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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】直流モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20240214BHJP
   H02K 23/00 20060101ALI20240214BHJP
   H01R 39/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02K13/00 U
H02K23/00 A
H01R39/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020008331
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021118554
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】加古 裕重
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-171694(JP,A)
【文献】特開2016-167962(JP,A)
【文献】特開2007-006643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00- 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(22)と同軸に設けられるコンミュテータ(24)と、
前記コンミュテータと接触可能に設けられる正極側及び負極側のブラシ(230)と、
前記各ブラシを収容した状態で保持するブラシホルダ(240)と、
正極側及び負極側の前記ブラシが周方向に所定間隔で配置され、正極側の前記ブラシから延びるリード線(32)が接合される環状の正極側プレート(250)と、
前記正極側プレートとの間に前記ブラシホルダを挟み込むように前記正極側プレートに対して対向した位置に配され、負極側の前記ブラシから延びるリード線(32)が接合される負極側プレート(70)と、を備え、
前記正極側プレートは、周方向に並ぶ前記ブラシホルダの間に介在する中間部(51)と、周方向の前記中間部同士を、前記ブラシホルダを回避した状態で接続する渡り部(252)とを有しており、
前記渡り部は、前記ブラシホルダから離れる側に、前記中間部から折り曲げられて形成されており、
前記ブラシには、前記正極側プレートに対向する軸方向端面において前記コンミュテータの径方向反対側の角部が切り欠かれた形状になっていることで、該ブラシの軸方向寸法を小さくしたブラシ縮小部(234)が形成されており、
前記ブラシホルダには、前記ブラシ縮小部に対応する位置に、該ブラシホルダの軸方向寸法を小さくしたホルダ縮小部(247)が形成されており、
前記正極側プレートは、前記渡り部が前記ホルダ縮小部に対して径方向に近接する状態で設けられている直流モータ。
【請求項2】
前記ブラシには、径方向において前記ブラシ縮小部に対応する部位に前記リード線が接続されている請求項1に記載の直流モータ。
【請求項3】
前記コンミュテータにおける前記ブラシとの摺動面は、前記ブラシとの摺動方向と平行な凹凸形状(24A)を有している請求項2に記載の直流モータ。
【請求項4】
前記渡り部の板厚は、前記中間部の板厚よりも厚くなっている請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の直流モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン始動装置としてのスタータ等に用いられる直流モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタータ用モータでは、円筒状のコンミュテータの外周に接するようにプラス側ブラシとマイナス側ブラシとがそれぞれ2個以上配置されている。このようなプラス側のブラシに電力を供給するために、プレート状の接続部材が用いられている。そして、プレート状の接続部材の一部を切り欠いて、その切り欠いた位置にブラシを収容するブラシ保持部が配されている。しかしながら、接続部材を切り欠くことで通電経路の断面積が小さくなり、経路抵抗が大きくなるため、切り欠いた分だけ電気的な通路を確保する必要があった。そこで、例えば、特許文献1では、切り欠いた分だけ電気的な通路を確保するために、切り欠いた部分の径方向外周側に通電経路である増加部を設けている。単に通電経路を径方向外側に増加させた場合には、プラス側の接続部材が径方向に大きくなり、その外周のハウジング等に接触するおそれがある。そのため、この増加部がモータ軸方向に折り曲げられることで、径方向の大型化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6519241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、増加部をモータ軸方向に延びるように設けることで、直流モータが軸方向に大型化するおそれがあり望ましくない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、大型化を抑制した直流モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段では、回転子と同軸に設けられるコンミュテータと、
前記コンミュテータと接触可能に設けられる正極側及び負極側のブラシと、
前記各ブラシを収容した状態で保持するブラシホルダと、
正極側及び負極側の前記ブラシが周方向に所定間隔で配置され、正極側の前記ブラシから延びるリード線が接合される環状の正極側プレートと、
前記正極側プレートとの間に前記ブラシホルダを挟み込むように前記正極側プレートに対して対向した位置に配され、負極側の前記ブラシから延びるリード線が接合される負極側プレートと、を備え、
前記正極側プレートは、周方向に並ぶ前記ブラシホルダの間に介在する中間部と、周方向の前記中間部同士を、前記ブラシホルダを回避した状態で接続する渡り部とを有しており、
前記渡り部は、前記ブラシホルダから離れる側に、前記中間部から折り曲げられて形成されており、
前記ブラシホルダにおける前記コンミュテータと径方向反対側の端部には、該ブラシホルダのモータ軸方向寸法を小さくしたホルダ縮小部が形成されており、
前記渡り部は、前記ホルダ縮小部とモータ軸方向で重なっている。
【0007】
正極側プレートは、ブラシを収容して保持するブラシホルダの間に介在する中間部と、ブラシホルダを回避した状態で中間部同士を接続して通電経路を形成する渡り部とを有している。この渡り部は、中間部からモータ軸方向に曲げ形成されている。そのため、モータ軸方向に直流モータが大型化することになる。
【0008】
そこで、ブラシホルダにおけるコンミュテータと径方向反対側の端部に、モータ軸方向に縮小されたホルダ縮小部を形成し、渡り部を、そのホルダ縮小部と軸方向に重ねる構成とした。この場合、モータ軸方向におけるブラシホルダと渡り部とのオーバーラップにより渡り部がブラシホルダの軸方向端面から突出する突出量を小さくすることができる。そのため、直流モータを軸方向に小型化できる。
【0009】
第2の手段では、前記ブラシには、前記ホルダ縮小部に対応する位置に、前記ブラシの軸方向寸法を小さくしたブラシ縮小部が形成されており、径方向において前記ブラシ縮小部に対応する部位に前記リード線が接続されている。
【0010】
ブラシのホルダ縮小部に対応する位置に、軸方向に小さくしたブラシ縮小部が形成されている。ブラシ縮小部を設けることで、ホルダ縮小部内の領域に、径方向においてブラシ縮小部に対応する部位を差し入れることができる。また、径方向においてこのブラシ縮小部に対応する部位にリード線が接続されている。ブラシ縮小部に対応する部位では、ブラシのコンミュテータへの接触面積が小さくなるため、ブラシ縮小部が設けられた部位はブラシの有効長には含まれない。この有効長に含まれないデッド部分でリード線を接続することで、デッド部分を有効に活用することができる。これにより、ブラシの有効長を長くすることができる。
【0011】
第3の手段では、前記コンミュテータにおいて前記ブラシとの摺動面は、前記ブラシとの摺動方向と平行な凹凸形状を有している。
【0012】
ブラシホルダとブラシとは線膨張係数が異なるため、ブラシとブラシホルダが使用状態で干渉しないように、ブラシホルダとブラシとの間には所定のクリアランスが設けられている。そして、ブラシが摩耗し、ブラシホルダとブラシとの径方向対向範囲が短くなると、ブラシがブラシホルダ内でぐらつきやすくなり、コンミュテータとの摺動接触が不安定になる。そして、ブラシにブラシ縮小部を設けた場合に、ブラシホルダとブラシとの径方向対向範囲が、ブラシ縮小部がない場合に比べて短くなると、ブラシとコンミュテータとの摺動接触が不安定になりやすい。
【0013】
そこで、コンミュテータにおけるブラシとの摺動面に、ブラシの摺動方向と平行な凹凸形状を設けている。これにより、ブラシとコンミュテータとが凹凸形状で噛み合った状態となり、摺動時にぐらつくことを抑制できる。そのため、ブラシにブラシ縮小部が設けられて、径方向対向範囲が短くなっていても、ブラシの過剰な摩耗を抑制することができる。
【0014】
第4の手段では、前記渡り部の板厚は、前記中間部の板厚よりも厚くなっている。
【0015】
中間部の板厚よりも渡り部の板厚が厚くなっていることで、通電方向において渡り部の断面積を確保しやすくなる。これにより、ブラシホルダから回転子側に渡り部が突出する寸法を小さくすることができる。そのため、必要な通電経路の断面積を確保しつつ、さらに小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態におけるスタータの概略構成図
図2】ブラシアセンブリの斜視図
図3】ブラシアセンブリの斜視図
図4】正極側プレート及びブラシの斜視図
図5】正極側プレートの斜視図
図6】ブラシアセンブリの平面図
図7】変形例におけるブラシアセンブリの正面図
図8】変形例におけるブラシアセンブリの正面図
図9】変形例におけるブラシアセンブリの平面図
図10】第2実施形態におけるブラシアセンブリの一部拡大断面図
図11】ブラシ及びブラシホルダの断面図
図12】変形例におけるブラシ及びブラシホルダの断面図
図13】第3実施形態におけるブラシアセンブリの一部の横断面図
図14】変形例におけるブラシアセンブリの一部の横断面図
図15】変形例におけるブラシアセンブリの一部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、エンジン始動用のスタータに用いる直流モータとして具体化した構成について図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0018】
図1は、スタータ10の概略構成図である。スタータ10は、直流モータ20と、直流モータ20の回転を減速してピニオンギヤ11に伝達する減速部12と、直流モータ20への電力の供給のスイッチとなるマグネットスイッチ13とを備えている。減速部12は、例えば、遊星歯車機構等により構成されている。
【0019】
マグネットスイッチ13は、スタータ10の外部のバッテリと直流モータ20との通電回路のスイッチとなっている。例えばユーザのキー操作によってIGスイッチがオン操作されると、スタータ10の外部のバッテリと直流モータ20との通電回路がマグネットスイッチ13により閉じられ、直流モータ20に電力が供給される。そして、直流モータ20が通電されると、直流モータ20の回転が、減速部12及びワンウェイクラッチ15を介してピニオンギヤ11に伝達される。また、IGスイッチがオン操作されると、マグネットスイッチ13により、シフトレバー14がピニオンギヤ11を直流モータ20とは反対側に押し出して、エンジンのリングギヤとピニオンギヤ11とが噛合う。このようにIGスイッチがオン操作されると、スタータ10がエンジンのリングギヤを回転させる。
【0020】
直流モータ20は、例えば磁石界磁式となっており、磁石21と、磁石21の内周に回転自在に配される回転子22と、回転子22と同軸に設けられるコンミュテータ24と、コンミュテータ24の外周に配置されるブラシ30とを備えている。なお、以下の記載においては、直流モータ20の回転軸20Aが延びる方向を軸方向(モータ軸方向)とし、回転軸20Aの中心から放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸20Aを中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0021】
磁石21の外周には、ヨーク23が設けられており、円筒形のヨーク23は、磁石21と回転子22とを収容している。ブラシアセンブリA及びコンミュテータ24は、有底円筒形のハウジング80内に収容されている。ヨーク23とハウジング80とが組み合わされて、直流モータ20のモータケースを構成している。なお、磁石21の代わりにフィールドコイルを用いてもよい。
【0022】
ブラシアセンブリAは、正極側及び負極側のブラシ30と、ブラシ30をそれぞれ収容するブラシホルダ40と、正極側プレート50と、正極側プレート50に対向する負極側プレート70と、正極側プレート50に接合される電力供給線60とを備えている。ブラシアセンブリAは、正極側プレート50がモータ軸方向において回転子22側、負極側プレート70が、回転子22とは反対側となる向きで設けられている。
【0023】
図2は、ブラシアセンブリAを正極側プレート50側から見た斜視図であり、図3は、ブラシアセンブリAを負極側プレート70側から見た斜視図である。ブラシアセンブリAには、それぞれ3つずつの正極側及び負極側のブラシ30が、周方向に交互に、周方向に所定間隔で配置されている。なお、以下において、ブラシ30の正極側及び負極側を区別する際には、正極側ブラシ30A及び負極側ブラシ30Bと記す。また、ブラシ30の数は、正極側及び負極側で複数ずつあればよく、正極側ブラシ30Aと負極側ブラシ30Bとの数が異なっていてもよい。
【0024】
正極側ブラシ30Aを例にしてブラシ30について説明する。なお、正極側ブラシ30Aを例として説明するが、負極側ブラシ30Bもその構造は同じである。図4は、ブラシアセンブリAのうち正極側プレート50及び正極側ブラシ30Aの斜視図である。
【0025】
ブラシ30は、コンミュテータ24の摺動面に接触可能となっており、ブラシ30にはリード線32が接続されている。ブラシ30は、角柱状となっている。ブラシ30の周方向の一側面から周方向にリード線32が延びている。リード線32は、ブラシ30におけるコンミュテータ24に接触する接触面31Aと反対側の端部に接続されている。ブラシ30におけるリード線32の接続部32Aのうち接触面31A側の端がブラシ30の摩耗限界位置となっている。(図10参照)つまり、ブラシ30は、リード線32の接続部32Aまで摩耗可能となっている。また、ブラシ30の接触面31Aとは反対側の後端面31Bには、コイルスプリング45が当接している(図10参照)。ブラシ30には、ブラシ30の後端面31Bから後方に突出して、コイルスプリング45の位置決めをする位置決め部33が設けられている。
【0026】
リード線32は、導電性の銅線を編む等して束ねたピグテールと言われる電線であり、可撓性を有している。また、リード線32は、絶縁被覆などに覆われていない電線である。リード線32の先端部は、正極側プレート50又は負極側プレート70に溶接等により接合されている。つまり、リード線32は、各プレート50,70に機械的に固定されるとともに、電気的に接続されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、ブラシ30は、それぞれブラシホルダ40に収容されている。ブラシホルダ40は、例えば樹脂等の絶縁性の材料よりなり、軸方向に直交する径方向内側に、つまりコンミュテータ24側に開口する箱型形状に形成されている。ブラシホルダ40は、ブラシ30を収容するブラシ収容部42を有している。
【0028】
ブラシホルダ40において、ブラシ収容部42よりも径方向外側(コンミュテータ24とは反対側)には、コイルスプリング45を収容するスプリング収容部46が設けられている。スプリング収容部46は、コイルスプリング45の外形に沿って一部外側に膨出し円筒状になっている。また、ブラシホルダ40の周方向の側壁は、一部コイルスプリング45の外形に沿って外側に膨出している。
【0029】
ブラシホルダ40のブラシ収容部42には、その周方向における両側壁に、リード線32を引き出し可能とする開口部41が設けられている。開口部41が径方向に延びるように形成されていることで、リード線32が引き出された状態のままで、ブラシ30の径方向移動が可能となっている。なお、開口部41は、リード線32が引き出される側の周方向における一方の側壁のみに設けられていてもよい。
【0030】
また、ブラシホルダ40のブラシ収容部42は、正極側プレート50よりも回転子22側に突出している。また、ブラシ収容部42の正極側プレート50よりも突出した部分にブラシ30の一部が収容されている。つまり、軸方向においてブラシ30と正極側プレート50とが一部重複している。また、ブラシホルダ40と正極側プレート50とは、軸方向、周方向及び径方向に互いに位置決めされている。
【0031】
ブラシホルダ40における軸方向の負極側プレート70側には、回転子22と反対側に突出し、負極側プレート70に対してブラシホルダ40を位置決めする位置決め凸部43が設けられている。位置決め凸部43内には、ブラシ30は収容されておらず、ブラシ30は負極側プレート70と軸方向において重なっていない。ブラシホルダ40と負極側プレート70とは、軸方向、周方向及び径方向に互いに位置決めされている。
【0032】
また、正極側プレート50及び負極側プレート70は、所定の板厚の導電性の金属板により形成されており、径方向の中央部にコンミュテータ24を挿通可能な丸孔が設けられた円環状となっている。正極側プレート50及び負極側プレート70は、軸方向に互いに平行に離間して配置されている。正極側プレート50及び負極側プレート70の間にブラシ30及びブラシホルダ40が挟み込まれた状態で保持されている。
【0033】
負極側プレート70には、周方向に等間隔にスリット71が形成されている。このスリット71に位置決め凸部43が嵌まることで、負極側プレート70とブラシホルダ40とが位置決めされている。また、負極側プレート70には、ボルト挿通孔72が複数形成されている。このボルト挿通孔72に挿通されたボルトBにより負極側プレート70がハウジング80に固定されている(図1参照)。また、このボルトBを介して負極側プレート70はハウジング80に電気的に接続されている。これにより、負極側プレート70は接地されている。
【0034】
図5は、正極側プレート50の斜視図である。図2及び図5に示すように、正極側プレート50は、周方向に並ぶブラシホルダ40の間に介在する平板状の中間部51と、中間部51同士を接続する渡り部52とを有している。中間部51は、周方向に隣り合うブラシホルダ40の間に介在するように略台形状に設けられている。中間部51は、ブラシ収容部42の径方向寸法と同じか若干小さい径方向寸法を有している。また、中間部51と中間部51の間が、ブラシホルダ40のブラシ収容部42が配される嵌合溝53になる。嵌合溝53は、中間部51と同一平面上において径方向両側に開口している。
【0035】
渡り部52は、嵌合溝53の周方向両側に配されている中間部51同士を接続している。渡り部52は、ブラシ収容部42の径方向外側に回り込むように形成された部分を軸方向に折り曲げることで形成されている。つまり、渡り部52は、通電経路を横断する向きに折り曲げた折り曲げ部として形成されている。渡り部52において嵌合溝53の周方向両側に配され、中間部51から曲げられた角部がそれぞれ折り曲げ角部54となっている。渡り部52は、ブラシホルダ40を回避するように形成されている。
【0036】
渡り部52は、中間部51から所定の曲げ半径で90度に曲げ形成され、軸方向に延びている。渡り部52は、ハウジング80や回転子22と所定の間隔を保持した状態で軸方向に延びている。なお、渡り部52と中間部51との間の曲げ角度としては、90度以下であることが望ましい。曲げ角度は、中間部51と渡り部52との間の角度であって、曲げ角度が小さいほど残留応力が大きくなる。また、中間部51と渡り部52との曲げ半径は、小さいほど残留応力が大きくなるため望ましい。曲げ半径は、折り曲げ角部54に残留応力が生じる大きさであれば任意であり、具体的には、例えば正極側プレート50の板厚の3倍より小さいことが望ましい。また、曲げ半径は、曲げ加工により材料に亀裂が入らない最小半径を基準に定められているとよく、例えば正極側プレート50の板厚の4分の1より大きいとよい。
【0037】
図1及び図4に示すように、正極側プレート50には、電力を供給する電力供給線60が電力線接合部55で接合されている。また、正極側プレート50には、正極側ブラシ30Aのリード線32がリード接合部56で接合されている。電力線接合部55とリード接合部56は、正極側プレート50における負極側プレート70に対向する対向面上に設けられている。正極側プレート50における負極側プレート70への対向面にリード線32が接合されていることで、リード線32が長くなることを抑制できる。また、電力供給線60とリード線32とを溶接する際に、電力線接合部55とリード接合部56とが同一平面上に設けられており、全ての溶接工程を同時に実施できるため生産性が高くなる。
【0038】
また、電力線接合部55は、正極側プレート50の複数の中間部51のうち、正極側ブラシ30Aのリード線32が接合されたリード接合部56が設けられていない中間部51に設けられている。電力線接合部55が設けられている中間部51には、径方向外側に突出する突出片51Bが設けられており、電力供給線60を接合する面積が確保されている。電力供給線60は、マグネットスイッチ13と正極側プレート50とを接続して、正極側プレート50に電力を供給する電線である。
【0039】
電力供給線60は、ハウジング80やヨーク23との間の絶縁を確保するための電力線保持部材65に保持されている。電力線保持部材65は、ゴム等の絶縁性の材料により形成されており、ハウジング80に設けられた電力供給線60を挿通させるための切り欠きに組付けられている。また、電力線保持部材65は、ハウジング80とヨーク23との境界位置に配されていることから、ヨーク23の端部にも組付けられている。そして、電力線保持部材65に設けられた貫通孔に電力供給線60を挿通させることで、電力線保持部材65により電力供給線60が保持されている。
【0040】
ところで、直流モータ20への異常な連続通電時や過電流が流れた場合には、回転子22のコイルの焼損等を抑制するために、回転子22への電力供給を停止する必要がある。そのため、正極側プレート50に経路遮断機能が設けられている。具体的には、正極側プレート50の一部が溶断されることで、正極側ブラシ30Aへの電力供給が遮断される構成となっている。
【0041】
正極側プレート50が溶断される際には、正極側プレート50における全ての正極側ブラシ30Aへの電力供給を遮断できる位置で正極側プレート50が溶断されることが望ましい。具体的には、正極側プレート50における周方向に電力線接合部55の隣となる正極側ブラシ30Aのリード接合部56と、電力線接合部55との間、つまり通電経路上において電力線接合部55に周方向で隣接するリード接合部56と、電力線接合部55との間で正極側プレート50が溶断されることが望ましい。しかしながら、仮に電力線接合部55の隣となる2つのブラシ30のうち正極側ブラシ30Aのリード接合部が、その正極側ブラシ30Aの電力線接合部55側に設けられていると、リード接合部が周方向において電力線接合部55に近接し、溶断部を設けるためのスペースを確保することができない。そこで、電力線接合部55とリード接合部56との間で正極側プレート50を溶断するために、電力線接合部55とリード接合部56との間に周方向の距離(溶断部を設けるためのスペース)を確保する必要がある。
【0042】
図6は、ブラシアセンブリAを正極側プレート50側から見た平面図である。図2及び図6に示すように、正極側及び負極側のブラシ30A,30Bは周方向に交互に配置されている。正極側ブラシ30Aのリード線32と負極側ブラシ30Bのリード線32は、周方向の同一方向に引き出され、周方向に並ぶブラシホルダ40間ごとに、正極側のリード線32と負極側のリード線32とが交互となるように配されている。
【0043】
正極側プレート50において、各中間部51はそれぞれ、正極側ブラシ30Aを収容するブラシホルダ40と負極側ブラシ30Bを収容するブラシホルダ40とに挟まれた状態で設けられており、そのうち1つの中間部51に電力供給線60が接合され、その接合部が電力線接合部55となっている。図6では、便宜上、電力線接合部55が位置する中間部51にハッチングを付し、その中間部51を「中間部51A」としている。
【0044】
周方向において中間部51Aの隣となる正極側のブラシ30Aでは、リード線32が中間部51Aとは逆側に引き出され、その逆側の中間部51に、正極側のブラシ30Aのリード線32が接合されたリード接合部56が設けられている。つまり、正極側プレート50において、電力線接合部55に最も近い正極側ブラシ30Aのリード線32のリード接合部56は、その正極側ブラシ30Aを挟んで電力線接合部55とは反対側に設けられている。これにより、正極側プレート50における電力線接合部55とリード接合部56との間には、少なくとも1つのブラシホルダ40及びブラシ30が配されることになる。そのため、電力線接合部55とリード接合部56との周方向の距離を確保することができる。
【0045】
そして、正極側プレート50において、電力線接合部55と、周方向に電力線接合部55の隣となるリード接合部56との間に、溶断部57が設けられている。具体的には、中間部51Aに繋がる渡り部52の折り曲げ角部54、すなわち、周方向において正極側ブラシ30Aの側となる渡り部52の折り曲げ角部54と負極側ブラシ30Bの側となる渡り部52の折り曲げ角部54とを溶断部57としている。渡り部52は周方向に複数設けられており、その複数の渡り部52のうち、中間部51Aに繋がる渡り部52の折り曲げ角部54を溶断部57としている。
【0046】
なお、各渡り部52は、それぞれ2箇所の折り曲げ角部54を有するが、中間部51Aに繋がる渡り部52では、中間部51A側の折り曲げ角部54が溶断部57であるとよい。ただし、中間部51Aに繋がる渡り部52において、2箇所の折り曲げ角部54の両方向を溶断部57とする構成、又は2箇所の折り曲げ角部54のうち中間部51Aとは逆側の折り曲げ角部54を溶断部57とする構成であってもよい。
【0047】
溶断部57は、電力線接合部55が設けられた中間部51Aの両隣の渡り部52にそれぞれ設けられている。これは、電力線接合部55を起点とする電力経路が、円環状の両方向、つまり2方向に通電する経路となっており、その2つの経路を遮断する必要があるためである。
【0048】
溶断部57では、折り曲げ加工により生じた残留応力が、渡り部52と中間部51とを引き離す方向の力として作用する。したがって、その残留応力によって、溶断部57の温度が上昇した場合に溶断の生じるタイミングが早められる。これにより、折り曲げ角部54を溶断部57にする構成では、断面積を平坦な場所を溶断部にする構成よりも溶断部57の断面積を大きくすることができ、通常運転時の経路抵抗を下げることができる。この際に、上述の通り、折り曲げ角度を90度以下にしたり、曲げ半径を小さくしたりして、溶断部57での残留応力を大きくするとよい。また、折り曲げ加工することで、溶断部57の機械的な強度を向上させることができる。さらに、軸方向に折り曲げ加工された渡り部52の折り曲げ角部54を溶断部57とすることで、径方向の小型化と所望の経路遮断機能とを渡り部52により実現することが可能となっている。
【0049】
また、複数の折り曲げ角部54のうち、周方向の両側で電力線接合部55に最も近い2つが溶断部57となっていることで、正極側プレート50を溶断した後に電力供給線60から電力が供給される正極側プレート50の範囲を最小限にすることができる。また、溶断部57の位置と正極側ブラシ30Aのリード接合部56との間の距離が離れることで、溶断部57での発熱が、リード線32を介して正極側ブラシ30Aに伝熱することを抑制できる。そのため、溶断部57による発熱で、他の部品が破損することを抑制できる。
【0050】
複数の渡り部52は、折り曲げ角部54の幅寸法の小さい第1折り曲げ部と、折り曲げ角部54の幅寸法の大きい第2折り曲げ部とを含んでいる。第1折り曲げ部は、溶断部57として機能している渡り部52であり、第2折り曲げ部は、それ以外の渡り部52である。そして、第1折り曲げ部の折り曲げ角部54が溶断部57となっている。つまり、第1折り曲げ部の折り曲げ角部54の通電経路に直交する向きの断面積を第2折り曲げ部の折り曲げ角部54の通電経路に直交する向きの断面積よりも小さくなるように設定することで、溶断部57としている。これにより、溶断部57となる折り曲げ角部54での経路抵抗が他の折り曲げ角部54の経路抵抗より高くなる。そのため、過電流が生じた場合にその溶断部57での温度が上昇し、溶断部57で正極側プレート50が溶断されることになる。また、この際の溶断部57の断面積は、折り曲げによる残留応力により、平面形状で溶断部を形成する場合の断面積よりも大きくすることができる。さらに、折り曲げによる加工硬化によって、各折り曲げ角部54の強度が向上されている。これにより、溶断部57の幅寸法を小さくしても、機械的な強度を確保することができる。
【0051】
また、電力供給線60が配されたブラシホルダ40間のスペースには、負極側ブラシ30Bのリード線32が引き出され、負極側プレート70に接合されている。これにより、電力線接合部55と負極側ブラシ30Bのリード線32の一部とが軸方向に重なる位置に配されている。そのため、電力供給線60と負極側ブラシ30Bのリード線32とが接触するおそれがある。
【0052】
そこで、図2及び図4に示すように、電力線保持部材65には、正極側プレート50に接合された電力供給線60の端部60Aと負極側ブラシ30Bのリード線32との間に配される絶縁部66が設けられている。絶縁部66は、電力線保持部材65において径方向内側に突出するように設けられ、電力供給線60の端部60Aの正極側プレート50の反対側を覆っている。絶縁部66は、電力供給線60の端部60Aより若干大きくなっている。これにより、電力線接合部55と負極側ブラシ30Bのリード線32との間に軸方向の距離を設けなくても、電力供給線60と負極側ブラシ30Bのリード線32との接触を抑制することができ、軸方向に直流モータ20を小型化することができる。なお、本実施形態では、電力線保持部材65に一体に絶縁部66を設けたが、電力線保持部材65とは別に絶縁部66を設けることも可能である。
【0053】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0054】
円環状の正極側プレート50には、正極側ブラシ30Aから延びるリード線32が接合されており、正極側プレート50を介して、正極側ブラシ30Aには電力が供給される。この正極側プレート50には、正極側プレート50の通電経路を横断する向きに折り曲げられた渡り部52が設けられている。例えばプレス加工により渡り部52が形成される場合には、渡り部52の折り曲げ角部54に残留応力が発生することになる。正極側プレート50では、過電流が流れる場合において、折り曲げ角部54が、この残留応力により他の場所よりも早く溶断される。これにより、折り曲げ角部54が、過電流の発生に伴い溶断される溶断部57となる。折り曲げることで溶断部57を形成しているため、切欠部等により溶断部を形成する場合に比べて、溶断部57での経路断面積が大きくなり、通常通電時の正極側プレート50の経路抵抗を下げることができる。そのため、通常通電時の通電を適切に行わせつつ、所望の経路遮断機能を付与することができる。
【0055】
正極側プレート50は、周方向に並ぶブラシホルダ40の間に介在する中間部51と、中間部51同士を接続する渡り部52とを有している。渡り部52がブラシホルダ40を回避する構成において、渡り部52が中間部51から軸方向に折り曲げ形成されているため、正極側プレート50が径方向に大きくなることが抑制されている。この渡り部52を折り曲げ部とし、渡り部52を中間部51から曲げた折り曲げ角部54を溶断部57とする。これにより、小型化のために折り曲げた部分を利用して、通電経路を遮断する溶断部57とすることができる。そのため、小型化を図りつつ、所望の経路遮断機能を付与することができる。
【0056】
プレス加工時の曲げ角度により、残留応力の大きさが異なっている。渡り部52の曲げ角度が90度以下となっていることで、その残留応力を大きくすることができる。そのため、折り曲げ角部54を溶断部57として適切に機能させることができる。
【0057】
本実施形態では、電力線接合部55の隣に位置し、かつ正極側であるブラシ30Aにおいて、そのリード線32を電力線接合部55とはその正極側ブラシ30Aを挟んで周方向反対側に引き出す構成とした。これにより、正極側プレート50において、電力線接合部55の近傍である所望の位置に溶断部57を設けることができる。そのため、小型化を図りつつ、正極側プレート50の溶断位置の適正化を図り、全ての正極側ブラシ30Aへの通電を遮断することができる。
【0058】
正極側プレート50にはブラシ30ごとに渡り部52が設けられ、周方向に電力線接合部55の隣になる折り曲げ角部54で正極側プレート50が溶断される構成となっている。つまり、電力線接合部55の隣となるブラシ30と電力線接合部55との間で溶断する構成となっている。これにより、正極側プレート50を溶断後に電力供給線60から電力が供給される正極側プレート50の範囲を最小限にすることができる。そのため、溶断後の電力線接合部55側の正極側プレート50が他の部材と接触して短絡等が発生することを抑制できる。
【0059】
溶断部57では、折り曲げ加工により生じた残留応力が、渡り部52と中間部51とを引き離す方向の力として作用する。したがって、その残留応力によって、溶断部57の温度が上昇した場合に溶断の生じるタイミングが早められる。これにより、折り曲げ角部54を溶断部57にする構成では、断面積を平坦な場所を溶断部にする構成よりも溶断部57の断面積を大きくすることができ、通常運転時の経路抵抗を下げることができる。この際に、上述の通り、折り曲げ角度を90度以下にしたり、曲げ半径を小さくしたりして、溶断部57での残留応力を大きくするとよい。また、折り曲げ加工することで、溶断部57の機械的な強度を向上させることができる。さらに、軸方向に折り曲げ加工された渡り部52の折り曲げ角部54を溶断部57とすることで、径方向の小型化と所望の経路遮断機能とを渡り部52により実現することが可能となっている。
【0060】
本実施形態では、周方向に並ぶ各ブラシ30間スペースのうち電力供給線60が配されているスペースにおいて、負極側ブラシ30Bのリード線32と電力供給線60との間に絶縁部66を設ける構成とした。これにより、負極側ブラシ30Bのリード線32と電力供給線60との接触回避のための軸方向のスペースを設けなくても、電力供給線60と負極側ブラシ30Bのリード線32との接触を抑制することができ、軸方向に直流モータ20を小型化することができる。
【0061】
<変更例>
第1実施形態を以下のように変更して実施してもよい。なお、以下の構成を、上記第1実施形態の構成に対して、個別に適用してもよく、また、任意に組み合わせて適用してもよい。
【0062】
・正極側プレート50において、複数の渡り部52のうち特定の渡り部52(第1折り曲げ部)のみに溶断部57を設ける構成として、その特定の渡り部52の折り曲げ角部54の幅寸法を他の渡り部52(第2折り曲げ部)よりも小さくする構成に加えて又は代えて、特定の渡り部52の曲げ角度又は曲げ半径を他の渡り部52よりも大きくする構成としてもよい。
【0063】
・正極側プレート50の渡り部52の構成を変更してもよい。図7はブラシアセンブリAの概略構成を平面展開して示す正面図であり、図示左右方向が周方向である。図7において、正極側プレート50には、ブラシホルダ40ごとに、板面をブラシホルダ40の側面及び上面に対向させた状態で折り曲げ形成された渡り部52が設けられている。渡り部52は、軸方向に凸状に折り曲げ形成されることでブラシホルダ40を回避するように設けられている。この場合、渡り部52は複数の折り曲げ角部54を有しており、その折り曲げ角部54が溶断部57として用いられる構成となっている。なお、各渡り部52の折り曲げ角部54は、径方向のプレート幅寸法、曲げ角度、曲げ半径の少なくともいずれかを適宜設定することで、折り曲げに伴う溶断のし易さが調整されるものとなっている。
【0064】
・正極側プレート50において、渡り部52以外の箇所に折り曲げ部を形成する構成としてもよい。図8はブラシアセンブリAの概略構成を平面展開して示す正面図であり、図示左右方向が周方向である。図8では、正極側プレート50において周方向に並ぶブラシホルダ40の間となる位置に折り曲げ部58が形成され、その折り曲げ部58の折り曲げ角部が溶断部59となっている。
【0065】
図9は、変形例におけるブラシアセンブリA1の平面図である。このブラシアセンブリA1では、正極側プレート150の溶断部157が折り曲げ形成以外の方法で形成されている。具体的には、この変形例においては、溶断部157が経路断面積を正極側プレート150の他の位置よりも小さくすることで形成されている。なお、本変形例においても、電力線接合部55とリード接合部56とが正極側プレート50の同一平面上に設けられている状態で、負極側ブラシ30Bのリード線32が電力線接合部55側に引き出されており、負極側ブラシ30Bのリード線32と電力供給線60とが接触するおそれがあるため、絶縁部66が設けられている。
【0066】
正極側プレート150は、ブラシホルダ40同士の間に介在する平板状の中間部151と、中間部151同士を接続する渡り部152とを有している。渡り部152は、ブラシ収容部42の径方向外側を回り込むように形成され、周方向の両側が中間部151に繋がっている。渡り部152は、ブラシホルダ40を回避するように形成されている。
【0067】
正極側プレート150において、周方向に電力線接合部55の隣となる正極側ブラシ30Aのリード接合部56と、電力線接合部55との間に、溶断部157が設けられている。さらに具体的には、ブラシ30のうち周方向においてその隣となるブラシ30A,30Bとの間に溶断部157が設けられている。溶断部157では、正極側プレート150の外周側から径方向内側に向かってスリットが2つ設けられており、このスリット形成後の正極側プレート150の径方向内側部分が溶断部157になっている。溶断部157では、正極側プレート150の他の部分よりも、通電経路を横断する方向の寸法(径方向の寸法)が小さくなり、経路断面積が小さくなる。つまり、溶断部157での経路抵抗が正極側プレート150における他の位置よりも高くなっている。これにより、過電流が生じた場合に、溶断部157で正極側プレート150が溶断される。
【0068】
・正極側プレート50,150は、C字状プレートであってもよい。C字状の切れ目が電力線接合部55と周方向に隣となる正極側ブラシ30Aのリード接合部56との間に配されている場合には、溶断部は1か所だけであってもよい。
【0069】
<第2実施形態>
第2実施形態においては、図10及び図11に示すように、第1実施形態の一部を変更し、渡り部252がブラシホルダ240に軸方向で重なる構成にしている。図10は、第2実施形態におけるブラシアセンブリA1の一部拡大断面図である。図11は、ブラシ230及びブラシホルダ240の断面図である。図10及び図11では、図の上下方向が軸方向(モータ軸方向)であり、図の左右方向が径方向である。なお、以下の説明において、ブラシホルダ240における径方向内側(コンミュテータ24側)を前方とし、径方向外側(コンミュテータ24と反対側)を後方として説明する。また、第1実施形態に第2実施形態の渡り部252がブラシホルダ240と軸方向で重なる構成を用いてもよい。
【0070】
第2実施形態のブラシアセンブリA1は、正極側及び負極側のブラシ230と、ブラシ230をそれぞれ収容するブラシホルダ240と、正極側プレート250と、正極側プレート250に対向する負極側プレート70と、正極側プレート250に接合される電力供給線60(図3参照)とを備えている。第2実施形態のブラシ230、ブラシホルダ240、ブラシホルダ240のブラシ収容部242、正極側プレート250、及び正極側プレート250の渡り部252については、第1実施形態のブラシ30、ブラシホルダ40、ブラシ収容部42、正極側プレート50、渡り部52と以下で説明する点以外はそれぞれほぼ同じである。以下の説明においては、第1実施形態と異なる点や第1実施形態で詳細を説明していない点のみ説明する。
【0071】
ブラシホルダ240において、ブラシ収容部242には、ブラシ230が収容され、その後側のスプリング収容部46には、ブラシ230をコンミュテータ24側に付勢するコイルスプリング45が収容されている。コイルスプリング45は、線材を螺旋状に巻くことで形成された圧縮ばねであり、ブラシ230の後端面231Bを押圧する。コイルスプリング45の直径は、ブラシ230の軸方向の寸法よりも小さく、周方向の寸法よりも大きい。そして、ブラシ230には、ブラシ230に対するコイルスプリング45の位置決めを行う位置決め部33が設けられている。
【0072】
正極側プレート250は、中間部51と渡り部252とを有している。渡り部252は、ブラシホルダ240から離れる側(回転子22側)に、中間部51から略90度に折り曲げられて形成されている。つまり、渡り部252は、ブラシホルダ240側から回転子22側に突出するように延びている。そのため、渡り部252がブラシホルダ240の軸方向端面よりも軸方向に突出することで、直流モータ20が軸方向に大型化するおそれがある。
【0073】
そこで、ブラシホルダ240には、ブラシホルダ240の後端部における正極側プレート250側の軸方向寸法を小さくしたホルダ縮小部247が形成されている。具体的には、ブラシホルダ240において、渡り部252と径方向に重なる位置から後方の部分が軸方向に縮小されていることで、ホルダ縮小部247になっている。ホルダ縮小部247では、ブラシホルダ240の後端部がコイルスプリング45の外径位置まで軸方向に縮小されている。なお、ブラシ収容部242の後方の一部も軸方向に縮小され、ホルダ縮小部247の一部となっている。
【0074】
また、ブラシ230の端部には、ホルダ縮小部247に対応する位置に、ブラシ230の軸方向寸法を小さくしたブラシ縮小部234が形成されている。これにより、ホルダ縮小部247内の領域に、径方向においてブラシ縮小部234に対応する部位を差し入れることができる。また、ブラシ230は、ブラシ縮小部234と同様に、負極側プレート70側においても、ブラシ230の後端部の軸方向寸法が小さくした段差形状を有している。これにより、ブラシ230がリード線32の接続部32Aを挟んで線対称な形状となっている。なお、負極側プレート70側のブラシホルダ240の後端部も、ホルダ縮小部247と同様に、軸方向寸法を小さくしている。これにより、初期位置でのブラシホルダ240とブラシ230の後端部との隙間を小さくしている。
【0075】
そして、渡り部252は、ホルダ縮小部247と径方向においても、軸方向においても重なっている。つまり、ホルダ縮小部247を設けることで形成された後方を向いた段差面247Aに渡り部252が対向するように配置されている。また、渡り部252は、ブラシ縮小部234と軸方向において重なっている。つまり、渡り部252がホルダ縮小部247及びブラシ縮小部234と軸方向においてオーバーラップしている。これにより、渡り部252がブラシホルダ240の軸方向端面から突出する突出量L1を小さくすることができる。そのため、直流モータ20を軸方向に小型化できる。
【0076】
また、ブラシ230の径方向におけるブラシ縮小部234に対応する部位に、リード線32の接続部32Aが設けられている。ブラシ230におけるブラシ縮小部234と、リード線32の接続部32Aとが径方向において一部又は全部重なっている。径方向においてブラシ縮小部234に対応する部位では、ブラシ230のコンミュテータ24への接触面積が小さくなるため、ブラシ縮小部234をブラシ230の有効長に含むことはできない。この有効長に含まれないデッド部分でリード線32を接続することで、デッド部分を有効に活用することができる。言い換えれば、ブラシ縮小部234は、ブラシ230の接続部32Aの前端(接続部32Aのコンミュテータ24側の端)よりも後方側に形成されている。ブラシ230におけるリード線32の接続部32Aまでが、ブラシ230の有効長に含まれる部分であり、ブラシ縮小部234は、有効長に含まれない部分に形成されている。
【0077】
ところで、ブラシホルダ240とブラシ230とは線膨張係数が異なるため、ブラシ230とブラシホルダ240とが使用状態で干渉しないように、ブラシホルダ240とブラシ230との間には所定のクリアランスが設けられている。そして、ブラシ230が摩耗し、ブラシホルダ240とブラシ230との径方向対向範囲(ブラシホルダ240の軸方向内面とブラシ230の軸方向端面とが対向する径方向寸法)が短くなると、ブラシ230がブラシホルダ240内で軸方向にぐらつきやすくなり、コンミュテータ24との摺動接触が不安定になる。そして、ブラシ230にブラシ縮小部234を設けると、ブラシホルダ240との径方向対向範囲が短くなり、ブラシ230とコンミュテータ24との摺動接触が不安定になりやすい。
【0078】
そこで、コンミュテータ24のブラシ230との摺動面に、ブラシ230の摺動方向と平行な凹凸形状24Aが設けられている。これにより、コンミュテータ24の凹凸形状24Aによって、ブラシ230の接触面31Aに、凹凸形状24Aに合う溝が形成され、このブラシ230の溝とコンミュテータ24側の凹凸形状24Aとが嵌まりあっている。これにより、ブラシ230のコンミュテータ24との接触状態を安定させることができる。そのため、ブラシ230にブラシ縮小部234が設けられて、径方向対向範囲が短くなっていても、ブラシ230の過剰な摩耗を抑制することができる。
【0079】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0080】
ブラシホルダ240におけるコンミュテータ24と径方向反対側の端部(後端部)に、軸方向に縮小するホルダ縮小部247を形成し、渡り部252を、そのホルダ縮小部247と軸方向に重ねる構成とした。この場合、軸方向におけるブラシホルダ240と渡り部252とのオーバーラップにより、渡り部252がブラシホルダ240の軸方向端面から突出する突出量L1を小さくすることができる。そのため、直流モータ20を軸方向に小型化できる。
【0081】
ブラシ230のホルダ縮小部247に対応する位置に、軸方向に小さくなるブラシ縮小部234が形成されている。ブラシ縮小部234を設けることで、ホルダ縮小部247内の領域に径方向においてブラシ縮小部234に対応する部位を差し入れることができる。また、径方向においてこのブラシ縮小部234に対応する部位にリード線32が接続されている。ブラシ縮小部234に対応する部位では、ブラシ230のコンミュテータ24への接触面積が小さくなるため、ブラシ縮小部234が設けられた部位はブラシ230の有効長には含まれない。この有効長に含まれないデッド部分でリード線32を接続することで、デッド部分を有効に活用することができる。これにより、ブラシ230の有効長を長くすることができる。
【0082】
コンミュテータ24におけるブラシ230との摺動面に、ブラシ230の摺動方向と平行な凹凸形状24Aを設けている。これにより、ブラシ230とコンミュテータ24とが凹凸形状24Aで噛み合った状態となり、摺動時にブラシ230がぐらつくことを抑制できる。そのため、ブラシ230にブラシ縮小部234が設けられて、ブラシホルダ240とブラシ230との径方向対向範囲が短くなっていても、ブラシ230の過剰な摩耗を抑制することができる。
【0083】
<変更例>
第2実施形態を以下のように変更して実施してもよい。なお、以下の構成を、上記第2実施形態の構成に対して、個別に適用してもよく、また、任意に組み合わせて適用してもよい。
【0084】
図12は、変形例におけるブラシ及びブラシホルダの断面図である。このブラシホルダでは、ホルダ縮小部247が、回転子22側からスプリング収容部46側にかけて斜めになるように形成されている。この場合には、渡り部252がホルダ縮小部247と径方向及び軸方向に重なっている。これにより、渡り部252のブラシホルダ240からの突出量L1を抑制することができる。また、ホルダ縮小部247が斜めに形成されている場合には、ブラシ縮小部234も、ホルダ縮小部247の形状に合わせて斜めに形成されているとよい。
【0085】
・渡り部252の板厚を中間部51の板厚よりも厚くしてもよい。中間部51の板厚よりも渡り部252の板厚が厚くなっていることで、通電方向において渡り部252の断面積を確保しやすくなる。これにより、ブラシホルダ240から回転子22側に渡り部252が突出する寸法を小さくすることができる。そのため、必要な通電経路の断面積を確保しつつ、さらに小型化を図ることができる。
【0086】
<第3実施形態>
第3実施形態においては、図13に示すように、第1実施形態及び第2実施形態の一部を変更して実施する。第3実施形態では、ブラシホルダ340内に浸入した水を適切に排出するための構成を設けたものとしている。図13は、第3実施形態におけるブラシアセンブリA2の一部の横断面図である。なお、以下の説明において、ブラシホルダ340における径方向内側(コンミュテータ24側)を前方とし、径方向外側(コンミュテータ24と反対側)を後方として説明する。また、第1実施形態及び第2実施形態に第3実施形態の排水のための構成を組み合わせて実施してもよい。
【0087】
第3実施形態のブラシアセンブリA2には、正極側及び負極側のブラシ30と、ブラシ30をそれぞれ収容するブラシホルダ340と、正極側プレート50と、正極側プレート50に対向する負極側プレート70と、正極側プレート50に接合される電力供給線60とを備えている。そして、ブラシアセンブリA2は、ハウジング80に収容されている。ブラシホルダ340は、第1実施形態のブラシホルダ40と以下で説明する点以外はほぼ同じであり、コイルスプリング345については、第1実施形態及び第2実施形態のコイルスプリング45と以下で説明する点以外はほぼ同じである。以下の説明においては、第1実施形態や第2実施形態と異なる点や第1実施形態で詳細を説明していない点のみ説明する。
【0088】
ハウジング80は、有底円筒状であり、円筒形の円筒部81と、直流モータ20の軸方向の端部を覆う底部82とを有している(図1参照)。円筒部81の内周面81Aは、ブラシホルダ340のホルダ後端部348(ブラシホルダ340におけるコンミュテータ24の反対側の壁部)に対向している。なお、ハウジング80とヨーク23は一体となっていてもよいし、ヨーク23がブラシアセンブリA2まで延びて円筒部を有していてもよい。
【0089】
ブラシホルダ340のブラシ収容部42には、ブラシ30が収容され、その後側に、ブラシ30をコンミュテータ24側に付勢する付勢部材であるコイルスプリング345が収容されている。コイルスプリング345は、線材を螺旋状に巻くことで形成された圧縮ばねであり、ブラシ30の後端面31Bを押圧する。コイルスプリング345の内径は、ブラシ30の周方向の寸法と同じか小さい。なお、付勢部材としてコイルスプリング345の代わりに、径方向に弾性を有する円環状のゴム部材や皿バネ等の弾性部材を用いてもよい。
【0090】
ブラシホルダ340に収容されるブラシ30の径方向の寸法(摩耗方向の寸法)は、ブラシ30の長寿命化のためには長いほうが望ましい。ブラシ30の径方向の寸法は、ハウジング80の円筒部81の内径と、コンミュテータ24の外径と、ホルダ後端部348の肉厚と、コイルスプリング345の寸法と、ブラシホルダ340の対向面348A及び円筒部81の内周面81Aの間の寸法とに基づいて定められている。一般的に、ブラシホルダの対向面(ホルダ後端部のハウジング側の外面)は、平坦面となっているため、ブラシホルダの周方向側の端部でハウジング80の内周面81Aに当接し、ブラシホルダと円筒部81の内周面81Aとの間に空間(デッドスペース)が形成される。
【0091】
そこで、ブラシホルダと円筒部81の内周面81Aとの間のデッドスペースを小さくするために、ブラシホルダのホルダ後端部の対向面を、円筒部81の内周面81Aに沿って径方向外側に凸状に延ばすことが考えられる。つまり、ホルダ後端部の対向面を、円筒部81の内周面81Aに沿った曲面とすることが考えられる。これにより、ホルダ後端部が平坦形状になっている場合に比べて、コイルスプリング345を円筒部81側に寄せることができる。
【0092】
しかしながら、ホルダ後端部の全域を内周面81Aに沿って延びる凸状部とすると、ホルダ後端部に設けた貫通孔の排水性が損なわれる。ホルダ後端部からの排水性が損なわれると、ブラシホルダ内に浸入した水によりコイルスプリング345等が錆等によって劣化するおそれがある。
【0093】
そこで、本実施形態では、ブラシホルダ340のホルダ後端部348は、凸状部348Bと、周方向両側の凸状部348Bの間に設けられた離間部348Cと、を有している。ホルダ後端部348は、その周方向の全長に亘って均等な肉厚を有しており、対向面348Aの形状に沿って、ホルダ後端部348の内面の形状も形成されている。なお、ホルダ後端部348の内面は、後記する貫通孔349に向かって傾斜する傾斜面となっていてもよい。
【0094】
凸状部348Bは、ホルダ後端部348の周方向の両端部に設けられており、対向面348Aが円筒部81の内周面81Aに沿って径方向外側に凸状に延びている。具体的には、凸状部348Bは、ブラシホルダ340の周方向の側壁の後端位置よりも後方(円筒部81側)に突出している。これにより、コイルスプリング345が配される位置が円筒部81側に寄せられることになる。そのため、コイルスプリング345を径方向外側に配することができ、ブラシ30の摩耗方向の距離を長くすることができる。この際に、コイルスプリング345はホルダ後端部348の凸状部348Bに当接していてもよいし、離間部348Cに当接していてもよい。
【0095】
なお、凸状部348Bは、円筒部81の内周面81Aに当接していてもよい。凸状部348Bは、内周面81Aの形状に沿っていることから、凸状部348Bは内周面81Aに面で接触することができる。これにより、コイルスプリング345の圧縮反力を、ブラシホルダ340を介して、円筒部81でも受けることができる。そのため、ブラシホルダ340のコイルスプリング345が当接する位置の肉厚を薄くすることができる。
【0096】
離間部348Cは、ホルダ後端部348における周方向両側の凸状部348Bの間において、対向面348Aが凸状部348Bよりも内周面81Aから離間させるように設けられている。離間部348Cにおける対向面348Aは、平坦面となっており、その周方向の中央側ほど内周面81Aから離間するようになっている。離間部348Cには、ブラシホルダ340の内外で貫通する貫通孔349が設けられている。貫通孔349は、離間部348Cの周方向の中央に設けられている。そのため、対向面348Aと内周面81Aとの間に設けられたスペースにブラシホルダ340に浸入した水を排出することができる。
【0097】
また、貫通孔349は、コイルスプリング345の内側となる位置に、コイルスプリング345の内径よりも小さい孔として設けられている。これにより、貫通孔349とコイルスプリング345の位置が重ならない状態で、コイルスプリング345と円筒部81との間にホルダ後端部348が配される。つまり、ブラシホルダ340における排水性を良好なものとしつつも、貫通孔349を介してコイルスプリング345とハウジング80が接触することを抑制できる。この場合、コイルスプリング345と円筒部81との間の沿面距離を十分確保できる。なお、貫通孔349は、コイルスプリング345の内径の範囲内で、できるだけ大きくされることが望ましい。
【0098】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の作用及び効果が得られる。
【0099】
本実施形態では、ホルダ後端部348に、周方向両側の凸状部348Bの間において対向面348Aが凸状部348Bよりも円筒部81の内周面81Aから離間する離間部348Cを設けるとともに、この離間部348Cにブラシホルダ340の内外に貫通する貫通孔349を設ける構成とした。これにより、ブラシホルダ340内に浸入した水を離間部348Cに設けられた貫通孔349から好適に排出することができる。
【0100】
ホルダ後端部348において、コイルスプリング345の内側となる位置には、貫通孔349がコイルスプリング345の内径よりも小さい孔として設けられている。これにより、ブラシホルダ340における排水性を良好なものとしつつも、貫通孔349を介してコイルスプリング345とハウジング80が接触することを抑制できる。この場合、コイルスプリング345とハウジング80との間の沿面距離を確保できるため、コイルスプリング345を介してブラシ30とハウジング80との間で短絡が生じることを抑制できる。
【0101】
ホルダ後端部348の凸状部348Bが円筒部81の内周面81Aに当接することで、コイルスプリング345の圧縮反力を、ブラシホルダ340を介して、ハウジング80でも受けることができる。これにより、ブラシホルダ340のコイルスプリング345が当接する位置で必要とされる強度を小さくすることができ、ブラシホルダ340のコイルスプリング345が当接する位置の肉厚を薄くすることができる。そのため、ブラシ30の摩耗方向の距離を長くすることができ、ブラシ30の長寿命化を図ることができる。
【0102】
<変更例>
第3実施形態を以下のように変更して実施してもよい。なお、以下の構成を、上記第3実施形態の構成に対して、個別に適用してもよく、また、任意に組み合わせて適用してもよい。
【0103】
・第1実施形態や第2実施形態のように、コイルスプリング345がブラシ30の周方向の幅よりも大きくてもよい。この場合には、凸状部348Bの内面にコイルスプリング345が当接している。凸状部348Bにより若干コイルスプリング345の位置が円筒部81側に寄ることになる。また、離間部348Cは、コイルスプリング345の当接位置よりも内側で、できるだけ大きくなるようになっていることが望ましい。離間部348Cを大きくすることで、円筒部81の内周面81Aとの間のスペースを大きくすることができる。
【0104】
図14に示すように、ホルダ後端部348の離間部348Cにおいて、貫通孔349の周りとなる位置には、ブラシ30側に凹むことで薄肉となっている薄肉部348Dがさらに設けられていてもよい。薄肉部348Dは、円筒部81の内周面81Aに対向する側(対向面348A)が、円筒部81の内周面81Aから離間するように凹んでいる。また、薄肉部348Dは、コイルスプリング345の内側となる位置、つまりコイルスプリング345がホルダ後端部348に当接する部分の内側に設けられている。これにより、ホルダ後端部348において、コイルスプリング345の当接部分を厚肉として強度を確保しつつ、その内側に薄肉部348Dを設けることで、排水性の向上を図ることができる。
【0105】
図15に示すように、各ブラシホルダ340を囲む円筒部81がテーパ状に形成されているとよい。より具体的には、ハウジング80の円筒部81の内周面81Aは、回転子22側が拡径するようなテーパ状に形成された構成となっているとよい。この内周面81Aは、いわゆる抜き勾配程度の角度を有するテーパ状であってもよい。これにより、図15の破線矢印に示すように、貫通孔349から排出された水が内周面81Aの傾斜に沿って回転子22側(軸方向)に流れる。これにより、排出された水がハウジング80内、より具体的には、ハウジング80とブラシホルダ340との間に滞留することを抑制することができる。
【0106】
そして、貫通孔349は、軸方向において円筒部81が拡径された側、つまり回転子22側に設けられている。具体的には、コイルスプリング345の外側で、かつ軸方向における最も回転子22側に寄った位置に貫通孔349が設けられている。これにより、貫通孔349と円筒部81の内周面81Aとの離間距離が大きくなる。そのため、排水性を向上させることができる。なお、コイルスプリング345の内側の範囲内で、軸方向における中心より回転子22側に寄った位置に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0107】
20…直流モータ、22…回転子、24…コンミュテータ、32…リード線、51…中間部、70…負極側プレート、230…ブラシ、240…ブラシホルダ、247…ホルダ縮小部、250…正極側プレート、252…渡り部。
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