(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】無線通信装置の製造方法、無線通信装置および無線通信装置の集合体
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240214BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240214BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G06K19/077 136
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
G06K19/077 144
G06K19/077 280
(21)【出願番号】P 2019570145
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2019048923
(87)【国際公開番号】W WO2020137615
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2018240796
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍一
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】脇田 潤史
【審査官】土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-108983(JP,A)
【文献】特開2007-096279(JP,A)
【文献】特開2018-093198(JP,A)
【文献】特開2011-210243(JP,A)
【文献】特開2006-298572(JP,A)
【文献】特開2003-168099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H01L 29/786
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも回路が形成された第1のフィルム基板と、少なくともアンテナが形成された第2のフィルム基板とを貼り合わせて無線通信装置を製造する方法であって、
前記回路が、トランジスタを含み、
前記トランジスタが、
前記第1のフィルム基板上に導電性パターンを形成する工程と、
前記導電性パターンが形成されたフィルム基板上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に有機半導体及び/又はカーボン材料を含む溶液を塗布し、乾燥して半導体層を形成する工程と、
を含む工程により形成され、
前記回路は前記第1のフィルム基板の長尺方向に1列以上のアレイ状に形成され、
前記アンテナは前記第2のフィルム基板の長尺方向に1列以上のアレイ状に形成され、
前記第1のフィルム基板と前記第2のフィルム基板とが前記長尺方向に搬送され、前記貼り合わせが連続して行われ、
前記貼り合わせが、
第1のフィルム基板と第2のフィルム基板の搬送方向の位置ずれ量を測定する工程と、
前記位置ずれ量に応じて第1のフィルム基板又は第2のフィルム基板の位置を補正する工程と、を含み、
前記第1のフィルム基板又は第2のフィルム基板の位置の補正は、位置ずれ量に応じて第1のフィルム基板又は第2のフィルム基板の搬送張力を変化させることにより行う、無線通信装置の製造方法。
【請求項2】
前記搬送方向の位置ずれ量をアライメントカメラにより測定する工程と、
前記位置ずれ量の補正を、第1のフィルム基板又は第2のフィルム基板の搬送張力を変化させることにより行う工程と、を含む、請求項
1に記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項3】
少なくとも回路
が長尺方向に1列以上のアレイ状に形成され
た第1のフィルム基板と、少なくともアンテナ
が長尺方向に1列以上のアレイ状に形成され
た第2のフィルム基板とを貼り合わせて無線通信装置を製造する方法であって、
前記回路が、トランジスタを含み、
前記トランジスタが、
前記第1のフィルム基板上に導電性パターンを形成する工程と、
前記導電性パターンが形成されたフィルム基板上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に有機半導体及び/又はカーボン材料を含む溶液を塗布し、乾燥して半導体層を形成する工程と、
を含む工程により形成され、
前記貼り合わせを、
前記第1のフィルム基板と前記第2のフィルム基板とを互いに対向させ、前記長尺方向に間欠搬送する工程、
前記搬送の停止時に、前記第1のフィルム基板または前記第2のフィルム基板を、貼り合わせ位置において、前記回路または前記アンテナを複数個含む枚葉シート状に分割する工程、
前記枚葉シート状の前記第1のフィルム基板または前記第2のフィルム基板において、前記回路と前記アンテナとを貼り合わせる工程、
とを含
む無線通信装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1のフィルム基板と前記第2のフィルム基板とが、互いに直交するように配置される、請求項
3に記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1のフィルム基板を搬送方向に少なくとも2つ以上に分割する工程と、
当該分割したフィルム基板同士の、搬送と垂直方向の間隔を前記第2のフィルム基板の基板幅方向のアンテナ列の間隔に調整する工程と、
を含む、
請求項
1~3のいずれかに記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1のフィルム基板を搬送方向に少なくとも2つ以上に分割する工程と、
当該分割したフィルム基板同士の、搬送と垂直方向の間隔を前記第2のフィルム基板の搬送方向のアンテナ列の間隔に調整する工程と、
を含む、
請求項
4に記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項7】
少なくとも回路
が長尺方向に1列以上のアレイ状に形成され
た枚葉状の第1のフィルム基板と、少なくともアンテナ
が長尺方向に1列以上のアレイ状に形成され
た第2のフィルム基板とを貼り合わせて無線通信装置を製造する方法であって、
前記回路が、トランジスタを含み、
前記トランジスタが、
前記第1のフィルム基板上に導電性パターンを形成する工程と、
前記導電性パターンが形成されたフィルム基板上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に有機半導体及び/又はカーボン材料を含む溶液を塗布し、乾燥して半導体層を形成する工程と、
を含む工程により形成され、
前記第2のフィルム基板を前記長尺方向に間欠搬送し、
前記搬送の停止時に、前記枚葉状の第1のフィルム基板を前記第2のフィルム基板と対向させ、前記回路と前記アンテナとを貼り合わせる
、無線通信装置の製造方法。
【請求項8】
前記貼り合わせが、
第1のフィルム基板と第2のフィルム基板の基板幅方向及び搬送方向の位置ずれ量をアライメントカメラにより検出する工程と、
前記位置ずれ量に応じて第1のフィルム基板の位置を調整する工程と、
を含む、
請求項
3または
7記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1のフィルム基板又は前記第2のフィルム基板上において、前記回路と前記アンテナとの接続部に導電性ペーストを塗布した後、前記貼り合わせを行う、請求項1~
8のいずれかに記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1のフィルム基板又は前記第2のフィルム基板上において、
前記回路と前記アンテナとの間の少なくとも一部に非導電性ペーストを塗布した後、前記貼り合わせを行う、請求項1~
7のいずれかに記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1のフィルム基板の回路側の面と、前記第2のフィルム基板のアンテナ側の面とを貼り合わせる、請求項1~
10のいずれかに記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項12】
前記回路がRFID回路である、請求項1~
11のいずれかに記載の無線通信装置の製造方法。
【請求項13】
少なくとも回路が形成された第1のフィルム基板と、少なくともアンテナが形成された第2のフィルム基板とを、積層してなる無線通信装置であって、
前記回路が、薄膜トランジスタを含み、前記薄膜トランジスタは、
ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極を有し、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極および前記ソース電極の間に絶縁層を有し、
前記ドレイン電極および前記ソース電極の間に半導体層を有し、
前記半導体層が有機半導体及び/又はカーボン材料を含
み、
前記回路の一部と前記アンテナの少なくとも一部が重なって積層されており、
前記回路と前記アンテナの重なり部に平行平板コンデンサが形成された無線通信装置。
【請求項14】
前記第1のフィルム基板の回路側の面と、前記第2のフィルム基板のアンテナ側の面とを接して積層してなる、請求項
13に記載の無線通信装置。
【請求項15】
前記回路と前記アンテナが接着剤を介して固定されていることを特徴とする、
請求項13または14のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項16】
前記回路がRFID回路である、請求項
13~15のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項17】
第1のフィルム基板がシート上に2つ以上の回路を有し、第2のフィルム基板がシート上に2つ以上のアンテナを有し、これらが前記回路とアンテナが重なり合うように配されて積層されてなる請求項
13~16のいずれかに記載の無線通信装置の集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置の製造方法、および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触型のタグとしてRFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線通信装置の開発が進められている。RFIDシステムでは、リーダ/ライタと呼ばれる無線送受信機とRFIDタグとの間で、無線通信が行われる。
【0003】
RFIDタグは、トランジスタやキャパシタ等から構成される駆動回路と、リーダ/ライタとの無線通信するためのアンテナから構成されるRFIDインレイを埋め込み、加工しタグ化したものである。タグ内に設置されたアンテナが、リーダ/ライタから送信される搬送波を受信し、駆動回路が動作する。
【0004】
RFIDタグは、交通カードなどのICカード、商品タグなど一部で導入が始まっており、物流管理、商品管理、万引き防止などの様々な用途での利用も期待されている。
【0005】
そのためには、RFIDインレイがフレキシブルであることや低コストで製造可能であることが求められている。RFIDインレイを製造する一つの方法として、RFIDの駆動回路とアンテナを同一基板上に形成する方法が挙げられる。しかし、この方法では、アンテナのサイズが大きいことや、RFIDの駆動回路をアンテナがない部分に形成しなければならないことから、RFIDの駆動回路を高密度に形成することができない。そのため、生産効率が低くなり、コスト増の要因となる。
【0006】
そこで、RFIDの駆動回路とアンテナを別々の基板上に高密度に形成した後、RFIDの駆動回路が形成された基板を1つ以上のRFIDチップを含む複数セクションに分割し、アンテナ基板上のアンテナに貼り合わせる方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、ICチップを実装する方式のRFIDインレイが用いられている。この場合、ICチップに使用されているウエハが硬く、曲げや圧力がかかるとフィルム等の基材又はICチップが損傷し、RFIDタグの動作不良となってしまう問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、曲げ、圧力、摩擦に強く、RFID回路とアンテナとの接続部を精度良く貼り合わせることが可能な無線通信装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、
少なくとも回路が形成された第1のフィルム基板と、アンテナが形成された第2のフィルム基板とを貼り合わせて無線通信装置を製造する方法であって、
前記回路が、トランジスタを含み、
前記トランジスタが、
前記第1のフィルム基板上に導電性パターンを形成する工程と、
前記導電性パターンが形成されたフィルム基板上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に有機半導体及び/又はカーボン材料を含む溶液を塗布し、乾燥して半導体層を形成する工程と、
を含む工程により形成されるものである、
無線通信装置及びその製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フレキシブルな無線通信装置を得ることが可能となる。また、回路とアンテナの一部が重なる構成とした場合にはインレイの小面積化が可能となる。更に、本発明の製造方法により、少ない工程で位置精度良く、かつ低コストで無線通信装置を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の製造方法の一例を示した模式図
【
図1B】第1のフィルム基板と第2のフィルム基板の貼り合わせ部分の模式断面図
【
図1C】RFID回路とアンテナとの位置ずれを示した模式図
【
図2】RFID回路が形成された第1のフィルム基板を示した模式平面図
【
図3】アンテナ回路が形成された第2のフィルム基板を示した模式平面図
【
図4A】本発明の実施の形態に係る無線通信装置を示した模式平面図
【
図4B】RFID回路とアンテナとの接続部を示した模式断面図
【
図5】RFID回路の製造方法の一例を示した模式断面図
【
図6】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の製造方法の一例を示した模式図
【
図7】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の製造方法の一例を示した模式図
【
図8】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の製造方法の一例を示した模式図
【
図9】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の製造方法の一例を示した模式図
【
図10】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の製造方法の一例を示した模式図
【
図11】本発明の実施の形態に係る無線通信装置の一例を示した模式平面図
【
図12A】回路とアンテナの重なり部の一例を示した模式平面図
【
図12B】回路とアンテナの重なり部の一例を示した模式断面図
【
図12C】回路とアンテナの重なり部の一例を示した模式断面図
【
図12D】回路とアンテナの重なり部の一例を示した模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
本発明において回路とは、トランジスタ、キャパシタ、電極配線等から構成される電子回路と、電子回路とアンテナとを接続パッドやアンテナコイルを用いて電気的に接続する接続部とから構成される回路のことである。具体的には、RFID、トランシーバ、ワイヤレスマイク、IoT向けセンサモジュール、RFリモコン、照明制御システム、キーレスエントリー等に使用されている、整流回路、復調回路、論理回路、変調回路、記憶回路の少なくとも1つ以上を含んでいる回路のことを指す。また、アンテナとは、リーダ/ライタからの電波を受信し、回路を駆動させることで情報をリーダ/ライタへ送信するための物である。トランジスタ、キャパシタ、電極配線等から構成される電子回路と、電子回路とアンテナとを接続パッドやアンテナコイルを用いて電気的に接続する接続部とから構成される回路としてRFID回路があるが、以下、RFID回路を例に本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1Aは、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置の製造方法の概要を示す模式図である。この実施の形態1では、RFID回路110が形成された第1のフィルム基板100と、アンテナ210が形成された第2のフィルム基板200とを貼り合わせる工程を模式的に示している。
図1Bは貼り合わせ部を横からみた模式図である。
【0016】
第1のフィルム基板に用いる材料としては、少なくとも電極系が配置される面が絶縁性であるフィルムであればいかなる材質のものでもよい。ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン、セルロース等の有機材料などが好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0017】
第2のフィルム基板に用いる材料としては、アンテナが配置される面が絶縁性であるフィルムであればいかなる材質のものでもよく、第1のフィルム基板と同様の材料、及び紙などを用いることができる。
【0018】
RFID回路110は、第1のフィルム基板100の長尺方向に2列のアレイ状に形成されている。RFID回路110はトランジスタを含む。トランジスタとしては、有機電界効果トランジスタが好ましい。
【0019】
アンテナ210は、第2のフィルム基板200の長尺方向に2列のアレイ状に形成されている。これらのアレイの列数は特に制限はなく、1列以上であれば好ましい。
【0020】
貼り合わせ用ニップロール404は、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200に圧力をかけて貼り合わせるためのロールである。貼り合わせ用フィードロール403は、両基板を貼り合わせた後に所定速度で搬送するためのロールである。これらによって、貼り合わせと搬送が行われる。
【0021】
図2は、RFID回路が形成された第1のフィルム基板を示した模式平面図である。第1のフィルム基板100上に、RFID回路110とアライメントマーク120、上部電極配線131が形成されている。上部電極配線131は、RFID回路110に含まれており、アンテナとの接続配線である。
図2では、理解を容易にするため、RFID回路110が1個だけ形成された状態を示しているが、もちろんその数に制限はない。アライメントマーク120、上部電極配線131についても同様である。RFID回路の形成方法は後述する。
【0022】
図3は、アンテナが形成された第2のフィルム基板を示した模式平面図である。第2のフィルム基板200上に、アンテナ210とアライメントマーク220、アンテナ配線230が形成されている。アンテナ配線230は、アンテナ210の一部であり、RFID回路110との接続配線である。
図3では、理解を容易にするため、アンテナ210が1個だけ形成された状態を示しているが、もちろんその数に制限はない。アライメントマーク220、アンテナ配線230についても同様である。
【0023】
アンテナ210の形成方法としては、抜き刃を用いて銅箔やアルミニウム箔などの金属箔をアンテナに加工して基材に転写する方法(以降、抜き刃法と記す)、プラスチックフィルムなどの基材に貼り付けた金属箔を、金属箔上に形成したレジスト層をマスクとしてエッチングする方法、プラスチックフィルムなどの基材に導電性ペーストをアンテナに対応するパターンに印刷して熱や光によって硬化させる方法(以降、印刷法と記す)、蒸着により形成した金属膜を、金属膜上に形成したレジスト層をマスクとしてエッチングする方法などの公知の方法が挙げられる。
【0024】
アンテナに用いられる材料としては特に制限はなく、Ag、Au、Cu、Pt、Pb、Sn、Ni、Al、W、Mo、Cr、Ti、カーボン若しくはインジウムなどを用いることができる。前記、抜き刃法で用いる金属箔材料としては、コストやアンテナ性能の観点からCuやAlが好ましく、上記印刷方で用いる導電ペーストに含まれる金属材料としては、コストやアンテナ性能の観点からAgが好ましい。
【0025】
第2のフィルム基板200上に、感光性ペーストを用いて塗布膜を形成し、その後フォトリソグラフィを用いて電極や配線に対応するパターンを形成することで、配線と電極付きアンテナ基板を形成することができる。
【0026】
図4Aは、
図2に示す第1のフィルム基板と
図3に示す第2のフィルム基板とが貼り合わされて製造される無線通信装置を示した模式平面図である。第1のフィルム基板100に形成されたRFID回路110側の面と、第2のフィルム基板200に形成されたアンテナ210側の面とが貼り合わされている。貼り合わせはアライメントマーク120および220の位置を合わせることで行われる。また、
図4A中に示したRFID回路110の内部の部分拡大図に表されるように、第2のフィルム基板上のアンテナ配線230と第1のフィルム基板上の上部電極配線131が接続される。
【0027】
図4Bは、
図4Aの破線X-Y部における概略断面図である。
図4Bにおいて、第1のフィルム基板上には、回路の動作部の1つであるTFT部140と、アンテナとの接続部となる電極部とが形成されている。電極部では、下部電極配線130から導通を取るために、絶縁層112に開口部となるパターン(コンタクトホール)が形成されている。そして、上部電極配線131とアンテナ配線230とが接続されている。上部電極配線131とアンテナ配線230とを直接接続しても良いし、接続部に導電性ペーストを塗布した後に接続しても良いし、上部電極配線131とアンテナ配線230との間の少なくとも一部に非導電性ペーストを塗布した後に接続しても良い。このように第1のフィルム基板100上のRFID回路110と第2のフィルム基板200上のアンテナ210とを対向させて直接貼り合わせることにより、ワイヤーや導電テープ等を使用する必要がなくなるため、凹凸が少ない貼り合わせが可能となる。
【0028】
図1Aに戻り説明する。なお第1のフィルム基板100の下側に形成された回路110は本来破線で描かれるが、わかりやすく説明するために実線で図示している。第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200を貼り合わせて作製された無線通信装置についても同様に実線で図示している。このように貼り合わせた2つのフィルム基板に複数の無線通信装置(無線通信装置の集合体)が製造される。
第1のフィルム基板と第2のフィルム基板を貼り合わせる工程に設けられたアライメントカメラ405は、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200との搬送方向の位置ずれ量を測定し検出する。第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200にはそれぞれアライメントマーク(
図1Aでは図示せず)が形成されており、それらの相対的なずれから、上記位置ずれ量が検出される。
【0029】
アライメントマークについては、カメラ視野内で検出可能であればサイズや形状について規定はない。また、RFID回路110とアンテナ210の重なり方から位置ずれ量が検出可能であれば、アライメントマークは設けなくても良い。
【0030】
アライメントカメラは、アライメントマークが検出可能であれば、いずれの種類や方式でも良く、例えばエリアカメラ、ラインスキャンカメラなどが挙げられる。また、ストロボを用いて周期的に撮像しても良い。
【0031】
図1Aでは、貼り合わせた後に第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200との位置ずれを検出しているが、貼り合わせる前に検出しても良い。例えば、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200とが貼り合わせ箇所を通過する前に各基板のアライメントマークを検出するよう、貼り合わせ箇所の上流側にアライメントカメラを2台設ける。そして、各カメラで貼り合わせ前の各基板の位置を検出し、それぞれの検出位置から貼り合わせ位置までの距離を算出することで、位置ずれ量を算出しても良い。
【0032】
位置ずれの補正は、オンタイムで行われてもよいが、位置ずれ量の許容範囲を設定し、超過した場合に実施することが通常である。位置ずれの許容範囲はRFID回路の接続部とアンテナの接続部のサイズに応じて設定する。
【0033】
位置ずれの補正は、位置ずれ量に応じて第1のフィルム基板又は第2のフィルム基板の搬送張力を変化させることにより行うことが好ましい。搬送張力の変化は、例えば
図1Aに示す張力調整用ニップロール402と張力調整用フィードロール401を用いることで可能であるが、張力変化が可能な機構であればこれに限定されない。
【0034】
図1Aの構成で、
図1Cに示すように、第1のフィルム基板のアライメントマーク120に対して、第2のフィルム基板のアライメントマーク220が搬送方向500にずれて貼り合わされた場合、貼り合わせ用フィードロール403の回転速度に対して張力調整用フィードロール401の回転速度を遅くすることにより、第2のフィルム基板200のみを延伸させ、延伸した後も元に戻らない程度の張力を生じさせるようにする。こうすることで第2のフィルム基板200を塑性変形させ、位置ずれを調整することが可能となる。
【0035】
位置ずれ量に応じてどの程度張力調整用フィードロール401の回転速度を遅くするかは第2のフィルム基板のガラス転移温度や厚み等の物性と、温度によってどの程度塑性変形するかによって決定される。
【0036】
延伸し難いフィルムの場合、延伸をしやすくするためフィルム基板を
図1Aに示すようにヒータ406で加熱しても良い。特に、第2のフィルム基板の軟化点以上の温度にすることで顕著に延伸効果が得られる。ただし、温度ばらつきが大きいと局所的に延伸されてしまったり、しわが発生したりするため、温度分布や温度精度を確認した上で設置すると良い。加熱方式としては、熱風、赤外線、ヒートロールなどの公知の方法が挙げられる。
【0037】
位置ずれ量を補正する制御方法としては、例えば100μm以上の位置ずれを検知した場合、設定張力から更に10N高張力で搬送し、100μm以下の位置ずれに戻った場合は張力を設定張力に戻す制御を行う。位置ずれ量がある閾値を超えた場合に張力を上げていく制御であり、張力を変更するための位置ずれ量の閾値は何段階か設けておいても良い。制御に用いる位置ずれ量は、位置ずれ量の検知に測定誤差が含まれることを考慮し、数回検知した平均値を用いることが好ましい。また、張力の変更に関しては、前述のように位置ずれ量に閾値を設けず、位置ずれ量に応じた張力変更を小刻みに行っても良い。
【0038】
また、貼り合わせ用フィードロール403通過後の第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200の搬送速度は同速とすることで、貼り合わせた後に剪断によって位置がずれたり剥がれたりする懸念をなくすことができる。
【0039】
図1Aの例では、第2のフィルム基板200の張力を調整しているが、第1のフィルム基板100の張力を調整しても良い。
【0040】
図1Aおよび
図1Bの例では、第1のフィルム基板のRFID回路側の面と、前記第2のフィルム基板のアンテナ側の面とを貼り合わせている。すなわち、両基板の表面同士を貼り合わせている。こうすることで、RFID回路とアンテナとが直接接続され、給電することが可能となる。また、第1のフィルム基板100又は第2のフィルム基板200が加工途中で摩擦により傷付いた場合でも、内面まで傷が到達していなければ、無線通信が可能である。
【0041】
なお、第1のフィルム基板と第2のフィルム基板との貼り合わせ方は上記態様には限られない。具体的には、いずれかの基板の裏面の側と他方の基板の表面とを貼り合わせてもよいし、両基板の裏面同士を貼り合わせてもよい。これらの態様の場合、静電容量を用いた結合方式、電磁誘導を用いた結合方式等、公知の非接触結合方式により給電することで、無線通信が可能である。
【0042】
しかしながら、無線通信の安定性や、製造工程における耐擦性等の観点から、第1のフィルム基板のRFID回路側の面と、前記第2のフィルム基板のアンテナ側の面とを貼り合わせる方がより好ましい。
【0043】
図5は、RFID回路110を構成する要素の1つであるトランジスタの製造方法の例を示す模式断面図である。
【0044】
まず、
図5(a)第1のフィルム基板100上に、下部導電膜150を形成する。下部導電膜150の形成方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、メッキ法、CVD法等の方法が挙げられる。また、インクジェット法、印刷法、イオンプレーティング法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の塗布方法により、導電体と感光性有機成分を含有するペーストを基板上に塗布した後、塗布膜を乾燥させて溶剤を除去する方法が挙げられる。
【0045】
下部導電膜150の材料としては、導電性の観点から銀、銅及び金が好ましく、コスト、安定性の観点から銀であることがより好ましい。
【0046】
次に、
図5(b)下部導電膜150をパターン加工して、ゲート電極111と、アンテナとの接続部を含む下部電極配線130とを形成する。公知のフォトリソグラフィによるパターン加工が好ましい。下部導電膜150が感光性を有しない場合は、フォトレジストを用いた公知のパターン加工が利用できる。導電体と感光性有機成分を含有するペーストを基板上に塗布して下部導電膜150を形成した場合は、その感光性導電膜をフォトリソ加工することができる。こうして、第1のフィルム基板100上に、導電性パターンであるゲート電極111および下部電極配線130が形成される。
【0047】
次に、
図5(c)ゲート電極111及びアンテナとの接続部を含む下部電極配線130の上にゲート絶縁層112を形成する。ゲート絶縁層に用いられる材料は、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料;ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)等の有機材料;あるいは無機材料粉末と有機材料の混合物を挙げることができる。
【0048】
ゲート絶縁層の作製方法は、特に制限はないが、例えば、原料組成物をゲート電極が形成された基板上に塗布し、乾燥することで得られたコーティング膜を必要に応じ熱処理する方法が挙げられる。塗布方法としては、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。
【0049】
次に、
図5(d)下部電極配線130上のゲート絶縁層112を除去してコンタクトホールを形成する。これは、下部電極配線と上部電極配線とを接続する部分を対象に行う。
図5(c)の工程において感光性有機成分を有するペーストを用いてゲート絶縁層112を得た場合は、フォトリソグラフィによるパタ-ニングでコンタクトホールを形成することができる。
【0050】
次に、
図5(e)ゲート絶縁層112上に導電体と感光性有機成分を含有する上部導電膜160を形成する。有機バインダーが感光性有機成分を含むことで、レジストを用いずフォトリソグラフィによる電極のパターン加工ができ、より生産性を向上させることが可能になる。この上部導電膜160の形成方法としては、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法により塗布した後、塗布膜を乾燥させて溶剤を除去する方法が挙げられる。
【0051】
次に、
図5(f)上部導電膜160をパターン加工して、ソース電極114と、ドレイン電極115と、アンテナとの接続部を含む上部電極配線131とを形成する。これらは、ゲート電極111をマスクとして第1のフィルム基板100を介して裏面から露光することで、ソース電極114、ドレイン電極115が、アライメントすることなく、高精度に位置合わせすることができる。ただし、
図5(b)におけるゲート電極111および下部電極配線130の場合と同様にして形成してもよい。
【0052】
最後に、
図5(g)ソース電極114とドレイン電極115の間に有機半導体層113を形成する。有機半導体層に用いられる材料は、有機半導体及び/又はカーボン材料である。カーボン材料としては、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、フラーレンなどが挙げられるが、塗布プロセスへの適性や高移動度の点でCNTが好ましい。さらに、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT(以下、CNT複合体という)は、溶液中での分散安定性に優れ、高移動度が得られるため、特に好ましい。
【0053】
有機半導体層113の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法としては、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。なお、工程(e)および(f)の前に工程(g)を実施しても良い。こうして、ゲート絶縁層112上に有機半導体層113が形成される。
【0054】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る無線通信装置の製造方法の概要を示す模式図である。この実施の形態2では、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200の搬送方向は同一方向であり、互いに対向させて長尺方向に間欠搬送する。すなわち、両者を一定量搬送させたら、一旦停止する。停止時には、第1のフィルム基板100をフィルム搬送グリップ409で固定する。張力調整用フィードロール401aと張力調整用ニップロール402aにより、搬送張力をカットし、第1のフィルム基板100を弛ませた状態で、張力調整用フィードロール401b、張力調整用ニップロール402b、搬送グリップを下降させる。
【0055】
下降後、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200が接近している状態でアライメントカメラ405により双方の位置ずれを検出する。位置ずれは第1のフィルム基板100、第2のフィルム基板200それぞれのアライメントマークの少なくとも2点以上で確認し、長尺方向及び短尺方向の位置を合わせる。位置合わせは、例えば第2のフィルム基板200をステージ407に吸着した状態で、ステージ407を動かすことで行う。
【0056】
更に第1のフィルム基板100を下降させ、第2のフィルム基板200に第1のフィルム基板100を載せた後、フィルム切断刃408を用いて第1のフィルム基板100のみ(ハーフ)カットする。これにより、第1のフィルム基板100はRFID回路を複数個含む枚葉シート状に分割される。その後、フィルム搬送グリップ409のグリップを解除し、張力調整用フィードロール401b、張力調整用ニップロール402b、搬送グリップ409を上昇させる。第2のフィルム基板200を搬送し、貼り合わせ用フィードロール403及び貼り合わせ用ニップロール404を通過させることで、第1のフィルム基板100及び第2のフィルム基板200をニップし、貼り合わせる。
【0057】
図6の構成は一例であり、搬送停止時にいずれかのフィルム基板をカットする工程、第1のフィルム基板及び第2のフィルム基板の位置ずれの検出工程、位置合わせ工程、貼り合わせ工程が含まれていれば他の構成でも良い。
【0058】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3に係る無線通信装置の製造方法の概要を示す模式図である。この実施の形態3では、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200が直交するように配置される以外は実施の形態2と同様の工程を経て製造する。
【0059】
フィルムの製造工程中の縦横延伸の影響により、例えばPETフィルム長尺方向の熱収縮は、短尺方向よりも大きい場合が多い。したがって、第1のフィルム基板と第2のフィルム基板を直交させることで、それぞれの長尺方向と短尺方向を貼り合わせることとなるため、長尺方向同士を貼り合わせるより位置ずれ量が少なくなることが多い。
【0060】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4に係る無線通信装置の製造方法の概要を示す模式図である。この実施の形態4では、実施の形態1に、第1のフィルム基板100を2つ以上に分割する工程と、当該分割された第1のフィルム基板の、搬送と垂直方向の間隔を第2のフィルム基板の基板幅方向のアンテナ列の間隔に調整する工程とが加わっており、分割された第1のフィルム基板100それぞれに対応する張力調整用フィードロール401及び張力調整用ニップロール402が設けられている。
【0061】
分割された第1のフィルム基板は、例えば“EPC”(登録商標、Edge Position Control)等で短尺方向の位置を制御することにより、長尺方向の位置ずれに加え、短尺方向の位置合わせも可能となる。
【0062】
上記製造方法により、第1のフィルム基板にアレイ状に形成された回路110と第2のフィルム基板にアレイ状に形成されたアンテナ210において、それぞれのフィルム幅方向のアレイピッチが異なる場合でも位置合わせすることが可能となる。
【0063】
(実施の形態5)
図9は、本発明の実施の形態5に係る無線通信装置の製造方法の概要を示す模式図である。この実施の形態5では、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200が直交するように配置される以外は実施の形態4と同様の工程を経て製造する。
【0064】
(実施の形態6)
図10は、本発明の実施の形態6に係る無線通信装置の製造方法の概要を示す模式図である。実施の形態6では、第2のフィルム基板200は実施の形態2と同様の形状であるが、第1のフィルム基板100は枚葉状である点が異なる。RFID回路は、枚葉状の第1のフィルム基板の長尺方向に1列以上のアレイ状に形成されている。
【0065】
第2のフィルム基板200は長尺方向に間欠搬送する。停止時には、第1のフィルム基板100を第2のフィルム基板上に搬送し、フィルム搬送グリップ409で固定する。第1のフィルム基板100を第2のフィルム基板上に搬送後に停止できる機構であれば、他の構成でも良い。例えば、第1のフィルム基板の一部又は全面を吸着可能な機構を設け、第1のフィルムをピックアップした後に第2の基板上に搬送しても良い。
【0066】
第1のフィルム基板及び第2のフィルム基板の停止後、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200が接近している状態でアライメントカメラ405により双方の位置ずれを検出する。位置ずれは第1のフィルム基板100、第2のフィルム基板200それぞれのアライメントマークの少なくとも2点以上で確認し、長尺方向及び短尺方向の位置を合わせる。位置合わせは、フィルム搬送グリップ409を動かすことで行う。
【0067】
更に第1のフィルム基板100を下降させ、第2のフィルム基板200に第1のフィルム基板100を載せる。その後、フィルム搬送グリップ409のグリップを解除し、フィルム搬送グリップ409を上昇させる。第2のフィルム基板200を搬送し、貼り合わせ用フィードロール403及び貼り合わせ用ニップロール404を通過させることで、第1のフィルム基板100及び第2のフィルム基板200をニップし、貼り合わせる。
【0068】
また、全ての実施の形態において、貼り合わせ前に、第1のフィルム基板100に形成されたRFID回路110と第2のフィルム基板200に形成されたアンテナ210との接続部に導電性ペーストを塗布する工程を設けても良い。また、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200との間の少なくとも一部に非導電性ペーストを塗布する工程を設けても良い。
【0069】
導電性ペーストとしては、銀ペーストやカーボンペースト、インジウムペーストなど、非導電性ペーストとしてはウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂を含む、公知のペーストを用いることができる。
【0070】
導電性ペースト及び非導電性ペーストの塗布方法は、スクリーン印刷法、バーコート法、印刷転写法、インクジェット法、ディスペンサー法などの公知の方法が挙げられる。
【0071】
(実施の形態7)
図11は、本発明の実施の形態7に係る無線通信装置の概要を示す模式平面図である。実施の形態7では、回路110とアンテナ210の一部が意図的に重なるように設計していることを特徴としている。
図12Aは、
図11に示されている、回路とアンテナの重なり部300の模式断面図である。
図12Aに示されるように、回路の一部である下部電極配線130がアンテナ210に重なるように配置することにより、重なった部分の面積を低減することができる。また、重ねる部分は回路とアンテナを接続する配線として利用しても良いが、平行平板コンデンサとして用いることもできる。この場合、下部電極配線130と絶縁層112およびアンテナ210を用いて平行平板コンデンサとすることが可能である。静電容量は下部電極配線130とアンテナ210の重なる面積、絶縁層の誘電率により決定される。下部電極配線130とアンテナ210が重なりの形状は一例として長方形で説明したが、いずれの形状でも良い。また、各層の材料や形成方法については実施の形態1に示した通りである。
【0072】
本発明は、有機半導体及び/又はカーボン材料を用いた有機半導体層を含む回路をフィルム基板上に形成する工程を含むことが重要である。無機半導体ではウエハ上に回路を形成した後、数mm角にチップ化し実装するため、構成面、サイズ面で本発明の効果を得ることが困難である。
【0073】
(実施の形態8)
図12B、
図12C、および
図12Dは、本発明の実施の形態8に係る無線通信装置の概要を示す模式断面図である。実施の形態8では、接着剤として絶縁性の接着層170がアンテナ210に接するように形成されている。したがって、下部電極配線130と絶縁層112、上部電極配線131、接着層170、アンテナ210のいずれかを用いた平行平板コンデンサの形成や、配線の接続をすることができる。接着層170は単層で説明しているが、誘電率が異なる複数の接着層170を用いても同様の効果を得ることができる。
図12Bはアンテナ210と上部電極配線131の間に接着層170が形成された平行平板コンデンサ、上部電極配線131と下部電極配線130との間に絶縁層112を形成された平行平板コンデンサとみなすことができる。また、
図12Cのように、アンテナ210と下部電極配線130の間に絶縁層112と接着層170を形成されている平行平板コンデンサとすることができる。
図12Dのように、
図12Bと構成は同一であるが下部電極配線130の形状を小さくし平行平板の面積が異なる平行平板コンデンサとしても良い。
【0074】
更に、第1のフィルム基板100と第2のフィルム基板200のいずれかに接着層170を一部又は全面を形成し、実施の形態1~6のいずれかの製造方法により貼り合わせることで、フレキシブルかつ凹凸の少ない基板を得ることができるため、曲げや圧力に強い無線通信回路を得ることができる。更に位置ずれを検出し、高精度で貼り合わせるため、回路とアンテナの重なり部300に形成された平行平板コンデンサの静電容量のばらつきも低減できる。
【0075】
接着層はウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等、公知の樹脂により形成されており、シリカや酸化チタン、粒状ガラス等、公知の絶縁材料を含んでいても良い。
【0076】
また、実施の形態7及び実施の形態8では平行平板コンデンサを例に説明したが、インレイの小面積化という観点では回路の一部がアンテナと重なっていれば良く、回路の静電容量や抵抗についてアンテナ以外の部材を用いても構わない。
【0077】
また、変形例として、第2のフィルム基板とアンテナとの間に剥離層を形成しておき、実施の形態1~6のいずれかの方法で貼り合わせた後、第2のフィルム基板を剥がしてアンテナを回路側に転写することも可能である。
【0078】
本発明に係るRFID無線通信装置の製造方法は、インレイとしてのRFIDタグの製造に用いることができる。RFIDタグの形態としては特に制限はなく、シールタグ、値札タグ、RFIDタグ付きパッケージ包装などが挙げられる。
【0079】
シールタグの製造方法としては、例えば、少なくとも下記2つの工程を含む方法が挙げられる。
(1)本発明に記載の方法で、RFID回路を形成したPETフィルム(第1のフィルム基板)と、PETフィルムを用いて形成したアンテナフィルム(第2のフィルム基板)とを貼り合わせ、RFIDインレイを製造する工程。
(2)前記RFIDインレイの表裏両面うち、第1のフィルム基板が貼り合わせられていない側の面(すなわち裏面)に粘着剤を塗布し、この裏面に離型紙をラミネートし、且つ、第1のフィルム基板が形成された側の面(すなわち表面)に印字等の印刷が可能な表面シートを接着材でラミネートし、その後、かす上げを行う工程。
【0080】
値札タグの製造方法としては、例えば、少なくとも下記2つの工程を含む方法が挙げられる。
(1)本発明に記載の方法で、RFID回路を形成したPETフィルム(第1のフィルム基板)と、紙を用いて形成したアンテナフィルム(第2のフィルム基板)とを貼り合わせ、RFIDインレイを製造する工程。
(2)第1のフィルム基板が形成された側の面(すなわち表面)に値段や商品名などが印字された表面紙を接着材でラミネートする工程。
【0081】
RFIDタグ付き包装パッケージの製造方法としては、例えば、少なくとも下記2つの工程を含む方法が挙げられる。
(1)本発明に記載の方法で、RFID回路を形成した包装パッケージフィルム(第1のフィルム基板)と、PETフィルムを用いて形成したアンテナフィルム(第2のフィルム基板)とを貼り合わせ、RFIDインレイを製造する工程。なお、包装パッケージフィルムとしては、例えば、ペットボトルのラベルフィルムが挙げられ、そこには商品名や商品イメージなどが印字されている。この場合、アンテナパターンは、商品名や商品イメージの印刷時に、導電ペーストを用いた印刷法で形成することができる。
(2)第1のフィルム基板が形成された側の面(すなわち表面)に値段や商品名などが印字された表面紙を接着材でラミネートする工程。
【符号の説明】
【0082】
100:第1のフィルム基板
110:RFID回路
111:ゲート電極
112:絶縁層
113:有機半導体層
114:ソース電極
115:ドレイン電極
120:アライメントマーク
130:下部電極配線
131:上部電極配線(接続部)
140:TFT部
150:下部導電膜
160:上部導電膜
170:接着層
200:第2のフィルム基板
210:アンテナ
220:アライメントマーク
230:アンテナ配線(接続部)
300:回路とアンテナの重なり部
401,401a,401b:張力調整用フィードロール
402,402a,402b:張力調整用ニップロール
403:貼り合わせ用フィードロール
404:貼り合わせ用ニップロール
405:アライメント用カメラ
406:ヒータ
407:ステージ
408:フィルム切断刃
409:フィルム搬送グリップ
500:第1のフィルム基板と第2のフィルム基板の搬送方向を示す矢印