(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】表示装置および画像の表示方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240214BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240214BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20240214BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
G02B5/32
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2020011413
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2019080697
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】野口 俊幸
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-036955(JP,A)
【文献】米国特許第10088685(US,B1)
【文献】特開2005-241825(JP,A)
【文献】特開2007-094175(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0071612(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
G02B 5/18
G02B 5/32
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーの原画像の色度範囲を修正する修正部と、
前記原画像の色度範囲が修正された画像を形成し前記画像に対応する画像光を出射する
画像形成部と、
前記画像光を表示位置まで導く導光体と、
前記導光体に設けられ、前記画像光の進行方向を観察者に向けて偏向する第1回折光学
素子と、を備え、
前記修正部は、前記第1回折光学素子に入射する
前記画像光のうち、第1の角度で入射
する前記画像光の有する色度範囲を前記第1の角度より大きな角度である第2の角度で入
射する前記画像光の有する色度範囲に近づけるように、前記原画像のうち前記第1の角度
に対応した位置の色度範囲を制限し、
前記原画像のうち前記第1の角度に対応した位置にある画像の取り得る色度範囲を小画
角色度範囲とし、前記原画像のうち前記第2の角度に対応した位置にある画像の取り得る
色度範囲を大画角色度範囲とし、前記原画像のうち前記第1の角度に対応した位置と前記
第2の角度に対応した位置との間の位置にある画像の取り得る色度範囲を中央色度範囲と
し、前記小画角色度範囲と、前記中央色度範囲と、前記大画角色度範囲と、の重なる範囲
を共通範囲としたとき、前記修正部は、前記原画像の
色度範囲が前記共通範囲となるよう
に修正し、
前記小画角色度範囲は、前記中央色度範囲より広く、
前記中央色度範囲は、前記大画角色度範囲より広く、
前記画像が第1画角範囲における前記共通範囲は、前記画像が
前記第1画角範囲よりも
大きい第2画角範囲における前記共通範囲よりも広く、
前記第1の角度と前記第2の角度とは、それぞれ、前記画像光と、前記導光体と前記第
1回折光学素子との境界と、が成す角度である、表示装置。
【請求項2】
前記修正部は、
前記大画角色度範囲に対応する位置の画像に対する色度範囲を、前記中央色度範囲に対
応する位置の画像の色度範囲よりも制限する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記カラーの原画像は三原色によって再現可能なフルカラー画像であり、
前記修正部は、
色度範囲をXYZ表色系におけるXY色度座標で表わしたとき、
前記第1の角度で入射する前記画像光の有する色度範囲を前記XY色度座標で表わす
第1の三角形が、前記第2の角度で入射する前記画像光の有する色度範囲を前記XY色度
座標で表わす第2の三角形に近付くように、前記原画像の
色度範囲を制限する、請求項1
または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の三角形は、前記第2の三角形に、面積で80%以上重なる、請求項3に記載
の表示装置。
【請求項5】
前記導光体は、前記画像形成部が出射した前記画像光が入射する入射部と、前記画像光
を出射する出射部と、を有し、
前記第1回折光学素子は、前記導光体の前記出射部に設けられる、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記導光体の
前記入射部に設けられ、前記画像光の
前記進行方向を偏向する第2回折光
学素子を備える、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2回折光学素子は、平面状の干渉縞で構成された反射型体積ホログラムである、
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1回折光学素子は、平面状の干渉縞で構成された反射型体積ホログラムである、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記画像形成部が出射する前記画像光は、波長の互いに異なる第1画像光と第2画像光
と第3画像光とを含み、
前記第1回折光学素子は、前記第1画像光の波長に対応した第1干渉縞と前記第2画像
光の波長に対応した第2干渉縞と前記第3画像光の波長に対応した第3干渉縞とが積層ま
たは重畳されている、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1画像光のピーク波長は赤(R)であり、
前記第2画像光のピーク波長は緑(G)であり、
前記第3画像光のピーク波長は青(B)である、請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
カラーの原画像に基づく画像を表示する表示方法であって、
前記原画像に対応した画像光を
導光体により表示位置まで導き、回折光学素子により、
前記画像光の進行方向を観察者に向けて偏向して表示し、
前記原画像の表示に際して、前記回折光学素子に入射する前記画像光のうち、第1の角
度で入射する前記画像光の有する色度範囲を、前記第1の角度より大きな角度である第2
の角度で入射する前記画像光の有する色度範囲に近づけるように、前記原画像のうち前記
第1の角度に対応した位置の色度範囲を制限し、
前記原画像のうち前記第1の角度に対応した位置にある画像の取り得る色度範囲を小画
角色度範囲とし、前記原画像のうち前記第2の角度に対応した位置にある画像の取り得る
色度範囲を大画角色度範囲とし、前記原画像のうち前記第1の角度に対応した位置と前記
第2の角度に対応した位置との間の位置にある画像の取り得る色度範囲を中央色度範囲と
し、前記小画角色度範囲と、前記中央色度範囲と、前記大画角色度範囲と、の重なる範囲
を共通範囲としたとき、前記原画像の
色度範囲を前記共通範囲となるように修正し、
前記小画角色度範囲は、前記中央色度範囲より広く、
前記中央色度範囲は、前記大画角色度範囲より広く、
前記画像が第1画角範囲における前記共通範囲は、前記画像が
前記第1画角範囲よりも
大きい第2画角範囲における前記共通範囲よりも広く、
前記第1の角度と前記第2の角度とは、それぞれ、前記画像光と、前記導光体と
前記回
折光学素子との境界と、が成す角度である、表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回折光学素子を用いた表示装置とその表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡型の表示装置が種々提案されている。こうした表示装置では、表示装置自体の透過性が高く外景が見えるシースルー型であるか否かを問わず、装置の小型化や薄型化が求められる。表示装置は、画像を形成する画像形成部と、眼の前に配置されて画像を表示する表示部と、両者を繋ぐ導光部から構成される。通常、導光部では、入射した光が内部で全反射を繰り返しながら導かれる。このため、表示装置の小型化・薄型化を図ろうとすると、画像形成部からの光を導光部に導くために、光の進行方向を大きく変更することが求められる。これは、導光部からの光を表示部に導く場合も同様である。こうした目的のために、回折光学素子(ホログラフィック光学素子ともいう)が用いられる。
【0003】
回折光学素子は、ブラッグの条件を満たす方向に光を偏光するため、入射光の角度が異なると、特定の方向に反射する光の主波長にズレを生じる。この結果、表示部の面内で色むらが生じてしまう。そこで、表示部に白色を表示し、面内の色むらを観察し、例えば赤っぽく表示されているところはR成分を抑制する、といった対応を取ることにより、面内の色むらを抑制する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回折光学素子は、入射する光の波長毎に回折効率の変化の態様が異なるので、白色を表示する場合の色むらを抑制しても、他の色を表示する際には色むらが生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態としての表示装置を含む。この表示装置は、カラーの原画像の色度
範囲を修正する修正部と、前記原画像の色度範囲が修正された画像を形成し前記画像に対
応する画像光を出射する画像形成部と、前記画像光を表示位置まで導く導光体と、前記導
光体に設けられ、前記画像光の進行方向を観察者に向けて偏向する第1回折光学素子と、
を備え、前記修正部は、前記第1回折光学素子に入射する前記画像光のうち、第1の角度
で入射する前記画像光の有する色度範囲を前記第1の角度より大きな角度である第2の角
度で入射する前記画像光の有する色度範囲に近づけるように、前記原画像のうち前記第1
の角度に対応した位置の色度範囲を制限し、前記原画像のうち前記第1の角度に対応した
位置にある画像の取り得る色度範囲を小画角色度範囲とし、前記原画像のうち前記第2の
角度に対応した位置にある画像の取り得る色度範囲を大画角色度範囲とし、前記原画像の
うち前記第1の角度に対応した位置と前記第2の角度に対応した位置との間の位置にある
画像の取り得る色度範囲を中央色度範囲とし、前記小画角色度範囲と、前記中央色度範囲
と、前記大画角色度範囲と、の重なる範囲を共通範囲としたとき、前記修正部は、前記原
画像の色度範囲が前記共通範囲となるように修正し、前記小画角色度範囲は、前記中央色
度範囲より広く、前記中央色度範囲は、前記大画角色度範囲より広く、前記画像が第1画
角範囲における前記共通範囲は、前記画像が前記第1画角範囲よりも大きい第2画角範囲
における前記共通範囲よりも広く、前記第1の角度と前記第2の角度とは、それぞれ、前
記画像光と、前記導光体と前記第1回折光学素子との境界と、が成す角度である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の表示装置の外観を例示する斜視図。
【
図3】回折光学素子と導光体における入射角度を示す説明図。
【
図4】回折光学素子における波長と回折効率との関係を示す説明図。
【
図8A】画角±3°の場合に表現可能な色度範囲を示す説明図。
【
図8B】画角±5°の場合に表現可能な色度範囲を示す説明図。
【
図8C】画角±8°の場合に表現可能な色度範囲を示す説明図。
【
図8D】画角±10°の場合に表現可能な色度範囲を示す説明図。
【
図9】他の実施形態における左眼表示部の構造を模式的に示す説明図。
【
図10】他の実施形態における左眼表示部の構造を模式的に示す説明図。
【
図11】他の実施形態における光学系の配置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態としての表示装置20の斜視図である。
図1に示すように、この表示装置20は、いわゆる眼鏡タイプのものであり、使用する者は、表示装置20を通して外景を視認できる、いわゆるシースルータイプである。表示装置20は、使用する者(以下、観察者という)からみて左右に配置された左眼表示部30および右眼表示部40、両表示部30,40を繋ぐブリッジ22、左眼表示部30の端部に取り付けられた左テンプル37、右眼表示部40の端部に取り付けられた右テンプル47、左テンプル37の肉厚部に内蔵された左画像形成部39,右テンプル47の肉厚部に内蔵された右画像形成部49、これら左画像形成部39および右画像形成部49に無線により画像データを送信する画像送信装置80を備える。
【0009】
画像送信装置80は、写真や画像などを編集・保存可能な端末であり、例えばスマートフォンやタブレット等、あるいは専用装置として実現される。画像送信装置80は、起動用の起動ボタン81と、タッチパネルが表面に積層されたディスプレイ82とを備え、タッチパネルを操作することで、記憶した写真などの静止画や動画などを、左右の画像形成部39,49に送信する。左右のテンプル37,47の先端は先セルとして下方に湾曲しており、使用者の耳介に表示装置20を装着するのに利用される。
【0010】
左眼表示部30と右眼表示部40とは、左右対称に各部品が配置される点を除いて同一の構造を備えるので、以下、左眼表示部30を例として、その構造を説明するが、各部の構成と機能は、右眼表示部40についても同様である。
図2は、左眼表示部30の構成を模式的に示す説明図である。図示するように、左テンプル37に内蔵された画像形成部39は、アンテナ38を介して、画像送信装置80から画像の送信を受けると、受け取った画像を、ELディスプレイ51上に形成する。ELディスプレイ51は、RGBの3原色を発光する微小な素子が配列されたディスプレイである。ELディスプレイ51上に形成された画像はELディスプレイから画像光として出射され、コリメートレンズ52により平行化されて、左眼表示部30に入射する。なお、ELディスプレイ51に代えて、光源として機能するバックライトとLCDの組合せや、微少なLEDを配列したディスプレイ、あるいはレーザダイオードとMMDの組み合わせなどを用いることも可能である。以下、ELディスプレイ51は、単にディスプレイ51とも呼ぶ。ディスプレイ51上に形成される画像は、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。また、画像は、三原色(RGB)を用いたフルカラー画像であってもよいし、2つの原色(例えばRとG)を用いた制限されたカラー画像であってもよい。
【0011】
本実施形態では光学系を形成する導光体31,41は、
図1に示すように、観察者の両眼の並び方向に光を導光するように配置される。他の実施形態も含めて、本明細書での方向の呼び方について説明する。使用者が直立して表示装置20を装着した際の重力方向を下方向、その反対方向を上方向と呼ぶ。頭部に対しては、この方向を上下方向と呼ぶ。また、この上下方向に略直交し、両眼の並び方向を左右方向と呼ぶ。第1実施形態では、左眼表示部30,右眼表示部40は、左右方向に沿って配列されている。他方、導光体31,41に対しては、その内部において光が導かれる方向(一般に、導光体31,41の長手方向)を導光方向と呼び、導光体31,41の入射回折光学素子33,出射回折光学素子35が設けられている面内において、導光方向に直交する方向を幅方向とよぶ。第1実施形態では、左右方向が導光方向に一致し、上下方向が幅方向に一致している。
【0012】
左眼表示部30は、導光体31の両側端部付近におけるELディスプレイ51からの光が入射する面とは反対側の面に、入射回折光学素子33と出射回折光学素子35とを備える。入射回折光学素子33および出射回折光学素子35は、本実施形態では、光の回折を生じさせるパターンを備える反射型体積ホログラム(反射型体積ホログラフィック素子ともいう)であって、三原色であるRGBの各色に対応した干渉縞を一体に形成した一体型のホログラムを用いた。従って、入射回折光学素子33および出射回折光学素子35には、RGB用の干渉縞が含まれており、各色の光は、それぞれの干渉縞により回折するが、説明の便を図って、RGB各色は、単に入射回折光学素子33,出射回折光学素子35により回折するとして説明する。
【0013】
B.画像に生じ得る色むらについて:
こうした回折光学素子を用いて画像を表示する場合の色むらの発生について説明する。
図2では、便宜上、ディスプレイ51からの画像光が入射回折光学素子33に入射する位置の違いや、出射回折光学素子35から出射する画像光の位置の違い、特に導光方向の位置の違いを、画角θの違いとして表わした。ディスプレイ51からコリメートレンズ52を介して入射する光は、入射回折光学素子33により、その進行方向を大きく偏向し、導光体31の境界面で全反射しながら導光体31内を進み、出射回折光学素子35で、その進行方向を大きく変え、表示装置20を装着した観察者の瞳EY方向へと射出する。この射出する画像光の角度を、出射回折光学素子35の中心部から法線方向に射出する光の画角θcに対して、出射回折光学素子35の端部であって、入射回折光学素子33からは最も遠い端部に入射する画像光の画角をθ+、これとは反対側の端部に入射する画像光の画角をθ-、とする。同様に、入射回折光学素子33については、ディスプレイ51の中央から出て、入射回折光学素子33に入射する画像光の画角θcに対して、入射回折光学素子33の端部であって、出射回折光学素子35から最も遠い端部に入射する画像光の画角をθ+、これとは反対側の端部に入射する画像光の画角をθ-、とした。
【0014】
入射回折光学素子33および出射回折光学素子35として採用した回折光学素子は、反射型体積ホログラムであって、回折用のパターンとしての干渉縞を備える。干渉縞は互いに屈折率が異なる平面状の層が所定の方向(ピッチ方向)に沿って交互に積層された構造であり、所定の方向に沿った干渉縞の間隔をピッチd、入射する光の波長をλとすると、次式(1)を満たす角度方向αに、入射光を回折する。
d・sinα=m・λ …(1)
なお、式(1)において、mは、次数であり、一般にm=1の方向への回折光が支配的となる。入射回折光学素子33および出射回折光学素子35に形成された干渉縞等によるパターンは、光を偏向させるためのものなので、このパターンのピッチ方向は、入射光の進行方向に対し導光の方向に傾斜しており、入射光が入射する面に対して傾斜している。したがって、反射型体積ホログラムの入射光が入射する面上においては、導光の方向と交差する方向に延在する干渉縞等によるパターンが、導光の方向に沿ってピッチdとは異なるピッチで配置されている。本実施形態では、出射回折光学素子35が第1回折光学素子に相当し、入射回折光学素子33が第2回折光学素子に相当する。
【0015】
入射回折光学素子33や出射回折光学素子35では、その導光方向の位置により、入射する光の角度が相違する。この角度の相違を
図3に示した。
図3は、出射回折光学素子35を示す。導光体31内を全反射を繰り返しながら、入射回折光学素子33から出射回折光学素子35に至った光は、出射回折光学素子35において入射回折光学素子33側に近い位置で回折して、観察者の瞳EYに至る画像光と、出射回折光学素子35において入射回折光学素子33から遠い位置で回折して、観察者の瞳EYに至る画像光とでは、その回折の角度が異なる。この相違は、
図2では、ディスプレイ51から入射回折光学素子33に入射する画像光の画角の違いや、出射回折光学素子35から瞳EYに入射する画像光の画角として示したが、
図3では、各画像光の入射角度の違いとして表わした。両者は、上述した式(1)における角度αの相違という点では、本質的に同一である。
図3では、出射回折光学素子35において最も入射回折光学素子33側に近い位置で回折する画像光の入射角度をθ-、出射回折光学素子35において最も導光体31側に近い位置で回折する画像光の入射角度をθ+、両者の中間、出射回折光学素子35のほぼ中心位置で回折する画像光の入射角度をθc、として示した。出射回折光学素子35の性能、つまり式(1)に従う波長と回折角度との関係は、中心位置での画像光の入射角度θcにより設計されているので、
図3における入射角度θ-,θ+は、この中心位置での画像光の入射角度θcからの偏差として扱う。
【0016】
出射回折光学素子35において画像光が入射する導光方向の位置が異なると、入射角度が異なる。このとき、出射回折光学素子35の特性が、出射回折光学素子35の導光方向中心位置における入射角度θcにおいて、所定の色(基準波長λ)に対して上記式(1)が満たされるように設計されているとすれば、出射回折光学素子35の両端の位置での入射角度θ-,θ+では、式(1)は必ずしも満たされない。出射回折光学素子35の両端において入射角度θ-,θ+で入射する画像光が、式(1)を満たすとすれば、その画像光の波長は、中心位置で式(1)を満たす画像光の波長とは異なる。
【0017】
この様子を
図4に例示した。
図4は、出射回折光学素子35の中心位置における入射角度θcに対して、入射角度が5°増減した場合に式(1)を満たす波長がどの程度シフトするかを示す。仮に同一の波長範囲でかつ強度の等しい画像光が、出射回折光学素子35に対して入射したとすると、入射角度が式(1)を満たす角度から増減するにつれて、回折効率は低下し、回折される光の強度も低下する。
図4では、出射回折光学素子35の中心位置における入射角度θcに対して、入射角度が5°増減した場合を示したが、入射角度の増減が小さければ、つまり中心位置に近い位置においては、回折効率がピークとなる波長のズレは小さく、同じ波長範囲の画像光の回折効率の低下も小さくなる。逆に、出射回折光学素子35の中心位置における入射角度θcに対して、入射角度の増減が大きければ、つまり中心位置から更に遠い位置においては、回折効率がピークとなる波長のズレは大きく、同じ波長範囲の画像光の回折効率の低下も大きくなる。入射角度θcは、中心位置での画像光の入射角度であることから、以下、これを基準画角θcとも呼ぶ。この基準画角θcに対する偏差として扱う場合には、出射回折光学素子35において基準画角θcより入射角度が小さくなる画像光の入射角度θ-を、中心画角θcに対して偏差がマイナスとなるという意味で負側画角θ-とも呼び、入射角度が大きくなる画像光の入射角度θ+を正側画角θ+とも呼ぶ。
【0018】
ディスプレイ51に形成された画像は、入射回折光学素子33から導光体31を介して出射回折光学素子35に導かれ、観察者から見れば、出射回折光学素子35上に画像として形成される。従って、観察者から見れば、出射回折光学素子35に対する画像光の角度の相違は、出射回折光学素子35上の位置が異なることに等しい。そこで、
図5に示すように、出射回折光学素子35上において画像が形成される範囲を符号PCとし、この範囲PCにおける導光方向の位置を位置iと呼ぶものとする。更に、負側画角θ-の絶対値が最も大きくなる位置を位置1とし、正側画角θ+の値が最も大きくなる位置を位置nとする。基準画角θcにおいて、ある範囲の波長λの画像光に対する回折効率がピークとなれば、画像光の入射する位置iが位置1または位置nに近づく角度になるにつれて、回折効率は低下する。ある位置i(i=1~n)の回折効率を位置iにおける回折効率Eiと呼ぶ。
【0019】
上述したように、出射回折光学素子35における回折効率Eiは、その位置iにより異なるから、ある波長範囲の画像光が出射回折光学素子35に入射すると、その位置に対応した入射角度θにより回折効率Eiは異なる。
図4に示したように、回折される波長(基準波長)の画像光は、基準画角θcにおいて回折効率が最大となるように出射回折光学素子35の干渉縞のピッチ等が調整されているから、負側画角θ-でも正側画角θ+でも回折効率は低下する。既述した式(1)から見て取れるように、回折効率が最大となる波長λが、
図5に示した画像の形成範囲PCから導光方向の端に行くほど、短波長側、長波長側にそれぞれシフトする。回折効率の低下、あるいは最大効率の波長のシフトは、画角が標準画角θcから離れるに従って大きくなる。なお、こうした回折効率Eiの低下や回折効率が最大となる波長λのシフトは、出射回折光学素子35に対して、導光方向、つまり干渉縞の縞のピッチ方向に生じ、これに直交する方向、つまり干渉縞の縞の方向には生じない。こうした回折効率Eiの低下の割合は、波長λ毎に異なるので、カラー画像を表示する場合、回折効率Eiの変動による色むらを生じる。
【0020】
C.ムラの発生を抑制する構成:
本実施形態の表示装置20は、かかる色むらを低減するための修正部として、画像形成部39の内部に色変換部65を備える。
図6に示すように、画像形成部39は、アンテナ38により画像送信装置80からの無線信号を受け取る受信部61、受信した信号から送信された画像を構成する画像構成部62、画像構成部62からの入力信号(Rin,Gin,Bin)を入力して色変換を行なう色変換部65、色変換部65が出力する変換後の出力信号(Rout ,Gout ,Bout)を入力しディスプレイ51に表示用の信号を出力する画像出力部68、色変換部65が色変換の際に参照するルックアップテーブル(LUT)を記憶する記憶部66、を備える。
【0021】
画像形成部39における色変換部65は、画像構成部62から入力した入力信号(Rin,Gin,Bin)に基づき、記憶部66に記憶したLUTを参照することにより、出射回折光学素子35おける画像光の入射位置による色むらの発生を抑制する出力信号(Rout ,Gout ,Bout )を生成する。この様子を
図7に示した。入力信号(Rin,Gin,Bin)は、本実施形態では、各色8ビットの信号なので、
図7に示すように、Rin,Gin,Binのそれぞれにおいて、階調値0~255の値をとる。LUTは、
図7右欄に示すよう、
図5に示した位置i毎に用意されている。
図7では、i=0、i=240,i=nの場合を示したが、i=0~nについて、予め用意されている。もとより、全ての位置iについてLUTを用意せず、とびとびの値iに対してのみLUTを用意し、その間については、内挿補間により各色の出力信号Rout ,Gout ,Bout を求めるようにしても差し支えない。
【0022】
図8Aから
図8Dに例示するように、画角によりRGBの各色の表現できる範囲が異なることに鑑み、LUTは、画角毎に表現できる範囲の相違を低減するように作られている。各図を例にとって説明する。
図8Aから
図8Dは、色度範囲をXYZ表色系におけるXY色度座標により示す説明図である。図において、符号Rは、その頂点がレッド(R=255,G=B=0)であることを示し、符号Gは、その頂点がグリーン(G=255,R=B=0)であることを示し、符号Bは、その頂点がブルー(B=255,R=G=0)であることを示す。各図において、白い実線Tθcは、中心画角θcで表現可能な色度範囲を示し、白い破線Tθ-は、負側画角θ-で表現可能な色度範囲を示し、白い一点鎖線Tθ+は、正側画角θ+で表現可能な色度範囲を示す。
【0023】
図8Aから
図8Dでは、各図上段に、画角範囲±3°、±5°、±8°、±10°における色度範囲を示す。図示するように、いずれの画角範囲においても、負側画角θ-で表現可能な色度範囲(白い破線Tθ-)と、正側画角θ+で表現可能な色度範囲(白い一点鎖線Tθ+)とは、中心画角θcで表現可能な色度範囲(白い実線Tθc)に対して、概ね相反する形状に歪んでいる。負側画角θ-で表現可能な色度範囲(白い破線Tθ-)が小画角色度範囲に相当し、正側画角θ+で表現可能な色度範囲(白い一点鎖線Tθ+)が大画色度範囲に相当し、中心画角θcで表現可能な色度範囲(白い実線Tθc)が中央画角色度範囲に相当する。ここで、小画角色度範囲は中央色度範囲より広く、中央色度範囲は、大画角色度範囲より広い。
図8Aから
図8Dの下段は、これら3つの色度範囲の重なる範囲である共通範囲を、黒い実線TC3、TC5、TC8、TC10により示す。図示するように、画角範囲が大きくなるに従って、共通範囲は概ね狭くなる。
【0024】
本実施形態では、こうした画角の違いによる色度範囲の共通範囲の違いを考慮して、
図7に示したLUTに、変換後の出力信号(Rout ,Gout ,Bout)に対応したRGB値が、位置iに対応付けて記憶されている。従って、画像形成部39は、画像送信装置80から送信された画像を、ディスプレイ51上に形成する際、出射回折光学素子35上の各位置iに対応した画像の入力信号(Rin,Gin,Bin)を入力すると、この入力信号を、色変換部65が、記憶部66に予め記憶したLUTを参照して、共通範囲内の画像に対応した出力信号(Rout ,Gout ,Bout)に変換する。このため、出射回折光学素子35は、RGBの各色について、その位置iによらず、同程度の回折効率Eiとなる。この結果、出射回折光学素子35内に形成される画像の色むらは抑制される。
【0025】
上述し第1実施形態では、
図7に示したLUTは、例えば負側画角θ-でのRGB各色の階調値を共通範囲内に変換する際、白い破線Tθ-で示した色度範囲の最も外側の各色階調値を、共通範囲の最も外側の、かつホワイトバランス点に至る軸線上の各色階調値とし、更に、各色階調値が白い破線Tθ-で示した色度範囲の内側の値になるほど、比例計算により徐々に圧縮しつつ、共通範囲内側の値としている。このため、画像の位置iの相違による色むらは、ほぼ解消している。もとより、共通範囲外の各色階調値を、LUTにより、全て共通範囲に変換するのではなく、共通範囲に向けてシフトするようにLUTを作成してもよい。こうすれば、色むらを抑制できる。また、各色全てについて、LUTを用意するのではなく、一部の色についてのみLUTを用意しても良い。なお、色変換後の各色階調値は、上記のように、ホワイトバランス点に至る軸線上の各色階調値とするといった機械的な比例配分とはせず、観察者が視認しながら、色むらが低減される階調値を求めて、決定してもよい。
【0026】
D.他の実施形態:
上記実施形態では、RGBの各色毎の干渉縞が一体に作り込まれた反射型体積ホログラムを用いたが、他の形態の回折光学素子を用いることも差し支えない。
図9は、他の形態の回折光学素子を用いた光学系の構成例として、左眼表示部30Aの構造を模式的に示す説明図である。なお、右眼表示部も同様の構成を備える。
【0027】
この左眼表示部30Aは、フルカラー画像を形成するディスプレイ51と、ディスプレイ51から出射される第1画像光に相当する赤(R)の画像光,第2画像光に相当する緑(G)の画像光,第3画像光に相当する青(B)の画像光をそれぞれ導く導光経路を備える。即ち、ディスプレイ51は、画素単位で、赤(R)緑(G)青(B)の発光が可能であり、左眼表示部30Aは、これら赤(R)緑(G)青(B)の画像光を、個別に導く3つの導光経路を備える。赤色光R用の導光経路は、入射回折光学素子33R、導光体31R、出射回折光学素子35Rからなり、緑色光G用の導光経路は、入射回折光学素子33G、導光体31G、出射回折光学素子35Gからなり、青色光B用の導光経路は、入射回折光学素子33B、導光体31B、出射回折光学素子35Bからなる。左眼表示部30Aは、これら3つの導光経路が重ねられた構成を備える。このように重ねても、回折光学素子は、回折するように設計された波長の光以外は透過するので、例えばRGBの光の内、Bの光は、ディスプレイ51側に存在するR用の入射回折光学素子33R、G用の入射回折光学素子33Gを透過し、B用の入射回折光学素子33Bに到達する。RGBの光の内、Gの光も、手前の入射回折光学素子33Rを透過する。
【0028】
図9に示した左眼表示部30Aは、RGBの三原色を、各色の光に対応して独立に用意された3つの導光経路によりディスプレイ51から観察者の瞳EYまで導くので、フルカラーの画像を表示することができる。このように構成しても、表示装置20全体としての作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0029】
図10は、更に回折光学素子と導光体の他の実施形態として、左眼表示部30Bの構造を模式的に示す説明図である。右眼表示部も同様の構成を備える。この左眼表示部30Bは、ディスプレイ51においてフルカラー画像を形成する三原色、RGBを同じ1つの導光経路により観察者の瞳EYまで導く。ディスプレイ51は、第1実施形態と同様に、画素単位で、赤(R)緑(G)青(B)の発光が可能であり、第1画像光に相当する赤(R)の画像光,第2画像光に相当する緑(G)の画像光,第3画像光に相当する青(B)の画像光を出射する。左眼表示部30Bは、1つの導光体31上に、三原色RGB用の入射回折光学素子133と、三原色RGB用の出射回折光学素子135を備える。入射回折光学素子133および出射回折光学素子135は、三原色RGBの各色用の回折光学素子を積層もしくは重畳しているが、回折光学素子は、回折するように設計された波長の光以外は透過するので、各色の光は対応する回折光学素子の位置まで到達する。
【0030】
図10に示した左眼表示部30Bは、RGBの三原色を、各色の光に対してまとめて用意された1つの導光体31により、ディスプレイ51から観察者の瞳EYまで導くので、装置構成を薄型化することができる。しかも、フルカラーの画像を表示することができる。なお、表示装置20全体としての他の作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0031】
上記各実施形態では、表示装置20は眼鏡型とし、観察者の頭部の左右方向から、画像光を瞳EYの前まで導いたが、
図11に示すように、画像光は、上下方向に導くものしてもよい。この形態の表示装置25は、図示するように、観察者PSの頭部に装着する頭部装着具70を備え、この頭部装着具70から、左眼表示部30と右眼表示部40とが上下方向に設けられた構造を備える。左眼表示部30と右眼表示部40とは、第1実施形態と同様の構成を備える。
【0032】
頭部装着具70には、左眼表示部30および右眼表示部40に合せて、画像形成部が設けられており、第1実施形態と同様の構成(
図2参照)を備え、そのディスプレイ51に形成された画像が、左眼表示部30および右眼表示部40の入射回折光学素子33,43に入射し、導光体31,41を介して、出射回折光学素子35,45まで導かれる。
【0033】
上記実施形態では、表示装置20,25は外景を視認することができるシースルー型としたが、必ずしもシースルー型にする必要はない。また、両眼タイプに限る必要なく、片眼用の表示装置としてもよい。ディスプレイ51に形成する画像は、16対9のアスペクト比に限られず、4対3など他のアスペクト比であっても差し支えない。また、表示される画像は、数学的な意味での長方形に限る必要はなく、正方形や楕円形など、種々の形状が可能である。いずれの形状でも、表現され色度範囲を求め、これに応じたLUTを用意すれば良い。また、ディスプレイ51自体の形状と、表示される画像の形状とは異なっていてもよい。
【0034】
上記実施形態では、三原色であるRGBの各色に対して、回折光学素子を用意したが、三原色に限る必要はない。例えばRG、GB、RBなど、2つの色の組み合わせとして実現してもよい。例えばR/GB、RG/B、G/RBなどの組み合わせとして実現してもよい。またRGBに限る必要はなく、Y、C、Mなど、異なる色の組み合わせとして表示装置を構成してもよい。
【0035】
回折光学素子としては、反射型体積ホログラムに限る必要はなく、他の回折素子であっても良い。例えばELディスプレイ51からの光が入射する面側に透過型体積ホログラムを備える構成でも良く、基材の表面に凹凸を形成した表面レリーフホログラムでも採用可能である。
【0036】
E.その他の構成例:
(1)更に本開示は、表示装置として、以下の構成例を含む。その1つの表示装置は、カラーの原画像の色度範囲を修正する修正部と、前記色度範囲が修正された画像を形成し画像光として出射する画像形成部と、前記画像光を表示位置まで導く光学系と、前記光学系において、前記画像光の進行方向を観察者に向けて偏向する第1回折光学素子と、を備える。この表示装置の前記修正部により、第1回折光学素子に入射する画像光のうち、第1の角度で入射する画像光の有する色度範囲を、前記第1の角度より大きな角度である第2の角度で入射する画像光の有する色度範囲に近づけるように、前記原画像のうち前記第1の角度に対応した位置にある画像の色度範囲を制限すれば、第1回折光学素子の偏向方向の色むらの発生を抑制することができる。
【0037】
(2)こうした表示装置において、前記原画像のうち前記第1の角度に対応した位置にある画像の取り得る色度範囲を小画角色度範囲とし、前記原画像のうち前記第2の角度に対応した位置にある画像の取り得る色度範囲を大画角色度範囲とし、前記原画像のうち前記第1の角度に対応した位置と前記第2の角度に対応した位置との間の位置にある画像の取り得る色度範囲を中央色度範囲としたとき、 前記小画角色度範囲は、前記中央色度範囲より広く、
前記中央色度範囲は、前記大画角色度範囲より広いものであってよい。こうすれば、三者の色度範囲のズレを小さくするように、各色度範囲を制限すればよく、修正を容易に実現することができる。
【0038】
(3)こうした表示装置において、前記修正部は、前記大画角色度範囲に対応する位置の画像に対する色度範囲を、前記中央色度範囲に対応する位置の画像の色度範囲より大きく制限するものとしてもよい。こうすれば、色むらの発生を、低減できる。
【0039】
(4)こうした表示装置において、前記カラーの原画像は三原色によって再現可能なフルカラー画像であってよく、また、前記修正部は、前記色度範囲をXYZ表色系におけるXY色度座標で表わしたとき、前記第1角度で入射する画像光の有する色度範囲を前記XY色度座標で表わす第1の三角形が、前記第2の角度で入射する画像光の有する色度範囲を前記XY色度座標で表わす第2の三角形に近付くように、前記原画像の前記色度範囲を制限するものとしてもよい。こうすれば、色度範囲の修正を座標で表現でき、修正の内容を明確できる。
【0040】
(5)こうした表示装置において、前記第1の三角形は、前記第2の三角形に、面積で80%以上重なるものとしてもよい。色度範囲の80%以上が重なれば、色むらは十分に抑制される。
【0041】
(6)こうした表示装置において、前記光学系は、前記画像光を導く導光体を備え、前記第1回折光学素子は、前記導光体に画像光が入射する入射側と前記画像光が前記導光体から出射する出射側のうち、前記出射側に設けられたものとしてよい。出射側の回折光学素子による色むらが最も色むらの発生に寄与するので、出射側の回折光学素子を第1回折光学素子とすれば、色むらの発生を抑制しやすい。
【0042】
(7)こうした表示装置において、前記光学系において、前記画像光の進行方向を偏向する第2回折光学素子を、更に備え、前記第2回折光学素子は、前記導光体に画像光が入射する入射側と前記画像光が前記導光体から出射する出射側のうち、前記入射側の位置に設けられたものとしてよい。こうすれば、入射側と出射側の両方において回折光学素子により画像光を偏向させるので、表示装置の薄型化を図ることができる。
【0043】
(8)上記の表示装置において、前記第2回折光学素子は、平面状の干渉縞で構成された反射型体積ホログラムとしてもよい。反射型体積ホログラムは、特定の波長の光に対して選択的に回折を起こすので、他の波長の光に対しては、これを阻害しない。従って、原画像を構成する複数の波長の光に対する光学系の設計が容易となる。
【0044】
(9)こうした表示装置において、前記第1回折光学素子は、平面状の干渉縞で構成された反射型体積ホログラムとしてもよい。反射型体積ホログラムは、特定の波長の光に対して選択的に回折を起こすので、他の波長の光に対しては、これを透過させる。従って、第1回折光学素子として、こうした平面状の干渉縞で構成された反射型ホログラムを用いれば、高い透過性を実現でき、外景と画像形成部が形成する画像とを、同時に視認することが容易となる。
【0045】
(10)こうした表示装置において、前記画像形成部が出射する前記画像光は、波長の互いに異なる第1画像光と第2画像光と第3画像光とを含み、前記第1回折光学素子は、前記第1画像光の波長に対応した第1干渉縞と前記第2画像光の波長に対応した第2干渉縞と前記第3画像光の波長に対応した第3干渉縞とが積層または重畳されているものとしてもよい。こうすれば、波長の互いに異なる第1画像光,第2画像光,第3画像光によるカラー画像を容易に表示できる。
【0046】
(11)こうした表示装置において、前記第1画像光のピーク波長は赤(R)であり、前記第2画像光のピーク波長は緑(G)であり、前記第3画像光のピーク波長は青(B)であるものしてもよい。こうすれば、表示装置は、フルカラーを表示することができる。
【0047】
(12)本開示は、カラーの原画像に基づく画像を表示する表示方法を含む。この表示方法は、前記原画像に対応した画像光を光学系により表示位置まで導き、回折光学素子により、前記画像光の進行方向を観察者に向けて偏向して表示し、前記原画像の表示に際して、前記カラーの原画像の色度範囲を、前記回折光学素子に入射する画像光のうち、第1の角度で入射する画像光の有する色度範囲を、前記第1の角度より大きな角度である第2の角度で入射する画像光の有する色度範囲に近づけるように、前記原画像のうち前記第1の角度に対応した位置にある画像の色度範囲を制限する。こうすれば、カラー画像の表示おいて、回折光学素子内の色むらの発生を抑制できる。
【0048】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0049】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。例えば、上記実施形態においてハードウェアにより実現した構成の一部は、ソフトウェアにより実現することができる。
【符号の説明】
【0050】
20,25…表示装置、22…ブリッジ、30,30A,30B…左眼表示部、31,31B,31G,31R…導光体、33,33B,33G,33R,133…入射回折光学素子、35…出射回折光学素子、35B,35G,35R,135…出射回折光学素子、37…左テンプル、38…アンテナ、39…左画像形成部、40…右眼表示部、47…右テンプル、49…右画像形成部、51…ディスプレイ、52…コリメートレンズ、61…受信部、62…画像構成部、65…色変換部、66…記憶部、68…画像出力部、70…頭部装着具、80…画像送信装置、81…起動ボタン、82…ディスプレイ