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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用サンルーフユニット
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/22 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B60J7/22
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020022359
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126987
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野並 秀平
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229453(JP,A)
【文献】特開2000-085369(JP,A)
【文献】特開2018-034774(JP,A)
【文献】特開2018-094965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0326831(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のルーフ開口部を閉じる全閉位置及び前記ルーフ開口部を開く全開位置の間を車両前後方向に移動する可動パネルと、
前記可動パネルが前記全閉位置から車両後方に移動する場合に前記ルーフ開口部の車両前方の空間に展開され、前記可動パネルが前記全開位置から前記車両前方に移動する場合に折り重なって格納されるスクリーンと、
先端に前記スクリーンを支持した状態で、前記スクリーンを展開する展開位置及び前記スクリーンを格納する格納位置の間を車両幅方向に延びる軸線回りに回動し、前記展開位置に向かって付勢されるアームと、を備え、
前記可動パネルは、前記アームと摺動することにより、前記アームを位置決めする摺動部を有し、
前記摺動部は、前側摺動部と、前記前側摺動部よりも前記車両後方に位置する後側摺動部と、を含み、
前記アームは、前記摺動部と摺動する規制面を有し、
前記規制面は、車両前方から後方に向かって、第1規制面と、前記第1規制面の後端から後方に延びるとともに前記第1規制面と交差する方向に延びる第2規制面と、前記第2規制面の後端から後方に延びるとともに前記第1規制面よりも前記可動パネル側に上がった位置に設けられる第3規制面と、を含み、
前記可動パネルの移動範囲は、前記前側摺動部が前記アームと摺動する第1摺動範囲と、前記第1摺動範囲よりも前記車両前方の移動範囲であって且つ前記後側摺動部が前記アームと摺動する第2摺動範囲と、を含み、
前記可動パネルが前記第2摺動範囲を移動する際、前記前側摺動部と前記アームとの間には隙間が生じるものであって、
前記第1摺動範囲は、前記前側摺動部が前記第2規制面と摺動するときの前記可動パネルの移動範囲と、前記前側摺動部が前記第3規制面と摺動するときの前記可動パネルの移動範囲と、を含み、
前記第2摺動範囲は、前記後側摺動部が前記第1規制面及び前記第2規制面と摺動するときの前記可動パネルの移動範囲を含む
車両用サンルーフユニット。
【請求項2】
前記後側摺動部が前記アームと摺動する状況下において、前記前側摺動部と前記アームとの間に生じる隙間は、前記スクリーンの厚さの2倍以上の隙間である
請求項1に記載の車両用サンルーフユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サンルーフユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のルーフ開口部を全開する全開位置及び全閉する全閉位置の間を移動する可動パネルと、ルーフ開口部における走行風の流れを調整するデフレクタと、を備えるサンルーフユニットが記載されている。デフレクタは、ルーフ開口部の幅方向における両端部にそれぞれ配置される一対のアームと、一対のアームを支持するベースと、一対のアームをそれぞれ付勢する一対のスプリングと、一対のアームの姿勢に応じてルーフ開口部の前方の空間に展開される布部材と、を有する。アームの基端は、ベースに対して幅方向に延びる軸線回りに回動可能であり、アームの先端は、布部材に連結している。
【0003】
可動パネルが全閉位置に向かって前方に移動する場合、一対のアームは、可動パネルと摺動することで倒れる。このとき、布部材は、可動パネルの下方に収納される。一方、可動パネルが全閉位置から後方に移動する場合、一対のアームは、一対のスプリングの付勢力に基づき起き上がる。このとき、布部材は、ルーフ開口部の前方に展開されて、ルーフ開口部を介して走行風が車両室内に入り込むことを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-60480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなサンルーフユニットにおいて、可動パネルが全閉位置に配置される際、可動パネルとアームとの間に布部材が挟まれることがある。可動パネルとアームとに布部材が挟まれた状態で、可動パネルが全閉位置から後方に移動すると、布部材が可動パネルとアームとの間から相対的に引き抜かれる際に異音が発生するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、可動パネルとアームとにスクリーンが挟まれる場合であっても、可動パネルの開作動時に異音が発生することを抑制できる車両用サンルーフユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用サンルーフユニットは、車体のルーフ開口部を閉じる全閉位置及び前記ルーフ開口部を開く全開位置の間を車両前後方向に移動する可動パネルと、前記可動パネルが前記全閉位置から車両後方に移動する場合に前記ルーフ開口部の車両前方の空間に展開され、前記可動パネルが前記全開位置から前記車両前方に移動する場合に折り重なって格納されるスクリーンと、先端に前記スクリーンを支持した状態で、前記スクリーンを展開する展開位置及び前記スクリーンを格納する格納位置の間を車両幅方向に延びる軸線回りに回動し、前記展開位置に向かって付勢されるアームと、を備え、前記可動パネルは、前記アームと摺動することにより、前記アームを位置決めする摺動部を有し、前記摺動部は、前側摺動部と、前記前側摺動部よりも前記車両後方に位置する後側摺動部と、を含み、前記可動パネルの移動範囲は、前記前側摺動部が前記アームと摺動する第1摺動範囲と、前記第1摺動範囲よりも前記車両前方の移動範囲であって且つ前記後側摺動部が前記アームと摺動する第2摺動範囲と、を含み、前記可動パネルが前記第2摺動範囲を移動する際、前記前側摺動部と前記アームとの間には隙間が生じる。
【0008】
上記構成のサンルーフユニットは、可動パネルが全閉位置から車両後方に移動するとき、可動パネルが第2摺動範囲を移動した後に第1摺動範囲を移動する。そして、可動パネルが第2摺動範囲を移動することで、後側摺動部がアームと摺動する場合、前側摺動部とアームとの間に隙間が生じる。このため、可動パネルが全閉位置から車両後方に移動する場合に、スクリーンが前側摺動部とアームとの間で挟まれにくい。つまり、車両用サンルーフユニットは、摺動部とアームとの間で圧縮されるスクリーンが摺動部とアームとの間から相対的に引き抜かれるときに発生する異音を抑制できる。
【0009】
上記車両用サンルーフユニットにおいて、前記後側摺動部が前記アームと摺動する状況下において、前記前側摺動部と前記アームとの間に生じる隙間は、前記スクリーンの厚さの2倍以上の隙間であることが好ましい。
【0010】
上記構成のサンルーフユニットは、後側摺動部がアームと摺動するとき、前側摺動部とアームとの間にスクリーンの厚さの2倍以上の隙間が生じるように構成される。このため、車両用サンルーフユニットは、可動パネルの開作動時に異音が発生することをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
車両用サンルーフユニットは、可動パネルとアームとにスクリーンが挟まれる場合であっても、可動パネルの開作動時に異音が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る車両用サンルーフユニットを備える車両の平面図。
図2】上記サンルーフユニットの可動パネルの底面図。
図3】上記可動パネルの幅方向と直交する断面図。
図4】上記サンルーフユニットのデフレクタ装置の斜視図。
図5】上記デフレクタ装置の幅方向と直交する断面図。
図6】上記サンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
図7】上記サンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
図8】比較例のサンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
図9】比較例のサンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
図10】比較例のサンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
図11】本実施形態のサンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
図12】本実施形態のサンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
図13】本実施形態のサンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
図14】本実施形態のサンルーフユニットの幅方向と直交する端面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
車両用サンルーフユニット(以下、「サンルーフユニット」ともいう。)の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、サンルーフユニットが車両に搭載された状態に基づき、サンルーフユニットの方向を定義する。また、車両の幅方向を単に「幅方向」ともいい、車両の前後方向を単に「前後方向」ともいい、車両の上下方向を単に「上下方向」ともいう。図面中では、幅方向、前後方向及び上下方向に延びる軸を、それぞれX軸、Y軸及びZ軸で示している。
【0014】
図1に示すように、車両10は、ルーフ21を有する車体20と、ルーフ21に搭載されるサンルーフユニット30と、を備える。サンルーフユニット30は、ベースパネル40と、サンルーフ装置50と、デフレクタ装置70と、を備える。
【0015】
ベースパネル40は、上下方向における平面視において、矩形状をなすルーフ開口部41を有する。ルーフ開口部41は、前後方向を短手方向とし、幅方向を長手方向とする。ベースパネル40は幅方向及び前後方向から見たとき、ルーフ21の形状に沿う形状をなしていることが好ましい。ベースパネル40は、金属の板材をプレス加工することにより形成してもよいし、複数のフレーム及びパネルを互いに接合することにより形成してもよい。
【0016】
次に、サンルーフ装置50について説明する。
図1に示すように、サンルーフ装置50は、ルーフ開口部41を開閉する可動パネル60と、前後方向に延びる一対のガイドレール51と、一対のガイドレール51に沿ってそれぞれ移動する一対の機能部品52と、一対の機能部品52を駆動するアクチュエータ53と、を有する。
【0017】
図1に示すように、上下方向における平面視において、可動パネル60は、ルーフ開口部41よりも一回り大きな略矩形状をなしている。図1及び図2に示すように、可動パネル60は、透光性を有するパネル本体61と、パネル本体61を裏側から支える支持パネル62と、パネル本体61と支持パネル62との間の層である樹脂層63と、後述するデフレクタ装置70の一対のアーム74とそれぞれ摺動する一対の摺動部64と、を有する。
【0018】
パネル本体61は、透光性を有していればよく、例えば、ガラス又は樹脂からなる。支持パネル62は、上下方向における平面視において、矩形枠状をなしている。支持パネル62は、例えば、金属の板材をプレス加工することにより形成される。支持パネル62は、幅方向に間隔をあけた状態で前後方向に延びる一対の固定ブラケット621を有する。一対の固定ブラケット621は、サンルーフ装置50の機能部品52が組み付けられる部位である。樹脂層63は、例えば、RIM成形(反応射出成形)により形成される。図2に示すように、樹脂層63は、パネル本体61の縁まで延びて、パネル本体61の縁を保護する保護層を構成することが好ましい。
【0019】
図1及び図2に示すように、一対の摺動部64は、支持パネル62の前端寄り且つ両側端寄りの位置にそれぞれ固定される。図3に示すように、摺動部64は、支持パネル62に係止する係止部641と、下方に突出する前側摺動部642と、下方に僅かに湾曲しつつ後方に延びる後側摺動部643と、を有する。前側摺動部642は、摺動部64の前端に位置し、後側摺動部643は、前側摺動部642よりも後方に位置している。摺動部64において、前側摺動部642及び後側摺動部643の間の部分は上方に凹んでいる。可動パネル60が図3に示す姿勢を取るとき、言い換えれば、可動パネル60がルーフ開口部41を閉じる全閉位置に配置されるとき、前側摺動部642の先端は、後側摺動部643よりも下方に位置する。
【0020】
一対のガイドレール51は、幅方向に間隔をあけてベースパネル40の両側にそれぞれ組み付けられる。一対のガイドレール51は、ルーフ開口部41の幅方向における内側縁に沿って延びる。一対の機能部品52は、一対のガイドレール51に沿って、前後方向に移動することにより、可動パネル60の姿勢を変化させたり、可動パネル60を前後方向に移動させたりする。
【0021】
サンルーフ装置50は、アクチュエータ53を駆動することにより、可動パネル60を、ルーフ開口部41を閉じる全閉位置及びルーフ開口部41を開く全開位置の間で移動させる。以降の説明では、全閉位置から全開位置に向かう方向に可動パネル60を移動させることを「開作動」といい、全開位置から全閉位置に向かう方向に可動パネル60を移動させることを「閉作動」という。可動パネル60が開作動するときの移動方向は後方であり、可動パネル60が閉作動するときの移動方向は前方である。なお、幅方向における側面視において、一対のガイドレール51が湾曲している場合には、可動パネル60の開閉作動時の移動方向は、ガイドレール51の湾曲に応じた方向となる。
【0022】
次に、デフレクタ装置70について説明する。
図4及び図5に示すように、デフレクタ装置70は、幅方向を長手方向とする帯状をなすスクリーン71と、スクリーン71の上端を支持する可動フレーム72と、スクリーン71の下端を支持する固定フレーム73と、先端に可動フレーム72を支持する一対のアーム74と、一対のアーム74をそれぞれ付勢する一対の付勢部材75と、を有する。
【0023】
スクリーン71は、折り畳むことのできる樹脂製又は布製のメッシュ部材である。スクリーン71は、ルーフ開口部41の前方の空間に展開されたり、折り重なった状態で格納されたりする。このため、スクリーン71は、折り目のつきにくい材質であることが好ましい。
【0024】
可動フレーム72及び固定フレーム73は、幅方向を長手方向とする棒状部材である。可動フレーム72は、幅方向における両端部よりも幅方向における中央部の方が上方に位置するように湾曲している。可動フレーム72の両端は、一対のアーム74の先端に連結している。本実施形態では、可動フレーム72と一対のアーム74とが一体に成形されているが、別体に成形することもできる。固定フレーム73は、ベースパネル40において、ルーフ開口部41よりも前方となる位置に固定される。つまり、固定フレーム73に対して可動フレーム72が遠ざかる方向に変位すると、スクリーン71が展開される。一方、固定フレーム73に対して可動フレーム72が近付く方向に変位すると、スクリーン71が折り重ねられて格納される。
【0025】
アーム74は、可動フレーム72と略直交する方向に延びる。アーム74は、可動フレーム72と一体である点もあって、スクリーン71の幅方向における端部を支持する。つまり、アーム74は、先端にスクリーン71の上端且つ幅方向における端部を支持する。
【0026】
図5に示すように、アーム74は、ベースパネル40に回動可能に支持される回動軸741と、付勢部材75を支持する支持軸742と、可動パネル60の摺動部64と摺動する規制面743と、を有する。回動軸741及び支持軸742は、幅方向を軸方向とし、アーム74の基端部に位置する。回動軸741は、支持軸742よりもアーム74の基端寄りに位置する。そして、アーム74は、スクリーン71を展開する展開位置及びスクリーン71を格納する格納位置の間を幅方向に延びる軸線、つまり回動軸741の軸線を中心に回動する。アーム74は、可動パネル60の摺動部64と摺動することにより、展開位置及び格納位置の間の回動範囲内で位置決めされる。
【0027】
規制面743は、可動パネル60が全閉位置の付近に位置する場合に、アーム74において可動パネル60と上下方向に対向する面である。規制面743は、アーム74の長手方向と略同方向に延びる第1規制面744と、第1規制面744と交差する方向に延びる第2規制面745と、第1規制面744と略同方向に延びる第3規制面746と、を含む。第1規制面744はアーム74の最も前端寄りの位置し、第2規制面745は第1規制面744の後端から後方に延び、第3規制面746は第2規制面745の後端から後方に延びる。第1規制面744は、第3規制面746よりも下方に1段下がった位置に設けられている。
【0028】
付勢部材75は、幅方向における側面視において略V字状をなす板ばねである。付勢部材75は、ベースパネル40とアーム74との間に配置される。付勢部材75は、アーム74をベースパネル40から離す方向に付勢する。詳しくは、すなわち、付勢部材75は、アーム74を格納位置から展開位置に向けて付勢する。なお、付勢部材75は、圧縮量に応じた弾性力を発生させることができれば、他のばねでもよいし、ブロック状のゴムでもよい。また、アーム74自体が大きく弾性変形できるのであれば、デフレクタ装置70は付勢部材75を有しなくてもよい。
【0029】
図6に示すように、可動パネル60がルーフ開口部41の一部を開放している場合、デフレクタ装置70のアーム74は、付勢部材75の付勢力により、スクリーン71を展開させる展開位置に配置される。展開位置において、スクリーン71は、可動フレーム72に上方に引っ張られることにより、上下に張った状態となる。こうして、デフレクタ装置70は、車両10の走行中において、ルーフ開口部41の付近の走行風の流れを整えることができる。
【0030】
図6に示すように、可動パネル60の摺動部64がデフレクタ装置70のアーム74に接触した状態から、可動パネル60が全閉位置に向かって閉作動すると、可動パネル60の摺動部64がアーム74と摺動する。すると、可動パネル60が全閉位置に近付くにつれて、アーム74における可動パネル60の摺動部64と摺動する部位が、第3規制面746、第2規制面745及び第1規制面744の順に変化する。その結果、アーム74は、付勢部材75を弾性変形させつつ、より前傾角度が深まる方向に回動する。図7に示すように、可動パネル60が全閉位置の付近まで閉作動すると、アーム74が、スクリーン71を格納する格納位置に配置される。こうして、スクリーン71は、ベースパネル40と可動パネル60との間に折り重ねられて状態で格納される。
【0031】
一方、可動パネル60が全閉位置から開作動する場合には、可動パネル60が閉作動する場合とは逆に、アーム74における可動パネル60の摺動部64と摺動する部位が、第1規制面744、第2規制面745及び第3規制面746の順に変化する。このため、可動パネル60が開作動する場合、アーム74は、付勢部材75の付勢力に基づいて格納位置から展開位置に次第に回動する。つまり、アーム74は、前傾角度が浅くなる方向に回動する。可動パネル60が図6に示す位置まで開作動すると、アーム74が展開位置に配置される。こうして、可動パネル60の開作動に連動して、スクリーン71が展開される。
【0032】
次に、比較例及び本実施形態の作用について説明する。
初めに、図8図10を参照して、比較例のサンルーフユニット30Xの作用について説明する。比較例のサンルーフユニット30Xは、本実施形態のサンルーフユニット30と比較したとき、可動パネル60の摺動部64の形状が異なる。
【0033】
詳しくは、比較例の可動パネル60Xの摺動部64Xは、先端が下方に突出する前側摺動部642Xと、後方に延びる後側摺動部643Xと、を有する。比較例の前側摺動部642Xは、本実施形態の前側摺動部642よりも下方への突出量が大きい。また、比較例の摺動部64Xは、前側摺動部642X及び後側摺動部643Xの間における上方への凹み量が、本実施形態の摺動部64よりも少ない。
【0034】
図8に示すように、比較例のサンルーフユニット30Xでは、可動パネル60Xを全閉位置まで閉作動させたときに、折り重なったスクリーン71が可動パネル60Xの摺動部64Xとアーム74との間に位置することがある。つまり、スクリーン71が摺動部64Xとアーム74との間に挟まれることがある。
【0035】
図9に示すように、可動パネル60Xが全閉位置から開作動すると、後側摺動部643Xの後部がアーム74と摺動を始める。また、後側摺動部643Xの前部とアーム74との間で、スクリーン71が圧縮される。一方、前側摺動部642Xとアーム74との間には、僅かに隙間が生じている。
【0036】
図10に示すように、可動パネル60Xがさらに開作動すると、後側摺動部643Xの後部がアーム74との摺動を継続する。一方、前側摺動部642Xとアーム74との間の隙間が無くなり、前側摺動部642Xとアーム74との間で、スクリーン71が強く圧縮される。言い換えれば、比較例では、前側摺動部642Xとアーム74との間にスクリーン71が存在していなければ、後側摺動部643Xの後部とアーム74とが摺動しているときに、前側摺動部642Xがアーム74に接触し得る。詳しくは、後側摺動部643Xがアーム74の第2規制面745と摺動しているときに、前側摺動部642Xがアーム74に接触し得る。
【0037】
その後、図10に示す状態から、可動パネル60Xがさらに開作動すると、前側摺動部642Xが後方に移動することにより、前側摺動部642Xとアーム74との間からスクリーン71が存在しなくなる。このとき、前側摺動部642Xとアーム74とに圧縮されるスクリーン71が前側摺動部642Xとアーム74との間から相対的に引き抜かれることにより、異音が発生する。このように、比較例のサンルーフユニット30Xでは、可動パネル60Xの開作動時に異音が発生することがある。
【0038】
図11図14を参照して、本実施形態のサンルーフユニット30の作用について説明する。
図11に示すように、本実施形態のサンルーフユニット30でも、可動パネル60を全閉位置まで閉作動させたときに、折り重なったスクリーン71が可動パネル60の摺動部64とアーム74との間に挟まれることがある。
【0039】
図12に示すように、可動パネル60が全閉位置から開作動すると、摺動部64とアーム74との間で、スクリーン71が圧縮され始める。また、図12に示す状態では、前側摺動部642がアーム74から離れたまま、後側摺動部643がアーム74の第1規制面744と摺動する。このとき、前側摺動部642、詳しくは、前側摺動部642の先端とアーム74との間には、スクリーン71の厚さの2倍以上の隙間GPが生じている。
【0040】
図13に示すように、可動パネル60がさらに開作動すると、前側摺動部642がアーム74から離れたまま、後側摺動部643がアーム74の第2規制面745と摺動する。このときも、前側摺動部642とアーム74との間には、スクリーン71の厚さの2倍以上の隙間GPが生じている。
【0041】
その後、図13に示す状態から可動パネル60がさらに開作動すると、摺動部64とアーム74との間から相対的にスクリーン71が存在しなくなる。このとき、スクリーン71は、前側摺動部642とアーム74との間で圧縮されていないため、スクリーン71が前側摺動部642とアーム74との間から相対的に引き抜かれたとしても、異音が発生しない。したがって、本実施形態のサンルーフユニット30では、可動パネル60の閉作動時におけるスクリーン71の折り重なりの状態に関わらず、可動パネル60の開作動時に打音が発生することが抑制される。
【0042】
なお、摺動部64とアーム74との間にスクリーン71が存在しなくなった後も、後側摺動部643がアーム74の第2規制面745と摺動する場合には、前側摺動部642の先端とアーム74との間に隙間GPが生じたままとなる。
【0043】
そして、図14に示すように、後側摺動部643がアーム74の第3規制面746と摺動すると、前側摺動部642がアーム74の第2規制面745に接触する。その後、前側摺動部642がアーム74の第2規制面745と摺動し始めると、後側摺動部643がアーム74に接触しなくなる。
【0044】
つまり、本実施形態では、可動パネル60の移動範囲のうち、図14に示す位置と図6に示す位置との間の移動範囲が、前側摺動部642がアーム74と摺動する「第1摺動範囲」となり、図8に示す全閉位置と図14に示す位置との間の移動範囲が、後側摺動部643がアーム74と摺動する「第2摺動範囲」となる。可動パネル60の開作動時には、後側摺動部643が前側摺動部642よりも先にアーム74と摺動する点で、第2摺動範囲は第1摺動範囲よりも前方の移動範囲である。また、第1摺動範囲及び第2摺動範囲は前後方向に隣り合っている。
【0045】
第2摺動範囲は、後側摺動部643が第1規制面744及び第2規制面745と摺動するときの可動パネル60の移動範囲を含んでいる。このため、後側摺動部643が第1規制面744及び第2規制面745と摺動するとき、前側摺動部642とアーム74との間には隙間GPが生じていると言い換えることもできる。さらに、後側摺動部643が第1規制面744及び第2規制面745と摺動するときに、前側摺動部642とアーム74との間に生じる隙間GPがスクリーン71の厚さの2倍以上であればよい。つまり、可動パネル60が第2摺動範囲を移動する場合であっても、後側摺動部643が第3規制面746と摺動するときに、前側摺動部642とアーム74との間に生じる隙間GPはスクリーン71の厚さの2倍未満でもよい。
【0046】
また、本実施形態では、スクリーン71のサイズ的に、可動パネル60が全閉位置に配置されるときにスクリーン71がどのように折り重ねられたとしても、折り重ねられたスクリーン71が可動パネル60とアーム74の第3規制面746との間に位置することはないものとする。
【0047】
本実施形態の効果について説明する。
(1)サンルーフユニット30において、可動パネル60が全閉位置から開作動し始める初期段階において、アーム74と摺動するのは前側摺動部642及び後側摺動部643のうち、後側摺動部643に限られる。つまり、可動パネル60が全閉位置から開作動し始める初期段階において、前側摺動部642とアーム74との間には隙間GPが生じる。このため、摺動部64とアーム74との間にスクリーン71が位置する状況下において、可動パネル60が全閉位置から開作動する場合に、スクリーン71が前側摺動部642とアーム74との間で挟まれにくい。つまり、サンルーフユニット30は、摺動部64とアーム74との間で圧縮されるスクリーン71が摺動部64とアーム74との間から相対的に引き抜かれるときに発生する異音を抑制できる。
【0048】
(2)後側摺動部643がアーム74と摺動するとき、前側摺動部642とアーム74との間にスクリーン71の厚さの2倍以上の隙間GPが生じる。したがって、サンルーフユニット30は、可動パネル60の開作動時に異音が発生することをさらに抑制できる。
【0049】
(3)可動パネル60の開作動時には、後側摺動部643がアーム74と摺動する状態から前側摺動部642がアーム74と摺動する状態に移行する。このため、前側摺動部642を備えない比較例と比べて、可動パネル60の開作動時において、摺動部64がアーム74の第3規制面746と摺動するときに、アーム74が起立位置に到達するタイミングを遅くしやすい。このため、可動パネル60がデフレクタ装置70の可動フレーム72の回動範囲に位置するときに、アーム74が起立位置に到達することが抑制される。言い換えれば、サンルーフユニット30は、可動パネル60がある程度後方に移動した後に、アーム74を起立位置に配置できる。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・後側摺動部643がアーム74と摺動するときの前側摺動部642とアーム74との間に生じる隙間GPは、スクリーン71の厚さの2倍未満でもよい。この場合であっても、隙間GPが生じない場合に比較して、スクリーン71が摺動部64とアーム74との間から相対的に引き抜かれるときに発生する異音が抑制される。
【0051】
・前側摺動部642及び後側摺動部643の形状は、適宜に変更してもよい。例えば、後側摺動部643は、前側摺動部642の形状と同様に下方に突出させてもよい。
・アーム74において、第1規制面744、第2規制面745及び第3規制面746の長さ及び傾きなどの形状は適宜に変更することができる。
【0052】
・ベースパネル40は、ルーフ開口部41の前方にデフレクタ装置70のアーム74を回動可能に支持してもよい。この場合、アーム74の本数は、適宜に変更してもよい。
・サンルーフ装置50は、上記実施形態のように、可動パネル60がルーフ21の上方の空間に向かって開作動するアウタースライド式のサンルーフ装置でなくてもよい。詳しくは、サンルーフ装置50は、可動パネル60がルーフ21と車室との間の空間に向かって開作動するインナースライド式のサンルーフ装置であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…車両
20…車体
21…ルーフ
30…車両用サンルーフユニット
40…ベースパネル
41…ルーフ開口部
50…サンルーフ装置
60…可動パネル
64…摺動部
642…前側摺動部
643…後側摺動部
70…デフレクタ装置
71…スクリーン
74…アーム
GP…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図14