧部52より造形材22の移動方向上流側34に造形材2を加熱する第二上流側加熱部70を備えている。第二上流側加熱部70は、送出部28へ向けて熱風を吹き付ける装置であり、一例として送出部28の矩形凹部41を通過する各造形材22に熱風を吹き付けることで、各造形材22を全体的に加熱して各造形材22を凝集する。
【0061】
なお、第二上流側加熱部70は、輻射熱で加熱する装置で構成してもよい。
【0062】
また、供給装置16は、第一上流側加熱部32より造形材22の移動方向下流側38に造形材22を加熱する下流側加熱部72を備えている。
【0063】
下流側加熱部72は、加圧部52へ向けて熱風を吹き付ける装置であり、加圧部52を加熱することにより加圧部52で押し付けられる各造形材22を加熱する。
【0064】
なお、下流側加熱部72は、輻射熱で加熱する装置で構成してもよい。
【0065】
図13は、造形装置10の機能及び構成を示すブロック図である。
【0066】
造形材22を切断するカット部位80に設けられた切断部26は、制御装置からの切断信号に基づいて通過する造形材22を規定の長さにカットする。造形材22を搬送する搬送部位82に設けられた各搬送部24、25は、造形材22を送出部28へ送る。
【0067】
造形材22を加熱する第一上流側加熱部位84に設けられた第一上流側加熱部32は、各造形材22を加熱して溶融する。各造形材22を全体的に加熱する第二上流側加熱部位86に設けられた第二上流側加熱部70は、各造形材22を凝集する。
【0068】
造形材形状の調整及び制御部位88に設けられた形状調整部30は、造形材22の形状を整える。造形材22を加熱する下流側加熱部位90に設けられた下流側加熱部72は、各造形材22を造形面12に保持させる。
【0069】
【0070】
この比較実験では、
図7に示したように、前述の実施形態で示した外周面52Aに凹凸部60を有する金属製の加圧部52を実施例Jとし、
図14に示すように、外周面100Aに凹凸部を有しない金属製円柱状の加圧部100を比較例Cとする。
【0071】
実施例Jの加圧部52に形成された凹凸部60の凹部62の幅寸法W、深さ寸法D、及びピッチP等のパラメータは、
図7に示した加圧部52と同寸法とする。
【0072】
造形に使用する造形材22は、断面円形であり、
図15に示すように、厚み寸法及び幅寸法が、約0.7mmで略同寸法である(外形寸法が、0.5mmの造形材を用いることもできる)。また、実施例Jの加圧部52での造形に用いる造形材22の強度と、比較例Cの加圧部100での造形に用いる造形材22の強度は、それぞれ曲げ弾性率が同レベルとする。
【0073】
そして、実施例Jの加圧部52を前述の造形装置10にセットして一本の造形材22を用いて造形するとともに、比較例Cの加圧部100を前述の造形装置10にセットして一本の造形材22を用いて造形する。このとき、造形された被押付造形材66の厚み寸法ZTと幅寸法ZHとの比率が、1:2となるように目標値を定めて造形装置10を制御し、造形後の被押付造形材66における断面形状の幅寸法ZHと厚み寸法ZTとを測定した。
【0074】
図15から実施例Jの加圧部52を用いて形成した被押付造形材66は、比較例Cの加圧部100を用いて形成した被押付造形材66と比較して、幅寸法ZHと厚さ寸法ZTとの差が小さい。これにより、厚み寸法ZTと幅寸法ZHとの比率が、目標値である1:2に近くなるという実験結果が得られた。
【0075】
(作用・効果)
以上の構成に係る本実施形態の作用について説明する。
【0076】
本実施形態の造形装置10は、送出部28より送り出された造形材22を対象箇所に押し付ける凹凸部60を有した加圧部52を備えている。
【0077】
このため、平坦な面で構成された加圧部で造形材22を加圧して積層する場合と比べ、造形材22間の接着力を向上することが可能となる。
【0078】
特に曲線造形において、造形材22間及び造形面12との接着力を向上させることが可能となる。
また、凹凸部60で両サイドが規制されるので、幅方向において、造形物の寸法精度の向上が可能となる。
【0079】
また、加圧部52の凹凸部60を構成する凹部62は、造形材22と交差する方向の幅寸法Wが造形材22の外形寸法Gより大きい。
【0080】
このため、凹部62の幅寸法Wが造形材22の外形寸法Gより小さい場合と比較して、造形材22の位置決め容易性を高めることが可能となる。
【0081】
さらに、凹部62の深さ寸法Dは、造形材22の外形寸法Gより小さい。
【0082】
このため、凹部62の深さ寸法Dが造形材22の外形寸法Gより大きい場合と比較して、造形材22の潰し代の確保が可能となる。
【0083】
また、加圧部52は、並んで配置された複数の造形材22を押し付けて互いに接合し、複数の造形材22が接合された被押付造形材66に凹凸を形成する。
【0084】
このため、単数の造形材22を押し付けて被押付造形材66を形成する場合と比較して、造形効率の向上が可能となる。
【0085】
さらに、凹凸部60を構成する凹部62は、造形材22の並び方向に複数設けられ、隣接する一方の凹部62の中心から他方の凹部62の中心までのピッチPは、造形材22の外形寸法Gの二倍以下である。
【0086】
このため、隣接する凹部62のピッチPが造形材22の外形寸法Gの二倍を超える場合と比較して、被押付造形材66に形成される凸部の密度低下の抑制が可能となる。
【0087】
また、被押付造形材66の厚み寸法ZTに対する幅寸法ZHの比率を示すアスペクト比は、2以上5以下である。
【0088】
このため、被押付造形材66のアスペクト比が、5を超える場合と比較して、被押付造形材66の幅方向への広がりの抑制が可能となる。
【0089】
さらに、加圧部52より造形材22の移動方向上流側34に造形材22を加熱する各上流側加熱部32、70を備えている。
【0090】
このため、下流側からのみ加熱する場合と比較して、凹凸形成の容易化が可能となる。
【0091】
また、上流側からのみ加熱する場合と比較して、被押付造形材66の接合容易性の向上が可能となる。
【0092】
このため、下流側加熱部72を不具備な場合と比較して、被押付造形材66の接合容易性の向上が可能となる。
【0093】
さらに、下流側加熱部72は、加圧部52を加熱することにより加圧部52で押し付けられる造形材22を加熱する。
【0094】
このため、造形材22を加圧部52より下流側で直接加熱する場合と比較して、凹凸形成の容易化が可能となる。
【0095】
なお、本実施形態では、加圧部52における凹凸部60の凹部62がV字溝で形成された場合について説明したが、これに限定されるものではなく、以下に示す形状であってもよい。
【0096】
<第二実施形態>
すなわち、加圧部52における凹凸部60の凹部62は、
図16に示すように、断面円弧状の溝で形成しても、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0097】
<第三実施形態>
【0098】
また、加圧部52における凹凸部60の凹部62は、
図17に示すように、断面台形状の溝で形成しても、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
<第四実施形態>
【0100】
さらに、加圧部52における凹凸部60の凹部62を、
図18に示すように、V字溝で形成するとともに、隣接する凹部62同士を離間して配置することで、凹部62間に円柱の外周面52Aを残存させてもよい。この場合も、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0101】
なお、各実施形態では、加圧部52を円柱状としたが、これに限定されるものでなく、例えば板状であってもよい。
【0102】
また、前述した各加熱部32、70、72はなくてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 造形装置
12 造形面
14 台
16 供給装置
22 造形材
22A 連続繊維
22B 樹脂
28 送出部
30 形状調整部
32 第一上流側加熱部
34 移動方向上流側
38 移動方向下流側
42 円筒体
52 加圧部
52A 外周面
60 凹凸部
62 凹部
66 被押付造形材
70 第二上流側加熱部
72 下流側加熱部
100 加圧部
100A 外周面