IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-電力変換装置 図1
  • 特許-電力変換装置 図2
  • 特許-電力変換装置 図3
  • 特許-電力変換装置 図4
  • 特許-電力変換装置 図5
  • 特許-電力変換装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20240214BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240214BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240214BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240214BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
H05K7/20 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020007814
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021114589
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】林 宜宏
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-310987(JP,A)
【文献】特開2019-129293(JP,A)
【文献】特開2014-013878(JP,A)
【文献】特開2010-219264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
H02M 7/42 - 7/98
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子(320)と、前記電子素子の搭載される搭載面(340a,350a)を有する搭載部(340,350)と、前記搭載部の一部と前記電子素子を封止するとともに、前記搭載面の裏側の露出面(340b,350b)を露出させる封止部材(330)と、を備える電子モジュール(310)と、
前記露出面、および、前記露出面に連続する前記封止部材の主面(330a、330b)を含む、前記電子モジュールのモジュール面(310a,310b)側に設けられる放熱部材(700)と、
前記放熱部材に前記電子素子と前記搭載部の並ぶ並び方向で連結される冷却体(630)と、を有し、
前記放熱部材は、前記冷却体の冷却面(640a,650b)、前記露出面、および、前記主面に接着する接着剤であり、
前記放熱部材における中央部位(711,721)が、前記並び方向に関して前記露出面の一部に重なり、
前記放熱部材における、前記中央部位から前記並び方向に直交する直交方向に離れた外周部位(712,722)が、前記並び方向に関して前記露出面の残りと前記主面に重なり、
前記外周部位の前記並び方向の厚さが、前記中央部位の並び方向の厚さより厚くなっており、
前記外周部位における前記並び方向に離間して並ぶ第1外面(712a,722a)と第2外面(712b,722b)のうちの少なくとも一方の表面粗さが、前記中央部位における前記並び方向に離間して並ぶ第3外面(711a,721a)と第4外面(711b,721b)のうちの少なくとも一方の表面粗さよりも粗くなっている電力変換装置。
【請求項2】
前記中央部位の組成と前記外周部位の組成とが異なることで、
前記中央部位の熱抵抗が前記外周部位の熱抵抗よりも低くなっている請求項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は放熱部材を備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体モジュールは半導体素子、樹脂封止部、絶縁部材、および、導体部材を有する。樹脂封止部は半導体素子を封止している。樹脂封止部の表面は絶縁部材によって覆われている。絶縁部材の外面に導体部材が設けられている。この導体部材に冷却フィンが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-105884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導体部材の表面と冷却フィンの表面との間に導体部材と冷却フィンとを固定する接着剤が設けられている。これら2つの表面は平坦形状を成している。そのために半導体モジュールの導体部材と冷却フィンとの間で接着剤の厚さが均一になっている。この接着剤(放熱部材)の端部に応力集中が起きると、この端部(外周部位)に損傷が生じる虞がある。
【0005】
そこで本明細書に記載の開示は、放熱部材の外周部位が損傷しにくくなった電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の1つは、
電子素子(320)と、電子素子の搭載される搭載面(340a,350a)を有する搭載部(340,350)と、搭載部の一部と電子素子を封止するとともに、搭載面の裏側の露出面(340b,350b)を露出させる封止部材(330)と、を備える電子モジュール(310)と、
露出面、および、露出面に連続する封止部材の主面(330a、330b)を含む、電子モジュールのモジュール面(310a,310b)側に設けられる放熱部材(700)と、
放熱部材に電子素子と搭載部の並ぶ並び方向で連結される冷却体(630)と、を有し、
放熱部材は、冷却体の冷却面(640a,650b)、露出面、および、主面に接着する接着剤であり、
放熱部材における中央部位(711,721)が、並び方向に関して露出面の一部に重なり、
放熱部材における、中央部位から並び方向に直交する直交方向に離れた外周部位(712,722)が、並び方向に関して露出面の残りと主面に重なり、
外周部位の並び方向の厚さが、中央部位の並び方向の厚さより厚くなっており、
外周部位における並び方向に離間して並ぶ第1外面(712a,722a)と第2外面(712b,722b)のうちの少なくとも一方の表面粗さが、中央部位における並び方向に離間して並ぶ第3外面(711a,721a)と第4外面(711b,721b)のうちの少なくとも一方の表面粗さよりも粗くなっている。
【0007】
これによれば外周部位(712,722)に作用する電子モジュール(310)と冷却体(630)の熱膨張に起因するせん断応力が放熱部材(700)の厚さに反比例するために小さくなりやすくなっている。そのために外周部位(712,722)が損傷しにくくなっている。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車載システムを表すブロック図である、
図2】パワーモジュールの側面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4】変形例を説明するための断面図である。
図5】変形例を説明するための断面図である。
図6】変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に基づいて電力変換装置500の設けられる車載システム100を説明する。車載システム100は電気自動車用のシステムを構成している。車載システム100はバッテリ200、電力変換装置500、モータ400、および、複数のECU800を有する。
【0012】
複数のECU800はバス配線を介して相互に信号を送受信している。複数のECU800は協調して電気自動車を制御している。複数のECU800の制御により、バッテリ200のSOCに応じたモータ400の回生と力行が制御される。ECU800はelectronic control unitの略である。SOCはstate of chargeの略である。
【0013】
バッテリ200は複数の二次電池を有する。これら複数の二次電池は直列接続された電池スタックを構成している。この電池スタックのSOCがバッテリ200のSOCに相当する。二次電池としてはリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、および、有機ラジカル電池などを採用することができる。
【0014】
電力変換装置500の備えるインバータは、バッテリ200の正極と電気的に接続されたPバスバと、バッテリ200の負極と電気的に接続されたNバスバとの間で並列接続された3相以上のレグを備えている。各相のレグはPバスバとNバスバとの間で直列接続された複数のスイッチ素子320を備えている。スイッチ素子320は電子素子に相当する。
【0015】
またこれら複数のスイッチ素子320は封止部材330で封止され、図3に示すy方向に厚さの薄い複数の電子モジュール310を構成している。複数のスイッチ素子320は複数のECU800のうちのMGECUによってPWM制御される。
【0016】
電力変換装置500がPWM制御されることで、バッテリ200から供給された直流電力が交流電力に変換される。この交流電力がモータ400に供給される。また、モータ400での発電によって生じた交流電力が電力変換装置500で直流電力に変換される。この直流電力がバッテリ200や他の図示しない車載機器に供給される。なお、電力変換装置500はインバータの他に、入力される直流電力の電圧レベルを昇降圧するコンバータを備えていてもよい。
【0017】
<電力変換装置の構成>
次に、電力変換装置500の構成を説明する。以下において直交の関係にある3方向をx方向、y方向、z方向とする。y方向は並び方向に相当する。
【0018】
図2および図3に示すように電力変換装置500はこれまでに説明した回路の構成要素の他に、冷却器600、第1放熱部材710、および、第2放熱部材720を有する。また図示しないが電力変換装置500はケース、および、基板を有する。
【0019】
このケースの中に電子モジュール310、冷却器600、第1放熱部材710、第2放熱部材720、および、基板が収納されている。電子モジュール310、冷却器600、第1放熱部材710、および、第2放熱部材720によってパワーモジュール300が構成されている。以下、第1放熱部材710と第2放熱部材720をまとめて適宜放熱部材700と示す。
【0020】
<電子モジュール>
電子モジュール310はこれまでに説明したスイッチ素子320と封止部材330の他に、第1搭載部340と第2搭載部350を有している。
【0021】
スイッチ素子320はy方向に厚さの薄い扁平形状を成している。スイッチ素子320はy方向に離間した第1放熱面320aと第2放熱面320bを有している。
【0022】
第1搭載部340と第2搭載部350は銅やその合金などの熱伝導率の高い金属材料で形成されたy方向に厚さの薄い扁平形状を成している。第1搭載部340はy方向に離間した第1搭載面340aと第1露出面340bを有している。第2搭載部350はy方向に離間した第2搭載面350aと第2露出面350bを有している。なお、第1搭載部340と第2搭載部350は金属材料でなくてもよい。
【0023】
スイッチ素子320は第1放熱面320aが第1搭載面340aに対向する態様で第1搭載部340とy方向で並んでいる。スイッチ素子320は第2放熱面320bが第2搭載面350aに対向する態様で第2搭載部350とy方向で並んでいる。スイッチ素子320は第1搭載部340と第2搭載部350に図示しないはんだなどを介して連結されている。これらスイッチ素子320と、第1搭載部340および第2搭載部350の一部が封止部材330によって封止されている。
【0024】
封止部材330は樹脂製でスイッチ素子320と第1搭載部340および第2搭載部350の一部を封止した状態でy方向の厚さの薄い扁平形状を成している。封止部材330はy方向に離間した第1主面330aと第2主面330bを有している。第1主面330aから第1露出面340bが露出されている。第2主面330bから第2露出面350bが露出されている。
【0025】
このようにして構成された電子モジュール310はy方向に厚さの薄い扁平形状を成している。電子モジュール310はy方向に離間した第1モジュール面310aと第2モジュール面310bを有する。第1モジュール面310aは第1露出面340bと第1主面330aを有する。第1露出面340bはy方向周りの周回りに第1主面330aに囲まれている。第1露出面340bと第1主面330aとがy方向に直交する方向で面一になっている。
【0026】
同様に第2モジュール面310bは第2露出面350bと第2主面330bを有する。第2露出面350bはy方向周りの周回りに第2主面330bに囲まれている。第2露出面350bと第2主面330bとがy方向に直交する方向で面一になっている。
【0027】
<冷却器>
図3図6に示すように冷却器600は供給管610、排出管620、および、複数の中継管630を有する。供給管610と排出管620は複数の中継管630を介して連結されている。供給管610に冷媒が供給されると、冷媒は複数の中継管630を介して供給管610から排出管620へと流されるようになっている。
【0028】
供給管610、排出管620、および、複数の中継管630はアルミニウムなどの熱伝導率の高い金属材料で形成されている。供給管610、排出管620、および、複数の中継管630の線熱膨張係数は第1搭載部340および第2搭載部350の線熱膨張係数よりも大きくなっている。中継管630は冷却体に相当する。
【0029】
供給管610と排出管620はy方向に延びている。供給管610と排出管620はx方向に離間して並んでいる。複数の中継管630それぞれは供給管610から排出管620に向かってx方向に沿って延びている。複数の中継管630はy方向に離間して並んでいる。
【0030】
以下説明を簡便にするために、隣り合って並ぶ中継管630を第1中継管640と第2中継管650と示す。第1中継管640は第2中継管650と対向する第1冷却面640aを有している。第2中継管650は第1中継管640と対向する第2冷却面650bを有している。
【0031】
<パワーモジュール>
図3に示すように隣り合う複数の第1中継管640と第2中継管650の間に空隙が構成されている。これら空隙それぞれに電子モジュール310とともに第1放熱部材710と第2放熱部材720が配置されている。電子モジュール310は第1放熱部材710と第2放熱部材720を介して第1中継管640と第2中継管650の間に設けられている。
【0032】
第1放熱部材710は第1冷却面640aと第1モジュール面310aそれぞれに接触する態様で、第1中継管640と電子モジュール310の間に設けられている。第2放熱部材720は第2モジュール面310bと第2冷却面650bそれぞれに接触する態様で、第2中継管650と電子モジュール310の間に設けられている。
【0033】
第1放熱部材710と第2放熱部材720はシリコンやエポキシなどの樹脂材料を含む部材である。第1放熱部材710と第2放熱部材720には酸化アルミナや銀などの導電フィラーが含まれていてもよい。第1放熱部材710と第2放熱部材720は接着性を有していても有していなくてもよい。また第1放熱部材710と第2放熱部材720は硬化性を有していても有していなくてもよい。第1放熱部材710と第2放熱部材720はゲル状であってもよい。
【0034】
第1モジュール面310a、第2モジュール面310b、第1冷却面640a、および、第2冷却面650bには意図しない表面凹凸が形成されている。放熱部材700がy方向に押し縮められると、放熱部材700がこの表面凹凸に積極的に接触しやすくなっている。そのために電子モジュール310で発生した熱が放熱部材700を介して中継管630に効率的に放熱されやすくなっている。
【0035】
またパワーモジュール300はケースの中で基板とz方向に離間して並んでいる。電子モジュール310の封止部材330からスイッチ素子320に接続されたゲート端子やセンサ端子の一部が露出されている。基板には上記したMGECUが搭載されている。これら端子は基板に向かって延び、基板に電気的および機械的に接続されている。
【0036】
<第1中継管と第2中継管の構成>
第1中継管640は第1基部641と第1基部641に連結される第1周縁部642および第1突出部643を有する。第1基部641はy方向に厚さの薄い扁平形状を成している。第1周縁部642は第1基部641の端からy方向に直交する直交方向に離れて延びている。第1突出部643は第1基部641から電子モジュール310に向かってy方向に延びている。
【0037】
第1周縁部642は第1モジュール面310aとy方向に離間して並ぶ第1並列面642aを有している。第1突出部643は第1モジュール面310aにy方向で並ぶ第2並列面643aと、第1並列面642aと第2並列面643aとを連結する第1連結面643bを有している。これら第1並列面642a、第2並列面643a、および、第1連結面643bによって第1冷却面640aが構成されている。図3図6においては第1基部641と第1周縁部642の境界を破線で示している。また図3および図4においては第1基部641と第1突出部643の境界を一点鎖線で示している。
【0038】
同様に第2中継管650は第2基部651と第2基部651に連結される第2周縁部652および第2突出部653を有する。第2基部651はy方向に厚さの薄い扁平形状を成している。第2周縁部652は第2基部651の端からy方向に直交する直交方向に離れて延びている。第2突出部653は第2基部651から電子モジュール310に向かってy方向に延びている。
【0039】
第2周縁部652は第2モジュール面310bとy方向に離間して並ぶ第3並列面652bを有している。第2突出部653は第2モジュール面310bにy方向で並ぶ第4並列面653bと、第3並列面652bと第4並列面653bとを連結する第2連結面653cを有している。これら第3並列面652b、第4並列面653b、および、第2連結面653cによって第2冷却面650bが構成されている。図3図6においては第2基部651と第2周縁部652の境界を破線で示している。また図3および図4においては第2基部651と第2突出部653の境界を一点鎖線で示している。
【0040】
<並列面とモジュール面>
図3に示すように第1モジュール面310aは第1並列面642aおよび第2並列面643aとy方向に離間して並んでいる。第1並列面642aと第1モジュール面310aとのy方向の離間距離は、第2並列面643aと第1モジュール面310aとのy方向の離間距離よりも長くなっている。
【0041】
同様に第2モジュール面310bは第3並列面652bおよび第4並列面653bとy方向に離間して並んでいる。第3並列面652bと第2モジュール面310bとのy方向の離間距離は第4並列面653bと第2モジュール面310bとのy方向の離間距離よりも長くなっている。
【0042】
<放熱部材の厚さ>
これまでに説明したように第1放熱部材710は第1冷却面640aと第1モジュール面310aに接触する態様で、第1中継管640と電子モジュール310の間に設けられている。以下、説明を簡便とするために第1放熱部材710における第1並列面642aと第1モジュール面310aとの間の部位を第1外周部位712と示す。第1放熱部材710における第2並列面643aと第1モジュール面310aとの間の部位を第1中央部位711と示す。図3および図4においては第1中央部位711と第1外周部位712との境界を破線で示している。
【0043】
第1外周部位712のy方向の厚さは第1中央部位711のy方向の厚さよりも厚くなっている。
【0044】
同様に第2放熱部材720は第2冷却面650bと第2モジュール面310bに接触する態様で、第2中継管650と電子モジュール310の間に設けられている。第2放熱部材720における第3並列面652bと第2冷却面650bとの間の部位を第2外周部位722と示す。第2放熱部材720における第4並列面653bと第2冷却面650bとの間の部位を第2中央部位721と示す。図3および図4においては第2中央部位721と第2外周部位722の境界を破線で示している。
【0045】
第2外周部位722のy方向の厚さは第2中央部位721のy方向の厚さよりも厚くなっている。
【0046】
なお、第1露出面340bにおけるy方向に直交する方向の端間の距離は第2並列面643aにおけるy方向に直交する方向の端間の距離より短くてもよい。同様に第2露出面350bにおけるy方向に直交する方向の端間の距離は第4並列面653bにおけるy方向に直交する方向の端間の距離よりも短くてもよい。
【0047】
<作用効果>
これまでに説明したように第1放熱部材710は第1冷却面640aと第1モジュール面310aそれぞれに接触する態様で、第1中継管640と電子モジュール310の間に設けられている。第1冷却面640aはアルミニウムなどの熱伝導率の高い金属材料で形成されている。第1モジュール面310aは銅やその合金などの熱伝導率の高い金属材料と樹脂材料から形成されている。第1中継管640と電子モジュール310の線熱膨張係数とが異なっている。そのために第1放熱部材710には第1中継管640と電子モジュール310の線熱膨張係数の差に起因するせん断応力が生じている。
【0048】
特に第1モジュール面310aの備える第1主面330aから第1露出面340bが露出されている。第1露出面340bを備える第1搭載部340の線熱膨張係数は第1冷却面640aを備える第1中継管640の線熱膨張係数よりも小さくなっている。そのために第1放熱部材710に第1中継管640と第1搭載部340の線熱膨張係数の差に起因するせん断応力が生じやすくなっている。外周部位は中央部位よりも熱膨張時の変化量が大きく、応力集中が起こりやすい。そのために外周部位のせん断応力は中央部位のせん断応力よりも大きくなりやすくなっている。
【0049】
しかしながらこれまでに説明したように第1外周部位712のy方向の厚さは、第1中央部位711のy方向の厚さよりも厚くなっている。せん断応力の大きさは第1放熱部材710のy方向の厚さに反比例する性質を有している。そのために第1外周部位712のせん断応力が小さくなりやすくなっている。第1外周部位712が損傷しにくくなっている。
【0050】
第1放熱部材710が接着性を有さないゲル状部材である場合、第1外周部位712が第1モジュール面310aと第1冷却面640aとの間から漏れ出しにくくなっている。第1放熱部材710が接着性を有する部材である場合、第1外周部位712が第1モジュール面310aと第1冷却面640aから剥離されにくくなっている。
【0051】
また第1中央部位711のy方向の厚さが第1外周部位712のy方向の厚さよりも薄くなっている。第1中央部位711の熱抵抗が第1外周部位712の熱抵抗よりも低くなっている。第1中央部位711の設けられる第1基部641で第1外周部位712の設けられる第1周縁部642よりも放熱されやすくなっている。
【0052】
なお、第2放熱部材720においても第1放熱部材710と同様の作用効果を奏するのでその記載を省略する。
【0053】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は上記した実施形態になんら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0054】
(第1変形例)
図4に示すように第1並列面642aと第2並列面643aとの表面粗さに差異があってもよい。例えば第1周縁部642に陽極酸化が施され、第1並列面642aに陽極酸化被膜が形成されていてもよい。陽極酸化被膜とは電解質を加えた水溶液中で金属を陽極として電流を流した際、陽極上に形成される酸化被膜のことである。第1周縁部642に陽極酸化が施されると、第1並列面642aに微小な細孔を有する酸化被膜が形成される。すなわち第1並列面642aの表面に意図的に凹凸形状が形成される。なお、第1並列面642aに陽極酸化被膜が形成されずにレーザー加工やショットブラストなどによって表面に凹凸形状が形成されていてもよい。
【0055】
この凹凸形状の分、第1並列面642aの表面粗さが第2並列面643aの表面粗さよりも大きくなっている。第1放熱部材710における第1並列面642aに接触する第1対向面712aの表面粗さが第2並列面643aに接触する第3対向面711aの表面粗さより大きくなっている。
【0056】
第1対向面712aの第1並列面642aとの単位面積当たりの接触面積が、第3対向面711aの第2並列面643aとの単位面積当たりの接触面積よりも大きくなっている。そのために第1外周部位712が第1周縁部642から離れにくくなっている。また第1並列面642aとの単位面積あたりの接触面積が大きくなっている分、第1周縁部642で放熱されやすくなっている。
【0057】
また図示しないが第1並列面642aの表面に凹凸形状が形成されずに、第1並列面642aにy方向で対向する第1モジュール面310aの部位に凹凸形状が形成されていてもよい。その場合第1対向面712aにy方向で対向する第2対向面712bの表面粗さが第3対向面711aにy方向で対向する第4対向面711bの表面粗さよりも大きくなっていてもよい。第1外周部位712が電子モジュール310から離れにくくなっている。
【0058】
なお第3並列面652bに陽極酸化被膜やレーザー加工やショットブラストなどによって凹凸形状が形成されることで第3並列面652bの表面粗さが第4並列面653bの表面粗さよりも大きくなっていてもよい。その場合第2放熱部材720における第3並列面652bに接触する第5対向面722aの表面粗さが第4並列面653bに接触する第7対向面721aの表面粗さより大きくなっている。
【0059】
第5対向面722aの第3並列面652bとの単位面積当たりの接触面積が、第7対向面721aの第4並列面653bとの単位面積当たりの接触面積よりも大きくなっている。そのために第2外周部位722が第2周縁部652から離れにくくなっている。また第3並列面652bとの単位面積あたりの接触面積が大きくなっている分、第2周縁部652で放熱されやすくなっている。
【0060】
また図示しないが第3並列面652bの表面に凹凸形状が形成されずに、第3並列面652bにy方向で対向する第2モジュール面310bの部位に凹凸形状が形成されていてもよい。その場合第5対向面722aにy方向で対向する第6対向面722bの表面粗さが第7対向面721aにy方向で対向する第8対向面721bの表面粗さよりも大きくなっていてもよい。第2外周部位722が電子モジュール310から離れにくくなっている。
【0061】
なお、第1対向面712aと第5対向面722aが第1外面に相当する。第2対向面712bと第6対向面722bが第2外面に相当する。第3対向面711aと第7対向面721aが第3外面に相当する。第4対向面711bと第8対向面721bが第4外面に相当する。
【0062】
(第2変形例)
第1外周部位712と第1中央部位711との材質の組成が異なっていてもよい。それによって第1中央部位711の熱抵抗が第1外周部位712の熱抵抗よりも低くなっていてもよい。例えば第1中央部位711に銀などを用いた導電フィラーが含まれていてもよい。第1中央部位711に金属部材が含まれることで、第1中央部位711で第1外周部位712よりも効果的に放熱されやすくなっている。第1外周部位712に絶縁フィラーが含まれていてもよい。
【0063】
同様に第2中央部位721の熱抵抗が第2外周部位722の熱抵抗よりも低くなっていてもよい。第2中央部位721に銀などを用いた導電フィラーが含まれていてもよい。第2外周部位722に絶縁フィラーが含まれていてもよい。これによって第2中央部位721で第2外周部位722よりも効果的に放熱されやすくなっている。
【0064】
なお図示しないが第1並列面642aに凹凸形状が形成されていてもよい。同様に第3並列面652bに凹凸形状が形成されていてもよい。
【0065】
(第3変形例)
図5に示すように第1搭載部340が第1露出面340b側から局所的にy方向に突出する第1凸部341を有していてもよい。第1凸部341によって第1露出面340bは第1凸部341の先端の第1凸面340cと第1主面330aに面一の第1主露出面340dと第1凸面340cと第1主露出面340dとを連結する第1凸連結面340eに区分される。
【0066】
その場合第1中継管640は第1基部641と第1周縁部642を有する。第1基部641と第1周縁部642とがy方向に直交する方向に面一になっている。第1周縁部642の第1並列面642aと第1基部641の第1凸部341側の第5並列面641aが連結されて第1冷却面640a構成されている。
【0067】
第1主露出面340dと第1主面330aとが統合された第1統合面310cと第1冷却面640aとのy方向の離間距離は、第1凸面340cと第1冷却面640aとのy方向の離間距離よりも長くなっている。これによって第1放熱部材710における第1統合面310cと第1冷却面640aとの間のy方向の厚さは、第1放熱部材710における第1凸面340cと第1冷却面640aとの間のy方向の厚さよりも厚くなっている。
【0068】
同様に第2搭載部350が第2露出面350b側から局所的にy方向に突出する第2凸部351を有していてもよい。第2凸部351によって第2露出面350bは第2凸部351の先端の第2凸面350cと第2主面330bに面一の第2主露出面350dと第2凸面350cと第2主露出面350dとを連結する第2凸連結面350eに区分される。
【0069】
その場合第2中継管650は第2基部651と第2周縁部652を有する。第2基部651と第2周縁部652とがy方向に直交する方向に面一になっている。第2周縁部652の第3並列面652bと第2基部651の第2凸部351側の第6並列面651bが連結されて第2冷却面650b構成されている。
【0070】
第2主露出面350dと第2主面330bとが統合された第2統合面310dと第2冷却面650bとのy方向の離間距離は、第2凸面350cと第2冷却面650bとのy方向の離間距離よりも長くなっている。これによって第2放熱部材720における第2統合面310dと第2冷却面650bとの間のy方向の厚さは、第2放熱部材720における第2凸面350cと第2冷却面650bとの間のy方向の厚さよりも厚くなっている。
【0071】
なお図示しないが第1統合面310cに凹凸形状が形成されていてもよい。同様に第2統合面310dに凹凸形状が形成されていてもよい。凹凸形状は第1統合面310cと第2統合面310dの全面に形成されていなくてもよい。
【0072】
また第1凸面340cと第1冷却面640aとの間に介在される第1放熱部材710と第2凸面350cと第2冷却面650bとの間に介在される第2放熱部材720それぞれに銀などを用いた導電フィラーが含まれていてもよい。第1凸面340cと第1冷却面640aとの間に介在される第1放熱部材710と第2凸面350cと第2冷却面650bとの間に介在される第2放熱部材720のどちらか一方に導電フィラーが含まれていてもよい。
【0073】
(第4変形例)
図6に示すように封止部材330はy方向に直交する直交方向の端側で第1搭載部340側から第2搭載部350側に凹んだ第1凹部342を有していてもよい。第1凹部342によって第1主面330aは第1凹部342の表面の第1凹面340fと第1露出面340bに面一の第1凹外面340gと第1凹面340fと第1凹外面340gとを連結する第1凹連結面340hに区分される。
【0074】
その場合、第1中継管640は第3変形例で説明した構成と同様の構成を有している。第1凹部342の表面の第1凹面340fと第1冷却面640aとの間の離間距離は、第1凹外面340gと第1露出面340bとが統合された第3統合面310eと第1冷却面640aとの間の離間距離はよりも長くなっている。これによって第1放熱部材710における第1凹面340fと第1冷却面640aとの間のy方向の厚さは、第3統合面310eと第1冷却面640aとの間のy方向の厚さよりも厚くなっている。
【0075】
同様に封止部材330はy方向に直交する直交方向の端側で第2搭載部350側から第1搭載部340側に凹んだ第2凹部352を有していてもよい。第2凹部352によって第2主面330bは第2凹部352の表面の第2凹面350fと第2露出面350bに面一の第2凹外面350gと第2凹面350fと第2凹外面350gとを連結する第2凹連結面350hに区分される。
【0076】
その場合、第2中継管650は第3変形例で説明した構成と同様の構成を有している。第2凹部352の表面の第2凹面350fと第2冷却面650bとの間の離間距離は、第2凹外面350gと第2露出面350bとが統合された第4統合面310fと第2冷却面650bとの間の離間距離はよりも長くなっている。これによって第2放熱部材720における第2凹面350fと第2冷却面650bとの間のy方向の厚さは、第4統合面310fと第2冷却面650bとの間のy方向の厚さよりも厚くなっている。
【0077】
なお図示しないが第1凹面340fに凹凸形状が形成されていてもよい。同様に第2凹面350fに凹凸形状が形成されていてもよい。凹凸形状は第1凹面340fと第2凹面350fの全面に形成されていなくてもよい。
【0078】
また第3統合面310eと第1冷却面640aとの間に介在される第1放熱部材710と、第4統合面310fと第2冷却面650bとの間に介在される第2放熱部材720それぞれに銀などを用いた導電フィラーが含まれていてもよい。第3統合面310eと第1冷却面640aとの間に介在される第1放熱部材710と、第4統合面310fと第2冷却面650bとの間に介在される第2放熱部材720のどちらか一方に導電フィラーが含まれていてもよい。
【0079】
(第5変形例)
図示しないが冷却器600が供給管610、排出管620、および、これらを接続する中継管630を1つ有していてもよい。その場合電子モジュール310の第1モジュール面310aまたは第2モジュール面310bのどちらか一方が放熱部材700を介して中継管630と接触し積極的に冷却されている。
【符号の説明】
【0080】
310…電子モジュール、320…スイッチ素子、330…封止部材、340…第1搭載部、340b…第2露出面、350…第2搭載部、350b…第2露出面、630…中継管、700…放熱部材、711…第1中央部位、711a…第3対向面、711b…第4対向面、712…第1外周部位、712a…第1対向面、712b…第2対向面、721…第2中央部位、721a…第7対向面、721b…第8対向面、722…第2外周部位、722a…第5対向面、722b…第6対向面
図1
図2
図3
図4
図5
図6