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特許7435016光電気複合ケーブル及び光電気複合ケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光電気複合ケーブル及び光電気複合ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240214BHJP
   H01B 11/22 20060101ALI20240214BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G02B6/44 366
H01B11/22
H01B13/00 555
G02B6/44 391
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020029435
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021135329
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】長崎 泰介
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達彦
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-526525(JP,A)
【文献】特開2012-038637(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103117128(CN,A)
【文献】特開昭61-279006(JP,A)
【文献】実開昭53-132350(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2001/0019649(US,A1)
【文献】特開平06-012921(JP,A)
【文献】実開平01-094911(JP,U)
【文献】特開2019-102137(JP,A)
【文献】特開昭57-098908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線及び前記複数の光ファイバ心線の周囲に巻き回される樹脂テープを含む光ファイバ心線束と、前記光ファイバ心線束に更に撚り合わされた少なくとも1本の撚り対線とを有するケーブルユニットであって、前記ケーブルユニットの延在方向に沿って直線状に延びる抗張力繊維を内側に更に有する、ケーブルユニットと、
前記ケーブルユニットの周囲に配置される少なくとも1本のメタル線と、
前記ケーブルユニット及び前記メタル線を被覆する外被と、
を備える、光電気複合ケーブル。
【請求項2】
前記ケーブルユニットは、前記外被の略中央に配置される、請求項1に記載の光電気複合ケーブル。
【請求項3】
前記樹脂テープは、50μm以上で且つ500μm以下の厚みを有するポリエチレンテレフタレートから形成されている、請求項1又は請求項2に記載の光電気複合ケーブル。
【請求項4】
前記樹脂テープは、前記複数の光ファイバ心線の周囲を前記延在方向に沿って螺旋状に巻き回わされている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光電気複合ケーブル。
【請求項5】
前記ケーブルユニットは、前記光ファイバ心線束及び前記撚り対線の周囲に更に巻き回されるテープを有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光電気複合ケーブル。
【請求項6】
前記テープは、金属材料と合成樹脂とを含む複合材料から形成されている、請求項5に記載の光電気複合ケーブル。
【請求項7】
前記抗張力繊維は、前記複数の光ファイバ心線に隣接する領域、前記複数の光ファイバ心線と前記撚り対線との間の領域、及び、前記撚り対線を構成する線同士の間の領域の少なくとも1つの領域に配置される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光電気複合ケーブル。
【請求項8】
複数の光ファイバ心線及び前記複数の光ファイバ心線の周囲に巻き回される樹脂テープを含む光ファイバ心線束と少なくとも1本の撚り対線とを撚り合わせると共に、前記光ファイバ心線束及び前記撚り対線と抗張力繊維とを束ねてケーブルユニットを形成する工程と、
前記ケーブルユニットの周囲に1本以上のメタル線を配置する工程と、
前記ケーブルユニット及び前記メタル線を被覆する外被を形成する工程と、
を備える、光電気複合ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電気複合ケーブル及び光電気複合ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバとメタル線(電線)とを有する光電気複合ケーブルの一例が開示されている。特許文献1に記載された光電気複合ケーブルは、複数本の光ファイバ心線をテープ状に束ね、外周をチューブ状の樹脂で覆ったユニットを備える。そして、当該ユニットを囲むように複数のメタル線が配置されている。特許文献2から特許文献5には、光電気複合ケーブルの別の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-218916号公報
【文献】特開2014-078435号公報
【文献】特開2012-053121号公報
【文献】特開2018-185982号公報
【文献】特開2004-265780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光電気複合ケーブルは、中心に配置された光ファイバユニットの周囲に複数のメタル線を配置する構成を採用している。この構成に撚り対線を追加する場合、光ファイバユニットの周囲に他のメタル線と共に配置することが考えられる。しかしながら、撚り対線の外径は一般的なメタル線の外径よりも太いため、撚り対線が位置する部分がメタル線の位置する部分に比べて外側に向かって大きく膨らんでしまう。そのため、従来の構成に撚り対線をそのまま適用すると、光電気複合ケーブルの形がいびつになったり、または大型化してしまう虞がある。
【0005】
本開示は、撚り対線を有しつつ、細く外観の良い光電気複合ケーブル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光電気複合ケーブルは、少なくとも1本の光ファイバ心線と光ファイバ心線に撚り合わされた少なくとも1本の撚り対線とを有するケーブルユニットと、ケーブルユニットの周囲に配置される少なくとも1本のメタル線と、ケーブルユニット及びメタル線を被覆する外被と、を備える。
【0007】
本開示の光電気複合ケーブルの製造方法は、少なくとも1本の光ファイバ心線と少なくとも1本の撚り対線とを撚り合わせてケーブルユニットを形成する工程と、ケーブルユニットの周囲に1本以上のメタル線を配置する工程と、ケーブルユニット及びメタル線を被覆する外被を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、撚り対線を有しつつ、細く外観の良い光電気複合ケーブル及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る光電気複合ケーブルの断面図である。
図2図2は、図1に示す光電気複合ケーブルのケーブルユニットの断面図である。
図3図3は、光電気複合ケーブルの製造方法を示すフローチャートである。
図4図4は、複数の光ファイバ心線に樹脂テープを巻き回す装置を示す図である。
図5図5は、樹脂テープが巻き回された光ファイバ心線を示す図である。
図6図6は、ケーブルユニットを製造する装置を示す図である。
図7図7は、ケーブルユニットの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
一実施形態に係る光電気複合ケーブルは、少なくとも1本の光ファイバ心線と光ファイバ心線に撚り合わされた少なくとも1本の撚り対線とを有するケーブルユニットと、ケーブルユニットの周囲に配置される少なくとも1本のメタル線と、ケーブルユニット及びメタル線を被覆する外被と、を備える。
【0012】
この光電気複合ケーブルでは、光ファイバ心線と撚り対線とが撚り合ってケーブルユニットを構成し、このケーブルユニットの周囲にメタル線が配置される構成になっている。つまり、撚り対線をメタル線の配置箇所よりも光電気複合ケーブルの内側に配置する構成になっている。この場合、撚り対線が光電気複合ケーブルの外側に大きく張り出すことなく、いびつな膨らみが抑制される。よって、外観の良い光電気複合ケーブルの提供が可能となる。また、光ファイバ心線に近接する領域を有効活用して撚り対線を配置しているため、光電気複合ケーブルを細く形成することが可能となる。従って、撚り対線を有しつつ、細く外観の良い光電気複合ケーブルを実現することができる。
【0013】
一実施形態として、ケーブルユニットは、外被の略中央に配置されてもよい。この態様によれば、ケーブルユニットの周囲の領域をバランス良く活用して、全体として細く外観の良い光電気複合ケーブルを実現することができる。
【0014】
一実施形態として、光ファイバ心線は、複数の光ファイバ心線であり、ケーブルユニットは、複数の光ファイバ心線の周囲に巻き回される樹脂テープを有してもよい。この態様によれば、樹脂テープにより複数の光ファイバ心線同士が束ねられる。そのため、光電気複合ケーブルの製造工程において、ばらけた光ファイバ心線が撚り対線の間に挟まれ損傷することを防止でき、光電気複合ケーブルの製造効率の安定及び向上を図ることができる。
【0015】
一実施形態として、樹脂テープは、50μm以上で且つ500μm以下の厚みを有するポリエチレンテレフタレートから形成されてもよい。この態様によれば、樹脂テープが厚さ50μm以上のポリエチレンテレフタレートであり十分な強度を有していることから、光ファイバ心線の周囲に巻き回す際に樹脂テープが破れることを防止できる。また、樹脂テープが厚さ500μm以下であるため、光電気複合ケーブルが樹脂テープの分、太くなってしまうことを抑制することができる。
【0016】
一実施形態として、ケーブルユニットは、光ファイバ心線及び撚り対線の周囲に巻き回されるテープを有していてもよい。この態様によれば、ケーブルユニットの周囲に巻き回されたテープにより、光ファイバ心線と撚り対線とが束ねられ分離しない。そのため、光電気複合ケーブルの製造中に、ばらけた光ファイバ心線や撚り対線が製造装置に絡まるトラブルを防止でき、光電気複合ケーブルの製造効率の安定を図ることができる。この場合において、テープは、金属材料と合成樹脂とを含む複合材料から形成されていてもよい。この態様によれば、金属材料を含むテープがシールドとして機能し、光電気複合ケーブルの外部から撚り対線に侵入するノイズを遮断できる。従って、光電気複合ケーブルを用いた通信を安定化させることができる。
【0017】
一実施形態として、ケーブルユニットは、ケーブルユニットの延在方向に沿って直線状に延びる抗張力繊維を内側に有していてもよい。この態様によれば、抗張力繊維によって、光ファイバ心線が引き延ばされて破断されてしまうこと等を防止できる。
【0018】
一実施形態に係る光電気複合ケーブルの製造方法は、少なくとも1本の光ファイバ心線と少なくとも1本の撚り対線とを撚り合わせてケーブルユニットを形成する工程と、ケーブルユニットの周囲に1本以上のメタル線を配置する工程と、ケーブルユニット及びメタル線を被覆する外被を形成する工程と、を備える。
【0019】
この製造方法では、光ファイバ心線と撚り対線とが撚り合ってユニット化され、そのユニットの周囲にメタル線が配置される。このため、撚り対線が光電気複合ケーブルの外側に大きく張り出すことなく、いびつな膨らみが抑制された光電気複合ケーブルを製造することができる。また、光ファイバ心線の束が挿入されるチューブ状の樹脂を設ける必要がないため、光電気複合ケーブルを細く形成することが可能となる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示に係る光電気複合ケーブル及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、一実施形態に係る光電気複合ケーブル1の断面図である。図1は、光電気複合ケーブル1を、中心軸方向に対して垂直な方向に切断した際の断面を示している。光電気複合ケーブル1は、ケーブルユニット10、複数のメタル線30、介在32、外被40、及び金属編組42を備える。
【0022】
ケーブルユニット10は、光ファイバ心線及び撚り対線を有するケーブルの束であり、外被40の内部に収容される。ここで、図2を参照して、ケーブルユニット10の詳細な構成について説明する。
【0023】
図2は、光電気複合ケーブル1が有するケーブルユニット10の断面図である。図2に示すように、ケーブルユニット10は、複数の光ファイバ心線12、樹脂テープ14、撚り対線20、ドレイン線22、抗張力繊維24、及び複合テープ26を有する。
【0024】
光ファイバ心線12は、光ファイバの外側に紫外線硬化樹脂又はナイロン樹脂等を被覆した光ファイバである。光ファイバ心線12は、例えば0.25mm以上で且つ0.9mm以下の直径を有する。本実施形態では一例として、光電気複合ケーブル1が8本の光ファイバ心線12を備えるが、これに限定されない。光電気複合ケーブル1が備える光ファイバ心線12の本数は少なくとも1本以上であればよい。なお、一般的には、光電気複合ケーブル1は偶数本の光ファイバ心線12を備える。
【0025】
樹脂テープ14は、複数の光ファイバ心線12の周囲に巻き回されるテープであり(図5を参照)、光電気複合ケーブル1の延在方向に連続するように例えば螺旋状に巻き回される。樹脂テープ14は、隣接するテープ同士の端部が重なるように巻き回されてもよいし、隣接するテープ同士の端部の間に僅かな隙間が生じるように巻き回されてもよい。樹脂テープ14は、複数の光ファイバ心線12を束ねる。樹脂テープ14は、合成樹脂から形成され、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂から形成される。樹脂テープは、例えば50μm以上で且つ500μm以下の厚みを有する。
【0026】
撚り対線20は、一対のメタル線21を所定のピッチで撚り合わせて形成されたケーブルである。撚り対線20は、光電気複合ケーブル1によって互いに接続される電子機器同士の間において、電気的信号の送受信等を行うために用いられる。1本の撚り対線20を構成する一対のメタル線21のそれぞれは、金属導線21aと、金属導線21aを覆う絶縁性の被覆21bとを備える。金属導線21aは、例えば、錫メッキを施した銅線や銅合金からなる一本の素線から構成されてもよいし、又は、錫メッキを施した銅線や銅合金からなる複数の素線(例えば7本)を撚り合わせた導体から構成されてもよい。金属導線21aは、例えば0.3mm以上で且つ0.65mm以下の外径を有する。被覆21bの材料は、例えば、ポリ塩化ビニルやポリエチレンである。被覆21bは、例えば0.1mm以上で且つ0.23mm以下の厚みを有し、0.6mm以上で且つ1.1mm以下の外径を有する。
【0027】
ドレイン線22は、シールドとして機能する複合テープ26のアース配線である。ドレイン線22は、撚り対線20と複合テープ26との間に挟まれるように配置される。ドレイン線22は、例えば金属製の裸導線を束ねることにより構成される。
【0028】
抗張力繊維24は、ケーブルユニット10の延在方向に沿って延びる繊維である。抗張力繊維24は、複合テープ26の内部に位置しており、撚らずに直線状に延びるように配置される。抗張力繊維24は、例えば、光ファイバ心線12(樹脂テープ14)に隣接する領域、光ファイバ心線12(樹脂テープ14)と撚り対線20との間の領域、撚り対線20を構成する一対のメタル線21同士の間の領域、又は、撚り対線20とドレイン線22との間の領域等に配置される。抗張力繊維24は、抗張力性を有する繊維であり、例えば、ポリアミドの合成繊維(アラミド繊維)である。抗張力繊維24は、抗張力性を効果的に発揮するために、できるだけ直線状に配置されることが好ましい。抗張力繊維24を配置を光ファイバ心線12の傍に配置することにより、光ファイバ心線12の破断を防止する。
【0029】
複合テープ26は、複数の光ファイバ心線12、撚り対線20及びドレイン線22の周囲に巻き回される複合テープである。複合テープ26は、シールド層として機能させる場合、金属材料と合成樹脂(プラスチック材料)とを含む複合材料で形成される。複合テープ26は、一例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂から形成された樹脂テープに銅箔又はアルミニウム箔が形成された金属樹脂テープである。複合テープ26は、金属材料を含む材料で形成されている場合、内部に収容される撚り対線20のシールドとして機能する。
【0030】
図1に戻り、光電気複合ケーブル1におけるケーブルユニット10の位置について説明する。ケーブルユニット10は、外被40の略中央に配置される。ここで、ケーブルユニット10が外被40の略中央に配置されているとは、図1に示す光電気複合ケーブル1の断面において、外被40の中心軸がケーブルユニット10の外縁内(本実施形態では、複合テープ26の内側)に存するように、ケーブルユニット10が配置されている場合をいう。すなわち、ケーブルユニット10の中心軸は、外被40の中心軸と必ずしも一致しなくともよい。
【0031】
図1を用いて、光電気複合ケーブル1の内部構造について説明を続ける。メタル線30は、ケーブルユニット10の周囲に複数配置されている。メタル線30は、金属導線の外側を絶縁性の被覆で覆ったケーブルである。メタル線30は、光電気複合ケーブル1によって互いに接続される電子機器同士の間において、電力の供給又は電気的信号の送受信等を行うために用いられる。本実施形態では、9本のメタル線30が配置されているが、メタル線30の本数は1本以上であればよい。また、外径のサイズが異なるメタル線30が配置されているが、メタル線30の外径のサイズは任意であり、全てのメタル線30が同一サイズの外径を有していてもよい。メタル線30は、外径が最大のものでも、例えば0.5mm以上で且つ1.5mm以下の外径を有している。メタル線30は、撚り対線20が中心軸を中心として撚られる範囲、即ち本実施形態では、複合テープ26の外径によって画定される範囲よりも小さい外径を有している。言い換えると、ケーブルユニット10の外径は、メタル線30の外径よりも大きくなっている。
【0032】
介在32は、異なるメタル線30の間であって、ケーブルユニット10の外側に配置される。介在32は、メタル線30の間に生じた空隙を埋めるために用いられ、光電気複合ケーブル1内部においてメタル線30の位置ずれを防止する。介在32としては、例えば低収縮処理が施されたポリプロピレンからなるPPヤーンが用いられる。
【0033】
外被40は、ケーブルユニット10及び複数のメタル線30を被覆し、光電気複合ケーブル1全体を保護する。外被40は、円筒状に形成され、内部にケーブルユニット10及びメタル線30を収容する。外被40の材料は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、又はエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂であってもよい。外被40は、例えば0.1mm以上0.5mm以下の厚みを有し、2mm以上10mm以下の外径を有する。
【0034】
複数のメタル線30と外被40との間には、更に金属編組42が設けられている。金属編組42は、外部からメタル線30及びケーブルユニット10に対して侵入する電磁的ノイズを遮断するシールドとして機能し、光電気複合ケーブル1による安定した通信を可能にする。金属編組42は、例えば、錫メッキを施した銅線又は銅合金からなる素線といった金属導線を編組したものであってよい。金属編組42は、例えば0.1mm程度の厚みを有する。
【0035】
次に、図3から図6を用いて、光電気複合ケーブル1の製造方法について説明する。図3は、光電気複合ケーブル1の製造方法を示すフローチャートである。
【0036】
まず、複数の光ファイバ心線12の周囲に樹脂テープ14を巻き回して、複数の光ファイバ心線12を1つの部材(光ファイバ心線束16)とする工程を行う(ステップS10)。図4には、光ファイバ心線12に樹脂テープ14を巻き回す装置50が示されている。装置50は、ファイバサプライ部52、テープサプライ部54、及び巻取部56を備える。
【0037】
ファイバサプライ部52は、それぞれ光ファイバ心線12が巻き付けられた複数のリール52aを有する。ファイバサプライ部52が有するリール52aの個数は、光電気複合ケーブル1に収容される光ファイバ心線12の本数に対応する。本実施形態においてファイバサプライ部52は、8個のリール52aを有するが、図4では一部のリール52aの図示を省略している。ファイバサプライ部52は、各リール52aからテープサプライ部54へと光ファイバ心線12を送り出す。装置50は、ファイバサプライ部52とテープサプライ部54との間に、各光ファイバ心線12を所定の張力で引っ張りたわみを除去するダンサローラを備えていてもよい。
【0038】
テープサプライ部54は、樹脂テープ14を複数の光ファイバ心線12の周囲に巻き回す。図5には、複数の光ファイバ心線12に樹脂テープ14を巻き付ける方法を示している。図5に示すように、本実施形態では、樹脂テープ14は複数の光ファイバ心線12の周囲に螺旋状に巻き回される。このとき、樹脂テープ14は、複数の光ファイバ心線12をまとめたものの表面全体を覆うように、隣り合う樹脂テープ14に一部が重なって巻き回されてもよい。樹脂テープ14は、光ファイバ心線12の表面の一部が外部に露出するように、隣り合う樹脂テープ14同士の間に隙間を設けた状態で巻き回されてもよい。以下、樹脂テープ14が巻き回された複数の光ファイバ心線12の束を「光ファイバ心線束16」と称する。
【0039】
光ファイバ心線12への樹脂テープ14の巻き付けが完了すると、光ファイバ心線束16は、図4に示す巻取部56へと送られる。巻取部56は、リールを備えており、送られてきた光ファイバ心線束16を、リールを用いて巻き取る。以上でステップS10が完了する。
【0040】
次に、光ファイバ心線束16(複数の光ファイバ心線12)及び撚り対線20を撚り合わせ(ステップS11)、ケーブルユニット10の周囲に複合テープ26を巻き回す工程を行う(ステップS12)。図6を用いて、ステップS11及びステップS12について説明する。図6は、ケーブルユニット10を製造する装置60を示す図である。装置60は、ケーブルサプライ部62、繊維サプライ部64、テープサプライ部66、及び巻取部68を備える。
【0041】
ケーブルサプライ部62は、リール62a、62b、62cを有する。リール62aには、光ファイバ心線束16が巻き付けられている。リール62bには、撚り対線20が巻き付けられている。リール62cには、ドレイン線22が巻き付けられている。
【0042】
それぞれのリール62a、62b、62cから、光ファイバ心線束16、撚り対線20及びドレイン線22がテープサプライ部66に送り出される。送り出された光ファイバ心線束16と撚り対線20とは、所定のピッチで撚り合わされる。例えば、ケーブルサプライ部62からテープサプライ部66に向かう方向(図6において右側から左側に向かう方向)に沿う軸を回転軸としてケーブルサプライ部62を所定の速度で回転させることにより、光ファイバ心線束16と撚り対線20とが撚り合わされてもよい。なお、ドレイン線22は、更に撚り合わされてもよいし、直線状に延びるように配置されてもよい。
【0043】
繊維サプライ部64は、複数のリール64aを有する。各リール64aには、抗張力繊維24が巻き付けられている。リール64aから抗張力繊維24がテープサプライ部66へと送り出される。抗張力繊維24は、テープサプライ部66に到達する過程において、光ファイバ心線束16や撚り対線20、ドレイン線22と束ねられる。但し、抗張力繊維24は、光ファイバ心線束16等に撚られずに、直線状に延びるように配置される。
【0044】
装置60は、ケーブルサプライ部62とテープサプライ部66との間に、光ファイバ心線束16や撚り対線20、ドレイン線22を所定の張力で引っ張りたわみを除去するダンサローラを備えていてもよい。また、装置60は、繊維サプライ部64とテープサプライ部66との間に、抗張力繊維24を所定の張力で引っ張りたわみを除去するダンサローラを備えていてもよい。
【0045】
テープサプライ部66は、複合テープ26を光ファイバ心線束16、撚り対線20、ドレイン線22及び抗張力繊維24の周囲に巻き回す。このとき、図5で示した樹脂テープ14の巻き回しと同様に、光ファイバ心線束16、撚り対線20、ドレイン線22及び抗張力繊維24を束ね、その周囲に複合テープ26が螺旋状に巻き回されてもよい。この際、金属材料を含んで形成された複合テープ26をシールドとして機能させるためには、光ファイバ心線束16及び撚り対線20の表面全体を覆うように、隣り合う複合テープ26の一部が重なって巻き回されることが好ましい。即ち、巻き回される複合テープ26の間に隙間ができないように巻き回される。
【0046】
光ファイバ心線束16、撚り対線20、ドレイン線22及び抗張力繊維24が複合テープ26で巻き回されることにより、ケーブルユニット10が完成する。完成したケーブルユニット10は、図6に示す巻取部68に送られる。巻取部68は、リールを備えており、送られてきたケーブルユニット10を当該リールで巻き取る。以上で、ステップS11及びステップS12が終了する。
【0047】
続いて、ケーブルユニット10の周りに複数のメタル線30を撚り合わせる工程を行う(ステップS13)。図1に示すように、外径の異なるメタル線30がケーブルユニット10を取り囲むように複数撚り合わされる。このとき、メタル線30同士の間に生じる空隙を埋めるために、所定量の介在32がメタル線30と合わせてケーブルユニット10の周りに撚り合わされる。
【0048】
続いて、ステップS13が終了すると、メタル線30等の外側に金属編組42及び外被40を形成する工程を行う(ステップS14)。具体的には、金属編組42を複数のメタル線30の周囲に巻き付け、押出成形により外被40を形成する。以上により、光電気複合ケーブル1の製造工程が終了する。
【0049】
以上、光電気複合ケーブル1によれば、光ファイバ心線12と撚り対線20とが撚り合ってケーブルユニット10を構成し、ケーブルユニット10の周囲にメタル線30が配置されるようになっている。つまり、光電気複合ケーブル1は、撚り対線20をメタル線30の配置箇所よりも光電気複合ケーブル1の内側に配置する構成になっている。この場合、撚り対線20が光電気複合ケーブル1の外側に大きく張り出すことなく、いびつな膨らみが抑制される。そのため、外観の良い光電気複合ケーブル1の提供が可能となる。また、光ファイバ心線12に近接する領域を有効活用して撚り対線20を配置しているため、光電気複合ケーブル1を細く形成することが可能となる。よって、撚り対線20を有しつつ、細く外観の良い光電気複合ケーブル1を実現することができる。
【0050】
光電気複合ケーブル1によれば、ケーブルユニット10は、外被40の略中央に配置されている。この態様によれば、ケーブルユニット10の周囲の領域をバランス良く活用して、全体として細くて外観の良い光電気複合ケーブル1を実現することができる。
【0051】
光電気複合ケーブル1によれば、光ファイバ心線12は、複数の光ファイバ心線12であり、ケーブルユニット10は、複数の光ファイバ心線12の周囲に巻き回される樹脂テープ14を有している。この態様によれば、樹脂テープ14により複数の光ファイバ心線12同士が束ねられる。そのため、光電気複合ケーブル1の製造工程において、ばらけた光ファイバ心線12が撚り対線20の間に挟まれ損傷することを防止でき、光電気複合ケーブル1の製造効率の安定及び向上を図ることができる。
【0052】
光電気複合ケーブル1によれば、樹脂テープ14は、50μm以上で且つ500μm以下の厚みを有するポリエチレンテレフタレートから形成されている。この態様によれば、樹脂テープ14が厚さ50μm以上のポリエチレンテレフタレートであり十分な強度を有していることから、光ファイバ心線12の周囲に巻き回す際に樹脂テープ14が破れることを防止できる。また、樹脂テープ14が厚さ500μm以下であるため、光電気複合ケーブル1が樹脂テープ14の分、太くなってしまうことを抑制することができる。
【0053】
本実施形態に係る光電気複合ケーブル1によれば、ケーブルユニット10は、光ファイバ心線12及び撚り対線20の周囲に巻き回される複合テープ26を有している。この態様によれば、ケーブルユニット10の周囲に巻き回された複合テープ26により、光ファイバ心線12と撚り対線20とが束ねられ分離しない。そのため、光電気複合ケーブル1の製造中に、ばらけた光ファイバ心線12や撚り対線20が製造装置に絡まるトラブルを防止でき、光電気複合ケーブル1の製造効率の安定を図ることができる。この場合において、複合テープ26は、金属材料と合成樹脂とを含む複合材料で形成されていてもよい。この態様によれば、金属材料を含む複合テープ26がシールドとして機能し、光電気複合ケーブル1の外部から撚り対線20に侵入するノイズを遮断する。そのため、光電気複合ケーブル1を用いた安定した通信が実現できる。
【0054】
本実施形態に係る光電気複合ケーブル1によれば、ケーブルユニット10は、ケーブルユニット10の延在方向に沿って直線状に延びる抗張力繊維24を有している。この態様によれば、抗張力繊維24は、光ファイバ心線12が引き延ばされて破断されてしまうこと等を防止できる。
【0055】
本実施形態に係る光電気複合ケーブル1の製造方法によれば、光ファイバ心線12と撚り対線20とが撚り合ってユニット化され、そのケーブルユニット10の周囲にメタル線30が配置される。このため、撚り対線20が光電気複合ケーブル1の外側に大きく張り出すことなく、いびつな膨らみが抑制された光電気複合ケーブル1を製造することができる。また、光ファイバ心線12の束が挿入されるチューブ状の樹脂を設ける必要がないため、光電気複合ケーブル1を細く形成することが可能となる。
【0056】
[変形例]
ここで、図7を用いて、ケーブルユニット10の変形例について説明する。図7は、変形例に係るケーブルユニット10Aの断面図である。以下の説明では、図2を用いて前述した他の実施形態との相違点を主に説明し、共通する点については説明を省略する場合がある。
【0057】
ケーブルユニット10Aは、複数の光ファイバ心線12と光ファイバ心線12に巻き回された樹脂テープ14とを有する。図2に示した実施形態では、ケーブルユニット10の断面視において、4本を1列とした光ファイバ心線12の列が、略平行に2列並んで配置されている。そのため、光ファイバ心線12を取り巻く樹脂テープ14の断面形状は、扁平な楕円形状を呈している。一方、本変形例に係るケーブルユニット10Aの光ファイバ心線12は、ケーブルユニット10Aの断面視において、1本の光ファイバ心線12を囲うように他の光ファイバ心線12が位置している。そのため、樹脂テープ14の断面形状は、図2に示す実施形態よりも円に近い形状を呈している。
【0058】
ケーブルユニット10Aは、光ファイバ心線12及び撚り対線20の周りに巻き回された複合テープ26を有する。ケーブルユニット10Aの断面視において、撚り対線20を構成する2本のメタル線21及び光ファイバ心線束16は、それぞれが三角形の頂点に位置するように配置されている。そのため、複合テープ26は、断面視において略三角形を呈するように巻き回されている。複合テープ26のうち、撚り対線20と光ファイバ心線束16とを結ぶ領域はおよそ平坦に設けられている。一方、撚り対線20を構成する2本のメタル線と複合テープ26との間には、ドレイン線22が配置されている。そのため、複合テープ26のうち、撚り対線20を構成する2本のメタル線を結ぶ領域は弧を描くように外側に膨らんで設けられている。
【0059】
複合テープ26は、図5に示した樹脂テープ14と同様に、光ファイバ心線束16と撚り対線20の周りを螺旋状に巻き回されている。このとき、光ファイバ心線束16と撚り対線20の表面全体を覆うように複合テープ26の一部が重なるように巻き回される。そのため、図7の断面図に示すように、複合テープ26の一部が光ファイバ心線束16の外表面において重なって位置している(図1も同様であるが省略)。
【0060】
ケーブルユニット10Aは、抗張力繊維24を有している。本変形例において抗張力繊維24は、光ファイバ心線12と撚り対線20との間の空間だけでなく、撚り対線20とドレイン線22との間の空間や撚り対線20と複合テープ26との間の空間にも配置されている。なお、抗張力繊維24は、上記空間に限らず、複合テープ26内の他の空間に配置されていてもよい。
【0061】
本変形例のように、複合テープ26のうち撚り対線20と光ファイバ心線束16とを結ぶ領域をおよそ平坦になるように構成することで、複合テープ26を設けた場合であってもケーブルユニット10Aが太くなることを抑制できる。つまり、図1に示す態様よりもケーブルユニット10Aの形状を更に小さくすることが可能である。これにより、この変形例によれば、更に細く外観の良い光電気複合ケーブル1を実現することができる。
【0062】
本変形例のように、複合テープ26の一部を重ねて巻き回すことで、撚り対線20の表面全体を隙間なく覆うことができ、複合テープ26によってより確実にノイズを遮断することができる。また、本変形例では、抗張力繊維24が複合テープ26内における複数の空間に配置されており、これにより、光ファイバ心線12に引っ張り力がかかったとしてもそれによる破断等を更に一層防止できる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用することができる。また、上述した各構成部材の外径や厚み又は光ファイバやメタル線の本数は一例にすぎず、これに限定されない。
【符号の説明】
【0064】
1…光電気複合ケーブル
10,10A…ケーブルユニット
12…光ファイバ心線
14…樹脂テープ
16…光ファイバ心線束
20…撚り対線
21…メタル線
21a…金属導線
21b…被覆
22…ドレイン線
24…抗張力繊維
26…複合テープ
30…メタル線
32…介在
40…外被
42…金属編組
50…装置
52…ファイバサプライ部
52a…リール
54…テープサプライ部
56…巻取部
60…装置
62…ケーブルサプライ部
62a…リール
62b…リール
62c…リール
64…繊維サプライ部
64a…リール
66…テープサプライ部
68…巻取部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7