(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エラストマー部材、およびエラストマー部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20200101AFI20240214BHJP
C08J 5/16 20060101ALI20240214BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20240214BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20240214BHJP
C08J 7/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08J7/04 Z
C08J5/16 CFH
C08J7/00 306
C08J7/043 A
C08J7/06 Z
(21)【出願番号】P 2019231369
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 基
(72)【発明者】
【氏名】山野井 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 潤
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-313059(JP,A)
【文献】特開2019-059896(JP,A)
【文献】特開平07-278526(JP,A)
【文献】特表2018-501058(JP,A)
【文献】特開2005-248149(JP,A)
【文献】特開2009-144182(JP,A)
【文献】特開2019-061933(JP,A)
【文献】特開2016-056376(JP,A)
【文献】特開2019-199508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 71/04
B32B 1/00-43/00
C08G 2/00-61/12
C08J 5/16
C08J 7/00-7/18
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム層を備えるエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層が、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、およびオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成されており、
前記シリコーンゴム層の表面に、
パリレンコート処理
が少なくとも施されているか、
カップリング剤処理
が少なくとも施されているか、
または、
表面活性化処理
としてのプラズマ処理およびカップリング剤処理が少なくとも施されており、
下記の手順に従って得られる、
前記シリコーンゴム層の表面におけるタックピーク値が、5.0N以下である、
エラストマー部材。
(手順)
面積150mm
2のフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料である当該エラストマー部材の表面処理が施された表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験による
前記シリコーンゴム層の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値とする。
【請求項2】
請求項1に記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層の表面に、
前記パリレンコート処理によって形成されたパリレン層が設けられており、前記パリレン層の厚みが、100nm以上10μm以下である、エラストマー部材。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のエラストマー部材であって、
JIS K6251(2004)に準拠して測定される、前記シリコーンゴム層の引張強度が、6.0MPa以上15MPa以下である、エラストマー部材。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のエラストマー部材であって、
JIS K6253(1997)に準拠して規定される、前記シリコーンゴム層のデュロメータ硬さAが、30以上90以下である、エラストマー部材。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のエラストマー部材であって、
JIS K6252(2001)に準拠して測定される、前記シリコーンゴム層の引裂強度が、25N/mm以上である、エラストマー部材。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のエラストマー部材であって、
JIS K6251(2004)に準拠して測定される、前記シリコーンゴム層の破断伸びが、200%以上1000%以下である、エラストマー部材。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層が、無機充填材を含む、エラストマー部材。
【請求項8】
請求項
1~7のいずれか一項に記載のエラストマー部材であって、
前記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が、ビニル基量が0.4モル%以下の第1ビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む、エラストマー部材。
【請求項9】
請求項
1~8のいずれか一項に記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴ
ム系硬化性組成物が、シリカ粒子(C)を含み、
前記シリカ粒子(C)の含有量が、
前記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、10重量部以上60重量部以下である、エラストマー部材。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のエラストマー部材であって、
摺動部材に用いられる、エラストマー部材。
【請求項11】
ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、およびオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むシリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物により構成されたシリコーンゴム層を成形する成形工程と、
前記シリコーンゴム層の表面
に表面処理を施す表面処理工程と、を有する、
シリコーンゴム層を備えるエラストマー部材の製造方法であって、
前記表面処理工程が、
パリレンコート処理を少なくとも含むか、
カップリング剤処理を少なくとも含むか、または、
表面活性化処理としてのプラズマ処理およびカップリング剤処理を少なくとも含むものであり、
前記成形工程と前記表面処理工程とをインライン処理で行うことを特徴とする、
エラストマー部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー部材、およびエラストマー部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで摺動部材中にシリコーンゴムに使用することについて様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、カテーテルチューブ中を摺動する可撓性内側部分がシリコーンゴムで構成されることが記載されている(請求項3、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のシリコーンゴムを用いた部材において、すべり性、機械的物性変動の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般的な話として、シリコーンゴムを含むシリコーンゴム層の表面は、タックを有することがある。これは、シリコーンゴムを構成する原料成分が表面にブリードすることが要因の一つと考えられる。
タックが表面あるシリコーンゴム層はすべり性に劣る。このため、通常、その表面には、シリコーン系表面処理剤(液状シリコーンゴム)を塗布する対策が行われている。
【0006】
しかしながら、本発明者はさらに検討したところ、シリコーン系表面処理剤が表面に被覆されたシリコーンゴム層において、その機械的物性(ゴム特性)に変動が生じることが判明した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及び表面活性化処理等の適当な表面処理を施すことによって、すべり性を向上させつつも、機械的物性変動が抑制されたシリコーンゴム層を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、
シリコーンゴム層を備えるエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層の表面に、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及び表面活性化処理からなる群から選ばれる一種以上の表面処理が施されており、
下記の手順に従って得られるタックピーク値が、5.0N以下である、
エラストマー部材が提供される。
(手順)
面積150mm2のフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料である当該エラストマー部材の表面処理が施された表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験による当該エラストマー部材の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値とする。
【0008】
また本発明によれば、
シリコーンゴム層を成形する成形工程と、
前記シリコーンゴム層の表面に、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及び表面活性化処理からなる群から選ばれる一種以上の表面処理を施す表面処理工程と、を有する、
シリコーンゴム層を備えるエラストマー部材の製造方法であって、
前記成形工程と前記表面処理工程とをインライン処理で行うことを特徴とする、
エラストマー部材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、すべり性に優れ、機械的物性変動が抑制されたエラストマー部材、およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るエラストマー部材の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0012】
本実施形態のエラストマー部材を概説する。
【0013】
本実施形態のエラストマー部材は、シリコーンゴム層を備える。
エラストマー部材中、シリコーンゴム層の表面に、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及び表面活性化処理からなる群から選ばれる一種以上の表面処理が施されている。
このエラストマー部材は、下記の手順に従って得られるタックピーク値が5.0N以下という特性を有する。
(手順)
面積150mm2のフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料である当該エラストマー部材の表面処理が施された表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験による前記エラストマー部材の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値とする。
【0014】
本発明者の知見によれば、シリコーン系表面処理剤が表面に被覆されたシリコーンゴム層において、その機械的物性(ゴム特性)に大きな変動が生じるが、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及び表面活性化処理からなる群から選ばれる一種以上の適当な表面処理を施すことによって、すべり性を向上させつつも、機械的物性変動が抑制されたシリコーンゴム層を実現できることが見出された。具体例の一つとして、引張強度や破断伸びなどのゴム特性について、標準偏差のバラツキを抑制できる。このため、ゴム特性について、ロット間バラツキや繰り返し製造時のバラツキを比較的小さくすることが可能になる。
【0015】
シリコーン系表面処理剤等のコーティング剤の塗り方によって、シリコーンゴム層のゴム物性に影響があることが判明した。詳細なメカニズムは定かでないが、面内方向においてコーティング剤層の厚みや膜成分にバラツキ等があると、シリコーンゴム層のゴム特性のバラツキが大きくなる、と考えられる。
これに対して、パリレンやカップリング剤は表面に化学結合し、表面活性化処理の一つであるプラズマ処理は表面を改質し、その後、表面処理された面は洗浄される。パリレン層やカップリング剤層(シラン層)等の単層や表面近傍のプラズマ処理層などの改質層などの、面内方向に成分や厚みのバラツキが少ない表面処理層が形成されるため、シリコーンゴム層のゴム特性のバラツキが、コーティング剤と比べて抑制されると、考えられる。
その上、上記の表面処理によって、タックを有していたシリコーンゴム層の表面を、所定のタック値以下となるようにタックを抑制できる。このため、シリコーンゴム層のすべり性を向上できる。
【0016】
本実施形態によれば、すべり性に優れ、機械的物性変動が抑制されたシリコーンゴム層を有するエラストマー部材を実現できる。
【0017】
本実施形態のエラストマー部材は、各種の用途に用いることができるが、例えば、ゴムチューブ、ガスケット等の医療機器、自動車用途、建築用途の構成部材、これらの摺動部材、または成形時の緩衝材等として好適に用いることができる。また、エラストマー部材の形態は、とくに限定されず、シート状、筒状、所定の形状を有していてもよい。
【0018】
図1は、本実施形態に係るエラストマー部材100の構成の一例を示す断面図である。
エラストマー部材100は、少なくともシリコーンゴム層10と、シリコーンゴム層10の表面に設けられた表面処理層20と、を有する。シリコーンゴム層10と表面処理層20とが互いに化学的に結合してもよい。
エラストマー部材100中のシリコーンゴム層10は、基材上に設けられてもよい。
基材は、特に限定されないが、金属などの無機材料、樹脂などの有機材料、これらの複合材料で構成されてもよい。
【0019】
以下、本実施形態のエラストマー部材の構成を詳述する。
【0020】
エラストマー部材は、表面処理層を有する。
表面処理層は、シリコーンゴム層の表面に、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及びプラズマ処理からなる群から選ばれる一種以上の表面処理を施すことによって構成され得る。
これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(パリレンコート処理)
パリレンコート処理は、気相蒸着法によりパリレンをシリコーンゴムの表面に蒸着させる工程を含む。
パリレンコート処理によって、シリコーンゴム層の表面にパリレン層を形成できる。
【0022】
パリレンは、未置換のポリ-p-キシリレン及び置換されたポリ-p-キシリレンの群に適用される一般名称である。このポリマーは、該ポリマーが1個の特別のダイマー又は異なるダイマーの混合物のいずれに由来するかに依存して、ホモポリマーであってもよいし、コポリマーであってもよい。
【0023】
置換基は、通常芳香核上で置換しうる任意の有機又は無機の基とすることができる。有機置換基の例は、アルキル、アリール、アルケニル、シアノ、カルボキシル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、及びカルブアルコキシであり、かつ無機置換基の例は、ヒドロキシル、ニトロ、ハロゲン及びアミノである。一般に、選択された置換基は反応条件下で機能的に不活性である。置換基の中で好適なものは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びヘキシルのような1~10個の炭素原子を有する低級アルキル;フェニル及びナフチルのような1又は2個のベンゼン環を有する低級アリール炭化水素及びアルキル部位に1~10個の炭素原子を有するアルキル化フェニル及びナフチル;及び塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のようなハロゲンである。
【0024】
パリレンの一例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パリレンN、パリレンC、パリレンD、パリレンHT、などが挙げられる。
パリレンNは、下記の化学式(a)で表される構造を有し、パリレンCは、下記の化学式(b)で表される構造を有し、パリレンDは、下記の化学式(c)で表される構造を有する。
【0025】
【0026】
気相蒸着法は、公知の方法で実施することができる。例えば、パリレン蒸着装置を用い、所定量のパリレンダイマーを昇華させ、同装置の真空蒸着器内で蒸着させることができる。
【0027】
パリレン層の膜厚方向における厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm~50μm、0.1μm~10μmが好ましく、1μ~5μmがより好ましい。上記下限値以上とすることで、シリコーンゴム層のすべり性や耐ブリード性を向上できる。上記上限値以下とすることで、シリコーンゴム層の機械的物性の変動を抑制できる。
【0028】
(カップリング剤処理)
カップリング剤処理は、シランカップリング剤をシリコーンゴムの表面に塗布する工程を含む。
カップリング剤処理によって、シリコーンゴム層の表面にカップリング剤処理剤層、具体的には、シラン層を形成できる。
【0029】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基を有するビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシラン;エポキシ基を有する2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよび3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン;スチリル基を有するp-スチリルトリメトキシシラン;メタクリル基を有する3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランおよび3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン;アクリル基を有する3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン;アミノ基を有するN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩;ウレイド基を有する3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン;メルカプト基を有する3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン;スルフィド基を有するビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;イソシアネート基を有する3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。これらのシランを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
シランカップリング剤は、溶媒で希釈して使用してもよいが、希釈しないで使用してもよい。
溶媒としては、例えば、水、アルコール、酢酸、あるいは、これらの2以上の混合液、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、ヘキサンなどの有機溶剤などが挙げられる。
【0031】
シランカップリング剤を含む希釈液中のシランの濃度は、特に限定されないが、例えば、5質量%~90質量%、好ましくは10~50質量%である。上記下限値以上とすることで、シリコーンゴム層のすべり性や耐ブリード性を向上できる。上記上限値以下とすることで、シリコーンゴム層の機械的物性の変動を抑制できる。
【0032】
シランカップリング剤の塗布は、特に限定されないが、刷毛、スプレー、ローラー等を用いる他、シランカップリング剤の溶液に、シリコーンゴム層の表面を付ける方法や、シリコーンゴム層全体を浸漬する方法が用いられる。
【0033】
(表面活性化処理)
表面活性化処理は、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線処理等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、プラズマ処理が好ましい。
【0034】
プラズマ処理は、放電により放出されたイオンや電子によりシリコーンゴム層表面の分子の化学結合を切断し、シリコーンゴムの種類に応じて、親水性の官能基であるOH(水酸基)・CO(カルボニル基)・COOH(カルボキシル基)等を生成する工程を含む。
プラズマ処理によって、シリコーンゴム層の表面に親水性に改質された改質層を形成できる。
【0035】
プラズマ処理は、雰囲気、出力、処理時間を適当に設定可能である。
【0036】
プラズマ処理の一例として、酸素プラズマ処理、大気プラズマ処理、プラズマ重合処理などを用いてもよい。
【0037】
酸素プラズマ処理は、酸素含有ガス雰囲気下でプラズマ処理する方法である。真空引きによって低圧下で処理してもよく、アルゴンなどの希ガスを含む混合ガス雰囲気下で処理してもよい。
例えば、装置内の圧力は1~5Pa、出力は50~1000W、処理時間は1~15分としてもよい。
【0038】
大気プラズマ処理は、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン、窒素、これらの2種類以上の希ガス混合雰囲気下でプラズマ処理する方法である。
【0039】
プラズマ重合処理は、炭化水素ガスと酸素含有ガスとの混合ガス雰囲気下のプラズマ処理する方法である。メタンと酸素の混合ガス雰囲気下で処理してもよい。
【0040】
エラストマー部材は、シリコーンゴム層を有する。
【0041】
上記シリコーンゴム層の表面におけるタックピーク値TPの上限値は、例えば、6.0N以下、好ましくは3.0N以下、より好ましくは1.0N以下である。6.0N以下とすることにより実用上問題ない程度にすべり性を向上させることができる。また1.0以下とすることにより、接触対象が繰り返し接触したとき接触スピードが速いときでも、良好なすべり性を実現できる。一方で、タックピーク値TPの下限値は、特に限定されないが、例えば、0N超でもよく、0.1N以上でもよい。
【0042】
上記タックピーク値TPの測定手順は、次の通りである。
面積150mm2のフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料である前記シリコーンゴム層の表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験による前記シリコーンゴム層の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値TPとする。
【0043】
表面処理が施されたシリコーンゴム層の、JIS K6251(2004)に準拠して測定される引張強度の下限値としては、例えば、6.0MPa以上であり、好ましくは7.0MPa以上であり、より好ましくは8.0MPa以上である。これにより、エラストマー部材の機械的強度を向上させることができる。また、破断エネルギーを大きくすることができる。このため、繰り返しの変形に耐えられる耐久性に優れたエラストマー部材を実現することができる。一方で、上記シリコーンゴム層の引張強度の上限値としては、特に限定されないが、例えば、15MPa以下としてもよく、13MPa以下としてもよい。これにより、エラストマー部材の操作性を良好なものとすることができる。
【0044】
表面処理が施されたシリコーンゴム層の、JIS K6253(1997)に準拠して規定されるデュロメータ硬さAの上限値としては、例えば、90以下あり、好ましくは85以下であり、より好ましくは80以下である。これにより、エラストマー部材としての柔軟性を有し、他部材への追従性を向上できる。上記シリコーンゴム層のデュロメータ硬さAの下限値としては、例えば、30以上でもよく、40以上でもよく、50以上でもよい。これにより、エラストマー部材の機械的強度を高めることができる。
【0045】
表面処理が施されたシリコーンゴム層の、JIS K6252(2001)に準拠して測定される引裂強度の下限値としては、例えば、25N/mm以上であり、好ましくは30N/mm以上であり、より好ましくは33N/mm以上であり、さらに好ましくは35N/mm以上である。これにより、エラストマー部材の耐傷付き性や機械的強度を向上させることができる。また、エラストマー部材の繰り返し使用時における耐久性を向上させることができる。一方で、上記シリコーンゴム層の引裂強度の上限値としては、特に限定されないが、例えば、70N/mm以下としてもよく、60N/mm以下としてもよい。これにより、シリコーンゴム層の諸特性のバランスをとることができる。
【0046】
表面処理が施されたシリコーンゴム層の、JIS K6251(2004)に準拠して測定される破断伸びの下限値としては、例えば、200%以上であり、好ましくは300%以上であり、より好ましくは400%以上である。これにより、エラストマー部材の伸縮性および耐久性を向上させることができる。一方で、上記シリコーンゴム層の破断伸びの上限値としては、特に限定されないが、例えば、1000%以下としてもよく、900%以下としてもよく、800%以下としてもよい。これにより、エラストマー部材の機械的強度を向上させることができる。
【0047】
表面処理が施されたシリコーンゴム層の、JIS K6251(2004)に準拠して測定される、25℃、当該シリコーンゴム層の100%伸張時における引張応力M100の上限値は、例えば、8.0MPa以下であり、好ましくは6.0MPa以下であり、より好ましくは5.0MPa以下でもよい。これにより、エラストマーの変形容易性を向上させることができる。一方で、上記引張応力M100の下限値は、特に限定されないが、1.0MPa以上であり、好ましくは2.0MPa以上でもよい。これにより、エラストマーの機械的強度を向上させることができる。
【0048】
表面処理が施されたシリコーンゴム層の、JIS K6251(2004)に準拠して測定される、25℃、当該シリコーンゴム層の300%伸張時における引張応力M300の上限値は、例えば、11.0MPa以下であり、好ましくは9.0MPa以下であり、より好ましくは8.0MPa以下でもよい。これにより、エラストマーの変形容易性を向上させることができる。一方で、上記引張応力M300の下限値は、特に限定されないが、4.0MPa以上であり、好ましくは6.0MPa以上でもよい。これにより、エラストマーの機械的強度を向上させることができる。
【0049】
本実施形態では、たとえばシリコーンゴム層中に含まれる各成分の種類や配合量、シリコーンゴム層を形成するための組成物の調製方法やシリコーンゴム層の製造方法、表面処理方法等を適切に選択することにより、上記タックピーク値、引張強度、硬度、引裂強度、破断伸び、引張応力を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及びプラズマ処理からなる群から選ばれる一種以上の表面処理を適切に選択すること、シリコーンゴム層を構成する樹脂の種類や配合比率、樹脂の架橋密度や架橋構造等を適切に制御すること、無機充填材の配合比率や無機充填材の分散性を向上させること等が、上記タックピーク値、引張強度、硬度、引裂強度、破断伸び、引張応力を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0050】
次に、本実施形態に係るシリコーンゴム層の組成について説明する。
【0051】
上記シリコーンゴム層を構成するエラストマーは、ゴム特性のバランスの観点、また化学的に安定であり、また、熱安定性にも優れる観点から、シリコーンゴムを用いることができる。
【0052】
上記シリコーンゴムは、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成することができる。
【0053】
また、本実施形態のエラストマーは、各種の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。例えば、機械的強度を高める観点から、シリコーンゴムは、無機充填材を含むことができる。無機充填材としては、公知のものが使用できるが、例えば、シリカ粒子を用いることができる。
【0054】
以下、シリコーンゴム系硬化性組成物について説明する。
【0055】
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含むことができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
【0056】
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
【0057】
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
【0058】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。
本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0059】
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
【0060】
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0061】
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
【0062】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
【0063】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
【0064】
【0065】
式(1)中、R1は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0066】
また、R2は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0067】
また、R3は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0068】
さらに、式(1)中のR1およびR2の置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、R3の置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0069】
なお、式(1)中、複数のR1は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R2、およびR3についても同様である。
【0070】
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
【0071】
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1-1)で表されるものが挙げられる。
【0072】
【0073】
式(1-1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
【0074】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を含んでもよい。第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)のビニル基量は、0.1モル%以下でもよい。
【0075】
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)とビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを含有してもよい。
【0076】
シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
【0077】
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1-1)において、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、R1がビニル基である単位および/またはR2がビニル基である単位を、0.5~15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを用いるのが好ましい。
【0078】
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~12モル%であるのが好ましい。
【0079】
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
【0080】
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)および(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
【0082】
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
【0083】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
【0084】
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
【0085】
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
【0086】
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
【0087】
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
【0088】
【0089】
式(2)中、R4は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0090】
また、R5は炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0091】
なお、式(2)中、複数のR4は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。R5についても同様である。ただし、複数のR4およびR5のうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
【0092】
また、R6は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のR6は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0093】
なお、式(2)中のR4,R5,R6の置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
【0094】
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
【0095】
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
【0097】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9~0.95の範囲である。
【0098】
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
【0099】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
【0100】
平均組成式(c)
(Ha(R7)3-aSiO1/2)m(SiO4/2)n
(式(c)において、R7は一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはHa(R7)3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
【0101】
式(c)において、R7は一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0102】
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
【0103】
また、式(c)において、mはHa(R7)3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
【0104】
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8~2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8~1.7の範囲となる。
【0105】
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
【0106】
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0107】
【0108】
式(3)中、R7は炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。R7の置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
【0109】
なお、式(3)中、複数のR7は互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0110】
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
【0111】
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
【0113】
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シリカ粒子(C)を含むことができる。
【0114】
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50~400m2/gであるのが好ましく、100~400m2/gであるのがより好ましい。また、その平均一次粒径が例えば1~100nmであるのが好ましく、5~20nm程度であるのがより好ましい。
【0116】
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
【0117】
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
【0118】
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
【0119】
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
【0120】
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
【0121】
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
【0122】
Yn-Si-(X)4-n・・・(4)
上記式(4)中、nは1~3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
【0123】
疎水性基は、炭素数1~6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
【0124】
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
【0125】
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Yn-Si-)の構造を2つ有するものとなる。
【0126】
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、例えば、官能基として疎水性基を有するものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられ、官能基としてビニル基を有するものとして、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、中でも、上記記載を考慮すると、特に、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンであるのが好ましい。
【0127】
<<白金または白金化合物(E)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。
白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
【0128】
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
【0129】
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
<<水(F)>>
また、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)~(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
【0131】
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
【0132】
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)~(F)成分の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される公知の添加成分を含有していてもよい。例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が挙げられる。その他、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
【0133】
なお、シリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は特に限定されないが、例えば、以下のように設定される。
【0134】
本実施形態において、シリカ粒子(C)の含有量の上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、例えば、60重量部以下でもよく、好ましくは50重量部以下でもよく、さらに好ましくは35重量部以下でもよい。これにより、引裂強度、引張永久ひずみのバランスを図ることができる。また、シリカ粒子(C)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、特に限定されないが、例えば、20重量部以上でもよい。
【0135】
シランカップリング剤(D)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、例えば、シランカップリング剤(D)が5重量部以上100重量部以下の割合で含有するのが好ましく、5重量部以上40重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。
これにより、シリカ粒子(C)のシリコーンゴム系硬化性組成物中における分散性を確実に向上させることができる。
【0136】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の含有量は、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びシリカ粒子(C)及びシランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.8重量部以上15重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。(B)の含有量が前記範囲内であることで、より効果的な硬化反応ができる可能性がある。
【0137】
白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量に対して、本成分中の白金族金属が重量単位で0.01~1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1~500ppmとなる量である。白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物を十分硬化させることができる。白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物の硬化速度を向上させることができる。
【0138】
さらに、水(F)を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、シランカップリング剤(D)100重量部に対して、例えば、10~100重量部の範囲であるのが好ましく、30~70重量部の範囲であるのがより好ましい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
【0139】
<シリコーンゴムの製造方法>
次に、本実施形態のシリコーンゴムの製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーンゴムの製造方法としては、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製し、このシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを得ることができる。
以下、詳述する。
【0140】
まず、シリコーンゴム系硬化性組成物の各成分を、任意の混練装置により、均一に混合してシリコーンゴム系硬化性組成物を調製する。
【0141】
[1]たとえば、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と、シリカ粒子(C)と、シランカップリング剤(D)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置により、混練することで、これら各成分(A)、(C)、(D)を含有する混練物を得る。
【0142】
なお、この混練物は、予めビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とシランカップリング剤(D)とを混練し、その後、シリカ粒子(C)を混練(混合)して得るのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中におけるシリカ粒子(C)の分散性がより向上する。
【0143】
また、この混練物を得る際には、水(F)を必要に応じて、各成分(A)、(C)、および(D)の混練物に添加するようにしてもよい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
【0144】
さらに、各成分(A)、(C)、(D)の混練は、第1温度で加熱する第1ステップと、第2温度で加熱する第2ステップとを経るようにするのが好ましい。これにより、第1ステップにおいて、シリカ粒子(C)の表面をカップリング剤(D)で表面処理することができるとともに、第2ステップにおいて、シリカ粒子(C)とカップリング剤(D)との反応で生成した副生成物を混練物中から確実に除去することができる。その後、必要に応じて、得られた混練物に対して、成分(A)を添加し、更に混練してもよい。これにより、混練物の成分のなじみを向上させることができる。
【0145】
第1温度は、例えば、40~120℃程度であるのが好ましく、例えば、60~90℃程度であるのがより好ましい。第2温度は、例えば、130~210℃程度であるのが好ましく、例えば、160~180℃程度であるのがより好ましい。
【0146】
また、第1ステップにおける雰囲気は、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下であるのが好ましく、第2ステップにおける雰囲気は、減圧雰囲気下であるのが好ましい。
【0147】
さらに、第1ステップの時間は、例えば、0.3~1.5時間程度であるのが好ましく、0.5~1.2時間程度であるのがより好ましい。第2ステップの時間は、例えば、0.7~3.0時間程度であるのが好ましく、1.0~2.0時間程度であるのがより好ましい。
【0148】
第1ステップおよび第2ステップを、上記のような条件とすることで、前記効果をより顕著に得ることができる。
【0149】
[2]次に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、白金または白金化合物(E)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置を用いて、上記工程[1]で調製した混練物に、各成分(B)、(E)を混練することで、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。得られたシリコーンゴム系硬化性組成物は溶剤を含むペーストであってもよい。
【0150】
なお、この各成分(B)、(E)の混練の際には、予め上記工程[1]で調製した混練物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)とを、上記工程[1]で調製した混練物と白金または白金化合物(E)とを混練し、その後、それぞれの混練物を混練するのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応を進行させることなく、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中に確実に分散させることができる。
【0151】
各成分(B)、(E)を混練する際の温度は、ロール設定温度として、例えば、10~70℃程度であるのが好ましく、25~30℃程度であるのがより好ましい。
【0152】
さらに、混練する時間は、例えば、5分~1時間程度であるのが好ましく、10~40分程度であるのがより好ましい。
【0153】
上記工程[1]および上記工程[2]において、温度を上記範囲内とすることにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。また、上記工程[1]および上記工程[2]において、混練時間を上記範囲内とすることにより、各成分(A)~(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中により確実に分散させることができる。
【0154】
なお、各工程[1]、[2]において使用される混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
【0155】
また、本工程[2]において、混練物中に1-エチニルシクロヘキサノールのような反応抑制剤を添加するようにしてもよい。これにより、混練物の温度が比較的高い温度に設定されたとしても、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。
【0156】
[3]次に、シリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを形成する。
【0157】
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100~250℃で1~30分間加熱(1次硬化)した後、200℃で1~4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
以上のような工程を経ることで、本実施形態のシリコーンゴムが得られる。
【0158】
本実施形態のエラストマー部材の製造方法について説明する。
エラストマー部材の製造方法の一例は、上記のシリコーンゴム系硬化性組成物を用いて、シリコーンゴム層(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を成形する成形工程と、シリコーンゴム層の表面に、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及び表面活性化処理からなる群から選ばれる一種以上の表面処理を施す表面処理工程と、を有する。
【0159】
これらの成形工程と前記表面処理工程とは、別々に行われてもよいが、インライン処理で行うことができる。これにより、安定的にエラストマー部材を製造できる。また、製造効率を高めることができる。
【0160】
製造方法の一例は、シリコーンゴム層の表面に、少なくともパリレンコート処理を施してもよい。これによって、シリコーンゴム層上にパリレン層を有するエラストマー部材を製造できる。
【0161】
製造方法の他の例は、シリコーンゴム層の表面に、少なくともカップリング剤処理を施してもよい。これによって、シリコーンゴム層上にカップリング剤層(シラン層)を有するエラストマー部材を製造できる。
【0162】
製造方法の他の例は、シリコーンゴム層の表面に、表面処理としてのプラズマ処理およびカップリング剤処理が少なくとも施されていてもよい。これによって、シリコーンゴム層上に改質層とカップリング剤層(シラン層)とを有するエラストマー部材を製造できる。
【0163】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. シリコーンゴム層を備えるエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層の表面に、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及び表面活性化処理からなる群から選ばれる一種以上の表面処理が施されており、
下記の手順に従って得られるタックピーク値が、5.0N以下である、
エラストマー部材。
(手順)
面積150mm
2
のフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料である当該エラストマー部材の表面処理が施された表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験による当該エラストマー部材の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値とする。
2. 1.に記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層の表面に、少なくともパリレンコート処理によって形成されたパリレン層が設けられており、前記パリレン層の厚みが、100nm以上10μm以下である、エラストマー部材。
3. 1.に記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層の表面に、少なくとも前記カップリング剤処理が施されている、エラストマー部材。
4. 1.に記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層の表面に、前記表面活性化処理としてのプラズマ処理および前記カップリング剤処理が少なくとも施されている、エラストマー部材。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載のエラストマー部材であって、
JIS K6251(2004)に準拠して測定される、前記シリコーンゴム層の引張強度が、6.0MPa以上15MPa以下である、エラストマー部材。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載のエラストマー部材であって、
JIS K6253(1997)に準拠して規定される、前記シリコーンゴム層のデュロメータ硬さAが、30以上90以下である、エラストマー部材。
7. 1.~6.のいずれか一つに記載のエラストマー部材であって、
JIS K6252(2001)に準拠して測定される、前記シリコーンゴム層の引裂強度が、25N/mm以上である、エラストマー部材。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載のエラストマー部材であって、
JIS K6251(2004)に準拠して測定される、前記シリコーンゴム層の破断伸びが、200%以上1000%以下である、エラストマー部材。
9. 1.~8.のいずれか一つに記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層が、無機充填材を含む、エラストマー部材。
10. 1.~9.のいずれか一つに記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層が、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成される、エラストマー部材。
11. 10.に記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム系硬化性組成物が、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含む、エラストマー部材。
12. 11.に記載のエラストマー部材であって、
前記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が、ビニル基量が0.4モル%以下の第1ビニル基含有オルガノポリシロキサンを含む、エラストマー部材。
13. 10.~12.のいずれか一つに記載のエラストマー部材であって、
前記シリコーンゴム層系硬化性組成物が、シリカ粒子(C)を含み、
前記シリカ粒子(C)の含有量が、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、10重量部以上60重量部以下である、エラストマー部材。
14. 1.~13.のいずれか一つに記載のエラストマー部材であって、
摺動部材に用いられる、エラストマー部材。
15. シリコーンゴム層を成形する成形工程と、
前記シリコーンゴム層の表面に、パリレンコート処理、カップリング剤処理、及び表面活性化処理からなる群から選ばれる一種以上の表面処理を施す表面処理工程と、を有する、
シリコーンゴム層を備えるエラストマー部材の製造方法であって、
前記成形工程と前記表面処理工程とをインライン処理で行うことを特徴とする、
エラストマー部材の製造方法。
【実施例】
【0164】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0165】
原料成分を以下に示す。
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
・低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1):合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でR1(末端)のみがビニル基である構造)
・高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2):合成スキーム2により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1-1)で表わされる構造でR1およびR2がビニル基である構造)
【0166】
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
・オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B):モメンティブ社製、「TC-25D」
(シリカ粒子(C))
・シリカ粒子(C):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m2/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
(シランカップリング剤(D))
・シランカップリング剤(D-1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelst社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
・シランカップリング剤(D-2):ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelst社製、「1,3-DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
(白金または白金化合物(E))
・白金または白金化合物(E):白金化合物、モメンティブ社製、「TC-25A」
【0167】
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)の合成]
下記式(5)にしたがって、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を得た(Mn=2,2×105、Mw=4,8×105)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
【0168】
【0169】
[合成スキーム2:高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)の合成]
上記(A1-1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1-1)の合成工程と同様にすることで、下記式(6)のように、高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)を合成した。(Mn=2,3×10
5、Mw=5,0×10
5)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.93モル%であった。
【化7】
【0170】
(シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
次のようにしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。
まず、表1に示す割合で、95%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)およびシランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り5%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を4.5および白金または白金化合物(E)を0.5重量部加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
【0171】
【0172】
(シート状シリコーンゴムの作製)
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、170℃、10MPaで10分間プレスし、厚さ1mmのシート状に成形すると共に、1次硬化した。続いて、200℃で4時間加熱し、2次硬化して、シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を得た。
【0173】
(エラストマー部材の作製)
【0174】
[実施例1]
シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム層)の表面に、気相蒸着によりパリレンCを蒸着させた(パリレンコート処理)。パリレンは、厚さが1μmとなるように蒸着させた。
以上により、シリコーンゴム層上にパリレン層(表面処理層)が形成されたエラストマー部材Aを得た。
【0175】
[実施例2]
カップリング剤として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903、信越化学社製、アミノ基含有シラン化合物)を使用した。
シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム層)の表面に、カップリング剤を塗布し、110℃、30分間でアニールし、エタノールで洗浄することで35μmのシラン層を形成した。
以上により、シリコーンゴム層上にシラン層(表面処理層)が形成されたエラストマー部材Bを得た。
【0176】
[実施例3]
カップリング剤として、3-アミノプロピルトリメトキシシランをテトラヒドロフラン(THF)に混合して調製してなる20重量%の3-アミノプロピルトリメトキシシランを含む溶液を使用した以外は、実施例2と同様にして、厚み28μmのシラン層が形成されたエラストマー部材Cを得た。
【0177】
[実施例4]
シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム層)の表面に、酸素流量:200sccm、圧力3MPa、高周波出力:300W、処理時間:2分の条件で、酸素プラズマ処理を施した。
続いて、カップリング剤として、3-アミノプロピルトリメトキシシランをエタノールに混合し、20重量%の3-アミノプロピルトリメトキシシランを含む溶液を調製した。
プラズマ処理したシリコーンゴム層の表面上に、調製したカップリング剤を塗布し、110℃、30分間アニールし、エタノールで洗浄することで、厚み5μmのシラン層を形成した。
以上により、シリコーンゴム層上にプラズマ処理層およびシラン層(表面処理層)が形成されたエラストマー部材Dを得た。
【0178】
[比較例1]
エラストマー部材Eとして、得られたシート状シリコーンゴムをそのまま使用した。
【0179】
[比較例3]
シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム層)の表面に、市販のシリコーン系表面処理剤(液状シリコーンゴム)を塗布し、150℃、10分間で乾燥させ、厚み50μmのシリコーン系表面処理剤層を形成した。
以上により、シリコーンゴム層上にシリコーン系表面処理剤層(表面処理層)が形成されたエラストマー部材Fを得た。
【0180】
【0181】
【0182】
得られたエラストマー部材について、下記の評価項目に基づいて評価を行った。
【0183】
(タックピーク値)
測定装置として、東洋精機社製のタッキネスチェッカーを用いてタックピーク値を測定した。測定モードは、設定した加圧値までプローブを押し込み、設定した時間が経過するまで加圧値を保持するようにコントロールし続けるConstant Loadを用いた。
具体的には、面積150mm2のフラット面を有するアルミ製プローブを、プローブ移動速度:2.3mm/秒、プローブ圧着強度:12N、圧着時間:6秒の条件で、当該アルミ製プローブのフラット面を測定試料(実施例1~4、比較例2:エラストマー部材の表面処理層、比較例1:エラストマー部材のシリコーンゴム層)の表面に接触させ、プローブ移動速度:2.3mm/秒の条件で上方に引き剥がしたときの、プローブタック試験によるシリコーンゴム層の表面におけるタックピーク値を5回測定し、この5回の測定値の平均値を上記のタックピーク値TP(N)とした。
【0184】
<すべり性試験>
各実施例・各比較例のエラストマー部材を2つ準備し、2つを重ね合わせた状態で、試験台の平面上に置いた。実施例1~4、比較例2のエラストマー部材は、表面処理層の表面同士が接触した状態で重ね合わせ、比較例1のエラストマー部材は、シリコーンゴム層の表面同士が接触した状態で重ね合わせた。
続いて、200gの重りを載せた後、2つのエラストマー部材の互いの表面を接触させた状態で、水平方向にスライドさせて、シート同士の擦り合わせ試験を実施し、下記の評価基準に基づいて評価した。
【0185】
擦り合わせ時に強い抵抗を感じシリコーンゴム層が滑らないものを×、擦り合わせ時に抵抗を感じないものを○とした。
【0186】
(硬度:デュロメータ硬さA)
得られた厚さ約1mmのエラストマー部材を6枚積層し、6mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して、JIS K6253(1997)に準拠してタイプAデュロメータ硬さを測定した。2つのサンプルを用いて、各サンプルでn=5で測定を行い10測定の平均値を測定値とした。
【0187】
(引裂強度)
得られた厚さ約1mmのエラストマー部材を用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、得られたクレセント形試験片の25℃における引裂強度を測定した。単位は、N/mmである。5つのサンプルで行い、5つの平均値を測定値とした。
【0188】
(引張強度)
得られた厚さ約1mmのエラストマー部材を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られた試験片の25℃における引張強度を測定した。単位は、MPaである。3つのサンプルで行い、3つの平均値を測定値とし、その標準偏差も算出した。
【0189】
(破断伸び)
得られた厚さ約1mmのエラストマー部材を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片の、25℃での、破断伸びを測定した。
破断伸びは、[標線間距離(mm)]÷[標線間距離(20mm)]×100、という式に基づいて計算した。単位は%である。3つのサンプルで行い、3つの平均値を測定値とし、その標準偏差も算出した。
【0190】
(引張応力)
得られた厚さ約1mmのエラストマー部材を用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片の、25℃での、100%~600%伸張時における引張応力を測定した。単位はMPaである。3つのサンプルで行い、3つの平均値を測定値とした。
【0191】
実施例1~4のエラストマー部材は、比較例2と比べて、機械的物性(ゴム特性)の変動が抑制されており、比較例1と比べて、タックピーク値が小さく、すべり性に優れる結果を示した。
なお、実施例1~4のエラストマー部材の表面処理面において、ブリードが抑制されていることから、ブリード耐性を有していることが分かった。
このような実施例1~4のエラストマー部材は、摺動部材に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0192】
10 シリコーンゴム層
20 表面処理層
100 エラストマー部材