(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】生タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/20 20060101AFI20240214BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B29D30/20
B29D30/30
(21)【出願番号】P 2020001613
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 琢馬
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-297795(JP,A)
【文献】特開2017-001294(JP,A)
【文献】特開2011-025419(JP,A)
【文献】特開2008-155418(JP,A)
【文献】特開2010-089262(JP,A)
【文献】特開2011-037113(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02286986(EP,A1)
【文献】特開平6-315776(JP,A)
【文献】特開2008-37002(JP,A)
【文献】国際公開第2022/186688(WO,A1)
【文献】特開2011-218739(JP,A)
【文献】特開2019-93574(JP,A)
【文献】特開2003-251710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤの製造方法であって、
ドラム上に形成された第1ゴムシートの第1円筒体の外側に、前記第1ゴムシートよりも幅広の第2ゴムシートを巻き付け、巻き付けの始端部と終端部とが重なる重なり部を有する第2円筒体を形成する工程と、
前記終端部を前記始端部に押圧して前記重なり部を接合する接合工程とを含み、
前記第2円筒体は、前記第1円筒体に接触する接触領域と、前記第1円筒体からドラム軸方向の両外側にはみ出す一対の非接触領域とを含み、
前記接合工程は、
前記重なり部上を、一方の前記非接触領域のドラム軸方向の内端側から外端側まで第1ローラを転動させて押圧する第1非接触領域接合ステップと、
前記重なり部上を、他方の前記非接触領域のドラム軸方向の内端側から外端側まで第2ローラを転動させて押圧する第2非接触領域接合ステップとを含み、
前記第1非接触領域接合ステップと前記第2非接触領域接合ステップとは、同じタイミングで行わ
れ、
前記接合工程は、
前記重なり部上を、前記接触領域のドラム軸方向の中央側から前記一方の前記非接触領域の前記内端まで前記第1ローラを転動させて押圧する第1接触領域接合ステップと、
前記重なり部上を、前記接触領域のドラム軸方向の中央側から前記他方の前記非接触領域の前記内端まで前記第2ローラを転動させて押圧する第2接触領域接合ステップとを含み、
前記第2接触領域接合ステップは、前記第1接触領域接合ステップに遅れて開始される、
生タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記第1非接触領域接合ステップは、前記第1接触領域接合ステップに引き続いて行われ、
前記第2非接触領域接合ステップは、前記第2接触領域接合ステップに引き続いて行われる、請求項1に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項3】
前記第1非接触領域接合ステップでの前記第1ローラの押圧力は、前記第1接触領域接合ステップでの前記第1ローラの押圧力よりも大きい、請求項
1又は2に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項4】
前記第2非接触領域接合ステップでの前記第2ローラの押圧力は、前記第2接触領域接合ステップでの前記第2ローラの押圧力よりも大きい、請求項
1ないし3のいずれか1項に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項5】
前記第2接触領域接合ステップでの前記第2ローラの移動速度は、前記第1接触領域接合ステップでの前記第1ローラの移動速度よりも速い、請求項
1ないし4のいずれか1項に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項6】
前記第1接触領域接合ステップでの前記第1ローラの押圧力、及び、前記第2接触領域接合ステップでの前記第2ローラの押圧力は、0.10~0.15MPaである、請求項
1ないし5のいずれか1項に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項7】
前記第1非接触領域接合ステップでの前記第1ローラの移動速度は、前記第2非接触領域接合ステップでの前記第2ローラの移動速度と同じである、請求項
1ないし6のいずれか1項に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項8】
前記第1非接触領域接合ステップでの前記第1ローラの押圧力、及び、前記第2非接触領域接合ステップでの前記第2ローラの押圧力は、0.20~0.25MPaである、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項9】
前記第1ゴムシートは、未加硫ゴムのゴム材料であり、
前記第2ゴムシートは、平行に配列されたコードが未加硫ゴムで被覆されたプライ材料である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の生タイヤの製造方法。
【請求項10】
前記第1ゴムシートは、インナーライナーであり、
前記第2ゴムシートは、カーカスプライである、請求
項9に記載の生タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤの製造方法として、成形ドラムに、シート状のインナーライナーゴム、及び、前記インナーライナーゴムよりも幅広、かつ、シート状のカーカスプライを順次巻き付けることが記載されている。このカーカスプライは、その幅方向の両側が、インナーライナーゴムからはみ出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5281671号公報
【文献】国際公開第2007/007405号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方、上記カーカスプライは、巻付けの始端部と終端部とが重なる重なり部を有しており、前記重なり部の前記始端部と前記終端部とは、押圧により確実に接合されることが望まれる。
【0005】
上述の重なり部の接合方法として、上記特許文献2に記載されたようなカーカスプライ材の作製方法を適用することが考えられる。上記特許文献2の作製方法では、二組のローラユニットを用い、一方のローラユニットを前記カーカスプライの接合部の中央側から一方側に移動させ、かつ、他方のローラユニットを前記カーカスプライの接合部の中央側から他方側に移動させる。このとき、前記他方のローラユニットは、前記一方のローラユニットに遅れて移動が開始される。
【0006】
ここで、前記カーカスプライの前記インナーライナーゴムからはみ出した部分は、前記成形ドラムと直接接触しているため、前記成形ドラムとの接着力が小さい。このため、前記カーカスプライの接合に上記特許文献2の作製方法を適用すると、前記両側のはみ出した部分に、前記各ローラユニットによる幅方向外側への力が時間差で作用し、前記カーカスプライがその幅方向に位置ずれするという問題が生じる。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、生タイヤを精度良く製造し得る生タイヤの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生タイヤの製造方法であって、ドラム上に形成された第1ゴムシートの第1円筒体の外側に、前記第1ゴムシートよりも幅広の第2ゴムシートを巻き付け、巻き付けの始端部と終端部とが重なる重なり部を有する第2円筒体を形成する工程と、前記終端部を前記始端部に押圧して前記重なり部を接合する接合工程とを含み、前記第2円筒体は、前記第1円筒体に接触する接触領域と、前記第1円筒体からドラム軸方向の両外側にはみ出す一対の非接触領域とを含み、前記接合工程は、前記重なり部上を、一方の前記非接触領域のドラム軸方向の内端側から外端側まで第1ローラを転動させて押圧する第1非接触領域接合ステップと、前記重なり部上を、他方の前記非接触領域のドラム軸方向の内端側から外端側まで第2ローラを転動させて押圧する第2非接触領域接合ステップとを含み、前記第1非接触領域接合ステップと前記第2非接触領域接合ステップとは、同じタイミングで行われる。
【0009】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記接合工程が、前記重なり部上を、前記接触領域のドラム軸方向の中央側から前記一方の前記非接触領域の前記内端まで前記第1ローラを転動させて押圧する第1接触領域接合ステップと、前記重なり部上を、前記接触領域のドラム軸方向の中央側から前記他方の前記非接触領域の前記内端まで前記第2ローラを転動させて押圧する第2接触領域接合ステップとを含み、前記第2接触領域接合ステップは、前記第1接触領域接合ステップに遅れて開始される、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第1非接触領域接合ステップが、前記第1接触領域接合ステップに引き続いて行われ、前記第2非接触領域接合ステップは、前記第2接触領域接合ステップに引き続いて行われる、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第1非接触領域接合ステップでの前記第1ローラの押圧力が、前記第1接触領域接合ステップでの前記第1ローラの押圧力よりも大きい、のが望ましい。
【0012】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第2非接触領域接合ステップでの前記第2ローラの押圧力が、前記第2接触領域接合ステップでの前記第2ローラの押圧力よりも大きい、のが望ましい。
【0013】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第2接触領域接合ステップでの前記第2ローラの移動速度が、前記第1接触領域接合ステップでの前記第1ローラの移動速度よりも速い、のが望ましい。
【0014】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第1接触領域接合ステップでの前記第1ローラの押圧力、及び、前記第2接触領域接合ステップでの前記第2ローラの押圧力が、0.10~0.15MPaである、のが望ましい。
【0015】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第1非接触領域接合ステップでの前記第1ローラの移動速度が、前記第2非接触領域接合ステップでの前記第2ローラの移動速度と同じである、のが望ましい。
【0016】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第1非接触領域接合ステップでの前記第1ローラの押圧力、及び、前記第2非接触領域接合ステップでの前記第2ローラの押圧力が、0.20~0.25MPaである、のが望ましい。
【0017】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第1ゴムシートが、未加硫ゴムのゴム材料であり、前記第2ゴムシートは、平行に配列されたコードが未加硫ゴムで被覆されたプライ材料である、のが望ましい。
【0018】
本発明に係る生タイヤの製造方法は、前記第1ゴムシートが、インナーライナーであり、前記第2ゴムシートは、カーカスプライである、のが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の生タイヤの製造方法では、前記第1非接触領域接合ステップと前記第2非接触領域接合ステップとが、同じタイミングで行われる。これにより、前記一方の非接触領域と前記他方の非接触領域とは、同じタイミングでドラム軸方向に逆向きの力が作用されるので、前記第2ゴムシートのドラム軸方向への位置ずれが抑制される。したがって本発明の生タイヤの製造方法は、生タイヤを精度良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の生タイヤの製造方法で製造されるタイヤの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の生タイヤの製造方法で使用される装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】ゴムシートを巻き付けたドラムの平面図である。
【
図4】(a)、(b)は、本発明の生タイヤの製造方法を説明するための断面図である。
【
図5】(a)、(b)は、本発明の生タイヤの製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の生タイヤの製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある。)によって製造されるタイヤ1のタイヤ子午線断面図である。
図1には、乗用車用の空気入りタイヤが示される。なお、本発明は、乗用車用の他、自動二輪車用や重荷重用などの空気入りタイヤの生タイヤの製造方法に採用することができる。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、両側のビード部4、4間を延びるカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2に配されるベルト層7と、カーカス6の内側に配されるインナーライナー8とを含んでいる。
【0023】
本実施形態のカーカス6は、カーカスコード(図示省略)をタイヤ周方向に対して70~90°の角度で配列した1枚のカーカスプライ6Aで形成されている。カーカスプライ6Aは、本実施形態では、本体部6aと一対の折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、両側のビード部4に埋設されたビードコア5、5間を跨って延びている。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なってビードコア5の周りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。本実施形態の折返し部6bは、ベルト層7と本体部6aとの間に挟まれた外端6eを有している。このように、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ半径方向の長さが大きい折返し部6bを有する、所謂、ハイターンナップ構造で形成されている。
【0024】
本実施形態のベルト層7は、タイヤ半径方向の内外に配された2枚のベルトプライ7A、7Bで形成されている。各ベルトプライ7A、7Bは、例えば、タイヤ周方向に対して45~75°の角度で配列されたスチールコードを有している。内のベルトプライ7Aのタイヤ軸方向の外端7eは、トレッド端Teや折返し部6bの外端6eよりもタイヤ軸方向の外側に位置している。
【0025】
前記「トレッド端Te」は、正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。
【0026】
前記「正規状態」とは、タイヤ1が、正規リム(図示省略)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。
【0027】
前記「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
【0028】
前記「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【0029】
前記「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0030】
本実施形態のインナーライナー8は、空気非透過性に優れたブチル系のゴムで形成されている。インナーライナー8は、例えば、カーカスプライ6Aの本体部6aに接して、両側のビードコア5、5間を延びている。
【0031】
図2は、本実施形態の製造方法で使用される装置Tの一実施形態の斜視図である。
図2に示されるように、本実施形態の装置Tは、周知のものが採用されている。装置Tは、例えば、ドラム10と第1ローラ11と第2ローラ12とを含んでいる。また、装置Tは、本実施形態では、サービサー13及び搬送手段14を、さらに含んでいる。
【0032】
本実施形態のドラム10は、円筒状の巻付面10sを有している。ドラム10の巻付面10sは、例えば、ドラム10の回転軸10rに支持された複数のセグメント16で形成されている。各セグメント16は、例えば、ドラム10の半径方向(ドラム半径方向)に移動可能となるように回転軸10rに支持されている。これにより、本実施形態の巻付面10sは、ドラム半径方向に拡縮径可能とされている。
【0033】
ドラム10の回転軸10rは、搬送手段14に設けられるモータなどの駆動部(図示省略)に連結されている。これにより、ドラム10の巻付面10sは、回転軸10rを介して、回転可能とされている。回転軸10rの長手方向がドラム10の軸方向(ドラム軸方向)Xである。本実施形態のドラム10の回転軸10rは、水平に配置されている。
【0034】
本実施形態の第1ローラ11及び第2ローラ12は、ゴムシート30を、巻付面10s側に押し付けるためのものである。第1ローラ11及び第2ローラ12は、それぞれ、支持軸17と、ローラ片18とを含んでいる。ローラ片18は、例えば、柔軟性を有する樹脂材料によって形成されており、支持軸17に回転可能に支持されている。ローラ片18の幅w(
図3に示す)は、例えば、5~10mmが望ましい。
【0035】
本実施形態の支持軸17は、例えば、図示しない周知のロッドシリンダ機構やラックピニオン機構等を含む周知の移動具(図示省略)に支持されている。これにより、本実施形態の第1ローラ11及び第2ローラ12は、例えば、ドラム軸方向Xや鉛直方向(上下方向)Yに移動可能とされる。
【0036】
本実施形態のサービサー13は、回転するドラム10の巻付面10sに、ゴムシート30を供給するためのものである。ゴムシート30がドラム10の巻付面10sに巻き付けられることにより、タイヤ部材としての生タイヤ1aが形成される。
【0037】
図3は、ドラム10と、ドラム10に巻き付けられたゴムシート30の平面図である。
図3に示されるように、本実施形態のゴムシート30は、第1ゴムシート31と、第1ゴムシート31よりも幅広の第2ゴムシート32とを含んでいる。第2ゴムシート32は、第1ゴムシート31の外側に巻き付けられる。
【0038】
第2ゴムシート32は、本実施形態では、長手方向(サービサー13の搬送方向)の長さが、ドラム10の巻付面10sのドラム周方向の長さよりも大きい。これにより、第2ゴムシート32がドラム10に巻き付けられると、第2ゴムシート32の巻き付けの始端部32aと終端部32bとが重なる重なり部33が形成される。重なり部33は、本実施形態では、第2ゴムシート32の幅方向の全域に亘って形成される。第1ゴムシート31は、例えば、その長手方向の長さが、ドラム10の巻付面10sの周方向の長さよりも大きいのが望ましい。
【0039】
第1ゴムシート31は、例えば、未加硫のゴム材料である。第1ゴムシート31は、本実施形態では、インナーライナー8が採用される。第2ゴムシート32は、例えば、平行に配されたコードが未加硫ゴムで被覆されたプライ材料である。第2ゴムシート32は、本実施形態では、カーカスプライ6Aが採用される。
【0040】
図2に示されるように、搬送手段14は、サービサー13にドラム10を搬入し、また、サービサー13からドラム10を搬出するためのものである。搬送手段14は、例えば、床に設けられたレール19等に沿って移動しうる。
【0041】
次に、本実施形態の製造方法が説明される。本実施形態の製造方法は、形成工程S1と接合工程S2とを含んでいる。形成工程S1では、ドラム10上に形成された第1円筒体31Aの外側に、第2円筒体32Aが形成される。
【0042】
図4(a)は、形成工程S1を説明するためのドラム10の断面図である。
図4(a)に示されるように、第1円筒体31Aは、本実施形態では、ドラム10の巻付面10sに第1ゴムシート31が巻き付けられることで形成されている。第1ゴムシート31は、例えば、サービサー13によって回転するドラム10上に搬送されることで巻付面10sに巻き付けられている。そして、巻き付けの終端部(図示省略)が、例えば、第1ローラ11や第2ローラ12にて第1ゴムシート31に接合されている。
【0043】
本実施形態の形成工程S1では、次に、第2ゴムシート32が、例えば、サービサー13によって回転するドラム10上に搬送されて、巻付面10s及び第1円筒体31A上に巻き付けられることで、第2円筒体32Aが形成される。このとき、始端部32aと終端部32bとがドラム半径方向に重ねられる。重なり部33は、例えば、鉛直方向において最も上側に位置するように配されるのが望ましい。重なり部33のドラム周方向の長さL1(
図2に示す)は、ローラ片18の幅wよりも小さいのが望ましく、例えば、3~6mm程度である。このとき、第1ローラ11と第2ローラ12とは、ドラム10から離間した位置に控えられている。
【0044】
第2円筒体32Aは、第1円筒体31Aに接触する接触領域35と、第1円筒体31Aからドラム軸方向Xの両側にはみ出す一対の非接触領域36、36とを含んで形成される。非接触領域36、36のそれぞれは、そのドラム軸方向Xの長さL2が同じとなるように形成されている。本明細書では、一方の非接触領域(図では左側)が第1非接触領域36Aとされ、他方の非接触領域(図では右側)が第2非接触領域36Bとされる。
【0045】
次に、接合工程S2が行われる。本実施形態の接合工程S2は、第1接触領域接合ステップN1と第2接触領域接合ステップN2と第1非接触領域接合ステップN3と第2非接触領域接合ステップN4とを含んでいる。
【0046】
図4(b)は、第1接触領域接合ステップN1を説明するためのドラム10の断面図である。
図4(b)に示されるように、本実施形態の第1接触領域接合ステップN1は、重なり部33上を、接触領域35のドラム軸方向Xの中央側から第1非接触領域36Aの内端38iまで第1ローラ11を転動させて押圧する。第1接触領域接合ステップN1では、例えば、図示しない前記移動具が作動されて、第1ローラ11が重なり部33の接触領域35のドラム軸方向Xの中央に接触されて、第2ゴムシート32をドラム10に押圧させる。次に、例えば、前記移動具が作動されて、第1ローラ11がドラム軸方向Xに沿って第1非接触領域36A側に押圧しながら移動される。この第1接触領域接合ステップN1では、第1ローラ11の移動速度(ドラム軸方向X)は、v1に設定されている。また、第1ローラ11の押圧力p1は、第1ゴムシート31がカーカスプライ6Aの場合、0.10~0.15MPaであるのが望ましい。このとき、第2ローラ12は、第1ローラ11との接触を避けるために、ドラム10から離間した位置に控えられている。
【0047】
次に、第2接触領域接合ステップN2が行われる。
図5(a)は、第2接触領域接合ステップN2を説明するためのドラム10の断面図である。
図5(a)に示されるように、第2接触領域接合ステップN2は、重なり部33上を、接触領域35のドラム軸方向Xの中央側から第2非接触領域36Bの内端39iまで第2ローラ12を転動させて押圧する。第2接触領域接合ステップN2では、例えば、図示しない前記移動具が作動されて、第2ローラ12が重なり部33の接触領域35のドラム軸方向Xの中央に接触されて、第2ゴムシート32をドラム10に押圧させる。このとき、第2ローラ12は、第1ローラ11が最初に第2ゴムシート32を押圧した位置と同じ位置で押圧するのが望ましい。次に、例えば、前記移動具が作動させて、第2ローラ12がドラム軸方向Xに沿って第2非接触領域36B側に押圧しながら移動される。第2接触領域接合ステップN2は、例えば、第1ローラ11が接触領域35を移動中に開始される。
【0048】
このように、第2接触領域接合ステップN2は、例えば、第1接触領域接合ステップN1に遅れて開始される。これは、第1ローラ11と第2ローラ12との接触を避けつつ、第2ゴムシート32への最初の押圧位置を同じ位置にして、第2ゴムシート32を強固に接合ためのものである。
【0049】
第2接触領域接合ステップN2では、第2ローラ12の移動速度v2(ドラム軸方向X)は、第1ローラ11の移動速度v1よりも速く設定されている。また、第2ローラ12の押圧力p2は、第1ローラ11の押圧力p1と同じであるのが望ましく、例えば、0.10~0.15MPaに設定される。
【0050】
次に、第1非接触領域接合ステップN3と第2非接触領域接合ステップN4とが開始される。
図5(b)は、第1非接触領域接合ステップN3と第2非接触領域接合ステップN4を説明するためのドラム10の断面図である。
図5(b)に示されるように、第1非接触領域接合ステップN3は、重なり部33上を、第1非接触領域36Aのドラム軸方向Xの内端38i側から外端38e側まで第1ローラ11を転動させて押圧する。第2非接触領域接合ステップN4は、重なり部33上を、第2非接触領域36Bのドラム軸方向Xの内端39i側から外端39e側まで第2ローラ12を転動させて押圧する。
【0051】
第1非接触領域接合ステップN3と第2非接触領域接合ステップN4とは、同じタイミングで行われる。これにより、第1非接触領域36Aと第2非接触領域36Bとは、同じタイミングでドラム軸方向Xに逆向きの力が作用されるので、第2ゴムシート32のドラム軸方向Xへの位置ずれが抑制される。したがって、本実施形態の製造方法は、生タイヤ1aを精度良く製造することができる。前記「同じタイミング」とは、第1ローラ11が第1非接触領域36Aの内端38i上を通過する時刻と、第2ローラ12が第2非接触領域36Bの内端39i上を通過する時刻とが同じあることをいう。また、前記「同じタイミング」とは、第2ゴムシート32のドラム軸方向Xへの位置ずれを抑制する効果を発揮する程度の前記時刻のずれを含み、例えば、前記時刻のずれが2sec以内の場合を含む。
【0052】
第1非接触領域接合ステップN3と第2非接触領域接合ステップN4とを同じタイミングで行うために、第2接触領域接合ステップN2での第2ローラ12の移動速度v2が第1接触領域接合ステップN1での第1ローラ11の移動速度v1よりも速くされている。接触領域35のドラム軸方向の長さL3(第1ゴムシート31の幅)によって決定されるが、例えば、第2ローラ12の移動速度v2は、第1ローラ11の移動速度v1よりも30~50mm/sec速いのが望ましい。
【0053】
第1非接触領域接合ステップN3での第1ローラ11の移動速度V1は、第2非接触領域接合ステップN4での第2ローラ12の移動速度V2と同じであるのが望ましい。これにより、各外端38e、39eを通過する第1ローラ11及び第2ローラ12のタイミングも同じとなり、第1非接触領域36A及び第2非接触領域36Bの全域において、第1ローラ11及び第2ローラ12によるドラム軸方向Xに逆向きの力が作用される。これにより、第2ゴムシート32のドラム軸方向Xへの位置ずれが、さらに抑制される。
【0054】
特に限定されるものではないが、第2非接触領域接合ステップN4での第2ローラ12の移動速度V2は、第2接触領域接合ステップN2での第2ローラ12の移動速度v2と同じであるのが望ましい。この場合、第1非接触領域接合ステップN3での第1ローラ11の移動速度V1は、第1接触領域接合ステップN1での第1ローラ11の移動速度v1よりも速くされる。
【0055】
接触領域35のドラム軸方向の長さL3によって決定されるが、例えば、第1ローラ11の移動速度v1は、140~200mm/secであるのが望ましい。また、第1ローラ11の移動速度V1、第2ローラ12の移動速度v2及び第2ローラ12の移動速度V2は、190~250mm/secであるのが望ましい。
【0056】
なお、各ステップN1~N4での移動速度v1、v2、V1、V2は、上述のような態様に限定されるものではない。第1非接触領域接合ステップN3と第2非接触領域接合ステップN4とが同じタイミングで行われること。そして、第1非接触領域接合ステップN3での第1ローラ11の移動速度V1と第2非接触領域接合ステップN4での第2ローラ12の移動速度V2とが同じであること。これらの規定を満たすようにすれば、その他の移動速度は、種々選定される。
【0057】
上述の作用を効果的に発揮させるために、第1非接触領域接合ステップN3での第1ローラ11の押圧力P1と第2非接触領域接合ステップN4での第2ローラ12の押圧力P2とが同じであるのが望ましい。第2ゴムシート32が、カーカスプライ6Aの場合、第1非接触領域接合ステップN3での第1ローラ11の押圧力P1、及び、第2非接触領域接合ステップN4での第2ローラ12の押圧力P2は、0.20~0.25MPaであるのが望ましい。
【0058】
本実施形態の接合工程S2では、第1非接触領域接合ステップN3は、第1接触領域接合ステップN1に引き続いて行われる。また、第2非接触領域接合ステップN4は、第2接触領域接合ステップN2に引き続いて行われる。即ち、接合工程S2は、例えば、第1接触領域接合ステップN1から第1非接触領域接合ステップN3まで、第1ローラ11を停止させることなく行われる。また、接合工程S2は、例えば、第2接触領域接合ステップN2から第2非接触領域接合ステップN4まで、第2ローラ12を停止させることなく行われる。
【0059】
本実施形態では、第1接触領域接合ステップN1に遅れて第2接触領域接合ステップN2が開始される。そして、第1接触領域接合ステップN1に引き続いて第1非接触領域接合ステップN3が行われ、第2接触領域接合ステップN2に引き続いて第2非接触領域接合ステップN4が行われた。しかしながら、本発明は、このような態様に限定されるものではない。例えば、第1非接触領域接合ステップN3と第2非接触領域接合ステップN4とが同じタイミングで開始され、その後、第1接触領域接合ステップN1、第2接触領域接合ステップN2の順に開始されてもよい。この場合、第1非接触領域接合ステップN3の第1ローラ11の移動速度V1と第2非接触領域接合ステップN4の第2ローラ12の移動速度V2とが同じであるのが望ましい。また、第1接触領域接合ステップN1の第1ローラ11の移動速度v1と第2接触領域接合ステップN2の第2ローラ12の移動速度v2とが同じでもよい。
【0060】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0061】
図2の装置を用いて、第1ゴムシート(インナーライナー)からなる第1円筒体の外側に第2ゴムシート(カーカスプライ)からなる第2円筒体が形成された生タイヤが製造された。そして、生タイヤの第2円筒体の成形精度についてテストがなされた。テスト方法や共通仕様は、以下の通りである。
非接触領域それぞれのドラム軸方向の長さ:140mm
【0062】
<成形精度>
テスターが、第1ゴムシートに対する第2ゴムシートのドラム軸方向の位置ずれ量を計測した。結果は、実測値で表され、5mm未満が良とされた。結果が表1に示される。
実施例は、第1非接触領域接合ステップと第2非接触領域接合ステップとが同じタイミングで開始される。比較例は、第1非接触領域接合ステップと第2非接触領域接合ステップとが異なるタイミングで開始される。
【0063】
【0064】
実施例の製造方法は、比較例の製造方法に比して成形精度が優れていることが確認できる。
【符号の説明】
【0065】
1a 生タイヤ
38i、39i 内端
38e、39e 外端
11 第1ローラ
12 第2ローラ
S2 接合工程
N3 第1非接触領域接合ステップ
N4 第2非接触領域接合ステップ
36A 一方の非接触領域
36B 他方の非接触領域
32A 第2円筒体
32a 始端部
32b 終端部
33 重なり部