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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/00 20060101AFI20240214BHJP
   B66B 7/12 20060101ALI20240214BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B66B11/00 Z
B66B7/12 A
B66B11/02 Z
B66B11/02 F
B66B11/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020010044
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021116150
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】竹川 啓玖
【審査官】田口 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197358(JP,A)
【文献】特開平11-240678(JP,A)
【文献】特開2010-013219(JP,A)
【文献】特開2019-156563(JP,A)
【文献】特開2000-086124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00 - 7/12
B66B 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごと、
前記かごを吊り下げる主ロープと、
前記主ロープによって吊り下げられ、前記かごの背面側を昇降するつり合いおもりと、
前記つり合いおもりの移動を案内するガイドレールと、
前記つり合いおもりに設けられ、前記ガイドレールと摺動自在に係合するガイドシューと、
前記ガイドシューの前記かごに対面する側の面の周囲を覆うおもり側遮蔽板と、
前記かごの上面と背面に跨る一部領域を覆うかご側遮蔽板と、を備え、
前記かご側遮蔽板は、最下部を屈曲させて構成されるかご側油受け構造を備えることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記つり合いおもりは、
おもり片と、
前記おもり片が枠内に配置された矩形枠と、を含んで構成され、
前記ガイドシューは、前記ガイドレールに対向するように前記矩形枠に固定され、
前記おもり側遮蔽板は、前記矩形枠に固定されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記ガイドシューの上方に設置され、前記ガイドシューと前記ガイドレールとの間の摩擦を軽減する潤滑油を前記ガイドレールに供給する給油器を更に備え、
前記おもり側遮蔽板は、更に前記給油器の前記かごに対面する側の面の周囲を覆うように構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記おもり側遮蔽板は、最下部を屈曲させて構成されるおもり側油受け構造を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記おもり側油受け構造の内部に配置されたおもり側油吸収材を更に備えることを特徴とする請求項4に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
前記かご側遮蔽板は、ステーを介して前記かごの前記上面及び前記背面から空間を開けて固定されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
前記かごの前記上面にはファン装置が配置され、
前記かご側遮蔽板は、さらに前記ファン装置の上部を覆うように構成されることを特徴とする請求項に記載のエレベータ装置。
【請求項8】
前記かご側遮蔽板は前記かごの前記上面及び前記背面に密接して固定されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のエレベータ装置。
【請求項9】
前記かご側油受け構造の内部に配置されたかご側油吸収材を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかご体は、複数のパネル部材を互いに接続してかご室の内部空間を構成している。特許文献1のエレベータの乗りかご体は、複数のパネルについて2つのパネル部材を互いに接続する対向接触面のかご室外側の合わせ面を覆う閉塞部材を備えている。乗りかご体に設けられたガイドシューとガイドレールとの間には、給油装置から潤滑油が給油される。潤滑油は、ガイドレールとガイドシューの間を通った後、エレベータの昇降路内に移動によって昇降路内に油滴となって飛散する。閉塞部材は、飛散した油がこれら複数のパネル部材の向かい合う隙間から毛細管作用で入り込むことを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-156563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエレベータの乗りかご体は、閉塞部材によって複数のパネル部材の向かい合う隙間を塞いでいるが、これらのパネル部材への油の飛散自体を防ぐことはできない。特に、かごの背面側において昇降するつり合いおもりのガイドシューからは、かごの上面及び背面に向かって油が飛散する。このため、かごを構成するパネル部材に部品を固定するためのねじ穴などが設けられている場合、飛散した油が入り込むおそれがある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、つり合いおもりからかごへ潤滑油が飛来することを抑制することができるエレベータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のエレベータ装置は、エレベータのかごと、かごを吊り下げる主ロープと、主ロープによって吊り下げられ、かごの背面側を昇降するつり合いおもりと、つり合いおもりの移動を案内するガイドレールと、つり合いおもりに設けられ、ガイドレールと摺動自在に係合するガイドシューと、ガイドシューのかごに対面する側の面の周囲を覆うおもり側遮蔽板と、かごの上面と背面に跨る一部領域を覆うかご側遮蔽板と、を備え、かご側遮蔽板は、最下部を屈曲させて構成されるかご側油受け構造を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエレベータ装置によれば、つり合いおもりのガイドシューからの潤滑油の昇降路内への飛散が、おもり側遮蔽板によって防がれる。これにより、潤滑油のかごへの飛来を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるエレベータ装置の例を示す図である。
図2図1のA-A方向からエレベータ装置を見た図である。
図3図1のB-B方向からエレベータ装置を見た図である。
図4図1のC-C断面を示す図である。
図5図1のB-B方向から変形例としてのおもり側遮蔽板を見た拡大図である。
図6図5のD-D方向から変形例としてのおもり側遮蔽板を見た図である。
図7】実施の形態2におけるエレベータ装置の例を示す図である。
図8図7のE-E断面を示す図である。
図9】変形例としてのかご側遮蔽板を、図7のE-Eの位置で切断した断面図である。
図10】変形例としてのかご側遮蔽板を、図7のE-Eの位置で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
実施の形態1.
1-1.実施の形態1の構成
図1は、実施の形態1におけるエレベータ装置の例を示す図である。エレベータ装置は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、複数のパネル部材を互いに接続して内部空間を形成している。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3におけるかご1の背面側を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、主ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。かご1及びつり合いおもり2を吊り下げるためのローピングの方式は、図1に示す例に限定されない。
【0011】
主ロープ4は、巻上機5の駆動綱車6に巻き掛けられる。巻上機5は、制御装置7によって制御される。即ち、制御装置7は、駆動綱車6の回転及び停止を制御する。図1は、制御装置7が機械室8に設けられる例を示す。制御装置7は、昇降路3に設けられても良い。
【0012】
駆動綱車6が回転すると、駆動綱車6が回転した方向に応じた方向に主ロープ4が移動する。主ロープ4が移動する方向に応じてかご1は上昇或いは下降する。かご1の移動は、ガイドレール9によって案内される。ガイドレール9は、例えば一対のガイドレール9a及び9bからなる。以下においては、ガイドレール9a及び9bに共通する事項を説明する場合にガイドレール9と表記する。
【0013】
図2は、図1のA-A方向からエレベータ装置を見た図である。図3は、図1のB-B方向からエレベータ装置を見た図である。図4は、図1のC-C断面を示す図である。ガイドレール9は、鉛直方向に一直線状に設けられる。ガイドレール9は、昇降路3のピット3aから昇降路3の頂部に亘って配置される。ピット3aは、昇降路3のうち最下階の乗場10より下方に形成された空間である。かご1は、ガイドレール9a及び9bの間に配置される。
【0014】
ガイドレール9は、例えばフランジ部11とガイド部12とを備える。フランジ部11に、昇降路3の固定体にガイドレール9を固定するためのブラケット(図示せず)が固定される。ガイド部12は、フランジ部11からかご1側に突出する。ガイドレール9bのガイド部12は、ガイドレール9aのガイド部12に一定の間隔を空けて対向する。
【0015】
かご1は、例えばガイドシュー13を備える。図2に示す例では、かご1は4つのガイドシュー13を備える。ガイドシュー13は、ガイドレール9と摺動自在に係合する。例えば、ガイドシュー13は、ガイドレール9のガイド部12に3方向から対向する。ガイドシュー13がガイド部12に対向することにより、かご1の移動がガイドレール9によって案内される。
【0016】
本実施の形態は、かご1がガイドシュー13を備える例を示す。かご1は、ガイドシュー13の代わりにガイドローラを備えても良い。ガイドローラは、例えばガイドレール9のガイド部12に3方向から対向するローラを備える。
【0017】
つり合いおもり2は、矩形枠20と、矩形枠20の枠内に配置されたおもり片21と、を備える。つり合いおもり2は、かご1の背面側の昇降路3において、かご1が移動する方向とは反対の方向に移動する。つり合いおもり2の移動は、ガイドレール14によって案内される。ガイドレール14は、例えば一対のガイドレール14a及び14bからなる。以下においては、ガイドレール14a及び14bに共通する事項を説明する場合にガイドレール14と表記する。
【0018】
ガイドレール14は、鉛直方向に一直線状に設けられる。ガイドレール14は、昇降路3のピット3aから昇降路3の頂部に亘って配置される。つり合いおもり2は、ガイドレール14a及び14bの間に配置される。
【0019】
ガイドレール14の形状は、ガイドレール9の形状と同様である。ガイドレール14は、例えばフランジ部15とガイド部16とを備える。フランジ部15に、昇降路3の固定体にガイドレール14を固定するためのブラケット(図示せず)が固定される。ガイド部16は、フランジ部15からつり合いおもり2側に突出する。ガイドレール14bのガイド部16は、ガイドレール14aのガイド部16に一定の間隔を空けて対向する。
【0020】
つり合いおもり2は、例えばガイドシュー17を備える。つり合いおもり2は、例えばかご1と同様に4つのガイドシュー17を備える。4つのガイドシュー17は、ガイドレール14と摺動自在に係合するように、矩形枠20の上端側の両端及び下端側の両端にそれぞれ固定される。例えば、ガイドシュー17は、ガイドレール14のガイド部16に3方向から対向する。ガイドシュー17がガイド部16に対向することにより、つり合いおもり2の移動がガイドレール14によって案内される。
【0021】
本実施の形態は、つり合いおもり2がガイドシュー17を備える例を示す。つり合いおもり2は、ガイドシュー17の代わりにガイドローラを備えても良い。ガイドローラは、例えばガイドレール14のガイド部16に3方向から対向するローラを備える。
【0022】
つり合いおもり2は、給油器24を備える。給油器24は、ガイドシュー17とガイドレール14との間の摩擦を軽減する潤滑油をガイドレール14に供給するための装置である。つり合いおもり2は、例えば2つの給油器24を備える。2つの給油器24は、ガイドレール14に対向するように、矩形枠20の上部の両端にそれぞれ固定される。なお、給油器24の具体的な構造に限定はない。すなわち、給油器24は、ガイドレール14に潤滑油を供給するための公知の構造を採用することができる。
【0023】
制御装置7は、乗場10の位置に合わせてかご1を停止させる。図1は、かご1が中間階の乗場10に停止した状態を示す。各階の乗場10に乗場ドア装置18が設けられる。かご1にかごドア装置19が備えられる。
【0024】
1-2.実施の形態1の特徴
次に、実施の形態1のエレベータ装置の特徴的構成について説明する。実施の形態1のエレベータ装置のつり合いおもり2は、おもり側遮蔽板30を備えている。つり合いおもり2は、例えばガイドシュー17と同数の4つのおもり側遮蔽板30を備える。おもり側遮蔽板30は、例えば矩形形状の板材である。4つのおもり側遮蔽板30は、昇降路3内におけるかご1の背面側に対面するように、4つのガイドシュー17の周囲にそれぞれ配置される。それぞれのおもり側遮蔽板30の水平方向の大きさは、少なくとも対面するガイドシュー17を覆う大きさとされる。おもり側遮蔽板30の水平方向の大きさは、さらにガイド部16を覆う大きさとすることが好ましく、フランジ部15まで覆う大きさとすることがさらに好ましい。おもり側遮蔽板30の鉛直方向の大きさは、少なくとも対面するガイドシュー17を覆う大きさとされる。
【0025】
なお、上端側のガイドシュー17の上方には給油器24が設けられている。そこで、上端側のガイドシュー17に対応するおもり側遮蔽板30は、ガイドシュー17に加えて、対面する給油器24も更に覆う大きさとすることが好ましい。
【0026】
4つのおもり側遮蔽板30は、それぞれ矩形枠20にボルト等の締結部材32によって固定される。これにより、4つのおもり側遮蔽板30は、つり合いおもり2と共に昇降路3内を上下に昇降する。
【0027】
エレベータ装置のかご1が昇降すると、それに伴いつり合いおもり2は逆方向に昇降する。つり合いおもり2が上下方向に移動すると、ガイドシュー17とガイドレール14との間には、給油器24によって潤滑油が供給される。供給された潤滑油は、ガイドレール14に対するガイドシュー17及び給油器24の移動によって生じる風圧などの影響によって周囲に飛散する。
【0028】
実施の形態1のエレベータ装置は、つり合いおもり2におもり側遮蔽板30が設けられている。このような構造によれば、ガイドシュー17及び給油器24から飛散した潤滑油が当該おもり側遮蔽板30に付着する。これにより、潤滑油が広い範囲に拡散する前の段階で潤滑油の飛散を抑えることができる。これにより、潤滑油がつり合いおもり2からかご1の側へと飛来することを抑制することができるので、かご1のパネル部材の合わせ目等から内部空間へと潤滑油が染み込むことを防ぐことができる。
【0029】
また、実施の形態1のおもり側遮蔽板30は、ガイドシュー17だけでなく給油器24も覆う大きさに構成されている。このため、給油器24からの潤滑油の飛散についても、広い範囲に拡散する前に防ぐことができる。
【0030】
1-3.実施の形態1の変形例
実施の形態1のエレベータ装置は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0031】
おもり側遮蔽板30の形状および取り付け構造は上述した例に限られない。すなわち、おもり側遮蔽板30は、ガイドレール14などの他部品と干渉しない範囲において、ガイドシュー17及び給油器24から飛来した潤滑油が付着するような他の形状及び配置を採用し得る。
【0032】
おもり側遮蔽板30の最下部に潤滑油を捕集するための構造を設けてもよい。図5は、図1のB-B方向から変形例としてのおもり側遮蔽板を見た拡大図である。図6は、図5のD-D方向から変形例としてのおもり側遮蔽板を見た図である。図5及び図6に示すように、変形例としてのおもり側遮蔽板30は、最下部におもり側油受け構造302を備えている。おもり側油受け構造302は、おもり側遮蔽板30の最下部をコの字状に屈曲させることにより形成されている。おもり側油受け構造302の内部には、潤滑油を吸収するおもり側油吸収材304が配置されている。おもり側油吸収材304には、例えばフェルトが使用される。
【0033】
ガイドシュー17又は給油器24から飛来しておもり側遮蔽板30に付着した潤滑油は、下方に向かって垂れていく。おもり側遮蔽板30のおもり側油受け構造302は、潤滑油を最下部において捕集し、おもり側油吸収材304に吸収させる。このような構造によれば、おもり側遮蔽板30に付着した潤滑油が再び昇降路3内に飛散することを防ぐことができる。
【0034】
なお、図5及び図6は、矩形枠20の上端側の一方に設けられたおもり側遮蔽板30を図示しているが、他の箇所に設けられたおもり側遮蔽板30についても同様の構造を適用することができる。
【0035】
また、おもり側油受け構造302は、上記の構造に限られない。例えば、おもり側油受け構造302は、潤滑油をおもり側遮蔽板30の最下部の辺全体ではなく、例えば辺の中央等の一か所に集めるように屈曲させてもよい。また、潤滑油を溜めることができるように、おもり側油受け構造302の最下部が有底容器状に屈曲されているのであれば、おもり側油吸収材304の構成は必ずしも必須ではない。また、おもり側油受け構造302は、他の部品と干渉しない範囲において、例えばガイドレール14の側に屈曲させて形成してもよい。
【0036】
実施の形態1のエレベータ装置は、機械室を備えない機械室レス(MRL;Machine Room-Less)のエレベータ装置として構成されていてもよい。一般的に、機械室レスのエレベータ装置は、機械室を備えるエレベータ装置に比べて、かごとつり合いおもりがさらに接近して配置される。このため、機械室レスのエレベータ装置では、おもり側遮蔽板30による潤滑油の付着抑制効果の恩恵がより大きなものとなる。
【0037】
2.実施の形態2.
2-1.実施の形態2の特徴
実施の形態1では、つり合いおもり2におもり側遮蔽板30を設ける例について説明した。本実施の形態では、かご1に遮蔽板を設ける例について説明する。図7は、実施の形態2におけるエレベータ装置の例を示す図である。図7は、図1のA-A方向と同じ方向からエレベータ装置を見た図である。図8は、図7のE-E断面を示す図である。本実施の形態におけるエレベータ装置の基本的な構成は、実施の形態1で開示した構成と同様である。
【0038】
本実施の形態におけるエレベータ装置のかご1は、複数のパネル部材を組み合わせて構成されている。より詳しくは、かご1は、背面を形成する背面パネル部材102と、上面を形成する天井パネル部材104と、側面を形成する側面パネル部材106と、を互いに密接させて組み合わせることよって内部空間を形成している。かご1の天井パネル部材104の上部には、内部空間の空調のためのファン装置42が設置されている。
【0039】
かご1は、かご側遮蔽板40を備えている。かご側遮蔽板40は、天井パネル部材104によって形成されるかご1の上面から背面パネル部材102によって形成されるかご1の背面に跨る一部領域を覆うようにL字状に屈曲させた形状を有している。かご側遮蔽板40は、ステー404を介して天井パネル部材104及び背面パネル部材102から空間を開けて固定される。
【0040】
かご側遮蔽板40の幅方向の大きさは、かご1の幅方向全体を覆う大きさとされる。かご側遮蔽板40の奥行方向の大きさは、少なくともファン装置42の上方を覆う大きさとされる。さらに、かご側遮蔽板40の鉛直方向の大きさは、少なくとも天井パネル部材104と背面パネル部材102との合わせ目を覆う大きさとされる。
【0041】
つり合いおもり2のガイドシュー17又は給油器24から飛散した潤滑油の一部は、おもり側遮蔽板30に付着せずに昇降路3内に飛散する。飛散した潤滑油は、かご1の背面側の領域に上方から飛来して付着する。実施の形態2のかご側遮蔽板40は、ファン装置42と、天井パネル部材104の背面側の領域及び側面パネル部材106の上側の領域を上方から覆うように構成されている。このような構成によれば、飛来した潤滑油がかご1のパネル部材に付着して合わせ目から染み込むことを防ぐことができる。
【0042】
また、実施の形態2のかご側遮蔽板40は、ファン装置42も覆う大きさに構成されているため、飛来した潤滑油がファン装置42又はその取り付け穴からかご1の内部に侵入することを防ぐことができる。
【0043】
2-2.実施の形態2の変形例
実施の形態2のエレベータ装置は、以下のように変形した態様を適用してもよい。
【0044】
かご側遮蔽板40の形状および取り付け構造は上述した例に限られない。すなわち、かご側遮蔽板40は、つり合いおもり2などの他部品と干渉しない範囲において、潤滑油の飛来場所を覆うような他の形状及び配置を採用し得る。
【0045】
図9は、変形例としてのかご側遮蔽板を、図7のE-Eの位置で切断した断面図である。この図に示すように、天井パネル部材104の上部にファン装置42を備えていない場合、かご側遮蔽板40は、天井パネル部材104の背面側の領域と背面パネル部材102の上部領域とに密着して構成されていてもよい。このような構成によれば、簡易な構成でかご1のパネル部材の合わせ目から潤滑油が染み込むことを防ぐことができる。
【0046】
かご側遮蔽板40の最下部に潤滑油を捕集するための構造を設けてもよい。図10は、変形例としてのかご側遮蔽板を、図7のE-Eの位置で切断した断面図である。図10に示すように、変形例としてのかご側遮蔽板40は、最下部にかご側油受け構造406を備えている。かご側油受け構造406は、かご側遮蔽板40の最下部をコの字状に屈曲させることにより形成されている。かご側油受け構造406の内部には、潤滑油を吸収するかご側油吸収材408が配置されている。かご側油吸収材408には、例えばフェルトが使用される。
【0047】
つり合いおもり2のガイドシュー17又は給油器24から飛来してかご側遮蔽板40に付着した潤滑油は、下方に向かって垂れていく。かご側遮蔽板40のかご側油受け構造406は、潤滑油を最下部において捕集し、かご側油吸収材408に吸収させる。このような構造によれば、かご側遮蔽板40に付着した潤滑油が背面パネル部材102に垂れることを防ぐことができる。
【0048】
なお、図10は、実施の形態2のかご側遮蔽板40を図示しているが、かご側油受け構造406は、図9に例示した変形例としてのかご側遮蔽板40にも適用することができる。
【0049】
また、かご側油受け構造406は、上記の構造に限られない。例えば、かご側油受け構造406は、潤滑油をかご側遮蔽板40の最下部の辺全体ではなく、例えば辺の中央等の一か所に集めるように屈曲させてもよい。また、潤滑油を溜めることができるように、かご側油受け構造402の最下部が有底容器状に屈曲されているのであれば、かご側油吸収材408の構成は必ずしも必須ではない。
【0050】
実施の形態2のエレベータ装置は、機械室を備えない機械室レスのエレベータ装置として構成されていてもよい。一般的に、機械室レスのエレベータ装置は、機械室を備えるエレベータ装置に比べて、かごとつり合いおもりがさらに接近して配置される。このため、機械室レスのエレベータ装置では、かご側遮蔽板40による潤滑油の付着抑制効果の恩恵がより大きなものとなる。
【符号の説明】
【0051】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 3a ピット、 4 主ロープ、 5 巻上機、 6 駆動綱車、 7 制御装置、 8 機械室、 9 ガイドレール、 9a ガイドレール、 9b ガイドレール、 10 乗場、 11 フランジ部、 12 ガイド部、 13 ガイドシュー、 14 ガイドレール、 14a ガイドレール、 14b ガイドレール、 15 フランジ部、 16 ガイド部、 17 ガイドシュー、 18 乗場ドア装置、 19 かごドア装置、 20 矩形枠、 21 おもり片、 24 給油器、 30 おもり側遮蔽板、 32 締結部材、 40 かご側遮蔽板、 42 ファン装置、 102 背面パネル部材、 104 天井パネル部材、 106 側面パネル部材、 302 おもり側油受け構造、 304 おもり側油吸収材、 404 ステー、 406 かご側油受け構造、 408 かご側油吸収材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10