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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240214BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/14 305
B41J2/14 501
B41J2/14 601
B41J2/18
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020023104
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021126829
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠生
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
(72)【発明者】
【氏名】谷内 章紀
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177587(JP,A)
【文献】特開2012-086375(JP,A)
【文献】特開2018-103602(JP,A)
【文献】特開2019-171841(JP,A)
【文献】特開2018-114675(JP,A)
【文献】特開2019-155768(JP,A)
【文献】特開2019-171751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0022106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、
前記第1ノズルから液体を吐出するとき、前記第1圧力室、前記第1連通流路、前記第1ノズル流路、前記第2連通流路、前記第2圧力室の順に流れる液体の流れが形成されており、
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも小さい
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、
駆動電圧が印可されることで、前記第1圧力室の液体に圧力を付与するためのエネルギーを生成する第1エネルギー生成素子と、
駆動電圧が印可されることで、前記第2圧力室の液体に圧力を付与するためのエネルギーを生成する第2エネルギー生成素子と、を具備し、
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも小さい
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
液体に圧力を付与する第3圧力室と、
液体に圧力を付与する第4圧力室と、
前記第1方向に延在し、液体を吐出する第2ノズルが設けられる第2ノズル流路と、
前記第2方向に延在し、前記第3圧力室と前記第2ノズル流路とに連通する第3連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第4圧力室と前記第2ノズル流路とに連通する第4連通流路と、をさらに具備し、
前記第2ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第3連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第3方向における前記第2ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第3連通流路の幅よりも小さい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1ノズル流路と前記第2ノズル流路は、前記第3方向に隣接する
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1ノズル流路と前記第2ノズル流路との間に設けられた隔壁の厚さは、前記第1連通流路と前記第3連通流路との間に設けられた隔壁の厚さよりも厚い
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1圧力室に連通し、前記第1圧力室に液体を供給する第1個別供給流路と、
前記第3圧力室に連通し、前記第3圧力室に液体を供給する第2個別供給流路と、
前記第1個別供給流路と前記第2個別供給流路に共通に液体を供給する共通供給流路と、
前記第2圧力室に連通し、前記第2圧力室から液体が排出される第1個別排出流路と、
前記第4圧力室に連通し、前記第4圧力室から液体が排出される第2個別排出流路と、
前記第1個別排出流路と前記第2個別排出流路から共通に液体が排出される共通排出流路と、をさらに具備する
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第2圧力室に連通し、前記第2圧力室に液体を供給する第1個別供給流路と、
前記第4圧力室に連通し、前記第4圧力室に液体を供給する第2個別供給流路と、
前記第1個別供給流路と前記第2個別供給流路に共通に液体を供給する共通供給流路と、
前記第3圧力室に連通し、前記第3圧力室から液体が排出される第1個別排出流路と、
前記第1圧力室に連通し、前記第1圧力室から液体が排出される第2個別排出流路と、
前記第1個別排出流路と前記第2個別排出流路から共通に液体が排出される共通排出流路と、をさらに具備する
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第2連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第1ノズル流路の前記第3方向における幅は、前記第2連通流路の前記第3方向における幅よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも小さく、
前記第1連通流路の前記第2方向における幅は、前記第2連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第1連通流路の前記第3方向における幅は、前記第2連通流路の前記第3方向における幅よりも小さい
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第2連通流路の断面積よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第1圧力室と前記第2圧力室とが形成される圧力室基板と、
前記第1連通流路と前記第2連通流路とが形成される第1連通板と、
前記第1ノズルが形成されるノズル基板と、をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第1ノズル流路は、前記第1連通板に形成される
ことを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記第1ノズル流路は、前記ノズル基板に形成される
ことを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記第1ノズル流路は、前記第1連通板と前記ノズル基板にまたがって形成される
ことを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記第1ノズル流路が設けられる第2連通板をさらに具備し、
前記第2連通板は、前記第1連通板と前記ノズル基板との間に設けられる
ことを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、
前記第1圧力室と前記第2圧力室とが形成される圧力室基板と、
前記第1連通流路と前記第2連通流路とが形成される第1連通板と、
前記第1ノズルが形成されるノズル基板と、を具備し、
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも小さく、
前記第1連通流路の前記第2方向における幅は、前記第2連通流路の前記第2方向における幅と異なる
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項17】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、
前記第1ノズルから液体を吐出するとき、前記第1圧力室、前記第1連通流路、前記第1ノズル流路、前記第2連通流路、前記第2圧力室の順に流れる液体の流れが形成されており、
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第1連通流路の断面積よりも小さい
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項18】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、
駆動電圧が印可されることで、前記第1圧力室の液体に圧力を付与するためのエネルギーを生成する第1エネルギー生成素子と、
駆動電圧が印可されることで、前記第2圧力室の液体に圧力を付与するためのエネルギーを生成する第2エネルギー生成素子と、を具備し、
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、
前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第1連通流路の断面積よりも小さい
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項19】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも小さく、
前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも大きい
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項20】
液体に圧力を付与する第1圧力室と、
液体に圧力を付与する第2圧力室と、
第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、
前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも小さく、
前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第1連通流路の断面積よりも大きい
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項21】
請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する制御部と
を具備する液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの液体を複数のノズルから吐出する液体吐出ヘッドが従来から提案されている。例えば特許文献1には、圧力室内の液体の圧力を圧電素子によって変化させることにより、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドが開示されている。この液体吐出ヘッドは、ノズルが設けられたノズル流路を複数有し、それらの複数のノズル流路が所定方向に沿って配列されている。また、ノズル流路に連通する連通流路を複数有し、それらの複数の連通流路もまた所定方向に沿って配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-184372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に液体吐出ヘッドでは、ノズル流路と連通流路ともに所定方向の幅を大きくすることが好ましい。当該幅を大きくすることにより、ノズル流路、連通流路の流路断面積が大きくなるため、流路抵抗を小さくすることができるためである。しかし、特に高画質化のためにノズル流路や連通流路を所定方向に高密度で配置する場合、当該幅を大きくすると、隣接するノズル流路間、または隣接する連通流路間で、隔壁の厚さが十分でなくなってしまう。その場合、一方のノズル流路や連通流路における振動が、他方のノズル流路や連通流路に伝搬し、他方のノズル流路や連通流路に対応するノズルからの吐出特性を低下せしめる、いわゆる構造クロストークが大きく発生する虞がある。この大きな構造クロストークがノズル流路、連通流路の両方で生じると、ノズルからの吐出に与える影響が大きくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも小さい。
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の他の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第1連通流路の断面積よりも小さい。
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の他の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも小さく、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも大きい。
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明の他の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも小さく、前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第1連通流路の断面積よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る液体吐出装置の部分的な構成例を示す模式図である。
図2】液体吐出ヘッド内の流路構造を示す模式図である。
図3図2のa-a線の断面図である。
図4図2のb-b線の断面図である。
図5図3および図4のc-c線の部分断面図である。
図6図3および図4のd-d線の部分断面図である。
図7】第2実施形態に係る図2のa-a線の断面図である。
図8】第2実施形態に係る図2のb-b線の断面図である。
図9図7および図8のc-c線の部分断面図である。
図10図7および図8のd-d線の部分断面図である。
図11】第3実施形態に係る液体吐出装置の部分的な構成例を示す模式図である。
図12図11のa-a線の断面図である。
図13図11のb-b線の断面図である。
図14】変形例に係る図2のa-a線の断面図である。
図15】変形例に係る図2のa-a線の断面図である。
図16】変形例に係る図2のa-a線の断面図である。
図17】変形例に係る図2のa-a線の断面図である。
図18図17のe-e線の断面図である。
図19】変形例に係る液体吐出装置の部分的な構成例を示す模式図である。
図20図19のa-a線の断面図である。
図21図19のb-b線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A:第1実施形態
以下の説明では、相互に交差するX軸、Y軸およびZ軸を想定する。X軸、Y軸およびZ軸は、以降の説明で例示される全図において共通である。図1に例示される通り、任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向と反対の方向をX2方向と表記する。X1方向は、「第1方向」に相当する。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向およびY2方向と表記する。Y2方向は、「第3方向」に相当する。また、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向およびZ2方向と表記する。Z1方向は、「第2方向」に相当する。さらに、X軸とY軸とを含むX-Y平面は水平面に相当する。Z軸は鉛直方向に沿う軸線であり、Z2方向は鉛直方向の下方向に相当する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る液体吐出装置100の部分的な構成例を示す模式図である。液体吐出装置100は、インクなどの液体の液滴を媒体11に対して吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体11は、例えば、印刷用紙である。媒体11は、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象であってもよい。
【0012】
液体吐出装置100には、液体容器12が設けられる。液体容器12は、インクを貯留する。液体容器12は、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、または、インクを補充可能なインクタンクであってもよい。なお、液体容器12に貯留されるインクの種類は任意である。
【0013】
液体吐出装置100は、図1に示すように、制御ユニット21と、搬送機構22と、移動機構23と、液体吐出ヘッド24とを有する。制御ユニット21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、液体吐出ヘッド24の吐出動作等、液体吐出装置100の各要素を制御する。制御ユニット21は、「制御部」の一例である。
【0014】
搬送機構22は、制御ユニット21の制御に基づき、媒体11をY軸に沿って搬送する。移動機構23は、制御ユニット21の制御に基づき、液体吐出ヘッド24をX軸に沿って往復させる。移動機構23は、液体吐出ヘッド24を収容する略箱型の搬送体231と、搬送体231が固定された無端の搬送ベルト232とを有する。なお、本実施形態では、複数の液体吐出ヘッド24を搬送体231に搭載した構成や、液体容器12を液体吐出ヘッド24と共に搬送体231に搭載した構成も採用され得る。
【0015】
液体吐出ヘッド24は、制御ユニット21の制御に基づき、液体容器12から供給されるインクを複数のノズルの各々から媒体11に吐出する。搬送機構22による媒体11の搬送と搬送体231の反復的な往復とに並行して液体吐出ヘッド24が媒体11にインクを吐出することで、媒体11の表面に画像が形成される。
【0016】
図2は、液体吐出ヘッド24をZ軸から見たときの液体吐出ヘッド24内の流路構造を示す模式図である。液体吐出ヘッド24の媒体11に対向する表面には、図2に示すように、複数のノズルNaと複数のノズルNbが形成される。複数のノズルNaおよび複数のノズルNbは、Y軸に沿って配列する。複数のノズルNaおよび複数のノズルNbの各々は、Z軸方向にインクを吐出する。従って、Z軸方向は、複数のノズルNaおよび複数のノズルNbの各々からインクが吐出される方向に相当する。ノズルNaは「第1ノズル」の一例であり、ノズルNbは「第2ノズル」の一例である。
【0017】
図2に示すように、複数のノズルNaおよび複数のノズルNbの各々は、同一直線上に位置し、ノズル列Lを構成する。ノズル列Lは、Y軸に沿って直線上に配列する複数のノズルNaおよび複数のノズルNbの各々の集合である。また、図2に示すように、ノズルNaとノズルNbとを含むノズルNはピッチθで配列する。ピッチθは、Y軸方向におけるノズルNaの中心とノズルNbの中心との間の距離である。
以降の説明においては、ノズルNaに関連する要素の符号に添字aを付加し、ノズルNbに関連する要素の符号に添字bを付加する。なお、ノズルNaとノズルNbとを特に区別する必要がない場合には、単に「ノズルN」と表記する。
【0018】
液体吐出ヘッド24には、図2に示すように、個別流路列25が設けられる。個別流路列25は、複数の個別流路Paおよび複数の個別流路Pbの集合である。複数の個別流路Paの各々はX1方向に延在し、相異なるノズルNaに対応する。複数の個別流路Paの各々は、ノズルNaに連通する。同様に、複数の個別流路Pbの各々はX1方向に延在し、相異なるノズルNbに対応する。複数の個別流路Pbの各々は、ノズルNbに連通する。なお、以降の説明においては、個別流路Paと個別流路Pbとを特に区別する必要がない場合には、単に「個別流路P」と表記する。
【0019】
本実施形態では、Y軸方向に互いに隣接する個別流路Paと個別流路Pbは、互いに同じ構成である。個別流路Paおよび個別流路Pbの詳細な構成については後述する。なお、本願において、要素Aと要素Bとが「隣接する」とは、要素Aと要素Bとを特定の方向に沿ってみた場合に、要素Aの少なくとも一部と要素Bの少なくとも一部が互いに向い合うことを意味する。要素Aの全部と要素Bの全部が相互に向い合う必要はなく、要素Aの少なくとも一部と要素Bの少なくとも一部が向い合えば、「要素Aと要素Bとが隣接する」と解釈される。
【0020】
図2に示すように、個別流路Paは圧力室Ca1と圧力室Ca2とを有する。個別流路Pa内の圧力室Ca1および圧力室Ca2はX1方向に延在する。圧力室Ca1および圧力室Ca2には、個別流路Paに連通するノズルNaから吐出されるインクが貯留される。圧力室Ca1および圧力室Ca2内の圧力が変化するとノズルNaからインクが吐出される。圧力室Ca1は「第1圧力室」の一例であり、圧力室Ca2は「第2圧力室」の一例である。
同様に、個別流路Pbは圧力室Cb1と圧力室Cb2とを有する。個別流路Pbの圧力室Cb1および圧力室Cb2はX1方向に延在する。圧力室Cb1および圧力室Cb2には、個別流路Pbに連通するノズルNbから吐出されるインクが貯留される。圧力室Cb1および圧力室Cb2内の圧力が変化するとノズルNbからインクが吐出される。圧力室Cb1は「第3圧力室」の一例であり、圧力室Cb2は「第4圧力室」の一例である。
なお、以降の説明では、圧力室Ca1、圧力室Ca2、圧力室Cb1および圧力室Cb2を特に区別する必要がない場合には、単に「圧力室C」と表記する。
【0021】
液体吐出ヘッド24には、図2に示すように、第1共通液室R1と第2共通液室R2とが設けられる。第1共通液室R1と第2共通液室R2の各々は、複数のノズルNが分布する全範囲に亘ってY軸方向に延在する。Z軸方向に見た平面視において、第1共通液室R1と第2共通液室R2との間に個別流路列25と複数のノズルNが位置する。以降の説明では、Z軸方向に見た平面視を単に「平面視」と述べる。
【0022】
複数の個別流路Pは、第1共通液室R1に共通に連通する。具体的には、各個別流路PのX2方向に位置する端部E1が第1共通液室R1に接続される。同様に、複数の個別流路Pは、第2共通液室R2に共通に連通する。具体的には、各個別流路PのX1方向に位置する端部E2が第2共通液室R2に接続される。液体吐出ヘッド24においては、各個別流路Pが第1共通液室R1と第2共通液室R2とを相互に連通させる。これにより、第1共通液室R1から各個別流路Pに供給されるインクがノズルNから吐出される。吐出されなかったインクは第2共通液室R2に排出される。
【0023】
液体吐出ヘッド24は、図2に示すように、循環機構26を有する。循環機構26は、各個別流路Pから第2共通液室R2に排出されるインクを第1共通液室R1に還流させる機構である。循環機構26は、第1供給ポンプ261と、第2供給ポンプ262と、貯留容器263と、循環流路264と、供給流路265とを有する。
【0024】
第1供給ポンプ261は、液体容器12に貯留されたインクを貯留容器263に供給するポンプである。貯留容器263は、液体容器12から供給されるインクを一時的に貯留するサブタンクである。
【0025】
循環流路264は、第2共通液室R2と貯留容器263とを連通させる流路であり、第2共通液室R2を介して後述する排出流路Ra2と排出流路Rb2とから共通にインクを排出する。循環流路264および第2共通液室R2は、「共通排出流路」の一例である。
【0026】
貯留容器263には、液体容器12に貯留されたインクが第1供給ポンプ261から供給されるほか、各個別流路Pから第2共通液室R2に排出されたインクが循環流路264を介して供給される。
【0027】
第2供給ポンプ262は、貯留容器263に貯留されたインクを送出するポンプである。第2供給ポンプ262から送出されたインクは、供給流路265を介して第1共通液室R1に供給される。供給流路265は、後述する供給流路Ra1と供給流路Rb1とに共通に液体を供給する。供給流路265および第1共通液室R1は、「共通供給流路」の一例である。
【0028】
個別流路列25の複数の個別流路Pは、複数の個別流路Paと複数の個別流路Pbとを有する。複数の個別流路Paの各々は、ノズル列Lの1個のノズルNaに連通する個別流路Pである。同様に、複数の個別流路Pbの各々は、ノズル列Lの1個のノズルNbに連通する個別流路Pである。個別流路Paと個別流路Pbとは、Y軸方向に沿って交互に配列する。これにより、個別流路Paと個別流路PbとはY軸方向に相互に隣接する構成となる。
【0029】
個別流路Paは、図2に示すように、ノズル流路Nfaを有する。ノズル流路NfaはX1方向に延在し、同図に示すように、Z2方向に見て圧力室Ca1と圧力室Ca2との間に位置する。ノズル流路Nfaは、圧力室Ca1と圧力室Ca2とに連通し、圧力室Ca1から供給されたインクを吐出するノズルNaが設けられる。ノズル流路Nfaは、「第1ノズル流路」の一例である。
【0030】
個別流路Pbは、図2に示すように、ノズル流路Nfbを有する。ノズル流路NfbはX1方向に延在し、同図に示すように、Z2方向に見て圧力室Cb1と圧力室Cb2との間に位置する。ノズル流路Nfbは、圧力室Cb1と圧力室Cb2とに連通し、圧力室Cb1から供給されたインクを吐出するノズルNbが設けられる。ノズル流路Nfbは、「第2ノズル流路」の一例である。
【0031】
ノズル流路Nfaとノズル流路Nfbは、Y軸方向に沿って交互に配列する。ノズル流路Nfaとノズル流路Nfbは、Y軸方向に所定の間隔をあけて隣接する。
【0032】
本実施形態の液体吐出ヘッド24においては、図2に示すように、ノズル列Lの相異なるノズルNaに対応する複数の圧力室Ca1と、ノズル列Lの相異なるノズルNbに対応する複数の圧力室Cb1は、Y軸方向に沿って直列状に配列する。同様に、ノズル列Lの相異なるノズルNaに対応する複数の圧力室Ca2と、ノズル列Lの相異なるノズルNbに対応する複数の圧力室Cb2は、Y軸方向に沿って直列状に配列する。複数の圧力室Ca1と複数の圧力室Cb1とから構成される配列と、複数の圧力室Ca2と複数の圧力室Cb2とから構成される配列は、X軸方向に所定の間隔をあけて並設される。ここでは、Y軸方向における各圧力室Ca1の位置と、Y軸方向における各圧力室Ca2との位置が同一であるが、異なっていてもよい。同様に、ここでは、Y軸方向における各圧力室Cb1の位置と、Y軸方向における各圧力室Cb2との位置も同一であるが、異なっていてもよい。
【0033】
次に、液体吐出ヘッド24の詳細な構成について述べる。図3は、図2のa-a線の断面図であり、図4図2のb-b線の断面図である。図3では個別流路Paを通過する断面が示され、図4では個別流路Pbを通過する断面が示される。
【0034】
液体吐出ヘッド24は、図3および図4に示すように、流路構造体30と、複数の圧電素子41と、筐体部42と、保護基板43と、配線基板44とを有する。流路構造体30は、第1共通液室R1と、第2共通液室R2と、複数の個別流路Pと、複数のノズルNとを有する流路が形成された構造体である。
【0035】
流路構造体30は、Z1方向に向かって、ノズル基板31と、連通板33と、圧力室基板34と、振動板35とが順に積層された構造体である。流路構造体30を構成するこれらの要素は、例えば半導体を製造する一般的な加工方法によって、シリコンの単結晶基板を加工することで製造される。
【0036】
ノズル基板31には、複数のノズルNが形成される。複数のノズルNの各々は、インクを通過させる円筒状の貫通孔である。ノズル基板31は、図3および図4に示すように、Z2方向を向く表面Fa1とZ1方向を向く表面Fa2とを有する板状部材である。連通板33は、Z2方向を向く表面Fc1とZ1方向を向く表面Fc2とを有する板状部材である。
【0037】
流路構造体30を構成する各要素は、Y軸方向に長尺な矩形状に形成され、例えば接着剤により相互に接合される。例えば、ノズル基板31の表面Fa2は連通板33の表面Fc1に接合され、連通板33の表面Fc2は圧力室基板34の表面Fd1に接合される。圧力室基板34の表面Fd2は、振動板35の表面Fe1に接合される。
【0038】
連通板33には、空間O12と空間O22とが形成される。空間O12および空間O22の各々は、Y軸方向に長尺な開口である。連通板33の表面Fc1には、空間O12を閉塞する吸振体361と空間O22を閉塞する吸振体362とが設置される。吸振体361および吸振体362は、弾性材料で形成された層状部材である。連通板33は、「第1連通板」の一例である。
【0039】
筐体部42は、インクを貯留するためのケースである。連通板33の表面Fc2に筐体部42が接合される。筐体部42には、空間O12に連通する空間O13と、空間O22に連通する空間O23とが形成される。空間O13および空間O23の各々は、Y軸方向に長尺な空間である。空間O12と空間O13とは、相互に連通することで第1共通液室R1を構成する。同様に、空間O22と空間O23とは、相互に連通することで第2共通液室R2を構成する。吸振体361は第1共通液室R1の壁面を構成し、第1共通液室R1内のインクの圧力変動を吸収する。吸振体362は第2共通液室R2の壁面を構成し、第2共通液室R2内のインクの圧力変動を吸収する。
【0040】
筐体部42には供給口421と排出口422とが形成される。供給口421は、第1共通液室R1に連通する管路であり、循環機構26の供給流路265に連結される。第2供給ポンプ262から供給流路265に送出されたインクは、供給口421を経由して第1共通液室R1に供給される。他方、排出口422は、第2共通液室R2に連通する管路であり、循環機構26の循環流路264に連結される。第2共通液室R2内のインクは排出口422を経由して循環流路264に供給される。
【0041】
圧力室基板34には、圧力室Ca1および圧力室Ca2と、圧力室Cb1および圧力室Cb2とが設けられる。各圧力室Cは、連通板33の表面Fc2と振動板35との間隔である。各圧力室Cは、平面視でX軸に沿う長尺状に形成され、X1方向に延在する。
【0042】
振動板35は、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板35は、例えば、酸化シリコン(SiO)の第1層と、酸化ジルコニウム(ZrO)の第2層との積層で構成される。なお、所定厚の板状部材のうち圧力室Cに対応する領域について厚さ方向の一部を選択的に除去することで、振動板35と圧力室基板34とを一体に形成してもよい。また、振動板35を単層で形成してもよい。
【0043】
振動板35の表面Fe2には、相異なる圧力室Cに対応する複数の圧電素子41が設置される。各圧力室Cに対応する圧電素子41は、平面視で圧力室Cに重なる。具体的には、各圧電素子41は、相互に対向する第1電極および第2電極と、両電極間に形成された圧電体層との積層により構成される。各圧電素子41は、エネルギーを生成し、当該エネルギーによって圧力室C内のインクの圧力を変動させることで圧力室C内のインクをノズルNから吐出させるエネルギー生成素子である。圧電素子41は、駆動信号を受信することで自身を変形させることにより振動板35を振動させる。振動板35が振動すると圧力室Cが膨張および伸縮する。圧力室Cが膨張および伸縮することによって、圧力室Cからインクに圧力が付与される。これにより、ノズルNからインクが吐出される。
【0044】
保護基板43は、振動板35の表面Fe2に設置された板状部材であり、複数の圧電素子41を保護するとともに振動板35の機械的な強度を補強する。保護基板43と振動板35との間に複数の圧電素子41が収容される。また、振動板35の表面Fe2には配線基板44が実装される。配線基板44は、制御ユニット21と液体吐出ヘッド24とを電気的に接続するための実装部品である。例えばFPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板44が好適に利用される。配線基板44には各圧電素子41に駆動信号を供給するための駆動回路45が実装される。
【0045】
次に、個別流路Pの構成について述べる。以降の説明では、前述のとおり個別流路Paと個別流路Pbとが同じ構成であるので、個別流路Pの構成を説明する際に、個別流路Paと個別流路Pbのうち主に個別流路Paの構成を代表して説明する。なお、個別流路Pbの構成については、個別流路Paを構成する各要素の符号の添字aを添字bに置換することによって、個別流路Pbを構成する各要素の説明として同様に成立する。ここで、供給流路Rb1は「第2個別供給流路」の一例であり、排出流路Rb2は「第2個別排出流路」の一例である。また、ノズル流路Nfbは「第2ノズル流路」の一例である。
【0046】
個別流路Paは、図3に示すように、供給流路Ra1と、圧力室Ca1と、第1連通流路Na1と、ノズル流路Nfaと、第2連通流路Na2と、圧力室Ca2と、排出流路Ra2とを有する。個別流路Paは、これらの要素が一体的に構成された流路であり、前述した要素が前述した順番に連結された流路である。
【0047】
供給流路Ra1は、連通板33に形成された空間である。具体的には、供給流路Ra1は、図3に示すように、第1共通液室R1を構成する空間O12から連通板33の表面Fc2までZ軸に沿って延在する。供給流路Ra1の空間O12に連結される端部が個別流路Paの端部E1である。供給流路Ra1は圧力室Ca1に連通し、第1共通液室R1から供給されたインクを圧力室Ca1へ導く流路である。供給流路Ra1は、「第1個別供給流路」の一例である。
【0048】
第1連通流路Na1は、図3に示すように、連通板33を貫通する空間である。第1連通流路Na1は、Z軸に沿う長尺な流路である。第1連通流路Na1はZ1方向に延在し、圧力室Ca1とノズル流路Nfaとに連通する。第1連通流路Na1は、圧力室Ca1から押し出されたインクをノズル流路Nfaへ導く流路である。
【0049】
ノズル流路Nfaは連通板33に設けられ、X軸方向に延在する流路である。ノズル流路Nfaは、図2に示すように、Z軸方向に見て第1連通流路Na1と第2連通流路Na2との間に位置する。ノズル流路Nfaは、第1連通流路Na1と第2連通流路Na2とに連通し、ノズルNaが設けられる。ノズル流路Nfaは、第1連通流路Na1から供給され、ノズルNaから吐出されなかったインクを第2連通流路Na2へ導く流路である。
【0050】
ノズル流路NfaのX1方向の幅Waは、図3に示すように、第1連通流路Na1および第2連通流路Na2のZ1方向の幅haよりも大きい。即ち、ノズル流路Nfaの流路長は、第1連通流路Na1および第2連通流路Na2の流路長よりも長い。本実施形態では、幅Waの幅haに対する比率、つまり、Wa/haは、1.5以上4.0以下であることが好ましい。
【0051】
第2連通流路Na2は、図3に示すように、連通板33を貫通する空間である。第2連通流路Na2は、Z軸に沿う長尺な流路である。第2連通流路Na2はZ1方向に延存し、圧力室Ca2とノズル流路Nfaとに連通する。第2連通流路Na2は、ノズル流路Nfaから供給されたインクを圧力室Ca2へ導く流路である。
【0052】
排出流路Ra2は、連通板33に形成された空間である。具体的には、排出流路Ra2は、第2共通液室R2を構成する空間O22から連通板33の表面Fc2までZ軸に沿って延在する。排出流路Ra2の空間O22に連結される端部が個別流路Paの端部E2である。排出流路Ra2は圧力室Ca2に連通し、圧力室Ca2から押し出されたインクを第2共通液室R2へ導く流路である。排出流路Ra2は、「第1個別排出流路」の一例である。
【0053】
以上の構成において、液体吐出ヘッド24は、液体吐出装置100の稼動時において、インクを循環させながらインクの吐出を行う。具体的には、液体容器12からのインクを、供給流路265を介して第1共通液室R1に供給する。その後、駆動回路45などを含む駆動手段が圧電素子を駆動させる駆動信号を圧力室Ca1側の圧電素子41と圧力室Ca2側の圧電素子41とに出力することで、圧力室Ca1側の圧電素子41と圧力室Ca2側の圧電素子41とを同時に駆動させる。これにより、第1共通液室R1に供給されたインクがノズルNaから吐出される。また、ノズル流路Nfaに供給されるインクのうちノズルNaから吐出されないインクは、排出流路Ra2を経由して第2共通液室R2に供給される。圧力室Ca1側の圧電素子41は「第1エネルギー生成素子」の一例であり、圧力室Ca2側の圧電素子41は「第2エネルギー生成素子」の一例である。なお、前述した、個別流路Paに関するインクを循環させる動作は、個別流路Pbに関するインクを循環させる動作と同様である。
【0054】
本実施形態の液体吐出ヘッド24は、インク吐出時にインクを循環させることで、ノズルNaおよびノズルNbの近傍のインクの増粘や成分の沈殿を抑制してインクの吐出特性の悪化を防止することができる。これにより、インクの吐出特性をほぼ一定にそろえることができ、吐出特性のバラつきを抑制してインクの吐出品質を向上させることができる。なお、前述した「吐出特性」とは、例えば、インクの吐出量または吐出速度である。この点は、以下の説明においても同様である。
【0055】
図5図3および図4のc-c線の部分断面図であり、図6図3および図4のd-d線の部分断面図である。図6では、ノズル基板31の図示は省略する。
【0056】
ノズル流路NfaのY2方向の幅Daは第1連通流路Na1のY2方向の幅Da1よりも小さく、第2連通流路Na2のY2方向の幅Da2よりも小さい。同様に、ノズル流路NfbのY2方向の幅Dbは第3連通流路Nb1のY2方向の幅Db1よりも小さく、第4連通流路Nb2のY2方向の幅Db2よりも小さい。
【0057】
また、図5に示すように、Y軸方向におけるノズル流路Nfaとノズル流路Nfbとの間の距離、即ち、Y軸方向におけるノズル流路Nfaとノズル流路Nfbとの間に設けられる隔壁の厚みD1は、Y軸方向における第1連通流路Na1と第3連通流路Nb1との間に設けられる隔壁の厚みD2と、Y軸方向における第2連通流路Na2と第4連通流路Nb2との間に設けられる隔壁の厚みD3よりも厚い。
【0058】
さらに、本実施形態では、X軸方向に見たときのノズル流路Nfaの断面積は、図5の縦線で示す、Z軸方向に見たときの第1連通流路Na1および第2連通流路Na2の断面積よりも小さい。同様に、X軸方向に見たときのノズル流路Nfbの断面積は、図5の縦線で示す、Z軸方向に見たときの第3連通流路Nb1および第4連通流路Nb2の断面積よりも小さい。
【0059】
上記構成とした理由について説明する。なお、以降の説明では簡単のため、ノズル流路Nfaおよびノズル流路Nfbと、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1についてのみ記載する。第2連通流路Na2および第4連通流路Nb2については特に記載しないが、ノズル流路Nfaおよびノズル流路Nfbとの関係は第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1と同様である。
【0060】
上述のとおり、第1実施形態では、ノズル流路Nfa、ノズル流路NfbのX1方向の幅Waおよび幅Wbは、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1のZ1方向の幅haおよび幅hbよりも大きい。ここで、隣接するノズル流路間、および隣接する連通流路間では、一方の流路の内圧変化に起因する振動が他方の流路に伝搬し、当該流路に連通するノズルの吐出特性が低下する現象(以下、「構造クロストーク」という)が生じる虞がある。この構造クロストークは、それらの流路の隣接している幅が長いほど、振動が伝わる時間が長くなるため、影響が大きくなる。つまり、各流路のY軸方向における幅が仮に同一である場合、第1連通流路Na1と第3連通流路Nb1との間よりもノズル流路Nfaとノズル流路Nfbとの間の方が、構造クロストークが顕著に発生し得る。
【0061】
上記の点を鑑み、第1実施形態では、図5および図6に示すように、ノズル流路Nfaおよびノズル流路NfbのY軸方向における幅Daおよび幅Dbを比較的小さい値とする。これにより、ノズル流路Nfaとノズル流路Nfbとの間の隔壁の厚みD1を比較的大きくすることができ、一方のノズル流路内で振動が生じたとしても他方のノズル流路まで当該振動が伝搬しにくい。よって、ノズル流路Nfaとノズル流路Nfbと間における構造クロストークを低減できる。
【0062】
一方で、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1も、ノズル流路Nfaおよびノズル流路Nfbと同じくY軸方向における幅を小さくすれば、構造クロストークの影響をより小さくすることはできる。しかしながら、上述のように第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1はZ軸方向の幅がhaおよびhbと小さいため、そもそも構造クロストークが顕著なものとならない。むしろ、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1のY軸方向における幅を小さくすると、第1連通流路Na1の流路断面積とノズル流路Nfaの流路断面積の両方が小さくなり、ノズルNaに対応する流路全体の流路抵抗が大きくなってしまう。ノズルNbについても同様である。したがって、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1については、Y軸方向における幅Da1と幅Db1を比較的大きくすることで、流路抵抗の増加が抑制される。
【0063】
以上記載したように、第1実施形態によれば、各連通流路での流路抵抗の増加を抑制しつつノズル流路での構造クロストークを低減することができる。
【0064】
B:第2実施形態
図7は第2実施形態に係る図2のa-a線の断面図であり、図8は第2実施形態に係る図2のb-b線の断面図である。以下、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、その詳細な説明を省略または簡略化する。
【0065】
第2実施形態の液体吐出ヘッド24は、ノズル流路Nfaおよびノズル流路Nfbの流路長および流路幅が第1実施形態と異なる。具体的には、ノズル流路NfaのX1方向の幅Waは、第1連通流路Na1および第2連通流路Na2のZ1方向の幅haよりも小さい。即ち、ノズル流路Nfaの流路長は、第1連通流路Na1および第2連通流路Na2の流路長よりも短い。
【0066】
図9図7および図8のc-c線の部分断面図であり、図10図7および図8のd-d線の部分断面図である。図10では、ノズル基板31の図示は省略する。
【0067】
ノズル流路NfaのY2方向の幅Daは第1連通流路Na1のY2方向の幅Da1よりも大きく、第2連通流路Na2のY2方向の幅Da2よりも大きい。同様に、ノズル流路NfbのY2方向の幅Dbは第3連通流路Nb1のY2方向の幅Db1よりも大きく、第4連通流路Nb2のY2方向の幅Db2よりも大きい。
【0068】
また、図9に示すように、Y軸方向におけるノズル流路Nfaとノズル流路Nfbとの間の距離、即ち、Y軸方向におけるノズル流路Nfaとノズル流路Nfbとの間に設けられる隔壁の厚みD1は、Y軸方向における第1連通流路Na1と第3連通流路Nb1との間に設けられる隔壁の厚みD2と、Y軸方向における第2連通流路Na2と第4連通流路Nb2との間に設けられる隔壁の厚みD3よりも小さい。
さらに、第2実施形態では、X軸方向に見たときのノズル流路Nfaの断面積は、図9の縦線で示す、Z軸方向に見たときの第1連通流路Na1および第2連通流路Na2の断面積よりも大きい。同様に、X軸方向に見たときのノズル流路Nfbの断面積は、図9の縦線で示す、Z軸方向に見たときの第3連通流路Nb1および第4連通流路Nb2の断面積よりも大きい。
【0069】
第2実施形態では、ノズル流路Nfaおよびノズル流路NfbのX1方向の幅Waおよび幅Wbは、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1のZ1方向の幅haおよび幅hbよりも小さい。よって、各流路のY軸方向における幅が仮に同一である場合、ノズル流路Nfaとノズル流路Nfbとの間よりも、第1連通流路Na1と第3連通流路Nb1との間の方が、構造クロストークが顕著に発生し得る。
【0070】
上記の点に鑑み、第2実施形態では、図9および図10に示すように、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1のY軸方向における幅をDa1と比較的小さい値とする。これにより、第1連通流路Na1と第3連通流路Nb1との間の隔壁の厚みD2を比較的大きくすることができ、一方の連通流路内で振動が生じたとしても他方の連通流路まで当該振動が伝搬しにくい。第2連通流路Na2と第4連通流路Nb2との間についても同様である。よって、第1連通流路Na1と第3連通流路Nb1との間と、第2連通流路Na2と第4連通流路Nb2との間における構造クロストークが低減される。
【0071】
一方で、第2実施形態では、構造クロストークが生じにくいノズル流路Nfaおよびノズル流路Nfbについては、Y軸方向における幅Daおよび幅Dbを比較的大きくすることで、流路抵抗の増加を抑制することができる。
【0072】
以上記載したように、第2実施形態によれば、ノズル流路の流路抵抗の増加を抑制しつつ連通流路での構造クロストークを低減することができる。
【0073】
C:第3実施形態
図11は、第3実施形態に係る液体吐出ヘッド24をZ軸方向に見たときの液体吐出ヘッド24内の流路構造を示す模式図である。図11に例示される通り、液体吐出ヘッド24のうち媒体11に対向する表面には複数のノズルN(Na,Nb)が形成される。複数のノズルNはY軸に沿って配列する。複数のノズルNの各々からZ軸方向にインクが吐出される。すなわち、Z軸は、各ノズルNからインクが吐出される方向に相当する。
【0074】
第3実施形態における複数のノズルNは、第1ノズル列Laと第2ノズル列Lbとに区分される。第1ノズル列Laは、Y軸に沿って直線状に配列する複数のノズルNaの集合である。同様に、第2ノズル列Lbは、Y軸に沿って直線状に配列する複数のノズルNbの集合である。第1ノズル列Laと第2ノズル列Lbとは、X軸方向に所定の間隔をあけて並設される。また、Y軸方向における各ノズルNaの位置と、Y軸方向における各ノズルNbの位置とは相違する。図11に例示される通り、ノズルNaとノズルNbとを含む複数のノズルNがピッチ(周期)θで配列する。ピッチθは、Y軸方向におけるノズルNaとノズルNbとの中心間の距離である。
【0075】
図11に例示される通り、液体吐出ヘッド24には個別流路列25が設置される。個別流路列25は、相異なるノズルNに対応する複数の個別流路P(Pa,Pb)の集合である。複数の個別流路Pの各々は、当該個別流路Pに対応するノズルNに連通する流路である。各個別流路Pは、X軸に沿って延在する。個別流路列25は、Y軸に沿って並設された複数の個別流路Pにより構成される。なお、図11においては各個別流路Pを便宜的に単純な直線として図示したが、各個別流路Pの実際の形状については後述する。
【0076】
各個別流路Pは圧力室C(Ca,Cb)を含む。各個別流路P内の圧力室Cは、当該個別流路Pに連通するノズルNから吐出されるインクを貯留する空間である。すなわち、圧力室C内のインクの圧力が変化することでノズルNからインクが吐出される。
【0077】
図11に例示される通り、液体吐出ヘッド24には第1共通液室R1と第2共通液室R2とが設置される。第1共通液室R1および第2共通液室R2の各々は、複数のノズルNが分布する範囲の全域にわたりY軸方向に延在する。平面視において、第1共通液室R1と第2共通液室R2との間に個別流路列25と複数のノズルNとが位置する。
【0078】
複数の個別流路Pは、第1共通液室R1に共通に連通する。具体的には、各個別流路PのうちX2方向に位置する端部E1が第1共通液室R1に連結される。また、複数の個別流路Pは、第2共通液室R2に共通に連通する。具体的には、各個別流路PのうちX1方向に位置する端部E2が第2共通液室R2に連結される。以上の説明から理解される通り、各個別流路Pは、第1共通液室R1と第2共通液室R2とを相互に連通させる。第1共通液室R1から各個別流路Pに供給されるインクが当該個別流路Pに対応するノズルNから吐出される。また、第1共通液室R1から各個別流路Pに供給されるインクのうちノズルNから吐出されない部分が第2共通液室R2に排出される。
【0079】
図11に例示される通り、第3実施形態の液体吐出装置100は、循環機構26を具備する。循環機構26は、各個別流路Pから第2共通液室R2に排出されるインクを第1共通液室R1に環流させる機構である。具体的には、循環機構26は、第1供給ポンプ261と第2供給ポンプ262と貯留容器263と循環流路264と供給流路265とを具備する。
【0080】
第1供給ポンプ261は、液体容器12に貯留されたインクを貯留容器263に供給するポンプである。貯留容器263は、液体容器12から供給されるインクを一時的に貯留するサブタンクである。循環流路264は、第2共通液室R2と貯留容器263とを連通させる流路である。貯留容器263には、液体容器12に貯留されたインクが第1供給ポンプ261から供給されるほか、各個別流路Pから第2共通液室R2に排出されたインクが循環流路264を介して供給される。第2供給ポンプ262は、貯留容器263に貯留されたインクを送出するポンプである。第2供給ポンプ262から送出されたインクは、供給流路265を介して第1共通液室R1に供給される。
【0081】
個別流路列25の複数の個別流路Pは、複数の個別流路Paと複数の個別流路Pbとを含む。複数の個別流路Paの各々は、第1ノズル列Laの1個のノズルNaに連通する個別流路Pである。複数の個別流路Pbの各々は、第2ノズル列Lbの1個のノズルNbに連通する個別流路Pである。個別流路Paと個別流路Pbとは、Y軸に沿って交互に配列する。すなわち、個別流路Paと個別流路PbとはY軸方向に隣接する。
【0082】
個別流路Paは、第1部分Pa1と第2部分Pa2とを含む。各個別流路Paの第1部分Pa1は、当該個別流路Paのうち第1共通液室R1に連結される端部E1と、当該個別流路Paに連通するノズルNaとの間の流路である。第1部分Pa1は圧力室Caを含む。他方、各個別流路Paの第2部分Pa2は、当該個別流路Paに連通するノズルNaと、当該個別流路Paのうち第2共通液室R2に連結される端部E2との間の流路である。
【0083】
個別流路Pbは、第3部分Pb1と第4部分Pb2とを含む。各個別流路Pbの第3部分Pb1は、当該個別流路Pbのうち第1共通液室R1に連結される端部E1と、当該個別流路Pbに連通するノズルNbとの間の流路である。他方、各個別流路Pbの第4部分Pb2は、当該個別流路Pbに連通するノズルNbと、当該個別流路Pbのうち第2共通液室R2に連結される端部E2との間の流路である。第4部分Pb2は圧力室Cbを含む。
【0084】
以上の説明から理解される通り、第1ノズル列Laの相異なるノズルNaに対応する複数の圧力室Caは、Y軸に沿って直線状に配列する。同様に、第2ノズル列Lbの相異なるノズルNbに対応する複数の圧力室Cbは、Y軸に沿って直線状に配列する。複数の圧力室Caの配列と複数の圧力室Cbの配列とは、X軸方向に所定の間隔をあけて並設される。Y軸方向における各圧力室Caの位置と、Y軸方向における各圧力室Cbの位置とは相違する。
【0085】
また、図11から理解される通り、各個別流路Paの第1部分Pa1と各個別流路Pbの第3部分Pb1とがY軸方向に配列し、各個別流路Paの第2部分Pa2と各個別流路Pbの第4部分Pb2とがY軸方向に配列する。
【0086】
液体吐出ヘッド24の具体的な構成を以下に詳述する。図12図11のa-a線の断面図であり、図13図11のb-b線の断面図である。個別流路Paを通過する断面が図12に図示され、個別流路Pbを通過する断面が図13に図示される。
【0087】
図12および図13に例示される通り、液体吐出ヘッド24は、流路構造体30と複数の圧電素子41と筐体部42と保護基板43と配線基板44とを具備する。流路構造体30は、第1共通液室R1と第2共通液室R2と複数の個別流路Pと複数のノズルNとを含む流路が内部に形成された構造体である。
【0088】
流路構造体30は、ノズル基板31と連通板33と圧力室基板34と振動板35とが、Z1方向に以上の順番で積層された構造体である。流路構造体30を構成する各部材は、例えば半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。
【0089】
ノズル基板31には複数のノズルNが形成される。複数のノズルNの各々は、インクを通過させる円形状の貫通孔である。第1実施形態のノズル基板31は、Z2方向に位置する表面Fa1とZ1方向に位置する表面Fa2とを含む板状部材である。
【0090】
図12および図13の連通板33は、Z2方向に位置する表面Fc1とZ1方向に位置する表面Fc2とを含む板状部材である。
【0091】
圧力室基板34は、Z2方向に位置する表面Fd1とZ1方向に位置する表面Fd2とを含む板状部材である。振動板35は、Z2方向に位置する表面Fe1とZ1方向に位置する表面Fe2とを含む板状部材である。
【0092】
流路構造体30を構成する各部材は、Y軸方向に長尺な矩形状に成形され、例えば接着剤により相互に接合される。例えば、ノズル基板31の表面Fa2は連通板33の表面Fc1に接合される。また、連通板33の表面Fc2は圧力室基板34の表面Fd1に接合され、圧力室基板34の表面Fd2は振動板35の表面Fe1に接合される。
【0093】
連通板33には、空間O12と空間O22とが形成される。空間O12および空間O22の各々は、Y軸方向に長尺な開口である。連通板33の表面Fc1には、空間O12を閉塞する吸振体361と空間O22を閉塞する吸振体362とが設置される。吸振体361および吸振体362は、弾性材料で形成された層状部材である。
【0094】
筐体部42は、インクを貯留するためのケースである。連通板33の表面Fc2に筐体部42が接合される。筐体部42には、空間O12に連通する空間O13と、空間O22に連通する空間O23とが形成される。空間O13および空間O23の各々は、Y軸方向に長尺な空間である。空間O12と空間O13とは、相互に連通することで第1共通液室R1を構成する。同様に、空間O22と空間O23とは、相互に連通することで第2共通液室R2を構成する。吸振体361は、第1共通液室R1の壁面を構成し、第1共通液室R1内のインクの圧力変動を吸収する。吸振体362は、第2共通液室R2の壁面を構成し、第2共通液室R2内のインクの圧力変動を吸収する。
【0095】
筐体部42には供給口421と排出口422とが形成される。供給口421は、第1共通液室R1に連通する管路であり、循環機構26の供給流路265に連結される。第2供給ポンプ262から供給流路265に送出されたインクは、供給口421を経由して第1共通液室R1に供給される。他方、排出口422は、第2共通液室R2に連通する管路であり、循環機構26の循環流路264に連結される。第2共通液室R2内のインクは排出口422を経由して循環流路264に供給される。
【0096】
圧力室基板34には複数の圧力室C(Ca,Cb)が形成される。各圧力室Cは、連通板33の表面Fc2と振動板35の表面Fe1との間隙である。各圧力室Cは、平面視でX軸に沿う長尺状に形成される。
【0097】
振動板35は、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板35は、例えば、酸化シリコン(SiO)の第1層と、酸化ジルコニウム(ZrO)の第2層との積層で構成される。なお、所定厚の板状部材のうち圧力室Cに対応する領域について厚さ方向の一部を選択的に除去することで、振動板35と圧力室基板34とを一体に形成してもよい。また、振動板35を単層で形成してもよい。
【0098】
振動板35の表面Fe2には、相異なる圧力室Cに対応する複数の圧電素子41が設置される。各圧力室Cに対応する圧電素子41は、平面視で当該圧力室Cに重なる。具体的には、各圧電素子41は、相互に対向する第1電極および第2電極と、両電極間に形成された圧電体層との積層により構成される。各圧電素子41は、圧力室C内のインクの圧力を変動させることで当該圧力室C内のインクをノズルNから吐出させるエネルギー生成素子である。すなわち、駆動信号の供給により圧電素子41が変形することで振動板35が振動し、振動板35の振動により圧力室Cが膨張および収縮することでノズルNからインクが吐出される。
【0099】
保護基板43は、振動板35の表面Fe2に設置された板状部材であり、複数の圧電素子41を保護するとともに振動板35の機械的な強度を補強する。保護基板43と振動板35との間に複数の圧電素子41が収容される。また、振動板35の表面Fe2には配線基板44が実装される。配線基板44は、制御ユニット21と液体吐出ヘッド24とを電気的に接続するための実装部品である。例えばFPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板44が好適に利用される。配線基板44には、各圧電素子41に駆動信号を供給するための駆動回路45が実装される。
【0100】
次に、個別流路Pの詳細な構成について述べる。個別流路Paの形状と個別流路Pbの形状とは、平面視において、Z軸に平行な対称軸を中心とした回転対称な関係にある。
【0101】
個別流路Paは、図12に示すように、供給流路Ra1と、圧力室Ca1と、第1連通流路Na1と、ノズル流路Nfaと、第2連通流路Na2と、横連通流路Cq1と、排出流路Ra2とを有する。個別流路Paは、これらの要素が一体的に構成された流路であり、前述した要素が前述した順番に連結された流路である。
【0102】
供給流路Ra1は、連通板33に形成された空間である。具体的には、供給流路Ra1は、図12に示すように、第1共通液室R1を構成する空間O12から連通板33の表面Fc2までZ軸に沿って延在する。供給流路Ra1の空間O12に連結される端部が個別流路Paの端部E1である。供給流路Ra1は圧力室Ca1に連通し、第1共通液室R1から供給されたインクを圧力室Ca1へ導く流路である。供給流路Ra1は、「第1個別供給流路」の一例である。
【0103】
第1連通流路Na1は、図12に示すように、連通板33を貫通する空間である。第1連通流路Na1は、Z軸に沿う流路である。第1連通流路Na1はZ1方向に延在し、圧力室Ca1とノズル流路Nfaとに連通する。第1連通流路Na1は、圧力室Ca1から押し出されたインクをノズル流路Nfaへ導く流路である。
【0104】
ノズル流路Nfaは連通板33に設けられ、X軸方向に延在する流路である。ノズル流路Nfaは、Z軸方向に見て、第1連通流路Na1と第2連通流路Na2との間に位置する。ノズルNaは、ノズル流路Nfaに設けられる。
【0105】
第2連通流路Na2は、連通板33に設けられた空間である。第2連通流路Na2は、Z軸に沿う流路である。第2連通流路Na2はZ1方向に延存し、横連通流路Cq1とノズル流路Nfaとに連通する。第2連通流路Na2は、ノズル流路Nfaから供給されたインクを横連通流路Cq1へ導く流路である。
【0106】
横連通流路Cq1は、連通板33に設けられた空間である。横連通流路Cq1は、X軸に沿う長尺な流路である。横連通流路Cq1はX1方向に延存し、第2連通流路Na2と排出流路Ra2とに連通する。横連通流路Cq1は、第2連通流路Na2から導かれたインクを排出流路Ra2へ導く流路である。
【0107】
排出流路Ra2は、連通板33に設けられた空間である。排出流路Ra2の空間O22に連結される端部が個別流路Paの端部E2である。排出流路Ra2は横連通流路Cq1に連通し、横連通流路Cq1から導かれたインクを第2共通液室R2へ導く流路である。排出流路Ra2は、「第1個別排出流路」の一例である。
【0108】
個別流路Pbは、図13に示すように、供給流路Rb1と、横連通流路Cq2と、第3連通流路Nb1と、ノズル流路Nfbと、第4連通流路Nb2と、圧力室Cb1と、排出流路Rb2とを有する。個別流路Pbは、これらの要素が一体的に構成された流路であり、前述した要素が前述した順番に連結された流路である。
【0109】
供給流路Rb1は、連通板33に設けられた空間である。供給流路Rb1の空間O12に連結される端部が個別流路Pbの端部E1である。供給流路Rb1は横連通流路Cq2に連通し、第1共通液室R1から供給されたインクを横連通流路Cq2へ導く流路である。供給流路Rb1は、「第2個別供給流路」の一例である。
【0110】
横連通流路Cq2は、連通板33に設けられた空間である。横連通流路Cq2は、X軸に沿う長尺な流路である。横連通流路Cq2はX1方向に延存し、供給流路Rb1と第3連通流路Nb1とに連通する。横連通流路Cq2は、供給流路Rb1から供給されたインクを第3連通流路Nb1へ導く流路である。
【0111】
第3連通流路Nb1は、図13に示すように、連通板33に設けられた空間である。第3連通流路Nb1は、Z軸に沿う流路である。第3連通流路Nb1はZ1方向に延在し、横連通流路Cq2とノズル流路Nfbとに連通する。第3連通流路Nb1は、横連通流路Cq2から供給されたインクをノズル流路Nfbへ導く流路である。
【0112】
ノズル流路Nfbは連通板33に設けられ、X軸方向に延在する流路である。ノズル流路Nfbは、Z軸方向に見て、第3連通流路Nb1と第4連通流路Nb2との間に位置する。ノズルNbはノズル流路Nfbに設けられる。
【0113】
第4連通流路Nb2は、連通板33を貫通する空間である。第4連通流路Nb2は、Z軸に沿う流路である。第4連通流路Nb2はZ1方向に延存し、圧力室Cb1とノズル流路Nfbとに連通する。第4連通流路Nb2は、ノズル流路Nfbから供給されたインクを圧力室Cb1へ導く流路である。
【0114】
排出流路Rb2は、連通板33に設けられた空間である。排出流路Rb2の空間O22に連結される端部が個別流路Pbの端部E2である。排出流路Rb2は圧力室Cb1に連通し、圧力室Cb1から押し出されたインクを第2共通液室R2へ導く流路である。排出流路Rb2は、「第2個別排出流路」の一例である。
【0115】
図12および図13において、互いに隣接する個別流路Paと個別流路Pbについて、個別流路Paの圧力室Ca1や横連通流路Cq1にはY軸方向の隣接する位置に流路が存在しない。また、個別流路Pbの圧力室Cb1や横連通流路Cq2にもY軸方向の隣接する位置に流路が存在しない。よって、第1および第2実施形態に比べて、ピッチθを小さくしたとしても、構造クロストークが発生しにくい。したがって、ピッチθを小さくし、Z軸方向におけるノズル解像度を高くすることができ、高画質画像を記録することができる。
【0116】
第3実施形態の液体吐出ヘッド24は、X軸方向に見たときのノズル流路Nfaの断面積は、Z軸方向に見たときの第1連通流路Na1および第2連通流路Na2の断面積よりも小さい。また、X軸方向に見たときのノズル流路Nfbの断面積は、Z軸方向に見たときの第3連通流路Nb1および第4連通流路Nb2の断面積よりも小さい。
【0117】
上記構成とした理由について説明する。なお、以降の説明では簡単のため、ノズル流路Nfaおよびノズル流路Nfbと、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1についてのみ記載する。第2連通流路Na2および第4連通流路Nb2については特に記載しないが、ノズル流路Nfaおよびノズル流路Nfbとの関係は第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1と同様である。
【0118】
第3実施形態では、第1連通流路Na1と第3連通流路Nb1がZ1方向に重なる幅は、第1連通流路Na1よりも第3連通流路Nb1の方がZ1方向に短いため、第3連通流路Nb1の幅hb2となる。つまり、ノズル流路Nfaおよびノズル流路NfbのX1方向に重なる幅Waは、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1のZ1方向に重なる幅hb2よりも大きい。よって、構造クロストークを低減するため、ノズル流路Nfaおよびノズル流路NfbのY軸方向における幅を比較的小さい値とする。
【0119】
一方で、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1は、Z1方向に重なる幅が小さく、構造クロストークの影響を受けにくいため、Y軸方向における断面積を比較的大きくする。これにより、流路抵抗の増加が抑制される。
【0120】
以上記載したように、第3実施形態によれば、各連通流路での流路抵抗の増加を抑制しつつノズル流路での構造クロストークを低減することができる。
【0121】
なお、ノズル流路Nfaおよびノズル流路NfbのX1方向に重なる幅Waが、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1のZ1方向に重なる幅hb2よりも小さい場合、ノズル流路Nfaおよびノズル流路NfbのY軸方向における幅を比較的大きくし、第1連通流路Na1および第3連通流路Nb1のY軸方向における幅を比較的小さくすればよい。
【0122】
D:他の実施形態
液体吐出ヘッド24は、前述の第1実施形態から第3実施形態で例示した構成に限定されない。液体吐出ヘッド24は、第1実施形態から第3実施形態で例示された構成のうちから任意の選択された2以上の構成が相互に矛盾しない範囲で組み合わされた構成であってもよい。
【0123】
E:変形例
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく種々の変更を加え得る。前述の態様に付与され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。なお、以下の例示では、構造が同じである個別流路Paと個別流路Pbのうち、主に個別流路Paの構成を代表して説明する。
【0124】
(変形例1)
図14は、変形例に係る図2のa-a線の断面図である。液体吐出ヘッド24は、図2図13に示す構成に限定されない。例えば、液体吐出ヘッド24は、図14に示すようにノズル流路Nfaがノズル基板31に設けられる構成であってもよい。この構成の場合、以下の関係1および関係2を満たすことが好ましい。
【0125】
関係1:ha≦WaならばA≧B。
関係2:ha>WaならばA<B。
【0126】
なお、前述した「A」は第1連通流路Na1のXY平面における流路断面積であり、「B」はノズル流路NfaのZY平面における流路断面積である。「A」および「B」の定義は、以下の説明でも同様である。
【0127】
(変形例2)
図15は、変形例に係る図2のa-a線の断面図である。前述の態様では、ノズル流路Nfaが連通板33に設けられる構成を例示したが、ノズル流路Nfaは、図15に示すように、ノズル基板31と連通板33とにまたがって設けられてもよい。この構成の場合、前述の関係1および関係2を満たすことが好ましい。
【0128】
(変形例3)
図16は、変形例に係る図2のa-a線の断面図である。前述の態様では、ノズル基板31が連通板33に設けられる構成を例示したが、ノズル基板31と連通板33との間に連通板46が設けられてもよい。この場合、ノズル流路Nfaは、図16に示すように、連通板46に設けられる。変形例3で例示した構成の場合、前述の関係1および関係2を満たすことが好ましい。なお、連通板46は特許請求の範囲の「第2連通板」の一例である。
【0129】
(変形例4)
図17は変形例に係る図2のa-a線の断面図であり、図18図17のe-e線の部分断面図である。前述の態様では、第1連通流路Na1のZ1方向の幅と第2連通流路Na2のZ1方向の幅が同一である構成を例示したが、第1連通流路Na1と第2連通流路Na2のZ1方向の幅が互いに異なっていてもよい。この構成の場合、例えば、第1連通流路Na1のZ1方向における幅ha1は、図17に示すように、第2連通流路Na2のZ1方向における幅ha2よりも大きい。また、第1連通流路Na1のY2方向における幅Da1は、図18に示すように、第2連通流路Na2のY2方向における幅Da2よりも小さい。この構成により、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、液体吐出ヘッド24に変形例4に係る構成が採用された場合、以下の関係3~関係8を満たすことが好ましい。なお。後述する「C」は、第2連通流路Na2のXY平面における流路断面積である。
【0130】
関係3:ha1≦Wa≦ha2ならばA≧B≧C。
関係4:ha1<Wa<ha2ならばA>B>C。
関係5:Wa≦ha2<ha1ならばB≧C>A。
関係6:Wa<ha1<ha2ならばB>A>C。
関係7:ha2<ha1≦WaならばC>A≧B。
関係8:ha2<Wa<ha1ならばC>B>A。
【0131】
(変形例5)
図19は、変形例に係る液体吐出ヘッド24をZ軸から見たときの液体吐出ヘッド24内の流路構造を示す模式図である。図20図19のa-a線の断面図であり、図21図19のb-b線の断面図である。
【0132】
前述の態様では、液体吐出ヘッド24がインクを循環させる方向の上流側に圧力室Ca1および圧力室Cb1が設けられ、下流側に圧力室Ca2および圧力室Cb2が設けられるが、上流側に圧力室Ca2および圧力室Cb2が設けられ、下流側に圧力室Ca1および圧力室Cb1が設けられてもよい。
この構成の場合、図20に示すように、供給流路Ra1は圧力室Ca2に連通し、第1共通液室R1から供給されたインクを圧力室Ca2へ導く流路である。同様に、供給流路Rb1は、図21に示すように、圧力室Cb2に連通し、第1共通液室R1から供給されたインクを圧力室Cb2へ導く流路である。変形例5に係る供給流路265は供給流路Ra1と供給流路Rb1とに共通に液体を供給する。
【0133】
また、変形例5に係る液体吐出ヘッド24の排出流路Ra2は、図20に示すように、圧力室Ca1に連通し、圧力室Ca1から押し出されたインクを第2共通液室R2へ導く流路である。同様に、排出流路Rb2は、図21に示すように、圧力室Cb1に連通し、圧力室Cb1から押し出されたインクを第2共通液室R2へ導く流路である。変形例5に係る循環流路264は、第2共通液室R2と貯留容器263とを連通させる流路であり、第2共通液室R2を介して排出流路Ra2と排出流路Rb2とから共通にインクを排出する。
【0134】
(変形例6)
圧力室C内のインクの圧力を変化させるエネルギー生成素子は、前述の形態で例示した圧電素子41に限定されない。例えば、加熱により圧力室Cの内部に気泡を発生させることでインクの圧力を変動させる発熱素子をエネルギー生成素子として利用してもよい。
【0135】
(変形例7)
前述の形態では、液体吐出ヘッド24を搭載した搬送体231を往復させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、複数のノズルNが媒体11の全幅にわたり分布するライン方式の液体吐出装置にも本発明は適用される。
【0136】
F:補足
液体吐出装置100の構成は図2図21で例示された構成に限定されず、例えば、これらの図に示された構成以外のインクを循環する一般的な液体吐出装置であってもよい。さらに、前述の形態で例示した液体吐出装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用されてもよく、本発明の用途は特に限定されない。もっとも、液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示パネル等の表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、生体に関する有機物の溶液を噴出する液体吐出装置は、例えばバイオチップを製造する製造装置として利用される。
【0137】
加えて、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本発明は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0138】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0139】
G:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0140】
なお、本願において、要素Aと要素Bとが特定の方向に見て「重なる」とは、当該方向に沿ってみた場合に、要素Aの少なくとも一部と要素Bの少なくとも一部とが相互に重複することを意味する。要素Aの全部と要素Bの全部とが相互に重なる必要はなく、要素Aの少なくとも一部と要素Bの少なくとも一部とが重なれば、「要素Aと要素Bとは重なる」と解釈される。
【0141】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも小さい。この態様によれば、第1連通流路での流路抵抗の増加を抑制しつつ第1ノズル流路での構造クロストークを低減することができる。
【0142】
態様1の具体例(態様2)によれば、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第3圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第4圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第2ノズルが設けられる第2ノズル流路と、前記第2方向に延在し、前記第3圧力室と前記第2ノズル流路とに連通する第3連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第4圧力室と前記第2ノズル流路とに連通する第4連通流路と、をさらに具備し、前記第2ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第3連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、前記第3方向における前記第2ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第3連通流路の幅よりも小さい。この態様によれば、第2連通流路での流路抵抗の増加を抑制しつつ第2ノズル流路での構造クロストークを低減することができる。
【0143】
態様2の具体例(態様3)によれば、前記第1ノズル流路と前記第2ノズル流路は、前記第3方向に隣接する。
【0144】
態様3の具体例(態様4)によれば、前記第1ノズル流路と前記第2ノズル流路との間に設けられた隔壁の厚さは、前記第1連通流路と前記第3連通流路との間に設けられた隔壁の厚さよりも厚い。この態様によれば、第1ノズル流路および第2ノズル流路のうち一方のノズル流路内で振動が生じたとしても他方のノズル流路まで伝搬しにくい。よって、第1連通流路と第3連通流路との間における構造クロストークが低減される。
【0145】
態様2から態様4のいずれかの具体例(態様5)によれば、前記第1圧力室に連通し、前記第1圧力室に液体を供給する第1個別供給流路と、前記第3圧力室に連通し、前記第3圧力室に液体を供給する第2個別供給流路と、前記第1個別供給流路と前記第2個別供給流路に共通に液体を供給する共通供給流路と、前記第2圧力室に連通し、前記第2圧力室から液体が排出される第1個別排出流路と、前記第4圧力室に連通し、前記第4圧力室から液体が排出される第2個別排出流路と、前記第1個別排出流路と前記第2個別排出流路から共通に液体が排出される共通排出流路と、をさらに具備する。
【0146】
態様2から態様4のいずれかの具体例(態様6)によれば、前記第2圧力室に連通し、前記第2圧力室に液体を供給する第1個別供給流路と、前記第4圧力室に連通し、前記第4圧力室に液体を供給する第2個別供給流路と、前記第1個別供給流路と前記第2個別供給流路に共通に液体を供給する共通供給流路と、前記第3圧力室に連通し、前記第3圧力室から液体が排出される第1個別排出流路と、前記第1圧力室に連通し、前記第1圧力室から液体が排出される第2個別排出流路と、前記第1個別排出流路と前記第2個別排出流路から共通に液体が排出される共通排出流路と、をさらに具備する。
【0147】
態様1から態様6のいずれかの具体例(態様7)によれば、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第2連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、前記第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第2連通流路の前記第3方向における幅よりも小さい。この態様によれば、第2連通流路での流路抵抗の増加を抑制しつつ第1ノズル流路での構造クロストークを低減することができる。
【0148】
態様1から態様7のいずれかの具体例(態様8)によれば、前記第1連通流路の前記第2方向における幅は、前記第2連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、前記第1連通流路の前記第3方向における幅は、前記第2連通流路の前記第3方向における幅よりも小さい。
【0149】
態様1から態様8のいずれかの具体例(態様9)によれば、前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第1連通流路の断面積よりも小さい。
【0150】
態様1から態様9のいずれかの具体例(態様10)によれば、前記第1圧力室と前記第2圧力室とが形成される圧力室基板と、前記第1連通流路と前記第2連通流路とが形成される第1連通板と、前記第1ノズルが形成されるノズル基板と、をさらに具備する。
【0151】
態様10の具体例(態様11)によれば、前記第1ノズル流路は、前記第1連通板に形成される。
【0152】
態様10の具体例(態様12)によれば、前記第1ノズル流路は、前記ノズル基板に形成される。
【0153】
態様10の具体例(態様13)によれば、前記第1ノズル流路は、前記第1連通板と前記ノズル基板にまたがって形成される。
【0154】
態様10の具体例(態様14)によれば、前記第1ノズル流路が設けられる第2連通板をさらに具備し、前記第2連通板は、前記第1連通板と前記ノズル基板との間に設けられる。
【0155】
態様10の具体例(態様15)によれば、前記第1連通流路の前記第2方向における幅は、前記第2連通流路の前記第2方向における幅と異なる。
【0156】
態様1から態様15のいずれかの具体例(態様16)によれば、駆動電圧が印可されることで、前記第1圧力室の液体に圧力を付与するためのエネルギーを生成する第1エネルギー生成素子と、駆動電圧が印可されることで、前記第2圧力室の液体に圧力を付与するためのエネルギーを生成する第2エネルギー生成素子と、をさらに具備する。
【0157】
本開示のひとつの態様(態様17)に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも大きく、前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第1連通流路の断面積よりも小さい。
【0158】
本開示のひとつの態様(態様18)に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも小さく、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向における前記第1ノズル流路の幅は、前記第3方向における前記第1連通流路の幅よりも大きい。この態様によれば、第1ノズル流路での流路抵抗の増加を抑制しつつ、第1連通流路での構造クロストークを低減することができる。
【0159】
本開示のひとつの態様(態様19)に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出する第1ノズルが設けられる第1ノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室と前記第1ノズル流路とに連通する第2連通流路と、を具備し、前記第1ノズル流路の前記第1方向における幅は、前記第1連通流路の前記第2方向における幅よりも小さく、前記第1方向から見たときの前記第1ノズル流路の断面積は、前記第2方向から見たときの前記第1連通流路の断面積よりも小さい。
【0160】
本開示のひとつの態様(態様20)に係る液体吐出装置は、態様1から態様19のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する制御部とを具備する。
【符号の説明】
【0161】
41…圧電素子、264…循環流路、供給流路…265、圧力室…C,Ca,Cb,Ca1,Ca2,Cb1,Cb2、Na1…第1連通流路、Na2…第2連通流路、Nb1…第3連通流路、Nb2…第4連通流路、Nfa,Nfb…ノズル流路、Ra1,Rb1…供給流路、Ra2,Rb2…排出流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図11
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