(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電子棚札と電子棚札システムおよび商品管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20240214BHJP
G07G 1/01 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G06Q30/06
G07G1/01 301D
(21)【出願番号】P 2019231470
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 進
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-139938(JP,A)
【文献】特開2020-019588(JP,A)
【文献】特開2013-054539(JP,A)
【文献】特開2018-048024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G07G 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品情報を表示する電子棚札システムであって、
相互に通信を行う電子棚札と電子棚札管理サーバとで構成され、
前記電子棚札は、表示の対象である陳列されている商品の近傍に設置され、
前記電子棚札管理サーバから送信される商品情報の表示をする手段と、
顧客の手の接近と離反を検出する手段と、
該電子棚札から商品までの距離を検出する手段と、
該電子棚札管理サーバからの指示に従い、前記商品までの距離に基づいて導出した該商品の陳列状態を表す情報を該電子棚札管理サーバへ送信する手段とを備え、
前記電子棚札管理サーバは、前記電子棚札から送信された前記陳列状態を表す情報を受信する手段と、
該陳列状態を表す情報
を分析し前記陳列状態に不備があると判断した場合に、店舗従業員の携帯端末に
、前記陳列状態の不備に係る所定の情報を送信する手段を備えることを特徴とする電子棚札システム。
【請求項2】
前記電子棚札管理サーバに接続された中継装置を一つ以上備え、該中継装置を通して複数の前記電子棚札と無線通信することを特徴とする請求項1に記載の電子棚札システム。
【請求項3】
前記電子棚札管理サーバに接続されたアクセスポイントを一つ以上備え、該アクセスポイントを通して前記店舗従業員の携帯端末と無線通信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子棚札システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の電子棚札システムに使用可能な電子棚札であって、
前記電子棚札管理サーバと相互に通信を行う通信手段と、
通信内容に基づき表示を行う表示手段と、
顧客の手の接近および商品までの距離を検出する検出手段と、
各手段を制御する制御手段と、
該制御に必要な情報を保持する記憶手段と、
これらに電源を供給する電源手段を少なくとも備えることを特徴とする電子棚札。
【請求項5】
電子棚札を用いた商品管理方法であって、
請求項1~3のいずれかに記載の電子棚札システムにおいて、前記電子棚札が顧客の手の接近を検出したときに陳列棚の商品までの距離を検出することによって、
前記陳列状態に不備があると判断された場合、該不備を矯正するための情報を、店舗従業員の携帯端末へ送信することを特徴とする商品管理方法。
【請求項6】
前記不備を矯正するための情報が、
少なくとも前
記陳列状態に不備があると判断された該電子棚札の位置情報、該商品
の名称、を含むことを特徴とする請求項5に記載の商品管理方法。
【請求項7】
前
記陳列状態に不備があると判断された電子棚札が複数ある場合において、該電子棚札の位置情報と前記店舗従業員の携帯端末の位置情報を分析し、ダイクストラ法、ベルマンーフォード法、ワーシャル-フロイド法のいずれかまたはその他の最短経路導出アルゴリズムを用いて該店舗従業員の該不備
を矯正
するための最適な巡回経路を求めることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の商品管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
店舗に陳列される商品の近くに設置され、当該商品に関する商品情報の表示を行う電子棚札に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットなどの店舗においては、陳列棚に陳列された商品の陳列状態に不備があると、販売機会損失が発生し、この販売機会損失は店舗の売上げに大きな影響を及ぼすことから、商品の陳列状態に不備がある場合には、それを解消する商品管理作業(整頓作業や補充作業)を速やかに実施する必要がある。前記「陳列状態に不備がある」とは、商品の不足、すなわち陳列棚上に商品が存在しない欠品状態であること、あるいは陳列の乱れ、すなわち商品は陳列棚上にあり欠品状態ではないが、陳列棚の前面から該商品の存在が確認できない状態、であることを指す。
【0003】
このような商品管理作業に関連するものとして、従来、陳列エリアを撮影した映像に基づいて、商品の補充の必要性を判断して、補充作業を指示する報知を行う技術が知られている(下記特許文献1)。また、陳列エリアを撮影した映像に基づいて、商品の陳列方法や欠品状況に関する情報を生成して、その情報を本部の端末に送信する技術が知られている(下記特許文献2)。また、陳列工リアを撮影した映像に基づいて、商品の整頓の必要性を判断して、整頓作業を指示する報知を行う技術が知られている(下記特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-081552号公報
【文献】特開2002-366621号公報
【文献】特開2003-230131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献では何れも撮像装置によって商品の陳列状態を監視する方法が提案されている。しかしながら、商品数を増やすために背の高い陳列棚を用いる場合や、商品が充実しているように見せるため、あえて密度感を出す棚間隔の狭い陳列棚を用いている場合、従来の撮像装置による商品の陳列状態を監視する方法では撮像装置の設置が困難な場合や、設置が可能であっても商品を漏れなく監視するために必要な撮像装置の数が増加して導入コストが増加するなどの課題がある。
【0006】
ところで、スーパーマーケットなどの店舗では、販売する商品毎の名称や価格等の商品情報を表示する必要があり、従来は、商品名や価格等を記載した棚札を、商品の近傍に設置して表示していた。しかし、これでは、作業効率や作業コストの点で問題であるので、最近、この商品に対する商品情報の表示を電子的に行う電子棚札システムが提案されている。この電子棚札システムは、店舗に陳列される商品毎の近傍に設けられた複数の電子棚札とサーバとで構成され、サーバと電子棚札とは、無線通信回線などで接続されている。このシステムでは、電子棚札には、電子棚札の近傍に陳列される商品毎の情報が、サーバから送信されて表示される仕組みである。この電子棚札システムを採用すると、サーバから送信される情報を陳列される商品毎の近傍に設けられた電子棚札に表示することで、商品毎の情報を表示ことができる。しかし、折角電子棚札が商品毎の近傍に設けられているにも係わらず、商品量の不足や陳列の乱れなどの陳列状態の不備に対しては、従来の電子棚札及び電子棚札システムでは何らの処置も行わない。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような課題に対処するためになされたものであって、単に商品の情報を表示するのみならず、陳列されている商品の不備を検出可能とすることにより販売機会の損失を防ぐ電子棚札及び電子棚札システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
商品情報を表示する電子棚札システムであって、
相互に通信を行う電子棚札と電子棚札管理サーバとで構成され、
前記電子棚札は、表示の対象である陳列されている商品の近傍に設置され、
前記電子棚札管理サーバから送信される商品情報の表示をする手段と、
顧客の手の接近と離反を検出する手段と、
該電子棚札から商品までの距離を検出する手段と、
該電子棚札管理サーバからの指示に従い、前記商品までの距離に基づいて導出した該商品の陳列状態を表す情報を該電子棚札管理サーバへ送信する手段とを備え、
前記電子棚札管理サーバは、前記電子棚札から送信された前記陳列状態を表す情報を受信する手段と、
該陳列状態を表す情報を分析し前記陳列状態に不備があると判断した場合に、店舗従業員の携帯端末に、前記陳列状態の不備に係る所定の情報を送信する手段を備えることを特徴とする電子棚札システムである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記電子棚札管理サーバに接続された中継装置を一つ以上備え、該中継装置を通して複数の前記電子棚札と無線通信することを特徴とする請求項1に記載の電子棚札システムである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、
前記電子棚札管理サーバに接続されたアクセスポイントを一つ以上備え、該アクセスポイントを通して前記店舗従業員の携帯端末と無線通信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子棚札システムである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載の電子棚札システムに使用可能な電子棚札であって、
前記電子棚札管理サーバと相互に通信を行う通信手段と、
通信内容に基づき表示を行う表示手段と、
顧客の手の接近および商品までの距離を検出する検出手段と、
各手段を制御する制御手段と、
該制御に必要な情報を保持する記憶手段と、
これらに電源を供給する電源手段を少なくとも備えることを特徴とする電子棚札である。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、
電子棚札を用いた商品管理方法であって、
請求項1~3のいずれかに記載の電子棚札システムにおいて、前記電子棚札が顧客の手の接近を検出したときに陳列棚の商品までの距離を検出することによって、前記陳列状態に不備があると判断された場合、該不備を矯正するための情報を、店舗従業員の携帯端末へ送信することを特徴とする商品管理方法である。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記不備を矯正するための情報が、
少なくとも前記陳列状態に不備があると判断された該電子棚札の位置情報、該商品の名称、を含むことを特徴とする請求項5に記載の商品管理方法である。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、前記陳列状態に不備があると判断された電子棚札が複数ある場合において、該電子棚札の位置情報と前記店舗従業員の携帯端末の位置情報を分析し、ダイクストラ法、ベルマンーフォード法、ワーシャル-フロイド法のいずれかまたはその他の最短経路導出アルゴリズムを用いて該店舗従業員の該不備を矯正するための最適な巡回経路を求めることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の商品管理方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子棚札システムを構成する電子棚札が、商品の陳列状態を検出する手段を備えており、電子棚札に表示される商品に対応した商品の陳列状態を検出することにより、この商品の陳列乱れや商品の不足を検出することができる。したがって、従来の撮像装置による商品の陳列状態を監視する方法において撮像装置の増加に伴う導入コストが大幅に増加することなく、また、撮像装置の設置が困難な場合でも、商品の陳列乱れや商品の不足を知ることができ、販売機会損失を防ぐことができる。
【0016】
また、電子棚札システムを構成する電子棚札が、さらに顧客の手の接近の検出を備えており、電子棚札に表示される商品に対応した場所での顧客の手の接近を検出することと、電子棚札に表示される商品に対応した商品の陳列状態を検出することにより、顧客の行動も検出することができる。例えば、顧客の手の接近を検出した後に商品の陳列状態に大きな変化があった場合は商品が売れた、変化がなかったまたは変化が軽微であった場合は一度手にしたが元に戻した、など情報を得ることができる。
【0017】
また、顧客の手の接近を検出した場合のみ、商品の陳列状態を検出し顧客の行動情報や陳列状態の情報を通信手段により電子棚札管理サーバに送信すればよいので、電子棚札が電池駆動の場合の消費電力を低減することができる。電子棚札管理サーバが電子棚札より得た顧客の行動情報や陳列状態の情報を分析し、陳列状態に不備があると判断した場合に従業員の持つ携帯端末に陳列状態を改善すべき商品のある場所を通知することができるので、従業員は効率よく巡回することができる。また、改善すべき商品の場所が複数ある場合は従業員の位置、改善すべき商品の位置を分析し最適な巡回ルートを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】電子棚札を用いた電子棚札システムの構成を示すブロック図。
【
図5】
図4における最短巡回ルートの結果を示す表。
【
図6】電子棚札の動作を説明するための商品陳列棚の状況を示した図。
【
図7】電子棚札の動作を示した概略フローチャート。
【
図8】センサー検出処理の動作を示した概略フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、電子棚札1の構成を示すブロック図であり、
図2は、電子棚札1の外観図である。
【0020】
電子棚札1は、制御手段としてのMCU(Micro Controller Unit)11、記憶手段としてのメモリ14、通信手段としてのアンテナ121を備えた無線通信部12、表示手段としての表示部13、検出手段としてのセンサ一部15及び電源手段としての電源部16で構成される。また、MCU11、メモリ14、無線通信部12、表示部13、センサー部15はシリアルインタフェースライン17を介して相互に接続されている。MCU11は、CPUコア、プログラムを格納するメモリ、タイマー、外部周辺機器などと通信するための入出力部等で構成され、格納されたプログラムに従って各種処理を行っている。メモリ14は、表示部13に表示するための画像情報、センサー部15からのセンサー情報、無線通信部12からの無線情報、または、無線通信部12への無線情報、電子棚札1のID情報、等が格納されている。無線通信部12は、sub-GHZ帯の省電力近距離無線通信技術を用いた無線装置で構成されている。無線通信部12のアンテナ121は電子棚札1の筐体上部に小型チップアンテナが備えられている。無線通信部12は、sub-GHZ帯の省電力近距離無線通信技術以外に様々な通信技術を用いることができる。しかし、sub-GHZ帯は、電波伝搬特性(見通し通信距離、回り込み特性)に優れているので電子棚札1が見通しの悪い位置に配置されても良好な通信が可能となるので好適である。表示部13は、電子ペーパーで構成されており、商品情報、価格情報、商品管理バーコード情報、等が表示される。表示部13は、LCDなど電子ペーパー以外の表示手段を用いることができる。しかし、電子ペーパーは、表示書き換え時以外は電力を消費しないので電池駆動にとって都合がよい。センサー部15は、電子棚札1の上方を顧客の手が接近または通過するのを検出する検出手段としての赤外線センサー151と、電子棚札1の背面に配置され商品までの距離を検出する検出手段としての超音波距離センサー152、153、とで構成されている。
【0021】
図2では、顧客の手が接近または通過するのを検出する検出手段として赤外線センサーを用いているが、顧客の手が接近または通過するのを検出できれば他のセンサーを用いてもかまわない。同様に商品までの距離を検出する検出手段として超音波距離センサーを用いているが商品までの距離を検出することができれば他のセンサーを用いてもかまわない。
【0022】
また、
図2では、赤外線センサー151は電子棚札1の上方に向けて配置されているが顧客の手が接近または通過する側に向けて配置すればよく上方以外に配置してもよい。
【0023】
図3は、電子棚札1を用いた電子棚札システムの構成を示すブロック図である。電子棚札システムは、スーパーマーケットや小売店等の店舗で用いられるシステムであり、店舗内の商品毎に商品が陳列される近傍に設置された電子棚札1と、複数の電子棚札1を管理する電子棚札管理サーバ2と、アクセスポイント3と、中継装置4と、携帯端末5とを備える。ここで図示する電子棚札システムは、4個の電子棚札1と、2つの中継装置14と、1つのアクセスポイント3と、1つの携帯端末5とを備えているが、電子棚札システムは、更に多くの電子棚札1と、中継装置4と、アクセスポイント3と、携帯端末5とを備えることができ、また、電子棚札システムが備える電子棚札1と、中継機4との数は、図示する例より少なくてもよい。図示する電子棚札システムでは、電子棚札管理サーバ2と、アクセスポイント3と、複数の中継装置4とは有線ネットワークで接続されており、互いにデータ通信を行うことができる。また、アクセスポイント3と、携帯端末5とは無線LANなどの無線ネットワークで接続されており、互いにデータ通信を行うことができる。また、これら電子棚札1と中継装置4とは、sub-GHz帯の省電力近距離無線通信技術を用いた無線ネットワークで接続されており、互いにデータ通信を行うことができる。これにより、電子棚札管理サーバ2と携帯端末5、および電子棚札管理サーバ2とこれら電子棚札1とは互いにデータ通信を行うことができる。
【0024】
図示する例では電子棚札管理サーバ2と中継装置4とは有線ネットワークで接続されているが、一部または全部の中継装置4への有線ネットワークを無線LANなどの無線ネットワークに置き換えてアクセスポイント3を経由した無線LANなどの無線ネットワークで接続する様にしてもよい。電子棚札管理サーバ2と中継装置4との接続を無線化することで電子棚札システムの導入や中継装置4の増設が容易になる。アクセスポイント3は、電子棚札管理サーバ2から携帯端末5へ情報の中継を行う。逆に携帯端末5から電子棚札管理サーバへ情報や中継装置4への情報の中継も行う。中継装置4は、電子棚札管理サーバ2から電子棚札1へ情報の中継を行う。逆に電子棚札1から電子棚札管理サーバ2へ情報の中継も行う。
【0025】
電子棚札管理サーバ2は、電子棚札1からの情報を分析し、陳列状態に不備があると判断した場合に陳列状態に不備がある商品の予め登録された各商品に対応した電子棚札1の位置情報、商品名などの情報を携帯端末5へ送信する。また、電子棚札管理サーバ2は、陳列状態に不備がある商品が複数ある場合には、予め登録された各商品に対応した電子棚札1の位置情報と対象の携帯端末5の位置を分析し、陳列状態に不備がある商品の予め登録された各商品に対応した電子棚札1の位置情報、商品名などの情報を最適な巡回ルートとなるように順番に対象の携帯端末5へ送信する。複数のアクセスポイントからの電波強度を利用したり、特定の電子棚札1のID情報を含む近距離無線通信の電波を電波ビーコンとして利用したり、別途電波ビーコン装置を設置したりすることで電子棚札管理サーバ2に対象の携帯端末5の位置を報知することができる。
【0026】
最適な巡回ルートの探索は一例として以下の方法を用いることができる。
図4は、陳列棚(201)の配置の例であり、配置の平面図を示している。この例では陳列棚の一定の範囲をーつのノード(頂点)とし丸印で示しており、隣接するノードを等間隔に配置している。この例ではノード間を等間隔としたが、各々の間隔は自由に設定できる。また、その間隔の距離や時間をコストと表現している。また、ノードとノードはエッジ(辺)で接続され、陳列棚の一定の範囲の電子棚札が個々のノードに紐づけられている。ここで、丸印の中の数字はノード番号を表している。最短の巡回ルートを求めるのは、上述のコストが最小になる経路を求めることである。
図4のSは携帯端末5の場所を、R1、R2、R3は不備のある商品の場所を示しており、それぞれノード番号で表すと、Sはノード8、R1はノード7、R2はノード9、R3はノード17である。
【0027】
最短の巡回ルートを求めるために、対象となる2点間のノードの最短経路を探索する必要がある。最短経路探索方法としてダイクストラ法、ベルマンーフォード法、ワーシャルーフロイド法、などのアルゴリズムを用いることができる。また、
図7の例の様にすべてのエッジ(辺)が等間隔で重みづけのない場合は幅優先探索、深さ優先探索のアルゴリズムを用いることもできる。ダイクストラ法、ベルマンーフォード法は特定のノードから他のすべてのノード間との最短経路のコストを求める方法であり、ワーシャルーフロイド法はすべてのノード間の最短経路のコストを比較的簡単な実装で一度に求めることができる特徴がある。実施例では予めワーシャルーフロイド法を持いて各ノード間の最短経路コストを求めて電子棚札管理サーバ2内に保持する。最短経路のコストは都度求めても良いし、他の最短経路探索方法を用いても良い。
【0028】
図4の例では携帯端末5の場所であるSのノード8からR1のノード7、ノード7からR2のノード9、ノード9からR3のノード17の最短経路を探索し、続いて、R1のノード7からR2のノード9、R1のノード7からR3のノード17、R2のノード9からR3のノード17の最短経路を探索し、各々の最短経路とそのコストを保持する。続いて、対象のノードを通るすべて経路の組み合わせから最小のコストとなる経路を求める。対象となるノードの数をNとすると組み合わせはN!(階乗)となる。
図7場合、N=3なので組み合わせ数は3!=6となる。Nの増加に伴い指数関数的に組み合わせが増加するので一度に巡回する場所は電子棚札管理サーバの計算性能に見合った数に制限する必要がある。巡回において商品の不備を改善した時に電子棚札管理サーバ2に対して改善済みの通知をするようにすると巡回中に新たに不備が発生した場合、巡回経路は電子棚札管理サーバ2が把握しているので、その場所が巡回経路にあり巡回前であれば携帯端末を通じて商品の不備がある場所を通知することもできる。
【0029】
図5は、
図4において最短の巡回ルートを求めた結果を示した表である。
図5(a)は、対象のノードの2点間の最短経路とそのコストの結果を示した表である。ただし、最短経路D、E、Fについては経路の方向性はなく、また、エッジで接続されている隣接したノード間のコストは1とした。
図5(b)は、経路の組み合わせに対する合計コストを計算した表である。この表によれば最小の合計コストは11で、最短経路の組み合わせはA+E+Fとなり、したがって、最短の巡回ルートは、ノード番号で表せば、8-5-4-3-7-10-13-17-16-15-12-9の順に巡り、R1の商品の場所、R3の商品の場所、R2の商品の場所の順番となる。
【0030】
続いて電子棚札1の動作について
図6、
図7および
図8を用いて説明する。
【0031】
図6は、電子棚札1の動作を説明するための商品陳列棚の状況を示した例である。電子棚札(31、31、33、34)と各々対象としている商品(21、22、23,24)の陳列棚25の陳列状態を示している。
図6において、陳列棚25の上段は、商品21、および商品22が不備なく陳列されている状態を示しており、陳列棚25の下段左は、商品23を購入する為に顧客の手が電子棚札33に接近している状態を示している。また、陳列棚25の下段右は、電子棚札34の背面側には既に商品24が購入され、陳列棚の前面に商品24が無い状態を示している。
【0032】
図7は、電子棚札1の動作を示した概略フローチャートである。
図7において電子棚札1はステップS1として電子棚札管理サーバ2からの情報受信の有無を確認する。受信ありの場合(ステップS2のY)で、かつ、受信情報が表示変更の場合(ステップS3のY)は、電子棚札1の表示部13に対して受信情報に基づき表示変更処理を行い(ステップS5)、ステップS1に戻る。ステップS3において受信情報が表示変更でない場合(ステップS3のN)で、かつ、受信情報が基準取得の場合(ステップS4のY)は、商品までの距離を取得し、基準値(R)として電子棚札1のメモリ14に保持し(ステップS6)、ステップS1に戻る。ステップS4において受信情報が基準取得でない場合(ステップS4のN)は、受信情報に基づき内部処理を行い(ステップS7)、ステップS1に戻る。
図5の概略フローチャートでは、電子棚札1の主要な動作である表示変更(ステップS5)と基準値取得(ステップS6)以外の電子棚札1対するすべての処理を内部処理(ステップS7)として表している。ステップS2において電子棚札管理サーバ2からの情報受信がない場合(ステップS2のN)は、センサー検出処理を行い(ステップS10)、ステップS1 に戻る。
【0033】
図8は、センサー検出処理(
図7のステップS10)の動作を示した概略フローチャートである。
図6において電子棚札1は赤外線センサー151により顧客の手の動きを確認する(ステップS11)。顧客の手の接近が検知できない場合(ステップS12のN)、センサー検出処理は何も行わず終了する。顧客の手の接近が検知できた場合(ステップS12のY)、顧客の手の離反が検知できるまで赤外線センサー151による検出を繰り返す(ステップS13のN)。ステップS13において顧客の手の離反が検知できた場合(ステップS13のY)、距離センサー(152,153)で商品までの距離(C)を取得し(ステップS14)、その値を電子棚札1のメモリ14に保持する。
図7のステップS6で電子棚札1のメモリ14に保持した基準値(R)とステップS14で取得し電子棚札1のメモリ14に保持した距離(C)を比較し(ステップS15)、その結果を電子棚札1のメモリ14に保持し、その比較結果の情報を電子棚札1の無線通信部12を介して電子棚札管理サーバ2に送信する。送信完了後に電子棚札1のメモリ14に保持された商品までの距離(C)の値を電子棚札1のメモリ14に保持されている基準値(R)と置き換え(ステップS17)、センサー検出処理を終了する。
【0034】
以上に説明した電子棚札1の動作に伴って電子棚札1から送信される情報によって、電子棚札管理サーバ2は以下の情報を得ることができる。例えば比較方法を距離(C)から基準値(R)を引いた値が正ならば、顧客は商品を購入し、陳列棚の前面に商品がない状態であることを、また、接近かつ離反を検知しながらも距離(C)と基準値(R)の値が同じならば顧客は商品を手に取ることなく購入しなかったということを、距離(C)から基準値(R)を引いた値が正の後、短時間の内に距離(C)と基準値(R)の値が同じになったならば、顧客は商品を手に取った後に陳列棚に戻したということなど、商品の陳列状態の不備の検知に留まらず、顧客の行動の情報を得ることができ、マーケティングに役立てることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 電子棚札
2 電子棚札管理サーバ
3 アクセスポイント
4 中継装置
5 携帯端末
11 MCU
12 無線通信部
13 表示部
14 メモリ
15 センサー部
16 電源部
17 シリアルインタフェースライン
21,22、23、24 商品
25 商品陳列棚
31、32、33、34 電子棚札
121 アンテナ
151 赤外線センサー
152、153 超音波センサー