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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】回路装置、電気光学装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20240214BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240214BHJP
   G09G 3/3225 20160101ALI20240214BHJP
   G09G 3/3275 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 623D
G09G3/20 623R
G09G3/20 623X
G09G3/20 642A
G09G3/3225
G09G3/3275
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020005190
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021113852
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100187539
【弁理士】
【氏名又は名称】藍原 由和
(72)【発明者】
【氏名】劉 福海
(72)【発明者】
【氏名】森田 晶
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-181516(JP,A)
【文献】特開2003-58119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0050665(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0603456(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第nデータ線(nは3以上の整数)とデータ信号供給線との間に設けられるデマルチプレクサーを含む電気光学パネルを駆動する回路装置であって、
前記データ信号供給線にデータ信号を出力するデータ線駆動回路と、
前記デマルチプレクサーにおける前記第1~第nデータ線の選択順を設定する処理回路と、
を含み、
前記処理回路は、
今回における前記第1~第nデータ線の選択順である第1選択順において、第iデータ線(iは1以上n以下の整数)が第j番目(jは1以上n以下の整数)に選択されるとき、次回における前記第1~第nデータ線の選択順である第2選択順において、前記第iデータ線が前記第j番目に選択されることを禁止するように、乱数情報を用いて前記第2選択順を設定することを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
前記第2選択順において、第i-1データ線及び第i+1データ線(nは4以上の整数、iは2以上n-1以下の整数)が前記第j番目に選択されることを禁止するように、前記第2選択順を設定することを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
前記第2選択順において、前記第iデータ線が前記第j番目に選択されることを禁止し、且つ、第i-1データ線及び第i+1データ線が前記第j番目に選択されることを禁止しない第1設定と、前記第2選択順において、前記第iデータ線、第i-1データ線及び第i+1データ線が前記第j番目に選択されることを禁止する第2設定とを含む複数の設定のうち、いずれかの設定を選択可能な禁止設定部を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
前記第2選択順において前記第iデータ線が前記第j番目に選択されることを禁止する禁止成分を有する行列と、前記第1選択順とに基づいて、前記第2選択順を求めることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回路装置において、
前記禁止成分は、前記行列の対角成分であることを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項4に記載の回路装置において、
前記行列のp行q列成分をapq(p、qは1以上n以下の整数)と表したとき、
前記禁止成分は、app、app-1、app+1であることを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
前記行列の前記禁止成分を設定する禁止成分設定部を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記行列の第p行(pは1以上n以下の整数)に含まれる成分のうち、前記禁止成分以外の成分を候補成分としたとき、
前記処理回路は、
前記第p行の前記候補成分の中から1つの成分を前記乱数情報を用いて選択し、選択後の前記第p行と前記第1選択順とに基づいて、前記第2選択順の第p成分を求めることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項8に記載の回路装置において、
前記第p行の前記候補成分の中から前記乱数情報を用いて選択された前記候補成分が第q列(qは1以上n以下の整数)だったとき、
前記処理回路は、
前記行列のうち、前記乱数情報に基づく前記候補成分の選択が行われていない行である未決定行の前記第q列の成分を、前記禁止成分に設定することを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項9に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
前記未決定行のうち、前記候補成分が最も少ない行を対象として、前記候補成分の中から1つの成分を前記乱数情報を用いて選択することを特徴とする回路装置。
【請求項11】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の回路装置において、
前記行列の第q列(qは1以上n以下の整数)に含まれる成分のうち、前記禁止成分以外の成分を候補成分としたとき、
前記処理回路は、
前記第q列の前記候補成分の中から1つの成分を前記乱数情報を用いて選択し、
選択された前記候補成分が第p行(pは1以上n以下の整数)だったとき、前記行列のうち、前記乱数情報に基づく前記候補成分の選択が行われていない列である未決定列の前記第p行の成分を、前記禁止成分に設定することを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項11に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
前記未決定列のうち、前記候補成分が最も少ない列を対象として、前記候補成分の中から1つの成分を前記乱数情報を用いて選択することを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項12に記載の回路装置において、
前記処理回路は、
第1~第n列について、前記候補成分の中から1つの成分を前記乱数情報を用いて選択する処理を行い、処理後の前記行列と前記第1選択順とに基づいて、前記第2選択順を決定することを特徴とする回路装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の回路装置と、
前記電気光学パネルと、
を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、電気光学装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではハイビジョン映像等の高精細な映像技術が普及しており、液晶プロジェクター等の表示機器において高精細化・多階調化が進んでいる。そのため、マルチプレクス駆動方式の表示ドライバーが用いられている。マルチプレクス駆動方式においては、駆動順、即ちデータ線の選択順に起因する表示ムラが発生することが知られている。
【0003】
特許文献1には、複数のローテーションパターンのうちのいずれかを用いることによって、表示ムラを表示面に拡散させて目立たなくさせる手法が開示されている。また特許文献2には、乱数を用いてランダムに選択順を切り替える手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-181516号公報
【文献】特開2003-58119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法においては、あらかじめ設定された複数のローテーションパターンのいずれかを、何らかの規則に従って選択する。そのため、当該規則に従った表示ムラが視認される場合がある。また特許文献2の手法においては、選択順が乱数を用いて決定されるため、表示ムラが画面内のある位置に固まることによって視認される場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1~第nデータ線(nは3以上の整数)とデータ信号供給線との間に設けられるデマルチプレクサーを含む電気光学パネルを駆動する回路装置であって、前記データ信号供給線にデータ信号を出力するデータ線駆動回路と、前記デマルチプレクサーにおける前記第1~第nデータ線の選択順を設定する処理回路と、を含み、前記処理回路は、今回における前記第1~第nデータ線の選択順である第1選択順において、第iデータ線(iは1以上n以下の整数)が第j番目(jは1以上n以下の整数)に選択されるとき、次回における前記第1~第nデータ線の選択順である第2選択順において、前記第iデータ線が前記第j番目に選択されることを禁止するように、乱数情報を用いて前記第2選択順を設定する回路装置に関係する。
【0007】
本開示の他の態様は、上記の回路装置と、前記電気光学パネルと、を含む電気光学装置に関係する。
【0008】
本開示のさらに他の態様は、上記の回路装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回路装置の構成例。
図2】処理回路の構成例。
図3】電気光学パネルの構成例。
図4】回路装置及び電気光学パネルの動作を説明する図。
図5】禁止される選択順の例。
図6】禁止される選択順の例。
図7】禁止される選択順の例。
図8】選択順設定回路の構成例。
図9】選択順設定回路における処理を説明するフローチャート。
図10】候補成分の選択と禁止成分の更新を説明する図。
図11】演算部の構成例。
図12】処理の流れを説明する模式図。
図13】処理の流れを説明する模式図。
図14】第2選択順の設定処理を説明する模式図。
図15】候補配列を並び替える手法を説明する模式図。
図16】第2選択順の設定処理を説明する模式図。
図17】第2選択順の設定処理を説明する模式図。
図18】電気光学装置の構成例。
図19】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.システム構成例
図1図2は、本実施形態の回路装置10の構成例である。本実施形態の回路装置10は、具体的には図3を用いて後述する電気光学パネル20を駆動する表示ドライバーである。なお、本実施形態の回路装置10は、図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。例えば、回路装置10は、図3を用いて後述する電気光学パネル20の走査線駆動回路40を含んでもよい。また図1図3では、回路装置10がマルチ数4のデマルチプレクス駆動を行う場合を例にとって説明するが、マルチ数は後述するように8であってもよいし、2以上の他の数であってもよい。
【0012】
図1の回路装置10は、電気光学パネル20の画素にデータ電圧を供給することで、電気光学パネルを駆動する。電気光学パネル20として、例えばアクティブマトリックス型の液晶表示パネル、或いはEL(Electro Luminescence)表示パネルを想定できる。回路装置10は集積回路装置である。
【0013】
図1に示すように、表示ドライバーである回路装置10は、処理回路100と、データ線駆動回路200と、を含む。また回路装置10は、第1~第nのデータ電圧出力端子であるデータ電圧出力端子TD1~TDtと、出力端子TSOを含んでもよい。データ線駆動回路200は、アンプ回路AM1~AMtと、D/A変換回路DAC1~DACtと、階調電圧生成回路210と、を含む。tは3以上の整数である。
【0014】
処理回路100は、表示データDT1をD/A変換回路DAC1に出力する。同様に、処理回路100は、表示データDT2~DTtをD/A変換回路DAC2~DACtに出力する。また処理回路100は、回路装置10の各部を制御する。例えば処理回路100は、回路装置10が電気光学パネル20を駆動する際のタイミング制御を行う。また処理回路100は、アンプ回路AM1~AMtに対してゲイン調整データを出力することによって、アンプ回路AM1~AMtのゲインを設定してもよい。処理回路100はロジック回路である。ロジック回路は、ロジック素子と、ロジック素子の間を接続する信号線とを含み、そのロジック素子及び信号線によってロジック回路の機能が実現されている。或いは処理回路100はDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサーであってもよい。この場合、処理回路100の機能が記述されたプログラムをプロセッサーが実行することによって、処理回路100の機能が実現される。
【0015】
図2に示すように、処理回路100は、ラインラッチ110と、マルチプレクサー120と、選択順設定回路130と、スイッチ信号生成回路140と、を含む。ただし処理回路100は、図2の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。例えば本実施形態の処理回路100は狭義には選択順設定回路130に対応し、その他の構成が処理回路100の外部に設けられてもよい。
【0016】
選択順設定回路130は、マルチプレクス駆動方式におけるデータ線の選択順を決定する処理を行う。処理の具体的な流れについては後述する。選択順設定回路130は、決定された選択順に基づいて、マルチプレクス制御信号をマルチプレクサー120に出力する。また選択順設定回路130は、決定された選択順に基づいて、デマルチプレクス制御信号をスイッチ信号生成回路140に出力する。スイッチ信号生成回路140は、デマルチプレクス制御信号に基づいて、デマルチプレクス用スイッチ信号SEL1~SEL4を出力する。
【0017】
ラインラッチ110は、水平同期信号に同期して、1水平走査単位の画像データをラッチする。マルチプレクサー120は、ラインラッチ110からの各データ線に対応する画像データを受けて、4本分のデータ線に対応する画像データを時分割多重し、各データ信号供給線に対応する時分割多重された表示データを出力する。マルチプレクサー120は、例えば選択順設定回路130からのマルチプレクス制御信号に基づいて、画像データを多重化する。
【0018】
D/A変換回路DAC1は、表示データDT1を、表示データDT1に対応する電圧にD/A変換する。具体的には、D/A変換回路DAC1は、階調電圧生成回路210が生成した複数の階調電圧の中から、表示データDT1に対応した階調電圧を選択する。同様に、D/A変換回路DAC2~DACtは、表示データDT2~DTtを、表示データDT2~DTtに対応する電圧にD/A変換する。D/A変換回路DAC1~DACtの各々は、例えばトランジスタースイッチで構成されたセレクターである。
【0019】
アンプ回路AM1は、D/A変換回路DAC1から出力される電圧を反転増幅し、その結果をデータ電圧VD1としてデータ電圧出力端子TD1に出力する。同様に、アンプ回路AM2~AMtは、D/A変換回路DAC2~DACtから出力される電圧を反転増幅し、その結果をデータ電圧VD2~VDtとしてデータ電圧出力端子TD2~TDtに出力する。
【0020】
データ電圧出力端子TD1~TDtは、集積回路装置の半導体基板に形成されたパッド、或いは、集積回路装置のパッケージに設けられた端子である。データ電圧出力端子TD1~TDtは、表示ドライバーである回路装置10の長辺方向に沿って並ぶ。データ電圧出力端子TD1~TDtは、回路基板上の配線又はケーブル等を介して電気光学パネル20のデータ電圧入力端子TI1~TItに接続される。
【0021】
図3は、回路装置10によって駆動される電気光学パネル20の構成例である。電気光学パネル20は、走査線駆動回路40と、データ電圧入力端子TI1~TItと、入力端子TSIと、デマルチプレクサーDML1~DMLtと、データ線DL1~DLuと、複数の画素とを含む。ここでのuは、例えばu=4×tを満たす整数である。
【0022】
走査線駆動回路40には、垂直同期信号及び水平同期信号が供給される。走査線駆動回路40は、供給された垂直同期信号及び水平同期信号に基づいて、走査線を駆動する。なお図3においては4本の走査線G1~G4を例示している。また、図3においては走査線G1に接続される複数の画素P1~Puを例示しているが、他の走査線についても同様に複数の画素が接続される。
【0023】
データ電圧出力端子TD1は、電気光学パネル20のデータ電圧入力端子TI1に接続される。データ電圧入力端子TI1は、デマルチプレクサーDML1を介してデータ線DL1~DL4に接続される。データ線DL1~DL4は、電気光学パネル20において水平走査方向に隣り合って並ぶデータ線である。データ線DL1~DL4には、それぞれ画素P1~P4が接続されている。
【0024】
デマルチプレクサーDML1は、データ信号供給線SV1に供給された時分割のデータ電圧VD1をデータ線DL1~DL4に分割して供給する。具体的には、デマルチプレクサーDML1は、データ線DL1~DL4に対応するスイッチ素子SW1~SW4を含む。スイッチ素子SW1~SW4は、スイッチ信号生成回路140からのデマルチプレクス用スイッチ信号SEL1~SEL4によってオン・オフが制御される。これにより、データ信号供給線SV1に供給されたデータ電圧VD1がデータ線DL1~DL4に分割して供給される。デマルチプレクサーDML2以降についても同様である。
【0025】
図4は、回路装置10及び電気光学パネル20の動作を説明する図である。図4のHSYNCは水平同期信号を表し、1周期が1つの水平走査期間に対応する。G1及びG2は、走査線駆動回路40の動作タイミングを表す信号である。G1がハイレベルの期間において、複数の走査線のうち、G1に対応する走査線が選択されることを表す。同様にG2がハイレベルの期間において、複数の走査線のうち、G2に対応する走査線が選択される。
【0026】
処理回路100は、水平走査期間において表示データDT1として第1~第4表示データを時分割に出力する。第1~第4表示データは、それぞれデータ線DL1~DL4に接続された画素P1~P4に対応する表示データである。すなわち、処理回路100は第1~第4表示データを時系列に並べて出力する。ここで、第1~第4表示データの並び順は、処理回路100、より具体的には選択順設定回路130によって設定される。例えば図4に示す例では、処理回路100は、G1に対応する水平走査期間において、第1表示データD1、第3表示データD3、第2表示データD2、第4表示データD4をこの順に出力する。またG2に対応する次の水平走査期間において、処理回路100は、第2表示データD2’、第4表示データD4’、第1表示データD1’、第3表示データD3’をこの順に出力する。
【0027】
これによりアンプ回路AM1から、データ電圧VD1として第1~第4データ電圧が時分割に出力される。図4に示すように、アンプ回路AM1は、G1に対応する水平走査期間において、第1データ電圧V1、第3データ電圧V3、第2データ電圧V2、第4データ電圧V4をこの順に出力する。G2に対応する次の水平走査期間において、アンプ回路AM1は、第2データ電圧V2’、第4データ電圧V4’、第1データ電圧V1’、第3データ電圧V3’をこの順に出力する。
【0028】
なお、ここではデータ電圧VD1に関する回路装置10の動作を例にとって説明するが、データ電圧VD2~VDtについても回路装置10の動作は同様である。
【0029】
SEL1~SEL4は、上述したとおりデマルチプレクス用スイッチ信号である。スイッチ素子SW1は、SEL1がハイレベルとなる期間においてオンになり、SEL1がローレベルとなる期間においてオフになる。SEL2~SEL4も同様に、スイッチ素子SW2~SW4を制御する信号である。
【0030】
水平走査期間において、デマルチプレクサーDML1は、デマルチプレクス用スイッチ信号SEL1~SEL4に基づいてデータ線DL1~DL4を、所定の順に選択してデータ電圧入力端子TI1に接続する。具体的には、アンプ回路AM1が第1データ電圧V1を出力しているとき、デマルチプレクサーDML1はデータ線DL1をデータ電圧入力端子TI1に接続する。これにより、データ線DL1は第1データ電圧V1で駆動される。同様に、データ線DL2~DL4は、第2~第4データ電圧V2~V4で駆動される。
【0031】
図4の例であれば、G1に対応する水平走査期間において、デマルチプレクス用スイッチ信号SEL1~SEL4が、SEL1、SEL3、SEL2、SEL4の順でハイレベルとなることによって、データ線DL1~DL4は、DL1、DL3、DL2、DL4の順で電圧入力端子TI1に接続される。次の水平走査期間において、データ線DL1~DL4は、DL2、DL4、DL1、DL3の順で電圧入力端子TI1に接続される。結果として、データ線DL1~DL4に供給されるデータ電圧は、図4に示すように変化する。
【0032】
マルチプレクス駆動において、データ線の選択順に応じた順番オフセットが発生することが知られている。そして順番オフセットによって、画素の輝度値に誤差が生じ、表示画像に表示ムラが発生する。
【0033】
これに対して、特許文献1ではあらかじめ設定しておいた複数のローテーションパターンのいずれかを何らかの規則に従って選択する。例えば、映像出力の水平同期信号や垂直同期信号をトリガーとして、ローテーションパターンが決定される。しかし特許文献1の手法では、ローテーションパターンの選択に規則性が存在する。結果として、表示面内における表示ムラがある規則に従って存在してしまう。特にローテーションパターンの周期が短い場合には、表示ムラが容易に視認されてしまうおそれがある。また、フレームごとに表示ムラが上記規則に従って移動してくように視認されてしまうことも考えられる。つまり特許文献1のように、あらかじめ用意されたローテーションパターンを選択する従来手法では、ローテーションパターンの周期が短く、また規則的なものであるという点が課題となる。また、規則に従った表示ムラが視認されることを抑制するためには、あらかじめ多くのローテーションパターンを保持しておく必要が生じてしまう。
【0034】
一方、特許文献2のように、選択順をランダムに決める手法も考えられる。しかし選択順を完全にランダムに決定する場合、表示ムラが表示面内のある位置に固まって出てしまう選択順が存在してしまう。この場合には表示ムラが隣接するため、当該表示ムラがユーザーに視認されてしまう。
【0035】
本実施形態の手法は、図1図3に示したように、第1~第nデータ線(nは3以上の整数)とデータ信号供給線との間に設けられるデマルチプレクサーを含む電気光学パネル20を駆動する回路装置10に適用できる。図1図3に示す例であれば、ここでのデマルチプレクサーは例えばDML1であり、第1~第nデータ線はDL1~DL4であり、データ信号供給線はSV1である。或いは、デマルチプレクサーはDML2であり、第1~第nデータ線はDL5~DL8であり、データ信号供給線はSV2であってもよい。また本実施形態の回路装置10は、電気光学パネル20に含まれる2以上のデマルチプレクサーを対象として、以下で説明する処理を実行してもよい。2以上のデマルチプレクサーとは、狭義には電気光学パネル20に含まれる全てのデマルチプレクサーDML1~DMLtである。以下では簡略化のため、主に1つのデマルチプレクサーDML1について説明を行う。
【0036】
回路装置10は、データ信号供給線SV1にデータ信号を出力するデータ線駆動回路200と、デマルチプレクサーDML1における第1~第nデータ線の選択順を設定する処理回路100と、を含む。処理回路100は、今回における第1~第nデータ線の選択順である第1選択順において、第iデータ線(iは1以上n以下の整数)が第j番目(jは1以上n以下の整数)に選択されるとき、次回における第1~第nデータ線の選択順である第2選択順において、第iデータ線が第j番目に選択されることを禁止するように、乱数情報を用いて第2選択順を設定する。
【0037】
ここでの第1~第nデータ線の選択順とは、具体的には水平走査期間における選択順を表す。即ち、第1選択順とは所与の1水平走査期間におけるデータ線の選択順であり、第2選択順とは次の1水平走査期間におけるデータ線の選択順である。
【0038】
また本実施形態の乱数情報は、例えば後述する乱数発生回路136によって生成される乱数である。乱数発生回路136は、例えば所与の範囲が与えられた場合に、当該範囲内の乱数を出力する回路である。ただし、乱数情報は、円周率や自然定数に基づく情報であってもよい。例えば乱数情報は、円周率又は自然定数の所与の桁を読み出すことによって取得される情報であってもよい。
【0039】
図5は、本実施形態の手法において禁止される選択順を説明する図である。図5は電気光学パネル20に含まれる複数の画素と、各画素の選択順を説明する図である。なお図5以降では、マルチ数が8である例について説明する。即ち、第1~第nデータ線とは、8本のデータ線DL1~DL8に対応する。図5に示すDL1~DL8は、同じデマルチプレクサーDML1に接続されるデータ線である。
【0040】
図5の例では、Nライン目を駆動する水平走査期間において、第1データ線DL1が1番目に選択され、第2データ線DL2が2番目に選択され、第3データ線DL3が3番目に選択された例を示している。画素について考えれば、図5の例は、第1データ線DL1に接続される画素が1番目に駆動され、第2データ線DL2に接続される画素が2番目に駆動され、第3データ線DL3に接続される画素が3番目に駆動されることになる。以下、第iデータ線に接続される画素を第i画素と表記する。
【0041】
また図5の例では、Nライン目の次のラインであるN+1ライン目を駆動する水平走査期間において、第1画素が4番目に駆動され、第2画素が2番目に駆動され、第3画素が6番目に駆動される。例えば、順番オフセットによって、2番目に駆動される画素に印可されるデータ電圧における誤差が大きくなる場合、Nライン目の第2画素とN+1ライン目の第2画素に表示ムラが発生する。結果として、表示ムラが連続するため、当該表示ムラが縦方向のスジとして視認されやすくなってしまう。N+1ライン目と、その次のN+2ライン目との関係についても同様である。
【0042】
本実施形態の手法によれば、第1選択順において第iデータ線が第j番目に選択された場合、第2選択順において第iデータ線が第j番目に選択されないという条件を満たすように、第2選択順が設定される。また、上記条件に関係しない部分については、乱数情報を用いて第2選択順が設定される。そのため、ローテーション規則に従った表示ムラが視認されること、及び、縦方向の表示ムラが視認されることの両方を抑制することが可能になる。換言すれば、本実施形態の手法は、乱数情報を用いることによって、その周期が長く不規則なローテーションパターンを生成できるため、より表示ムラを視認されにくくすることが可能になる。
【0043】
図6は、本実施形態において禁止される選択順の他の例を示す図である。図6の例では、Nライン目を駆動する水平走査期間において、第1画素が1番目に駆動され、第2画素が2番目に駆動され、第3画素が3番目に駆動された例を示している。そして、次の水平走査期間であるN+1ライン目を駆動する水平走査期間において、第1画素が2番目に駆動され、第2画素が4番目に駆動され、第3画素が6番目に駆動される。図5の例と同様に、順番オフセットによって、2番目に駆動される画素に印可されるデータ電圧における誤差が大きくなる場合を考える。図6の例においては、2番目に選択される画素は、Nライン目の第2画素とN+1ライン目の第1画素である。この場合、表示ムラは縦方向に連続しないものの、近い範囲に表示ムラが集中するため、当該表示ムラが視認されやすくなってしまう。
【0044】
よって本実施形態の処理回路100は、第2選択順において、第i-1データ線及び第i+1データ線(iは2以上n-1以下の整数)が第j番目に選択されることを禁止するように、第2選択順を設定してもよい。例えば、N+1ライン目の第2画素だけでなく、第1画素及び第3画素についても、2番目に選択されることが禁止されるため、図6に示す選択順は採用されない。このようにすれば、表示ムラをより分散させることによって、当該表示ムラを視認されにくくすることが可能になる。なおn=3である場合、第2選択順において第j番目に選択可能なデータ線が存在しなくなるため、この場合のnは4以上の整数である。
【0045】
なお、本実施形態の回路装置10によって駆動される電気光学パネル20は、図3に示すように複数のデマルチプレクサーDML1~DMLtを含むことが想定される。そして複数のデマルチプレクサーDML1~DMLtには、共通のデマルチプレクス用スイッチ信号が供給されることが想定される。デマルチプレクス用スイッチ信号とは、例えば上述したSEL1~SEL4である。即ち図1図3の例において、第1選択順でデマルチプレクサーDML1によってデータ線DL1がj番目に選択されたとき、デマルチプレクサーDML2によってデータ線DL5がj番目に選択される。
【0046】
図7は、複数のデマルチプレクサーDML1、DML2を考慮した場合において、禁止される選択順の例を示す図である。図7の例では、Nライン目を駆動する水平走査期間において、第1画素が1番目に駆動され、第8画素が8番目に駆動される。そして、次の水平走査期間であるN+1ライン目を駆動する水平走査期間において、第8画素が1番目に駆動される。図7に示すように2つのデマルチプレクサーDML1、DML2を考慮した場合、デマルチプレクサーDML1の第8データ線であるDL8と、デマルチプレクサーDML2の第1データ線であるDL9は隣接する。そのため、デマルチプレクサーDML1の第8画素と、デマルチプレクサーDML2の第1画素は隣接する。順番オフセットによって、1番目に駆動される画素に印可されるデータ電圧における誤差が大きくなる場合、図7に示す選択順では近い範囲に表示ムラが集中するため、当該表示ムラが視認されやすくなってしまう。
【0047】
よってi=1の場合、「第2選択順において第i-1データ線、第iデータ線、及び第i+1データ線が第j番目に選択されることを禁止する」とは、第nデータ線、第1データ線、及び第2データ線が第j番目に選択されることを禁止することに相当する。同様に、i=nの場合、第n-1データ線、第nデータ線、及び第1データ線が第j番目に選択されることが禁止される。即ち、ここでのi-1及びi+1とは、nを法とする加減算であって、0はnと等価であり、n+1は1と等価である。
【0048】
ただし、本実施形態の手法はこれに限定されず、i=1の場合、第2選択順において第1データ線及び第2データ線が第j番目に選択されることを禁止し、且つ、第nデータ線が第j番目に選択されることが禁止されなくてもよい。同様にi=nの場合、第2選択順において第n-1データ線及び第nデータ線が第j番目に選択されることを禁止し、且つ、第1データ線が第j番目に選択されることが禁止されなくてもよい。
【0049】
2.選択順の決定処理
2.1 処理の流れ
図8は、処理回路100に含まれる選択順設定回路130の構成例を示す図である。選択順設定回路130は、演算部131と、禁止設定メモリー135と、乱数発生回路136と、を含む。また選択順設定回路130は、禁止設定部137を含んでもよい。ただし、選択順設定回路130は、図8の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば禁止設定が固定である場合、禁止設定部137が省略されてもよい。
【0050】
禁止設定メモリー135は、禁止設定を特定する禁止設定情報を記憶する。禁止設定とは、第2選択順においてどのデータ線を、何番目に選択することを禁止するかの設定である。例えば禁止設定メモリー135は、下式(1)を用いて後述する行列を特定する情報を、禁止設定情報として記憶する。禁止設定メモリー135は、ROM(Read Only Memory)であってもよいし、レジスターであってもよい。また後述するように、禁止設定メモリー135は複数の禁止設定情報を記憶し、禁止設定部137からの制御情報に基づいていずれか1つの禁止設定情報を演算部131に出力してもよい。
【0051】
乱数発生回路136は、演算部131から乱数の範囲を指定する情報を取得し、当該範囲内の乱数を発生させる回路である。乱数発生回路136としては、帰還シフトレジスター等、種々の構成の回路が知られており、本実施形態ではそれらの手法を広く適用可能である。また、本実施形態における乱数情報は、円周率や自然定数の所定範囲の桁における数値を順次読み出すことによって取得されてもよい。
【0052】
演算部131は、第1選択順と、禁止設定情報と、乱数情報とに基づいて、第2選択順を設定する処理を行う。演算部131は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアであってもよいし、DPS等のプロセッサーであってもよい。
【0053】
図9は、第2選択順の設定処理を説明するフローチャートである。この処理が開始されると、まずステップS101において、演算部131は、禁止成分が設定された行列Tを取得する。行列Tは、例えば禁止設定メモリー135から読み出される。
【0054】
次にステップS102において、演算部131は、行列Tのいずれかの行を選択する。ステップS103において、演算部131は、ステップS102で選択した行の候補成分のうち、いずれか1つを乱数情報を用いて選択する。候補成分とは、対象の行のうちの禁止成分以外の成分である。次にステップS104において、演算部131は、選択された候補成分に従って、行列Tを更新する。行列Tの更新処理については後述する。
【0055】
ステップS105において、演算部131は、行列Tの全ての行について、候補成分のうちの1つを決定する処理が行われたか否かを判定する。ステップS105でNoの場合、演算部131はステップS102に戻り、未処理の行からいずれかの行を選択する。ステップS105でYesの場合、ステップS106において、演算部131は処理後の行列Tに基づいて、第2選択順を設定する。
【0056】
以下、図9に示した各ステップの処理について詳細に説明する。なお以下では、マルチ数が8の場合について説明する。
【0057】
まず、今回の書き込みがNライン目である場合に、第1選択順を列ベクトルであるPを用いて定義する。例えばP=(2,3,4,5,6,7,8,1)であれば、第1画素が2番目に書き込まれ、第2画素が3番目に書き込まれる。ここで演算部131は、下式(1)に示す行列Tを用いて、N+1ライン目を書き込む際の第2選択順PN+1を、下式(2)によって決定する。マルチ数がnである場合、P及びPN+1はn行1列の列ベクトルであり、Tは、n行n列の行列である。上述したとおり、ここではn=8の例を説明する。また初期の選択順であるPは任意である。
【数1】
【数2】
【0058】
行列Tにおいて、Xは禁止成分を表す。Xは具体的には0であるが、ここでは初期禁止成分と、他の行の決定に基づいて更新される禁止成分を区別するため、初期禁止成分をXと表記する。また行列Tのσpqは、0又は1をとる変数である。なおp、qはそれぞれ1以上n以下の整数である。
【0059】
上述したように、Pの第p成分は、第1選択順において第p画素が何番目に選択されたかを表す。そして、PN+1の第p成分は、行列Tの第p行と、Pの演算によって求められる。例えば後述するようにσ15=1である場合、第2選択順における第1画素は、第1選択順における第5画素の選択順と等しくなる。第2選択順において第1画素を複数回書き込むことはないため、PN+1の設定においてPに含まれる複数の成分を参照する必要はない。よって、行列Tの各行は、いずれか1つの成分が1に設定され、他の成分が0に設定される。
【0060】
また1つのデマルチプレクサーDML1によって2画素以上が同時に書き込まれることはない。例えば後述するように、σ15=1であることによって第2選択順において第1画素が6番目に書き込まれる場合、当該第2選択順において第2~第8画素が6番目に書き込まれることはない。即ち、行列Tの各列においても、いずれか1つの成分が1に設定され、他の成分が0に設定される。
【0061】
即ち、第2選択順を設定する処理は、
(A)所与の禁止設定に従って禁止成分Xが設定され、X=0である
(B)各行のいずれか1つの成分のみが1であり、他の成分が0である
(C)各列のいずれか1つの成分のみが1であり、他の成分が0である
という3つの条件(A)~(C)を満たす行列Tを決定する処理によって実行される。
【0062】
以上で説明したように、処理回路100は、第1選択順と、第1選択順から第2選択順を求めるための行列Tとを用いて、第2選択順を求める。例えば、第1選択順及び第2選択順を、それぞれn行1列の列ベクトルであるP及びPN+1によって定義した場合に、行列Tはn行n列の行列である。このようにすれば、第1選択順を参照した上で第2選択順が決定されるため、表示ムラが視認されないための禁止設定を満たすように、第2選択順を設定可能である。ここでの行列Tは、第2選択順において、第iデータ線が第j番目に選択されることを禁止する禁止成分を有する。このように、行列Tに含まれる所与の成分を禁止成分とすることによって、少なくとも縦方向のスジである表示ムラが視認されないための禁止設定を満たすことが可能になる。
【0063】
禁止成分は、具体的には行列Tの対角成分である。上式(1)、(2)の例であれば、行列Tの第p行とは、第2選択順における第p画素の選択順を選択するための情報である。また行列Tの第p列とは、第2選択順における順番決定において、第1選択順の第p画素の選択順を参照することを意味する情報である。即ち、対角成分appとは、第2選択順における第p画素の選択順を選択する際に、第1選択順の第p画素の選択順を参照することを意味する情報となる。対角成分appが有効となる場合、第1選択順において第iデータ線が第j番目に選択されたときに、第2選択順において、第iデータ線が第j番目に選択されることになる。対角成分を禁止成分とすることによって、図5に示したような縦方向のスジが視認されることを抑制可能である。
【0064】
ただし上式(1)では、第1選択順において第iデータ線が第j番目に選択された場合、第2選択順において、第i-1データ線、第iデータ線、及び第i+1データ線が第j番目に選択されることを禁止する例を示している。例えば、第2選択順における第2画素は、第1選択順における第2画素の順番、第1画素の順番、第3画素の順番のいずれで書き込まれることも禁止される。よって第2選択順における第2画素の順番を決定する行列Tの第2行は、第1列~第3列が禁止成分に設定される。
【0065】
他の行についても同様であり、行列Tのp行q列成分をapq(p、qは1以上n以下の整数)と表したとき、禁止成分は、app、app-1、app+1である。なお上述したように、ここでのp-1、p+1はnを法とした加減算であり、p=1の場合の禁止成分は、a18、a11、a12であり、p=8の場合の禁止成分は、a87、a88、a81である。このように禁止成分を設定することによって、表示ムラをより分散させることが可能になる。
【0066】
図9のステップS101に示す処理は、禁止成分が設定済であり、且つ、σpqのいずれの値も決定されていない状態の行列Tを取得する処理である。以下、この状態の行列Tを、行列Tの初期値とも表記する。
【0067】
第2選択順を決定するためには、上述した3つの条件(A)~(C)を満たす具体的な行列Tを決定する必要がある。そして本実施形態の手法では、あらかじめ複数のローテーションパターンを用意するのではなく、乱数情報を用いて行列Tが決定される。
【0068】
図10は、行列Tを決定する処理のうち、S102~S104の処理を説明する図である。演算部131は、行列Tのうち、未処理の行を1つ選択し、当該行に含まれる候補成分のうちのいずれか1つを1に設定する。図10の例では、全ての行が未処理であった状態において、演算部131は行列Tの第1行を選択した(ステップS102)。第1行の候補成分は、上式(1)に示したように、σ13~σ17の5個である。そして図10の例では、演算部131は、乱数発生回路136からの乱数情報に基づいて選択したσ15の値を1に設定した(ステップS103)。演算部131は、上記条件(B)を満たすように、第1行の他の成分、具体的には、σ13、σ14、σ16、σ17を0に設定する。なお、禁止成分については元々0であるため値の更新は不要である。また演算部131は、上記条件(C)を満たすように、第5列の他の成分、具体的には、σ25、σ35、σ75、σ85を0に設定する(ステップS104)。列方向についても、禁止成分については元々0であるため値の更新は不要である。
【0069】
以上の処理によって、行列Tの第1行が決定されたため、当該第1行の情報とPとに基づいて、PN+1の第1行の成分を決定できる。広義には、行列の第p行(pは1以上n以下の整数)に含まれる成分のうち、禁止成分以外の成分を候補成分としたとき、処理回路100は、図10に示すように、第p行の候補成分の中から1つの成分を乱数情報を用いて選択する。そして処理回路100は、選択後の第p行と第1選択順とに基づいて、第2選択順の第p成分を求める。即ち、禁止設定を満たした上で、ランダムに第2選択順を決定することが可能になる。
【0070】
また、上述したσ25、σ35、σ75、σ85を0に設定する処理は、広義には以下のようになる。第p行の候補成分の中から乱数情報を用いて選択された候補成分が第q列(qは1以上n以下の整数)だったとき、処理回路100は、行列Tのうち、乱数情報に基づく候補成分の選択が行われていない行である未決定行の第q列の成分を、禁止成分に設定する。ここでの「禁止成分に設定」とは、対象となる成分が第2選択順の決定に寄与しない状態とすることを表す。ここでは禁止成分に設定する処理とは、σの値を0に設定する処理であるが、これ以外の処理によって禁止成分が設定されてもよい。
【0071】
上述したように、行列Tの第1行を対象として、候補成分のうちの1つを決定する処理を行うことによって、PN+1の第1行の成分を決定できる。即ち、PN+1の全ての成分を決定するためには、行列Tの全ての行について同様の処理を行う必要がある。よって図9に示したようにステップS105においてNoである場合、ステップS102~S104の処理が繰り返される。
【0072】
なお、2回目以降のステップS102の処理において、演算部131は、行列Tの未処理の行からランダムに1つの行を選択してもよい。ただし、本実施形態の手法では、行列Tの各行に1つ以上の禁止成分が設定されている。そして、他の行について処理を行うことによって、未処理の行における禁止成分が1つ増加する可能性がある。上式(1)の例であれば、各行における候補成分は初期状態において5個である。そのため、ランダムに行選択を行った場合、6~8回目に選択される行において、候補成分が0個になってしまうおそれがある。
【0073】
例えば図10に示す処理の後、ステップS102、S103を繰り返すことによって、第3行のσ36の選択、第4行のσ42の選択、第5行のσ53の選択、第6行のσ64の選択、という各処理が行われた例を考える。この場合、σ36の選択によって第8行のσ86の値が0に更新、即ち禁止成分に更新される。同様に、σ42、σ53、σ64の選択によって、σ82、σ83、σ84の値が0に更新される。この段階で、第8行は全ての成分が禁止成分となるため、第2選択順における第8画素の順番を決定できない。
【0074】
このようにいずれかの行における候補成分が存在しなくなった場合、演算部131は、行列Tを一旦初期化し、再度、上式(1)の状態から行列Tの決定処理を開始してもよい。本実施形態ではステップS103の処理がランダムに実行されるため、試行回数を増やすことによって条件を満たす行列Tを決定できる蓋然性を高くできる。
【0075】
ただし処理回路100は、未決定行のうち、候補成分が最も少ない行を対象として、候補成分の中から1つの成分を乱数情報を用いて選択する処理を実行してもよい。このようにすれば、条件を満たす行列Tを確実に決定することが可能になる。
【0076】
例えば図10の状態では、第2行における候補成分の数は、σ24、σ26、σ27、σ28の4個である。同様に、第3行~第8行の候補成分数は、それぞれ4,5,5,5,4,4となる。よって2回目の行選択において、演算部131は、第2行、第3行、第7行、第8行のいずれかを選択する。これ以降も同様であり、演算部131は、禁止成分更新後の各行の候補成分の数をカウントし、カウント結果が最小の行を優先して処理対象とする。なお、以下では候補成分の数を候補数と表記する。
【0077】
上式(1)に示したように、本実施形態では行列Tの所与の行における禁止成分の組と、他の行における禁止成分の組は一致しない。そのため、所与の行の候補成分の1つが選択された場合、候補数が減少する行と、対象となる列が元々禁止成分であったため候補数が減少しない行とが発生する。候補数が少ない行を優先的に選択していけば、2行以上の候補数が同時に0となることを回避可能である。
下式(3)は、図9のS102~S105の処理を繰り返すことによって取得される行列Tの一例である。下式(3)に示す行列Tは、上述した条件(A)~(C)を満たす。
【数3】
【0078】
全ての行を対象とした処理が完了したため、演算部131はステップS105においてYesと判定する。よって演算部131は、下式(4)に基づいて、第2選択順を表すPN+1を決定する。下式(4)に示すように、P=(2,3,4,5,6,7,8,1)である場合、PN+1=(6,5,1,7,8,2,4,3)である。
【数4】
【0079】
選択順設定回路130は、設定した第2選択順に基づく信号を、マルチプレクサー120及びスイッチ信号生成回路140に出力する。これにより表示ムラが視認されにくいマルチプレクス駆動を実現することが可能になる。
【0080】
2.2 処理回路の具体的な構成例
図11は、演算部131の具体的な構成例である。演算部131は、n個の候補配列と、1つの使用済管理配列と、n個のAND回路AN1~ANnと、候補数比較部132と、決定部133と、選択順設定部134と、を含む。ただし、演算部131は図11の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。例えばAND回路の数はn個に限定されず、1個のAND回路が時分割に用いられてもよい。
【0081】
演算部131は、行列Tに対応するn個の候補配列を保持する。1つの候補配列はnビットのデータであり、例えばn個のフリップフロップを用いて管理される。候補配列1~候補配列8は、それぞれ上式(1)に示した状態の行列Tの第1行~第8行に対応する。例えば行列Tの第1行における禁止成分は、a18、a11、a12の3つであるため、候補配列1の1ビット目、2ビット目、8ビット目の値が0に設定される。候補配列2~候補配列8についても同様である。
【0082】
また演算部131は、ステップS104に示した禁止成分の更新処理を行うための使用済管理配列を保持する。使用済管理配列はnビットのデータであり、例えばn個のフリップフロップを用いて管理される。行列Tの決定処理の開始時には、使用済管理配列の全てのビットは1に設定されている。
【0083】
演算部131は、AND回路AN1~AN8を含む。AND回路AN1は、候補配列1と使用済管理配列の各ビットについてのAND演算を行い、演算結果である8ビットのデータである配列を、候補数比較部132に出力する。AND回路AN2~AN8についても同様であり、候補配列2~候補配列8のそれぞれと、使用済管理配列の各ビットについてのAND演算を行い、8ビットの配列を出力する。
【0084】
候補数比較部132は、AND回路AN1から出力される8ビットの配列について、当該配列に含まれる値が1であるビット数を、候補数としてカウントする。候補数比較部132は、AND回路AN2~AN8から出力される各配列についても同様に、候補数のカウント処理を行う。候補数比較部132は、候補数が最小となる配列を1つ選択し、選択した配列を決定部133に出力する。
【0085】
決定部133は、候補数比較部132から出力された配列のうち、値が1であるビットのいずれか1つを、乱数情報に基づいて選択する処理を行う。決定部133は、選択結果である決定配列を出力する。また決定部133は、決定した情報に基づいて使用済管理配列の更新処理を行う。
【0086】
選択順設定部134は、決定部133から出力されるn個の決定配列と、第1選択順とに基づいて、第2選択順を設定する。
【0087】
以下、具体的な処理手順について説明する。図11に示すように、初期状態における使用済管理配列は全てのビットが1である。そのため、AND回路AN1~AN8の出力である8個の配列は、候補配列1~候補配列8と同様となる。よって、候補数は全ての配列において5つとなるため、候補数比較部132は任意の配列を決定部133に出力する。例えば候補数比較部132は、行列Tの第1行に対応する候補配列1を出力する。
【0088】
決定部133は、5つの候補成分のうちから1つを決定する。例えば決定部133は候補数である5を乱数発生回路136に出力する。乱数発生回路136は、1以上5以下の整数をランダムに返信する。例えば決定部133は、乱数発生回路136から乱数情報として3を取得し、候補配列1に含まれる値が1のビットのうち、3ビット目を選択する。この場合、決定部133は、図10の例と同様に、σ15に対応する5ビット目の値を1に決定する。決定部133は、決定配列1として[0,0,0,0,1,0,0,0]を出力する。
【0089】
また、決定部133は、候補配列1の5ビット目が選択されたため、各配列の5ビット目を使用済とする。具体的には、決定部133は、使用済管理配列の5ビット目を1から0に変更する処理を行う。以上の処理が、図9のステップS102~S104の1回目の処理に相当する。
【0090】
図12は、2回目のステップS102~S104の処理を説明する図である。上述したように、使用済管理配列の5ビット目が0に変更されている。そのため、AND回路AN1~AN8から出力される配列は、いずれも5ビット目が0となる。即ち、「乱数情報を用いて選択された候補成分が第q列だったとき、未決定行の第q列の成分を禁止成分に設定する」というステップS104の処理は、使用済管理配列のqビット目の更新、及び候補配列と使用済管理配列のAND演算とによって実現されてもよい。
【0091】
候補数比較部132は、AND回路AN1~AN8の出力のそれぞれを対象として、値が1であるビット数を、候補数としてカウントする。ただし、候補配列1については処理済みであるため、候補数のカウントは不要である。ここでは、候補数4が最小となるため、候補配列2、3、7、8のいずれかが決定部133に出力される。
【0092】
例えば候補数比較部132が候補配列2を出力した場合、決定部133は候補数である4を乱数発生回路136に出力する。乱数発生回路136は、1以上4以下の整数をランダムに返信する。例えば決定部133は、乱数発生回路136から乱数情報として1を取得し、候補配列2に含まれる値が1のビットのうち、1ビット目を選択する。この場合、決定部133は、図10の例と同様に、σ24に対応する4ビット目の値を1に決定する。決定部133は、決定配列2として[0,0,0,1,0,0,0,0]を出力する。また決定部133は、使用済管理配列の4ビット目を1から0に変更する処理を行う。
【0093】
図13は、3回目のステップS102~S104の処理を説明する図である。この段階での使用済管理配列は[1,1,1,0,0,1,1,1]であり、AND回路AN1~AN8の出力は図示する通りである。この場合、候補数3が最小となるため、候補配列7、8のいずれかが決定部133に出力される。
【0094】
例えば候補数比較部132が候補配列7を出力した場合、決定部133は候補数である3を乱数発生回路136に出力する。乱数発生回路136は、1以上3以下の整数をランダムに返信する。例えば決定部133は、乱数発生回路136から乱数情報として3を取得し、候補配列7に含まれる値が1のビットのうち、3ビット目を選択する。この場合、決定部133は、図10の例と同様に、σ73に対応する3ビット目の値を1に決定する。決定部133は、決定配列7として[0,0,1,0,0,0,0,0]を出力する。また決定部133は、使用済管理配列の3ビット目を1から0に変更する処理を行う。これ以降も同様の処理を繰り返すことによって、決定部133は決定配列1~決定配列8を出力する。
【0095】
図14は、決定配列に基づいて第2選択順を設定する処理を説明する図である。選択順設定部134は、決定部133から決定配列1~決定配列8を取得するとともに、第1選択順を表す配列を取得する。第1選択順を表す配列は、8つの成分を含み、各成分が多ビットのデータである。選択順設定部134は、決定配列1と第1選択順とに基づいて、第2選択順の第1成分を決定する。選択順設定部134は、決定配列1と第1選択順を表す配列の各成分を乗算し、乗算結果の総和を求める積和演算を行ってもよい。或いは、選択順設定部134は、決定配列1の何ビット目が1であるかを判定し、第1選択順の対応する成分、ここでは5番目の成分を抽出してもよい。決定配列1と第1選択順とに基づいて、第2選択順の第1成分は6に決定される。第2選択順の第2成分~第8成分についても同様である。
【0096】
3.変形例
3.1 禁止設定の他の例と禁止設定部
上述したように本実施形態では、例えば第1選択順において第iデータ線が第j番目に選択されたとき、第2選択順において第iデータ線、第i-1データ線及び第i+1データ線が第j番目に選択されることを禁止する禁止設定が用いられる。ただし、本実施形態の禁止設定は、第1選択順において第iデータ線が第j番目に選択されたとき、第2選択順において第iデータ線が第j番目に選択されることを禁止するものであればよく、上記の例に限定されない。
【0097】
例えば禁止設定として、第2選択順において第iデータ線が第j番目に選択されることが禁止され、且つ、第i-1データ線及び第i+1データ線が第j番目に選択されることが禁止されない第1設定が用いられてもよい。この場合、行列Tは下式(5)によって表される。下式(5)を用いる場合も同様に、上記条件(A)~(C)を満たすように候補成分を選択する処理を行うことによって、具体的な行列Tを決定する処理が行われる。
【数5】
【0098】
或いは、上述したように、第2選択順において第iデータ線、第i-1データ線及び第i+1データ線が第j番目に選択されることが禁止される第2設定が用いられてもよい。或いは、第2選択順において第iデータ線、第i-1データ線、第i+1データ線、第i-2データ線及び第i+2データ線が第j番目に選択されることが禁止される第3設定が用いられてもよい。第3設定を用いる場合、行列Tは下式(6)によって表される。その他、本実施形態の禁止設定は種々の変形実施が可能である。
【数6】
【0099】
本実施形態における禁止設定は、上述した禁止設定のうちのいずれか1つにあらかじめ決められており、処理回路100は当該禁止設定を固定的に利用してもよい。例えば第2設定を用いる場合、行列Tの初期値は上式(1)で固定である。或いは、候補配列1~候補配列8は、図11に示す例で固定である。
【0100】
ただし、処理回路100は、第1設定と第2設定とを含む複数の設定のうち、いずれかの設定を選択可能な禁止設定部137を含んでもよい。このようにすれば、処理回路100において、複数の設定を適宜切り替えることが可能になる。例えば回路装置10は、ユーザー入力を受け付けるインターフェースを含んでもよい。インターフェースは、例えばハイレベルとローレベルを切り替え可能な1又は複数の端子である。禁止設定部137は、インターフェースを介したユーザー入力を受け付け、当該ユーザー入力に基づいて、禁止設定を切り替える処理を行う。
【0101】
例えば、図8に示す禁止設定メモリー135は、第1設定に対応する行列T1と、第2設定に対応する行列T2を記憶している。T1は上式(5)に対応し、T2は上式(1)に対応する。禁止設定部137は、ユーザー入力に基づいて、T1とT2のいずれかを禁止設定メモリー135から読み出す処理を行う。なお、禁止設定メモリー135に記憶される情報は、候補配列1~候補配列8であってもよいし、禁止成分を特定可能な他の情報であってもよい。
【0102】
また処理回路100は、行列の禁止成分を設定する禁止成分設定部を含んでもよい。ここでの禁止成分設定部は、禁止設定を特定する情報を取得し、当該禁止設定に基づいて行列Tの初期値、又は、図11の候補配列1~候補配列8を生成する処理を行う。具体的には、禁止設定部137が、禁止成分設定部を含んでもよい。或いは、禁止設定部137と禁止成分設定部が別々に設けられ、禁止成分設定部は、禁止設定を特定する情報を禁止設定部137から取得することによって禁止成分を設定してもよい。例えば、禁止設定メモリー135には禁止成分の位置を特定する情報が記憶されており、禁止成分設定部は、当該情報に基づいて行列Tの初期値、又は、図11の候補配列1~候補配列8を生成する処理を行う。
【0103】
3.2 第1選択順及び第2選択順の定義
以上では、例えばP=(4,8,7,5,6,3,2,1,)である場合、第1画素が4番目に選択され、第2画素が8番目に選択される例について説明した。しかし選択順を表すベクトルの定義はこれに限定されない。例えばPが上記例である場合、第1選択順では、1番目に第4画素を選択し、2番目に第8画素を選択すると定義してもよい。
【0104】
第1選択順がP=(4,8,7,5,6,3,2,1,)であり、且つ、禁止設定が上記第2設定である場合、第2選択順では、第3画素、第4画素、第5画素が1番目に選択されることが禁止される。同様に、第7画素、第8画素、第1画素が2番目に選択されることが禁止される。
【0105】
上式(2)と同様に行列TをPにかける演算によってPN+1を求めようとした場合、行列Tの第1行は(X,σ12,σ13,X,σ15,X,σ17,σ18)となる。即ち、第1選択順において第3画素、第4画素、第5画素に対応する成分が禁止成分となり、他の成分が候補成分となる。第2行以降についても同様に、第1選択順に基づいて禁止成分を設定することによって行列Tの初期値が設定されてもよい。ただしこの場合、第1選択順の具体的な内容に応じて、行列Tの初期値が変化してしまう。よって演算部131は、上式(1)に示したTの行成分を、第1選択順に応じて並べ替えることによって、第2選択順を設定してもよい。
【0106】
例えば行列Tの第1行を、第2選択順において1番目に読み出される画素を決定するための情報とする。第1行のσ1qが1であり、他の成分が0である場合、第2選択順では1番目に第q画素が選択される。上述したように、第2選択順において第3画素、第4画素、第5画素が1番目に選択されることを禁止する場合、行列Tの第1行は(σ11,σ12,X,X,X,σ16,σ17,σ18)となる。この禁止成分の組み合わせは上式(1)に示す行列Tの第4行に相当する。同様に、第7画素、第8画素、第1画素が2番目に選択されることを禁止する場合、行列Tの第2行を(X,σ22,σ23,σ24,σ25,σ26,X,X)とすればよい。この禁止成分の組み合わせは上式(1)に示す行列Tの第8行に相当する。
【0107】
図15は、本変形例における演算部131の処理を説明する模式図である。なお図15図16では、説明を簡略化するため、候補配列3~候補配列7を省略している。図15に示すように、行列Tの初期値に対応する候補配列1~候補配列8は、図11と同様である。即ち、行列Tの初期値を第1選択順によらずに共通化することが可能になる。そして演算部131は、第1選択順に基づいて、候補配列1~候補配列8を並べ替える。なお演算部131は、n×n個のフリップフロップを別途用意し、並び替え後の候補配列を、初期の候補配列1~候補配列8とは別に保持してもよい。ただし演算部131は、候補配列を物理的に入れ替える必要はなく、例えば候補配列4が第1行に相当する等の対応関係のみを保持してもよい。なお、AND回路AN1~AN8、候補数比較部132、決定部133の各構成と、処理の順序については図11図13と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0108】
図16は、8個の候補配列全てに対する処理が完了し、決定配列1~決定配列8が求められた状態を説明する図である。上述したように、ここでは候補配列4に基づいて決定配列1が求められる。同様に、候補配列8に基づいて決定配列2が求められ、候補配列1に基づいて決定配列8が求められる。
【0109】
決定配列1に基づいて第2選択順の1番目に選択される画素が決定される。具体的には決定配列1が[0,0,0,0,0,1,0,0]であるため、第2選択順で1番目に選択される画素は第6画素となる。同様に2番目に第3画素が選択され、8番目に第5画素が選択される。即ち、図15図16に示す実施形態では、決定配列から直接的に第2選択順を設定できるため、図11に示した選択順設定部134を省略可能である。
【0110】
なお、以上ではまず第1選択順に基づいて行列Tの行の並べ替えを行い、その後、並べ替え後の行列を初期値として、上記条件(A)~(C)を満たす行列を決定する処理が行われる例について説明した。ただし、まず上式(1)を初期値として上記条件(A)~(C)を満たす行列Tを決定する処理が行われ、その後、第1選択順に基づいて決定後の行列Tを並べ替える処理が行われてもよい。
【0111】
図17は、この場合の処理を説明する図である。図17に示すように、決定部133は、図11図13と同様の処理を行うことによって決定配列1~決定配列8を求める。その後、決定配列1~決定配列8に対して、第1選択順に基づく並べ替えが行われることによって、第2選択順が設定される。即ち、本変形例においては、元々の行列Tの第何行が、第2選択順の何番目の成分を決定する情報であるかという対応関係が、第1選択順に基づいて決定されればよく、具体的な処理手順については種々の変形実施が可能である。
【0112】
上述したように、本実施形態に係る処理回路100は、第1選択順と行列とを用いて、第2選択順を求める。ここでの「第1選択順と行列とを用いて」とは、上式(2)のように第1選択順と行列との乗算を表してもよいし、本変形例において説明したように、第1選択順に基づいて行列の成分を入れ替える処理を表してもよい。
【0113】
3.3 候補配列及び決定配列の定義
以上では、決定配列1~決定配列8がそれぞれ8ビットのデータである例について説明した。ただし決定配列は、8ビットのうちのいずれか1ビットが1であり、他の7ビットが0となる配列である。よって決定配列として、1つの成分を有する多ビットのデータが用いられてもよい。なお成分が1つとなるため、厳密には配列ではなくなるが、以下では説明の便宜上、決定配列に相当する1成分の情報についても決定配列と表記する。
【0114】
例えば図12に示す決定配列2は[0,0,0,1,0,0,0,0]であるため、当該決定配列2は「8ビット中の4ビット目が1である」ことを表すデータによって表現可能である。例えば決定配列2は、10進数の4を表す4ビットのデータ“0100”であってもよい。或いは、決定配列の8つのビットを、0ビット目~7ビット目と考えた場合、上記決定配列2は3ビットのデータ“011”であってもよい。
【0115】
また候補配列についても8ビットのデータには限定されない。例えば候補配列1~候補配列8は、5つの成分を有し、各成分が多ビットのデータであってもよい。例えば候補配列1は、[3,4,5,6,7]という5つの成分を有し、これにより、1、2、8番目が禁止成分であり、3~7番目が候補成分であることが特定される。広義には、候補配列は、nから禁止成分の数を引いた数の成分を含む配列である。この場合の決定配列は、候補配列の5つの成分のうちのいずれか1つの値が維持され、他の4つの成分が0に設定される情報であってもよい。或いは決定配列は、上述したように1つの成分によって表現される情報であってもよい。
【0116】
3.4 列単位での処理
本実施形態における第2選択順を決定する処理とは、条件(A)~(C)を満たすような行列Tを決定する処理である。本実施形態の手法においては、このような行列Tが決定されればよく、決定手順には変形実施が可能である。具体的には、行列Tは列単位で処理が行われてもよい。
【0117】
具体的には、処理回路100は、図9のステップS102において、行列に含まれるいずれかの列を選択する処理を行う。そして行列の第q列(qは1以上n以下の整数)に含まれる成分のうち、禁止成分以外の成分を候補成分としたとき、図9のステップS103において、処理回路100は、第q列の候補成分の中から1つの成分を乱数情報を用いて選択する。そして選択された候補成分が第p行だったとき、ステップS104において処理回路100は、行列のうち乱数情報に基づく候補成分の選択が行われていない列である未決定列の第p行の成分を、禁止成分に設定する。なお、第q列のうち、選択されなかった候補成分についても0に設定される。
【0118】
このように列単位での処理を行った場合であっても、条件(A)~(C)を満たす行列Tを決定可能である。
【0119】
行列Tが決定されれば、上述した処理によって第2選択順を設定できる。即ち、処理回路100は、第1~第n列について、候補成分の中から1つの成分を乱数情報を用いて選択する処理を行い、処理後の行列と第1選択順とに基づいて、第2選択順を決定する。例えば決定された行列Tを第1選択順に対応するPにかけることによって、第2選択順を設定できる。
【0120】
また、図15図17を用いた変形例においても、演算部131は、上式(1)の行列、又は、上式(1)を第1選択順に応じて並べ替えた行列を対象として、条件(A)~(C)を満たすように候補成分の値を決定することによって、具体的な行列Tを決定する処理を行う。その際の行列の決定処理が、列を単位として実行されることは妨げられない。
【0121】
なお処理回路100は、上記未決定列のうち、候補成分が最も少ない列を対象として、候補成分の中から1つの成分を乱数情報を用いて選択する。即ち演算部131は、ステップS102の列決定処理において、候補数が最も少ない列を選択する。このようにすれば、条件を満たす行列を確実に決定することが可能になる。
【0122】
また、1つの行列Tを決定する際に、行単位での処理と列単位での処理とを組み合わせてもよい。例えば、1回目のステップS102においては行を選択し、2回目のステップS102においては列を選択するといったように、行又は列を交互に選択してもよい。その他、行又は列の指定については種々の変形実施が可能である。
【0123】
また、以上では第1選択順及び第2選択順を表すP及びPN+1が列ベクトルである例を説明したが、P及びPN+1は行ベクトルであってもよい。行ベクトルの第q列は、例えば第q画素が何番目に選択されるかを特定する情報である。そしてPN+1は、Pと行列Tとに基づいて、下式(7)によって決定されてもよい。行列Tの第q列とは、第2選択順における第q画素の選択順を選択するための情報である。
【数7】
【0124】
この場合も同様であり、上記条件(A)~(C)を満たす行列Tを決定できればよく、行列Tの決定処理は行を指定して行われてもよいし、列を指定して行われてもよい。
【0125】
また、以上では第1選択順は、第2選択順の1つ前の選択順である例について説明した。即ち、第2選択順は、1つ前の選択順、狭義には1つ前の水平走査期間における選択順に基づいて設定される。しかし本実施形態の手法はこれに限定されない。例えば第1選択順は、第2選択順のkライン(kは2以上の整数)前の選択順であってもよい。或いは第1選択順は、第2選択順の1フレーム前の選択順であってもよい。
【0126】
4.電気光学装置、電子機器
本実施形態の手法は、上述した回路装置10と、電気光学パネル20と、を含む電気光学装置30に適用できる。また本実施形態の手法は、上述した回路装置10を含む電子機器300に適用できる。
【0127】
図18は、表示ドライバーである回路装置10を含む電気光学装置30の構成例である。電気光学装置30は、回路装置10と、電気光学パネル20を含む。
【0128】
電気光学パネル20は、例えば上述したようにアクティブマトリックス型の液晶表示パネルである。例えば回路装置10はフレキシブル基板に実装され、そのフレキシブル基板が電気光学パネル20に接続され、フレキシブル基板に形成された配線によって回路装置10のデータ電圧出力端子TD1~TDtと電気光学パネル20のデータ電圧入力端子TI1~TItとが接続される。或いは、回路装置10はリジッド基板に実装され、リジッド基板と電気光学パネル20とがフレキシブル基板により接続され、リジッド基板及びフレキシブル基板に形成された配線によって回路装置10のデータ電圧出力端子TD1~TDtと電気光学パネル20のデータ電圧入力端子TI1~TItとが接続されてもよい。
【0129】
図19は、回路装置10を含む電子機器300の構成例である。電子機器300は、処理装置310、表示コントローラー320、回路装置10、電気光学パネル20、記憶部330、通信部340、操作部360を含む。記憶部330は記憶装置又はメモリーとも呼ぶ。通信部340は通信回路又は通信装置とも呼ぶ。操作部360は操作装置とも呼ぶ。電子機器300の具体例としては、例えばプロジェクターやヘッドマウントディスプレイ、携帯情報端末、車載装置、携帯型ゲーム端末、情報処理装置等の、表示装置を搭載する種々の電子機器を想定できる。車載装置は、例えばメーターパネル、カーナビゲーションシステム等である。
【0130】
操作部360は、ユーザーからの種々の操作を受け付けるユーザーインターフェースである。例えば、ボタンやマウスやキーボード、電気光学パネル20に装着されたタッチパネル等である。通信部340は、画像データや制御データの入出力を行うデータインターフェースである。通信部340は、例えば無線LANや近距離無線通信等の無線通信インターフェース、或いは有線LANやUSB(Universal Serial Bus)等の有線通信インターフェースである。記憶部330は、例えば通信部340から入力されたデータを記憶したり、或いは、処理装置310のワーキングメモリーとして機能したりする。記憶部330は、例えばRAMやROM等のメモリー、或いはHDD(hard disk drive)等の磁気記憶装置、或いはCDドライブ、DVDドライブ等の光学記憶装置等である。表示コントローラー320は、通信部340から入力された或いは記憶部330に記憶された画像データを処理して回路装置10に転送する。回路装置10は、表示コントローラー320から転送された画像データに基づいて電気光学パネル20に画像を表示させる。処理装置310は、電子機器300の制御処理及び、種々の信号処理等を行う。処理装置310は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-processing unit)等のプロセッサー、或いはASIC等である。なお電子機器300がプロジェクターである場合、電子機器300は更に光源と光学系とを含んでもよい。
【0131】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、電気光学装置、電子機器等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0132】
AM1~AMt…アンプ回路、AN1~AN8…AND回路、DAC1~DACt…D/A変換回路、DL1~DLu…データ線、DML1~DMLt…デマルチプレクサー、DT2~DTt…表示データ、G1~G4…走査線、SEL1~SEL4…デマルチプレクス用スイッチ信号、SV1~SVt…データ信号供給線、SW1~SWu…スイッチ素子、TD1~TDt…データ電圧出力端子、TI1~TIt…データ電圧入力端子、TSO…出力端子、TSI…入力端子、VD1~VDt…データ電圧、10…回路装置、20…電気光学パネル、30…電気光学装置、40…走査線駆動回路、100…処理回路、110…ラインラッチ、120…マルチプレクサー、130…選択順設定回路、131…演算部、132…候補数比較部、133…決定部、134…選択順設定部、135…禁止設定メモリー、136…乱数発生回路、137…禁止設定部、140…スイッチ信号生成回路、200…データ線駆動回路、210…階調電圧生成回路、300…電子機器、310…処理装置、320…表示コントローラー、330…記憶部、340…通信部、360…操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19