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  • 特許-多連式ギヤポンプ及びポンプシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】多連式ギヤポンプ及びポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20240214BHJP
   F04C 11/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F04C15/00 G
F04C11/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020009382
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116714
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】高宮 健治
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-328958(JP,A)
【文献】特開2010-223118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0051742(US,A1)
【文献】特開2015-194134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 15/00
F04C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行関係となるように配列し、当該配列の端に位置しないものが駆動軸である3個以上の回転軸と、
当該回転軸を各々支持する3個以上の軸受と、
前記回転軸に各々装着され、一列に連なって噛み合うことにより2以上の流体昇圧部を形成する3個以上のギヤとを備え、
前記駆動軸の前記軸受は、前記流体昇圧部に連通する一対の液体入出力口のうち、低圧側に接続され、前記流体昇圧部の流体が潤滑剤として供給される多連式ギヤポンプと、
前記流体昇圧部の接続関係を並列接続あるいは直列接続に切り換える切換流路とを備え、
前記駆動軸の前記軸受は、前記流体昇圧部が前記並列接続の場合に前記低圧側に接続され、前記流体昇圧部が前記直列接続の場合には前記低圧側に代えて高圧側となる前記液体入出力口と接続されて前記潤滑剤が供給されることを特徴とするポンプシステム。
【請求項2】
前記軸受は、静圧パッドを備えるすべり軸受であることを特徴とする請求項1に記載のポンプシステム
【請求項3】
前記回転軸、前記軸受及び前記ギヤの個数は3個であることを特徴とする請求項1または2に記載のポンプシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多連式ギヤポンプ及びポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、直列並列切替用ダブルギヤポンプが開示されている。この直列並列切替用ダブルギヤポンプは、第一昇圧部と第二昇圧部とを有する三連式のギヤポンプを備え、外部流路を切り換えることにより第一昇圧部と第二昇圧部を並列接続した状態(ノーマルモード)と第一昇圧部と第二昇圧部を直列接続した状態(ハーフモード)とに切り替えるものである。ハーフモードは、ノーマルモードの約半分の流量の流体を吐出する動作モードである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-328958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術では、ノーマルモード(並列運転モード)とハーフモード(直列運転モード)とで3つのギヤの軸受に作用する力が変化する。また、上記三連式のギヤポンプでは静圧軸受が用いられることが多く、並列運転モードでは、比較的高圧な吐出流体の一部を各々の静圧軸受に供給することにより静圧軸受の負荷容量(負荷能力)を確保している。
【0005】
しかしながら、吐出流体を静圧軸受の負荷能力を確保するために消費するということは、三連式のギヤポンプ等の多連式ギヤポンプの容量効率を低下させることに他ならない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、軸受の負荷能力を確保しつつ容量効率の低下を従来よりも抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、多連式ギヤポンプに係る第1の解決手段として、互いに平行関係となるように配列し、当該配列の端に位置しないものが駆動軸である3個以上の回転軸と、当該回転軸を各々支持する3個以上の軸受と、前記回転軸に各々装着され、一列に連なって噛み合うことにより2以上の流体昇圧部を形成する3個以上のギヤとを備え、前記駆動軸の前記軸受は、前記流体昇圧部に連通する一対の液体入出力口のうち、低圧側に接続される、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、多連式ギヤポンプに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、静圧パッドを備えるすべり軸受である、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、多連式ギヤポンプに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記回転軸、前記軸受及び前記ギヤの個数は3個である、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、ポンプシステムに係る解決手段として、第1~第3のいずれかの解決手段に係る多連式ギヤポンプと、前記流体昇圧部の接続関係を並列接続あるいは直列接続に切り換える切換流路とを備え、前記軸受は、前記流体昇圧部が前記並列接続の場合に低圧側となり、前記流体昇圧部が前記直列接続の場合には高圧側となる前記液体入出力口と接続される、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸受の負荷能力を確保しつつ容量効率の低下を従来よりも抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る多連式ギヤポンプ及びポンプシステムの構成を示す配管系統図である。
図2A】本発明の一実施形態に係るポンプシステムの並列運転モードにおける動作状態を示す模式図である。
図2B】本発明の一実施形態に係るポンプシステムの直列運転モードにおける動作状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るポンプシステムは、図1に示すように三連式ギヤポンプ1、流入配管2、流出配管3、第1~第5接続配管4~8、逆止弁9及び流量調節弁10を備えている。このポンプシステムは、外部から受け入れた所定の流体(液体)を昇圧して外部に送り出すものである、被昇圧液体である上記流体(液体)は、例えば燃料である。
【0014】
ここで、これら各構成要素のうち、三連式ギヤポンプ1は、本実施形態に係る多連式ギヤポンプである。また、流入配管2、流出配管3、第1~第5接続配管4~8、逆止弁9及び流量調節弁10は、本実施形態における切換流路を構成している。すなわち、切換流路は、後述する第1流体昇圧部S1及び第2流体昇圧部S2の接続関係を並列接続あるいは直列接続に切り換えるものである。
【0015】
三連式ギヤポンプ1は、所定のケーシング1aと、当該ケーシング1a内に収容され、一列に連なって噛み合う第1~第3ギヤ1b~1dと、当該第1~第3ギヤ1b~1dが固定された第1~第3回転軸1e~1gと、当該第1~第3回転軸1e~1gをケーシング1aに対して回転自在に支持する第1~第3軸受1h~1jを備えている。なお、第1~第3回転軸1e~1gのうち、第2回転軸1fは、図示しない駆動源によって回転駆動される駆動軸である。
【0016】
この三連式ギヤポンプ1において、ケーシング1aは、第1~第3ギヤ1b~1d、第1~第3回転軸1e~1g及び第1~第3軸受1h~1jを収容する金属筐体である。このケーシング1aは、外部と流体の入出力を行う第1~第4入出力口P1~P4(液体入出力口)を備える。第1~第4入出力口P1~P4のうち、第1入出力口P1、第2入出力口P2及び第3入出力口P3は、図示するように第1流体昇圧部S1に連通し、また第2入出力口P2、第3入出力口P3及び第4入出力口P4は第2流体昇圧部S2に連通している。
【0017】
第1~第3ギヤ1b~1dは、図示するように外周に所定数の歯が形成された円板状部材であり、連なって噛み合うことにより第1流体昇圧部S1及び第2流体昇圧部S2を形成する。第1流体昇圧部S1は、第1ギヤ1bと第2ギヤ1cとが噛み合って回転することによって被昇圧液体を昇圧する部位である。また、第2流体昇圧部S2は、第2ギヤ1cと第3ギヤ1dとが噛み合って回転することによって被昇圧液体を昇圧する部位である。
【0018】
このような第1~第3ギヤ1b~1dのうち、第1ギヤ1bは、第1回転軸1e及び第1軸受1hを介してケーシング1aに対して回転自在に支持されている。第2ギヤ1cは、第2回転軸1f及び第2軸受1iを介してケーシング1aに対して回転自在に支持されている。また、第3ギヤ1dは、第3回転軸1g及び第3軸受1jを介してケーシング1aに対して回転自在に支持されている。
【0019】
第1~第3回転軸1e~1gは、各々に第1~第3ギヤ1b~1dが同軸状態で装着された棒状部材である。これら第1~第3回転軸1e~1gは、互いに平行関係となるように配列し、当該配列の端に位置しない第2回転軸1fが駆動軸である。例えば、第1回転軸1eは、第1ギヤ1bが当該第1ギヤ1bの回転面に直交する姿勢で装着されている。第2回転軸1fは、第2ギヤ1cが当該第2ギヤ1cの回転面に直交する姿勢で装着されている。第3回転軸1gは、第3ギヤ1dが当該第3ギヤ1dの回転面に直交する姿勢で装着されている。
【0020】
第1~第3軸受1h~1jは、第1~第3回転軸1e~1gの中心軸方向において、第1~第3ギヤ1b~1dの両側に各々一対設けられている。例えば、第1軸受1hは、第1回転軸1eの中心軸方向において第1ギヤ1bの両側に一対設けられ、第2軸受1iは、第2回転軸1fの中心軸方向において第2ギヤ1cの両側に一対設けられ、第3軸受1jは、第3回転軸1gの中心軸方向において第3ギヤ1dの両側に一対設けられている。
【0021】
このような第1~第3軸受1h~1jは、第1~第3回転軸1e~1gを回転自在に支持するものであり、例えばすべり軸受である。すなわち、第1~第3軸受1h~1jは、第1~第3回転軸1e~1gと第1~第3軸受1h~1jとの間で形成されるくさび状の隙間に潤滑剤が連込まれることで流体圧力(潤滑剤による流体潤滑)を発生させることにより、第1~第3軸受1h~1jの回転自在としつつ第1~第3回転軸1e~1gから作用するラジアル荷重を支えるものである。なお、すべり軸受には回転軸との間に静圧パッドを備えるもの知られている。第1~第3軸受1h~1jについては、静圧パッドを備えるすべり軸受を採用してもよい。
【0022】
このような第1~第3軸受1h~1j(すべり軸受)は、潤滑剤として被昇圧液体を用いる。すなわち、第1~第3軸受1h~1jは、被昇圧液体を潤滑剤として受け入れるために、第1~第4入出力口P1~P4のいずれかに接続されている。
【0023】
例えば、第1軸受1hは、第2入出力口P2に接続されている。また、第1軸受1hにおける第2入出力口P2との接続部位は、第1ギヤ1bに作用する被昇圧液体の圧力において比較的低圧となる部位である。この比較的低圧となる部位は、第1ギヤ1bにおいて第1入出力口P1の近傍領域である。
【0024】
第2軸受1iは、第4入出力口P4に接続されている。また、第2軸受1iにおける第1入出力口P1との接続部位は、第2ギヤ1cに作用する被昇圧液体の圧力において比較的低圧となる第1入出力口P1の近傍領域である。
【0025】
また、第3軸受1jは、第3入出力口P3に接続されている。また、この第3軸受1jにおける第3入出力口P3との接続部位は、第4入出力口P4の近傍領域である。
【0026】
このような三連式ギヤポンプ1は、互いに平行関係となるように配列し、当該配列の端に位置しない第2回転軸1fが駆動軸である第1~第3回転軸1e~1gと、当該第1~第3回転軸1e~1gを回転自在に各々支持する第1~第3軸受1h~1jと、第1~第3回転軸1e~1gに各々装着され、連なって噛み合うことにより第1流体昇圧部S1及び第2流体昇圧部S2を形成する第1~第3ギヤ1b~1dとを備え、第2回転軸1f(駆動軸)を支持する第2軸受1iは、第2流体昇圧部S2に連通する第3入出力口P3及び第4入出力口P4のうち、低圧側の第4入出力口P4に接続される多連式ギヤポンプの一種である。
【0027】
流入配管2は、一端が第1入出力口P1に接続され、他端が外部の液体供給源に接続される配管である。この流入配管2は、液体供給源から受け入れた被昇圧液体を三連式ギヤポンプ1に流通させる。流出配管3は、一端が第2入出力口P2に接続され、他端が外部の液体需要先に接続される配管である。この流出配管3は、三連式ギヤポンプ1が吐出した昇圧後の被昇圧液体を液体需要先に流通させる。
【0028】
第1接続配管4は、流入配管2と逆止弁9の第1入出力口とを接続する配管である。第2接続配管5は、逆止弁9の第2入出力口と流量調節弁10の第1入出力口とを接続する配管である。第3接続配管6は、流量調節弁10の第2入出力口と三連式ギヤポンプ1の第3入出力口P3とを接続する配管である。第4接続配管7は、流量調節弁10の第2入出力口と三連式ギヤポンプ1の第2入出力口P2とを接続する配管である。第5接続配管8は、逆止弁9の第2入出力口と三連式ギヤポンプ1の第4入出力口P4とを接続する配管である。
【0029】
逆止弁9は、第1接続配管4と第2接続配管5及び第5接続配管8との間に設けられ、一対の入出力口つまり第1入出力口と第2入出力口を備えている。この逆止弁9は、第1入出力口と第2入出力口との差圧に応じて第1入出力口と第2入出力口との間における被昇圧液体の導通と導通阻止とを自動切換えするバルブである。
【0030】
流量調節弁10は、第2接続配管5と第3接続配管6及び第4接続配管7との間に設けられ、一対の入出力口つまり第1入出力口と第2入出力口を備えている。この流量調節弁10は、第1入出力口と第2入出力口との間を流通する被昇圧液体の流量(通過流量)を調節し得る制御バルブである。
【0031】
次に、本実施形態に係る多連式ギヤポンプ及びポンプシステムの動作について、図2A及び図2Bを参照して詳しく説明する。
【0032】
最初に基本動作について説明するが、本実施形態に係るポンプシステムでは、流量調節弁10が調節されることにより、図2A及び図2Bに示すような2つの動作モードの切り替えが可能である。すなわち、本実施形態に係るポンプシステムは、流量調節弁10を閉状態に設定することにより、図2Aに示すように三連式ギヤポンプ1の第1、第2流体昇圧部S1,S2が並列接続された状態の並列運転モードとなる。
【0033】
また、本実施形態に係るポンプシステムは、流量調節弁10を開状態に設定することにより、図2Bに示すように第1、第2流体昇圧部S1,S2が直列接続された状態の直列運転モードとなる。なお、図2A及び図2Bでは、比較的低圧な被昇圧液体(低圧液体)が流れる部位と比較的高圧な被昇圧液体(高圧液体)とが流れる部位とを異なる態様で、つまり低圧液体を比較的薄く、高圧液体を比較的濃く描いている。
【0034】
並列運転モードについて先に説明すると、流入配管2から三連式ギヤポンプ1の第1入出力口P1に供給された低圧液体は、第2回転軸1f(駆動軸)が図示する方向に回転することによって第1ギヤ1b及び第2ギヤ1cが逆方向に回転駆動される。この結果、第1入出力口P1の低圧液体は、第1流体昇圧部S1で昇圧され、高圧液体として第2入出力口P2及び第3入出力口P3に吐出される。
【0035】
すなわち、第1流体昇圧部S1における昇圧作用によって、低圧液体は、第1流体昇圧部S1によって高圧液体となって第2入出力口P2及び第3入出力口P3に送り出される。そして、この第2入出力口P2の高圧液体は、流出配管3を介して液体需要先に供給される。第3入出力口P3の高圧液体は、第4接続配管7および流出配管3を介して液体需要先に供給される。
【0036】
また、この並列運転モードでは流量調節弁10が閉状態に設定されているので、逆止弁9に作用する差圧が比較的小さい。すなわち、並列運転モードでは逆止弁9が導通状態となる。したがって、液体供給源から流入配管2に供給された低圧液体の一部が三連式ギヤポンプ1の第1入出力口P1だけではなく、第1接続配管4、逆止弁9及び第5接続配管8を介して三連式ギヤポンプ1の第4入出力口P4にも供給される。
【0037】
そして、第4入出力口P4に供給さた低圧液体は、第2ギヤ1c及び第3ギヤ1dが図示する方向に回転することによって、第2流体昇圧部S2で昇圧され高圧液体として第2入出力口P2及び第3入出力口P3に吐出される。この第2入出力口P2の高圧液体は、流出配管3を介して液体需要先に供給される。第3入出力口P3の高圧液体は、第3接続配管6及び第4接続配管7を介して流出配管3に流れることにより液体需要先に供給される。
【0038】
このように並列運転モードは、被昇圧液体の流れ方向つまり流入配管2から流出配管3に向かう方向において、三連式ギヤポンプ1に設けられた第1、第2流体昇圧部S1、S2が並列接続された状態となる。すなわち、並列運転モードでは、第1流体昇圧部S1で昇圧された高圧液体と第2流体昇圧部S2で昇圧された高圧液体とが三連式ギヤポンプ1から吐出される。したがって、この並列運転モードでは、第1流体昇圧部S1の吐出量の約2倍の流量の高圧液体が液体需要先に供給される。
【0039】
一方、直列運転モードでは、流入配管2から第1入出力口P1に供給された低圧液体は、第1流体昇圧部S1で昇圧されて高圧液体として第2入出力口P2及び第3入出力口P3に吐出される。そして、この第2入出力口P2の高圧液体は、流出配管3を介して液体需要先に供給される。第3入出力口P3の高圧液体は、第4接続配管7及び流出配管3を介して液体需要先に供給される。
【0040】
しかし、この直列運転モードでは、流量調節弁10が開状態に設定されているので、初期状態において第3入出力口P3の高圧液体の一部が流量調節弁10を介して逆止弁9の第2入出力口に供給される。すなわち、直列運転モードでは、逆止弁9に作用する差圧が比較的大きくなるので、逆止弁9が非道通状態となる。
【0041】
この結果、第3入出力口P3に吐出される高圧液体の一部は、流量調節弁10に加え、第5接続配管8を介して第2入出力口P2に供給される。そして、この高圧液体は、第2流体昇圧部S2を介して第2入出力口P2に吐出される。そして、上記高圧液体は、流出配管3に流れて液体需要先に供給される。
【0042】
このような直列運転モードでは、被昇圧液体の流れ方向つまり流入配管2から流出配管3に向かう方向において、三連式ギヤポンプ1の第1、第2流体昇圧部S1、S2が直列接続された状態となる。すなわち、直列運転モードでは、第1流体昇圧部S1で昇圧された高圧液体が三連式ギヤポンプ1から吐出される。
【0043】
ここで、並列運転モードにおける第2回転軸1f(駆動軸)に着目すると、図2Aに示すように第2ギヤ1cに作用する被昇圧液体の圧力が周方向においてバランスしており、これによって第2回転軸1f(駆動軸)に作用するラジアル荷重が相殺されている。
【0044】
すなわち、第2回転軸1f(駆動軸)を回転自在に支持する第2軸受1iには、第2回転軸1fから作用するラジアル荷重(ラジアル負荷)が比較的小さい。したがって、この第2軸受1iは、第2回転軸1fから作用する負荷が比較的小さいので、潤滑剤として高負荷用の高圧液体を必要としない。
【0045】
このような本実施形態に係る多連式ギヤポンプ及びポンプシステムでは、第2回転軸1f(駆動軸)及び第2軸受1iに作用する比較的小さなラジアル負荷を考慮することにより、第2軸受1iが低圧液体が流れる第4入出力口P4に接続されている。すなわち、本実施形態では、第2軸受1iにおいて高圧液体を潤滑剤として消費しないので、第2軸受1iの負荷能力を確保しつつ、高圧液体を潤滑剤として消費することによる容量効率の低下を従来よりも抑制することが可能である。
【0046】
なお、第2回転軸1f(駆動軸)以外の第1回転軸1eについては、図2Aに示すように第1ギヤ1bに作用する被昇圧液体の圧力が周方向においてアンバランスであり、ラジアル負荷が比較的大きいが、第1ギヤ1bにおいて被昇圧液体の圧力が比較的低圧な領域つまり第1軸受1hにおいて第1入出力口P1の近傍領域に第2入出力口P2から高圧液体が供給される。したがって、第1軸受1hについてはラジアル負荷に十分に対応することが可能である。
【0047】
また、第3回転軸1gについては、第1回転軸1eと同様に第3ギヤ1dに作用する被昇圧液体の圧力が周方向においてアンバランスであり、ラジアル負荷が比較的大きいが、第3ギヤ1dにおいて被昇圧液体の圧力が比較的低圧な領域つまり第3軸受1jにおいて第4入出力口P4の近傍領域に第3入出力口P3から高圧液体が供給される。したがって、第3軸受1jについてもラジアル負荷に十分に対応することが可能である。
【0048】
一方、直列運転モードでは、図2Bに示すように、第2ギヤ1cに作用する被昇圧液体の圧力が周方向においてアンバランスである。したがって、第2回転軸1fを支持する第2軸受1iに作用するラジアル荷重が比較的大きい。これに対して、第2軸受1iは、高圧液体が流れる第4入出力口P4に接続されており、また第2ギヤ1cに作用する被昇圧液体の圧力が比較的低い第1入出力口P1の近傍領域に第4入出力口P4から高圧液体が供給される。したがって、第2軸受1iは、ラジアル負荷に十分に対応することが可能である。
【0049】
ここで、第4入出力口P4は、並列運転モードつまり第1流体昇圧部S1及び第2流体昇圧部S2の接続関係が並列接続の場合に低圧側となり、直列運転モードつまり第1流体昇圧部S1及び第2流体昇圧部S2の接続関係が直列接続の場合には高圧側となる液体入出力口である。本実施形態では、並列運転モード及び直列運転モードという2つの運転モードを切換流路で切り替える関係で、第4入出力口P4から第2回転軸1f(駆動軸)を支持する第2軸受1iに被昇圧液体(潤滑剤)を供給する。
【0050】
また、第1回転軸1eについては、図2Bに示すように第1ギヤ1bに作用する被昇圧液体の圧力が周方向においてアンバランスであり、ラジアル負荷が比較的大きい。しかし、このような第1回転軸1eを支持する第1軸受1hには、第1ギヤ1bに作用する被昇圧液体の圧力が比較的低圧な第1入出力口P1の近傍領域に第2入出力口P2から高圧液体が供給される。したがって、第1軸受1hは、ラジアル負荷に十分に対応することが可能である。
【0051】
さらに、第3回転軸1gについては、第3ギヤ1dに作用する被昇圧液体の圧力が周方向においてバランスしており、ラジアル負荷が比較的小さい。このような第3回転軸1gを支持する第3軸受1jについては、高圧液体の第3入出力口P3から高圧液体の第4入出力口P4の近傍領域に接続されているので、高圧液体を潤滑剤として消費しないで、ラジアル負荷に十分に対応することが可能である。
【0052】
本実施形態によれば、並列運転モードにおいて第2軸受1iに高圧液体を潤滑剤として供給しない、つまり第2軸受1iにおいて高圧液体を消費しないので、第1軸受1h及び第3軸受1jでのみ高圧液体を消費する。したがって、本実施形態によれば、第1~第3軸受1h~1jの負荷能力を確保しつつ、並列運転モードにおける容量効率の低下を従来よりも抑制することが可能である。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、切換流路を設けることによって並列運転モードと直列運転モードとを切り換えたが、本発明はこれに限定されない。例えば、並列運転モードあるいは直列運転モードのいずれか一方に固定された動作モードとなるように三連式ギヤポンプ1の外部流路を形成してもよい。
【0054】
(2)上記実施形態では、並列運転モードと直列運転モードとで低圧液体から高圧液体に変化する三連式ギヤポンプ1の入出力口つまり第4入出力口P4を第2軸受1iに接続したが、本発明はこれに限定されない。例えば並列運転モードのみで動作させる場合には、第4入出力口P4と同様に低圧液体が流れる第1入出力口P1を第2軸受1iに接続してもよい。
【0055】
(3)上記実施形態では、三連式ギヤポンプ1を採用したが、本発明はこれに限定されない。本発明は連数がさらに多い多連式ギヤポンプ、例えば五連式ギヤポンプにも採用することが可能である。すなわち、本願発明における回転軸、軸受及びギヤの個数は3個以上、つまり本願発明における流体昇圧部の数は2以上であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 三連式ギヤポンプ(多連式ギヤポンプ)
1a ケーシング
1b 第1ギヤ
1c 第2ギヤ
1d 第3ギヤ
1e 第1回転軸
1f 第2回転軸
1g 第3回転軸
1h 第1軸受
1i 第2軸受
1j 第3軸受
2 流入配管
3 流出配管
4 第1接続配管
5 第2接続配管
6 第3接続配管
7 第4接続配管
8 第5接続配管
9 逆止弁
10 流量調節弁
P1 第1入出力口(液体入出力口)
P2 第2入出力口(液体入出力口)
P3 第3入出力口(液体入出力口)
P4 第4入出力口(液体入出力口)
S1 第1流体昇圧部
S2 第2流体昇圧部

図1
図2A
図2B