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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6563 20140101AFI20240214BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240214BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240214BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240214BHJP
   H01M 10/635 20140101ALI20240214BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240214BHJP
   H01M 10/667 20140101ALI20240214BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20240214BHJP
   H01M 10/647 20140101ALN20240214BHJP
【FI】
H01M10/6563
H01M10/615
H01M10/613
H01M50/204 401D
H01M10/635
H01M10/6556
H01M10/667
H01M10/6571
H01M50/204 401Z
H01M10/647
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020020694
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021128821
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】栗田 大
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-225346(JP,A)
【文献】特開2007-323810(JP,A)
【文献】特開2008-189249(JP,A)
【文献】特開2008-052997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60-10/667
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルを収容する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、前記複数の電池セルからの電力供給により駆動される電動モータ及び前記電動モータにより回転する羽根車を有する循環送風機と、
前記電池セルの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって検出された前記電池セルの温度に応じて前記電動モータを制御して前記羽根車の回転に伴い前記筐体内に形成された空気通路に空気を循環させて空気と前記複数の電池セルとを熱交換させるモータ制御部と、を備え、
前記電動モータは、前記空気通路に配置され、
前記モータ制御部は、前記温度検出手段によって検出された前記電池セルの温度が閾値温度以下の暖機が必要な時に、前記電動モータの出力を連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で制御することにより、前記電動モータの発熱を増大させるとともに前記循環送風機による空気の循環量を増加させることで前記複数の電池セルとの熱交換を促すことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記モータ制御部は、前記暖機が必要な時に、前記電動モータの出力を、連続定格出力と、当該連続定格出力よりも大きくかつ短時間定格出力未満での出力とを繰り返すパルス制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記電動モータに電力を供給するインバータが前記空気通路に配置され、
前記暖機が必要な時に、連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で前記電動モータの出力を制御する際に前記インバータが発熱する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記電池セルを冷却するための空気通路、及び、当該冷却するための空気通路から分岐し前記電池セルを暖機するための空気通路に設けられた開閉部材と、
前記開閉部材を駆動して、暖機が必要な時に前記電動モータで発生する熱を前記電池セルに供給するとともに暖機が不要な時に前記電動モータで発生する熱を前記電池セルに供給しないようにするためのアクチュエータと、
を更に備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の電池パックにおいては、複数の電池セルが筐体に収容され、送風機により筐体の内部に複数の電池セルを加熱または冷却する流体を循環させる。筐体の内部に形成される流体の循環通路として、送風機から流出された流体が複数の電池セルと熱交換した後、送風機に吸入されて形成される一連の主流経路をなす循環通路を有する。筐体の内部において特定の発熱部品として、複数の電池セルに対する電流を制御可能な部品である、メインリレー、プリチャージリレー、プリチャージ抵抗、これらの各部品に接続されるバスバー、ケーブル等のうち、少なくとも一つが配置されている。特定の発熱部品は、循環通路から外れた場所であって電池セルよりも筐体を形成する壁寄りに設置されており、筐体の内部に存在する流体に接触して放熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-159032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示の電池パックにおいては、特定の発熱部品(メインリレー、プリチャージリレー、プリチャージ抵抗、バスバー、ケーブル)の発熱量は限定的で電池セルの暖機に時間がかかる。
【0005】
本発明の目的は、電池セルの暖機を早期に行うことができる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための電池パックは、複数の電池セルと、前記複数の電池セルを収容する筐体と、前記筐体の内部に配置され、前記複数の電池セルからの電力供給により駆動される電動モータ及び前記電動モータにより回転する羽根車を有する循環送風機と、前記電池セルの温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された前記電池セルの温度に応じて前記電動モータを制御して前記羽根車の回転に伴い前記筐体内に形成された空気通路に空気を循環させて空気と前記複数の電池セルとを熱交換させるモータ制御部と、を備え、前記電動モータは、前記空気通路に配置され、前記モータ制御部は、前記温度検出手段によって検出された前記電池セルの温度が閾値温度以下の暖機が必要な時に、前記電動モータの出力を連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で制御することを要旨とする。
【0007】
これによれば、電池セルの暖機時において循環送風機の電動モータの出力を連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で制御することにより、循環送風機の電動モータの発熱が増大して高い温度の空気を電池セルに供給できるとともに電池セルの放電に伴い発熱が増大する。また、循環送風機による空気の循環量が増加して電池セル付近の風速が増大する。これにより、電池セルの暖機を早期に行うことができる。
【0008】
また、電池パックにおいて、前記モータ制御部は、前記暖機が必要な時に、前記電動モータの出力を、連続定格出力と、当該連続定格出力よりも大きくかつ短時間定格出力未満での出力とを繰り返すパルス制御を行うとよい。
【0009】
また、電池パックにおいて、前記電動モータに電力を供給するインバータが前記空気通路に配置され、前記暖機が必要な時に、連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で前記電動モータの出力を制御する際に前記インバータが発熱するとよい。
【0010】
また、電池パックにおいて、前記電池セルを冷却するための空気通路、及び、当該冷却するための空気通路から分岐し前記電池セルを暖機するための空気通路に設けられた開閉部材と、前記開閉部材を駆動して、暖機が必要な時に前記電動モータで発生する熱を前記電池セルに供給するとともに暖機が不要な時に前記電動モータで発生する熱を前記電池セルに供給しないようにするためのアクチュエータと、を更に備えるとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電池セルの暖機を早期に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における電池パックの概略の平面図。
図2】電池パックの概略の平面図。
図3】電池パックの概略の平面図。
図4】電池パックの電気的構成を示すブロック図。
図5】モータ出力及び電池セルの温度の変化を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1図2図3には本実施形態における電池パック10の全体構成を示す。図4は、本実施形態における電池パック10のブロック図を示す。なお、図1図2図3において、水平面を、直交するX,Y方向で規定している。
【0014】
図1に示すように、電池パック10は、複数の電池セル20と、筐体30と、循環送風機としての循環ファン40と、温度検出手段としての電池温度センサ60(図4参照)と、モータ制御部としてのコントローラ70(図4参照)と、開閉部材90,91,92と、開閉部材アクチュエータ120,121,122(図4参照)を備える。筐体30は、熱伝導性に優れる材料、例えばアルミよりなる。
【0015】
図1に示すように、筐体30は、箱形をなし、直方体よりなり、すべての面が長方形で構成される六面体である。筐体30は、底板部31と、対向する一対の側板部32,33と、対向する一対の側板部34,35と、図示しない天板部とを有する。図1,2,3においては筐体30内部を説明するために天板部を省略している。側板部32,33は、X方向に延びている。側板部34,35は、Y方向に延びている。
【0016】
筐体30の内部における中央部分には、複数の電池セル20が収容されている。各電池セル20は直方体よりなり、すべての面が長方形で構成される六面体である。図1に示すように、複数の電池セル20は、2つの電池セル群21,22として分けられている。電池セル群21は、7つの電池セル20がX方向において離間し、かつ、互いの長辺同士が対向するようにして並設されている。電池セル群22は、7つの電池セル20がX方向において離間し、かつ、互いの長辺同士が対向するようにして並設されている。電池セル群21と電池セル群22とは、Y方向に離間して配置されている。
【0017】
複数の電池セル20は、直列接続されている。なお、複数の電池セル20は、並列接続、あるいは、直列接続した群と直列接続した群とが並列接続されていてもよい。
筐体30の内部におけるX方向での電池セル群21,22よりも左側には循環ファン40が配置されている。循環ファン40は、羽根車41と電動モータ42を有する。電動モータ42の出力軸42aに羽根車41が連結され、電動モータ42の出力軸42aが回転することにより羽根車41が回転する。羽根車41が電池セル群21,22に対向する位置に配置され、羽根車41に対し電動モータ42がX方向での左側に配置されている。
【0018】
電動モータ42は、複数の電池セル20からの電力供給により駆動される。電動モータ42により羽根車41が回転して羽根車41に電池セル収納室Rcの空気が吸引される。そして、複数の電池セル20からの電力供給に伴う電動モータ42の通電による羽根車41の回転に伴い複数の電池セル20を加熱または冷却する空気を筐体30の内部に循環させることができる。循環ファン40として多翼ファン(シロッコファン)が使用されており、X方向に吸引した空気を90°曲げてY方向に送出する。
【0019】
筐体30の内部に通路形成プレート80,81,82,83,84,85が配置されている。通路形成プレート80,81は、羽根車41の設置箇所からY方向に延びている。通路形成プレート80,81は離間して配置されており、Y方向に延びる空気通路50が形成されている。羽根車41の回転に伴う空気(排気)が空気通路50をY方向に送られる。
【0020】
通路形成プレート82は電池セル群22と側板部33との間においてX方向に延びている。通路形成プレート82と側板部33との間に、X方向に延びる空気通路51が形成されている。空気通路50と空気通路51が連通しており、羽根車41の回転に伴う空気(排気)が空気通路50を介して空気通路51においてX方向に送られる。その空気は側板部35により向きが変えられて電池セル収納室Rcに至る。
【0021】
通路形成プレート83は電池セル群21と側板部32との間においてX方向に延びている。通路形成プレート83と側板部32との間に、X方向に延びる空気通路52が形成されている。
【0022】
通路形成プレート84は、循環ファン40の羽根車41と電動モータ42とを区画するようにY方向に延びている。通路形成プレート84と側板部34との間に、Y方向に延びる空気通路53が形成されている。空気通路52と空気通路53とは連通している。
【0023】
通路形成プレート85は、通路形成プレート80の端部と側板部33との間においてX方向に延びている。通路形成プレート85と側板部33との間に、X方向に延びる空気通路54が形成されている。空気通路53と空気通路54が連通している。
【0024】
筐体30内において、通路形成プレート82と通路形成プレート83と通路形成プレート81と羽根車41とで電池セル収納室Rcが区間されている。
空気通路51と電池セル収納室Rcとは開閉部材90を介して連通している。開閉部材90は、回転可能に支持されており、図1に実線で示す開位置Aと、図1に仮想線で示す閉位置Bとに切り替えることができる。空気通路52と電池セル収納室Rcとは開閉部材91を介して連通している。開閉部材91は、回転可能に支持されており、図1に実線で示す閉位置Cと、図1に仮想線で示す開位置Dとに切り替えることができる。空気通路54には開閉部材92が配置されている。開閉部材92は、回転可能に支持されており、図1に実線で示す閉位置Eと、図1に仮想線で示す開位置Fとに切り替えることができる。
【0025】
空気通路52には電気部品100が配置されており、電気部品100で発生する熱と空気との熱交換が可能となっている。電気部品100には、後述するインバータ110(図4参照)の構成部品を含む。
【0026】
空気通路50,51,52,53,54は、筐体30の内部に形成され、循環ファン40による空気を複数の電池セル20と熱交換するためのものである。
図4において、電池温度センサ60は、電池セル20の温度を検出する。
【0027】
コントローラ70にはインバータ110を介して電動モータ42が接続されている。インバータ110は、直流を交流に変換して電動モータ42に電力を供給するためのものである。インバータ110には、直列接続された複数の電池セル20が接続されており、複数の電池セル20から直流電力が供給される。インバータ110はパワースイッチング素子111を有し、パワースイッチング素子111をオンオフ制御することにより直流電力を交流電力に変換することができる。
【0028】
コントローラ70は、インバータ110を介して、電池温度センサ60によって検出された電池セル20の温度に応じて電動モータ42を制御して、羽根車41の回転に伴い、図2に示すごとく電池セル20の冷却時に筐体30内に形成された空気通路50,51あるいは図3に示すごとく電池セル20の暖機時に筐体30内に形成された空気通路50,54,53,52に空気を循環させて電池セル収納室Rcにおいて空気と複数の電池セル20とを熱交換させることができる。つまり、筐体30の内部において冷却用の空気通路50,51から暖機用の空気通路54,53,52が分岐するとともに暖機用の空気通路54,53,52は電池セル収納室Rcまで延びて電池セル収納室Rcで開口している。
【0029】
図1に示すように、電動モータ42は、空気通路53に配置されている。
また、図4において、コントローラ70は、パワースイッチング素子111のデューティを調整することにより電動モータ42の出力を制御することができるようになっている。
【0030】
図4に示すように、コントローラ70には、開閉部材アクチュエータ120,121,122が接続されている。開閉部材アクチュエータ120,121,122は、例えばモータで構成される。コントローラ70は開閉部材アクチュエータ120を介して開閉部材90を開閉制御することができる。例えば、開閉部材アクチュエータ120としてのモータを正回転させて開閉部材90を開き、モータを逆回転させて開閉部材90を閉じることができる。コントローラ70は開閉部材アクチュエータ121を介して開閉部材91を開閉制御することができる。例えば、開閉部材アクチュエータ121としてのモータを正回転させて開閉部材91を開き、モータを逆回転させて開閉部材91を閉じることができる。コントローラ70は開閉部材アクチュエータ122を介して開閉部材92を開閉制御することができる。例えば、開閉部材アクチュエータ122としてのモータを正回転させて開閉部材92を開き、モータを逆回転させて開閉部材92を閉じることができる。
【0031】
図2において電池セル20を冷却する場合の空気の循環経路を矢印で示す。開閉部材90が開位置A、開閉部材91が閉位置C、開閉部材92が閉位置Eにされる。そして、循環ファン40から排出された空気は、空気通路50→空気通路51→電池セル収納室Rcの電池セル20を経て循環ファン40に戻される。
【0032】
図3において電池セル20を暖機する場合の空気の循環経路を矢印で示す。開閉部材90が閉位置B、開閉部材91が開位置D、開閉部材92が開位置Fにされる。そして、循環ファン40から排出された空気は、空気通路50→空気通路54→空気通路53→空気通路52→電池セル収納室Rcの電池セル20を経て循環ファン40に戻される。
【0033】
このように、開閉部材90,91,92は、電池セル20を冷却するための空気通路50,51、及び、当該冷却するための空気通路から分岐し電池セル20を暖機するための空気通路54,53,52に設けられている。コントローラ70により開閉部材アクチュエータ120,121,122を制御することにより開閉部材アクチュエータ120,121,122により開閉部材90,91,92を駆動して、暖機が必要な時に電動モータ42で発生する熱を電池セル20に供給するとともに暖機が不要な時に電動モータ42で発生する熱を電池セル20に供給しないようにすることができるようになっている。
【0034】
図3において、電動モータ42に電力を供給するインバータ110が空気通路52に配置されており、暖機が必要な時に、後述するように連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で電動モータ42の出力を制御する際にインバータ110が発熱する。
【0035】
次に、作用について説明する。
図5を用いて説明する。
図5において横軸に時間をとり、縦軸に電動モータ42の出力及び電池セル20の温度をとっている。電動モータ42の出力には連続定格出力及び短時間定格出力を有する。連続定格出力よりも短時間定格出力の方が大きな値である。
【0036】
コントローラ70は、電池温度センサ60によって検出された電池セル20の温度が閾値温度以下の暖機が必要な時に、詳しくは、電池セル20の温度が閾値温度以下で、かつ、低温T1が所定時間継続すると(t1~t2の期間)、t2~t3の期間において、電動モータ42の出力を連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で制御する。
【0037】
詳しくは、コントローラ70は、暖機が必要な時に、図5に示すように、電動モータ42の出力を、連続定格出力と、当該連続定格出力よりも大きくかつ短時間定格出力未満での出力とを繰り返すパルス制御を行う。即ち、t10~t11,t12~t13,t14~t15,t16~t17,t18~t19,t20~t21において出力を高くして短時間定格出力よりも若干低くし、t11~t12,t13~t14,t15~t16,t17~t18,t19~t20において出力を低くして連続定格出力とする。
【0038】
電池セル20の暖機のための電動モータ42の出力制御について言及する。
筐体30の内部に冷却用の循環ファン40が設置されており、循環ファンの電動モータ42には複数の電池セル20から電力が供給される。ここで、複数の電池セル20から電動モータ42への供給電力が大きすぎると、電動モータ42の電圧が使用範囲を逸脱してしまう可能性がある。このことを考慮して、本実施形態では電動モータ42を使用できる範囲内で電動モータ42の出力を制御する。具体的には、図5に示すように、電池セル20の温度がある一定値以下で電池セル20の暖機が必要なときには、電動モータ42の使用範囲内で電動モータ42の出力が最大となるように制御する。
【0039】
このように、電動モータ42の出力として、連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満とすることは、時間制限がかからない範囲内での出力にできるとともに、短時間定格出力の許容内での出力とすることができる。よって、電動モータ42の出力が使用範囲内で最大となるようにインバータ110を駆動して電動モータ42の出力を調整する。
【0040】
電動モータ42が過熱しない範囲での連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で電動モータ42の出力を制御することにより、循環ファン40の電動モータ42の発熱Q11(図3参照)が増大して高い温度の空気が電池セル20に供給される。また、電動モータ42の出力が増加することで循環ファン40による空気の循環量が増加して電池セル20付近の風速が増大する。これによって、電池セル20の熱交換が促進され電池セル20の暖機が早まり、暖機時間の短縮が図られる。さらに、電気部品100の熱Q12(図3参照)も電池セル20の加熱に供される。
【0041】
特に、電動モータ42の出力を、連続定格出力と、当該連続定格出力よりも大きくかつ短時間定格出力未満での出力とを繰り返すパルス制御を行うことにより、電池セル20の暖機における電動モータ42の出力の波形をパルスとし、パルス波の最大値は電動モータ42の短時間定格出力を超過しない。
【0042】
また、電動モータ42に電力を供給するインバータ110が空気通路52に配置され、コントローラ70は、暖機が必要な時に、連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で電動モータ42の出力を制御する際にインバータ110が発熱する。インバータ110のパワースイッチング素子111の発熱も電池セル20の暖機に使用することにより、より熱を有効利用できる。
【0043】
コントローラ70は、開閉部材アクチュエータ120,121,122を制御して開閉部材90,91,92を駆動して、暖機が必要な時に電動モータ42で発生する熱を電池セル20に供給するとともに暖機が不要な時に電動モータ42で発生する熱を電池セル20に供給しないようにする。
【0044】
図5でのt2~t3で電動モータ42が過熱しないようにして短時間定格出力と連続定格出力の間で出力を制御した後において、t3~t4においてコントローラ70は、電動モータ42の出力を下げて空気循環を行う。このとき、電池セル20の暖機も冷却も行わない。
【0045】
図5においてt4以降において、電池セル20の温度が所定温度T2よりも高くなると、コントローラ70は、電動モータ42の出力を上げて電池セル20の冷却を行う。図2に示すように電動モータ42の熱Q1は側板部34を通して外気に放熱されるとともに電気部品100の熱Q2は側板部32を通して外気に放熱される。
【0046】
このようにして、本実施形態では電池セル20の暖機のための専用の装置を要することなく電池セル20の暖機を早めることができる。即ち、電池セル20の冷却用の循環ファン40が設置されている電池パック10をそのまま用いて電池セル20の暖機を行うことができ、暖機のための特別な装置が不要なためコストアップすることはない。
【0047】
電池セル20を暖機可能で電池セル20の暖機が必要と判断されたときに、積極的に電力消費を行うことにより循環ファン40の電動モータ42の出力を増大させて電池セル20と電動モータ42の発熱を増大させるとともに電池セル20の回りの風速増加させることで、電池セル20での熱交換を促し電池セル20の暖機を早めることができる。
【0048】
特に、暖機時に電動モータ42の出力を最大にすることにより、放電のため電池セル20の発熱が増大するとともに電動モータ42の発熱が増大し、さらに、電池セル20の回りの風速が増大となる。そのため、電池セル20の暖機が早まり、暖機時間の短縮につながる。また、電池セル20の暖機のときと電池セル20の冷却のときで通路(流路)が切り替えられる構成を採用することにより、電池セル20の暖機のときは電動モータ42の熱やインバータ110のパワースイッチング素子111の熱が電池セル20に流れ込み易いように流路を形成するとともに、電池セル20の冷却のときは電動モータ42の熱やインバータ110のパワースイッチング素子111の熱が電池セル20に流れ込み難いように流路を形成する。
【0049】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電動モータ42は、空気通路53に配置され、モータ制御部としてのコントローラ70は、温度検出手段としての電池温度センサ60によって検出された電池セル20の温度が閾値温度以下の暖機が必要な時に、電動モータ42の出力を連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で制御する。
【0050】
よって、電池セル20の暖機時において循環ファン40の電動モータ42の出力を連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で制御することにより、循環ファン40の電動モータ42の発熱が増大して高い温度の空気を電池セル20に供給できるとともに電池セル20の放電に伴い発熱が増大する。また、循環ファン40による空気の循環量が増加して電池セル20付近の風速が増大する。これにより、電池セル20の暖機を早期に行うことができる。つまり、電池セル20の暖機が早まり、暖機時間の短縮を図ることができる。
【0051】
(2)コントローラ70は、暖機が必要な時に、電動モータ42の出力を、連続定格出力と、当該連続定格出力よりも大きくかつ短時間定格出力未満での出力とを繰り返すパルス制御を行う。よって、出力を大きくすることができる。
【0052】
(3)電動モータ42に電力を供給するインバータ110が空気通路52に配置され、暖機が必要な時に、連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満で電動モータ42の出力を制御する際にインバータ110が発熱する。よって、インバータ110で発熱する熱を用いて電池セル20の暖機がより早まり、より暖機時間の短縮を図ることができる。
【0053】
(4)電池セル20を冷却するための空気通路50,51、及び、当該冷却するための空気通路から分岐し電池セル20を暖機するための空気通路54,53,52に設けられた開閉部材90,91,92と、開閉部材90,91,92を駆動して、暖機が必要な時に電動モータ42で発生する熱を電池セル20に供給するとともに暖機が不要な時に電動モータ42で発生する熱を電池セル20に供給しないようにするためのアクチュエータとしての開閉部材アクチュエータ120,121,122と、を更に備える。よって、暖機が必要となったときに、電動モータ42で発熱する熱を用いて電池セル20の暖機がより早まり、より暖機時間の短縮を図ることができる。
【0054】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
〇暖機が必要な時に電動モータ42の出力を連続定格出力と、当該連続定格出力よりも大きくかつ短時間定格出力未満での出力とを繰り返すパルス制御を行わなくてもよい。例えば、電動モータ42を連続定格出力以上かつ短時間定格出力未満の一定出力を連続して行ってもよい。
【0055】
〇電動モータ42に電力を供給するインバータ110を筐体30内の空気通路52に配置したが、インバータ110を例えば筐体30外に配置してもよい。
〇循環送風機の種類は問わない。遠心式の多翼送風機でも軸流送風機等であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…電池パック、20…電池セル、30…筐体、40…循環ファン(循環送風機)、41…羽根車、42…電動モータ、50,51,52,53,54…空気通路、60…電池温度センサ(温度検出手段)、70…コントローラ(モータ制御部)、90,91,92…開閉部材、110…インバータ、120,121,122…開閉部材アクチュエータ。
図1
図2
図3
図4
図5