(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】管理装置
(51)【国際特許分類】
H04M 3/42 20060101AFI20240214BHJP
H04M 3/00 20240101ALI20240214BHJP
H04W 4/10 20090101ALI20240214BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20240214BHJP
【FI】
H04M3/42 C
H04M3/42 S
H04M3/00 B
H04W4/10
H04W88/18
(21)【出願番号】P 2020018730
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2019019585
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】下島野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 一郎
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-543503(JP,A)
【文献】特表2009-500978(JP,A)
【文献】特表2008-535335(JP,A)
【文献】米国特許第8909203(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第1973293(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/00
H04M 3/38- 3/58
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置を管理する管理装置であって、
端末装置に関する情報を用いて、端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を端末装置に対して算出する指標算出部と、
発信元である第1の端末装置から、発信先に第2の端末装置が指定された第1通信モードまたは第2通信モードの通信要求データを受信する受信部と、
前記受信部が前記第2通信モードの通信要求データを受信し、かつ前記第2の端末装置の通信容易性指標が所定条件を満たす場合に、前記第1通信モードの通信要求データを前記第2の端末装置に送信する送信部と、
を備え、
前記第1通信モードは、前記第2の端末装置において所定の操作が行われた後に前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであり、前記第2通信モードは、前記第2の端末装置において所定の操作が行われなくても前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記指標算出部は、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数が多くなるほど、あるいは、端末装置が発信した時刻からの経過時間が長くなるほど、低い値になる通信容易性指標を算出することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記受信部は、前記第2の端末装置に対する通信容易性指標に関するしきい値をさらに受信し、
前記送信部は、前記第2の端末装置の通信容易性指標が前記しきい値未満である場合に、前記所定条件を満たすと判定することを特徴とする請求項1または2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記指標算出部において用いられる端末装置に関する情報は、端末装置の周囲の音の大きさに関する情報であり、
前記指標算出部において算出される通信容易性指標は、前記音の大きさが大きいほど、低い値となることを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項5】
前記指標算出部は、一の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報と、前記一の端末装置とは別の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報とをもとに、前記一の端末装置に関する通信容易性指標を算出することを特徴とする請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記指標算出部は、前記端末装置に関する情報として、端末装置の位置情報または移動速度に関する情報を用い、端末装置の位置情報または移動速度が所定の条件を満たす場合に、所定値よりも低い値の通信容易性指標を算出することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項7】
前記指標算出部は、前記端末装置に関する情報として、端末装置の加速度および角速度の少なくとも1つに関する値を用い、前記値が大きいほど、高い値となる通信容易性指標を算出することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項8】
端末装置を管理するコンピュータに、
端末装置に関する情報を用いて、端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を端末装置に対して算出するステップと、
発信元である第1の端末装置から、発信先に第2の端末装置が指定された第1通信モードまたは第2通信モードの通信要求データを受信するステップと、
前記第2通信モードの通信要求データを受信し、かつ前記第2の端末装置の通信容易性指標が所定条件を満たす場合に、前記第1通信モードの通信要求データを前記第2の端末装置に送信するステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記第1通信モードは、前記第2の端末装置において所定の操作が行われた後に前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであり、前記第2通信モードは、前記第2の端末装置において所定の操作が行われなくても前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に複数種類の通信モードを実行可能である管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の端末装置により構成される通信システムにおいて、複数種類の通信モードがサポートされる場合がある。例えば、第1通信モードでは、呼出信号を受信した端末装置において所定の操作が行われた後に通信が開始され、第2通信モードでは、呼出信号を受信した端末装置において所定の操作が行われない場合であっても通信が開始される。第1の通信モードでは、呼び出しを受けたユーザが所定の操作を行った後に通信が開始されるため、ユーザが知らないうちに通信が開始されることがなく、ユーザは通信の存在を確実に把握できる。一方、第2の通信モードでは、所定の操作が行われない場合でも通信が開始されるため、迅速に通信を開始することができる。このように、複数種類の通信モードでは、それぞれ異なる特性やメリットがある。
【0003】
また、特許文献1では、無線通信機と電話機との通信をネットワーク経由で中継装置が中継するシステムが提案されている。このシステムにおいて、中継装置は、電話機からの着呼に対して、子機の無線通信機から確実な応答指示があったことを条件に応答する。ここで、中継装置は、単独着信の場合に通話モードに分岐させ、同報配信の場合に無線呼出モードに分岐させ、無線通信機の発呼の場合にSIP(Session Initiation Protocol)発呼モードに分岐させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザが、通信相手に対して、ある通信モードを用いて通信を開始しようとした場合、通信相手は必ずしも、その通信モードで呼び出す場合に適した状況にあるとは限らない。例えば、ユーザが第2通信モードで通信を開始しても、通信相手が端末装置から離れているなどの場合には、発話した内容が通信相手に認識されないことが起こり得る。したがって、通信相手の状況に応じて複数種類の通信モードを適切に使用することが望まれる。しかしながら、従来技術においては、複数種類の通信モードを適切に使い分けることを十分には考慮していなかった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数種類の通信モードを適切に使用する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の管理装置は、端末装置を管理する管理装置であって、端末装置に関する情報を用いて、端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を端末装置に対して算出する指標算出部と、発信元である第1の端末装置から、発信先に第2の端末装置が指定された第1通信モードまたは第2通信モードの通信要求データを受信する受信部と、受信部が第2通信モードの通信要求データを受信し、かつ第2の端末装置の通信容易性指標が所定条件を満たす場合に、第1通信モードの通信要求データを第2の端末装置に送信する送信部と、を備える。第1通信モードは、第2の端末装置において所定の操作が行われた後に第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであり、第2通信モードは、第2の端末装置において所定の操作が行われなくても第1の端末装置と第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードである。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数種類の通信モードを適切に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)-(b)は、通信システムにおける通常発信の概要を示す図である。
【
図3】
図3(a)-(d)は、通信システムにおけるRBT発信の概要を示す図である。
【
図4】
図4(a)-(b)は、端末装置の表示部に表示される画面を示す図である。
【
図5】
図5(a)-(b)は、通信システムにおける発信の概要を示すシーケンス図である。
【
図6】管理装置のハードウエア構成および機能ブロックを示す図である。
【
図7】管理装置の詳細な機能ブロックを示す図である。
【
図8】管理装置の履歴テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図9】管理装置の活動状態率テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図10】
図10(a)-(b)は、管理装置の指標算出部において使用される関数を示す図である。
【
図11】管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】端末装置のハードウエア構成および機能ブロックを示す図である。
【
図13】端末装置の詳細な機能ブロックを示す図である。
【
図14】端末装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】実施例1の変形例に係る管理装置の記憶部に記憶される活動状態しきい値テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図16】実施例2の管理装置の記憶部に記憶される時間帯別の活動状態率テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図17】管理装置の記憶部に記憶される活動状態率平均値テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図18】実施例3の通信システムによる通信手順を示すシーケンス図である。
【
図19】実施例4の端末装置のハードウエア構成および機能ブロックを示す図である。
【
図20】端末装置の詳細な機能ブロックを示す図である。
【
図21】端末装置から送信される騒音レベルパケットのデータ構造を示す図である。
【
図22】管理装置のハードウエア構成および機能ブロックを示す図である。
【
図23】管理装置の詳細な機能ブロックを示す図である。
【
図24】管理装置の騒音レベルテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図25】管理装置の通信可能ステータステーブルのデータ構造を示す図である。
【
図26】管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図27】端末装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図28】実施例5の管理装置の記憶部に記憶される騒音レベル履歴テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図29】管理装置の記憶部に記憶される高騒音位置テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図30】管理装置の記憶部に記憶される高騒音エリアマップを示す図である。
【
図31】実施例6の通信システムによる通信手順を示すシーケンス図である。
【
図32】実施例8の端末装置のハードウエア構成および機能ブロックを示す図である。
【
図33】端末装置の詳細な機能ブロックを示す図である。
【
図34】端末装置から送信される位置情報パケットのデータ構造を示す図である。
【
図35】管理装置のハードウエア構成および機能ブロックを示す図である。
【
図36】管理装置の詳細な機能ブロックを示す図である。
【
図37】管理装置の履歴テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図38】管理装置の活動状態定義テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図39】管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図40】実施例9の管理装置の活動状態定義テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図41】実施例11の管理装置の記憶部に記憶される活動状態指標定義テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図42】実施例12の端末装置の詳細な機能ブロックを示す図である。
【
図43】端末装置のセンサ部における加速度および角速度の検出方向を示す図である。
【
図44】加速度情報パケットのデータ構造を示す図である。
【
図45】管理装置の詳細な機能ブロックを示す図である。
【
図46】実施例12の管理装置のセンサ情報テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図47】端末装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図48】実施例12の管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図50】実施例13のセンサ情報テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図51】実施例13の管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図52】実施例15のセンサ情報テーブルのデータ構造を示す図である。
【
図53】実施例15の管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図54】実施例16の加速度連続パケットのデータ構造を示す図である。
【
図55】実施例16の管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【
図56】実施例17の管理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
図1は、通信システム100の構成を示す。通信システム100は、ネットワーク10、管理装置12、基地局装置14と総称される第1基地局装置14a、第2基地局装置14b、第3基地局装置14c、端末装置16と総称される第1端末装置16a、・・・、第8端末装置16hを含む。ここで、通信システム100に含まれる基地局装置14の数は「3」に限定されず、端末装置16の数は「8」に限定されず、それらより多くてもよく、それらよりも少なくてもよい。
【0012】
端末装置16は、IPトランシーバ、PoC(Push-to-Talk over Cellular)トランシーバとも呼ばれ、音声通信を実行する。音声通信はプッシュ・ツー・トーク方式であり、個別呼出、グループ呼出、一斉呼出、近隣呼出も可能である。このような音声通信を実行するために、端末装置16は基地局装置14に接続される。ここで、基地局装置14と端末装置16との間における通信方式には、半二重または全二重通信が使用される。
【0013】
複数の基地局装置14は、ネットワーク10により互いに接続される。ネットワーク10は、例えばIP(Internet Protocol)ネットワークである。ネットワーク10には管理装置12が接続される。管理装置12は、例えばSIP(Session Initiation Protocol)サーバ等により構成され、端末装置16間で通話する際のSIPシーケンス処理を実行する。
【0014】
このような構成において、端末装置16の使用者(ユーザ)は、端末装置16の通話ボタンを押下することによって、他の端末装置16を使用する他の使用者との音声通話を実行する。通信方式が半二重通信である場合、ある音声通話に係る複数の端末装置16において、いずれかの使用者が通話ボタンを押下し発話している間にわたって、他の使用者は通話ボタンを押しても発話できない。通話を開始する際に通話ボタンを押下した場合の動作には、通常発信、Ring Back Tone(以下、「RBT」という)発信が含まれる。
【0015】
図2(a)-(b)は、通信システム100における通常発信の概要を示す。ここでは、第1端末装置16aと第2端末装置16bという2つの端末装置16間の通信を前提とするが、3つ以上の端末装置16間の通信であってもよく、1対多のグループ通信であってもよい。第1端末装置16aは第1使用者18aに使用され、第2端末装置16bは第2使用者18bに使用される。また、半二重通信を使用する場合を想定する。
【0016】
図2(a)において、第1使用者18aが第1端末装置16aの通話ボタンを押し下げている間、第2使用者18bが第2端末装置16bを操作しなくても、第1使用者18aと第2使用者18bとの音声通話が開始される。具体的に説明すると、第1使用者18aが第1端末装置16aの通話ボタンを押し下げている間、第1使用者18aによって発話された音声が音声信号として、第1端末装置16aから第2端末装置16bに発信される。第2端末装置16bは、受信した音声信号を再生し、音声を出力する。
図2(b)は、
図2(a)に続く処理であり、第2使用者18bが第2端末装置16bの通話ボタンを押し下げている間、第2使用者18bによって発話された音声が音声信号として、第2端末装置16bから第1端末装置16aに発信される。第1端末装置16aは、受信した音声信号を再生し、音声を出力する。このように、第1使用者18aと第2使用者18bとの間で交互に通話ボタンが押し下げられ、通話がなされる。
【0017】
図3(a)-(d)は、通信システム100におけるRBT発信の概要を示す。
図3(a)-(d)は
図2(a)-(b)と同様に示される。第1使用者18aが第1端末装置16aの通話ボタンを押し下げている間、第1端末装置16aは呼び出し音を出力する。第2端末装置16bは、音声通話を開始せず、着信音を出力する。
図3(b)は、
図3(a)に続く処理であり、着信音を聞いた第2使用者18bが第2端末装置16bの通話ボタンを押下する等の所定の操作を行うと、
図3(c)の通話開始への遷移がなされる。第1使用者18aが第1端末装置16aの通話ボタン押下を止める(通話ボタンを離す)と、
図3(c)の通話が終了する。通話終了時点から所定時間以内に、第2使用者18bが第2端末装置16bの通話ボタンの押下を持続すると、第2端末装置16bから第1端末装置16aへの折り返し通話(コールバック)が開始される。この状態を
図3(d)に示す。なお、RBT発信に対する折り返し通話において通常は、第2端末装置16bの呼び出し音や、第1端末装置16aの着信音は出力されず、すぐに通話状態となる。
【0018】
図3(c)の通話が通話終了してから所定時間が経過した以降に、第2使用者18bが第2端末装置16bの通話ボタンを押下すると、折り返し通話ではなく、新規のRBT発信となる。この場合は、第2端末装置16bの呼び出し音と、第1端末装置16aの着信音が出力される。このようにRBT発信では、音声通話を開始するために、受信側(着信側)の端末装置16での操作が必要となる。そのため、RBT発信は、発信相手に確実に情報を伝える必要がある場合に利用される。なお、上述の説明では、通話ボタンを押し下げ続ける操作により、RBT発信を実行するとしたが、他の操作によってRBT発信を実行してもよい。例えば、通話ボタンを1回(短時間)押下することにより、RBT発信を実行してもよい。
【0019】
通常発信とRBT発信の切替は、一般的に、発信側の端末装置16における設定をもとになされる。端末装置16において、「通常発信」が設定された場合、あるいは「発信時に通常発信あるいはRBT発信」が設定され、発信時に「通常発信」が選択された場合、通常発信がなされる。
図4(a)-(b)は、端末装置16の表示部に表示される画面を示す。これは、端末装置16において通常発信、RBT発信に関する設定を行うための画面例である。
図4(a)のRBT利用設定画面を用いて、発信時の動作が設定される。「利用しない」を設定した場合、通話ボタンを押下した後、通常発信がなされる。「常時利用」を設定した場合、通話ボタンを押下した後、RBT発信がなされる。「発信時選択」を設定した場合、通話ボタンを押下した後、
図4(b)の発信時選択画面が表示される。つまり、使用者18は通話を開始する毎に(発呼毎に)、通常発信またはRBT発信を選択する。
図4(b)の発信時選択画面において、「RBT発信」を選択した場合、RBT発信がなされる。「通常発信」を選択した場合、通常発信がなされる。なお、「RBT発信」を「第1通信モード」、「通常発信」を「第2通信モード」と呼ぶ場合もある。
【0020】
図5(a)-(b)は、通信システム100における発信の概要を示すシーケンス図である。
図5(a)は、SIP通信において、第1端末装置16aから第2端末装置16bへの通常発信がなされる場合の手順を示す。第1端末装置16aにおいて通常発信が選択された後(S10)、第1端末装置16aは第2端末装置16b宛てにINVITE(自動応答)を送信する(S12)。送信されたINVITE(自動応答)は管理装置12を経由し、第2端末装置16bに送信される(S14)。第2端末装置16bはINVITE(自動応答)を受信した後、第1端末装置16a宛てにステータスコード200 OKを送信する(S16)。送信されたステータスコード200 OKは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S18)。第1端末装置16aはステータスコード200 OKを受信した後、ACK(Acknowledge)を送信する(S20)。送信されたACKは管理装置12経由で、第2端末装置16bに送信される(S22)。第1端末装置16aはACKを送信した後、RTPを使って通話データの送信を開始する(S24、S26、S28)。なお、第1端末装置16aおよび第2端末装置16bと管理装置12との間の通信は、基地局装置14を経由して行われるが、説明を簡潔にするため、
図5においては基地局装置14を省略している。
【0021】
図5(b)は、SIP通信において、第1端末装置16aから第2端末装置16bへのRBT発信がなれる場合の手順を示す。第1端末装置16aでRBT発信が選択された後(S50)、第1端末装置16aは第2端末装置16b宛てにINVITE(手動応答)を送信する(S52)。送信されたINVITE(手動応答)は管理装置12を経由し、第2端末装置16bに送信される(S54)。第2端末装置16bはINVITE(手動応答)を受信した後、第1端末装置16a宛てにステータスコード100 Tryingを送信する(S56)。送信されたステータスコード100 Tryingは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S58)。第2端末装置16bはステータスコード100 Tryingを送信した後、第1端末装置16a宛てにステータスコード180 Ringingを送信する(S60)。送信されたステータスコード180 Ringingは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S62)。第1端末装置16aは、ACKを受信するまで通話を開始せずに待機する。
【0022】
その後、第2端末装置16bの通話ボタンが押下された場合(S64)、第2端末装置16bは第1端末装置16a宛てにステータスコード200 OKを送信する(S66)。送信されたステータスコード200 OKは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S68)。第1端末装置16aはステータスコード200 OKを受信した後、ACKを送信する(S70)。送信されたACKは管理装置12経由で、第2端末装置16bに送信される(S72)。第1端末装置16aはACKを送信した後、RTPを使って通話データの送信を開始する(S74、S76、S78)。
【0023】
以上説明したように、通常発信の動作では、受信側の端末装置16において通話ボタンを操作しなくでも通話がなされる。そのため、迅速に通話を開始できるメリットがあるが、受信側の端末装置16を使用している利用者が離席などにより当該端末装置16の付近に居ない場合、あるいは睡眠中であった場合などには、発信した情報は全て無駄になる。また、利用者が端末装置16の仕様、操作方法を十分に理解していない場合、あるいは設定ミス等が発生した場合に、常に通常発信がなされると、相手に確実に情報を伝える必要がある場合でも受信側で聞き逃す可能性がある。一方、RBT発信は、相手に確実に情報を伝えられるメリットを有するが、使用者18の操作が煩雑になるというデメリットも有する。そのため、一律にRBT発信を設定すると、使用者18の利便性を損なうおそれがある。本実施例では、RBT発信(第1通信モード)と通常発信(第2通信モード)とを適切に使用することを目的とする。
【0024】
図6は、管理装置12のハードウエア構成および機能ブロックを示す。管理装置12は、クロック発振器400、CPU(Central Processing Unit)410、通信IF430、記憶部340を含む。クロック発振器400、CPU410、通信IF430、記憶部340は、バス450によって接続される。
【0025】
クロック発振器400は、例えば、水晶発振器であり、一定の周波数の信号を生成する。CPU410は、管理装置12における処理を実行する。通信IF430は、ネットワーク10と接続され、基地局装置14と通信する。さらに、通信IF430は、基地局装置14経由で端末装置16と通信する。記憶部340は、情報を記憶する媒体であり、例えば、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)である。
【0026】
クロック発振器400は計時部332を含み、CPU410は制御部338を含み、通信IF430は通信部334を含む。記憶部340は、履歴テーブル362、活動状態率テーブル364を含む。
【0027】
図7は、管理装置12の詳細な機能ブロックを示す。管理装置12は、計時部332、通信部334、制御部338、記憶部340を含む。制御部338は、指標算出部350を含み、記憶部340は、履歴テーブル362、活動状態率テーブル364を含む。通信部334は、端末装置16からの信号を受信することによって通話を検出する。信号には、端末装置に関する情報として、発信側の端末装置名と受信側の端末装置名が含まれる。通信部334は、このような信号を複数の端末装置16のそれぞれから受信可能である。通信部334において通話が検出されると、制御部338は、計時部332より現在の時刻を取得するとともに、発信側の端末装置名と受信側の端末装置名を取得する。なお、制御部338が計時部332の機能を備えていてもよい。その後、制御部338は取得した現在の時刻、発信側の端末装置名とID(端末装置識別子)、受信側の端末装置名とIDを履歴テーブル362へ追記する。履歴テーブル362には、端末装置16の間で行われた通話の時刻と端末装置名の履歴が記録される。
【0028】
図8は、管理装置12の記憶部340に記憶される履歴テーブル362のデータ構造を示す。履歴テーブル362には、ある時刻に管理装置12が検出した端末装置16の発話についての履歴が記録される。各端末装置16のIDは第1端末装置16a(ID:001)、第2端末装置16b(ID:002)、第3端末装置16c(ID:003)、第4端末装置16d(ID:004)、第5端末装置16e(ID:005)である。「履歴No」(履歴番号)は履歴情報を識別するための番号である。履歴Noは、数値が小さい程、古い履歴情報であることを示し、数値が大きい程、新しい履歴情報であることを示す。通話時刻にはある端末装置16が他の端末装置16へ発信を行った時の時刻が記録される。発信側の端末装置名とID、受信側の端末装置名とIDには、それぞれ端末装置名と端末装置IDが記録される。本構成例の履歴No.001は、時刻「10:19:14」に第1端末装置16a(ID:001)から第3端末装置16c(ID:003)への発話を示す。なお、通話時刻の記載例である「10:19:14」の表記は「10時19分14秒」を示す。
【0029】
履歴テーブル362は一定数(例えば、30)の履歴を記録可能であり、履歴数が上限に達している状態で新たに時刻情報を追記する場合、古い履歴情報を順に削除する。
図8の例の場合、「11:28:10」以降に端末装置16が発話を行った場合、履歴No.001の通話時刻「10:19:14」の履歴が削除される。上記例の場合、「11:28:10」以降に追記される履歴情報の履歴NoはNo.030として記録され、それまで履歴No.030として記録されていた「11:28:10」の履歴情報は履歴No.029に調整される。また、No.001の通話時刻「10:19:14」の履歴が削除されるとNo.002の通話時刻「10:19:25」の履歴情報の履歴NoがNo.001に調整される。つまり
図8の例では、古い履歴を削除し、新しい履歴を追加した場合においても、最も古い履歴情報の履歴Noは常にNo.001であり、最も新しい履歴情報の履歴Noは常にNo.030である。
図8に示す例では、通話時刻は、時刻のみを記憶するが、さらに日付(年、月、日など)が記録されてもよい。つまり、通話の日時を記録してもよい。なお、履歴テーブル362に直近の所定数の履歴を記録してもよいが、所定期間(例えば、直近の3時間)の履歴を記録してもよい。
図7に戻る。
【0030】
本実施例において、指標算出部350は、端末装置を使用するユーザが通信を認識する容易さの程度を示す通信容易性指標を算出する。通信容易性指標は、例えば、他の端末装置からの通信要求を受信した端末装置のユーザが、通信要求が発生したことや、通信の内容をどの程度容易に認識(把握)できるかという程度を示す指標である。通信容易性指標は、端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す指標であるといえる。また、通信容易性指標は、端末装置16に対する通信のし易さの程度であるともいえる。本実施例では、通信容易性指標の1つとして、活動状態率を用いる。活動状態率とは、端末装置16において発信処理(発信操作)がなされた情報をもとに、端末装置16を使用する使用者の活動状態を推定した指標(数値)である。活動状態率テーブル364には、各端末装置16の活動状態率が記録される。制御部338は、履歴テーブル362の履歴をもと、後述の活動状態推定処理の結果により活動状態率テーブル364を更新する。
図9は、管理装置12の活動状態率テーブル364のデータ構造を示す。端末装置名とIDには、各端末装置16の端末装置名およびIDが記載される。活動状態率は、後述の活動状態推定処理の結果により更新(上書き)される。
図9では活動状態率の例として最小値を0、最大値を10としているが、最小値、最大値の範囲は最小値0、最大値100等、別の値でもよい。
図7に戻る。
【0031】
制御部338は、通信部334から端末装置16の情報を検出し、履歴テーブル362へ時刻と端末装置16に関する履歴を追加した後、指標算出部350は、所定間隔毎(例えば1分間隔)に、活動状態推定処理を実行する。活動状態推定処理とは、各端末装置16の活動状態率を計算する処理である。これは、受信した情報をもとに、端末装置16における活動状態率(通信容易性指標)を複数の端末装置16のそれぞれについて算出する処理といえる。指標算出部350は、活動状態推定処理の結果である各端末装置16の活動状態率を活動状態率テーブル364内の活動状態値として更新する。指標算出部350は、活動状態率テーブル364を更新した後、あるいは所定間隔毎(例えば1分間隔)に、活動状態率テーブル364の全内容を各端末装置16へ通信部334から配信する。これは、通信容易性指標を複数の端末装置16のそれぞれに送信することに相当する。
【0032】
ここでは、活動状態推定処理の詳細を説明する。指標算出部350は、任意の端末装置16である第X端末装置16xの活動状態率AXを算出するために、履歴テーブル362から、発信側が第X端末装置16xである履歴の中で発信時刻が最も新しい履歴(現時刻の直近の履歴)を検索する。発信時刻は、前述の通話時刻に相当する。ここでは、特定された履歴を第X端末装置16xの最新の発信履歴と称し、その履歴Noの値を「NS」とする。発信側が第X端末装置16xである発信履歴がない場合、NSは「000」とする。指標算出部350は、受信側が第X端末装置16xであり、かつNSより大きい履歴Noの値をもつ履歴のうち、受信時刻が現時刻までの履歴を検索し、履歴の数をカウントする。すなわち、指標算出部350は、第X端末装置16xに関する履歴のうち、最新の発信履歴よりも新しい受信履歴の数をカウントする。
【0033】
発信するためには、使用者18が第X端末装置16xに対して能動的な操作を行う必要があるため、履歴「NS」の時刻において、第X端末装置16xの第X使用者18xは、第X端末装置16xに近くに位置し、かつ能動的に活動していた(睡眠中ではなかった)と推定可能である。本実施例では、使用者18が睡眠中でない状態や、通信以外の活動で忙殺されていない状態など、通信内容を把握できる状態を「活動状態」と称する。ここでカウントした履歴の数は、使用者18が第X端末装置16xの近くで活動状態にあったと確認された最後の時刻以降に、第X端末装置16xが受信した回数である。すなわち、カウントした履歴の数が少ない程、第X使用者18xは通信内容を把握できる可能性が高く、カウントした履歴の数が多い程、通信内容を把握できる可能性が低いと予測される。
【0034】
活動状態推定処理では、上記の「通信内容を把握できる可能性」を活動状態率として数値化する。第X端末装置16xがNSの時刻から現時刻までに受信した履歴の数をCountXとした場合、第X端末装置16xの活動状態率AXは次のように示される。
AX=活動状態率の最大値-(α×CountX) (式1)
ここで、αは0より大きい値の所定の係数である。説明を簡潔にするため、以下では、活動状態率の最大値を「10」とし、(式1)の係数αの値を「1」として説明する。(式1)から解るように、CountXの値が小さい程、活動状態率Xは高くなる。すなわち、CountXの値が小さい程、通信内容を把握できる可能性が高くなると予測される。
【0035】
ここでは、
図8の例を用いて、具体的に活動状態推定処理を説明する。第1端末装置16aの場合、現時刻から直近の発信時刻は履歴No.025の「11:16:32」であり、NSは「025」となる。第1端末装置16aが「11:16:32」以降に他の端末装置16から通話を受信したのは、履歴No.029の「11:27:41」に第3端末装置16cからの発話を受けた1回のみであり、CountAは「1」となる。すなわち、第1端末装置16aの活動状態率Aは、「10-(1×1)」の結果から「9」となる。
【0036】
第2端末装置16bの場合、現時刻から直近の発信時刻は履歴No.017の「10:59:32」であり、NSは「017」となる。第2端末装置16bが「10:59:32」以降に他の端末装置16から通話を受信したのは、履歴No.022の「11:09:10」に第1端末装置16aからの発話、履歴No.025の「11:16:32」に第1端末装置16aからの発話、履歴No.027の「11:22:30」に第3端末装置16cからの発話、履歴No.030の「11:28:10」に第5端末装置16eからの発話であり、CountBは「4」となる。すなわち、第2端末装置16bの活動状態率Bは、「10-(1×4)」の結果から「6」となる。
【0037】
第3端末装置16c、第4端末装置16d、第5端末装置16eも同様に処理した場合、CountCは「0」、CountDは「7」、CountEは「0」となり、活動状態率Cは「10」、活動状態率Dは「3」、活動状態率Eは「10」となる。なお、第X端末装置16xの(α×CountX)の値が活動状態率の最大値を超えた場合、すなわち活動状態率Xがマイナスの値となる場合、活動状態率Xは一律で「0」としてもよい。
【0038】
また、指標算出部350は、CountXを引数(入力)とする非線形な関数Gの返り値(出力)を用いて活動状態率Xを算出してもよい。具体的には、(式2)にしたがって活動状態率AXが算出される。
AX=活動状態率の最大値-(α×G(CountX)) (式2)
ここで、αは0より大きい値の所定の係数である。また、関数Gとして種々の関数を用いることができる。
図10(a)-(b)は、管理装置12の指標算出部350において使用される関数を示す。
図10(a)は、関数Gの一例である。関数Gは、入力が大きくなるほど出力も大きくなる単調増加関数である。また、関数Gは、入力が大きくなるほど出力の増加率が大きくなる指数関数的な特性をもつ。なお本図の例に限らず、関数Gとして、入力が大きくなるほど出力の増加率が小さくなる対数関数的な特性をもつ関数を用いてもよい。また、関数Gとして線形の単調増加関数を用いると、(式1)と同等の処理になる。
【0039】
指標算出部350は、CountXの代わりに、第X端末装置16xが最後に発信を行ってから現時刻までの経過時間TXを用いて、次のように活動状態率AXを算出してもよい。
AX=活動状態率の最大値-(α×F(TX)) (式3)
ここで、αは0より大きい値の所定の係数である。また、関数Fとして種々の関数を用いることができる。
図10(b)は、関数Fの一例である。関数Fは、入力が大きくなるほど出力も大きくなる単調増加関数である。また、関数Fは、入力が大きくなるほど出力の増加率が小さくなる対数関数的な特性をもつ。なお本図の例に限らず、関数Fとして、入力が大きくなるほど出力の増加率が大きくなる指数関数的な特性をもつ関数を用いてもよい。また、関数Fとして線形の単調増加関数を用いてもよい。
【0040】
さらに、指標算出部350は、(式4)または(式5)にしたがって、CountXと経過時間TXを両方用いて活動状態率AXを算出してもよい。
AX=活動状態率の最大値-(α×G(CountX)×F(TX)) (式4)
AX=活動状態率の最大値-(α×G(CountX)+β×F(TX)) (式5)
(式4)および(式5)によれば、CountXが大きいほど活動状態率AXが小さくなり、かつ経過時間TXが大きいほど活動状態率Xが小さくなる。活動状態率AXが小さい(低い)ほど、すなわち通信容易性指標が小さい(低い)ほど、第X端末装置16xの第X使用者18xは、他の端末装置16からの通信を認識するのが難しい状況であることを示す。逆に、活動状態率AXが大きい(高い)ほど、すなわち通信容易性指標が大きい(高い)ほど、第X端末装置16xの第X使用者18xは、他の端末装置16からの通信を認識するのが容易である状況を示す。なお、活動状態率(通信容易性指標)の大小と、使用者18が通信を認識する容易さとの関係は任意に設定することができる。例えば、通信容易性指標が小さいほど、使用者18が通信を容易に認識できることを示すようにしてもよい。なお、(式1)~(式5)において、所定の係数αを用いているが、これらはもちろん、数式毎に異なった値でもよい。
【0041】
以上の処理をまとめると、指標算出部350は、端末装置16が発信した以降に当該端末装置16が受信した回数、および、端末装置16が発信した時刻からの経過時間のうちの少なくとも一方をもとに、活動状態率を算出する。活動状態率は、通信容易性指標の1つであり、端末装置16を使用する使用者18の活動状態を示す。活動状態率は、端末装置16が発信した以降に当該端末装置16が受信した回数が多くなるほど、あるいは端末装置16が発信した時刻からの経過時間が長くなるほど低くなる。
【0042】
図11は、管理装置12における処理手順を示すフローチャートである。これは、活動状態推定処理の手順を示す。S100において、指標算出部350は履歴テーブル362を参照し、履歴内で発信側の端末装置16と受信側の端末装置16として記録されている全端末装置16を抽出する。抽出された全端末装置名、およびIDをリストMLに保存する。なお、リストMLは本ステップ開始時に初期化され、リストMLは一旦空の状態にした後、抽出された全端末装置名、およびIDを保存する。S110において、指標算出部350はリストMLを参照し、全ての端末装置16の処理が完了しているか否かを判定する。全ての端末装置16の処理が完了している場合、すなわちリストMLに端末装置名、IDが1以上保存されていない場合(S110:Yes)は、処理を終了する。全ての端末装置16の処理が完了していない場合、すなわちリストMLに端末装置名、IDが1以上保存されている場合(S110:No)は、S120に進む。
【0043】
S120において、指標算出部350はリストMLに保存されている端末装置16から、任意の第X端末装置16xを選択する。この時、指標算出部350は、リストMLから第X端末装置16xの端末装置名、IDを取り出した後、リストMLから第X端末装置16xの端末装置名、IDを削除する。すなわち、リストMLには未処理の端末装置16の情報が保存されているので、S120において未処理の端末装置16を1つ選択する。その後S130に進む。S130において、指標算出部350は履歴テーブル362を参照し、第X端末装置16xの直近の送信履歴を検索する。前述したように、履歴テーブル362には、所定数の履歴または所定期間の履歴が保存されている。その後S140に進む。S140において、指標算出部350はS130の検索により、送信履歴が存在しているか否かを判定する。送信履歴が存在している場合(S140:Yes)は、S150に進む。送信履歴が存在していない場合(S140:No)は、S160に進む。S150において、指標算出部350はS130で取得した送信履歴の履歴No.を変数NSに設定する。その後S170に進む。S160において、指標算出部350は「送信履歴なし」であるので、変数NSを「000」に設定し、その後S170に進む。S170において、指標算出部350は第X端末装置16xがNSの時刻から現時刻までに受信した履歴の数(CountX)を計算する。その後S180に進む。S180において、指標算出部350はS170で計算したCountXから、例えば(式1)を用いて第X端末装置16xの活動状態率Xを計算する。その後S190に進む。
【0044】
S190において、指標算出部350は活動状態率テーブル364内の第X端末装置16xの活動状況率をS180で計算された活動状態率Xで更新(上書き)する。活動状態率テーブル364内に第X端末装置16xの端末装置名、IDが存在しない場合は、指標算出部350は、第X端末装置16x用のレコードを新規で追加し、端末装置名、ID、活動状態率と共に記録する。その後S110に戻る。前述の様に、指標算出部350は上記フローチャートを実行し、活動状態率テーブル364を更新する毎に、新たな活動状態率テーブル364の全内容を各端末装置16へ配信する。あるいは指標算出部350は、所定間隔毎(例えば1分間隔)に、活動状態率テーブル364の全内容を各端末装置16へ配信する。
【0045】
図12は、端末装置16のハードウエア構成および機能ブロックを示す。端末装置16は、CPU210、ユーザIF(Interface)220、通信IF230、記憶部40を含む。CPU210、ユーザIF220、通信IF230、記憶部40は、バス250によって接続される。
【0046】
ユーザIF220は、ユーザである使用者18に対するインタフェースである。ユーザIF220は、使用者18からの情報を受けつけたり、使用者18に情報を提示したりする。通信IF230は、無線通信を用いて基地局装置14と通信する。さらに、基地局装置14経由で管理装置12と通信する。記憶部40は、情報を記憶する媒体であり、例えば、不揮発性の半導体メモリで構成される。
【0047】
CPU210は制御部38を含み、ユーザIF220は入力部30、表示部36を含み、通信IF230は通信部34を含む。記憶部40は、設定テーブル60、活動状態率テーブル64を含む。
【0048】
図13は、端末装置16の詳細な機能ブロックを示す。端末装置16は、入力部30、通信部34、表示部36、制御部38、記憶部40を含む。記憶部40は、設定テーブル60、活動状態率テーブル64を含む。入力部30は、端末装置16の使用者18が操作するための各種ボタン、タッチパネル等の入力デバイス、入力デバイスの状態を制御部38に通知するためのインタフェースを含む。入力部30は、発信する際に押下される通話ボタンも含む。通話ボタンの押下状態は、入力部30において検出され、制御部38に入力される。
【0049】
表示部36は、端末装置16の設定、通話状態を表示するインタフェースであり、例えばディスプレイである。設定テーブル60には、端末装置16についての各種設定情報が記録される。例えば、RBT利用設定に関する情報(RBT設定情報)が設定テーブル60に記録される。具体的には、RBT利用設定にて、「利用しない」、「常時利用」、「発信時選択」のどれが使用者18に選択されているかを示す情報、例えば、0、1、2の値が記録される。
【0050】
通信部34は、管理装置12から配信された各端末装置16の活動状態率を受信する。活動状態率は、端末装置16を使用する使用者18の活動状態を示し、複数の端末装置16のそれぞれにおける通信のし易さの程度が示された通信容易性指標の1つである。活動状態率テーブル64には、通信部34において受信した活動状態率が記録される。通信部34が管理装置12から各端末装置16の活動状態率の情報を受信した場合、通信部34は制御部38に受信を通知し、制御部38は活動状態率テーブル64の内容を一旦初期化した後、受信した各端末装置16の活動状態率の情報を記録する。活動状態率テーブル64の構成は
図9と同じである。
【0051】
端末装置16の使用者18は、発信先の端末装置16を選択した後に、入力部30において通話ボタンを押下することにより、他の端末装置16との通話を行う。ここでは、発信先の端末装置16として第X端末装置16xが選択されたものとする。入力部30において通話ボタンの押下を検出した際、制御部38は、設定テーブル60を参照し、RBT利用設定を確認する。
図4(a)のRBT利用設定が「利用しない」、あるいは「発信時選択」で
図4(b)「発信選択」画面で「通常発信」が選択された場合、制御部38は活動状態率テーブル64から発信先の第X端末装置16xの活動状態率を取得する。取得した活動状態率が所定値(所定のしきい値、例えば7)未満である場合、制御部38は、発信方法を通常発信からRBT発信に自動的に切りかえる。これは、送信先の第X端末装置16xにて第X使用者18xが通信内容を把握する可能性があまり高くない、すなわち自端末装置16の使用者18の発信情報が無駄になる可能性がある場合に相当する。この処理は、第X端末装置16xがある程度の回数を受信しているにも関わらず、第X端末装置16xが1回も発信しないのは不自然であり、第X端末装置16xの第X使用者18xが第X端末装置16xの近くにいないか、活動状態でない可能性が高いという知見に基づく処理である。
【0052】
端末装置16の活動状態率テーブル64の内容が
図9と同じであり、しきい値を「7」にした場合、通常発信からRBT発信に切り替わる端末装置16は、しきい値「7」未満である第2端末装置16b(ID:002)と、第4端末装置16d(ID:004)となる。一方、活動状態率がしきい値以上である場合、制御部38は、通常発信を維持する。なお、活動状態率のしきい値は全ての端末装置16で同一である必要はなく、端末装置16毎に個別の値であってもよい。例えば、第2端末装置16bの第2使用者18bは、あまり発信しないが、受信した通話情報を聞いていることが多いと分かっている場合には、第2端末装置16bに関するしきい値を通常よりも低い値(小さな値)にしてもよい。また、端末装置16それぞれの使用者18が、自分の判断でRBT発信を判定するしきい値を設定してもよい。例えば、使用者18は、他の端末装置16に発信する際、自分が発信する情報はあまり重要ではなく、受信側で聞き逃されても問題はないと判断した場合、使用する端末装置16のしきい値を低く設定すればよい。また、自分が発信する情報は重要であり、聞き逃された場合は問題があると判断した場合は、使用する端末装置16のしきい値を高く設定すればよい。
【0053】
このように制御部38は、活動状態率テーブル64をもとに、RBT発信と、通常発信のいずれかを選択する。ここで、RBT発信は、他の端末装置16において所定の操作が行われた後に通信が開始される通信モードであり、通常発信は、他の端末装置16において所定の操作が行われない場合であっても通信が開始される通信モードである。通信部34は、制御部38において選択した通信モードにしたがって、他の端末装置16に呼出信号を発信する。
【0054】
図14は、端末装置16における処理手順を示すフローチャートである。S300において、制御部38は発信を行う端末装置16のIDを変数Mtに記録する。その後S310に進む。S310において、制御部38は入力部30からの通話ボタンの押下を監視する。通話ボタン押下を検出していない場合(S310:No)は、S310に戻って処理を繰り返す。通話ボタン押下を検出した場合(S310:Yes)は、S320に進む。S320において、制御部38は設定テーブル60からRBT利用設定を取得する。設定テーブル60には、使用者18によって選択されたRBT利用に関するデータ(「利用しない」、「常時利用」、「発信時選択」のいずれかを示すデータ)が記録されているので、そのデータを取得する。その後S330に進む。
【0055】
S330において、RBT利用設定が「利用しない」となっていた場合(S330:Yes)は、S380に進む。RBT利用設定が「利用しない」以外である場合(S330:No)は、S340に進む。S340において、RBT利用設定が「常時利用」となっていた場合(S340:Yes)は、S400に進む。RBT利用設定が「常時利用」以外である場合(S340:No)は、S350に進む。S350に進む場合は、「発信時選択」が選択されている場合である。S350において、制御部38は
図4(b)に示す発信選択画面を表示部36に表示させる。その後S360に進む。
【0056】
S360において、制御部38は、使用者18が端末装置16の発信方式を選択したか否かを判定する。発信方式が選択された場合(S360:Yes)は、S370に進む。発信方式が選択されていない場合(S360:No)は、S360に戻って処理を繰り返す。S370において、制御部38は使用者18が選択した「RBT発信」または「通常発信」を示すデータを入力部30を介して取得する。制御部38は、発信選択画面で「通常発信」が選択されたか否かを判定する。発信選択画面で「通常発信」が選択された場合(S370:Yes)は、S380に進む。発信選択画面で「通常発信」以外、すなわち本実施例では「RBT発信」が選択された場合(S370:No)は、S400に進む。
【0057】
S380において、制御部38は活動状態率テーブル64から変数Mtに記録されている端末装置16の活動状態率値を取得し、変数Actに記録する。変数Mtに記録されている端末装置16の情報が存在しない場合は、変数Actには
図9の例での活動状態率の最大値である「10」を設定する。S390において、制御部38は変数Actが所定値未満か否かを判定する。変数Actが所定値未満である場合(S380:Yes)は、S400に進む。変数Actが所定値未満でない場合(S380:No)は、S410に進む。S400において、制御部38は通信部34にRBT発信を指示し、処理を終了する。S410において、制御部38は通信部34に通常発信を指示し、処理を終了する。なお、S380~S390の処理は「RBT発信補助処理」と呼ばれる。
【0058】
本実施例によれば、端末装置における通信のし易さの程度が示された通信容易性指標を複数の端末装置のそれぞれについて算出して、通信容易性指標を複数の端末装置のそれぞれに送信するので、複数種類の通信モードを適切に使用させることができる。また、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数をもとに、通信容易性指標を算出するので、端末装置を使用する使用者の活動状態を通信容易性指標に反映できる。また、端末装置が発信した時刻からの経過時間をもとに、通信容易性指標を算出するので、端末装置を使用する使用者の活動状態を通信容易性指標に反映できる。また、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数が多くなるほど使用者の活動状態が低くなることが示されるので、通信容易性指標により使用者の活動状態を表すことができる。また、端末装置が発信した時刻からの経過時間が長くなるほど使用者の活動状態が低くなることが示されるので、通信容易性指標により使用者の活動状態を表すことができる。
【0059】
また、受信した通信容易性指標をもとに、第1通信モードと第2通信モードのいずれかの通信モードを選択するので、複数種類の通信モードを適切に使用できる。また、通信容易性指標は、端末装置を使用する使用者の活動状態を示すので、活動状態に応じて複数種類の通信モードを適切に使用できる。また、管理装置が各端末装置の活動状態を判定し、判定結果を端末装置に通知するので、端末装置が通話方法を変更することによって無駄な通話が発生する機会を低減できる。また、使用者の操作が煩雑になることを低減しつつ、受信側に確実に情報を伝えることができる。
【0060】
(実施例1の変形例)
次に、実施例1の変形例を説明する。変形例では、各端末装置16が自身のしきい値を管理装置12へ送信し、各端末装置16のしきい値が活動状態しきい値テーブルとして管理装置12の記憶部340に記録される。変形例に係る通信システム100、管理装置12、端末装置16は、
図1、
図6、
図7、
図12、
図13と同様のタイプである。ここでは、実施例1との差異を中心に説明する。各端末装置16の使用者18は、自分の発信と受信のバランス、離席の頻度、行動パターンなどをもとに、入力部30を操作して自端末装置16のしきい値を入力する。各端末装置16の通信部34は、活動状態率と比較すべきしきい値を管理装置12に送信する。管理装置12の通信部334は、しきい値を各端末装置16から受信する。
【0061】
制御部338は、複数の端末装置16のそれぞれに対するしきい値をまとめ、それを活動状態しきい値テーブルとして記憶部340に記憶する。
図15は、管理装置12の記憶部340に記憶される活動状態しきい値テーブルのデータ構造を示す。端末装置名とIDには端末装置16の名称と端末装置16のID、活動状態率のしきい値には各端末装置16から送信された値が記録される。通信部334は、活動状態しきい値テーブルを定期的に複数の端末装置16のそれぞれに送信する。
【0062】
端末装置16の通信部34は、活動状態しきい値テーブルを管理装置12から受信する。制御部38は、活動状態しきい値テーブルを記憶部40に記憶する。端末装置16の制御部38は、他の端末装置16に発信する際、記憶部40の活動状態しきい値テーブルを参照し、受信側の端末装置16の活動状態率のしきい値を取得する。制御部38は、取得したしきい値をPVとし、受信側の端末装置16の活動状態率とPVとを比較する。受信側の端末装置16の活動状態率がPV未満である場合、制御部38は、発信方法を自動的にRBT発信に切りかえる。
【0063】
つまり、制御部38は、活動状態しきい値テーブルから、受信側の端末装置16に対するしきい値を抽出し、受信側の端末装置16に対する活動状態率と、抽出したしきい値とを比較することによって、RBT発信と通常発信のいずれかを選択する。例として
図9および
図15において、第1端末装置16aの使用者18が第2端末装置16bに発信する場合、第2端末装置16bの現在の活動状態率は「6」であり、第2端末装置16bの活動状態率のしきい値(所定値)であるPVは「5」である。この場合、第2端末装置16bの現在の活動状態率は「6」は第2端末装置16bのPVである「5」以上であるので、RBT発信への切替はなされない。
【0064】
本変形例によれば、使用者の活動状態と比較すべきしきい値を各端末装置から受信し、複数の端末装置のそれぞれに対するしきい値がまとめられたテーブルを複数の端末装置のそれぞれに送信するので、各端末装置に対するしきい値を複数の端末装置に知らせることができる。また、各端末装置に対するしきい値を複数の端末装置に知らせるので、端末装置毎のしきい値を使用させることができる。また、複数の端末装置のそれぞれに対するしきい値がまとめられたテーブルを受信し、テーブルから他の端末装置に対するしきい値を抽出して使用するので、端末装置毎のしきい値を使用できる。また、活動状態率が低くなりがちない端末装置、すなわち通話の受信は行うが、発信をあまり行わない端末装置については、自身の活動状態率の所定値を低く設定するので、送信側で無駄なRBT発信を切りかえる処理が行われる可能性を低減できる。
【0065】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2において、管理装置の制御部は、記憶部に各端末装置の活動状態率を所定の時間帯毎に長期間記録した時間帯別の活動状態率テーブルを作成する。実施例2に係る通信システム100、管理装置12、端末装置16は、
図1、
図6、
図7、
図12、
図13と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0066】
図16は、管理装置12の記憶部340に記憶される時間帯別の活動状態率テーブル364のデータ構造を示す。ここでは、端末装置16の時刻毎の活動状態率が各端末装置16用のテーブル(バンク)にて個別に構成される。例えば、24時間単位(00:00:00から23:59:59)にて、時間帯毎(1時間間隔)の各端末装置16の活動状態率が算出され、その活動状態率が所定の期間(例えば、2ヶ月間)にわたって記録される。数字は当該の時間帯で算出された活動状態率を示す。なお、記録する日数は本構成例より短い期間でもよく、長い期間でもよい。
【0067】
管理装置12の制御部338は、時間帯毎の活動状態率の平均値を算出した活動状態率平均値テーブルを作成する。活動状態率平均値テーブルは、
図16の時間帯別の活動状態率テーブルの時間帯毎の活動状態率の値を使用して作成される。例えば、時間帯別の活動状態率テーブルに2ヶ月分のデータが記録されている場合、制御部338は、2ヶ月分のデータを用いて、時間帯毎の活動状態率の平均値を算出し、活動状態率平均値テーブルに記録する。これは、時間帯毎に平均化された活動状態率であるといえる。
【0068】
図17は、管理装置12の記憶部340に記憶される活動状態率平均値テーブルのデータ構造を示す。端末装置名には各端末装置16の名称、時間帯は活動状態率の平均値の計算を行った時間帯、平均値には当該の時間帯での活動状態率の平均値が記録される。例えば、第1端末装置16aの時間帯「0時-1時」の平均値は、
図16の日付および時間帯別の活動状態率テーブルの第1端末装置16aのテーブル(バンク)において、「0時-1時」の欄に記録されている活動状態率を複数の日付にわたって平均した平均値である。活動状態率平均値テーブルにより、各端末装置16の活動状態率が高い時間帯、低い時間帯が推測可能である。
【0069】
端末装置16の通信部34は、活動状態率平均値テーブルを各端末装置16へ所定の周期(例えば24時間毎)に送信する。端末装置16の通信部34は、活動状態率平均値テーブルを管理装置12から受信した後、活動状態率平均値テーブルを記憶部40に記録する。本実施例における端末装置16の発信処理は、
図14に示す実施例1の処理と同様な流れである。ただし、RBT発信補助処理(S380~S390)が、実施例1とは異なり、本実施例ではS380A~S390Aとなる。端末装置16が他の端末装置16へ発信を行う場合、実施例1の
図14のフローチャートのS300からS370までが実行される。S380に相当するS380Aにおいて、制御部38は、活動状態率テーブル64から活動状態率値を取得する代わりに、「活動状態率平均値テーブルから発信先端末装置16の活動状態率の平均値」を取得する。その際、制御部38は、活動状態率平均値テーブルの中の時間帯から、現時刻(処理時点の時刻)に該当する時間帯を特定し、特定した時間帯の活動状態率の平均値を取得する。S380AからS390Aに進む。S390に相当するS390Aでは活動状態率の平均値が所定値未満であるか否かが判定される。
【0070】
また、曜日と時間帯の組合せ毎に、活動状態率平均値テーブルを作成してもよい。例えば、1つの端末装置16あたり、7日間(月曜~日曜)×24時間(1時間毎)=168個のセルをテーブルに用意し、セル毎に活動状態率の平均値を算出する。例えば、木曜日の「13:30:00」にS380Aの処理を実行する場合、「木曜日の13時~14時の時間帯に対応する活動状態率平均値をテーブルから取得する。同様に、日付と時間帯の組合せ毎に、活動状態率平均値テーブルを作成してもよい。例えば、1つの端末装置16あたり、31日間×24時間=744個のセルをテーブルに用意し、セル毎に活動状態率の平均値を算出する。
【0071】
また、S390Aを実行する日時に応じて、S390Aの判定条件を変更してもよい。例えば、活動状態率平均値テーブルをもとに、活動状態率が低下する期間(時間帯、曜日、日付、もしくはこれらの組合せなど)を特定し、現在時刻がその特定した期間に該当する場合には、S390Aの判定条件を変更してもよい。例えば、活動状態率が低下する時間帯として、昼食後の13時~14時の時間帯が特定された場合、現在時刻がその時間帯に該当する場合は、S390Aで使用するしきい値を通常よりも大きな値とし、S400に遷移し易くする。上述の説明と同様に、曜日と時間帯の組合せや、日付と時間帯との組合せ毎に、S390Aの判定処理を変えてもよい。
【0072】
また、活動状態率平均値テーブルを使わずに、端末装置16の使用者18や通信システムの管理者等が、あらかじめ特定の期間(時間帯、曜日、日付、もしくはこれらの組合せなど)を登録しておき、現在時刻がその特定の期間に該当するか否かに応じて、S390の判定条件を変えてもよい。
【0073】
本実施例によれば、通信容易性指標では、時間帯毎に平均化された使用者の活動状態が示されるので、時間帯毎に適した通信モードを使用できる。また、長期間にわたる活動状態率を用いて処理を行うため、RBT発信補助処理の精度を向上できる。
【0074】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。実施例3では、端末装置においてRBT発信補助処理がなされず、管理装置においてRBT発信補助処理がなされる。実施例3に係る通信システム100、管理装置12、端末装置16は、
図1、
図6、
図7、
図12、
図13と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0075】
管理装置12の指標算出部350は、実施例1と同様に、端末装置16が発信した以降に当該端末装置16が受信した回数、および、端末装置16が発信した時刻からの経過時間のうちの少なくとも一方をもとに、通信容易性指標として活動状態率を算出する。また、記憶部340は、複数の端末装置16のそれぞれに対する活動状態率がまとめられた活動状態率テーブル364を記憶する。前述のごとく、活動状態率は、端末装置16が発信した以降に当該端末装置16が受信した回数が多くなるほど、あるいは端末装置16が発信した時刻からの経過時間が長くなるほど低くなる。本実施例では、管理装置12は活動状態率テーブル364の情報を各端末装置16へ配信しない。一方、端末装置16は、
図14に示すフローチャートにおける、S380~S390の処理を省略し、S370においてYesと判定された場合は、S410において通常発信を実行する。
【0076】
これに続いて、管理装置12の通信部334は、発信側の端末装置16(発信元の端末装置16)からRBT発信(第1通信モード)あるいは通常発信(第2通信モード)の通信要求データを受信する。この通信要求データは、通信開始要求データあるいは通信開始データとも呼ばれる。特に、通信部334が発信側の端末装置16が通常発信を受信した場合に、管理装置12は、S380~S390と同様の処理を行う。すなわち、制御部338は、活動状態率テーブル364を参照し、発信先の端末装置16の活動状態率が所定値未満である場合に、通常発信のプロトコルではなくRBT発信のプロトコルを用いて、発信先の端末装置16を呼び出す。
【0077】
図18は、通信システム100による通信手順を示すシーケンス図である。これは、第1端末装置16aから第2端末装置16bへの通常発信がなされた場合のシステム動作を示す。第1端末装置16aで通常発信が選択された後(S500)、第1端末装置16aは第2端末装置16b宛てにINVITE(自動応答)を送信する(S502)。送信されたINVITE(自動応答)は管理装置12で受信される。つまり、管理装置12は、発信元である第1端末装置16aから、発信先に第2端末装置16bが指定された第2通信モードの通信要求データを受信する。管理装置12は、INVITEを受信した後、RBT発信補助処理(S380~S390)を実行する。すなわち、管理装置12は、活動状態率テーブル364から送信先である第2端末装置16bの活動状態率を取得する。管理装置12は第2端末装置16bの活動状態率が所定値未満であるか否かを判定する(S504)。ここでは、第2端末装置16bの活動状態率が所定値未満である場合の例を示す。第2端末装置16bの活動状態率が所定値未満である場合、管理装置12は、第1端末装置16aからのINVITE(自動応答)を、INVITE(手動応答)に変更して第2端末装置16bへ送信する(プロトコル変換する)(S506)。つまり、管理装置12は、第2通信モードの通信要求データを受信し、かつ発信先の第2端末装置16bの通信容易性指標が所定条件を満たす場合に、第1通信モードの通信要求データを第2端末装置16bに送信する。また、第2通信モードの通信要求データを受信し、かつ第2端末装置16bの通信容易性指標が所定条件を満たさない場合には、INVITE(自動応答)、すなわち第2通信モードの通信要求データを第2端末装置16bに送信する。なお、
図18に示すシーケンスでは省略しているが、管理装置12が第1端末装置16aからINVITE(手動応答)、すなわち第1通信モードの通信要求データを受信した場合は、第1通信モードの通信要求データを第2端末装置16bに送信する。
【0078】
第2端末装置16bはINVITE(手動応答)を受信した後、第1端末装置16a宛てにステータスコード100 Tryingを送信する(S508)。送信されたステータスコード100 Tryingは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S510)。第2端末装置16bはステータスコード100 Tryingを送信した後、第1端末装置16a宛てにステータスコード180 Ringingを送信する(S512)。送信されたステータスコード180 Ringingは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S514)。
【0079】
その後、第2端末装置16bの通話ボタンが押下された場合(S516)、第2端末装置16bは第1端末装置16a宛てにステータスコード200 OKを送信する(S518)。送信されたステータスコード200 OKは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S520)。第1端末装置16aはステータスコード200 OKを受信した後、ACKを送信する(S522)。送信されたACKは管理装置12経由で、第2端末装置16bに送信される(S524)。第1端末装置16aはACKを送信した後、RTPを使って通話データの送信を開始する(S526、S528、S530)。
【0080】
このような管理装置12は、実施例1の変形例の処理を実行してもよい。通信部334は、使用者18の活動状態と比較すべきしきい値を各端末装置16から受信する。記憶部340は、活動状態しきい値テーブルを記憶する。制御部338は、活動状態しきい値テーブルを受信側の端末装置16の活動状態率が所定条件を満たすかを判定する際に使用する。通信部334は、判定結果をもとに、RBT発信あるいは通常発信を実行する。また、管理装置12は、実施例2の処理を実行してもよい。管理装置12の制御部338は、時間帯毎に平均化された使用者18の活動状態が示された活動状態率平均値テーブルを用いてRBT発信補助処理を実行してもよい。すなわち、管理装置12は、S380A~S390Aと同様の処理を行ってもよい。
【0081】
本実施例によれば、端末装置における通信のし易さの程度が示された通信容易性指標を複数の端末装置のそれぞれについて算出し、通信容易性指標が所定条件を満たせば、第2通信モードを第1通信モードに切りかえるので、複数種類の通信モードを適切に使用できる。また、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数をもとに、通信容易性指標を算出するので、端末装置を使用する使用者の活動状態を通信容易性指標に反映できる。また、端末装置が発信した時刻からの経過時間をもとに、通信容易性指標を算出するので、端末装置を使用する使用者の活動状態を通信容易性指標に反映できる。また、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数が多くなるほど使用者の活動状態が低くなることが示されるので、通信容易性指標により使用者の活動状態を表すことができる。また、端末装置が発信した時刻からの経過時間が長くなるほど使用者の活動状態が低くなることが示されるので、通信容易性指標により使用者の活動状態を表すことができる。
【0082】
また、複数の端末装置のそれぞれに対するしきい値がまとめられたテーブルを受信するので、端末装置毎のしきい値を使用できる。また、通信容易性指標では、時間帯毎に平均化された使用者の活動状態が示されるので、時間帯毎に適した通信モードを使用できる。また、管理装置から端末装置へ活動状態率テーブルを配信する処理と、端末装置におけるRBT発信補助処理を省略できるため、端末装置の処理量や必要なメモリ量を削減することができる。また、端末装置の処理量や必要なメモリ量が削減されるので、端末装置のコストを下げることができる。また、端末装置に比べて処理能力が高く、メモリ等のリソースも豊富に備える管理装置においてRBT発信補助処理を行うため、より複雑な処理も実行できる。また、各端末装置のプログラムを変更することに比べて管理装置のプログラムの変更は容易であるため、RBT発信補助処理を容易に変更できる。
【0083】
(実施例4)
次に、実施例4を説明する。通常発信の動作では、受信側の端末装置において通話ボタンを操作しなくでも通話がなされる。そのため、受信側の使用者が存在している場所の周囲の騒音レベルが高い場合、通話の内容を聞き取れない、あるいは聞き逃してしまう可能性がある。騒音レベルが高い場所とは、すなわち周囲の騒音が大きい場所であり、例えば大型旅客機が離発着を行う空港付近、あるいは戦闘機が離発着を行う軍事施設、軍事基地付近、あるいはビル、道路等の土木工事現場付近、あるいは鉄道の駅および線路、踏切付近、あるいは大型商業施設(ショッピングモール)、あるいは大型レジャー施設(遊園地、テーマパーク)、あるいは屋内、屋外型のスポーツ観戦施設(野球場、サッカー場)付近、等である。したがって、騒音レベルが高い場所に存在している端末装置へ「通常発信」を行った場合、受信側の周囲の騒音により発信した情報が受信側の使用者に正確に伝わらないおそれがある。実施例4では、使用者が存在している場所の周囲の騒音レベルを測定し、周囲の騒音レベルが受話の際に問題となるか否かを判定することによって、無駄な通話が発生する機会を低減させる。実施例4に係る通信システム100は、
図1と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0084】
図19は、端末装置16のハードウエア構成および機能ブロックを示す。端末装置16は、クロック発振器200、CPU210、ユーザIF220、通信IF230、記憶部40を含む。クロック発振器200、CPU210、ユーザIF220、通信IF230、記憶部40は、バス250によって接続される。クロック発振器200は計時部32を含み、CPU210は制御部38、騒音測定部46、位置測定部48を含み、ユーザIF220は入力部30、表示部36、音声入力部42、音声出力部44を含み、通信IF230は通信部34を含む。記憶部40は、設定テーブル60、通信可能ステータステーブル66を含む。
【0085】
図20は、端末装置16の詳細な機能ブロックを示す。端末装置16は、入力部30、計時部32、通信部34、表示部36、制御部38、記憶部40、音声入力部42、音声出力部44、騒音測定部46、位置測定部48を含む。記憶部40は、設定テーブル60、通信可能ステータステーブル66を含む。前述のごとく、通話ボタンの押下状態は、入力部30において検出され、制御部38に入力される。また、表示部36は、端末装置16の設定、通話状態を表示するインタフェースであり、設定テーブル60には、端末装置16についての各種設定情報が記録される。記憶部40に記憶された通信可能ステータステーブル66は、管理装置12から受信した各端末装置16の通信可能ステータスを示す。本実施例では、通信容易性指標の1つとして通信可能ステータスを用いるが、その詳細は後述する。
【0086】
音声入力部42は、例えばマイクロフォンであり、使用者18が通話を行う際の音声情報の入力インタフェースである。また、本実施例では騒音レベルを測定する際にも音声入力部42を使用する。通話用のマイクロフォンと、周囲の騒音レベルを測定するためのマイクロフォンは、共通(同じ)であってもよく、異なっていてもよい。例えば、端末装置16の前面、つまり入力部30と表示部36がある面に通話用のマイクロフォンを設置し、端末装置16の背面に周囲の騒音レベルを測定するための別のマイクロフォンを設置してもよい。共通のマイクロフォンを使用にすることにより、端末装置16のコストを下げることができる。一方、騒音レベル測定用の専用マイクロフォンを設置すると、「通話中でも騒音レベルを測定し易い」、「騒音レベル測定に適した周波数特性で測定できる」等の理由により、さらに精度よく騒音レベルを測定することができる。
【0087】
騒音測定部46は、音声入力部42で検出した端末装置16の周囲の音響状態を騒音レベルとして数値化する。数値化には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。音声出力部44は、スピーカ等であり、通話音声や報知音などを出力する。位置測定部48は端末装置16が現在存在している位置を測定する。具体的に説明すると、位置測定部48は、GPS(Global Positioning System)装置から、現在地の緯度、経度を取得する。
【0088】
制御部38は、所定の周期(例えば1分毎)にて、騒音測定部46に対し現在の騒音レベル測定を指示する。騒音測定部46は制御部38から騒音レベル測定を指示された場合、音声入力部42から周囲の音響状態に応じた信号を受けつけ、騒音レベルとして数値化する。騒音レベルの数値化の方法は任意であるが、本実施例では単位としてdB(デシベル)を用いる。騒音測定部46は、数値化した騒音レベルを制御部38に出力する。制御部38は騒音測定部46から騒音レベルを受けつけた場合、計時部32から現在の時刻を取得し、位置測定部48から端末装置16が現在存在している位置情報(緯度、経度)を取得する。制御部38は計時部32から取得した現時刻、位置測定部48から取得した位置情報(緯度、経度)、および位置測定部48から受けつけた騒音レベルをパケット化する。本実施例では、このパケットを騒音レベルパケットと呼ぶ。
【0089】
図21は、端末装置16から送信される騒音レベルパケットのデータ構造を示す。図示のごとく、端末装置名とIDには、端末装置16の名称およびIDが記載される。測定時刻は計時部32から取得した現時刻、現在位置(緯度、経度)は位置測定部48から取得した位置情報(緯度、経度)、騒音レベル(dB)は騒音測定部46から受けつけた騒音レベルが記載される。なお、測定時刻の記載例である「10:19:14」の表記は「10時19分14秒」であることを表す。なお、騒音レベルを測定するタイミングにおいて、使用者18によって他の端末装置16との通話が行われていた場合、騒音測定部46は、騒音レベルの測定を中止してもよく、他の端末装置16との通話が終了してから騒音レベルを測定してもよい。
【0090】
前述のように、特に端末装置16が騒音レベル測定用のマイクロフォンを備える場合、通話中も騒音レベル測定処理を実行してもよい。例えば、騒音レベル測定用マイクロフォンの出力信号から、音声通話用マイクロフォンの出力信号と同相の成分を差し引くことにより、通話音声の信号を低減し、騒音成分が抽出される。また、端末装置16が屋内や地下に存在し、位置測定部48から位置情報(緯度、経度)を取得できない場合、制御部38は、騒音レベルパケットの生成を中止してもよい。
図20に戻る。通信部34は管理装置12との通信、他の端末装置16との通話の際に使用される。例えば、通信部34は、騒音レベルパケットを管理装置12へ送信する。
【0091】
図22は、管理装置12のハードウエア構成および機能ブロックを示す。管理装置12は、クロック発振器400、CPU410、通信IF430、記憶部340を含む。クロック発振器400、CPU410、通信IF430、記憶部340は、バス450によって接続される。クロック発振器400は計時部332を含み、CPU410は制御部338を含み、通信IF430は通信部334を含む。記憶部340は、通信可能ステータステーブル366、騒音レベルテーブル368を含む。
【0092】
図23は、管理装置12の詳細な機能ブロックを示す。管理装置12は、計時部332、通信部334、制御部338、記憶部340を含む。制御部338は、指標算出部350を含み、記憶部340は、通信可能ステータステーブル366、騒音レベルテーブル368を含む。通信部334は、端末装置16からの信号を受信することによって通話を検出する。また、通信部334は、各端末装置16から所定の周期で送信される騒音レベルパケットを受信する。騒音レベルパケットは、端末装置16の周囲の音の大きさに関する情報である。通信部334は、騒音レベルパケットを制御部338に出力する。
【0093】
制御部338は、各端末装置16から騒音レベルパケットを受信した際、受信した騒音レベルパケットの内容で騒音レベルテーブル368を更新(上書き)する。騒音レベルテーブル368に端末装置16の記録が存在しない場合、制御部338は、新たに端末装置16のレコードを追加する。つまり、騒音レベルテーブル368には、各端末装置16毎に最新の騒音レベルの情報が記録されている。騒音レベルテーブル368は、各端末装置16から送信される騒音レベルパケットを記録する。
図24は、管理装置12の騒音レベルテーブル368のデータ構造を示す。騒音レベルテーブル368の各パラメータは、
図21の騒音レベルパケットの構成例で説明した内容と同じである。
図23に戻る。通信可能ステータステーブル366の詳細については後述する。
【0094】
制御部338の指標算出部350は、所定の周期(例えば1分毎)、あるいはいずれかの端末装置16から騒音レベルパケットを受信したタイミングにて、騒音レベルテーブル368を参照し、通信可能ステータス判定処理を実行する。通信可能ステータス判定処理は、騒音レベルテーブル368に記録されている各端末装置16の周囲の騒音レベルから、端末装置16の周囲の騒音状態を判定する処理である。通信可能ステータス判定処理の詳細は後述するが、通信可能ステータス判定処理を実行することにより、記憶部340の通信可能ステータステーブル366が更新される。
【0095】
図25は、管理装置12の通信可能ステータステーブル366のデータ構造を示す。端末装置名とIDには、端末装置16の名称およびIDが記載される。通信可能ステータスには、各端末装置16が他の端末装置16から発信を受けた際、周囲の騒音により通話が困難か否かを判定した結果が記載される。通信可能ステータスが「1」である場合、当該の端末装置16の周囲の騒音レベルは所定値(例えば60dB)未満であり、当該の端末装置16に発信した際に通話を聞き逃される可能性が低いことを示している。通信可能ステータスが「0」である場合、当該の端末装置16の周囲の騒音レベルは所定値(例えば60dB)以上であり、当該の端末装置16に発信した場合は通話を聞き逃される可能性が高いことを示している。つまり、通信可能ステータスは、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを示す。また、通信可能ステータスは、端末装置16を使用する使用者18が通信(通話)の存在を認識する容易さ、および/または使用者18が通信(通話)の内容を把握する容易さを示す。
図23に戻る。
【0096】
次に、通信可能ステータス判定処理の詳細を説明する。指標算出部350は騒音レベルテーブル368に記載されている全ての端末装置16に対して、通信可能ステータスを判定する。第N端末装置16nの通信可能ステータスの判定する場合、指標算出部350は騒音レベルテーブル368から第N端末装置16nの現在位置(緯度、経度)および他の端末装置16の現在位置(緯度、経度)を取得する。また、指標算出部350は、第N端末装置16nの近隣に存在する他の第M端末装置16mを検索する。第N端末装置16nの緯度、経度を(Nn、En)、第M端末装置16mの緯度、経度を(Nm、Em)とした場合、第N端末装置16nと第M端末装置16m間の距離dは(式6)にしたがって算出される。
【数1】
【0097】
または、距離dは、(式7)の近似式で算出されてもよい。
【数2】
ここで、δ1は緯度1度あたりの平均的な距離であり、例えばδ1=111kmである。また、δ2は経度1度あたりの平均的な距離であり、例えばδ2=91kmである。距離dが所定の距離(例えば10m)未満である場合、第N端末装置16nと第M端末装置16mは近隣に存在しているといえる。この条件を満たす第M端末装置16mを第N端末装置16nの近隣の端末装置16と称する。近隣の第M端末装置16mが複数(p個)存在する場合は、それらを第M1端末装置16m1~第Mp端末装置16mpとする。距離dが所定の距離(例えば10m)以上である場合、第N端末装置16nと第M端末装置16mは近隣に存在していないといえる。
【0098】
第N端末装置16nの近隣に端末装置16が存在しない、すなわち第M端末装置16mが1つ以上存在しない場合、指標算出部350は、騒音レベルテーブル368から第N端末装置16nの騒音レベル(dB)を取得する。第N端末装置16nの騒音レベル(dB)の値が所定値(例えば60)未満である場合、指標算出部350は第N端末装置16nの通信可能ステータスを「1」と判定し、通信可能ステータステーブル366内の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「1」に設定する。第N端末装置16nの騒音レベル(dB)の値が所定値(例えば60)以上である場合、指標算出部350は第N端末装置16nの通信可能ステータスを「0」と判定し、通信可能ステータステーブル366内の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「0」に設定する。
【0099】
第N端末装置16nの近隣に他の端末装置16が存在する場合、指標算出部350は騒音レベルテーブル368内から第N端末装置16nの近隣の全ての第M端末装置16mの測定時刻を取得する。近隣の全ての第M端末装置16m(M1~Mp)のうち、測定時刻が最も新しい(後の)時刻である端末装置16を、第Mk端末装置16mkとする。指標算出部350は、第N端末装置16nと、第Mk端末装置16mkの測定時刻を比較し、第Mk端末装置16mkの測定時刻が第N端末装置16nの測定時刻を上回っているかを判定する。これは、第Mk端末装置16mkの測定時刻が第N端末装置16nの測定時刻より新しいか否かを判定することに相当する。第N端末装置16nの測定時刻より第Mk端末装置16mkの測定時刻が古い場合、指標算出部350は、前述の第M端末装置16mが1つ以上存在しない、すなわち第N端末装置16nの近隣に端末装置16が存在しない場合と同じ処理を実行する。
【0100】
第Mk端末装置16mkの測定時間が第N端末装置16nの測定時間より新しい場合、指標算出部350は騒音レベルテーブル368から第Mk端末装置16mkの騒音レベル(dB)を取得する。これは、第Mk端末装置16mkが第N端末装置16nの近隣に存在し、かつ第N端末装置16nより後の時刻で騒音レベルパケットを送信している場合に相当する。第Mk端末装置16mkの騒音レベル(dB)の値が所定値(例えば60)未満である場合、指標算出部350は第N端末装置16nの通信可能ステータスを「1」と判定し、通信可能ステータステーブル366内の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「1」に更新する。第M端末装置16mの騒音レベル(dB)の値が所定値(例えば60)以上である場合、指標算出部350は第N端末装置16nの通信可能ステータスを「0」と判定し、通信可能ステータステーブル366内の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「0」に更新する。この処理は、第N端末装置16nの近隣に存在し、かつ第N端末装置16nより後の時刻に騒音レベルパケットを送信している第Mk端末装置16mkの騒音レベルの方が、第N端末装置16nの現時刻の騒音レベルとして、より正確であるという知見に基づく処理である。
【0101】
図24の例において、第1端末装置16aの近隣に第3端末装置16cが存在していた場合、第1端末装置16aの測定時刻である「10:19:14」より、第3端末装置16cの測定時刻である「10:19:17」の方がより新しい。そのため、第3端末装置16cから送信された騒音レベルパケット内の騒音レベルの方が第1端末装置16aの現時刻の騒音レベルとしてより正確であるといえる。これに基づき、第1端末装置16aの通信可能ステータス判定においては第3端末装置16cの騒音レベルが参照される。すなわち、第1端末装置16aの騒音レベルは「55」であっても、第3端末装置16cの騒音レベルである「67」として判定され、本実施例での所定値(例えば60)以上になるため、第1端末装置16aの通信可能ステータスは「0」と判定される。
【0102】
また、第5端末装置16eの近隣に第6端末装置16fが存在していた場合、第5端末装置16eの測定時刻「10:19:18」より第6端末装置16fの測定時刻「10:19:22」の方がより新しい。そのため、第6端末装置16fから送信された騒音レベルパケット内の騒音レベルの方が第5端末装置16eの現時刻の騒音レベルとしてより正確であるといえる。これに基づき、第5端末装置16eの通信可能ステータス判定においては第6端末装置16fの騒音レベルが参照される。すなわち、第5端末装置16eの騒音レベルは「65」であっても、第6端末装置16fの騒音レベルである「48」と判定され、本実施例での所定値(例えば60)未満になるため、第5端末装置16eの通信可能ステータスは「1」と判定される。つまり、指標算出部350は、所定の端末装置16の周囲の音の大きさに関する情報と、所定の端末装置16とは別の端末装置16の周囲の音の大きさに関する情報とをもとに、所定の端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを算出する。
【0103】
図26は、管理装置12における通信可能ステータス判定処理の処理手順を示すフローチャートである。S1100において、指標算出部350は、騒音レベルテーブル368を参照し、騒音レベルテーブル368内で端末装置16として記録されている全端末装置16を抽出する。指標算出部350は、抽出された全端末装置名、およびIDをリストMLに保存する。なお、リストMLは本ステップ開始時に初期化され、リストMLは一旦空の状態にした後、抽出された全端末装置名、およびIDを保存する。S1110において、指標算出部350はリストMLを参照し、全ての端末装置16の処理が完了しているか否かを判定する。全ての端末装置16の処理が完了している場合、すなわちリストMLに端末装置名、IDが1以上保存されていない場合(S1110:Yes)、処理は終了される。全ての端末装置16の処理が完了していない場合、すなわちリストMLに端末装置名、IDが1以上保存されている場合(S1110:No)は、S1120に進む。S1120において、指標算出部350は、リストMLに保存されている端末装置16から、任意の第N端末装置16nを選択する。指標算出部350は、リストMLから第N端末装置16nの端末装置名、IDを取り出した後、リストMLから第N端末装置16nの端末装置名、IDを削除する。すなわち、リストMLには未処理の端末装置16の情報が保存されているので、S1120において未処理の端末装置16を1つ選択する。その後S1130に進む。
【0104】
S1130において、指標算出部350は、騒音レベルテーブル368を参照し、第N端末装置16nの位置情報(緯度、経度)を取得する。その後S1140に進む。S1140において、指標算出部350は、第N端末装置16nの近隣に他の端末装置16が存在するか否かを判定する。具体的には、指標算出部350は、騒音レベルテーブル368の第N端末装置16n以外の全ての基地局の現在位置(緯度、経度)を取得し、第N端末装置16nと第N端末装置16n以外の全ての端末装置16との距離dを計算する。そして、距離dが所定値未満である端末装置16が存在しない場合(S1140:No)は、近隣に他の端末装置16が存在しないと判定し、S1210に進む。距離dが所定値未満の端末装置16が存在する場合(S1140:Yes)は、近隣に他の端末装置16が存在すると判定し、S1145に進む。S1145において、指標算出部350は、近隣の端末装置16の情報をリストに保存する。具体的には、リストNLに距離dが所定値未満の端末装置名、IDを保存する。なお、リストNLは本ステップ開始時に初期化され、リストNLは一旦空の状態になった後、抽出された全端末装置名、およびIDを保存する。その後S1150に進む。S1150において、指標算出部350は、S1145で更新されたリストNLを参照し、第N端末装置16nの近隣の端末装置16が複数か否かを判定する。第N端末装置16nの近隣の端末装置16が複数である場合(S1150:Yes)は、S1160に進む。第N端末装置16nの近隣の端末装置16が単数である場合(S1150:No)は、リストNLに記録されている端末装置名、IDを変数MMに記録する。その後S1170に進む。
【0105】
S1160において、指標算出部350は、リストNLに記録されている全ての端末装置16について、騒音レベルテーブル368から測定時刻を取得する。取得した測定時刻のうち、最も新しい測定時刻が記録されている端末装置16の端末装置名、IDを変数MMに記録する。その後S1170に進む。S1170において、指標算出部350は、変数MMに記録されている端末装置16を第Mk端末装置16mkとし、騒音レベルテーブル368から第Mk端末装置16mkの測定時刻と第N端末装置16nの測定時刻を取得する。第M端末装置16mの測定時刻が第N端末装置16nの測定時刻より新しい場合(S1170:Yes)は、S1180に進む。第Mk端末装置16mkの測定時刻が第N端末装置16nの測定時刻より新しくない場合(S1170:No)は、S1210に進む。
【0106】
S1180において、指標算出部350は、騒音レベルテーブル368から第Mk端末装置16mkの騒音レベルを取得し、所定値(例えば60)以上であるか否かを判定する。騒音レベルが所定値以上である場合(S1180:Yes)は、S1200に進む。騒音レベルが所定値未満である場合(S1180:No)は、S1190に進む。S1190において、指標算出部350は、通信可能ステータステーブル366の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「1」に更新する。その後S1110に戻る。S1200において、指標算出部350は、通信可能ステータステーブル366の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「0」に更新する。その後S1110に戻る。S1210において、指標算出部350は、騒音レベルテーブル368から第N端末装置16nの騒音レベルを取得し、所定値(例えば60)以上であるか否かを判定する。騒音レベルが所定値以上である場合(S1210:Yes)は、S1230に進む。騒音レベルが所定値未満である場合(S1210:No)は、S1220に進む。S1220の処理はS1190と同じである。S1230の処理はS1200と同じである。通信可能ステータス判定処理終了後、管理装置12の通信部334は、通信可能ステータステーブル366を各端末装置16に送信する。端末装置16は、管理装置12から通信可能ステータステーブル366を受信し、記憶部40の通信可能ステータステーブル66に記憶する。
【0107】
これまでは、1つの第Mk端末装置16mkの騒音レベルを用いて通信可能ステータスを判定したが、複数の端末装置16の騒音レベルを用いて第N端末装置16nの通信可能ステータスを判定してもよい。例えば、第N端末装置16nの測定時刻よりも新しい測定時刻もつ近隣の第M端末装置16mが複数存在する場合、指標算出部350は、それらの騒音レベルの平均値L1を算出し、平均値L1が所定値以上であるか否かに応じて、第N端末装置16nの通信可能ステータスを判定してもよい。平均値L1は、単純平均であってもよいが、測定時刻が新しいほど大きな値の重み係数を用いた重み付き平均(加重平均)であってもよい。あるいは、指標算出部350は、第N端末装置16nと第M端末装置16mとの距離dを用い、距離dが小さいほど大きな値の重み係数を用いた加重平均により平均値L1を算出してもよい。またさらに、距離dが小さいほど、かつ測定時刻が新しいほど大きな値となる重み係数を用いてもよい。このように複数の端末装置16の騒音レベルを用いることにより、通信可能ステータスの判定精度を向上できる場合がある。
【0108】
また、指標算出部350は、第N端末装置16nと第Mk端末装置16mkの騒音レベルを両方用いて、第N端末装置16nの通信可能ステータスを判定してもよい。例えば、指標算出部350は、第N端末装置16nの騒音レベルと第Mk端末装置16mkの騒音レベルの平均値L2を算出し、平均値L2が所定値以上であるか否かに応じて、第N端末装置16nの通信可能ステータスを判定してもよい。この際に、第N端末装置16nと第Mk端末装置16mkそれぞれに対応する重み係数を用いた加重平均を算出してもよい。例えば、第N端末装置16nの重み係数を相対的に大きくし、第Mk端末装置16mkの重み係数を相対的に小さくすることで、第N端末装置16nの騒音レベルを重視しつつ、近隣の第Mk端末装置16mkの騒音レベルも考慮した判定ができる。また、第N端末装置16nの測定時刻と第Mk端末装置16mkの測定時刻とに応じて、重み係数を変えてもよい。例えば、第Mk端末装置16mkの測定時刻から第N端末装置16nの測定時刻を引いた値(時間差)が大きいほど、第Mk端末装置16mkの重み係数を相対的に大きくし、その時間差が小さいほど、第N端末装置16nの重み係数を相対的に大きくする。また、指標算出部350は、近隣の第M端末装置16mが複数存在する場合、第N端末装置16nの騒音レベルと複数の第M端末装置16mの騒音レベルを用いて、平均値L3を算出し、第N端末装置16nの通信可能ステータスを判定してもよい。またさらに、測定時刻に関わらず、近隣の第M端末装置16mの騒音レベルを用いて判定してもよい。例えば、指標算出部350は、第N端末装置16nの騒音レベルと、近隣の第M端末装置16m(1つ以上の端末装置16)の騒音レベルの平均値L4を算出し、第N端末装置16nの通信可能ステータスを判定してもよい。
【0109】
次に本実施例において端末装置16が他の端末装置16に発信を行う場合の処理について説明する。端末装置16の通信部34は、管理装置12からの通信可能ステータステーブル366を受信する。制御部338は、受信した通信可能ステータステーブル366をもとに、記憶部40の通信可能ステータステーブル66の内容を更新する。通信可能ステータステーブル66は、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを示す。
【0110】
図27は、端末装置16における処理手順を示すフローチャートである。S1300において、制御部38は、発信先の端末装置16のIDを変数Mtに記録する。その後S1310に進む。S1310において、制御部38は、入力部30からの通話ボタンの押下を監視する。通話ボタン押下を検出していない場合(S1310:No)、S1310に戻って処理を繰り返す。通話ボタン押下を検出した場合(S1310:Yes)は、S1320に進む。S1320において、制御部38は、設定テーブル60からRBT利用設定を取得する。設定テーブル60には、使用者18によって選択されたRBT利用に関するデータ(「利用しない」、「常時利用」、「発信時選択」のいずれかを示すデータ)が記録されているので、そのデータを取得する。その後S1330に進む。
【0111】
S1330において、RBT利用設定が「利用しない」となっていた場合(S1330:Yes)は、S1380に進む。RBT利用設定が「利用しない」以外である場合(S1330:No)は、S1340に進む。S1340において、RBT利用設定が「常時利用」となっていた場合(S1340:Yes)は、S1400に進む。RBT利用設定が「常時利用」以外である場合(S1340:No)は、S1350に進む。S1350に進む場合は、「発信時選択」が選択されている場合である。
【0112】
S1350において、制御部38は
図4(b)に示す発信選択画面を表示部36に表示させる。その後S1360に進む。S1360において、制御部38は、使用者18が端末装置16の発信方式を選択したか否かを判定する。発信方式が選択された場合(S1360:Yes)は、S1370に進む。発信方式が選択されていない場合(S1360:No)は、S1360に戻って処理を繰り返す。S1370において、制御部38は、端末装置16が選択した「RBT発信」または「通常発信」を示すデータを入力部30を介して取得する。制御部38は、発信選択画面で「通常発信」が選択されたか否かを判定する。発信選択画面で「通常発信」が選択された場合(S1370:Yes)は、S1380に進む。発信選択画面で「通常発信」以外、すなわち本実施例では「RBT発信」が選択された場合(S1370:No)は、S1400に進む。
【0113】
S1380において、制御部38は、通信可能ステータステーブル66から変数Mtに記録されている端末装置16の通信可能ステータスを取得し、変数STに記録する。変数Mtに記録されている端末装置16の情報が存在しない場合は、変数STには「1」を設定する。その後S1390に進む。S1390において、制御部38は、変数STが「0」であるかを判定する。変数STが「0」である場合(S1390:Yes)は、S1400に進む。変数STが「0」でない場合(S1390:No)は、S1410に進む。S1400において、制御部38は、通信部34にRBT発信を指示し、処理を終了する。S1410において、制御部38は、通信部34に通常発信を指示し、処理を終了する。なお、S1380~S1390の処理は「RBT発信補助処理」と呼ばれる。
【0114】
なお、自端末装置16の通信可能ステータスが「0」である場合、あるいは自端末装置16で測定された騒音レベルが所定値以上である場合に、通話音声または/およびRBTの呼び出し音の音量を通常よりも大きくなるように制御部38が音声出力部44を制御してもよい。また、自端末装置16の通信可能ステータスが「1」である場合、あるいは自端末装置16で測定された騒音レベルが所定未満である場合に、通話音声または/およびRBTの呼び出し音の音量が通常値になるように制御してもよい。
【0115】
本実施例によれば、端末装置の周囲の音の大きさに関する情報をもとに、通信可能ステータスを算出するので、端末装置を使用する使用者による通信の認識し易さの度合いを通信可能ステータスに反映できる。また、所定の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報と、所定の端末装置とは別の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報とをもとに、通信可能ステータスを算出するので、通信可能ステータスの精度を向上できる。また、通信可能ステータスは、端末装置を使用する使用者による通信の認識し易さの度合いを示すので、活動状態に応じて複数種類の通信モードを適切に使用できる。また、管理装置が通信システムに含まれる各端末装置の騒音状態をもとに通信可能ステータスを作成し、通信可能ステータスを各端末装置に通知するので、どの端末装置が送信先であっても、適切な通信モードを選択できる。そして、適切な通信モードを選択するので、受信側の使用者が送信された情報を認識できない無駄な通信が発生する可能性を低減できる。また、使用者の操作が煩雑になることを低減しつつ、受信側に確実に情報を伝えることができる。
【0116】
(実施例5)
次に、実施例5を説明する。実施例5では、各端末装置の騒音レベルを所定の時間帯毎に長期間記録した騒音レベル履歴テーブルを作成する。実施例5に係る通信システム100、端末装置16、管理装置12は、
図1、
図19、
図20、
図22、
図23と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0117】
管理装置12の通信部334が各端末装置16から騒音レベルパケットを受信した際、制御部338は、騒音レベル履歴テーブルへ受信した騒音レベルパケットを追記する。
図28は、管理装置12の記憶部340に記憶される騒音レベル履歴テーブルのデータ構造を示す。騒音レベル履歴テーブルの各パラメータは、
図21の騒音レベルパケットの構成例で説明した内容と同じである。ここでは、騒音レベル履歴テーブルの一部期間の履歴を例示しているが、記録する期間、日数は本構成例よりも長い期間でもよい。
図23に戻る。
【0118】
指標算出部350は、所定の周期(例えば1分毎)にて騒音レベル履歴テーブルを参照し、高騒音エリア判定処理を行う。高騒音エリア判定処理では、騒音レベル履歴テーブルに記録されている各端末装置16の周囲の騒音レベルから、現時点で騒音レベルが高いエリアを判定し、当該エリアに近づくことが予測される端末装置16が特定される。高騒音エリア判定処理を実行することにより、記憶部340の通信可能ステータステーブル366が更新される。
【0119】
次に、高騒音エリア判定処理の詳細を説明する。指標算出部350は、計時部332より現時刻Tを取得する。指標算出部350は、騒音レベル履歴テーブルから、現時刻Tから所定の期間(例えば30分)遡った期間において、騒音レベルが所定値(例えば60dB)以上のレコードを検索する。この検索により、指標算出部350は、当該レコードの測定時刻、位置情報(
図28の構成例では現在位置)および騒音レベルを取得する。指標算出部350は、取得した上記情報を高騒音位置テーブルに追記する。なお、高騒音位置テーブルは高騒音エリア判定処理を行う前に毎回初期化(クリア)されるものとする。
【0120】
図29は、管理装置12の記憶部340に記憶される高騒音位置テーブルのデータ構造を示す。本図では、
図28の騒音レベル履歴テーブルから騒音レベルが60dB以上のレコードを検索(抽出)した例を示している。指標算出部350は、高騒音位置テーブルに記載されている位置情報(
図29の構成例では現在位置)および測定時刻、騒音レベルから、記憶部340に高騒音エリアマップを作成する。なお、高騒音エリアマップは高騒音エリア判定処理を行う前に毎回初期化(クリア)されるものとする。
【0121】
図30は、管理装置12の記憶部340に記憶される高騒音エリアマップを示す。高騒音エリアマップには、高騒音位置テーブルに示されている位置情報毎に、緯度、経度を中心とした半径R(メートル)のエリアが描画される。
図30において、少なくとも1つの円内に含まれるエリアを高騒音エリアとする。高騒音エリア内では高い騒音レベルにより、端末装置16の使用者18が通話を聞き逃す可能性が高い。位置情報毎の高騒音エリアの半径R(メートル)は、所定値(例えば20m)でもよいが、(式8)にしたがって算出するとよい。(式8)において、NLは騒音レベル(dB)、ΔTは現時刻Tと測定時刻との差分(時間差)である。また、λは0より大きい所定の係数、μは0より大きい所定の係数であり、Hは単調増加関数である。なお、関数Hは、線形関数であっても、非線形関数であってもよい。
【数3】
【0122】
すなわち、(式8)によれば、ある位置(緯度、経度)での高騒音エリアは、騒音レベルが大きく、また測定時間がより現時刻に近い程、広範囲に設定される。その後、指標算出部350は、騒音レベル履歴テーブルから、現時刻Tから所定の期間(例えば10分)遡った期間において、各端末装置16の時刻毎の位置情報(緯度、経度)の変化量から、高騒音エリアマップで描画されたいずれかの騒音エリアに、今後移動する可能性の高い端末装置16を検索する。検索した端末装置16の端末装置名およびIDは、リストALに記録される。なお、リストALは高騒音エリア判定処理を行う前に毎回初期化(クリア)されるものとする。
【0123】
指標算出部350は、リストALを参照し、
図25の通信可能ステータステーブル366内でリストALに記録されている端末装置16の通信可能ステータスを「0」に更新し、リストALに記録されていない端末装置16の通信可能ステータスを「1」に更新する。このように、指標算出部350は、所定の期間にわたる複数の端末装置16の周囲の音の大きさに関する情報をもとに、高騒音エリアを特定し、端末装置16の位置情報と高騒音エリアの情報とをもとに、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを算出する。高騒音エリア判定処理終了後、通信部334は、通信可能ステータステーブル366を各端末装置16に配信する。本実施例の端末装置16の処理は、実施例4と同じである。
【0124】
本実施例によれば、所定の期間にわたる複数の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報をもとに、高騒音エリアを特定し、端末装置16の位置情報と高騒音エリアの情報とをもとに、通信可能ステータスを算出するので、通信可能ステータスの精度をさらに向上できる。
【0125】
(実施例5の変形例)
次に、実施例5の変形例を説明する。実施例5の変形例では、
図28に示す騒音レベル履歴テーブルを比較的長期間(例えば、1ヶ月間)にわたり記録する。端末装置毎に騒音レベルが高くなる傾向の強い時間帯が検出される(高騒音時間帯検出処理)。実施例5の変形例に係る通信システム100、端末装置16、管理装置12は、
図1、
図19、
図20、
図22、
図23と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0126】
制御部338は、まず所定の時間帯別の騒音レベルの平均値を算出する。例えば、制御部338は、30日分のデータを用いて、1時間毎の騒音レベルの平均値を算出する。この場合、第1端末装置16aの10時~11時の平均騒音レベルは「50dB」、11時~12時の平均騒音レベルは「55dB」、12時~13時の平均騒音レベルは「65dB」、第2端末装置16bの10時~11時の平均騒音レベルは「62dB」、11時~12時の平均騒音レベルは「58dB」、12時~13時の平均騒音レベルは「55dB」などと算出される。なお、平均値ではなく、中央値や最頻値を算出して用いてもよい。すなわち、騒音レベルの代表値を用いてもよい。
【0127】
次に、指標算出部350は、端末装置16毎に平均騒音レベルが基準値以上となる時間帯を特定する。例えば、基準値を「60dB」とした場合、上記の例では、第1端末装置16aの12時~13時の時間帯と、第2端末装置16bの10~11時の時間帯が、基準値以上に該当する。指標算出部350は、特定した時間帯において、特定した端末装置16の通信可能ステータスを「0」に更新する。あるいは、特定した時間帯になる直前に、例えば12時~13時の時間帯を特定した場合には12時5分前などに、特定した端末装置16の通信可能ステータスを「0」に更新してもよい。すなわち、特定した時間帯をもとに通信可能ステータスを「0」に設定すればよい。このように、指標算出部350は、時間帯毎に平均化された音の大きさに関する情報をもとに、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを算出する。
【0128】
高騒音時間帯検出処理が終了した後、通信部334は、通信可能ステータステーブル366を各端末装置16に配信する。本変形例の端末装置16の処理は、実施例4と同じである。なお、時間帯毎に平均騒音レベルを算出することに限定される訳ではなく、実施例2の処理と同様に、曜日と時間帯との組合せ毎に平均騒音レベルを算出してもよい。また、日付と時間帯との組合せ毎に平均騒音レベルを算出してもよい。
【0129】
本実施例の処理は、端末装置16の周囲の騒音レベルの変動パターンが規則的である場合に、特に有効である。例えば、端末装置16の使用者18がほぼ毎日12時~13時にかけて、騒音レベルの高い交通量の多い道路を移動する、といった場合に特に有効である。本実施例によれば、時間帯毎に平均化された音の大きさに関する情報をもとに通信可能ステータスが算出されるので、時間帯毎に適した通信モードを使用できる。また、端末装置毎に高騒音となる時間帯を特定し、仮に現在の騒音レベルが基準値未満であっても、特定した時間帯に通信可能ステータスを「0」に設定するので、使用者が通話を聞き逃すリスクをさらに低減できる。
【0130】
(実施例6)
次に、実施例6を説明する。実施例6では、端末装置においてRBT発信補助処理がなされず、管理装置においてRBT発信補助処理がなされる。実施例6に係る通信システム100、端末装置16、管理装置12は、
図1、
図19、
図20、
図22、
図23と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0131】
管理装置12の指標算出部350は、実施例4と同様に、所定の端末装置16の周囲の音の大きさに関する情報と、所定の端末装置16とは別の端末装置16の周囲の音の大きさに関する情報とをもとに、通信容易性指標として通信可能ステータスを算出する。通信可能ステータスは、所定の端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを示す。一方、端末装置16は、
図27に示すフローチャートにおける、S1380~S1390の処理を省略し、S1370においてYesと判定された場合、S1410において通常発信を実行する。管理装置12は、発信側の端末装置16が通常発信を要求した場合に、S1380~S1390と同様の処理を行う。すなわち、管理装置12の制御部338は、通信可能ステータステーブル366を参照し、発信先の端末装置16の通信可能ステータスが「0」である場合には、通常発信のプロトコルではなくRBT発信のプロトコルを用いて、発信先の端末装置16を呼び出す。
【0132】
図31は、通信システム100による通信手順を示すシーケンス図である。これは、第1端末装置16aから第2端末装置16bへの通常発信がなされた場合のシステム動作を示す。第1端末装置16aで通常発信が選択された後(S1500)、第1端末装置16aは第2端末装置16b宛てにINVITE(自動応答)を送信する(S1502)。送信されたINVITE(自動応答)は管理装置12で受信される。管理装置12は、INVITEを受信した後、RBT発信補助処理(S1380~S1390)を実行する。すなわち、管理装置12は、
図25の通信可能ステータステーブル366から送信先である第2端末装置16bの通信可能ステータスを取得する。管理装置12は第2端末装置16bの通信可能ステータスが「0」であるか否かを判定する(S1504)。ここでは、第2端末装置16bの通信可能ステータスが「0」であることを想定する。管理装置12は、第1端末装置16aからのINVITE(自動応答)を、INVITE(手動応答)に変更して第2端末装置16bへ送信する(プロトコル変換する)(S1506)。
【0133】
第2端末装置16bはINVITE(手動応答)を受信した後、第1端末装置16a宛てにステータスコード100 Tryingを送信する(S1508)。送信されたステータスコード100 Tryingは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S1510)。第2端末装置16bはステータスコード100 Tryingを送信した後、第1端末装置16a宛てにステータスコード180 Ringingを送信する(S1512)。送信されたステータスコード180 Ringingは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S1514)。
【0134】
その後、第2端末装置16bの通話ボタンが押下された場合(S1516)、第2端末装置16bは第1端末装置16a宛てにステータスコード200 OKを送信する(S1518)。送信されたステータスコード200 OKは管理装置12を経由し、第1端末装置16aに送信される(S1520)。第1端末装置16aはステータスコード200 OKを受信した後、ACKを送信する(S1522)。送信されたACKは管理装置12経由で、第2端末装置16bに送信される(S1524)。第1端末装置16aはACKを送信した後、RTPを使って通話データの送信を開始する(S1526、S1528、S1530)。
【0135】
このような管理装置12は、実施例5、実施例5の変形例の処理を実行してもよい。つまり、指標算出部350は、所定の期間にわたる複数の端末装置16の周囲の音の大きさに関する情報をもとに、高騒音エリアを特定し、端末装置16の位置情報と高騒音エリアの情報とをもとに、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを算出してもよい。また、指標算出部350は、時間帯毎に平均化された音の大きさに関する情報をもとに、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを算出してもよい。
【0136】
本実施例によれば、通信可能ステータスを複数の端末装置のそれぞれについて算出し、通信可能ステータスが所定条件を満たせば、第2通信モードを第1通信モードに切りかえるので、複数種類の通信モードを適切に使用できる。また、端末装置の周囲の音の大きさに関する情報をもとに、通信可能ステータスを算出するので、端末装置を使用する使用者による通信の認識し易さの度合いを通信可能ステータスに反映できる。また、所定の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報と、所定の端末装置とは別の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報とをもとに、通信可能ステータスを算出するので、通信可能ステータスの精度を向上できる。また、通信可能ステータスは、端末装置を使用する使用者による通信の認識し易さの度合いを示すので、活動状態に応じて複数種類の通信モードを適切に使用できる。
【0137】
また、所定の期間にわたる複数の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報をもとに、高騒音エリアを特定し、端末装置16の位置情報と高騒音エリアの情報とをもとに、通信可能ステータスを算出するので、通信可能ステータスの精度をさらに向上できる。また、時間帯毎に平均化された音の大きさに関する情報をもとに通信可能ステータスが算出されるので、時間帯毎に適した通信モードを使用できる。また、管理装置から端末装置へ通信可能ステータステーブルを配信する処理と、端末装置におけるRBT発信補助処理を省略できるため、端末装置の処理量や必要なメモリ量を削減することができる。また、端末装置の処理量や必要なメモリ量が削減されるので、端末装置のコストを下げることができる。また、端末装置に比べて処理能力が高く、メモリ等のリソースも豊富に備える管理装置においてRBT発信補助処理を行うため、より複雑な処理も実行できる。また、各端末装置のプログラムを変更することに比べて管理装置のプログラムの変更は容易であるため、RBT発信補助処理を容易に変更できる。
【0138】
(実施例7)
次に、実施例7を説明する。実施例7は、実施例1と実施例4との組合せである。実施例7に係る通信システム100は
図1と同様のタイプであり、管理装置12は、
図6、
図7、
図22、
図23の組合せであり、端末装置16は、
図12、
図13、
図19、
図20の組合せである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0139】
管理装置12の制御部338は、実施例1と同様に、履歴テーブル362を作成する。また本実施例では、指標算出部350は、端末装置16の通信容易性指標テーブルを作成する。通信容易性指標とは、前述のごとく、端末装置16が通話を受信した際に、端末装置16の使用者18による通信の認識し易さの度合いを示す指標である。例えば、端末装置16の周囲の騒音が大きい場合には、使用者18は、通話音声や呼び出し音を聞き取り難いので、通信容易性指標は低い値になる。また、使用者18が端末装置16の近くにいない場合には、通話の存在を認識できないので、通信容易性指標は低い値になる。また、使用者18が睡眠中あるいは何かの作業に忙殺されているような場合には、使用者18が通話の存在を認識できない可能性が高くなるので、通信容易性指標は低い値になる。実施例4の通信可能ステータスは「0」または「1」の2値であったが、通信容易性指標はより多くの種類の値、あるいは連続的な値をとる。
【0140】
制御部338は通信部334から端末装置16の通話情報を検出し、履歴テーブル362へ時刻と端末装置16に関する履歴を追加した後、あるいは所定間隔毎(例えば1分間隔)に、指標算出部350は、通信容易性推定処理を実行する。通信容易性推定処理とは、各端末装置16の通信容易性指標を計算する処理となる。指標算出部350は、通信容易性推定処理の結果である各端末装置16の通信容易性指標を、通信容易性指標テーブル内の通信容易性指標として更新する。指標算出部350は、通信容易性指標テーブルを更新した後、あるいは所定間隔毎(例えば1分間隔)に、通信容易性指標テーブルの全内容を各端末装置16へ配信する。
【0141】
次に、具体的な通信容易性推定処理を説明する。第X端末装置16xの通信容易性指標を算出するために、指標算出部350は、履歴テーブル362から、発信側が第X端末装置16xである履歴の中で発信時刻が最も新しい履歴(現時刻の直近の履歴)を検索する。ここで特定された履歴を第X端末装置16xの最新の発信履歴と称し、その履歴Noの値をNSとする。発信側が第X端末装置16xである発信履歴がない場合、NSは「000」とされる。指標算出部350は、受信側が第X端末装置16xであり、かつNSより大きい履歴Noの値をもつ履歴のうち、受信時刻が現時刻までの履歴を検索し、履歴の数をカウントする。すなわち、最新の発信履歴よりも新しい受信履歴の数をカウントする。
【0142】
発信するためには、使用者18が第X端末装置16xに対して能動的な操作を行う必要があるため、履歴「NS」の時刻において、第X端末装置16xの使用者18は、第X端末装置16xに近くに位置し、かつ能動的に活動していた(睡眠中ではなかった)ことが保証される。本実施例では、使用者18が睡眠中でない状態や、通信以外の活動で忙殺されていない状態など、通信内容を把握できる状態を「活動状態」と称する。ここでカウントした履歴の数は、使用者18が第X端末装置16xの近くで活動状態にあったと確認された最後の時刻以降に、第X端末装置16xが受信した回数である。すなわち、カウントした履歴の数が少ない程、通信内容を把握できる可能性が高く、カウントした履歴の数が多い程、通信内容を把握できる可能性が低いと予測される。
【0143】
通信容易性推定処理では、上記の「通信内容を把握できる可能性」および端末装置16の周囲の騒音レベルを通信容易性指標として数値化する。第X端末装置16xがNSの時刻から現時刻までに受信した履歴の数をCountX、現在の騒音レベルをNX、通信容易性指標の最大値をImaxとした場合、第X端末装置16xの通信容易性指標CXは次のように算出される。
CX=Imax-(α×CountX)-(β×NX) (式9)
ここで、α、βは0より大きい値の所定の係数である。(式8)から解るように、CountXの値が小さく、騒音レベルが小さい程、通信容易性指標CXは高くなる。すなわち、CountXの値が小さく、騒音レベルが小さい程、通信内容を把握できる可能性が高くなると予測することが示される。なお、第X端末装置16xの通信容易性指標CXがマイナスの値となる場合、通信容易性指標CXは一律で「0」としてもよい。
【0144】
また、CountXを引数(入力)とする関数G1の返り値(出力)と、NXを引数(入力)とする関数G2の帰り値(出力)を用いて通信容易性指標CXを(式9)にしたがって算出してもよい。
CX=Imax-(α×G1(CountX))-(β×G2(NX)) (式10)
ここで、関数G1、G2は、線形あるいは非線形な単調増加関数である。入力値が増加したときに、出力値が変化しない区間が存在してもよく、広義の単調増加関数(単調非減少関数)であればよい。例えば、
図10(a)に示すような特性をもつ関数を用いればよい。本図の例の関数Gは、入力が大きくなるほど出力も大きくなる単調増加関数である。また、入力が大きくなるほど出力の増加率が大きくなる、指数関数的な特性をもつ。なお本図の例に限らず、入力が大きくなるほど出力の増加率が小さくなる対数関数的な特性をもつ関数を用いてもよい。また、関数G1、G2として線形の単調増加関数を用いると、式8と同等の処理になる。関数G1と関数G2は、同じ関数であっても、異なる関数であってもよい。
【0145】
また、CountXの代わりに、第X端末装置16xが最後に発信を行ってから現時刻までの経過時間TXを用いて、通信容易性指標CXを次のように算出してもよい。
CX=Imax-(α×F1(TX))-(β×F2(NX)) (式11)
ここで、関数F1、F2は、線形あるいは非線形な単調増加関数である。入力値が増加したときに、出力値が変化しない区間が存在してもよく、広義の単調増加関数(単調非減少関数)であればよい。例えば、
図10(b)に示す特性をもつ関数を用いればよい。本図の例の関数Fは、入力が大きくなるほど出力も大きくなる単調増加関数である。また、入力が大きくなるほど出力の増加率が小さくなる、対数関数的な特性をもつ。なお本図の例に限らず、入力が大きくなるほど出力の増加率が大きくなる指数関数的な特性をもつ関数を用いてもよい。また、関数F1、F2として線形の単調増加関数を用いてもよい。関数F1と関数F2は、同じ関数であっても、異なる関数であってもよい。
【0146】
さらに、CountXと経過時間TXを両方用いて通信容易性指標CXを次のように算出してもよい。
CX=Imax-(α×G1(CountX)×G2(TX))-(β×F1(NX))(式12)
ここで、関数G1、G2、F1は、上述のとおり、線形あるいは非線形な単調増加関数である。これによれば、CountXが大きいほど通信容易性指標CXが小さくなり、かつTXが大きいほど通信容易性指標CXが小さくなる。なお、各式において、所定の係数α、βを用いているが、これらはもちろん、数式毎に異なった値でもよい。
【0147】
(式9)~(式12)において、「α×CountX」、「α×G1(CountX)」、「α×F1(TX)」など、NX以外の要因で決まる部分を活動状態要素と呼ぶ。また、「β×NX」、「β×G2(NX)」など騒音レベルで決まる部分を騒音要素と呼ぶ。通信容易性指標は、端末装置16の周囲の騒音レベルと、使用者18の活動状態に係る値(活動状態の推定値)とを用いて算出されるともいえる。
【0148】
端末装置16の通信部34は、管理装置12からの通信容易性指標テーブルを受信する。端末装置16の記憶部40には通信容易性指標テーブルが作成される。管理装置12から通信容易性指標テーブルが配信された場合、端末装置16は記憶部40の通信容易性指標テーブルの内容を更新する。本実施例では、端末装置16が他の端末装置16へ発信を行う場合、
図27のフローチャートのS1380を「通信容易性指標テーブルから発信先端末装置16の通信容易性指標を取得」、S1390を「通信容易性指標が所定値未満である」と変更し、実行する。
【0149】
本実施例によれば、端末装置の周囲の騒音レベルと、使用者の活動状態の推定値とを用いて通信容易性指標を算出するため、使用者が通話を聞き逃す可能性を精度よく推定することができる。また、使用者が通話を聞き逃す可能性が精度よく推定されるので、より精度よく無駄な通信を防止できる。
【0150】
(実施例8)
次に、実施例8を説明する。通常発信の動作は受信側の端末装置にて通話ボタンを操作しなくでも通話が行われる。そのため、受信側の使用者が離席などにより端末装置付近に居ない場合、あるいは睡眠中であった場合、あるいは使用者が車やオートバイの運転を行っていた場合、通話の内容を聞き取れない、あるいは聞き逃してしまう可能性がある。また公共性の高い場所等において通話を受信した場合、無線機の操作なしで音声が出力されることにより周囲の人間の迷惑となる可能性があり、また通話内容に機密情報が含まれていた場合、第三者に機密が漏れてしまう等、不適切な通話が発生する可能性がある。前述の公共性の高い場所とは、すなわち電車や船舶、飛行機等に搭乗して移動を行っている場合や、病院や図書館等、周囲に不特定多数の人間が存在する場所である。したがって、使用者の現在の活動状態や周囲の環境を考慮せずに端末装置へ「通常発信」を行った場合、発信した情報が正確に伝わらず発話情報が無駄になる可能性があり、また受信者または受信者の周囲の人間にとって不利益や不快となる事態が発生する可能性がある。実施例8では、使用者の現在の活動状態から通常発信を行うべきか否かを判定することによって、無駄な通話が発生する機会を低減させる。実施例8に係る通信システム100は、
図1と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0151】
図32は、端末装置16のハードウエア構成および機能ブロックを示す。端末装置16は、クロック発振器200、CPU210、ユーザIF220、通信IF230、記憶部40を含む。クロック発振器200、CPU210、ユーザIF220、通信IF230、記憶部40は、バス250によって接続される。クロック発振器200は計時部32を含み、CPU210は制御部38、位置測定部48を含み、ユーザIF220は入力部30、表示部36を含み、通信IF230は通信部34を含む。記憶部40は、設定テーブル60、通信可能ステータステーブル66を含む。
【0152】
図33は、端末装置16の詳細な機能ブロックを示す。端末装置16は、入力部30、計時部32、通信部34、表示部36、制御部38、記憶部40、位置測定部48を含む。記憶部40は、設定テーブル60、通信可能ステータステーブル66を含む。前述のごとく、通話ボタンの押下状態は、入力部30において検出され、制御部38に入力される。また、表示部36は、端末装置16の設定、通話状態を表示するインタフェースであり、設定テーブル60には、端末装置16についての各種設定情報が記録される。記憶部40に記憶された通信可能ステータステーブル66は、管理装置12から受信した各端末装置16の通信可能ステータスを保持する。本実施例では、通信容易性指標の1つとして通信可能ステータスを用いるが、その詳細は後述する。
【0153】
位置測定部48は端末装置16が現在存在している位置を測定する。具体的に説明すると、位置測定部48は、GPS(Global Positioning System)装置から、現在地の緯度、経度を取得する。制御部38は、所定の周期(例えば1分)にて、計時部32から現在の時刻を取得し、位置測定部48から端末装置16が現在存在している位置情報(緯度、経度)を取得する。制御部38は計時部32から取得した現時刻、位置測定部48から取得した位置情報(緯度、経度)をパケット化する。本実施例では、このパケットを位置情報パケットと呼ぶ。
【0154】
図34は、端末装置16から送信される位置情報パケットのデータ構造を示す。図示のごとく、端末装置名とIDには、端末装置16の名称およびIDが記載される。測定日および測定時刻には計時部32から取得した日付(年日)と現時刻、現在位置(緯度、経度)には位置測定部48から取得した位置情報(緯度、経度)が記載される。なお、測定日の記載例である「2018/6/1」は「2018年6月1日」であり、測定時刻の記載例である「10:19:14」の表記は「10時19分14秒」であることを表す。なお、端末装置16が屋内や地下に存在し、位置測定部48から端末装置16が現在存在している位置情報(緯度、経度)を取得できない場合、通信部34は、管理装置12への位置情報パケットの送信を中止してもよい。また、GPS以外の手段を用いて自端末装置16の位置情報を取得してもよい。例えば、無線LANアクセスポイントの情報や携帯電話の基地局の情報を用いて、自端末装置16の位置情報を取得してもよい。また、端末装置16が自端末装置16の移動速度を測定し、位置情報パケットに移動速度の情報を加えてもよい。
図33に戻る。通信部34は管理装置12との通信、他の端末装置16との通話の際に使用される。例えば、通信部34は、位置情報パケットを管理装置12へ送信する。
【0155】
図35は、管理装置12のハードウエア構成および機能ブロックを示す。管理装置12は、クロック発振器400、CPU410、通信IF430、記憶部340を含む。クロック発振器400、CPU410、通信IF430、記憶部340は、バス450によって接続される。クロック発振器400は計時部332を含み、CPU410は制御部338を含み、通信IF430は通信部334を含む。記憶部340は、履歴テーブル362、通信可能ステータステーブル366、活動状態定義テーブル370を含む。
【0156】
図36は、管理装置12の詳細な機能ブロックを示す。管理装置12は、計時部332、通信部334、制御部338、記憶部340を含む。制御部338は、指標算出部350を含み、記憶部340は、履歴テーブル362、通信可能ステータステーブル366、活動状態定義テーブル370を含む。通信部334は、端末装置16からの信号を受信することによって通話を検出する。また、通信部334は、各端末装置16から所定の周期で送信される位置情報パケットを受信する。位置情報パケットは、端末装置16の位置情報または移動速度に関する情報である。通信部334は、位置情報パケットを制御部338に出力する。
【0157】
制御部338は、各端末装置16から位置情報パケットを受信した際、受信した位置情報パケットを履歴テーブル362に追記する。
図37は、管理装置12の履歴テーブル362のデータ構造を示す。履歴テーブル362の各パラメータは、
図34の位置情報パケットの構成例で説明した内容と同じである。本図では履歴テーブル362の一部期間の履歴を例示しているが、記録する期間、日数は本構成例よりも長い期間でもよい。また、
図34の位置情報パケットにおいて、測定日と測定時刻(測定日時)を省略し、履歴テーブル362の測定日と測定時刻に、管理装置12が位置情報パケットを受信した日時を記録してもよい。
図36に戻る。通信可能ステータステーブル366、活動状態定義テーブル370の詳細については後述する。
【0158】
制御部338の指標算出部350は、所定の周期(例えば1分)、あるいはいずれかの端末装置16から位置情報パケットを受信したタイミングにて、履歴テーブル362を参照し、通信可能ステータス判定処理を実行する。通信可能ステータス判定処理は、履歴テーブル362に記録されている各端末装置16の位置情報から各端末装置16の活動状態を推測し、各端末装置16の通信可能ステータスを判定する処理である。通信可能ステータス判定処理の詳細は後述するが、通信可能ステータス判定処理を実行することにより、記憶部340の通信可能ステータステーブル366が更新される。
【0159】
通信可能ステータステーブル366のデータ構造は、
図25と同一である。通信可能ステータスは、各端末装置16が他の端末装置16からの通話を受信した際に、端末装置16の使用者18が通話の存在および通話内容を認識する容易性を示す情報である。通信可能ステータスが「1」である場合、当該端末装置16の使用者18は、通話の存在を認識できる可能性が高く、また通話に集中できる可能性が高いため、通話が適切に行われる可能性が高いことを示している。すなわち、当該端末装置16に対して他の端末装置16が通常発信しても、使用者18に情報がうまく伝わり、特に問題ないといえる。通信可能ステータスが「0」である場合、当該端末装置16の使用者18は、通話の存在を認識できる可能性が低く、また通話に集中できる可能性が低いため、使用者18の活動状態は通常通話に適していないことを示す。そのため、当該の端末装置16に通常発信した場合は通話を聞き逃される可能性が高く、通話が適切に行われる可能性が低い。すなわち、当該端末装置16に対して他の端末装置16が通常発信すると、使用者18に情報がうまく伝わらない可能性がある。前述のごとく、通信可能ステータスは、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを示す。また、通信可能ステータスが「0」である場合、周囲に不特定多数の人間が存在する可能性が高いため、通常通話に適していないことを示す。
図36に戻る。
【0160】
次に、通信可能ステータス判定処理の詳細を説明する。指標算出部350は、履歴テーブル362に記載されている全ての端末装置16に対して、通信可能ステータスを判定する。指標算出部350は計時部332から現時刻Cを取得する。指標算出部350は、第N端末装置16nの通信可能ステータスの判定する場合、履歴テーブル362から現時刻Cから所定期間P1(例えば5分間)遡った期間内で、第N端末装置16nの最新の測定日、測定時刻が記録されている最新レコードRn1を検索する。指標算出部350は、現時刻Cから所定期間P1の期間内で第N端末装置16nの最新レコードRn1が存在する場合、Rn1内の測定日、測定時刻および位置(位置情報:緯度、経度)を変数M1に記録する。
【0161】
現時刻Cから所定期間P1の期間内で第N端末装置16nの最新レコードRn1が存在しない場合、すなわち、現時刻Cから直近の期間P1の期間内で、第N端末装置16nが位置情報パケットを一回も管理装置12へ送信していない場合、指標算出部350は、通信可能ステータステーブル366の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「1」に設定し処理を終了する。第N端末装置16nが現時刻Cから直近の期間P1において、位置情報パケットを送信していない場合、現時点では第N端末装置16nについて正確な通信可能ステータス判定処理を実行できないので、発信方法のバリエーションを減らさないことを優先させて、通信可能ステータスを「1」とする。
【0162】
次に、指標算出部350は、変数M1に記録されている測定時刻から所定期間P2(例えば1分間)遡った期間内で、履歴テーブル362内の第N端末装置16nに関する履歴Hnを検索する。履歴Hnが複数存在する場合、指標算出部350は履歴Hnのうち、任意の1つのレコードRn2を特定する。例えば、最も測定時刻が古いレコードRn2を特定すればよい。そして、レコードRn2内の測定時刻および位置(緯度、経度)を変数M2に記録する。履歴Hnが存在しない場合、すなわち位置情報パケットを変数M1内の測定時刻から遡って所定期間P2の期間内において、第N端末装置16nが位置情報パケットを一回も管理装置12へ送信していない場合は、指標算出部350は通信可能ステータステーブル366の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「1」に設定し処理を終了する。第N端末装置16nが変数M1内の測定時刻から遡って所定期間P2の間に位置情報パケットを連続して送信していない場合、正確な通信可能ステータス判定処理を実行できないので、発信方法のバリエーションを減らさないことを優先させて、通信可能ステータスを「1」とする。
【0163】
指標算出部350は変数M1と変数M2内の測定時刻、および位置(緯度、経度)から、第N端末装置16nの移動速度Vn[km/h]を計算する。移動速度Vn[km/h]は、変数M1および変数M2内の位置(緯度、経度)から二点間の距離d[km]を計算し、変数M1の測定時間Tnと、変数M2の測定時間Tmとの差分ΔT[sec]を計算することによって求められる。変数M1の位置情報の緯度、経度を(Nn、En)、変数M2内の位置情報の緯度、経度を(Nm、Em)とした場合、(Nn、En)、(Nm、Em)間の距離d[km]は、(式6)により計算される。または、(式7)の近似値で距離dを計算してもよい。指標算出部350は、第N端末装置16nの移動速度Vn[km/h]を(式13)にしたがって求める。
【数4】
指標算出部350は、第N端末装置16nの移動速度Vn[km/h]を計算した後、記憶部340の活動状態定義テーブル370を参照する。
【0164】
図38は、管理装置12の活動状態定義テーブル370のデータ構造を示す。移動速度[km/h]は端末装置16の移動速度の範囲であり、活動状態は移動速度から推測される使用者18が現在何の活動をしているかの推定例である。また、通信可能ステータスには移動速度毎の通信可能ステータスが記載されている。なお、移動速度[km/h]の範囲、活動状態についてはより細かく定義してもよい。本図の例では、移動速度が「1~7km/h」である場合に使用者18の活動状態が「歩行中」であると推定し、移動速度が「16~25km/h」である場合に使用者18の「自転車を運転中」と推定している。そして移動速度がこれらの速度帯域に該当する場合、通信可能ステータスを「1」に設定している。これは、「歩行中」、または「自転車を運転中」では使用者18は端末装置16を携帯して移動している状態であり、睡眠中である可能性が極めて低く、また移動による騒音が比較的小さいことが予想され、また使用者18の近くに第三者がいて通話を聞かれる可能性が低いため、他の端末装置16が通常発信しても使用者18に情報がうまく伝わる可能性が高いという理由による定義である。
【0165】
他の速度帯域は、以下に示す「通話に適さない理由(条件)」により、通常発信した場合に使用者18に情報がうまく伝わる可能性が相対的に低いと考えられるので、通信可能ステータスを「0」に設定している。すなわち他の速度帯域は、1)使用者18が端末装置16を携帯していない可能性がある、2)使用者18が睡眠中である可能性がある、3)移動による騒音が比較的大きいことが予想される、4)使用者18の近くに第三者がいて通話を聞かれる可能性が高い、といった1つ以上の理由に該当する。例えば、移動速度が「0km/h」である場合は、使用者18の活動状態を「停止中」と推定するが、上記の1)または2)の可能性があるため、通信可能ステータスを「0」に設定している。また、移動速度が「36~km/h」である場合は、使用者18が公共交通機関を利用している可能性があり、上記の2)、3)、4)の少なくとも1つの以上に該当する可能性が高いため、通信可能ステータスを「0」に設定している。なお、
図38に示す活動状態定義テーブル370は、あくまでも一例であり、これに限定されるものではない。移動速度の範囲、推定される活動状態、通信可能ステータスは、
図38に示す例と異なっていてもよい。
図36に戻る。
【0166】
指標算出部350は活動状態定義テーブル370から移動速度Vn[km/h]時の通信可能ステータスを取得し、変数Snに設定する。その後、指標算出部350は、通信可能ステータステーブル366の第N端末装置16nの通信可能ステータスを変数Snで更新する。なお、活動状態定義テーブル370は時間帯に応じて複数用意してもよい。例えば、日中用の活動状態定義テーブル370、夜間用の活動状態定義テーブル370を用意する。指標算出部350は、現時刻Cが「06:00~22:00」だった場合は日中用の活動状態定義テーブル370を参照し、現時刻Cが「22:00~06:00」だった場合は夜間用の活動状態定義テーブル370を参照してもよい。日中用と夜間用の活動状態定義テーブル370の差異については、例えば
図38の例において、移動速度が0km/h時の通信可能ステータスは、日中用であれば睡眠中の可能性が低いので、通信可能ステータスを「1」に設定し、夜間用であれば睡眠中の可能性が高いので、通信可能ステータスを「0」に設定すればよい。
【0167】
図39は、管理装置12における処理手順を示すフローチャートである。S2100において、指標算出部350は履歴テーブル362を参照し、履歴テーブル362内で端末装置16として記録されている全端末装置16を抽出する。指標算出部350は、抽出された全端末装置名、およびIDをリストMLに保存する。なお、リストMLは本ステップ開始時に初期化される。指標算出部350はリストMLを一旦空の状態にした後、抽出された全端末装置名、およびIDを保存する。S2110において、指標算出部350は、リストMLを参照し、全ての端末装置16の処理が完了しているか否かを判定する。全ての端末装置16の処理が完了している場合、すなわちリストMLに端末装置名、IDが1以上保存されていない場合(S2110:Yes)は、処理を終了する。全ての端末装置16の処理が完了していない場合、すなわちリストMLに端末装置名、IDが1以上保存されている場合(S2110:No)は、S2120に進む。
【0168】
S2120において、指標算出部350は、リストMLに保存されている端末装置16から、任意の第N端末装置16nを選択する。この時、リストMLから第N端末装置16nの端末装置名、IDを取り出した後、リストMLから第N端末装置16nの端末装置名、IDを削除する。すなわち、リストMLには未処理の端末装置16の情報が保存されているので、S2120において未処理の端末装置16を1つ選択する。その後S2130に進む。S2130において、指標算出部350は計時部332から現時刻Cを取得する。その後S2140に進む。S2140において、指標算出部350は、履歴テーブル362から現時刻Cから所定期間P1(例えば5分間)遡った期間内で、第N端末装置16nの最新の測定日、測定時刻が記録されている最新レコードRn1を検索する。その後S2150に進む。S2150において、指標算出部350は、S2140にて検索された最新レコードRn1が存在するか否かを判定する。最新レコードRn1が存在する場合(S2150:Yes)は、S2155に進む。最新レコードRn1が存在しない場合(S2150:No)は、S2220に進む。
【0169】
S2155において、指標算出部350は、最新レコードRn1の内容を変数M1に記録する。その後S2160に進む。S2160において、指標算出部350は、変数M1に記録されている測定時刻から所定期間P2(例えば1分間)遡った期間内で、履歴テーブル362内の第N端末装置16nに関する履歴Hnを検索する。その後S2170に進む。S2170において、指標算出部350は、S2160で検索を行った履歴Hnが存在するか否かを判定する。履歴Hnが存在する場合(S2170:Yes)は、S2180に進む。履歴Hnが存在しない場合(S2170:No)は、S2220に進む。S2180において、指標算出部350は、S2160で検索を行った履歴Hnの中から、任意の1つのレコードRn2(例えば、最も測定時刻が古いレコード)を特定し、レコードRn2の内容を変数M2に記録する。その後S2190に進む。
【0170】
S2190において、指標算出部350は、変数M1と変数M2内の測定時刻、および位置(緯度、経度)から、上述の方法で、第N端末装置16nの現在の移動速度Vn[km/h]を計算する。その後S2200に進む。S2200において、指標算出部350は活動状態定義テーブル370から移動速度Vn[km/h]に対応する通信可能ステータスを取得し、変数Snに設定する。その後S2210に進む。S2210において、指標算出部350は通信可能ステータステーブル366の第N端末装置16nの通信可能ステータスを変数Snで更新する。その後S2110に戻る。S2220において、指標算出部350は通信可能ステータステーブル366の第N端末装置16nの通信可能ステータスを「1」に設定する。その後S2110に戻る。通信可能ステータス判定処理終了後、通信部334は、通信可能ステータステーブル366を各端末装置16に配信する。このように指標算出部350は、端末装置16の位置情報または移動速度に関する情報をもとに、使用者18の活動状態に対応付けられた度合いであって、かつ端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを算出する。
【0171】
なお、S2190において、2点の位置情報を用いて移動速度Vnを計算しているが、より多くの位置情報を用いて、移動速度Vnを計算してもよい。また、端末装置16が移動速度を測定し、位置情報パケットに移動速度の情報を加えた上で管理装置12に送信し、管理装置12はその情報を履歴テーブル362に記録した上で通信可能ステータス判定処理に用いてもよい。具体的には、S2190において管理装置12が、変数M1に含まれる移動速度を抽出し、それを移動速度Vnとする。あるいは、変数M1に含まれる移動速度と、変数M2に含まれる移動速度を用いて、それらの平均値や重み付け平均値を算出し、それを移動速度Vnとしてもよい。
【0172】
本実施例において端末装置16が他の端末装置16に発信を行う場合の処理は、実施例4と同一であるので、ここでは説明を省略する。また、端末装置16における処理手順を示すフローチャートは、
図27と同一である。
【0173】
本実施例によれば、端末装置の位置情報または移動速度に関する情報をもとに、通信可能ステータスを算出するので、端末装置を使用する使用者による通信の認識し易さの度合いを通信可能ステータスに反映できる。また、端末装置の位置情報または移動速度に関する情報をもとに、ユーザの活動状態に対応付けられた通信可能ステータスを算出するので、通信可能ステータスの精度を向上できる。また、通信可能ステータスは、端末装置を使用する使用者による通信の認識し易さの度合いを示すので、活動状態に応じて複数種類の通信モードを適切に使用できる。また、管理装置が各端末装置の移動速度を判定し、端末装置に通知するので、端末装置が通話方法を変更することにより無駄な通話が発生する機会を低減できる。また、使用者の操作が煩雑になることを低減しつつ、受信側に確実に情報を伝えることができる。
【0174】
(実施例8の変形例)
次に、実施例8の変形例を説明する。実施例8の変形例において、管理装置の制御部は、履歴テーブルを長期間にわたり記録し、端末装置毎の時間帯別の移動速度の傾向を検出する。実施例8の変形例に係る通信システム100、端末装置16、管理装置12は、
図1、
図32、
図33、
図35、
図36と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0175】
管理装置12の制御部338は、履歴テーブル362を比較的長期間(例えば、1ヶ月間)にわたり記録し、端末装置16毎の時間帯別の移動速度の傾向を検出する。例えば、30日分のデータを用いて、1時間毎の移動速度の平均値を算出する。具体的には、第1端末装置16aの10時~11時の平均移動速度は「4km/h」、11時~12時の平均移動速度は「0 km/h」、12時~13時の平均移動速度は「16km/h」、第2端末装置16bの10時~11時の平均移動速度は「30km/h」、11時~12時の平均移動速度は「5km/h」、12時~13時の平均移動速度「20km/h」などと算出される。平均値ではなく、中央値や最頻値を算出して用いてもよい。すなわち、時間帯別の移動速度の代表値を算出してもよい。
【0176】
次に指標算出部350は、端末装置16毎の平均移動速度をもとに、活動状態定義テーブル370において通信可能ステータスが「0」となる時間帯を特定する。上記の例では、第1端末装置16aの11時~12時の時間帯、第2端末装置16bの10時~11時の時間帯が該当する。指標算出部350は、特定した時間帯において、特定した端末装置16の通信可能ステータスを「0」に更新する。あるいは、特定した時間帯の開始時刻よりも所定時間(例えば5分間)だけ前の時刻から、特定した時間帯の終了時刻よりも所定時間(例えば5分間)だけ後の時刻まで、通信可能ステータスを「0」に更新してもよい。すなわち、特定した時間帯をもとに通信可能ステータスを「0」に設定すればよい。時間帯検出処理が終了した後、通信部334は、通信可能ステータステーブル366を各端末装置16に配信する。本変形例の端末装置16の処理は、実施例8と同じである。なお、時間帯毎に平均移動速度を算出することに限定されず、曜日と時間帯との組合せ毎に平均移動速度を算出してもよい。また、日付と時間帯との組合せ毎に平均移動速度を算出してもよい。
【0177】
本実施例の処理は、端末装置16の使用者18の行動パターンが規則的である場合に、特に有効である。例えば、端末装置16の使用者18がほぼ毎日12時~13時にかけて、鉄道などの公共交通機関を使って移動する、といった場合に特に有効である。本実施例によれば、時間帯毎に平均化された移動速度をもとに通信可能ステータスが算出されるので、時間帯毎に適した通信モードを使用できる。また、端末装置毎に通信可能ステータスが「0」になる時間帯を特定し、仮に現在の移動速度が計算できない状態であっても、特定した時間帯に通信可能ステータスを「0」に設定するので、使用者が通話を聞き逃すリスクをさらに低減することができる。
【0178】
(実施例9)
次に実施例9を説明する。実施例9では、記憶部に地図情報を記憶することにより、実施例8と比較してより高い精度で通信可能ステータス判定処理を実行する。実施例9に係る通信システム100、端末装置16、管理装置12は、
図1、
図32、
図33、
図35、
図36と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0179】
実施例8の
図38の活動状態定義テーブル370と比較して、本実施では端末装置16の最新の位置情報と地図情報を組み合わせることにより、より細かいパターンの活動状態定義テーブル370が使用される。
図40は、管理装置12の活動状態定義テーブル370のデータ構造を示す。図示のごとく、実施例8の活動状態定義テーブル370と比べ、同じ移動速度の範囲であっても、活動状況により異なる通信可能ステータスが定義される。具体的には、移動速度が「36~80km/h」の速度帯域に該当する場合、指標算出部350は、地図情報を用いて、移動手段が自動車であるか鉄道であるか船舶であるかを判定する。つまり、端末装置16の移動経路(過去の位置情報)が道路に一致する場合、指標算出部350は、自動車での移動と判定し、線路に一致する場合は、鉄道での移動と判定する。また、移動経路が海または川または湖である場合、指標算出部350は、船舶での移動と判定する。
【0180】
次に、移動手段が自動車であると判定した場合、指標算出部350は、さらに乗用車による移動か、バスによる移動かを判定する。具体的には、移動速度の変化に関する情報を用いて、乗用車かバスかが判定される。例えば、Vnが「40km/h」であり、かつ移動経路が道路であり、かつほぼ定期的に速度が「0km/h」になる時間が存在する場合、指標算出部350は、バス停での停止の可能性が高いので、バスによる移動と判定する。また、地図情報にバス停の情報があり、バス亭での停止回数が多い場合、指標算出部350は、バスによる移動と判定する。また、地図情報にバス停の情報はないが信号機の情報がある場合、信号以外の場所での停止回数が多ければ、指標算出部350は、バスによる移動と判定する。バスであると判定できない場合、指標算出部350は、乗用車による移動と判定する。
【0181】
乗用車での移動か、鉄道での移動か、バスでの移動か、船舶での移動かに応じて、指標算出部350は、通信可能ステータスを変える。例えば、Vnが「40km/h」で、活動状態が「一般道で乗用車に乗車中」だった場合、端末装置16の使用者18が運転中、もしくは助手席や後部座席に搭乗していると予想される。この場合、少なくとも運転者は睡眠中ではなく、最低1人は通話を認識できる。また、端末装置16の使用者18と全く関係ない第三者が乗車している可能性は低く、かつ車内の騒音もそれほど大きくないと想定されるため、通話に適した状態であると判定し、通信可能ステータスは「1」に設定される。
【0182】
一方、Vnが「40km/h」で、活動状態が「普通、快速列車に乗車中」だった場合、使用者18の周囲には第三者が多く存在していると予想され、また使用者18が睡眠中である可能性もあるので、いきなり通話が始まると使用者18が通話を把握できない可能性が高いと判定され、通信可能ステータスは「0」に設定される。また、Vnが「40km/h」で、活動状態が「一般道でバスに乗車中」である場合、鉄道での移動と同様な理由により、通信可能ステータスは「0」に設定される。また、Vnが「40km/h」で、活動状態が「船舶に乗船中」である場合、鉄道での移動と同様な理由により、通信可能ステータスは「0」に設定される。また、移動速度が「81~300km/h」の速度帯域に該当する場合も「36~80km/h」の速度帯域と同様に、地図情報を用いて、移動手段が自動車であるか鉄道であるかを判定し、自動車である場合はさらに、乗用車であるかバスであるかを判定すればよい。その結果、「高速道路で乗用車に乗車中」、「新幹線等の高速鉄道に乗車中」、「高速バスに乗車中」のいずれかに判定される。その結果に応じて通信可能ステータスが設定されればよい。
【0183】
また、端末装置16の位置情報を用いて、指標算出部350は、使用者18の現在の所在地が自宅であるのか、それ以外の場所であるかを判定する。使用者18は事前に、自宅の住所や緯度、経度を管理装置12に登録する。自宅の住所を登録した場合は、管理装置12がそれを緯度、経度に変換し、記憶部340に記憶する。管理装置12は、端末装置16の現在位置が、登録された自宅の位置に該当するか否かを判定する。さらに勤務先等を登録して処理に用いてもよい。例えば、Vnが「0km/h」である場合、活動状態は「自宅で停止中」または「自宅以外で停止中」と設定される。使用者18の現在の所在地が自宅である場合、自宅で睡眠中、または端末装置16から離れている可能性があるため、通信可能ステータスは「0」に設定される。使用者18の現在の所在地が自宅以外である場合、使用者18が睡眠中である可能性は低いと判定され、通信可能ステータスは「1」に設定される。このように指標算出部350は、地図情報も使用して、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを算出する。
【0184】
以下、本実施例における管理装置12での通信可能ステータス判定処理となる。履歴テーブル362、通信可能ステータステーブル366の構成、および通信可能ステータス判定処理が実行されるタイミング等は、実施例8と同じである。指標算出部350は、
図39の通信可能ステータス判定処理をS2190まで実行し、第N端末装置16nの速度Vn[km/h]を算出する。その後S2195(図示せず)に進む。S2195において、指標算出部350は、変数M1に記録されている第N端末装置16nの現在位置(Nn、En)、すなわち第N端末装置16nが存在している最新の位置情報をもとに、地理特性判定処理を実行する。
【0185】
具体的には、指標算出部350は記憶部340の地図情報を照会し、第N端末装置16nの現在位置(Nn、En)について、地理特性判定処理を実行する。地理特性判定処理とは、記憶部340の地図情報を使用し、第N端末装置16nの現在位置(Nn、En)の地理的な特性(施設の種別、屋外、屋内、道路、鉄道、陸上、海上、自宅、勤務先等)を判定する処理である。指標算出部350は判定結果となる地理特性を変数Qに記録する。変数Qには、「道路」、「歩道」、「鉄道駅、鉄道線路」、「海上」、「イベント施設」、「自宅」、「勤務先」等の情報が記録される。
【0186】
次に、S2200に対応するS2200Aにおいて、指標算出部350は活動状態定義テーブル370を参照し、移動速度Vnおよび変数Qを用いて、通信可能ステータスを取得し、変数Snに設定する。
図40の例において、例えば、Vnが「40km/h」で、変数Qが「道路」である場合、使用者18は現在車で移動していると判定される。これにより、活動状態は「一般道で乗用車に乗車中」、通信可能ステータスは「1」となり、変数Snには「1」が設定される。Vnが「40km/h」で、変数Qが「鉄道駅、鉄道線路」である場合、使用者18は現在電車で移動していると判定される。これにより、活動状態は「普通、快速列車に乗車中」、通信可能ステータスは「0」となり、変数Snには「0」が設定される。
【0187】
その他の例としては、Vnが「0km/h」で、変数Qが「自宅」である場合、上述したように、使用者18は自宅で睡眠中である可能性があり、また端末装置16から離れている可能性があり、通信可能ステータスは「0」と定義されているので、変数Snには「0」が設定される。Vnが「0km/h」で、変数Qが「自宅」以外だった場合、使用者18は睡眠中である可能性が低いと判定され、通信可能ステータスは「1」と定義されているので、変数Snには「1」が設定される。その後S2210に進む。S2210において、指標算出部350は、実施例8と同じく、通信可能ステータステーブル366を変数Snで更新する。
【0188】
本実施例では説明を簡易化するために、変数Qの内容を「道路」、「歩道」、「鉄道駅、鉄道線路」、「海上」、「イベント施設」としたが、地理特性判定処理の判定結果はさらに詳細な情報でもよく、また文字情報ではなく識別番号でもよい。また、
図40の活動状態定義テーブル370の活動状態もより詳細に、細分化して定義してもよい。
【0189】
本実施例によれば、地図情報を用いて端末装置16が位置する場所の地理的な特性を判定するので、通信可能ステータスの精度をさらに向上できる。
【0190】
(実施例10)
次に、実施例10を説明する。実施例10では、端末装置においてRBT発信補助処理がなされず、管理装置においてRBT発信補助処理がなされる。実施例10に係る通信システム100、端末装置16、管理装置12は、
図1、
図32、
図33、
図35、
図36と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0191】
管理装置12の指標算出部350は、実施例8と同様に、端末装置16の位置情報または移動速度に関する情報をもとに、通信容易性指標として通信可能ステータスを算出する。通信可能ステータスは、使用者18の活動状態に対応付けられた度合いであって、かつ所定の端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを示す。一方、端末装置16は、
図27に示すフローチャートにおける、S1380~S1390の処理を省略し、S1370においてYesと判定された場合、S1410において通常発信を実行する。管理装置12は、発信側の端末装置16が通常発信を要求した場合に、S1380~S1390と同様の処理を行う。すなわち、管理装置12の制御部338は、通信可能ステータステーブル366を参照し、発信先の端末装置16の通信可能ステータスが「0」である場合には、通常発信のプロトコルではなくRBT発信のプロトコルを用いて、発信先の端末装置16を呼び出す。
【0192】
このような管理装置12は、実施例9の処理を実行してもよい。つまり、指標算出部350は、地図情報も使用して、端末装置16を使用する使用者18による通信の認識し易さの度合いを算出してもよい。また管理装置12は、実施例8の変形例の処理を実行してもよい。つまり、指標算出部350は、端末装置16の時間帯毎の移動速度を算出し、それをもとに通信可能ステータスを算出してもよい。
【0193】
本実施例によれば、通信可能ステータスを複数の端末装置のそれぞれについて算出し、通信可能ステータスが所定条件を満たせば、第2通信モードを第1通信モードに切りかえるので、複数種類の通信モードを適切に使用できる。また、端末装置の位置情報または移動速度に関する情報をもとに、通信可能ステータスを算出するので、端末装置を使用する使用者による通信の認識し易さの度合いを通信可能ステータスに反映できる。また、端末装置の位置情報または移動速度に関する情報をもとに、ユーザの活動状態に対応付けられた通信可能ステータスを算出するので、通信可能ステータスの精度を向上できる。また、通信可能ステータスは、端末装置を使用する使用者による通信の認識し易さの度合いを示すので、活動状態に応じて複数種類の通信モードを適切に使用できる。
【0194】
また、時間帯毎に平均化された移動速度をもとに通信可能ステータスが算出されるので、時間帯毎に適した通信モードを使用できる。また、地図情報も使用するので、通信可能ステータスの精度をさらに向上できる。また、管理装置から端末装置へ通信可能ステータステーブルを配信する処理と、端末装置におけるRBT発信補助処理を省略できるため、端末装置の処理量や必要なメモリ量を削減することができる。また、端末装置の処理量や必要なメモリ量が削減されるので、端末装置のコストを下げることができる。また、端末装置に比べて処理能力が高く、メモリ等のリソースも豊富に備える管理装置においてRBT発信補助処理を行うため、より複雑な処理も実行できる。また、各端末装置のプログラムを変更することに比べて管理装置のプログラムの変更は容易であるため、RBT発信補助処理を容易に変更できる。
【0195】
なお、実施例1から実施例10の各実施例では、端末装置16間で音声通話を行う通信システムを例にして説明したが、音声通話に限らず、他の通信であってもよい。例えば、映像と音声を用いる映像通話を行う通信システムであってもよい。あるいは、テキストメッセージを交換する通信システムであってもよい。例えば、テキストデータや画像データを交換するチャットシステムにおいて、通常発信モードとRBT発信モード(要応答モード)を用意する。第1端末装置16aが第2端末装置16bにテキストデータを送信したい場合、通常発信モードでは、第1端末装置16aの使用者18(第1使用者18a)は、すぐにテキストデータを入力して送信できる。送信されたデータは、即時に第2端末装置16bにおいて表示されるが、第2端末装置16bの使用者18(第2使用者18b)がそれを認識している保証はない。
【0196】
一方、RBT発信モードでは、第1端末装置16aが第2端末装置16bに対して、セッション開始リクエストを送信する。第2端末装置16bではセッション開始リクエストがあることを示す画面表示がなされ、報知音等が出力される。第2使用者18bが所定の操作を行って、セッション開始リクエストに対して応答(許可)することによりセッションが確立し、その後に、第1使用者18aはテキスト入力が可能になる。第2使用者18bが応答した直後に、第1使用者18aはテキスト入力等の操作を行って送信するので、通常モードに比べて、第2使用者18bがメッセージを即時に認識する可能性が高い。このため、時間が経過した後に相手が認識すると価値がないようなメッセージを送る場合であっても、使用者18の操作が無駄になることを防ぐことができる。ユーザセッション確立後の所定の期間において、双方の端末装置16が自由にデータを送信できるようにしてもよいし、データを送信する前に必ず相手の応答を待つ動作にしてもよい。このような通信システムにおいても本発明を適用することができ、通信相手が不在もしくは活動状態でないことにより、送信元の使用者18の操作が無駄になることを防ぐ効果が得られる。
【0197】
また、チャットシステムに適用する場合、活動状態定義テーブル370を
図40に示す例とは異なる値にしてもよい。例えば、「自転車を運転中」では、音声通話は問題ないが、テキスト入力が必要なチャットは問題があるため、通信可能ステータスは「0」にされる。一方、鉄道、バス、船舶等の公共機関を利用中である場合、音声通話は問題あるが、チャットは問題ないため、通信可能ステータスは「1」にされる。このように、通信の種類(種別)に応じて、活動状態定義テーブル370を変更してもよい。また、音声通話、映像通話、テキストメッセージ交換(メール等)などの通信の種別毎に活動状態定義テーブル370を記憶し、使用する通信の種別に応じて、適切な活動状態定義テーブル370を選択して使用してもよい。
【0198】
(実施例11)
次に、実施例11を説明する。実施例11は、実施例1と実施例8との組合せである。実施例11に係る通信システム100は
図1と同様のタイプであり、管理装置12は、
図6、
図7、
図35、
図36の組合せであり、端末装置16は、
図12、
図13、
図32、
図33の組合せである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0199】
管理装置12の制御部338は、実施例1と同様に、履歴テーブル362を作成する。また本実施例では、指標算出部350は、端末装置16の通信容易性指標テーブルを作成する。通信容易性指標とは、前述のごとく、端末装置16が通話を受信した際に、端末装置16の使用者18による通信の認識し易さの度合いを示す指標である。本実施例においては、音声通話による通信を行う場合を例にして説明するが、上述したように、テキストメッセージを交換するチャット等の通信を行ってもよい。例えば、使用者18が端末装置16の近くにいない場合には、通話の存在を認識できないので、通信容易性指標は低い値になる。また、使用者18が睡眠中あるいは何かの作業に忙殺されているような場合には、使用者18が通話の存在を認識できない可能性が高くなるので、通信容易性指標は低い値になる。また、使用者18が公共交通機関を利用中である場合は、音声通話は周囲への迷惑となるため、通信容易性指標は低い値になる。また、端末装置16の周囲の騒音が大きい場合には、使用者18は、通話音声や呼び出し音を聞き取り難いので、通信容易性指標は低い値になる。実施例8における通信容易性指標(通信可能ステータス)は「0」または「1」の2値であったが、本実施例における通信容易性指標はより多くの種類の値、あるいは連続的な値をとる。
【0200】
図41は、管理装置12の記憶部340に記憶される活動状態指標定義テーブルのデータ構造を示す。端末装置名とIDには各端末装置16の端末装置名およびIDが記載される。通信容易性指標は後に説明する通信容易性指標処理の結果で更新(上書き)される。本図では通信容易性指標の例として最小値を0、最大値を10としているが、最小値、最大値の範囲は最小値0、最大値100等、別の値でもよい。
【0201】
制御部338は通信部334から端末装置16の通話情報を検出し、履歴テーブル362へ時刻と端末装置16に関する履歴を追加した後、あるいは所定間隔毎(例えば1分間隔)に、指標算出部350は、通信容易性推定処理を実行する。通信容易性推定処理とは、各端末装置16の通信容易性指標を計算する処理となる。指標算出部350は、通信容易性推定処理の結果である各端末装置16の通信容易性指標を、通信容易性指標テーブル内の通信容易性指標として更新する。指標算出部350は、通信容易性指標テーブルを更新した後、あるいは所定間隔毎(例えば1分間隔)に、通信容易性指標テーブルの全内容を各端末装置16へ配信する。
【0202】
次に、具体的な通信容易性推定処理を説明する。第X端末装置16xの通信容易性指標を算出するために、指標算出部350は、履歴テーブル362から、発信側が第X端末装置16xである履歴の中で発信時刻が最も新しい履歴(現時刻の直近の履歴)を検索する。ここで特定された履歴を第X端末装置16xの最新の発信履歴と称し、その履歴Noの値をNSとする。発信側が第X端末装置16xである発信履歴がない場合、NSは「000」とされる。指標算出部350は、受信側が第X端末装置16xであり、かつNSより大きい履歴Noの値をもつ履歴のうち、受信時刻が現時刻までの履歴を検索し、履歴の数をカウントする。すなわち、第X端末装置16xに関する履歴のうち、最新の発信履歴よりも新しい受信履歴の数をカウントする。
【0203】
発信するためには、使用者18が第X端末装置16xに対して能動的な操作を行う必要があるため、履歴「NS」の時刻において、第X端末装置16xの第X使用者18xは、第X端末装置16xに近くに位置し、かつ能動的に活動していた(睡眠中ではなかった)ことが保証される。本実施例では、使用者18が睡眠中でない状態や、通信以外の活動で忙殺されていない状態など、通信内容を把握できる状態を「活動状態」と称する。ここでカウントした履歴の数は、使用者18が第X端末装置16xの近くで活動状態にあったと確認された最後の時刻以降に、第X端末装置16xが受信した回数である。すなわち、カウントした履歴の数が少ない程、第X使用者18xは通信内容を把握できる可能性が高く、カウントした履歴の数が多い程、通信内容を把握できる可能性が低いと予測される。
【0204】
通信容易性推定処理では、上記の「通信内容を把握できる可能性」および端末装置16の周囲の騒音レベルを通信容易性指標として数値化する。
図41は、活動状態と活動状態指標とを関連付けた活動状態指標テーブルの構成例となる。ここで活動状態指標とは、その活動状態の時に、通信の認識し易さの度合いを示す指標である。本図に示す例では、「歩行中」の活動状態指標が最も高く「10」であり、最も通話を認識し易い状態とされている。また、「自宅以外で停止中」および「自転車を運転中」の状態は、上述の「通話に適さない理由1~4」に該当しない可能性が高いため、活動状態指標が「8」と比較的高い値になっている。
【0205】
活動状態指標をそのまま通信容易性指標としてもよいが、本実施例では、第X端末装置16xがNSの時刻から現時刻までに受信した履歴の数CountXと、活動状態指標ActXとを用いて、第X端末装置16xの通信容易性指標SXを次のように算出する。
SX=α×ActX-β×CountX (式14)
ここで、α、βは0より大きい値の所定の係数である。(式14)から解るように、CountXの値が小さく、活動状態指標ActXが大きい程、通信容易性指標SXは高くなる。すなわち、CountXの値が小さく、活動状態指標が大きい程、通信内容を把握できる可能性が高くなると予測することを示している。なお、第X端末装置16xの通信容易性指標SXがマイナスの値となる場合、通信容易性指標SXを一律に「0」としてもよい。
【0206】
また、CountXを引数(入力)とする非線形な関数Gの返り値(出力)を用いて通信容易性指標SXを次のように算出してもよい。
SX=α×G1(ActX)-β×G2(CountX) (式15)
ここで、関数G1、G2は、線形あるいは非線形な単調増加関数である。入力値が増加したときに、出力値が変化しない区間が存在してもよく、広義の単調増加関数(単調非減少関数)であればよい。例えば、
図10(a)に示す特性をもつ関数を用いればよい。本図の例の関数Gは、入力が大きくなるほど出力も大きくなる単調増加関数である。また、入力が大きくなるほど出力の増加率が大きくなる、指数関数的な特性をもつ。なお本図の例に限らず、入力が大きくなるほど出力の増加率が小さくなる対数関数的な特性をもつ関数を用いてもよい。また、関数G1、G2として線形の単調増加関数を用いると、(式14)と同等の処理になる。関数G1と関数G2は、同じ関数であっても、異なる関数であってもよい。
【0207】
また、CountXの代わりに、第X端末装置16xが最後に発信を行ってから現時刻までの経過時間TXを用いて、通信容易性指標SXを次のように算出してもよい。
通信容易性指標SX=α×F1(ActX)-β×F2(TX) (式16)
ここで、関数F1、F2は、線形あるいは非線形な単調増加関数である。入力値が増加したときに、出力値が変化しない区間が存在してもよく、広義の単調増加関数(単調非減少関数)であればよい。例えば、
図10(b)に示す特性をもつ関数を用いればよい。本図の例の関数Fは、入力が大きくなるほど出力も大きくなる単調増加関数である。また、入力が大きくなるほど出力の増加率が小さくなる、対数関数的な特性をもつ。なお本図の例に限らず、入力が大きくなるほど出力の増加率が大きくなる指数関数的な特性をもつ関数を用いてもよい。また、関数F1、F2として線形の単調増加関数を用いてもよい。関数F1と関数F2は、同じ関数であっても、異なる関数であってもよい。
【0208】
さらに、CountXと経過時間TXを両方用いて通信容易性指標SXを次のように算出してもよい。
SX=α×G1(ActX)-β×G2(CountX)×F1(TX) (式17)
ここで、関数G1、G2、F1は、上述のとおり、線形あるいは非線形な単調増加関数である。これによれば、活動状態指標が大きいほど通信容易性指標SXが大きくなり、かつCountXが大きいほど通信容易性指標SXが小さくなり、かつTXが大きいほど通信容易性指標SXが小さくなる。なお、各式において、所定の係数α、βを用いているが、これらはもちろん、数式毎に異なった値でもよい。
【0209】
端末装置16の通信部34は、管理装置12からの通信容易性指標テーブルを受信する。端末装置16の記憶部40には通信容易性指標テーブルが作成される。管理装置12から通信容易性指標テーブルが配信された場合、端末装置16は記憶部40の通信容易性指標テーブルの内容を更新する。本実施例では、端末装置16が他の端末装置16へ発信を行う場合、
図27のフローチャートのS1380に対応するS1380Aにおいて、通信容易性指標テーブルから発信先端末装置16の通信容易性指標を取得する。そしてS1390に対応するS1390Aにおいて、通信容易性指標が所定値未満であるか否かを判定する。
【0210】
本実施例によれば、端末装置の移動速度と、使用者の活動状態の推定値とを用いて通信容易性指標を算出するため、使用者が通話を聞き逃す可能性を精度よく推定できる。また、使用者が通話を聞き逃す可能性が精度よく推定されるので、より精度よく無駄な通信を防止できる。
【0211】
(実施例12)
本実施例では、端末装置16が備える各種センサの情報をもとに、通信モードを選択する。近年のスマートフォンの多くには、加速度センサやジャイロセンサ、照度センサ(環境光センサ)、近接センサ、GPSセンサといった様々なセンサが備わっている。スマートフォンはこれらのセンサを利用して電話機能の使い勝手を向上させたり、様々なアプリケーションに応用したりしている。具体的には、スマートフォンを使用しているユーザがある地点からある目的地へ移動する際、地図アプリケーションはGPSセンサから使用者の現在地を特定し、リアルタイムで最適な経路での道案内を行う。また、ユーザがスマートフォンを操作している際、周囲の明るさを照度センサにより検出し、周囲が明るい場合は自動でスマートフォンの画面を明るい輝度に変更し、周囲が暗い場合は自動で画面を暗い輝度に変更する。本実施例では、このような端末装置16が備えるセンサの情報をもとに通信容易性指標を算出し、通信容易性指標をもとに第1通信モードと第2通信モードのいずれかの通信モードを選択する。
【0212】
図42は本実施例における端末装置16の内部ブロック図となる。センサ部50以外の各部は、これまでの実施例で説明したものと同じであるため、説明を省略する。センサ部50は端末装置16に実装されているセンサ装置であり、本実施例では三軸の加速度センサとなる。
【0213】
図43は加速度センサで検出可能な端末装置16の軸方向の例となる。本実施例の加速度センサは所定の周期(例えば1秒)でX軸(左右方向)の加速度、Y軸(上下方向)の加速度、Z軸(前後方向)の加速度を検出する事が出来る。なお、加速度を検出する軸はX軸、Y軸、Z軸の三軸より多くてもよい。例えば、X軸とY軸の間の斜め45度方向の加速度を直接検出してもよい。また、加速度を検出する軸は3軸より少なくてもよい。例えば、X軸のみの加速度を検出してもよい。また
図43に示すように、センサ部50は、X軸の角速度、Y軸の角速度、Z軸の角速度を検出してもよい。ただし、本実施例では、角速度を用いた処理を行わないため、センサ部50は角速度を検出せずに、加速度のみを検出してもよい。
【0214】
端末装置16の制御部38は所定の周期(例えば10秒)で計時部から現在の時刻を取得し、センサ部50からX軸、Y軸、Z軸それぞれの加速度の数値を取得する。加速度の単位は本実施では「m/s2」とする。なお本実施例ではセンサ部50から取得する加速度の数値は、重力加速度を含めない直線加速度の絶対値とする。すなわち、端末装置16が完全に静止している場合、各軸の加速度はそれぞれX軸=「0」、Y軸=「0」、Z軸=「0」となる。制御部38は計時部32から取得した現時刻と、センサ部50から取得したX軸、Y軸、Z軸それぞれの加速度の数値をパケット化し、通信部34を通じて管理装置12へ送信する。本実施例では上記パケットを加速度情報パケットと呼ぶ。
【0215】
図44は、端末装置16が管理装置12へ送信する加速度情報パケットの構成例となる。端末装置名とIDには、端末装置16の名称及びID(端末装置ID)が記載される。検出日(測定日)および検出時刻(測定時刻)は計時部32から取得した日付(年月日)と現時刻、X軸加速度にはセンサ部50から取得したX軸の加速度の数値、Y軸加速度にはセンサ部50から取得したY軸の加速度の数値、Z軸加速度にはセンサ部50から取得したZ軸の加速度の数値が記載される。なお、検出日の記載例である「2018/6/1」は「2018年6月1日」であり、検出時刻の記載例である「10:19:14」の表記は「10時19分14秒」であることを表す。なお、端末装置16は所定時間(例えば30秒間)の加速度の平均値や中央値を算出し、それを加速度情報パケットに入れてもよい。
【0216】
図45は本実施例における管理装置12の内部ブロック図となる。各端末装置16から送信される加速度情報パケットは、通信部334を経由して制御部338に入力される。記憶部340には、センサ情報テーブル380が配置される。センサ情報テーブル380には、各端末装置16から送信される加速度情報パケットの内容が記録される。
【0217】
図46はセンサ情報テーブル380の構成例となる。テーブルの各パラメータ(フィールド)は、
図44の加速度情報パケットの構成例で説明した内容と同じである。また、本図では、各端末装置16のIDは第1端末装置16a(ID:001)、第2端末装置16b(ID:002)、第3端末装置16c(ID:003)、第4端末装置16d(ID:004)、第5端末装置16e(ID:005)、第6端末装置16f(ID:006)、第7端末装置16g(ID:007)、第8端末装置16h(ID:008)、第9端末装置16i(ID:009)、第10端末装置16j(ID:010)、第11端末装置16k(ID:011)である。制御部338は各端末装置16から加速度情報パケットを受信した際、センサ情報テーブル380に同一の端末装置16のデータが存在する場合、受信した加速度情報パケットの内容で更新(上書き)する。センサ情報テーブル380に端末装置16の記録が存在しない場合、新たに端末装置16のレコードを追加する。つまり、センサ情報テーブル380には、端末装置16毎の最新の加速度に関する状態が記録されている。なお、説明を簡潔にするために、本実施例ではセンサ情報テーブル380が端末装置16ごとの最新の加速度を記録するが、これに限るものではない。例えば、センサ情報テーブル380が所定期間(例えば24時間)の全ての加速度情報パケットを記録してもよい。つまり、受信した加速度情報パケットを全てセンサ情報テーブル380に記録し、検出日時が現在日時よりも所定時間以上古くなったデータを定期的に削除する等の処理を行ってもよい。この場合、端末装置16ごとに複数のデータがセンサ情報テーブル380に記録される。また、
図44の加速度情報パケットにおいて、検出日と検出時刻(検出日時)を省略し、センサ情報テーブル380の検出日と検出時刻に、管理装置12が加速度情報パケットを受信した日時を記録してもよい。
【0218】
次に、本実施例の端末装置16の処理の詳細を説明する。
図47は端末装置16の発信方法取得処理の詳細を示すフローチャートである。S3100において、制御部38は設定テーブル60からRBT利用設定を取得する。設定テーブル60には、使用者によって選択されたRBT利用に関するデータ(「利用しない」、「常時利用」、「発信時選択」のいずれかを示すデータ)が記録されているので、そのデータを取得する。つまり、入力部の通話ボタンの押下を検出した際、制御部38は発信方法を取得する。S3110において、RBT利用設定が「利用しない」となっていた場合(S3110:Yes)は、S3150に進む。RBT利用設定が「利用しない」以外の場合(S3110:No)は、S3120に進む。S3120において、RBT利用設定が「常時利用」となっていた場合(S3120:Yes)は、S3140に進む。RBT利用設定が「常時利用」以外の場合(S3120:No)は、S3130に進む。S3130に進む場合は、「発信時選択」が選択されている場合である。
【0219】
S3130において、制御部38は
図4(b)に示す発信選択画面を表示部36に表示させる。制御部38は、使用者が選択した「RBT発信」または「通常発信」を示すデータを入力部を介して取得する。そして制御部38は、発信選択画面で「RBT発信」が選択されたか否かを判定する。発信選択画面で「RBT発信」が選択された場合(S3130:Yes)は、S3140に進む。発信選択画面で「RBT発信」以外、すなわち本実施例では「通常発信」が選択された場合(S3130:No)は、S3150に進む。S3140において、発信方法を「RBT発信」と判定して処理を終了する。S3150において、発信方法を「通常発信」と判定して処理を終了する。発信方法が通常発信と判定された場合、制御部38は発信先端末装置16へ通常発信を行う。発信方法がRBT発信と判定された場合、制御部38は発信先端末装置16へRBT発信を行う。
【0220】
次に、本実施例の管理装置12における通信モード選択処理(通信モード判定処理)の詳細を
図48のフローチャートを用いて説明する。制御部338は端末装置16からの通話開始要求を監視する。(S3200)。通話開始要求を検出していない場合(S3200:No)は、S3200に戻って処理を繰り返す。通話開始要求を検出した場合(S3200:Yes)は、S3210に進む。S3210において、制御部338は端末装置16で指定された発信方法(発信方法M)の取得処理を実行する。管理装置12が端末装置16から通話開始要求を受信した場合、管理装置12の制御部338は端末装置16の発信方法Mの判定を行う。制御部338は、INVITE(自動応答)を受信した場合は端末装置16からの発信方法が通常発信であり、変数Mに「通常発信」をセットする。一方、INVITE(手動応答)を受信した場合は端末装置16からの発信方法がRBT発信であると判定し、変数Mに「RBT発信」をセットする。その後S3220に進む。
【0221】
S3220において、制御部338は記憶部340のセンサ情報テーブル380から、発信先端末装置16のレコードRを取得する。つまり、レコードR内の検出日、検出時刻、X軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度を取得する。レコードRが存在しない場合、その旨を示すNULLが取得される。その後S3230に進む。S3230において、制御部338はレコードRが存在するか否かを判定する。レコードRが存在する場合(S3230:Yes)は、S3240に進む。レコードRが存在しない場合(S3230:No)は、S3310に進む。S3240において、制御部338は計時部332より現時刻CTを取得する。その後S3250に進む。S3250において、制御部338は現時刻CTとレコードR内の検出日、検出時刻との差分値(時間差)を計算し、差分値が所定値PTより小さいか否かを判定する。差分値が所定時間PTより小さい場合(S3250:Yes)は、S3260に進む。差分値が所定時間PT以上の場合(S3250:No)は、S3310に進む。本実施例の説明において特に断らない限り、この所定時間PTは10分であるとするが、もちろんこの値に限定される訳ではない。
【0222】
S3260において、制御部338はレコードR内のX軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度から加速度スコアAを計算する。具体的には、レコードR内のX軸加速度をKx、Y軸加速度をKy、Z軸加速度をKzとして、制御部338は(式18)~(式21)のいずれかを用いて加速度スコアAを計算する。基本的には、(式18)を用いればよいが、(式19)あるいは(式20)を用いると、より簡易な処理で加速度スコアAを算出できる。なお、(式20)において、Maxは引数の中の最大値を返す関数である。
【0223】
(式21)において、γ、ε、ηはそれぞれ0以上の重み係数であり、γ+ε+η=1を満たす。(式21)は、加速度の軸ごとの重みを変えて加速度スコアAを算出したい場合に適する。例えば、端末装置16の入力部(ボタンやタッチパネル)の操作によって生じる加速度は、軸ごとに偏りがあり、特定の軸(例えば、Z軸)の加速度が他の軸(例えば、X軸およびY軸)よりも大きいと想定される。このため、(式21)において、その特定の軸の重み係数を大きな値に設定することにより、ユーザが端末装置16を操作していることをより精度よく検出できる。端末装置16がスマートフォンである場合、スマートフォンで使用するアプリによっても操作時に加速度が大きくなる軸は異なるため、管理装置12で各端末装置16のユーザが使用しているアプリを記録し、ユーザが日頃よく使用するアプリの種類に応じて重み係数を設定してもよい。その後S3270に進む。
【数5】
【0224】
S3270において、制御部338は加速度スコアAが所定値TA(例えば5)より大きいか否かを判定する。加速度スコアAが所定値TAより大きい場合(S3270:Yes)は、S3280に進む。加速度スコアAが所定値TA以下の場合(S3270:No)は、S3310に進む。S3280において、制御部338はS3210で取得した変数M(発信方法M)がINVITE(手動応答)であるか否かを判定する。発信方法がINVITE(手動応答)の場合(S3280:Yes)は、S3300に進む。発信方法がINVITE(自動応答)の場合(S3280:No)は、S3290に進む。S3290において、制御部338は発信先端末装置16へINVITE(自動応答)を送信する。その後処理を終了する。
【0225】
S3300において、制御部338は発信方法を変更し、発信先端末装置16へINVITE(自動応答)を送信する。その後処理を終了する。S3310において、制御部338はS3210で取得した変数M(発信方法M)がINVITE(自動応答)であるか否かを判定する。発信方法がINVITE(自動応答)の場合(S3310:Yes)は、S3320に進む。発信方法がINVITE(手動応答)の場合(S3310:No)は、S3330に進む。S3320において、制御部338は発信方法を変更し、発信先端末装置16へINVITE(手動応答)を送信する。その後処理を終了する。S3330において、制御部338は発信先端末装置16へINVITE(手動応答)を送信する。その後処理を終了する。なお、
図48のフローチャートにおいては、RBT発信→通常発信、通常発信→RBT発信の変換を両方行っているが、必ずしも両方を行う必要はなく、少なくとも1つを実行すればよい。
【0226】
上記の通信モード選択処理において、加速度スコアAが高い(相対的に高い)場合、ユーザが端末装置16を操作している、あるいはユーザが端末装置16を所持して移動している状態である可能性が高い事から、ユーザが他の端末装置16からの通信(着信)を認識できる可能性が高い。このため、直ちに通話を開始してもユーザが通話内容を聞き逃す可能性が低い。一方、加速度スコアAが低い(相対的に低い)場合、端末装置16が充電中、またはユーザが端末装置16を置いたまま端末装置16から離れている状態である可能性が高い事から、ユーザが他の端末装置16からの通信(着信)を認識できる可能性が低い。つまり、直ちに通話を開始した場合に発信相手が通話内容を聞き逃して通話が無駄になる事が予想される。この為、加速度スコアAが低い場合は、優先的にRBT発信、すなわちINVITE(手動応答)が送信される。すなわち、加速度スコアAは、端末装置16のユーザが他の端末装置16からの通信(着信)を認識する容易さを示しており、通信容易性指標ともいえる。つまり、管理装置12は、発信先の端末装置16の加速度が大きいほど、高い値となる通信容易性指標を算出する。
【0227】
次に
図46の具体例を用いて、通信モード選択処理を具体的に説明する。以下の説明では、現時刻CTが「10:20:00」であり、所定時間PTは10分であり、所定値TAは5であり、(式19)に従って加速度スコアAを算出するものとする。現時刻と検出時刻の差分値が所定時間PTより小さい端末装置16、つまり、検出時刻が「10:10:00」より後の時刻であり、且つ加速度スコアAが所定値TAより大きい端末装置16は、第1端末装置16a、第3端末装置16c、第7端末装置16g、第10端末装置16jとなる。すなわち、管理装置12は第1端末装置16a、第3端末装置16c、第7端末装置16g、第10端末装置16jへの通話開始要求を受信した場合、送信元の発信方法がRBT発信、すなわちINVITE(手動応答)であっても、通常発信、すなわちINVITE(自動応答)に自動で切り替える。
【0228】
管理装置12にて発信方法を通常発信、すなわちINVITE(自動応答)に自動的に切り替える事により、RBT発信、すなわちINVITE(手動応答)と比べてより迅速に通話を開始する事が可能となり、受信側の使用者も端末装置16を操作する事無く通話を受信する事が出来る。また、管理装置12は
図46に示す端末装置16の中で、第1端末装置16a、第3端末装置16c、第7端末装置16g、第10端末装置16j以外のへの通話開始要求を受信した場合、送信元の発信方法が通常発信、すなわちINVITE(自動応答)の設定であっても、RBT発信、すなわちINVITE(手動応答)に自動で切り替える。管理装置12にて発信方法をRBT発信、すなわちINVITE(手動応答)に自動的に切り替える事により、受信側での聞き逃しにより通話が無駄になる事を未然に防ぐ事が出来る。
【0229】
図49(a)-(b)は管理装置12が通信モード選択処理を行った結果、通信モード(発信方法)の変更が行われた場合のSIPシーケンス図の例となる。ここで、RBT発信→通常発信、通常発信→RBT発信の変換のうち少なくとも1つを実行すればよい。
(1)
図49(a)に示すように、通信モード選択処理において、INVITE(自動応答)への変更が判定された場合、例えば、第1端末装置16aから第3端末装置16cへRBT発信を行った際に、通信モード選択処理の実行結果から発信方法をINVITE(手動応答)からINVITE(自動応答)へ変更する。これにより、第1端末装置16aが第3端末装置16cへ通常発信を行った場合と同様の処理が実行される。
(2)
図49(b)に示すように、通信モード選択処理において、INVITE(手動応答)への変更が判定された場合、例えば、第1端末装置16aから第4端末装置16dへ通常発信を行った際に、通信モード選択処理の実行結果から発信方法をINVITE(自動応答)からINVITE(手動応答)へ変更する。これにより、第1端末装置16aが第4端末装置16dへRBT発信を行った場合と同様の処理が実行される。
【0230】
なお、上述の説明では、加速度スコアすなわち通信容易性指標が、所定のしきい値以下である合に、RBT発信(第1通信モード)を使用し、通信容易性指標が所定のしきい値より大きい(高い)場合に、通常発信(第2通信モード)を使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、第1しきい値と、第1しきい値よりも大きい第2しきい値を用意する。そして、加速度スコアが、第1しきい値未満であれば、第1通信モードを使用し、第1しきい値以上かつ第2しきい値未満であれば、第2通信モードを使用し、第2しきい値以上であれば、第1通信モードを使用してもよい。加速度スコアAが第2しきい値以上である場合、すなわち非常に大きい場合、端末装置16のユーザが振動の多い移動手段で移動しているか、または端末装置16のユーザの姿勢が安定していない可能性が高い。このため、ユーザが通話に集中できない可能性が高いと判定し第1通信モードを使用する。すなわち、端末装置16は、加速度スコアが所定の条件に合致するか否かに応じて、第1通信モードと第2通信モードのいずれかを選択してもよい。また、加速度スコアが第1しきい値以上かつ第2しきい値未満の範囲にある場合に、通信容易性指標を相対的に高い値(例えば、10~20の範囲)になるように算出し、加速度スコアが第1しきい値未満あるいは第2しきい値以上である場合に、通信容易性指標を相対的に低い値(例えば、0~10の範囲)になるように算出してもよい。この場合、加速度スコアと通信容易性指標は、線形的な関係ではなく非線形的な関係になり、加速度スコアをもとに通信容易性指標を算出するといえる。このような通信容易性指標は、所定の非線形関数を用意し、加速度スコアをその非線形関数に入力した際の出力値として得られる。つまり、端末装置16の加速度が所定の条件(所定の範囲)に合致するか否かに応じて、通信容易性指標を算出してもよい。そして、通信容易性指標が所定のしきい値未満であれば、第1通信モードを選択し、所定のしきい値以上であれば、第2通信モードを選択するようにしてもよい。
【0231】
本実施例によれば、端末装置16に関する情報として発信先の端末装置16の加速度を用いて、通信容易性指標を算出し、適切に通信モードを選択することができる。また、発信先端末装置16の筐体に掛かる加速度から端末装置16の状態を予測して、適切に通信モードを切り替えることができる。このため、発信端末装置16のユーザが発話した情報が受信端末装置16のユーザに認識されない事態の発生を低減しつつ、受信端末装置16のユーザにより迅速に情報を伝えることができる。
【0232】
(実施例12の変形例)
本変形例では、発信先の端末装置16のセンサ情報に基づいて、発信先の端末装置16を呼び出すか否かを判定する。管理装置12のセンサ情報テーブル380に端末装置16のレコードRが存在しない場合、当該の端末装置16は管理装置12へ加速度情報パケットを送信していない状態である事を示している。また、端末装置16のレコードRが存在する場合であっても、現時刻CTとレコードR内の検出日、検出時刻の差分値が所定時間PT以上の場合は、当該の端末装置16が管理装置12へ最後に加速度情報パケットを送信してからしばらくの時間が経過している事を示している。
【0233】
上記の場合、当該の端末装置16は電源が入っていない、または当該の端末装置16が管理装置12の通信エリア範囲外に存在している事が予想され、当該の端末装置16に通常発信、またはRBT発信を行っても通話が受信される可能性は極めて低い。この為、発信先が上記の条件を満たす端末装置16の場合、管理装置12は送信元の端末装置16から通常発信、あるいはRBT発信による通話開始要求を受信した際に、送信先の端末装置16へINVITE(手動応答)、あるいはINVITE(自動応答)を送信せず、送信元の端末装置16へ通話不可を示すステータスコード(例えば、「410 Gone」)を送信し、その後処理を終了してもよい。送信元の端末装置16は管理装置12より前記の通話不可を示すステータスコードを受信した場合、表示部36に「発信先の端末装置16は現在通話出来ない」旨のメッセージを表示する。上記の端末装置16からの通常発信、RBT発信を中止するか否かを判定する処理は、以後「通話不可判定処理」と呼称する。
【0234】
本実施例では管理装置12の制御部338は、
図48のフローチャートの(S3230:No)および(S3250:No)の場合において、S3310に遷移せず、S3350(不図示)に進む。S3350において、制御部338は送信元の端末装置16へ通話不可を示すステータスコード(例えば、「410 Gone」)を送信し、その後処理を終了する。なお、制御部338は、送信元の端末装置16から通話不可を示すステータスコードを了解した旨を示すメッセージ(ACK)を受信した後、処理を終了してもよい。
【0235】
本変形例によれば、発信相手の端末装置16の筐体に掛かる加速度から端末装置16の状態を予測して、管理装置12により適切に通信モードを切り替えることができるだけでなく、発信相手が応答できない可能性が非常に高い場合には、送信しない。また、発信元の端末装置16に、送信しない旨を示すメッセージを表示させる。このため、無駄な通信が発生することを抑止することができる。従って、無線システムの処理負荷が無駄に高くなることを防止すると同時に、発信端末装置16のユーザの無駄な操作(発話)を防止できる。
【0236】
(実施例13)
実施例12では、管理装置12において発信先端末装置16の加速度の状態により通信モードを自動で切り替える処理を説明した。本実施例では発信先端末装置16の角速度の状態により通信モードを自動で切り替える処理について説明する。つまり本実施例では、端末装置16に関する情報として、端末装置16の角速度を用いる。
【0237】
本実施例の端末装置16内部のブロック図、管理装置12内部のブロック図、及び端末装置16センサテーブルの構成は実施例12と同じである。なお、本実施例におけるセンサ部50は、
図43に示すように三軸の角速度を検出するセンサであり、例えばジャイロセンサ(角速度センサ)である。本実施例のセンサ部50は、所定の周期(例えば1秒)でX軸の角速度、Y軸の角速度、Z軸の角速度を検出する事が出来る。なお、角速度を検出する軸はX軸、Y軸、Z軸の三軸より多くてもよい。例えば、X軸とY軸の間の斜め45度方向の角速度を直接検出してもよい。また、角速度を検出する軸は3軸より少なくてもよい。例えば、X軸のみの角速度を検出してもよい。
図43に示すように、センサ部50は、加速度を検出してもよい。ただし、本実施例では、加速度を用いた処理を行わないため、センサ部50は加速度を検出せずに、角速度のみを検出してもよい。
【0238】
端末装置16の制御部38は所定の周期(例えば10秒)で計時部32から現在の時刻を取得し、センサ部50からX軸、Y軸、Z軸それぞれの角速度の数値を取得する。角速度の単位は本実施では「rad/s」とする。なお本実施例ではセンサ部50から取得する角速度の数値は絶対値とする。端末装置16が完全に静止している場合、各軸の角速度はそれぞれX軸=「0」、Y軸=「0」、Z軸=「0」となる。
【0239】
制御部38は計時部32から取得した現時刻と、センサ部50から取得したX軸、Y軸、Z軸それぞれの角速度の数値をパケット化し、通信部34を通じて管理装置12へ送信する。本実施例では上記パケットを角速度情報パケットと呼ぶ。角速度情報パケットは、
図44に示す加速度情報パケットにおけるX軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度をそれぞれX軸角速度、Y軸角速度、Z軸角速度に変更したものである。なお、端末装置16は所定時間(例えば30秒間)の角速度の平均値や中央値を算出し、それを角速度情報パケットに入れてもよい。端末装置16から管理装置12へ所定の周期で上記角速度情報パケットが送信され、管理装置12の記憶部340内の記憶部340に記録される。
【0240】
図50は本実施例における管理装置12の記憶部340内のセンサ情報テーブル380の構成例である。また、本図では、各端末装置16のIDは
図46と同様である。なお、角速度情報パケットを受信した際のテーブルの更新、レコードの追加、及び検出日と検出時刻に関する処理は実施例12における加速度情報パケットを受信した際の処理と同様である。
【0241】
次に、本実施例の管理装置12の処理の詳細を説明する。
図51は本実施例の管理装置12における通信モード選択処理(通信モード判定処理)を説明するためのフローチャートである。S3400からS3450までの処理は、実施例12のS3200からS3250までの処理と同じである。ただし、S3420ではレコードRのX軸角速度、Y軸角速度、Z軸角速度を取得する。S3460において、制御部338はレコードR内のX軸角速度、Y軸角速度、Z軸角速度から角速度スコアVを計算する。
【0242】
具体的には、レコードR内のX軸角速度をRx、Y軸角速度をRy、Z軸角速度をRzとして、制御部338は(式22)~(式25)のいずれかを用いて角速度スコアVを計算する。基本的には、(式22)を用いればよいが、(式23)あるいは(式24)を用いると、より簡易な処理で角速度スコアVを算出できる。なお、(式24)において、Maxは引数の中の最大値を返す関数である。(式25)において、λ、μ、ρはそれぞれ0以上の重み係数であり、λ+μ+ρ=1を満たす。(式25)は、角速度の軸ごとの重みを変えて角速度スコアVを算出したい場合に適する。例えば、端末装置16の入力部(ボタンやタッチパネル)の操作によって生じる加速度は、軸ごとに偏りがあり、特定の軸(例えば、X軸)の角速度が他の軸(例えば、Y軸およびZ軸)よりも大きいと想定される。このため、(式25)において、その特定の軸の重み係数を大きな値に設定することにより、ユーザが端末装置16を操作していることをより精度よく検出できる。端末装置16がスマートフォンである場合、スマートフォンで使用するアプリによっても操作時に加速度が大きくなる軸は異なるため、管理装置12で各端末装置16のユーザが使用しているアプリを記録し、ユーザが日頃よく使用するアプリの種類に応じて重み係数を設定してもよい。
【数6】
【0243】
S3470において、制御部338は角速度スコアVが所定値TV(例えば5)より大きいか否かを判定する。角速度スコアVが所定値TVより大きい場合(S3470:Yes)は、S3480に進む。角速度スコアVが所定値TV以下の場合(S3470:No)は、S3510に進む。S3480において、制御部338はS3410で取得した変数MがINVITE(手動応答)であるか否かを判定する。発信方法がINVITE(手動応答)の場合(S3480:Yes)は、S3500に進む。発信方法がINVITE(自動応答)の場合(S3480:No)は、S3490に進む。
【0244】
S3490において、制御部338は発信先端末装置16へINVITE(自動応答)を送信する。その後処理を終了する。S3500において、制御部338は発信方法を変更し、発信先端末装置16へINVITE(自動応答)を送信する。その後処理を終了する。S3510において、制御部338はS3410で取得した変数MがINVITE(自動応答)であるか否かを判定する。発信方法がINVITE(自動応答)の場合(S3510:Yes)は、S3520に進む。発信方法がINVITE(手動応答)の場合(S3510:No)は、S3530に進む。S3520において、制御部338は発信方法を変更し、発信先端末装置16へINVITE(手動応答)を送信する。その後処理を終了する。S3530において、制御部338は発信先端末装置16へINVITE(手動応答)を送信する。その後処理を終了する。
【0245】
上記の通信モード選択処理において、角速度スコアVが高い(相対的に高い)場合、ユーザが端末装置16を操作している、あるいはユーザが端末装置16を所持して移動している状態である可能性が高い事から、ユーザが他の端末装置16からの通信(着信)を認識できる可能性が高い。このため、直ちに通話を開始してもユーザが通話内容を聞き逃す可能性が低い。一方、角速度スコアVが低い(相対的に低い)場合は、端末装置16が充電中、またはユーザが端末装置16を置いたまま端末装置16から離れている状態である可能性が高い事から、ユーザが他の端末装置16からの通信(着信)を認識できる可能性が低い。このため、直ちに通話を開始した場合に発信相手が通話内容を聞き逃して通話が無駄になる事が予想される。この為、角速度スコアVが低い場合は優先的にRBT発信が行われる。すなわち、角速度スコアVは、端末装置16のユーザが他の端末装置16からの通信(着信)を認識する容易さを示しており、通信容易性指標ともいえる。つまり、管理装置12は、発信先の端末装置16の角速度が大きいほど、高い値となる通信容易性指標を算出する。
【0246】
次に
図50の具体例を用いて通信モード選択処理を具体的に説明する。以下の説明では、現時刻CTが「10:20:00」であり、所定時間PTは10分であり、所定値TVは5であり、(式23)に従って角速度スコアVを算出するものとする。現時刻と検出時刻の差分値が所定時間PTより小さい端末装置16、つまり、検出時刻が「10:10:00」より後の時刻であり、且つ加速度スコアVが所定値TVより大きい端末装置16は、第2端末装置16b、第4端末装置16d、第7端末装置16g、第8端末装置16h、第11端末装置16kとなる。すなわち、第2端末装置16b、第4端末装置16d、第7端末装置16g、第8端末装置16h、第11端末装置16kへ発信する場合、送信側の発信方法がRBT発信の設定であっても、通常発信に自動で切り替える。発信方法を通常発信に自動的に切り替える事により、RBT発信と比べてより迅速に通話を開始する事が可能となり、受信側の使用者も端末装置16を操作する事無く通話を受信する事が出来る。
【0247】
また、
図50に示す端末装置16の中で、第2端末装置16b、第4端末装置16d、第7端末装置16g、第8端末装置16h、第11端末装置16k以外の端末装置16へ発信する場合、送信側の発信方法が通常発信の設定であっても、RBT発信に自動で切り替える。発信方法をRBT発信に自動的に切り替える事により、受信側での聞き逃しにより通話が無駄になる事を未然に防ぐ事が出来る。
【0248】
本実施例によれば、端末装置16に関する情報として発信先の端末装置16の角速度を用いて、通信容易性指標を算出し、適切に通信モードを選択することができる。発信相手の端末装置16の筐体の角速度から端末装置16の状態を予測して、適切に発信方式を切り替えることができる。このため、発信端末装置16のユーザが発話した情報が受信端末装置16のユーザに認識されない事態の発生を低減しつつ、受信端末装置16のユーザにより迅速に情報を伝えることができる。また、本実施例では端末装置16のセンサ部50からX軸、Y軸、Z軸の角速度の値を取得し、角速度スコアVの計算結果から端末装置16の状態を予想しているが、角速度(rad/s)の代わりに角加速度(rad/s2)の値を取得し、角加速度スコアRAを計算して端末装置16の状態を予想してもよい。また、実施例12で説明したのと同様に、角速度スコアあるいは角加速度スコアに関する2つの以上のしきい値を用いて、通信モードを選択してもよい。また更に、角速度スコアあるいは角加速度スコアをもとに、角速度スコアあるいは角加速度スコアと非線形の関係にある通信容易性指標を算出してもよい。
【0249】
また、本実施例の変形例として、実施例12の変形例と同様に、センサ情報テーブル380に端末装置16のレコードRが存在しない場合において、あるいは端末装置16のレコードRが存在する場合であっても、現時刻CTとレコードR内の検出日、検出時刻の差分値が所定時間PT以上の場合は、当該の端末装置16が管理装置12へ最後に角速度情報パケットを送信してからしばらくの時間が経過している場合において、通常発信、あるいはRBT発信を行わずに、送信側端末装置16の表示部に「発信先の端末装置16は現在通話出来ない」旨のメッセージを表示し、その後処理を終了してもよい。
【0250】
この変形例では端末装置16の制御部38は、
図51のフローチャートの(S3430:No)および(S3450:No)の場合において、S3510に遷移せず、S3550(不図示)に進む。S3550において、制御部は送信元端末装置16へ通話不可を示すステータスコードを送信し、その後処理を終了する。
【0251】
(実施例14)
本実施例は、実施例12と実施例13との組み合せに相当する。実施例12の加速度センサを用いた処理は、主に端末装置16のユーザが端末装置16を携帯して歩行している状態、あるいは腰部のホルダー等に端末装置16を入れて作業している状態などの検出に適していると言える。実施例13の角速度センサを用いた処理では、主に端末装置16のユーザが端末装置16を手に持って操作している状態の検出に適していると言える。
【0252】
本実施例では端末装置16は、実施例12で説明した加速度スコアAと、実施例13で説明した角速度スコアVをそれぞれ算出する。そして、(式26)を用いて総合スコアOを算出する。
総合スコアO = α×加速度スコアA + β×角速度スコアV (式26)
ここで、α、βはそれぞれ0より大きな所定値(係数)である。α、βの値は同じであってもよいし、異なっていてもよい。総合スコアOも通信容易性指標であるといえる。端末装置16は総合スコアOが所定値TOよりも大きいか否かを判定し、発信方法を決定する。
【0253】
本実施例の端末装置16内部のブロック図、管理装置12のブロック図、及び端末装置16センサテーブルの構成は実施例12と同じである。また、端末装置16のセンサ部50は加速度センサおよびジャイロセンサにより構成される。本実施例において、端末装置16はセンサ部50からセンサ部50からX軸、Y軸、Z軸それぞれの加速度、及びX軸、Y軸、Z軸それぞれの角速度の数値を取得し、管理装置12へ加速度情報パケットおよび角速度情報パケットを送信する。管理装置12はセンサ情報テーブル380に加速度情報パケットおよび角速度情報パケットを記録する。
【0254】
管理装置12の制御部338は、
図48及び
図51のフローチャートを同時に実行し、
図48のS3260までの各ステップと、
図51のS3460までの各ステップを実行する。つまり、
図48のS3260で加速度スコアAを計算し、
図51のS3460で角速度スコアVを計算する。その後、S3260に続くS3265(不図示)において、制御部338は(式26)を用いて総合スコアOを計算する。その後、S3270に相当するS3270A(不図示)において、総合スコアOが所定値TO(例えば5)より大きいか否かを判定する。総合スコアOが所定値TOより大きい場合(S3270A:Yes)、S3280に進む。総合スコアOが所定値TO以下の場合(S3270A:No)、S3310に進む。その後の処理は、
図48のフローチャートと同じである。管理装置12は、発信先の端末装置16の加速度が大きいほど、かつ角速度が大きいほど、高い値となる通信容易性指標を算出する。
【0255】
また、実施例12で説明したのと同様に、総合スコアに関する2つの以上のしきい値を用いて、通信モードを選択してもよい。また更に、総合スコアをもとに、総合スコアと非線形の関係にある通信容易性指標を算出してもよい。本実施例によれば、加速度センサ、ジャイロセンサの検出結果の両方を用いることにより、端末装置16の状態をより精度よく予測する事が可能であり、より適切に通信モードを決定する事ができる。
【0256】
(実施例15)
実施例12~実施例14では、発信先端末装置16の加速度および角速度の状態により発信方法を自動で切り替える処理を説明した。本実施例では、発信先端末装置16の周囲の明るさの状態により発信方法を自動で切り替える処理について説明する。つまり本実施例では、端末装置16に関する情報として、端末装置16の周囲の照度を用いる。
【0257】
本実施例の端末装置16内部のブロック図、管理装置12のブロック図は実施例12と同じである。また、端末装置16のセンサ部50は照度センサと加速度センサを含む。なお、センサ部50が角速度センサを含んでいてもよい。端末装置16の制御部38は所定の周期(例えば10秒)で計時部32から現在の時刻を取得し、センサ部50から端末装置16の周囲の照度の数値を取得する。照度の単位は本実施では「lx」(ルクス)とする。制御部38は計時部32から取得した現時刻と、センサ部50から取得した照度の数値をパケット化し、通信部34を通じて管理装置12へ送信する。本実施例では上記パケットを照度情報パケットと呼ぶ。照度情報パケットは、
図44に示す加速度情報パケットにおけるX軸、Y軸、Z軸の加速度の代わりに照度値を含む。照度値は照度センサで取得した数値である。なお、端末装置16は所定時間(例えば30秒間)の照度の平均値や中央値を算出し、それを照度値情報パケットに入れてもよい。端末装置16から管理装置12へ所定の周期で上記の照度情報パケットが送信され、管理装置12の記憶部340内のセンサ情報テーブル380に記録される。
【0258】
図52は、本実施例における管理装置12の記憶部340内のセンサ情報テーブル380の構成例である。照度値は照度情報パケットから取得された値であり、それ以外のフィールドは、実施例12のセンサ情報テーブル380と同様である。また、各端末装置16のIDは
図46と同様である。照度情報パケットを受信した際のテーブルの更新、レコードの追加、及び検出日と検出時刻に関する処理は実施例12における加速度情報パケットを受信した際の処理と同様である。
【0259】
次に、本実施例の管理装置12における通信モード選択処理の詳細を説明する。本実施例の処理は、実施例12の
図48のフローチャートのステップS3270にて、Yesと判定された後、ステップS3280に遷移する前のステップS3275(不図示)にて実行される。あるいは実施例13の
図51のフローチャートのS3470:Yesの後に、S3275の処理を実行してもよい。
【0260】
図53は、ステップS3275の詳細を示すフローチャートである。S3600において、制御部338は記憶部340のセンサ情報テーブル380から、発信先端末装置16のレコードRを取得する。つまり、制御部338はレコードR内の検出日、検出時刻、照度値Lを取得する。レコードRが存在しない場合、その旨を示すNULLが取得される。その後S3610に進む。S3610において、制御部338はレコードRが存在するか否かを判定する。レコードRが存在する場合(S3610:Yes)は、S3620に進む。レコードRが存在しない場合(S3610:No)は、
図48のフローチャートのS3280に進む。
【0261】
S3620において、制御部338は現時刻CTとレコードR内の検出日、検出時刻との差分値(時間差)を計算し、差分値が所定値PT(例えば10分)より小さいか否かを判定する。差分値が所定時間PTより小さい場合(S3620:Yes)は、S3630に進む。差分値が所定時間PT以上の場合(S3620:No)は、
図48のフローチャートのS3280に進む。S3630において、制御部338は発信先端末装置16の照度値Lが所定値PL(例えば100)より小さいか否かを判定する。照度値Lが所定値PLより小さい場合(S3630:Yes)は、
図48のフローチャートのS3310に進む。照度値Lが所定値PL以上の場合(S3630:No)は、
図48のフローチャートのS3280に進む。以上がステップS3275の処理の詳細の説明である。
【0262】
上記の処理は、端末装置16の周囲の照度が所定値以下の場合、その端末装置16はユーザのカバンの中にしまわれている、あるいはポケットの中に入っている状態で有る事が予測されることから、通信モードをINVITE(手動応答)に切り替える処理となっている。これは、端末装置16の筐体に所定値以上の加速度が発生しており、直ちに通話を開始しても問題がないという判断が行われた端末装置16においても、端末装置16自体が鞄やポケット内に存在していた場合、結果的にユーザが通話を聞き逃す可能性が高いという知見に基づく処理となる。本実施例では端末装置16の加速度に関する状態の他、端末装置16の周囲の照度を参照することにより、より高精度に通信モードを決定する事ができる。
【0263】
次に
図52の具体例を用いて通信モード選択処理を具体的に説明する。以下の説明では、現時刻CTが「10:20:00」であり、所定時間PTは10分であり、所定値PLは「100」であるものとする。
図52において、現時刻と検出時刻の差分値が所定時間PTより小さい端末装置16、つまり、検出時刻が「10:10:00」より後の時刻であり、且つ照度値Lが所定値PL以上の端末装置16は、第2端末装置16b、第3端末装置16c、第5端末装置16e、第7端末装置16g、第9端末装置16iとなる。一方、実施例12の
図46の例では、第1端末装置16a、第3端末装置16c、第7端末装置16g、第10端末装置16jが自動で通常発信に切り替えられると説明した。本実施例の場合、自動で通常発信に切り替えられる端末装置16は、第3端末装置16cおよび第7端末装置16gとなり、第1端末装置16aおよび第10端末装置16jは周囲の照度が低い、すなわち鞄やポケットの中に存在していると予測される為、自動でINVITE(自動応答)に切り替えられる対象から除外される。端末装置16の周囲の照度が所定値以下の場合に送信方法をINVITE(手動応答)に自動的に切り替える事により、受信側での聞き逃しにより通話が無駄になる事を未然に防ぐ事が出来る。
【0264】
なお、加速度スコアまたは角速度スコアと、照度情報とを組み合わせて総合スコアを算出し、総合スコアをもとに通信モードを選択してもよい。また、加速度スコアおよび角速度スコアを用いずに、照度情報のみで通信モードを選択してもよい。例えば、照度値が所定のしきい値よりも低い(暗い)場合には、端末装置16が鞄やポケットの中に存在している可能性、あるいは端末装置16が無人の部屋に置かれている可能性、あるいはユーザが就寝中である可能性が高いため、RBT発信を選択するようにしてもよい。本実施例では、照度情報をもとに通信容易性指標を算出している。つまり、管理装置12は、発信先の端末装置16の照度が高いほど、高い値となる通信容易性指標を算出するといえる。
【0265】
また、実施例12で説明したのと同様に、照度値に関する2つの以上のしきい値を用いて、通信モードを選択してもよい。また更に、照度値と非線形の関係にある通信容易性指標を算出してもよい。また、照度情報をもとに総合スコアを算出し、実施例12で説明したのと同様に、総合スコアに関する2つの以上のしきい値を用いて、通信モードを選択してもよい。例えば、第1しきい値と、第1しきい値よりも大きい第2しきい値を用意し、照度値が第2しきい値以上である場合(照度が非常に高い場合)、ユーザは屋内ではなく、屋外で活動中と推測される。このため、ユーザが通話に集中できない可能性が高いと判定し第1通信モードを選択してもよい。また更に、総合スコアをもとに、総合スコアと非線形の関係にある通信容易性指標を算出してもよい。
【0266】
(実施例16)
本実施例では、加速度をもとに端末装置16のより詳細な移動状況を判定し、それをもとに管理装置12にて通信モードを選択する。具体的には、加速度スコアAが所定値より大きい場合に、端末装置16が低速で移動しているか、高速で移動しているかを判定し、それに応じて通信モードを選択する。
【0267】
本実施例では、実施例12と同様に、端末装置16は所定の周期でセンサ部50から加速度を取得する。その際に、端末装置16のセンサ部50が所定値以上の加速度を検出した場合、実施例12の加速度情報パケットに加えて、「加速度連続パケット(以下、連続パケットとも呼ぶ)」を管理装置12に送信する。例えば、X軸、Y軸、Z軸の少なくとも1つの加速度の絶対値が所定値以上となった場合、端末装置16は、その後の所定時間(例えば10秒間)に渡って、より短い周期(例えば1秒間隔)で加速度を計測したデータを送信する。端末装置16は管理装置12に対して、1秒ごとに10個のデータを送信してもよいし、10個のデータをまとめて1回送信してもよい。加速度連続パケットの構成例を
図54に示す。本図に示す例は10個の加速度データをまとめて送信する場合の構成例である。端末ID、検出日時、データ番号、X軸の加速度、Y軸の加速度、Z軸の加速度で構成される。検出日時は、ミリ秒単位など時間分解能をより細かくしても良い。データ番号は、連続パケットの総数と何番目のデータであるかを示す情報である。例えば「1/10」は、10個の連続パケットの中の1番目のデータであることを示す。連続パケットの加速度は絶対値ではなく、正負の符号付き加速度である。
【0268】
管理装置12は、連続パケットを受信すると、記憶部340のセンサ連続情報テーブル(以下、連続テーブルとも呼ぶ)に連続データとして記録する。例えば、1つの端末装置16から10個のデータで構成される連続パケットを受信した場合、10個のデータ全てを連続テーブルに記録する。別のタイミングで連続パケットを受信すると、新しい連続パケットが追加記録される。また、検出時刻が所定時刻より古い連続データ(例えば、1分以上経過したデータ)は連続テーブルから削除される。
【0269】
管理装置12の制御部338は、実施例12の
図48のフローチャートと同様な処理を実行する。ただし、ステップS3270でYesと判定され後、ステップS3280に遷移する前にステップS3277(不図示)を実行する。
【0270】
ステップS3277の詳細処理を
図55のフローチャートに示す。S3900において、制御部338は、記憶部340の連続テーブルから発信先端末装置16の連続データCを取得する。例えば、10個の連続データが存在する場合、その全てを取得する。連続データCが存在しない場合、その旨を示すNULLが取得される。その後S3910に進む。S3910において、制御部338は、連続データCが存在するか否かを判定する。連続データCが存在する場合(S3910:Yes)は、S3920に進む。連続データCが存在しない場合(S3910:No)は、
図48のフローチャートのS3280に進む。
【0271】
S3920において、制御部338は、現時刻(現在日時)CTと連続データの検出日時との差分値(時間差)を計算し、差分値が所定値QT(例えば10分)より小さいか否かを判定する。連続データの検出日時は、例えば、連続データの中の最も古い日時を用いればよいが、これに限定されるものではない。連続データの中の最も新しい日時を用いてもよいし、連続データの日時の平均値を用いてもよい。差分値がQTより小さい場合(S3920:Yes)は、S3930に進む。差分値がQT以上の場合(S3920:No)は、
図48のフローチャートのS3280に進む。
【0272】
S3930において、制御部338は、連続データをもとに、端末装置16の速度変化量ΔVを算出する。具体的には、(式27)~(式29)のいずれかの式に従って、速度変化量ΔVを算出する。ここで、Lは連続データの個数であり、例えばL=10である。Kx[i]は、X軸加速度のi番目のデータであり、Ky[i]は、Y軸加速度のi番目のデータであり、Kz[i]は、Z軸加速度のi番目のデータである。上述したように、連続データの加速度は正負の符号付きであり、Σ演算は、正負の符号付きで行う。(式27)~(式29)から明らかなように、速度変化量ΔVは0以上の値となる。
【数7】
【0273】
速度変化量ΔVは、連続データの期間における端末装置16の速度の変化(速度変化の絶対値)を示す。例えば、最初の検出日時と最後の検出日時との時間差が10秒間であり、この10秒間において、端末装置16の速度が20km/hから30km/hに変化した場合、速度変化量ΔVは10km/hとなる。つまり、端末装置16の速度そのものは算出できないが、所定の期間(連続データの期間)において、端末装置16の速度がΔVだけ速くなった、あるいはΔVだけ遅くなったことが分かる。
【0274】
S3940において、制御部338は、速度変化量ΔVが所定値(しきい値)TGより大きいか否かを判定する。速度変化量ΔVがTGより大きい場合(S3940:Yes)、
図48のフローチャートのS3310に進む。速度変化量ΔVがTG以下である場合(S3940:No)、
図48のフローチャートのS3280に進む。
【0275】
速度変化量ΔVがTGより大きい場合、所定期間において、端末装置16の速度がTG以上速くなった、あるいはTG以上遅くなったことになる。つまり、端末装置16は少なくともTG以上の速度を出すことが可能な移動手段で移動しているといえる。例えば、しきい値TGを8km/hとすると、端末装置16は少なくとも8km/h以上の速度を出すことが可能な移動手段、例えば鉄道、自動車、自転車などで移動していると推測でき、徒歩による移動の可能性は非常に低くなる。つまり、このようにTGを適切な値に設定することにより、S3940:Noの場合、端末装置16のユーザは徒歩で移動している可能性が高く、S3940:Yesの場合、端末装置16のユーザは徒歩よりも高速な移動手段で移動している可能性が高いと判定できる。例えば、移動手段が鉄道、バスなどの公共交通機関である場合、周囲の騒音が大きかったり、発信先端末装置16の周囲に第三者がいる可能性が高いため、通常発信よりもRBT発信が望ましい。また、自動車や自転車での移動中においても、ユーザが運転に集中していて通話を聞き逃す可能性がある他、ユーザの注意が不意に通話に向けられることにより、運転が不注意になる危険性があるため、通常発信よりもRBT発信が望ましい。このため、徒歩による移動の可能性が低い場合(S3940:Yes)は、加速度スコアが所定値TA以下である場合と同等に扱って、RBT発信を選択する。一方、徒歩による移動の可能性が高い場合(S3940:No)は、移動手段により発生する騒音は小さく、ユーザが通話に集中することによる危険性も少なく、ユーザが通話内容を認識し易いと推定されるため、通常発信を選択する。また、連続データCが存在しない場合(S3910:No)または連続データCが古い場合(S3920:No)には、連続データCを使った処理を行わず、加速度スコアAが大きいことにより、INVITE(自動応答)を選択する。
【0276】
(実施例17)
これまでの実施例では、通話処理が二つの端末装置16間でのみで行われる事(個別通話)を前提として説明したが、本実施例では1つの端末装置16が2つ以上の端末装置16に対して同報配信を行うグループ呼出(グループ通信)を想定する。つまり、1対多のグループ通信を行うために、端末装置16のグループが形成されている。なお、本実施例の端末装置16内部のブロック図、管理装置12のブロック図、及びセンサ情報テーブル380の構成は実施例12と同じである。
【0277】
本実施例では、管理装置12の制御部338は記憶部340のセンサ情報テーブル380から、グループに所属する全端末装置16のレコードRを取得し、検出時刻と現時刻CTの差分が所定時間PTより小さく、且つ加速度スコアAが所定値PAより大きい端末装置16の合計数Tを集計する。合計数Tが所定数N(例としてグループに所属する送信対象端末装置16の半数)より大きい場合、すなわちグループに所属している端末装置16の使用者の大半が端末装置16を持ち歩いている、あるいは端末装置16を操作している可能性が高い場合、管理装置12はグループに所属する全ての端末装置16へINVITE(自動応答)を送信する。これによりグループ内において、RBT発信と比較してより迅速に通話を開始する事が可能となり、より迅速に情報を伝えることが可能になる。
【0278】
なお上記では説明を簡潔にする為、「合計数Tがグループに所属する送信対象端末装置16の半数より大きい」としたが、この条件に限定されるものではない。例えば、「合計数Tが1以上」、「合計数Tがグループに所属する送信対象端末装置16の総数の80%以上」、「合計数Tがグループに所属する送信対象端末装置16の総数と同じ」といった条件を用いてもよい。また、グループ毎に個別の条件を設定してもよい。例えば、グループAでは、「送信対象端末装置16の総数の30%以上」という条件を用い、グループBでは「送信対象端末装置16の総数の80%以上」という条件を用いてもよい。またグループ呼出に限らず、一斉呼出時、すなわち無線通信システムの全端末装置16に対して発信を行う場合においても本実施例と同様な処理をおこなってもよい。例えば、「無線通信システムにおける全端末装置16の80%以上」という条件を用いてもよい。
【0279】
図56は本実施例の端末装置16のフローチャートとなる。制御部38は端末装置16からの通話開始要求を監視する。(S3700)。通話ボタン押下を検出していない場合(S3700:No)は、S3700に戻って処理を繰り返す。通話ボタン押下を検出した場合(S3700:Yes)は、S3710に進む。S3710において、制御部38は発信方法Mの取得処理を実行する。その後S3720に進む。S3720において、制御部38は計時部32より現時刻CTを取得する。その後S3730に進む。S3730において、制御部38は記憶部40のセンサ情報テーブル380から、発信先グループに所属している全端末装置16のレコードRを全て取得する。この時リストLを初期化後、各端末装置16のレコードRを記録する。また、合計数Tの値も初期化する。その後S3740に進む。S3740において、制御部38は所定数Nを設定する。所定数Nは上述した様に、グループに所属する全端末装置16数に対する割合をもとに算出された値でもよく、また定数でもよい。その後S3750に進む。
【0280】
S3750において、制御部38はリストLから任意の端末装置16のレコードRを取得する。この時、取得した端末装置16のレコードRの情報はリストLから削除される。その後S3760に進む。S3760において、制御部38は現時刻CTとレコードR内の検出日、検出時刻との差分値(時間差)を計算し、差分値が所定値PTより小さいか否かを判定する。差分値が所定時間PTより小さい場合(S3760:Yes)は、S3770に進む。差分値が所定時間PT以上の場合(S3760:No)は、S3800に進む。S3770において、制御部38はレコードR内のX軸加速度、Y軸加速度、Z軸加速度から加速度スコアAを計算する。その後S3780に進む。
【0281】
S3780において、制御部38は加速度スコアAが所定値TAより大きいか否かを判定する。加速度スコアAが所定値TAより大きい場合(S3780:Yes)は、S3790に進む。加速度スコアAが所定値TA以下の場合(S3780:No)は、S3800に進む。S3790において、制御部38は合計数Tを「1」インクリメントする。その後S3800に進む。S3800において、制御部38はリストL内に端末装置16のレコードRが存在するか否かを判定する。リストL内に端末装置16のレコードRが存在しない場合(S3800:No)は、S3810に進む。リストL内に端末装置16のレコードRが存在する場合(S3800:Yes)は、S3750に戻って処理を繰り返す。S3810において、制御部38は合計数Tと、S3740にて設定した所定数Nを比較する。合計数Tが所定数Nより大きい場合(S3810:Yes)は、S3820に進む。合計数Tが所定数Nより小さい場合(S3810:No)は、S3850に進む。
【0282】
S3820において、制御部38はS3710で取得した変数MがINVITE(手動応答)であるか否かを判定する。発信方法がINVITE(手動応答)の場合(S3820:Yes)は、S3840に進む。発信方法がINVITE(自動応答)の場合(S3820:No)は、S3830に進む。S3830において、制御部38は発信先端末装置16へINVITE(自動応答)を送信する。その後処理を終了する。S3840において、制御部38は発信方法を変更し、発信先端末装置16へINVITE(自動応答)を送信する。その後処理を終了する。S3850において、制御部38はS3710で取得した変数MがINVITE(自動応答)であるか否かを判定する。発信方法がINVITE(自動応答)の場合(S3850:Yes)は、S3860に進む。発信方法がINVITE(手動応答)の場合(S3850:No)は、S3870に進む。S3860において、制御部38は発信方法を変更し、発信先端末装置16へINVITE(手動応答)を送信する。その後処理を終了する。S3870において、制御部38は発信先端末装置16へINVITE(手動応答)を送信する。その後処理を終了する。
【0283】
本実施例によれば、グループ通信を実行する際に、他の端末装置16からの通信(着信)を認識できる可能性が高い端末装置16の数が相対的に多い場合には、通常発信を選択する。このため、グループ内に迅速な情報伝達がなされる。仮に、他の端末装置16からの通信(着信)を認識できないユーザが存在したとしても、後ほど当該ユーザがグループ内の他のメンバー(通信内容を把握したメンバー)から情報を入手できる可能性が高いとみなして、迅速な情報伝達を優先する。一方、グループ通信を実行する際に、他の端末装置16からの通信(着信)を認識できる可能性が高い端末装置16の数が相対的に少ない場合には、RBT発信を選択する。このため、発信端末のユーザの発話が無駄になることを防ぐことができる。
【0284】
なお、本実施例では、端末装置に関する情報として加速度を用いる処理を説明したが、これに限定されるものではない。上述の各実施例における通信容易性指標を用いて、グループ通信における通信モードを選択してもよい。例えば、端末装置に関する情報として、端末装置の周囲の騒音に関する情報を用いて、グループ通信における通信モードを選択してもよい。また、発信先(発信対象)のグループは1つに限らず、複数であってもよい。その場合、発信対象となる1つ以上のグループに属する端末装置の数に応じて、通信モードを選択するためのしきい値を設定してもよい。例えば、発信対象となる3つのグループに属する端末装置の総数の70%以上の通信容易性指標が高いと判定された場合に、INVITE(自動応答)、つまり第2通信モードを選択してもよい。また、発信対象(通信対象)は所定のグループに属する端末装置に限らず、通信システム内の全ての端末装置であってもよい。つまり、グループ通信に限らず同報通信であってもよい。その場合、例えば、通信システム内の全ての端末装置の総数に応じて、通信モードを選択するためのしきい値を設定してもよい。
【0285】
また、上述の各実施例においては、管理装置12が通信容易性指標を算出しているが、これに限定されるものではない。例えば、各端末装置16が自端末装置に関する情報(例えば、騒音量や加速度など)もとに通信容易性指標を算出し、その通信容易性指標を管理装置12に送信してもよい。各端末装置16は、通信容易性指標が変化したタイミングあるいは周期的に通信容易性指標を送信すればよい。管理装置12は、受信した各端末装置の通信容易性指標を端末装置ごとに記憶部に記憶する。管理装置12は、通信モード選択処理において、記憶部から発信先の端末装置の通信容易性指標を読み出し、処理に用いてもよい。この場合、管理装置12は、通信容易性指標の算出処理を省略することができる。
【0286】
また、実施例12~実施例17で説明した通信容易性指標を管理装置12が各端末装置16に送信(配信)してもよい。端末装置16は、受信した通信容易性指標をもとに通信モードを選択してもよい。例えば、端末装置16は、他の端末装置の加速度や角速度に基づく通信容易性指標を管理装置12から受信し、他の端末装置に対して発信する際の通信モード選択処理に用いてもよい。あるいは端末装置16は、管理装置12ではなく他の端末装置16から直接通信容易性指標を受信し、それをもとに他の端末装置16に対して発信する際の通信モードを選択してもよい。
【0287】
また、実施例12~実施例17において、管理装置12は、通信容易性指標に応じて、発信元の端末装置16から受信した通信要求データに含まれる通信モードを変更し、発信先の端末装置16に送信する。この際に、第1通信モードを第2通信モードに変更する処理と、第2通信モードを第1通信モードに変更する処理を行うが、実施例1~実施例11における端末装置16あるいは管理装置12が同様の処理を行ってもよい。すなわち、端末装置16あるいは管理装置12は、第2通信モードを第1通信モードに変更するだけなく、第1通信モードを第2通信モードに変更してもよい。例えば、発信元の端末装置16のユーザによって第1通信モードが指定された場合であっても、発信先の端末装置16の通信容易性指標が所定条件よりも高い場合には、第1通信モードを第2通信モードに変更する処理を行ってもよい。
【0288】
実施例1から実施例17の任意の組合せも有効である。本変形例によれば、実施例1から実施例17の任意の組合せによる効果を得ることができる。
【0289】
本発明は、次のような項目により特定されてもよい。
[項目1-1]
複数の端末装置を管理する管理装置であって、
前記複数の端末装置に関する情報をもとに、端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を前記複数の端末装置のそれぞれについて算出する指標算出部と、
前記指標算出部において算出した通信容易性指標を前記複数の端末装置のそれぞれに送信する送信部と、
を備え、
前記通信容易性指標は、端末装置のユーザによる所定の操作が行われた後に通信が開始される第1通信モードと、当該端末装置のユーザによる所定の操作が行われなくても通信が開始される第2通信モードとを、前記通信容易性指標を受信した端末装置に選択させるための情報であることを特徴とする管理装置。
【0290】
[項目1-2]
前記指標算出部は、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数、および、端末装置が発信した時刻からの経過時間のうちの少なくとも一方をもとに、通信容易性指標を算出することを特徴とする項目1-1に記載の管理装置。
【0291】
[項目1-3]
前記指標算出部は、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数が多くなるほど、あるいは、端末装置が発信した時刻からの経過時間が長くなるほど、低い値になる通信容易性指標を算出することを特徴とする項目1-2に記載の管理装置。
【0292】
[項目1-4]
ユーザの活動状態と比較すべきしきい値を各端末装置から受信する受信部をさらに備え、
前記送信部は、前記複数の端末装置のそれぞれに対するしきい値がまとめられたテーブルを前記複数の端末装置のそれぞれに送信することを特徴とする項目1-2または1-3に記載の管理装置。
【0293】
[項目1-5]
前記指標算出部において算出される通信容易性指標では、時間帯毎に平均化されたユーザの活動状態が示されることを特徴とする項目1-2に記載の管理装置。
【0294】
[項目1-6]
端末装置の周囲の音の大きさに関する情報を受信する受信部をさらに備え、
前記指標算出部において算出される当該端末装置に関する通信容易性指標は、前記音の大きさが大きいほど、低い値となることを特徴とする項目1-1に記載の管理装置。
【0295】
[項目1-7]
前記指標算出部は、一の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報と、前記一の端末装置とは別の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報とをもとに、前記一の端末装置に関する通信容易性指標を算出することを特徴とする項目1-6に記載の管理装置。
【0296】
[項目1-8]
前記指標算出部は、所定の期間にわたる前記複数の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報をもとに、音の大きさがしきい値以上の位置が示された高騒音マップを生成し、高騒音マップをもとに、端末装置を使用するユーザが通信を認識する容易さの程度を算出することを特徴とする項目1-6に記載の管理装置。
【0297】
[項目1-9]
前記指標算出部は、時間帯毎に平均化された音の大きさに関する情報をもとに、端末装置を使用するユーザが通信を認識する容易さの程度を算出することを特徴とする項目1-6に記載の管理装置。
【0298】
[項目1-10]
端末装置の位置情報または移動速度に関する情報を受信する受信部をさらに備え、
前記指標算出部は、前記受信部で受信した位置情報または移動速度が所定の条件に合致するか否かに基づいて、通信容易性指標を算出することを特徴とする項目1-1に記載の管理装置。
【0299】
[項目1-11]
前記送信部において送信される通信容易性指標は、その値が所定値未満である場合に、通信要求を送信する端末装置に前記第1通信モードを選択させるための情報であることを特徴とする項目1-1から1-10のいずれか1項に記載の管理装置。
【0300】
[項目1-12]
前記指標算出部は、地図情報も使用して、端末装置を使用するユーザが通信を認識する容易さの程度を算出することを特徴とする項目1-1から1-11のいずれか1項に記載の管理装置。
【0301】
[項目1-13]
他の端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を受信する受信部と、
前記受信部において受信した通信容易性指標をもとに、前記他の端末装置において所定の操作が行われた後に通信が開始される第1通信モードと、前記他の端末装置において所定の操作が行われない場合であっても通信が開始される第2通信モードのいずれかの通信モードを選択する制御部と、
前記制御部において選択した通信モードにしたがって、前記他の端末装置に信号を発信する送信部と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【0302】
[項目1-14]
前記制御部は、前記受信部で受信した通信容易性指標が所定値未満である場合に前記第1通信モードを選択することを特徴とする項目1-13に記載の端末装置。
【0303】
[項目1-15]
前記受信部は、前記他の端末装置に対応するしきい値をさらに受信し、
前記制御部は、前記他の端末装置に対応する通信容易性指標が、前記受信部において受信した前記他の端末装置に対応するしきい値未満である場合に、前記第1通信モードを選択することを特徴とする項目1-13または1-14に記載の端末装置。
【0304】
[項目1-16]
複数の端末装置を管理するコンピュータに、
前記複数の端末装置に関する情報をもとに、端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を前記複数の端末装置のそれぞれについて算出するステップと、
前記算出した通信容易性指標を前記複数の端末装置のそれぞれに送信する送信ステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記通信容易性指標は、当該端末装置のユーザによる所定の操作が行われた後に通信が開始される第1通信モードと、当該端末装置のユーザによる所定の操作が行われなくても通信が開始される第2通信モードとを、前記通信容易性指標を受信した端末装置に選択させるための情報であることを特徴とするプログラム。
【0305】
[項目1-17]
コンピュータに、
他の端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を受信するステップと、
前記受信した通信容易性指標をもとに、前記他の端末装置において所定の操作が行われた後に通信が開始される第1通信モードと、前記他の端末装置において所定の操作が行われない場合であっても通信が開始される第2通信モードとを選択するステップと、
前記選択した通信モードにしたがって、前記他の端末装置に信号を発信するステップと、
を実行させるプログラム。
【0306】
[項目2-1]
端末装置を管理する管理装置であって、
端末装置に関する情報を用いて、端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を端末装置に対して算出する指標算出部と、
発信元である第1の端末装置から、発信先に第2の端末装置が指定された第1通信モードまたは第2通信モードの通信要求データを受信する受信部と、
前記受信部が前記第2通信モードの通信要求データを受信し、かつ前記第2の端末装置の通信容易性指標が所定条件を満たす場合に、前記第1通信モードの通信要求データを前記第2の端末装置に送信する送信部と、
を備え、
前記第1通信モードは、前記第2の端末装置において所定の操作が行われた後に前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであり、前記第2通信モードは、前記第2の端末装置において所定の操作が行われなくても前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであることを特徴とする管理装置。
【0307】
[項目2-2]
前記指標算出部は、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数が多くなるほど、あるいは、端末装置が発信した時刻からの経過時間が長くなるほど、低い値になる通信容易性指標を算出することを特徴とする項目2-1に記載の管理装置。
【0308】
[項目2-3]
前記指標算出部において算出される通信容易性指標は、端末装置が発信した以降に当該端末装置が受信した回数が多くなるほど、あるいは端末装置が発信した時刻からの経過時間が長くなるほど、低い値になることを特徴とする項目2-1または2-2に記載の管理装置。
【0309】
[項目2-4]
前記受信部は、前記第2の端末装置に対する通信容易性指標に関するしきい値をさらに受信し、
前記送信部は、前記第2の端末装置の通信容易性指標が前記しきい値未満である場合に、前記所定条件を満たすと判定することを特徴とする項目2-2または2-3に記載の管理装置。
【0310】
[項目2-5]
前記指標算出部において用いられる端末装置に関する情報は、端末装置の周囲の音の大きさに関する情報であり、
前記指標算出部において算出される通信容易性指標は、前記音の大きさが大きいほど、低い値となることを特徴とする項目2-1に記載の管理装置。
【0311】
[項目2-6]
前記指標算出部は、一の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報と、前記一の端末装置とは別の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報とをもとに、前記一の端末装置に関する通信容易性指標を算出することを特徴とする項目2-5に記載の管理装置。
【0312】
[項目2-7]
前記指標算出部は、所定の期間にわたる前記複数の端末装置の周囲の音の大きさに関する情報をもとに、音の大きさがしきい値以上の位置が示された高騒音マップを生成し、高騒音マップをもとに、端末装置を使用するユーザによる通信の認識し易さの度合いを算出することを特徴とする項目2-6に記載の管理装置。
【0313】
[項目2-8]
前記指標算出部は、所定の期間において計測された端末装置の周囲の音の大きさを、複数の時間帯毎に平均化した情報を導出し、前記導出した情報をもとに、前記複数の時間帯毎に通信容易性指標を算出し、
前記送信部は、前記複数の時間帯の中から前記受信部が通信要求データを受信した時刻に対応する時間帯を特定し、前記特定した時間帯に対応する通信容易性指標が前記所定条件を満たすか否かを判定することを特徴とする項目2-5または2-6に記載の管理装置。
【0314】
[項目2-9]
前記指標算出部は、前記端末装置に関する情報として、端末装置の位置情報または移動速度に関する情報を用い、端末装置の位置情報または移動速度が所定の条件を満たす場合に、所定値よりも低い値の通信容易性指標を算出することを特徴とする項目2-1に記載の管理装置。
【0315】
[項目2-10]
前記指標算出部は、所定の期間において計測された端末装置の位置情報または移動速度を、複数の時間帯毎に平均化した情報を導出し、前記導出した情報をもとに、前記複数の時間帯毎に通信容易性指標を算出し、
前記送信部は、前記複数の時間帯の中から前記受信部が通信要求データを受信した時刻に対応する時間帯を特定し、前記特定した時間帯に対応する通信容易性指標が前記所定条件を満たすか否かを判定することを特徴とする項目2-9に記載の管理装置。
【0316】
[項目2-11]
端末装置を管理するコンピュータに、
端末装置に関する情報を用いて、端末装置を使用するユーザが通信を認識する程度を示す通信容易性指標を端末装置に対して算出するステップと、
発信元である第1の端末装置から、発信先に第2の端末装置が指定された第1通信モードまたは第2通信モードの通信要求データを受信するステップと、
前記第2通信モードの通信要求データを受信し、かつ前記第2の端末装置の通信容易性指標が所定条件を満たす場合に、前記第1通信モードの通信要求データを前記第2の端末装置に送信するステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記第1通信モードは、前記第2の端末装置において所定の操作が行われた後に前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであり、前記第2通信モードは、前記第2の端末装置において所定の操作が行われなくても前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との間の通信が開始される通信モードであることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0317】
10 ネットワーク、 12 管理装置、 14 基地局装置、 16 端末装置、 30 入力部、 34 通信部、 36 表示部、 38 制御部、 40 記憶部、 60 設定テーブル、 64 活動状態率テーブル、 100 通信システム、 332 計時部、 334 通信部、 338 制御部、 340 記憶部、 350 指標算出部、 362 履歴テーブル、 364 活動状態率テーブル、 380 センサ情報テーブル。