IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイ・エム・エスの特許一覧

特許7434964細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法
<>
  • 特許-細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法 図1
  • 特許-細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法 図2
  • 特許-細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法 図3
  • 特許-細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法 図4
  • 特許-細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法 図5
  • 特許-細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法 図6
  • 特許-細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】細胞保存容器及び細胞保存容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240214BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12M3/00 Z
A61J1/10 330B
A61J1/10 333C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020017798
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021122232
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】中野 源紀
(72)【発明者】
【氏名】平井 聡
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-122518(JP,A)
【文献】特開2019-154756(JP,A)
【文献】特開2019-5388(JP,A)
【文献】特開2013-5825(JP,A)
【文献】特開2004-267384(JP,A)
【文献】特表平4-506949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/
C12M 3/
A61J 1/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞収容室と、前記細胞収容室に接続される筒状部と、前記筒状部に配置されるチューブと、を備える細胞保存容器であって、
前記筒状部は、
少なくとも前記チューブの外径と同じ大きさの内径を有し、少なくとも前記チューブの長さと同じ長さを有する第1筒状部と、
前記第1筒状部と前記細胞収容室との間に設けられて前記チューブの外径よりも小さい内径を有する第2筒状部と、を含んで構成される細胞保存容器。
【請求項2】
前記第1筒状部は、前記チューブの外径と同じ大きさの内径を有し、前記チューブの長さと同じ長さを有する請求項1に記載の細胞保存容器。
【請求項3】
前記第2筒状部は、前記チューブの内径と同じ大きさの内径を有する請求項2に記載の細胞保存容器。
【請求項4】
複数の前記細胞収容室を備え、
前記筒状部及び前記チューブは、隣り合う2つの前記細胞収容室の間に配置され、
前記筒状部は、前記第1筒状部の両端側に配置される2つの前記第2筒状部を含んで構成される請求項1~3のいずれかに記載の細胞保存容器。
【請求項5】
細胞収容室と、前記細胞収容室と接続される筒状部と、前記筒状部に配置されるチューブと、を備える細胞保存容器の製造方法であって、
前記筒状部は、
少なくとも前記チューブの外径と同じ大きさの内径を有し、少なくとも前記チューブの長さと同じ長さを有する第1筒状部と、
前記第1筒状部と前記細胞収容室との間に設けられて前記チューブの外径よりも小さい内径を有する第2筒状部と、を含んで構成され、
第1シート状部材及び第2シート状部材の少なくとも一方に、前記細胞収容室を構成する凹部を形成すると共に、前記第1シート状部材及び前記第2シート状部材に、前記第1筒状部を構成する第1半筒状部及び前記第2筒状部を構成する第2半筒状部を形成し、
前記第1半筒状部に前記チューブを配置して前記第1シート状部材及び前記第2シート状部材を重ね合わせた状態で、前記凹部、前記第1半筒状部及び前記第2半筒状部の周縁部を接合して前記細胞収容室及び前記筒状部を形成する細胞保存容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞懸濁液やタンパク質、核酸等の生体試料を保存する細胞保存容器及びその製造方法に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生医療分野においては、生体試料から採取された幹細胞が、例えば、造血幹細胞移植や各種組織の再構築等の様々な用途に用いられている。幹細胞は、生体試料から採取された後、再生医療に用いられるまでの間、細胞保存容器に収容された状態で凍結保存される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
細胞保存容器の製造方法としては、所定の形状に成形されたシート状部材を重ね合わせて高周波誘電加熱法により溶着し、細胞収容室、細胞導入路及び排気路等を形成する方法が一般的である。細胞導入路や排気路等の筒状部にはチューブが配置され、チューブの中空部分に高周波電圧を印加するための溶着ピンを挿入して位置合わせをして、シート状部材に形成された半筒状部とチューブとを溶着する(例えば、特許文献2参照)。このようにチューブが筒状部と溶着されるため、チューブの細胞収容室への進入を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2001-517103号公報
【文献】特開2004-267384号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した溶着ピンは、チューブとシート状部材の筒状部とを溶着した後はチューブから引き抜かれる。そのため細胞収容室やチューブが配置される細胞導入路や排気路等の筒状部は、溶着後に溶着ピンを引き抜き可能な配置や形状にする必要がある。このため、細胞収容室や筒状部を任意の配置や形状に形成することが難しかった。
【0006】
従って、本発明は、細胞収容室及びチューブが配置される筒状部を任意の配置や形状とすることが可能な細胞保存容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、細胞収容室と、前記細胞収容室に接続される筒状部と、前記筒状部に配置されるチューブと、を備える細胞保存容器であって、前記筒状部は、少なくとも前記チューブの外径と同じ大きさの内径を有し、少なくとも前記チューブの長さと同じ長さを有する第1筒状部と、前記第1筒状部と前記細胞収容室との間に設けられて前記チューブの外径よりも小さい内径を有する第2筒状部と、を含んで構成される細胞保存容器に関する。
【0008】
また、前記第1筒状部は、前記チューブの外径と同じ大きさの内径を有し、前記チューブの長さと同じ長さを有することが好ましい。
【0009】
また、前記第2筒状部は、前記チューブの内径と同じ大きさの内径を有することが好ましい。
【0010】
また、細胞保存容器は、複数の前記細胞収容室を備え、前記筒状部及び前記チューブは、隣り合う2つの前記細胞収容室の間に配置され、前記筒状部は、前記第1筒状部の両端側に配置される2つの前記第2筒状部を含んで構成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、細胞収容室と、前記細胞収容室と接続される筒状部と、前記筒状部に配置されるチューブと、を備える細胞保存容器の製造方法であって、前記筒状部は、少なくとも前記チューブの外径と同じ大きさの内径を有し、少なくとも前記チューブの長さと同じ長さを有する第1筒状部と、前記第1筒状部と前記細胞収容室との間に設けられて前記チューブの外径よりも小さい内径を有する第2筒状部と、を含んで構成され、第1シート状部材及び第2シート状部材の少なくとも一方に、前記細胞収容室を構成する凹部を形成すると共に、前記第1シート状部材及び前記第2シート状部材に、前記第1筒状部を構成する第1半筒状部及び前記第2筒状部を構成する第2半筒状部を形成し、前記第1半筒状部に前記チューブを配置して前記第1シート状部材及び前記第2シート状部材を重ね合わせた状態で、前記凹部、前記第1半筒状部及び前記第2半筒状部の周縁部を接合して前記細胞収容室及び前記筒状部を形成する細胞保存容器の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1筒状部に配置されたチューブは第2筒状部により細胞収容室側への移動が制限されるため、チューブと筒状部とを接合する必要がなく、任意の配置や形状の細胞収容室及び筒状部を備える細胞保存容器を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る細胞保存容器を示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る細胞保存容器を示す模式的な平面図である。
図3】第1実施形態に係る細胞保存容器を示す分解斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る細胞保存容器を示す平面図である。
図5】第2実施形態に係る細胞保存容器を示す模式的な平面図である。
図6】第2実施形態の変形例1に係る細胞保存容器を示す模式的な平面図である。
図7】第2実施形態の変形例2に係る細胞保存容器を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の細胞保存容器の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。細胞保存容器は、生体試料から採取された幹細胞等の細胞を複数の細胞収容室に分注して収容し、凍結保存する場合等に用いられる。
本明細書において、細胞とは、生体試料から採取された間葉系細胞を含む組織由来細胞、造血幹細胞を含む血液細胞、それらの細胞を培養した細胞や遺伝子改変された細胞を含む細胞浮遊液及び血漿を含む体液やそれらの抽出物を総称していう。
【0015】
まず、第1実施形態の細胞保存容器1について、図1及び図2を参照しながら説明する。
第1実施形態の細胞保存容器1は、細胞収容室10と、筒状部20と、チューブ30と、を備える。
【0016】
細胞収容室10は、図1に示すように、平面視で楕円形に形成される。細胞収容室10は、細胞保存容器1の厚さ方向の断面における内壁側が曲線形状になるように立体的に形成される。第1実施形態では、細胞保存容器1の厚さ方向の断面は楕円形状に形成される。細胞収容室10の容量は、例えば、1mL~10mLの比較的小容量に設定される。
【0017】
図2に筒状部20の構成を説明するための模式的な平面図を示す。
筒状部20は、細胞収容室10の長径方向の頂部に配置される。筒状部20は、第1筒状部21と、第2筒状部22と、を含んで構成され、細胞収容室10と外部とを連通させる。
第1筒状部21は、少なくともチューブ30の外径と同じ大きさの内径を有し、少なくともチューブ30の長さと同じ長さを有する。また、第1筒状部21の内部には、チューブ30が配置される。第2筒状部22は、チューブ30の外径よりも小さい内径を有しており、第1筒状部21と細胞収容室10との間に配置される。
【0018】
以上の筒状部20及びチューブ30により、外部から細胞収容室10に細胞を導入する細胞導入路40が構成される。
このように筒状部20を構成することで、チューブ30は、第1筒状部21に内包された状態となる(図2参照)。よって、チューブ30は、第1筒状部21と溶着等により接合されていなくても、第2筒状部22が位置決め部として機能し、細胞収容室10側への移動が制限される。
【0019】
ここで、細胞保存容器1は、使用時に細胞収容室10に細胞を充填後、筒状部20の一部をチューブ30と共に溶着することにより高強度な溶着部が形成され、細胞収容室10が密封される。よって、第1筒状部21の長さは、チューブ30が第1筒状部21内で移動しても、溶着する部分A(図1参照)にチューブ30が配置されるように設定すればよい。
また、第1筒状部21の内径W4及び長さは、チューブ30の外径W2及び長さと略同じ大きさにすることが好ましい。これによりチューブ30と第1筒状部21との間隙が小さくなり、細胞保存容器1の使用時に間隙に流れて取り出せなくなる液体を低減することができる。
また、第1筒状部21の内径W4及び長さを、チューブ30の外径W2及び長さと略同じ大きさにすると共に、第2筒状部22の内径W3をチューブ30の内径W1と略等しい大きさとすることが好ましい。これにより、チューブ30と第2筒状部22との段差が低減されるので、細胞保存容器1の使用時に筒状部20内で空気の滞留が発生することを抑制することができる。
【0020】
次に、細胞保存容器1の製造方法について、図3を参照して説明する。
細胞保存容器1は、EVA樹脂(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)等の可撓性を有する熱可塑性樹脂部材を主体として構成される。より具体的には、細胞保存容器1は、熱可塑性樹脂からなる第1シート状部材110及び第2シート状部材120と、熱可塑性樹脂からなるチューブ30と、を含んで構成される。
【0021】
第1シート状部材110及び第2シート状部材120は、まず、所定の形状を有するように立体成形される。具体的には、図3に示すように、細胞収容室10を構成する凹部11、第1筒状部21を構成する第1半筒状部210、及び第2筒状部22を構成する第2半筒状部220が立体成形される。尚、細胞収容室10を構成する凹部11は、第1シート状部材110及び第2シート状部材120のうち、少なくとも一方に形成されていればよい。
【0022】
次いで、第1シート状部材110及び第2シート状部材120に形成された第1半筒状部210の間にチューブ30が配置される。
そして、この状態で、第1シート状部材110及び第2シート状部材120が重ね合わせられ、凹部11、第1半筒状部210及び第2半筒状部220それぞれの周縁部S(図2参照)の大部分がヒートシールや超音波シールにより接合される。
【0023】
このように細胞保存容器1を製造することで、筒状部20に配置されるチューブ30の位置決めを容易に行うことができると共に、筒状部20とチューブ30との接合が不要となる。よって、製造における工程数を少なくすることができ、また、高周波誘電加熱法で用いられる溶着ピンが不要となるので、任意の配置や形状の細胞収容室10、筒状部20及びチューブ30を備える細胞保存容器1を容易に製造することができる。
尚、筒状部20の端部には、細胞を注入するための注入口(不図示)を圧入により固定、又は接着や溶着等により接合してもよい。
【0024】
以上説明した第1実施形態の細胞保存容器1によれば、以下のような効果を奏する。
【0025】
(1)細胞保存容器1を、細胞収容室10と、細胞収容室10と接続される筒状部20と、筒状部20に配置されるチューブ30と、を含んで構成し、筒状部20を、チューブ30が配置される第1筒状部21と、第1筒状部21と細胞収容室10との間に設けられてチューブ30の外径よりも小さい内径を有する第2筒状部22と、を含んで構成した。これにより、チューブ30は、第1筒状部21と溶着等により接合されていなくても、第2筒状部22が位置決め部として機能してチューブ30の細胞収容室10側への移動を制限できる。よって、チューブと筒状部とを接合する必要がなく、任意の配置や形状の細胞収容室10及び筒状部20を備える細胞保存容器1を容易に得ることができる。また、細胞保存容器1の使用時に細胞収容室10に細胞を充填後、筒状部20の一部をチューブ30と共に溶着することにより高強度な溶着部が形成されるので、細胞収容室10の密閉性を高めることができる。
【0026】
(2)第1筒状部21の内径W4をチューブ30の外径W2と同じ大きさとした。これにより、チューブ30と第1筒状部21との間隙が小さくなり、細胞保存容器の使用時に間隙に流れて取り出せなくなる細胞を低減することができる。
【0027】
(3)第2筒状部22の内径W3を、チューブ30の内径W1と同じ大きさとした。これにより、チューブ30と第2筒状部22との段差を低減できるので、細胞保存容器1の使用時に、筒状部20内で空気の滞留等が発生するのを抑制できる。
【0028】
(4)細胞保存容器1の製造方法を、第1シート状部材110及び第2シート状部材120の少なくとも一方に、細胞収容室10を構成する凹部11を形成すると共に、第1シート状部材110及び第2シート状部材120それぞれに第1筒状部21を構成する第1半筒状部210及び第2筒状部22を構成する第2半筒状部220を形成する工程と、第1半筒状部210にチューブ30を配置して第1シート状部材110及び第2シート状部材120を重ね合わせた状態で、凹部11、第1半筒状部210及び第2半筒状部220の周縁部の大部分を接合して細胞収容室10及び筒状部20を形成する工程と、を含んで構成した。これにより、筒状部20に配置されるチューブ30の位置決めを容易に行うことができると共に、筒状部20とチューブ30との接合が不要となる。また、筒状部20の形成後にチューブ30を圧入する工程も不要であるので、筒状部20の形成後ではチューブ30の圧入が困難な位置に筒状部20が配置されていても、筒状部20にチューブ30を内包させて配置することができる。よって、製造における工程数を少なくすることができ、また、高周波誘電加熱法で用いられる溶着ピンが不要となるので、任意の配置や形状の細胞収容室10、筒状部20及びチューブ30を備える細胞保存容器1を容易に製造することができる。
【0029】
次に、第2実施形態の細胞保存容器について、図4及び図5を参照しながら説明する。
図4に示すように、第2実施形態の細胞保存容器1Aは、細胞収容室10Aを複数備え、更に、複数の筒状部20及びチューブ30と、複数の筒状部20A及びチューブ30Aと、を備えている。第1実施形態と同様に、筒状部20にはチューブ30が配置され、細胞導入路40A、及び細胞収容室10Aから気体を排出するための排気路50Aとして用いられる。第1実施形態と異なる構成の筒状部20Aにはチューブ30Aが配置され、細胞収容室10A同士を接続して連通させる連通路60Aとして用いられる。第2実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0030】
細胞収容室10Aは、細胞保存容器1Aの厚さ方向の断面における内壁側が曲線形状になるように立体的に形成される。第2実施形態では、第1実施形態と同様に細胞保存容器1Aの厚さ方向の断面は楕円形状に形成される。複数の細胞収容室10Aの配置間隔は、後述する連通路60Aを好適に形成する観点から、5mm~50mmであることが好ましく、10mm~30mmであることがより好ましい。細胞収容室10Aの容量は、例えば、1mL~10mLの比較的小容量に設定される。
【0031】
細胞導入路40Aは、筒状部20及びチューブ30により構成され、複数配置された細胞収容室10Aのうち、一端部に配置される細胞収容室10Aに設けられる。
【0032】
排気路50Aは、筒状部20及びチューブ30により構成され、複数配置された細胞収容室10Aのうち、細胞導入路40Aが設けられた細胞収容室10Aとは反対側の他端部に配置される細胞収容室10Aに設けられる。
【0033】
図5に、筒状部20Aの構成を説明するための模式的な平面図を示す。
連通路60Aは、筒状部20A及びチューブ30Aにより構成され、隣り合って配置される2つの細胞収容室10Aを連通させる。連通路60Aは、楕円形の細胞収容室10Aの長径方向における中央部、即ち、短径方向における頂部に配置される。第2実施形態では、細胞保存容器1Aは、4つの連通路60Aを有して構成される。第2実施形態においては、これら4つの連通路60Aは、同一直線状に配置するよう構成したが、任意の場所に配置してもよい。
【0034】
筒状部20Aは、第1筒状部21Aと、2つの第2筒状部22Aと、を含んで構成され、隣り合って配置される2つの細胞収容室10Aを連通させる。
第1筒状部21Aは、チューブ30Aの外径と同じ大きさの内径を有し、チューブ30の長さと同じ長さを有する。第1筒状部21Aの内部には、チューブ30Aが配置される。尚、第1筒状部21Aは、第1実施形態の場合と同様に少なくともチューブ30Aの外径と同じ大きさの内径を有し、少なくともチューブ30Aの長さと同じ長さを有するように構成されていればよい。
【0035】
第2筒状部22Aは、チューブ30Aの内径と略同じ大きさの内径を有する。第2筒状部22Aは、第1筒状部21Aと細胞収容室10Aとの間、即ち、第1筒状部21Aの両端側に配置される。尚、第2筒状部22Aは、第1実施形態の場合と同様に、チューブ30Aの外径よりも小さい内径を有するように構成されていればよい。
【0036】
このように筒状部20Aを構成することで、チューブ30Aは、第1筒状部21に内包された状態となる。よって、チューブ30Aは、第1筒状部21と溶着等により接合されていなくても、第2筒状部22Aが位置決め部として機能して、細胞収容室10A側への移動が制限される。また、チューブ30Aと第1筒状部21Aとの間隙が小さくなり、細胞保存容器1Aの使用時に筒状部20Aの間隙に流れて取り出せなくなる液体を低減することができる。また、チューブ30Aと第2筒状部22Aとの段差が低減されるので、細胞保存容器1Aの使用時に筒状部20A内で空気等の滞留が発生することを抑制することができる。
【0037】
第2実施形態における細胞保存容器1Aは、第1実施形態で説明した場合と同様の製造方法で、周縁部S(図5参照)を接合することにより容易に製造することができる。
【0038】
次に、第2実施形態の変形例について、図6及び図7を参照して説明する。
図6に、第2実施形態の変形例1として、連通路60Bが湾曲した形状を有する細胞保存容器1Bの模式的な平面図を示す。変形例1に係る細胞保存容器1Bは、連通路60Bとして用いられる筒状部20Bを備える。筒状部20Bは、湾曲した第1筒状部21Bと、その両端側に配置される2つの第2筒状部22Bと、を備える。第1筒状部21Bに配置されるチューブ30Bは、第1筒状部21Bと同様に湾曲形状を備える。これにより、チューブ30Bを第1筒状部21Bに内包させた状態で配置することができる。また、細胞収容室10Bは、矩形形状を有しており、筒状部20Bは、矩形形状の細胞収容室10Bの短辺における端部近傍に配置される。
【0039】
図7に、第2実施形態の変形例2として、細胞導入路40Cが分岐した形状を有する細胞保存容器1Cの模式的な平面図を示す。変形例2に係る細胞保存容器1Cは、細胞導入路40Cとして用いられる筒状部20Cが分岐してそれぞれの細胞収容室10Cに接続される形状を有する。筒状部20Cは、3つの第2筒状部22C1と、3つの第1筒状部21Cと、第1筒状部21Cと細胞収容室10Cとの間にそれぞれ配置される3つの第2筒状部22C2と、を備える。筒状部20Cの形状は、第1筒状部21Cを、第2筒状部22C1及び22C2で挟むように配置すれば、どのような形状に構成してもよい。これにより、チューブ30Cを第1筒状部21Cに内包させた状態で配置することができる。
【0040】
以上の変形例で説明したような湾曲形状や分岐形状等、複雑な形状や配置の筒状部を備える細胞保存容器であっても、第1実施形態で説明した場合と同様の製造方法を用いれば、周縁部S(図6及び図7参照)を接合することにより容易に製造することができる。また、細胞収容室の形状についても、任意の形状や配置とすることが可能である。
【0041】
第2実施形態、変形例1及び変形例2の細胞保存容器によれば、上述の(1)~(4)に加えて以下の効果を奏する。
【0042】
(5)細胞保存容器1Aを、複数の細胞収容室10Aを含んで構成し、筒状部20A及びチューブ30Aを、連通路60Aとして隣り合う2つの細胞収容室10Aの間に配置した。これにより、チューブ30Aは、第1筒状部21Aと溶着等により接合されていなくても、第2筒状部22が位置決め部として機能してチューブ30の細胞収容室10A側への移動を制限できる。よって、チューブ30Aが第1筒状部21Aに内包された状態を保つことができる。
【0043】
以上、本発明の細胞保存容器の好ましい各実施形態及び変形例につき説明したが、本発明は、上述の実施形態及び変形例に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、細胞収容室を、第1シート状部材及び第2シート状部材を立体成形して構成したが、これに限らない。即ち、細胞収容室を、一方のシート状部材のみを立体的に形成し、平面状の他方のシート状部材と重ね合わせて構成してもよい。
【0044】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、細胞収容室を立体形状に成形したが、これに限らない。即ち、細胞収容室を、平面状の2枚のシート状部材の周縁部を接合して構成してもよい。この場合、細胞保存容器は、平面状の細胞収容室に接続される立体的に形成される筒状部と、この筒状部に配置されるチューブと、を備えていればよい。
【0045】
また、第1実施形態における細胞保存容器の製造方法では、2つのシート状部材を重ね合わせて接合する場合を示したが、1つのシート状部材を折り返して、一端側を第1シート状部材、他端側を第2シート状部材として重ね合わせて接合してもよい。
【0046】
また、第1実施形態で示したような1つの細胞収容室及び1つの筒状部を備える細胞保存容器を形成する場合は、ブロー成形により細胞収容室及び筒状部を形成後、チューブを圧入により挿入して製造してもよい。
【0047】
また、第1実施形態、第2実施形態及び変形例2では、細胞収容室を楕円形状に形成したが、これに限らない。第2実施形態の変形例1で示したように、細胞収容室を、平面視において多角形状に形成してもよい(図6参照)。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B,1C 細胞保存容器
10,10A,10B,10C 細胞収容室
20,20A,20B,20C 筒状部
21,21A,21B,21C 第1筒状部
22,22A,22B,22C1,22C2 第2筒状部
30,30A,30B,30C チューブ
40,40A 細胞導入路
50A 排気路
60A,60B 連通路
110 第1シート状部材
120 第2シート状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7