(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】米生地組成物およびそれから製造されるグルテンフリーの米麺
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240214BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020015752
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-10-06
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕
(72)【発明者】
【氏名】宅宮 規記夫
(72)【発明者】
【氏名】堀 和也
(72)【発明者】
【氏名】関 俊人
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0347671(US,A1)
【文献】特表2015-536151(JP,A)
【文献】特開2018-057290(JP,A)
【文献】特開2012-205570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米生地組成物であって:
中粒米由来の米粉;
米生地組成物の総重量の0.01~2重量%のキサンタンガム;
米生地組成物の総重量の0.5~10重量%の油;
米生地組成物の総重量の0.1~5重量%のアルギン酸アルキレングリコール;および、
水
を有する、前記米生地組成物
であって、
米粉は、米生地組成物の総重量の50~80重量%の量で存在し、
長粒および/または短粒米由来の米粉の総量は、米粉の総重量である、中粒米、長粒米及び短粒米の総重量に対して30重量%を越えず、及び
中粒米の見かけアミロース含有量が、中粒米の総デンプン含有量の16~20重量%である、
前記米生地組成物。
【請求項2】
中粒米の見かけアミロース含有量が、中粒米の総デンプン含有量の16.5~19重量%である、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項3】
油が植物由来の油である、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項4】
油が、オリーブ油、植物油、キャノーラ油、ホホバ油、ココナッツ油およびパーム油からなる群より選択される植物由来の油である、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項5】
油がキャノーラ油である、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項6】
アルギン酸アルキレングリコールが、アルギン酸またはその塩をアルキレンオキシドとエステル化することによって形成されている、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項7】
アルギン酸またはその塩中に存在するカルボキシル基の総数の少なくとも70%が、アルキレンオキシドとエステル化されてアルギン酸アルキレングリコールを形成している、請求項
6に記載の米生地組成物。
【請求項8】
アルギン酸アルキレングリコールがアルギン酸プロピレングリコールである、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項9】
水が、米生地組成物の総重量の15~45重量%の量で存在している、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項10】
中粒米由来の米粉が、存在する唯一の粉である、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項11】
グルテンフリーである、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項12】
米粉中に存在するデンプン以外は追加のデンプンを含有していない、請求項1に記載の米生地組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の米生地組成物を製造する方法であって:
米粉、キサンタンガムおよびアルギン酸アルキレングリコールを有するドライミックスに、油および水を有する乳剤を追加することを有し;かつ、
混合することを有する、
前記方法。
【請求項14】
請求項1に記載の米生地組成物から形成されている成形済み麺製品であって、シート、スライスされた麺または押出成形物の形状である、前記成形済み麺製品。
【請求項15】
冷凍されていない、請求項
14に記載の成形済み麺製品。
【請求項16】
冷凍されている、請求項
14に記載の成形済み麺製品。
【請求項17】
請求項
14に記載の成形済み麺製品を製造する方法であって、
米生地組成物を、シート、スライスされた麺または押出成形物の形状へと成形すること
を有し;
成形済み米生地組成物を湯通しすることを有し;かつ、
任意選択的には冷凍して成形済み麺製品を形成することを有する、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、米生地組成物、それから製造される成形済み麺製品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景の説明
本明細書において提供される「背景」の記載は、本開示の状況を概して提示することを目的とする。本発明者らの業績(この背景のセクションに記載されている限りにおいて)、および、そうでなければ出願時点において先行技術として適格ではない記載は、明示的または黙示的を問わず、本発明に対する先行技術とは認められない。
【0003】
麺は概して、粉、塩および水といった原材料を混合して生地を得ることによって調製される。伝統的な生地における主原料である小麦粉は、グルテン(「糊」のラテン語)を含有しており、グルテンは、生地が所望により加工/混練/成形されることを可能にする粘弾性特性の要因であり、そして一旦調理されると、麺と関連付けられるお馴染みのモチモチとした食感を提供する要因となる。
【0004】
グルテンは、これらの粘弾性特性を提供することで高く評価されている一方で、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症(NCGS)、グルテン失調症、疱疹状皮膚炎(DH)および小麦アレルギーを含む広範囲のグルテン関連疾患の要因である有害な自己免疫反応を引き起こすことも知られている。かかる有害反応は主に、グルテンに見出されるグリアジン蛋白質(かかるグルテン関連疾患に罹った者における下痢、腹部疝痛、食欲不振および成長障害を誘発する)によって引き起こされる。したがって、小麦を米、ジャガイモおよびトウモロコシといった生来グルテンフリーである原料と置き換えることによってグルテンフリーの食品を製造することへの関心が高まっている。
【0005】
しかしながら、小麦原料をグルテンフリーの原料で代用することは、困難をもたらす。なぜなら、グルテンが必要とされる生地のネットワーク構造を形成する要因となる成分であり、また、米粉のようなグルテンフリーの原料には同様の結合成分が存在しないからである。そのようであるので、米粉またはその他のグルテンフリーの粉を源として調製される生地は、一般に、次の問題のうちの一つ以上に悩まされる:(1)生地が成形不能である-成形されるには乾燥し過ぎであり、かつ、つながり(connection)が悪過ぎる;(2)生地の粘弾性が悪い-生地がもろく、かつ、容易に裂け、シーティング(sheeting;シート状にすること)、押出および/または輸送を困難にする;(3)生地の持続性がない-最初は成形、加工および輸送され得るが、経時的にもろくなり、例えば生地がカットされるときに、裂けまたは崩壊をもたらす;(4)生地が粘つく-製造機械および設備に付着する/張り付く;(5)生地の吸収性が低い-湯通し(parboiling)の最中に吸収する水が少な過ぎ(不十分な膨張)、したがって、所定量の麺製品を製造するのにいっそう多くの生地が必要とされ、製造コストが増大することをもたらし、また、吸収性の悪い生地から得られる麺製品は食感が不快である傾向にある((6)を参照);(6)生地から調製される麺製品の口当たりが悪い(味が悪いか、食感または稠度が不良である)。
【0006】
米粉ベースの生地の結合特性を改善する方策の1つが、成形作業の前または成形作業の最中に部分的生地ゼラチン化を実行することである。部分的ゼラチン化は、生地を温水に曝して(すなわち、温水との混合、蒸気混練、温水混練など)、米粉のデンプン成分をゼラチン状へと部分的に変形させることを伴う。ゼラチン化は、生地の裂けまたは破れを伴わずに通常の加工(すなわち、圧延、加圧形成、シーティング、押出など)が実行され得るように生地の結合/粘弾性特性を向上させるであろう。かかる処理は、しかしながら、温度(例えば、70~80℃)および曝露時間の正確な制御を必要とし、一部でも一緒に管理できないのであれば、大規模な製造を困難にする。
【0007】
結合特性を改善する別の方策が、グルテンフリーの粉に追加のゼラチン化したデンプンを補うことであり、米国特許出願公開第2013/0337125号明細書に記載され、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。る。しかしながら、この方策もまた、追加されるデンプン成分の部分的ゼラチン化を必要とし、このことは、上記と同様の理由で麺製造工程を複雑にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑み、室温の水を用いて製造され得、かつ、有利な形状性、成形性、持続性、粘着性、吸収性を有し、かつ、優れた口当たりを有するグルテンフリーの麺製品へと成形され得るグルテンフリーの米生地組成物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、かかる上記特性を有する新規な米生地組成物を提供することが、本発明の目的の1つである。
【0010】
米生地組成物を製造するための新規な方法を提供することが、本開示の別の目的である。
【0011】
米生地組成物から形成される新規な成形済み麺製品を提供することが、本開示の別の目的である。
【0012】
成形済み麺製品を製造するための新規な方法を提供することが、本開示の別の目的である。
【0013】
これらの目的または以下の詳細な説明の最中で明らかになるであろうその他の目的は、中粒米由来の米粉(とりわけ、特定の見かけアミロース含有量を有する中粒米由来の米粉)を用いて製造される米生地組成物が、グルテンフリーの生地材料と通常関連付けられる問題を克服する米生地組成物を提供するという本発明者らの知見によって達成された。
【0014】
したがって、本発明は以下の項目を提供し、該項目は:
(1)米生地組成物であって、
中粒米由来の米粉;
キサンタンガム;
油;
アルギン酸アルキレングリコール;および、
水
を有する、前記米生地組成物。
(2)中粒米の見かけアミロース含有量が、中粒米の総デンプン含有量の16~20重量%である、(1)に記載の米生地組成物。
(3)中粒米の見かけアミロース含有量が、中粒米の総デンプン含有量の16.5~19重量%である、(1)または(2)に記載の米生地組成物。
(4)米粉が、米生地組成物の総重量の50~80重量%の量で存在している、(1)~(3)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(5)キサンタンガムが、米生地組成物の総重量の0.01~2重量%の量で存在している、(1)~(4)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(6)油が植物由来の油である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(7)油が、オリーブ油、植物油、キャノーラ油、ホホバ油、ココナッツ油およびパーム油からなる群より選択される植物由来の油である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(8)油がキャノーラ油である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(9)油が、米生地組成物の総重量の0.5~10重量%の量で存在している、(1)~(8)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(10)アルギン酸アルキレングリコールが、アルギン酸またはその塩をアルキレンオキシドとエステル化することによって形成されている、(1)~(9)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(11)アルギン酸またはその塩中に存在するカルボキシル基の総数の少なくとも70%が、アルキレンオキシドとエステル化されてアルギン酸アルキレングリコールを形成している、(10)に記載の米生地組成物。
(12)アルギン酸アルキレングリコールがアルギン酸プロピレングリコールである、(1)~(11)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(13)アルギン酸アルキレングリコールが、米生地組成物の総重量の0.1~5重量%の量で存在している、(1)~(12)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(14)水が、米生地組成物の総重量の15~45重量%の量で存在している、(1)~(13)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(15)中粒米由来の米粉が、存在する唯一の粉である、(1)~(14)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(16)グルテンフリーである、(1)~(15)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(17)米粉中に存在するデンプン以外は追加のデンプンを含有していない、(1)~(16)のいずれか1つに記載の米生地組成物。
(18)(1)~(17)のいずれか1つに記載の米生地組成物を製造する方法であって:
米粉、キサンタンガムおよびアルギン酸アルキレングリコールを有するドライミックスに、油および水を有する乳剤を追加することを有し;かつ、
混合することを有する、
前記方法。
(19)(1)~(17)のいずれか1つに記載の米生地組成物から形成されている成形済み麺製品であって、シート、スライスされた麺または押出成形物の形状である、前記成形済み麺製品。
(20)冷凍されていない、(19)に記載の成形済み麺製品。
(21)冷凍されている、(19)に記載の成形済み麺製品。
(22)(19)~(21)のいずれか1つに記載の成形済み麺製品を製造する方法であって、
米生地組成物を、シート、スライスされた麺または押出成形物の形状へと成形することを有し;
成形済み米生地組成物を湯通しすることを有し;かつ、
任意選択的には冷凍して成形済み麺製品を形成することを有する、
前記方法。
【0015】
上記段落は、概略紹介として提供されたものであり、かつ、以下の特許請求の範囲を限定することを意図しない。記載されている実施形態は、さらなる利点とともに、以下の詳細な説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
以下の説明では、その他の実施形態が利用されてもよく、かつ、本明細書に開示された本実施形態の範囲から逸脱することなく構造的および作業的変形がなされてもよいことが理解される。
【0017】
定義
本明細書で用いられるとき、「湯通しされる」または「湯通しする」は、デンプンを含有する食料品(例えば、米生地)が、デンプン成分がゼラチン状へと部分的に変換されるように茹でるのような温湯処理に供される、部分的調理作業を意味する。湯通しの際、温水処理は、デンプンを含有する食料品が完全に調理される前に止められる。
【0018】
本開示では、米粒は、それらの従来の分類および仕様にしたがって分類されている。そのようであるので、「水稲」(もみ米)は脱穀後にその殻を保持している米を意味し、「玄米(husked rice)」(玄米(brown rice)または玄米(cargo rice))は殻のみが除去された水稲を意味し、かつ、「精米」(白米)は製粉することによって、ふすま、および、胚芽もしくは胚の全部または一部が除去された玄米を意味する。一般用語「粒」または「米粒」は、特に指定がなければ、これらの分類のいずれか、または、全部を意味する。
【0019】
さらに、本明細書では次の米粒サイズカテゴリーが用いられる:
長粒米:
- 玄米の長さ/幅の比が3.1以上であるとき
- 精米の長さ/幅の比が3.0以上であるとき。
中粒米:
- 玄米の長さ/幅の比が2.1~3.0であるとき
- 精米の長さ/幅の比が2.0~2.9であるとき。
短粒米:
- 玄米の長さ/幅の比が2.0以下であるとき
- 精米の長さ/幅の比が1.9以下であるとき。
【0020】
本明細書で用いられるとき、成句「実質的に含まない」は、特に指定がなければ、組成物/材料の総重量に対して、特定の成分を1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、さらに好ましくは0.1重量%未満、いっそう好ましくは0.05重量%未満、さらにいっそう好ましくは0.001重量%未満、さらにいっそう好ましくは0重量%だけ含有している組成物/材料を意味する。
【0021】
本明細書で用いられるとき、用語「任意選択的である」または「任意選択的には」は、後に記載される事象が起こり得もしくは起こり得ず、または、後に記載される成分が存在していてもよく存在していなくてもよいことを意味する(例えば、0重量%)。
【0022】
本明細書で用いられるとき、用語「グルテンフリー」は、特定の組成物/製品中のグルテン(ならびにライ麦、大麦およびこれらの粒の雑種由来の同様の蛋白質)の量が、20ppm未満、いっそう好ましくは15ppm未満、いっそう好ましくは10ppm未満、いっそう好ましくは5ppm未満、いっそう好ましくは1ppm未満、いっそう好ましくは0ppmであることを意味する。連邦ガイドラインは、食品製品についてはグルテンが20ppm未満であることがグルテンフリーとして特徴付けられることを要求しており、グルテンフリー認証組織は、その標章を受けるには食品製品が10ppm未満のグルテン(5ppm未満のグリアジン)を含有していることを要求している。組成物/製品中のグルテンの量は、Association of Analytical Communities(AOAC)、American Association of Cereal Chemists(AACC)、ならびに、本技術分野で知られているその他のかかる機関といった分析協会によってグルテン試験について受け入れられている試験方法(例えば、AACCI Method 38-52.01 「Gluten in Rice Flour and Rice-Based Products by G12 Sandwich ELISA Assay」、および、Romer Labs UK Ltd.社から市販されているAgraQuant(登録商標) Gluten G12 ELISA kit(AOAC-approved Official Method of Analysis, OMA 2014.03))を用いて測定されてもよい。
【0023】
米生地組成物
本開示は、グルテンフリーであるが、結合特性を未だ保有する米生地組成物に関し、このことは、米生地組成物が裂け、破れ、または、加工設備(例えば、シーティング機、押出機など)への張り付きを伴うことなく成形されることを可能にし、かつ、調理後には優れた口当たりを有するグルテンフリーの米麺を提供する。
【0024】
かかる米生地組成物は通常、次の成分を含む:中粒米由来の米粉、キサンタンガム、油、アルギン酸アルキレングリコールおよび水。さらに任意選択的には、保存料、塩および着色料といった種々の添加物を含んでいてもよい。
【0025】
米粉
米生地組成物は、主材料として米粉を含んでおり、小麦粉(小麦粉中のグルテンの存在に起因して胃腸疾患またはセリアック病を引き起こす)は含んでいない。本開示で用いられる米粉は、好ましくは中粒米から得られ、その他の原料とともに、優れた加工性を有するグルテンを有する生地のものと同様のネットワーク構造および粘弾性を有する生地を形成する。
【0026】
米生地組成物において用いられる米粉の量は変化してもよいが、典型的には米粉は、米生地組成物の総重量の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、さらに好ましくは少なくとも60重量%、いっそう好ましくは少なくとも62重量%、さらにいっそう好ましくは少なくとも63%の量で存在し、かつ、80重量%まで、好ましくは75重量%まで、好ましくは70重量%まで、好ましくは68重量%まで、好ましくは66重量%まで、いっそう好ましくは64重量%までの量で存在している。
【0027】
米粉は、中粒水稲、中粒玄米または中粒精米を製粉することによって得られてもよい。好ましくは、本明細書で用いられる米粉は、中粒玄米または精米から得られる。米粉を得るために、乾式製粉法および湿式製粉法の両方を含む、当業者に知られている任意の製粉法が用いられてもよい。いくつかの実施形態では、米粉の平均粒子サイズは、少なくとも20μmであり、好ましくは少なくとも30μmであり、好ましくは少なくとも40μmであり、好ましくは少なくとも50μmであり、500μmまでであり、好ましくは400μmまでであり、好ましくは300μmまでであり、好ましくは200μmまでであり、好ましくは100μmまでであり、この平均粒子サイズは中力粉の粒子サイズと同様であるが、これらの値を上回る、または、下回る平均粒子サイズを有する米粉もまた考慮される。
【0028】
米の最も食べられる部分はデンプンであり、典型的には米の75~80重量%を占めている。さらに、米は典型的には蛋白質を5~8重量%だけ含有しており、脂質、繊維および灰分はそれぞれ、典型的にはコメの約1~3重量%を占めている。米はまた、通常はミネラルとビタミンが豊富である。
【0029】
米デンプンは2つの成分(アミロースとアミロペクチン)からなり、米粉のデンプン中のこれらの成分の相対量は、米生地の粘弾性および食感、ならびに、米生地から製造される任意の麺製品の食味および調理品質に影響するであろう。
【0030】
好ましくは、本明細書で用いられる米粉は中粒米から得られる。好ましい実施形態では、米粉は、見かけアミロース含有量(AAC)が中粒米の総デンプン含有量の少なくとも10重量%であり、好ましくは少なくとも11重量%であり、好ましくは少なくとも12重量%であり、好ましくは少なくとも13重量%であり、好ましくは少なくとも14重量%であり、好ましくは少なくとも15重量%であり、好ましくは少なくとも16重量%であり、好ましくは少なくとも16.5重量%であり、好ましくは少なくとも17重量%であり、23重量%までであり、好ましくは22重量%までであり、好ましくは21重量%までであり、好ましくは20重量%までであり、好ましくは19重量%までであり、好ましくは18.5%までである中粒米から得られる。見かけアミロース含有量(AAC)は、Megazyme社から市販されているアミロース/アミロペクチンアッセイキット/法であるK-AMYL 06/18にしたがって測定されてもよい。
【0031】
本明細書の米生地組成物は、任意の中粒米種由来の米粉を含有していてもよく、中粒米種の適切な例としては、アルボリオ、ロト、バルド、カルナローリ、カラスパッラ、ボンバ、ヴィアローネ、カリフォルニア中粒、中粒米、標準中粒、プレミアム中粒など、および、それらの組み合わせ、ならびに、その他のタイプの特殊な中粒種が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい実施形態では、米粉はアルボリオおよび/またはプレミアム中粒米由来である。中粒米の具体的な例としては、M-104、M-202、M-205、M-206、M-208、M-401およびM-402が挙げられるが、それらに限定されない。
【0032】
本発明者らは、予期せず、中粒米(とりわけ、見かけアミロース含有量が先に記載されたものである中粒米)から製造される米粉が、粘弾性特性、加工性およびそれから製造される麺製品の口当たりに関して短粒または長粒米のいずれかから製造されるものより優れた米生地組成物を提供することを見出した。明らかになるであろうが、中粒米由来の米粉は、裂け、破れおよび/または崩壊を伴わずに、混練、成形(例えば、シーティング、押出など)および/または輸送され得、製造機械または設備に張り付くことなく加工され得、米生地製造の最中にゼラチン化のための高温(例えば、>35℃)での水の使用を必要とせず、吸収性が高く(すなわち、湯通しが50%より多い体積の増大をもたらす)、優れた口当たりを有する麺を提供することが見出された。他方、短粒米および/または長粒米粉から調製される米生地は、上述のグルテンフリーの生地に共通するこれらの問題(1)~(6)のうちの1つ以上に悩まされることが見出された。短粒米が中粒米のものと比べて高い結合、付着、粘性特性を有する傾向にあるので、短粒米粉で調製される米生地組成物の粘弾性特性および加工性が不良であることは、特に驚くべきである。
【0033】
アルカリ膨潤度(ASV)は、23時間、室温における希釈アルカリ溶液(1.7%水酸化カリウム)中の全精米粒の分散の程度、および、Juliano, B. 「Criteria and tests for rice grain quality」 Rice chemistry and technology, 2nd ed. Am. Assoc. Cereal Chemists (AACC), St. Paul, MN, 1985, pg. 443-513(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の7段階を用いて膨潤の程度を測定することによって評価される。ASVは、ゼラチン化温度(GT)と逆に相関し、GTが低い米粒、GTが中間である米粒およびGTが高い米粒はそれぞれ、希釈アルカリ溶液中で完全分解、部分的分解および効果なしを示す。GTは次に、米を調理するのに必要とされる時間量と正の相関を有する。すなわち、GTが高い米種は、GTが低いか中間であるものより、多くの水および調理時間を必要とする。したがって、アルカリ膨潤度(ASV)は、米の食味および調理品質の測定値として用いられ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で用いられる米粉は、平均アルカリ膨潤度(ASV)が少なくとも6であり、好ましくは少なくとも6.2であり、好ましくは少なくとも6.4であり、好ましくは少なくとも6.6であり、かつ、7までの中粒米から得られる。
【0034】
いくつかの実施形態では、米生地組成物は米粉を含有しており、その大部分は中粒米由来の米粉であり、少量の長粒米、短粒米または両方由来の米粉を有し、かつ、長粒および/または短粒米由来の米粉の総量は、米粉の総重量(中+長+短)に対して30重量%を越えず、好ましくは20重量%を越えず、好ましくは10重量%を越えず、好ましくは5重量%を越えない。好ましい実施形態では、米生地組成物は、長粒米粉、短粒米粉または両方を実質的に含んでいない。いっそう好ましい実施形態では、中粒米粉は、本明細書の米生地組成物中に存在する唯一の米粉である。
【0035】
短粒米種としては、標準短粒米、粘着質短粒米、プレミアム短粒米、低アミロース短粒米などが挙げられてもよい。例示的な短粒米種としては、うるち米およびもち米を両方とも含むジャポニカ米、ボンバ、バレンシア、短粒アルボリオ米が挙げられてもよく、標準短粒(例えば、S-102)、コシヒカリ、ヒトメボレ、アキタコマチ、タマキ、calhikari(例えば、calhikari-201および202)、calmochi(例えば、calmochi-101および203)ならびcalamylow(例えば、calamylow-201)が具体的に言及されるが、それらに限定されない。
【0036】
長粒米種としては、標準長粒米、香り長粒米、高級長粒米などが挙げられてもよい。例示的な長粒米種としては、バスマティ、ジャスミン、calmati、標準長粒白米、標準長粒玄米が挙げられてもよく、L-205、L-206、Calmati-201、Calmati-202およびA-202が具体的に言及されるが、それらに限定されない。
【0037】
本明細書に記載の米生地組成物は、好ましくはグルテンフリーであり、したがって、小麦粉を実質的に含んでいない。主原料として小麦粉を米粉と置き換えることに加えて、米生地組成物はまた、好ましくは、グルテンを含有するであろう任意のその他の材料も実質的に含んでおらず、「グルテンフリー」の指定を維持している。
【0038】
いくつかの実施形態では、米生地組成物は、任意選択的には、上記の米粉に加えて、その他のタイプのグルテンフリーの粉を含んでいてもよい。かかる追加のタイプのグルテンフリーの粉の適切な例としては、トウモロコシ粉、ジャガイモ粉、タピオカ粉(キャッサバ由来)、アマランス粉、くず粉、ソルガム粉Jowar)、テフ粉、チアシード粉、生そば粉、ひよこ豆粉(ひよこ豆由来)、米粉、きび粉、エンバク粉およびキノア粉、アーモンド粉、ココナッツ粉、タイガーナッツ粉およびガルバンゾー粉、ならびに、それらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0039】
好ましい実施形態では、米生地組成物は、上記で列挙されたような追加のグルテンフリーの粉(米粉以外のグルテンフリーの粉)を実質的に含んでいない。好ましい実施形態では、中粒米由来の米粉は、米生地組成物中に存在する唯一のタイプの粉である。
【0040】
いくつかの実施形態では、米生地組成物は、任意選択的には、追加のデンプン(すなわち、総デンプン含有量を増大させるために米生地組成物に追加される、中粒米粉由来のデンプン以外のデンプン成分)を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、米生地組成物は、補充米デンプンを含む追加のデンプンを実質的に含んでいない。追加のデンプン材料としては、コーンスターチ、タピオカデンプン、くずデンプン、小麦デンプン、補充米デンプン(すなわち、米粉単独から得られる総デンプン含有量を増大させるために追加される米デンプン)、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、サゴデンプンおよび緑豆デンプン(かかるデンプンの修飾バージョンまたは予めゼラチン化されたバージョンを含む)が挙げられてもよいが、それらに限定されない。
【0041】
米生地組成物はまた、任意選択的には、米粉代用品を、米生地組成物の総重量の30重量%まで、好ましくは20重量%まで、好ましくは10重量%まで、好ましくは5重量%までの量だけ含んでいてもよい。米粉代用品は米粉の特性を模倣するように設計されており、追加されるときには、米粉成分がいっそう少量で追加されることを可能にする。好ましい実施形態では、米生地組成物は、米粉代用品を実質的に含んでいない(例えば、0重量%)。米粉代用品は概して当業者に知られており、一例は、米粉、米デンプン、ジャガイモデンプン、キサンタンガムおよびローカストビーンガムの混合物である「SPGF」である(例えば、Bay State Milling社から市販されているBLGF-FLX-050)。
【0042】
キサンタンガム
親水コロイドとも呼ばれる食品等級ガム添加物は、最も一般的には、低濃度で高い粘度を有する多糖であり、結合剤、乳化剤、安定化剤、接着剤、膨張剤および/またはゲル形成剤として作用し得る。理論によって拘束されることなく、食品等級ガム添加物は、グルテンを含有する生地と同様のネットワーク構造および粘弾性を、米生地組成物に付与することを補助してもよい。例示的な食品等級ガム添加物としては、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、アルギン酸の塩(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムおよび/またはアルギン酸カルシウム)、ローカストビーンガム、寒天、タピオカ、ゼラチン、ペクチン、アラビアゴム(アカシア)、イヌリン、TIC gums社から入手可能であるCARAGUMのようなガムの混合物またはブレンドが挙げられてもよいが、それらに限定されない。
【0043】
好ましい実施形態では、米生地組成物は、食品等級ガム添加物としてキサンタンガムを含んでいる。キサンタンガムは、最も注目すべきことに、少なくとも混合および湯通しの最中に米生地組成物のつながりを支持するであろう。
【0044】
好ましい実施形態では、キサンタンガムは、存在する唯一の食品等級ガム添加物である。驚くべきことに、キサンタンガムは所望の結合機能を提供するのにとりわけ有効であること、および、タピオカ、ペクチンおよびローカストビーンガムといったその他の通常の食品等級ガムの使用は、つながり性(connectivity)が劣り、裂けおよび/または破れが生じやすい米生地組成物をもたらすことが見出された。その他の食品等級ガムに対するキサンタンガムの有効性は、これらのガムがしばしば交換可能であると考えられているので、予期されるものではない。
【0045】
いくつかの実施形態では、キサンタンガムは、米生地組成物の総重量の少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.15重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%の量で存在し、2重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、好ましくは0.4重量%まで、好ましくは0.3重量%まで、好ましくは0.25重量%までの量で存在している。キサンタンガムの量は必要に応じて調整され得るが、典型的にはキサンタンガムの量が上記の範囲内にあるときには、米生地組成物の結合特性および加工性は優れている。
【0046】
油
多くの生地配合では、プロセス添加剤として通常は小麦粉が用いられて、粘着性を最小化し、これにより、加工設備への生地の付着を最小化する。しかしながら、小麦粉はグルテンを含有しており、したがって好ましくは本明細書の米生地組成物には含まれていない。代わりに、同じ目的で、すなわち、米生地組成物の粘着性を最小化し、、加工機械(例えば、ローラー、ベルト、シーティング機、押出機など)または設備への張り付きを最小化するために、本明細書の米生地組成物には典型的には油が含まれる。
【0047】
種々の食用油が利用されてもよい。好ましい実施形態では、油は植物由来の油である。適切な植物由来の油としては、オリーブ油、植物油、キャノーラ油、ホホバ油、ココナッツ油およびパーム油、米胚芽油(米糠油)、または、本技術分野で知られている任意のその他の植物油、および、それらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい実施形態では、油はキャノーラ油である。
【0048】
いくつかの実施形態では、油は、米生地組成物の総重量の少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも4重量%の量で存在し、かつ、10重量%まで、好ましくは9重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは7重量%まで、好ましくは6重量%、好ましくは5重量%までの量で存在している。油の量は好ましい張り付き防止性を付与するために必要に応じ調整されてもよい。しかしながら、上記の量で用いられるときには、米生地組成物は典型的には、許容可能な粘着性を保有し、かつ、加工機械/設備に付着し過ぎない。したがって、本開示の米生地組成物を成形するのに、広範囲の加工技術および機械/設備が用いられ得る。
【0049】
アルギン酸アルキレングリコール
本明細書の米生地組成物には、増粘剤または安定化剤として化学的に修飾されたアルギン酸塩が含まれて、例えば加熱工程(例えば、湯通し)後に生地のつながりの支持を補助していてもよい。
【0050】
アルギン酸は、2つのウロン酸(マンヌロン酸とグルロン酸)からなると概して信じられているポリウロン酸であり、その割合は、例えば海藻種、植物の齢および季節的変動といった要因に基づいて変化する。混合された水不溶性塩の形態のアルギン酸(主たるカチオンはカルシウムである)は、褐藻類の海藻中に存在し、褐藻類の典型的な例としては、フーカス ベシクロサス(Fucus vesiculosus)、F.スピラリス(F. spiralis)、アスコフィラム ノドサム(Ascophyllum nodosum)、マクロシスティス ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)、アラリア エスクレンタ(Alaria esculenta)、ラミナリア ロンギクルリス(Laminaria longicruris)、L.ディギタータ(L. digitata)、L.サッカリナ(L. saccharina)およびL.クロウストニ(L. cloustoni)が挙げられるが、それらに限定されない。水不溶性アルギン酸およびその水溶性の塩(とりわけ、アルギン酸ナトリウム)の回収のための方法は周知である(例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第3,948,881号明細書およびそこで引用された文献を参照)。
【0051】
化学的に修飾されたアルギン酸塩は、アルギン酸アルキレングリコールであってもよい。いくつかの実施形態では、アルギン酸アルキレングリコールは、アルギン酸またはその塩を1つ以上のアルキレンオキシドとエステル化することによって形成されている。アルギン酸またはその塩形態とアルキレンオキシドとの反応は、アルギン酸のアルキレングリコールエステル(すなわち、アルギン酸アルキレングリコール)の形成をもたらす。かかるエステル化反応法および手順は概して、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第3,948,881号明細書およびそこで引用された文献に開示されているように、当業者に知られている。
【0052】
いくつかの実施形態では、アルギン酸アルキレングリコールは、米生地組成物の総重量の少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.3重量%、好ましくは少なくとも0.4重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%の量で米生地組成物中に存在し、かつ、5重量%まで、好ましくは4重量%まで、好ましくは3重量%まで、好ましくは2重量%まで、好ましくは1重量%までの量で米生地組成物中に存在している。
【0053】
いくつかの実施形態では、アルギン酸アルキレングリコールは、アルギン酸の不完全なエステル化から形成されており、そのことによって、アルギン酸またはその塩のカルボキシル基のうちのいくつかがアルキレンオキシドとエステル化しており、残りは遊離したままであるか、適切なアルカリ塩基で中和されている。アルギン酸アルキレングリコールは、アルギン酸のカルボキシル基の総数の60%未満、好ましくは50%未満、好ましくは40%未満がアルキレンオキシドとエステル化されており、残りの基が遊離しているか、または、塩基で中和されているかのいずれかである、「標準エステル化タイプ」であってもよい。好ましい実施形態では、アルギン酸アルキレングリコールは、アルギン酸またはその塩中に存在するカルボキシル基の総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%であり、かつ、90%まで、好ましくは85%までがアルキレンオキシドとエステル化されてアルギン酸アルキレングリコールを形成している、「高エステル化タイプ」である。
【0054】
いくつかの実施形態では、アルギン酸アルキレングリコールは、炭素原子数が2~6、好ましくは3~4、いっそう好ましくは3である1つ以上のアルキレンオキシドを用いて形成されている。具体的に考慮される適切なアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,3-エポキシプロパン、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、1,2-エポキシ-2-メチルプロパン、1,2-エポキシペンタンおよび1,2-エポキシヘキサン、それらの混合物、ならびに、アルギン酸アルキレングリコールの調製に適切であると当業者に知られている任意のその他のアルキレンオキシドである。これらのアルキレンオキシドの中でも、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドがいっそう好ましい。
【0055】
好ましい実施形態では、本明細書で用いられるアルギン酸アルキレングリコールはアルギン酸プロピレングリコール(PGA)である。アルギン酸プロピレングリコールは、わずかな擬塑性挙動を示す良好な増粘剤である。アルギン酸プロピレングリコールは、粘度およびエステル化レベル(すなわち、上記のエステル化されたカルボキシル基の割合)に基づいて等級に分類され、かつ、任意の等級のアルギン酸プロピレングリコールが、米生地組成物に利用されてもよい。標準エステル化タイプ(例えば、60%未満のカルボキシル基がエステル化されている)のカテゴリー内では、アルギン酸プロピレングリコールは、次の等級を有していてもよい(20℃における1重量%溶液の粘度範囲に基づいて):「LVC」(70~170mPa・s);または「HVC」(200~600mPa・s)。高エステル化タイプ(例えば、60~90%のカルボキシル基がエステル化されている)のカテゴリー内では、アルギン酸プロピレングリコールは、次の等級を有していてもよい(20℃における1重量%溶液の粘度範囲に基づいて):「LLV」(15~35mPa・s);「NLS-K」(30~60mPa・s);「LV」(60~100mPa・s);「MV」(100~150mPa・s);および「HV」(150~250mPa・s)。
【0056】
好ましい実施形態では、本明細書で利用されるアルギン酸プロピレングリコールは、「HV」等級(すなわち、粘度が少なくとも150mPa・sであり、好ましくは少なくとも175mPa・sであり、好ましくは少なくとも200mPa・sであり、かつ、250mPa・sまでであり、好ましくは225mPa・sまでであり、好ましくは215mPa・sまでである高エステル化タイプのもの)である。
【0057】
アルギン酸プロピレングリコールは、例えば、KIMILOIDの商標名でKimica Corp.社から入手可能である(例えば、KIMILOID HV)。
【0058】
水
米生地組成物はさらに、米生地組成物の総重量の少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%であり、45重量%まで、好ましくは40重量%まで、好ましくは35重量%まで、好ましくは32重量%までの量で水を含んでいる。
【0059】
任意選択的な原料
保存料
米生地組成物またはそれから製造される任意の麺製品が冷蔵/冷凍保存されることが意図されるときには、保存料の使用は必要なく、または、好ましくない。しかしながら、かかる製品が冷蔵/冷凍保存されることが意図されないときには、1つ以上の保存料が、米生地組成物の総重量の0.001重量%から、好ましくは0.01重量%から、好ましくは0.1重量%からであり、かつ、2重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.5重量%までの量で任意選択的に含まれていてもよい。保存料は、抗菌剤、安定化剤および/または抗酸化剤として作用して、カビの増殖、細菌の増殖、劣化または化学的分解(例えば、酸化劣化)を防止して、生地/麺をいっそう長い期間新鮮に保存し得る。
【0060】
食品に用いるのに適切な保存料は、当業者に周知である。説明的な例としては、安息香酸塩(例えば、安息香酸ナトリウム、安息香酸)、ソルビン酸塩(例えば、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム)、クエン酸塩(例えば、クエン酸)、プロピオン酸塩(例えば、プロピオン酸)、アスコルビン酸塩(例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム)およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
塩
任意選択的には、米生地組成物には塩が含まれていてもよい。存在するときには、米生地組成物は、米生地組成物の総重量の5重量%まで、好ましくは4重量%まで、好ましくは3重量%まで、好ましくは2重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、好ましくは0.1重量%までの量で塩を含有していてもよい。塩としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、ならびに、カルシウム、カリウムおよびマグネシウムの硫酸塩、ならびに、それらの混合物(例えば、海塩)が挙げられてもよいが、それらに限定されない。好ましい実施形態では、本開示の米生地組成物には塩が含まれていない。
【0062】
着色料
本明細書に記載の米生地組成物は概して、色彩が白、オフホワイト、クリームである麺製品を製造する。しかしながら、所望されるときには、本技術分野で周知であるように種々の色彩(例えば、赤、オレンジ、緑、茶など)を有する麺を提供するために、米生地組成物に種々の着色料が任意選択的に追加されてもよい。着色料は、染料であってもよく顔料であってもよい。存在するときには、米生地組成物は、米生地組成物の総重量の3重量%まで、好ましくは2重量%まで、好ましくは1重量%まで、好ましくは0.5重量%まで、好ましくは0.1重量%まで、好ましくは0.01重量%までの量で着色料を含有していてもよい。
【0063】
食品等級着色料の具体例としては、青色1号(ブリリアントブルーFCF、E133)、青色2号(インジゴチン、E132)、緑色3号(ファストグリーンFCF、E143)、赤色3号(エリスロシン、E127)、赤色40号(アルラレッドAC、E129)、連邦食品・医薬品・化粧品法による黄色5号(FD&C Yellow No.5)(タートラジン、E102)、連邦食品・医薬品・化粧品法による黄色6号(FD&C Yellow No.6)(サンセットイエローFCF、E110)、および、それらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0064】
結合酵素
米生地組成物の結合品質を改善し、かつ、いっそう持続性のあるつながり/ネットワークを形成するために、米生地組成物には結合酵素が任意選択的に含まれていてもよい。例えば、加工助剤としてトランスグルタミナーゼ酵素が追加されて、米生地組成物中に存在する蛋白質をつなげて、いっそうネットワーク化され、かつ、持続性のある生地を与えてもよい(例えば、グルタミンおよびリシン残基のイソペプチド結合形成を介して)。利用されるときには、結合酵素は、米生地組成物の総重量の少なくとも0.001重量%、好ましくは少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%であり、かつ、0.5重量%まで、好ましくは0.4重量%まで、好ましくは0.35重量%までの量で米生地組成物に追加されてもよい。代替的には、結合酵素は、米生地組成物1グラム当たり少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5、好ましくは少なくとも1であり、かつ、25まで、好ましくは15まで、好ましくは10までの活性単位を提供する任意の量で米生地組成物に追加されてもよい。
【0065】
結合酵素の適切な例としては、味の素社から入手可能であるアクティバRMのような蛋白質が豊富な食品用の伝統的なトランスグルタミナーゼ酵素、ならびに、Mea, M. D. et al. Plant Physiol. 2004, 135(4), pg. 2046-2054および米国特許第6,030,821号明細書(それぞれ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のAtPnglpのような植物由来の応用例に用いられるように設計された、または、植物由来の応用例に用いられ得る任意のトランスグルタミナーゼ酵素が挙げられてもよい。
【0066】
好ましい実施形態では、米生地組成物には結合酵素が用いられていない。
【0067】
追加の増粘剤
米生地組成物には、アルギン酸アルキレングリコールに加えて追加の増粘剤が任意選択的に含まれていてもよい。アルギン酸アルキレングリコールについて記載された量で、当業者に知られている任意の適切な食品等級増粘剤が含まれていてもよい。かかる増粘剤の許容可能な例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)といった変性セルロースポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。好ましい実施形態では、米生地組成物は、追加の増粘剤を実質的に含んでいない。
【0068】
米生地組成物を製造するための方法
本明細書に記載の米生地組成物の実施形態は、当業者に知られている任意の方法および任意の適切な技術によって調製されてもよい。例として、米生地組成物は次のように調製されてもよい。
【0069】
適切な容器中ですべての乾燥原料(すなわち、米粉、キサンタンガム、アルギン酸アルキレングリコール、および、必要があれば非液状である任意のその他の任意選択的な原料(例えば、塩))を混合することによって、ドライミックスが調製されてもよい。ドライミックスを構成する原料は、任意の順番で容器に追加され、そして、かき混ぜ、撹拌および/またはブレンドによって一緒に混合されてもよく、そして、この混合は、手動で達成されてもよく混合機によって達成されてもよい。好ましい実施形態では、混合は、ドライミックス全体に各原料を均一に分配するのに適した時間実行され、典型的な混合時間は、30分まで、好ましくは20分まで、好ましくは10分まで、好ましくは5分まで、好ましくは3分まで、好ましくは2分までである。
【0070】
代替的には、予め製造されたドライミックスが得られ、次に米生地組成物を製造するのに用いられてもよく、例えば、ドライミックスは、そのまま得られ(例えば、購入され)、使用される独立型の市販製品であってもよい。
【0071】
適量の油および水および液状である任意のその他の任意選択的な原料をかき混ぜ、撹拌し、かつ/または、ブレンドすることにより一緒に混合することによって、乳剤(好ましくは、連続相が水性である水中油型乳剤(o/w))が別途調製されてもよい。好ましい実施形態では、乳剤は、少なくとも1.5:1、好ましくは少なくとも2:1、好ましくは少なくとも3:1、好ましくは少なくとも4:1、好ましくは少なくとも5:1、好ましくは少なくとも6:1、好ましくは少なくとも7:1であり、かつ、90:1まで、好ましくは60:1まで、好ましくは30:1まで、好ましくは10:1まで、好ましくは8:1までの水:油の重量比で調製される。好ましい実施形態では、乳剤を製造するのに用いられる水は、室温(例えば、約20~25℃)または室温付近である。
【0072】
乳剤は次に、ドライミックスと組み合されてもよく、このことはドライミックスに乳剤を追加すること、または、乳剤にドライミックスを追加することのいずれかによって達成され得る。好ましい実施形態では、乳剤がドライミックスに追加される。乳剤はすべてが一度に追加されてもよく、乳剤はゆっくりと/部分毎に追加されてもよい。いくつかの実施形態では、乳剤は、好ましくは同時に混合しながら、ドライミックスにゆっくりと追加される。好ましい実施形態では、乳剤は、少なくとも1分、好ましくは少なくとも2分であり、かつ、20分まで、好ましくは15分まで、好ましくは10分まで、好ましくは5分までの追加時間にわたってゆっくりと追加される。
【0073】
乳剤をドライミックスと組み合わせた後、かき混ぜ、撹拌、ブレンド、混練、加工、伸展および/または折り畳みによってさらなる混合が実行されて、その後で成形済み麺製品の形態へと成形され得る米生地組成物を形成してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、乳剤を製造するのに用いられる水は、任意選択的には、室温を上回る温度まで加熱されてもよい。例えば、水(したがって、乳剤)は、少なくとも35℃、好ましくは少なくとも40℃、好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃であり、かつ、100℃未満、好ましくは90℃未満、好ましくは80℃未満、好ましくは70℃未満の温度まで加熱されてもよい。このように、乳剤がドライミックスと組み合されるときには、温水がドライミックス中に存在するデンプン成分を部分的にゼラチン化させ、これにより生地の結合特性が改善され、任意の後に続く成形工程の最中の裂けまたは破れの発生が減少しうる。高温の乳剤を室温のドライミックスと組み合わせた後、結果として生じる組み合わせ物の初期温度は、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも32℃、好ましくは少なくとも34℃、好ましくは少なくとも36℃であり、かつ、60℃まで、好ましくは50℃まで、好ましくは45℃まで、好ましくは40℃までである。
【0075】
しかしながら、成形前のかかるゼラチン化ステップは、生地を調理し過ぎることを回避するために水温および温水曝露時間の正確な制御を必要とする。水温に対するかかる正確な制御の必要性は、生地製造にとって(とりわけ、大規模での製造の最中に)有意な障害であろう。したがって、好ましい実施形態では、米生地組成物は、室温の、または、室温付近の水を用いて調製され、容易な大規模製造を可能にする。成形前のかかる部分的ゼラチン化が許容可能な生地のつながり性/結合特性の要件ではなくなることが、したがって、本明細書に記載の米生地組成物の主たる利点である。
【0076】
成形済み麺製品および製造方法
本開示の米生地組成物は、優れた加工性および作業性特性を有し、多くのグルテンフリーの麺製品と関連付けられる裂け、破れ、崩壊、張り付きおよび/または低吸収性問題を伴うことなく、それらを広範囲の成形済み麺製品へと成形するのによく適合するようにする。したがって、本開示はまた、成形済み麺製品を製造する方法、および、このように得られる成形済み麺製品も提供する。
【0077】
本方法はまず、米生地組成物を成形済み米生地組成物へと成形することを伴ってもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、米生地組成物は、シート状に成形されてもよい。米生地組成物は、手(例えば、ローラー)によって、または、シーティング機を用いて加圧形成/シーティングされてもよい。米生地組成物は、シーティングされた米生地が所望の厚さを有して形成されるまで適宜何度も(すなわち、1回、2回、3回またはそれ以上)シーティングされてもよい。好ましい実施形態では、米生地組成物は、機械によって2回シーティングされる。本方法はまた、任意選択的には、折り畳み作業、伸張/延伸作業または両方を伴って、所望のシートの厚さおよび/または形状を達成してもよい。
【0079】
シートは、その最長の直線的寸法(長さ):厚さに関して広範囲のアスペクト比を有していてもよい。いくつかの実施形態では、シートは、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも6:1、好ましくは少なくとも7:1、好ましくは少なくとも10:1であり、かつ、300:1まで、好ましくは250:1まで、好ましくは200:1まで、好ましくは150:1まで、好ましくは100:1まで、好ましくは50:1までであるアスペクト比を有する。例えば、成形済み麺製品は、長さが15~20cmであり、厚さが1~20mmであるシート状であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、米生地組成物は、スライスされた麺の形態へと成形されてもよい。好ましい実施形態では、シートは、スリッターおよびカッターまたはウェーバーを備える切断機を用いて切断/スライスされる。ここで、シートは、適切なスリッターの選択によって所望の幅の麺線へと切断されてもよい。すなわち、スリッターは、幅に沿う増分にて縦にシートをスライスして、シートについて上記されたアスペクト比寸法(長さ:厚さ)を有し、かつ、当業者によって知られているような選択されるスリッター間隔に等しい幅寸法を有する複数の麺線(細長い麺)を形成する。例えば、スライスされた麺は、少なくとも20:1、好ましくは少なくとも30:1、好ましくは少なくとも40:1であり、かつ、100:1まで、好ましくは80:1まで、好ましくは60:1までである長さ:幅の比を有していてもよい。スライスされた麺は、種々のスリッターを用いることによって、正方形または円形のいずれかであり得、かつ、カッターで所望の長さに切断されてもよい。かかる方法は、スパゲッティ、タリアテッレ、フェットゥチーニ、ヴェルミチェッリ、撈麺などに形状が類似する長い麺製品を製造するのに用いられてもよい。麺線はまた、任意選択的には、切断される前に波状、および/または、らせん状にされてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、米生地組成物は、ダイを通して米生地組成物を押出して、ダイの断面に対応する固定された断面プロファイルを有する押出成形物を形成することによって成形される。かかる押出法によって得られる任意の成形済み麺製品は、本明細書の押出成形物の形態であると考えられる。ダイが広範囲の断面形状およびサイズを有して製造されてもよいので、押出成形物もまた、種々の形状およびサイズを有して形成されてもよい。ダイを通して米生地組成物を押出した後、押出成形物は切断されて、所望される任意の単位長さを提供してもよい。1つの非限定的な例では、厚さが1~1.5mm、幅が1~1.5mmであり、かつ、20~30cmの長さに切断される押出成形物を形成するようにダイが選択され得るが、多くのその他の寸法を有する押出成形物が本明細書の方法によって製造され得ることが認識されるべきである。
【0082】
押出成形物は、長い麺、短い麺、パスティナ、または、ダイを通して生地を押出することによって得られ得る、当業者に知られている任意のその他のタイプの麺であってもよい。押出成形物は、中実、中空(例えば、チューブ状)であってもよく、平坦または織り目加工された(textured)平坦な麺(例えば、ラザニア麺)、チューブ状の麺(例えば、ペンネ)、織り目加工されたチューブ状の麺(例えば、トルティリオーニ)、らせん状の麺(フジッリ)などを含む。
【0083】
米生地組成物は、好ましくは、成形前には湯通しされず、または、温水処理(例えば、蒸気処理、米生地組成物を製造するための温水の使用など)に供されない。代わりに、温水処理が米生地組成物を成形した後でのみ用いられることが好ましい。
【0084】
好ましい実施形態では、成形済み米生地は湯通しされて、成形済み麺製品を形成するために、その中に含有されている米デンプン成分の部分的ゼラチン化を引き起こす。いくつかの実施形態では、湯通しは、3分を越えない時間、好ましくは2分を越えない時間、好ましくは1分を越えない時間、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃、好ましくは少なくとも90℃であり、かつ、100℃までの温度にて水(または塩水もしくは水中油型乳剤)中で成形済み米生地を茹でることによって実行されてもよい。かかる不完全な調理は、各麺の外側部分に存在するデンプン成分がゼラチン状になること(すなわち、ゼラチン化された外殻)を引き起こす一方で、各麺の内側部分の中に存在するデンプン成分は、不変のままである(すなわち、ゼラチン化されていない核)。
【0085】
好ましい実施形態では、成形済み米生地を湯通しすることは、成形済み米生地の元々の(湯通し前の)体積の50%より多く、好ましくは55%より多く、好ましくは60%より多く、好ましくは65%より多く、好ましくは70%より多く、好ましくは75%より多い体積増加を与える。かかる体積増加は、少量の成形済み米生地のみを用いての大量の成形済み麺製品の製造を可能にし、したがって、いっそう低い製造コストを可能にする。
【0086】
成形済み麺製品はその後、任意選択的には冷凍されてもよい。いくつかの実施形態では、成形済み麺製品は冷凍されず、その代わりにそのまま用いられるか、または、包装される。好ましい実施形態では、成形済み麺製品は冷凍される。冷凍する方法は特に限定的ではなく、かつ、製品冷凍をもたらすのに適切な時間、商業/製造冷凍庫に成形済み麺製品を配置することを伴ってもよい(例えば、0℃を下回る温度にて)。
【0087】
成形済み麺製品はまた、任意選択的不活性(脱酸素化)法を含む、当業者に知られている従来の包装技術を用いて包装されてもよい。
【0088】
成形済み麺製品としては、フォー、酔っ払い麺、パッタイ、拉麺、餃子、餃子の皮、伝統的米麺、カルグクス、うどん、チャジャンミョン、スジェビ、焼きそば、蕎麦およびパスタ麺(スパゲッティ、ビゴリ、リガティ、カナリーニ、ズィーティ、ヴェルミチェッリ、マッケローニ、リガトーニ、ペンネ、フジッリ、カンネローニ、ジランドーレ、ファルファッレ、フィリーニ、ファルファッリーネ、リッチュテッリ、ランチェッテ、カンパネッレなど)が挙げられてもよい(または、それらを含む料理に用いられてもよい)が、それらに限定されない。もちろん、本開示の米生地組成物が、それらの優れたつながり性および加工性のおかげで、本明細書に具体的に列挙されたもの以外の種々の調整可能な寸法を有する広範囲の形状へと成形され得、かつ、すべてのかかる成形済み麺製品が本明細書において考慮されることは認識されるべきである。
【0089】
以下の例は、米生地組成物、それから製造される成形済み麺製品およびそれらの製造方法をさらに説明することを意図し、かつ、特許請求の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0090】
米生地組成物調製方法
以下の例のために、次の手順にしたがって米生地組成物を調製した:a)液状原料(例えば、水および/またはキャノーラ油)を、示された温度の水を用いて一緒に混合した; b)乾燥原料を2分間機械によって混合して、ドライミックスを形成した; c)a)からの液状材料を5分間にわたってゆっくりとb)からのドライミックスへと追加し、かつ、内容物をかき混ぜて、米生地組成物を形成した。
【0091】
成形済み麺調製方法
シーティング法:米生地組成物を機械によって2回シーティングして厚さが10~20mmのシートを形成し、圧延し、その後で厚さ1~2mmに加圧形成し、長さ15~20cmに切断した。その後、シートをスライス/切断し、幅3.75mmのスライスされた麺を形成した。その後、スライスされた麺を1分間90℃にて湯通しし、かつ、製造冷凍庫において冷凍した。
押出法:米生地組成物を押出機によって厚さ1~1.5mmかつ幅1~1.5mmへと押出し、その後で長さ20~30cmに切断した。その後、押出成形物を1分間90℃にて湯通しし、かつ、製造冷凍庫において冷凍した。
【0092】
例1~12
以下の表1には、米粉(カルローズ中粒、M-205)または「SPGF」(米粉代用品、BAY State Milling社から市販されているBLGF-FLX-050)のいずれかを用いた例1~12の米生地組成物が与えられている。表1では、各成分(原材料)の量は、各成分の個別の重量パーセントの合計として計算された総重量パーセント(「総」)に基づいて、重量パーセントで表現されている。PGAは、Kimica Corp社から市販されているアルギン酸プロピレングリコールであるKIMILOID HVである。アクティバRMは、味の素社から入手可能なトランスグルタミナーゼ酵素である。塩は塩化ナトリウムである。米生地組成物を製造するのに用いられる水温は「water ℃」で示され、かつ、結果として生じる混合物の温度は「mix ℃」で示されている。「r.t.」は室温(約23℃)である。
【0093】
以下の表では、*は例が比較例であることを示している。
【0094】
【0095】
評価
例1~11の米生地組成物を、例10を麺棒を用いて手で1.0mmの厚さにシーティングしたことを除いて、上記のシーティング法を用いて成形した。例12を、上記の押出法を用いて成形した。例1~12を、表2の評価システムにしたがって評価した。評価の結果を表3に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
例13~28
例13~28の米生地組成物を、米粉のタイプを変化させたことを除いて、例11(米粉63.4重量%、キサンタンガム0.22重量%、PGA0.53重量%、キャノーラ油4.22重量%、室温の水31.7重量%)にしたがって調製した。米粉の源を、米ID(米個体識別票)で示す。例11~28における米粉成分を製造するのに用いられる各米IDの説明を、表4~6に示す。
【0099】
以下の表(表4~8)では、AACは、Megazyme社から市販されているアミロース/アミロペクチンアッセイキット/法であるK-AMYL 06/18にしたがって判定される、米粒の見かけアミロース含有量(%)である。ASVは、Juliano, B. 「Criteria and tests for rice grain quality」 Rice chemistry and technology, 2nd ed. Am. Assoc. Cereal Chemists (AACC), St. Paul, MN, 1985, pg. 443-513にしたがって、1.7%KOHを用いて判定されたアルカリ膨潤度である。ペースト特性を、AACCI Method 61-02.01 「Determination of the pasting properties of rice with the Rapid Visco Analyzer」にしたがって測定した。「MG」は中粒である。「SG」は短粒である。「LG」は長粒である。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
評価
例11および13~28の米生地組成物を、上記のシーティング法を用いて成形し、かつ、特性(1)~(6)を、表2にしたがって各特性について「合格」または「不合格」のいずれかで評価した。その後、米生地組成物を、以下の評価システムに基づいてカテゴライズし、その結果を表7および8に示す:
- 特性(1)~(6)のそれぞれで「合格」等級を受け取った米生地組成物を、「良好」と見なした。
- 特性(1)~(6)のうちの1~2つで「不合格」等級を受け取った米生地組成物を、「OK」と見なした。
- 特性(1)~(6)のうちの3つ以上で「不合格」等級を受け取った米生地組成物を、「不良」と見なした。
【0104】
以下の表では、「良好」評価を受け取り、かつ、製造に温水の使用を必要としない米生地組成物が革新的であると考えられる。*は、例が比較例であることを示している。
【0105】
【0106】
【0107】
本明細書に数値限定または範囲が示されている場合には、終点が含まれる。また、数値限定または範囲内のすべての値および部分範囲は、まるで明示的に書き出されたかのように、具体的に含まれる。
【0108】
本明細書で用いられるとき、単語「1つの(a)」および「1つの(an)」などは、「1つ以上の」の意味を有する。
【0109】
明確なことに、上記の教示に照らして、本発明の多数の修正および変形が考慮され得る。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明が本明細書に具体的に記載された以外の方法で実施されてもよいことは理解されるべきである。
【0110】
上述されたすべての特許およびその他の文献は、それがまるで詳細に記載されたかのように、この参照によって本明細書に完全に組み込まれる。