(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電動オイルポンプ、及びオイルポンプシステム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20240214BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
F04B49/06 321A
H02P29/00
(21)【出願番号】P 2020031526
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】関 雄策
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-041368(JP,A)
【文献】特開2018-074632(JP,A)
【文献】特開2013-153551(JP,A)
【文献】特開2012-005254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部と、前記ポンプ部を駆動するモータ部と、前記モータ部の駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部が、通信線を介して上位装置と通信する電動オイルポンプであって、
前記制御部は、前記モータ部の駆動中に前記上位装置から送られてくる命令信号のデューティサイクルについて、所定範囲内にあるか否かを判定し、前記所定範囲内にある場合には、デューティサイクルに応じた速度で前記モータ部を駆動し、前記所定範囲内にない場合には、デューティサイクルに応じた情報の応答信号を前記上位装置に送信
し、前記命令信号のデューティサイクルについて前記所定範囲内から前記所定範囲外に変化したか否かを判定し、変化した場合には変化前と同じ速度で前記モータ部を駆動する
電動オイルポンプ。
【請求項2】
前記制御部は、前記命令信号のデューティサイクルについて前記所定範囲外から前記所定範囲内に変化したか否かを判定
し、変化した場合にはデューティサイクルに応じた速度で前記モータ部を駆動す
る
請求項1に記載の電動オイルポンプ。
【請求項3】
前記ポンプ部又は前記モータ部の互いに異なる性状を検知する複数の性状検知部を備え、
前記命令信号のデューティサイクルに応じた前記情報は、互いに異なる複数種類の前記性状であり、
複数種類の前記性状のそれぞれは、前記所定範囲外であって且つ互いに異なる範囲内のデューティサイクルに関連付けられ、
前記制御部は、前記命令信号のデューティサイクルについて、前記所定範囲外であるか否かを判定し、前記所定範囲外である場合に、前記デューティサイクルに関連付けられた前記性状
の検知結果の前記応答信号を、前記検知結果に応じたデューティサイクルで前記上位装置に送信する
請求項1又は2に記載の電動オイルポンプ。
【請求項4】
複数の前記性状検知部の1つとして、前記モータ部に供給される電流値を検知する電流検知部を備え、
前記制御部は、前記電流検知部による前記電流値の検知結果の前記応答信号を前記検知結果に応じたデューティサイクルで前記上位装置に送信する
請求項3に記載の電動オイルポンプ。
【請求項5】
複数の前記性状検知部の1つとして、前記モータ部に供給される電圧値を検知する電圧検知部を備え、
前記制御部は、前記電圧検知部による前記電圧値の検知結果の前記応答信号を前記検知結果に応じたデューティサイクルで前記上位装置に送信する
請求項3又は4に記載の電動オイルポンプ。
【請求項6】
複数の前記性状検知部の1つとして、前記ポンプ部又は前記モータ部の温度を検知する温度検知部を備え、
前記制御部は、前記温度検知部による前記温度の検知結果の前記応答信号を前記検知結果に応じたデューティサイクルで前記上位装置に送信する
請求項3乃至5の何れか1項に記載の電動オイルポンプ。
【請求項7】
前記制御部は、前記命令信号のデューティサイクルについて所定の上限値以上であるか否かを判定し、上限値以上である場合には、前記モータ部の駆動を停止させ、前記命令信号のデューティサイクルについて所定の下限値未満であるか否かを判定し、下限値未満である場合にも、前記モータ部の駆動を停止させる
請求項1乃至6の何れか1項に記載の電動オイルポンプ。
【請求項8】
電動オイルポンプと、前記電動オイルポンプに命令信号を送信する上位装置とを備えるオイルポンプシステムであって、
前記電動オイルポンプが、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の電動オイルポンプであり、
前記上位装置が、前記命令信号のデューティサイクルを前記所定範囲内で変化させることで前記制御部に対して前記モータ部の回転速度を変化させる処理を実行させ、前記所定範囲外のデューティサイクルの前記命令信号を前記制御部に送信することで前記デューティサイクルに応じた情報の信号を前記制御部から取得する処理を実行する
オイルポンプシステム。
【請求項9】
前記上位装置は、前記命令信号のデューティサイクルを前記所定範囲内から前記所定範囲外に変化させた後、前記応答信号を受信するまで、前記制御部への前記命令信号の送信を停止する
請求項8に記載のオイルポンプシステム。
【請求項10】
前記上位装置は、前記命令信号のデューティサイクルを前記所定範囲内から前記所定範囲外に変化させた後、前記応答信号を受信すると、前記所定範囲内のデューティサイクルの前記命令信号を前記制御部に送信する
請求項9に記載のオイルポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動オイルポンプ、及びオイルポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上位装置を備えるとともに、ポンプ部と、ポンプ部を駆動するモータ部と、モータ部の駆動を制御し且つ通信線を介して上位装置と通信する制御部とを有する電動オイルポンプを備えるオイルポンプシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のオイルポンプシステムとしてのオイルポンプ装置は、上記装置たる上位制御装置と、電動オイルポンプたる電動式オイルポンプとを備える。電動式オイルポンプは、ポンプ部たるオイルポンプと、モータ部たるブラシレスモータと、制御部たるモータ制御装置とを備える。上位制御装置と、電動式オイルポンプのモータ制御装置とは、通信線を介して互いに通信する。上位制御装置は、通信線を介して、制御指令信号をオイルポンプのモータ制御装置に送ることで、電動オイルポンプを駆動する。電動オイルポンプのモータ制御装置は、上位制御装置から送られてくる制御指令信号によって示されるトルク(速度)でブラシレスモータを駆動することで、オイルポンプを回転させる。また、電動オイルポンプのモータ駆動装置は、ブラシレスモータの停止中において、電動式オイルポンプの異常を検出すると、通信線を介して、故障情報を上位制御装置に送信する。上位制御装置は、電動式オイルポンプのモータ制御装置に制御指令を送信するのに先立って、電動オイルポンプのモータ制御装置からの故障情報を受信したか否かを判定する。特許文献1によれば、かかる構成のオイルポンプシステムでは、電動式オイルポンプについて正常であるか否かを適切に判断した結果に応じてブラシレスモータを制御することで、信頼性を向上させることができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のオイルポンプシステムでは、ブラシレスモータの駆動中に、電動オイルポンプのモータ駆動装置から上位制御装置に複数種類の情報を送信させるためには、通信線の線数を増やす必要がある。例えば、ブラシレスモータの駆動中に、電動オイルポンプのモータ駆動装置から上位制御装置に、ブラシレスモータに印加される電圧値と、ブラシレスモータに供給される電流値とを送信させるとする。この場合、モータ駆動装置から上位制御装置へ情報を送るための線として、例えば、故障情報(モータ停止中)又は電圧値(モータ駆動中)を送るための線の他に、電流値(モータ駆動中)を送るための線を増設する必要があり、コストアップを引き起こしてしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、通信線の線数を増加させることなく、モータ部の駆動中に、電動オイルポンプの制御部から上位装置に複数種類の情報を送信することができる電動オイルポンプ、及びオイルポンプシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の例示的な第1発明は、ポンプ部と、前記ポンプ部を駆動するモータ部と、前記モータ部の駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部が、通信線を介して上位装置と通信する電動オイルポンプであって、前記制御部は、前記モータ部の駆動中に前記上位装置から送られてくる命令信号のデューティサイクルについて、所定範囲内にあるか否かを判定し、前記所定範囲内にある場合には、デューティサイクルに応じた速度で前記モータ部を駆動し、前記所定範囲内にない場合には、デューティサイクルに応じた情報の応答信号を前記上位装置に送信し、前記命令信号のデューティサイクルについて前記所定範囲内から前記所定範囲外に変化したか否かを判定し、変化した場合には変化前と同じ速度で前記モータ部を駆動する電動オイルポンプである。
【0008】
本願の例示的な第2発明は、電動オイルポンプと、前記電動オイルポンプに命令信号を送信する上位装置とを備えるオイルポンプシステムであって、前記電動オイルポンプが、第1発明の電動オイルポンプであり、前記上位装置が、前記命令信号のデューティサイクルを前記所定範囲内で変化させることで前記制御部に対して前記モータ部の回転速度を変化させる処理を実行させ、前記所定範囲外のデューティサイクルの前記命令信号を前記制御部に送信することで前記デューティサイクルに応じた情報の信号を前記制御部から取得する処理を実行するオイルポンプシステムである。
【発明の効果】
【0009】
本願の例示的な第1発明、第2発明によれば、通信線の線数を増加させることなく、モータ部の駆動中に、電動オイルポンプの制御部から上位装置に複数種類の情報を送信することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る電動オイルポンプを+X側から示す斜視図である。
【
図2】同電動オイルポンプを-X側から示す斜視図である。
【
図3】車両に搭載されたECUと、同電動オイルポンプにおけるインバータの制御基板の回路の一部とを示す回路図である。
【
図4】同電動オイルポンプの電気回路の一部を示すブロック図である。
【
図5】応答処理の第1例の処理フローを示すフローチャートである。
【
図6】同第1例における応答信号のデューティサイクルと、応答信号によって示される電流値との関係を示すグラフである。
【
図7】同第1例における応答信号のデューティサイクルと、応答信号によって示される電圧値との関係を示すグラフである。
【
図8】同第1例における命令信号のデューティサイクルとモータの回転速度との関係を示すグラフである。
【
図9】応答処理の第2例の処理フローを示すフローチャートである。
【
図10】同第2例における命令信号のデューティサイクルとモータの回転速度との関係を示すグラフである。
【
図11】同第2例における応答信号のデューティサイクルと、応答信号によって示される温度値との関係を示すグラフである。
【
図12】同第2例の応答処理を実行する制御基板と通信するECUによって実行される命令処理の処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るオイルポンプシステムについて説明する。本実施形態では、自動車などの車両に搭載されるオイルポンプシステムについて説明する。また、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数などを異ならせる場合がある。
【0012】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、X軸方向は、
図1に示される中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。中心軸Jは、後述するモータ部10のシャフト(モータ軸)13の中心軸線である。Y軸方向は、
図1に示される電動オイルポンプの短手方向と平行な方向とする。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の何れにおいても、図中に示される矢印の向く側を+側、反対側を-側とする。
【0013】
また、以下の説明においては、X軸方向の正の側(+X側)を「フロント側」と記し、X軸方向の負の側(-X側)を「リア側」と記す。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(X軸方向)を単に「軸方向」と記し、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と記し、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と記す。
【0014】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向(X軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(X軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0015】
<全体構成>
実施形態に係るオイルポンプシステムは、上位装置としてのECU(engine control unit)と、電動オイルポンプとを備える。
【0016】
図1は、実施形態に係る電動オイルポンプ1を+X側から示す斜視図である。
図2は、電動オイルポンプ1を-X側から示す斜視図である。電動オイルポンプ1は、
図1、及び
図2に示されるように、ハウジング2、モータ部10、ポンプ部40、及びインバータ100を備える。
【0017】
(ハウジング2)
ハウジング2は、金属(例えばアルミ)製の鋳造品からなる。ハウジング2は、モータ部10のモータハウジングと、ポンプ部40のポンプハウジングと、インバータ100のインバータハウジングとを兼ねる。モータ部10のモータハウジングと、ポンプ部40のポンプハウジングと、インバータ100のインバータハウジングとは、単一の部材の部分である。
【0018】
ポンプ部40のポンプロータを収容するロータ収容部と、モータ部10のモータハウジングとは、単一の部材の部分であってもよいし、別体であってもよい。また、モータ部10のモータハウジングと、ポンプ部40のポンプハウジングとは、別体であってもよい。
【0019】
実施形態に係る電動オイルポンプ1のように、モータハウジングと、ポンプハウジングとが単一の部材の部分である場合、モータハウジングと、ポンプハウジングとの軸方向における境界は次のように定義される。即ち、シャフトをモータハウジング内からポンプハウジングのロータ収容部に向けて貫通させる貫通穴が設けられる壁の軸方向の中心が両ハウジングの軸方向の境界である。
【0020】
<モータ部10>
モータ部10は、モータハウジングの中にモータ11を備える。
【0021】
(モータ11)
モータ11は、軸方向に延びる中心軸Jに沿って配置されるシャフト13と、ロータ20と、ステータ22とを備える。
【0022】
モータ11は、例えば、インナーロータ型のモータであり、ロータ20がシャフト13の外周面に固定され、ステータ22がロータ20の径方向外側に配置される。モータ11におけるシャフト13を除く部分は、モータ11の本体部である。即ち、モータ11の本体部は、ロータ20、ステータ22などによって構成される。
【0023】
ロータ20は、シャフト13のリア側(他方側)の領域であって、且つリア側の端よりもフロント側(一方側)の領域に固定される。ステータ22は、内周面をロータ20の外周面に対向させる態様で配置される。
【0024】
モータ軸としてのシャフト13は、軸方向のフロント側が、ステータ22のフロント側の端から突出してポンプ部40(より詳しくは、後述のポンプロータ47)に接続される。
【0025】
ステータ22は、コイル22bを備える。コイル22bへの通電がなされると、ロータ20がシャフト13とともに回転する。
【0026】
ハウジング2は、軸方向リア側を向く開口を軸方向のリア側の端に備える。前述の開口は、インバータカバー198によって塞がれる。作業者は、ハウジング2からインバータカバー198を取り外すことで、インバータ100の制御基板101にアクセスすることができる。
【0027】
<ポンプ部40>
ポンプ部40は、モータ部10の軸方向フロント側に位置し、モータ部10によってシャフト13を介して駆動されてオイルを吐出する。ポンプ部40は、ポンプロータ47とポンプカバー52とを備える。
【0028】
(ポンプロータ47)
ポンプロータ47は、シャフト13のフロント側に取り付けられる。ポンプロータ47は、インナーロータ47aと、アウターロータ47bとを備える。インナーロータ47aは、シャフト13に固定される。アウターロータ47bは、インナーロータ47aの径方向外側を囲む。
【0029】
インナーロータ47aは、円環状である。インナーロータ47aは、径方向外側面に歯を有する歯車である。インナーロータ47aは、シャフト13と共に軸周り(θ方向)に回転する。アウターロータ47bは、インナーロータ47aの径方向外側を囲む円環状である。アウターロータ47bは、径方向内側面に歯を有する歯車である。アウターロータ47bの径方向外側面は円形である。
【0030】
インナーロータ47aの径方向外側面の歯車とアウターロータ47bの径方向内側面の歯車とは互いに噛み合い、シャフト13の回転に伴ってインナーロータ47aが回転することでアウターロータ47bが回転する。すなわち、シャフト13の回転によりポンプロータ47は回転する。モータ部10とポンプ部40とは同一の部材からなる回転軸としてのシャフト13を備える。これにより、電動オイルポンプ1が軸方向に大型化することを抑制できる。
【0031】
また、インナーロータ47a、及びアウターロータ47bが回転することで、インナーロータ47aとアウターロータ47bとの噛み合わせ部分の間の容積が変化する。容積が減少する領域が加圧領域となり、容積が増加する領域が負圧領域となる。
【0032】
(ポンプカバー52)
ハウジング2は、軸方向フロント側の端に、軸方向フロント側を向く開口を備える。この開口は、ポンプカバー52によって閉じられる。ポンプカバー52は、ボルト53によってハウジング2に固定される。また、ポンプカバー52は、ポンプロータ47における前述の加圧領域に対向する吐出口52aと、ポンプロータ47における前述の負圧領域に対向する吸入口52bとを備える。ポンプロータ47が回転すると、ポンプ部40内のオイルが吐出口52aを介して外部に吐出するとともに、外部のオイルが吸入口52bを介してポンプ部40内に吸引される。
【0033】
<インバータ100>
制御部としてのインバータ100は、モータ部10、及びポンプ部40よりも軸方向の-X側に配置される。モータ11の駆動を制御するインバータ100は、回路基板としての制御基板101と、インバータカバー198と、コネクタ199とを備える。
【0034】
(制御基板101)
制御基板101は、基板102と、基板102に実装される複数の電子部品とを備える。基板102は、複数の基板配線、端子、ランド、スルーホール、テストポイント等を備える。かかる構成の基板102に、複数の電子部品が実装されたものが、制御基板101である。即ち、制御基板101に実装された電子部品を制御基板101から除いた部分が、基板102である。複数の電子部品の一部は、インバータ―機能を備えるモータ駆動回路を構成する。
【0035】
制御基板101は、基板面をY軸方向、及びZ軸方向に沿わせる姿勢で、インバータハウジング内に固定される。
【0036】
(コネクタ199)
コネクタ199は、車両側の電源コネクタと接続される。車両側の電源コネクタは、常時電源用、GND用、信号入力用、及び信号出力用の4つのポートを備え、作業者によってZ軸方向の+Z側から-Z側に向けて移動されてコネクタ199に装着される。コネクタ199は、前述の4つのポートに個別に電気接続される4つのコネクタ端子を備える。
【0037】
図3は、ECU150と、インバータ100の制御基板101の回路の一部とを示す回路図である。ECU150と制御基板101とは、2線の通信線151を介して互いに通信を行う。
【0038】
制御基板101は、信号入力用のコマンド端子120と、信号出力用のレスポンス端子121とを備える。2線の通信線の一方は、コマンド端子120に電気接続され、他方は、レスポンス端子121に電気接続される。ECU150は、2線の通信線の一方を介して制御基板101のコマンド端子120に対してPWM信号からなる命令信号を送信する。制御基板101は、2線の通信線の他方を介してECU150にPWM信号からなる応答信号を送信する。
【0039】
実施形態に係るオイルポンプシステムにおいて、ECU150から発信される命令信号のデューティサイクルが所定範囲である場合には、命令信号は、モータ部10をデューティサイクルに応じた回転速度で駆動させることを制御基板101に命じる信号である。命令信号のデューティサイクルが所定範囲にない場合には、命令信号は、デューティ―サイクルに応じた情報の応答信号を送信することを制御基板101に命じる信号である。
【0040】
図4は、電動オイルポンプ1の電気回路の一部を示すブロック図である。電動オイルポンプ1のインバータ100の制御基板101は、電流検知部101aと、電圧検知部101bと、温度検知部101cとを備える。
【0041】
制御基板101は、モータ11に対してU相、V相、W相からなる三相電源を供給することでモータ11を駆動する。電流検知部101aは、制御基板101からモータ11へと流れる電流値を検知する。電圧検知部101bは、車両のバッテーリーから制御基板101に印加される電圧値を検知する。温度検知部101cは、制御基板101に搭載された出力周波数調整用の複数のスイッチング素子の近傍で温度を検知する。
【0042】
図5は、制御基板101によって実行される応答処理の第1例の処理フローを示すフローチャートである。制御基板101は、応答処理の第1例を開始すると、まず、ECU150から送信される命令信号を受信するまで待機する(S(ステップ)1)。命令信号を受信した制御基板101は(S1にてYes)、命令信号のデューティサイクルについて、35〔%〕以上、95〔%〕未満の範囲(=所定範囲)内であるか否かを判定する(S2)。範囲内である場合(S2にてYes)、制御基板101は、デューティサイクルに応じた回転速度でモータ部10を駆動する。一方、デューティサイクルが前述の範囲内でない場合(S2にてNo)、制御基板101は、モータ11の駆動速度を直前の速度に維持する(S4)。これにより、ECU150は、モータ11の駆動を停止させることなく、制御基板101に対して応答信号を要求することができる。
【0043】
制御基板101は、次に、デューティサイクルについて5〔%〕未満であるか否かを判定し(S5)、5〔%〕未満である場合(S5にてYes)には、モータ11を非常停止させる(S6)。デューティサイクルが5〔%〕未満である場合、ECU150が5〔%〕未満のデューティサイクルの命令信号を制御基板101に送信しているのではなく、通信線151の切断又は天絡を引き起こしている可能性が高い。そこで、制御基板101は、5〔%〕未満のデューティサイクルの信号を受信した場合には、モータ11を非常停止させる。これにより、通信線151の切断又は天絡によってECU150と制御基板101との通信が不能になった場合において、モータ11を駆動し続けてしまうことを回避することができる。
【0044】
デューティサイクルが5〔%〕未満でない場合(S5にてNo)、制御基板101は、デューティサイクルについて95〔%〕以上であるか否かを判定し(S7)、95〔%〕以上である場合(S7でYes)には、モータ11を非常停止させる(S6)。デューティサイクルが95〔%〕以上である場合、ECU150が95〔%〕以上のデューティサイクルの命令信号を制御基板101に送信しているのではなく、通信線151の地絡を引き起こしている可能性が高い。そこで、制御基板101は、95〔%〕以上のデューティサイクルの信号を受信した場合には、モータ11を非常停止させる。これにより、通信線151の地絡によってECU150と制御基板101との通信が不能になった場合において、モータ11を駆動し続けてしまうことを回避することができる。
【0045】
デューティサイクルが95〔%〕以上でない場合(S7にてNo)、制御基板101は、デューティサイクルについて15〔%〕以上であるか否かを判定する(S8)。そして、デューティサイクルが15〔%〕以上でない場合(S8にてNoであり、この場合、5〔%〕以上、15〔%〕未満となる)、制御基板101は、モータ11の駆動を通常停止させる。一方、デューティサイクルが15〔%〕以上である場合(S8にてYes)、制御基板101は、デューティサイクルについて25〔%〕以上であるか否かを判定する(S10)。そして、デューティサイクルが25〔%〕以上でない場合(S10にてNoであり、この場合、15〔%〕以上、25〔%〕未満となる)、制御基板101は、電流検知部101aから送られてくる電流値に応じたデューティサイクルの応答信号をECU150に送信する(S11)。これにより、制御基板101は、ECU150に対して、モータ11に流れる電流値の情報を提供することができる。
【0046】
ECU150は、電流値を取得することで、モータ11の状態に応じた制御指令を制御基板101に送ることが可能になる。例えば、省エネモードに設定されている場合に、電流値を所定の上限値以下に維持する制御指令を制御基板に送ることが可能になる。また、冬季の車両起動時に、所定の回転速度でモータ11を駆動した場合における電流値に基づいて、オイルの粘度を推定し、車両駆動に伴うオイルの粘度の低下に応じて、モータ11の回転速度の上限を上昇させていくことが可能になる。また、車両走行中に、気温の急激な低下などによってオイルの粘度が上昇した場合に、上昇の度合いに応じてモータ11の回転速度の上限を低下させていくことが可能になる。
【0047】
なお、制御基板101は、PWM信号からなる応答信号をしているときに、他の応答信号を送信すべき旨の命令信号がECU150から送られてくると、それまで送信していた応答信号に代えて、他の応答信号をECU150に送信する。ECU150は、電圧値や電流値を取得した後に、デューティサイクルに応じた回転速度でモータ11を回転させるための命令信号を制御基板101に送信する。
【0048】
デューティサイクルが25〔%〕以上である場合(S10にてYes)、制御基板101は、電圧検知部101bから送られてくる電圧値に応じたデューティサイクルの応答信号をECU150に送信する(S12)。これにより、制御基板101は、ECU150に対して、モータ11に印加される電圧値の情報を提供することができる。
【0049】
ECU150は、電圧値を取得することで、モータ11の状態に応じた制御指令を制御基板101に送ることが可能になる。例えば、電圧値が下限値を下回ったり、上限値を上回ったりした場合に、回路保護や、不安定な駆動の発生などの防止のために、モータ11を停止させることが可能になる。
【0050】
図6は、応答処理の第1例における応答信号のデューティサイクルと、応答信号によって示される電流値との関係を示すグラフである。図示のように、応答信号のデューティサイクルが高くなるにつれて、応答信号によって示される電流値が高くなる。
【0051】
図7は、応答処理の第1例における応答信号のデューティサイクルと、応答信号によって示される電圧値との関係を示すグラフである。図示のように、応答信号のデューティサイクルが高くなるにつれて、応答信号によって示される電圧値が高くなる。
【0052】
なお、電圧値として、モータ11に印加される電圧値を検知してもよい。かかる構成では、制御基板101から出力された三相電源がモータ11に届くまでに電圧降下がある場合、ECU150は、電圧降下を考慮した制御指令を制御基板101に送ることが可能になる。
【0053】
また、温度検知部をモータ11に設けてモータ11の温度値を取得してもよい。
【0054】
図8は、応答処理の第1例における命令信号のデューティサイクルとモータ11の回転速度との関係を示すグラフである。図示のように、第1例ではデューティサイクルが35〔%〕以上、95〔%〕未満の範囲内にある場合には、命令信号は制御基板101に対してモータ11の駆動を命じるモータ駆動命令信号となる。また、デューティサイクルが5〔%〕以上、15〔%〕未満の範囲である場合、命令信号は制御基板101に対してモータ11の停止を命じるモータ停止命令信号となる。また、デューティサイクルが15〔%〕以上、25〔%〕未満の範囲である場合、命令信号は制御基板101に対してモータ11に流れる電流値の送信を命じる電流値送信命令信号となる。また、デューティサイクルが25〔%〕以上、35〔%〕未満の範囲である場合、命令信号は制御基板101に対してモータ11に印加される電圧値の送信を命じる電圧値送信命令信号となる。
【0055】
モータ駆動命令信号を受信した制御基板101は、図示のように、デューティサイクルが高くなるにつれて、モータの回転速度(駆動速度)を高くする。
【0056】
図9は、制御基板101によって実行される応答処理の第2例の処理フローを示すフローチャートである。第2例では、ステップ2(S2)において、デューティサイクルについて45〔%〕以上、95〔%〕未満の範囲内にあるか否かが判定され、範囲内であれば(S2にてYes)、デューティサイクルに応じた速度でモータ11が駆動される。
【0057】
また、ステップ10(S10)において、デューティサイクルが25〔%〕以上である場合(S10にてYes)には、次に、デューティサイクルについて35〔%〕以上であるか否かが判定される(S12)。そして、デューティサイクルが35〔%〕以上でない場合(S12にてNoであり、この場合、25〔%〕以上、35〔%〕未満となる)には、電圧値に応じたデューティサイクルの応答信号が制御基板101からECU150に送信される(S13)。一方、デューティサイクルが35〔%〕である場合(S12にてYesであり、この場合、35〔%〕以上、45〔%〕未満となる)には、温度値に応じたデューティサイクルの応答信号が制御基板101からECU150に送信される(S14)。
【0058】
ECU150は、温度値を取得することで、制御基板101のスイッチング素子の温度に応じてモータ11の回転速度の上限を調整することが可能になる。
【0059】
なお、温度値として、モータ11の温度値を検知してもよい。かかる構成では、モータ11の状態に応じた制御指令を制御基板101に送ることが可能になる。例えば、ポンプ部40の温度値を所定の上限値以下に維持する制御指令を制御基板に送ることが可能になる。
【0060】
図10は、応答処理の第2例における命令信号のデューティサイクルとモータ11の回転速度との関係を示すグラフである。図示のように、第2例ではデューティサイクルが45〔%〕以上、95〔%〕未満の範囲内にある場合には、命令信号は制御基板101に対してモータ11の駆動を命じるモータ駆動命令信号となる。また、デューティサイクルが5〔%〕以上、15〔%〕未満の範囲である場合、命令信号は制御基板101に対してモータ11の停止を命じるモータ停止命令信号となる。また、デューティサイクルが15〔%〕以上、25〔%〕未満の範囲である場合、命令信号は制御基板101に対してモータ11に流れる電流値の送信を命じる電流値送信命令信号となる。また、デューティサイクルが25〔%〕以上、35〔%〕未満の範囲である場合、命令信号は制御基板101に対してモータ11に印加される電圧値の送信を命じる電圧値送信命令信号となる。また、デューティサイクルが35〔%〕以上、45〔%〕未満の範囲である場合、命令信号は制御基板101に対してポンプ部40の温度値の送信を命じる温度値送信命令信号となる。
【0061】
図11は、応答処理の第2例における応答信号のデューティサイクルと、応答信号によって示される温度値との関係を示すグラフである。図示のように、応答信号のデューティサイクルが高くなるにつれて、応答信号によって示される温度値が高くなる。
【0062】
図12は、第2例の応答処理を実行する制御基板101と通信するECU150によって実行される命令処理の処理フローを示すフローチャートである。命令処理において、ECU150は、まず、モータ駆動条件の成立を待機する(S1)。例えば、イグニションキーがONになり、且つエンジンが動いたことにより、モータ駆動条件が成立すると(S1にてYes)、ECU150は、50〔%〕のデューティサイクルのモータ駆動命令信号を制御基板101に送信してモータ11を低速で駆動させる(S2)。次に、ECU150は、命令信号を40〔%〕のデューティサイクルの温度値送信命令信号に変更した後(S3)、命令信号の送信を停止させる。前述の停止により、制御基板101による応答信号の送信が可能になる。温度値送信命令信号を受信した制御基板101は、温度値に応じたデューティサイクルの応答信号を、直前に温度値送信命令信号を受信した2線の通信線151を介してECU150に送信する。前述の送信は、
図9において、S1と、S2におけるNoと、S4と、S5におけるNoと、S7におけるNoと、S8におけるYesと、S10におけるYesと、S12におけるYesと、S14とを経る処理フローによって実行される。
【0063】
図12において、ECU150は、制御基板101から送られてくる応答信号を受信すると(S5にてYes)、ポンプ部40の温度値を応答信号のデューティサイクルに基づいて特定した後、特定結果をフラッシュメモリー等の記憶媒体に記憶する(S6)。次いで、ECU150は、20〔%〕のデューティサイクルの電流値送信命令信号を制御基板101に送信した後(S7)、命令信号の送信を停止して(S8)、制御基板101による応答信号の送信を可能にする。電流値送信命令信号を受信した制御基板101は、電流値に応じたデューティサイクルの応答信号を、直前に電流値送信命令信号を受信した2線の通信線151を介してECU150に送信する。前述の送信は、
図9において、S1と、S2におけるNoと、S4と、S5におけるNoと、S7におけるNoと、S8におけるYesと、S10におけるNoと、S11とを経る処理フローによって実行される。
【0064】
図12において、ECU150は、制御基板101から送られてくる応答信号を受信すると(S9にてYes)、モータ11に流れる電流値を応答信号のデューティサイクルに基づいて特定した後、特定結果を記憶媒体に記憶する(S10)。次いで、ECU150は、30〔%〕のデューティサイクルの電圧値送信命令信号を制御基板101に送信した後(S11)、命令信号の送信を停止して(S12)、制御基板101による応答信号の送信を可能にする。電圧値送信命令信号を受信した制御基板101は、モータ11に印加される電圧値に応じたデューティサイクルの応答信号を、直前に電圧値送信命令信号を受信した2線の通信線151を介してECU150に送信する。前述の送信は、
図9において、S1と、S2におけるNoと、S4と、S5におけるNoと、S7におけるNoと、S8におけるYesと、S10におけるYesと、S12におけるNoと、S13とを経る処理フローによって実行される。
【0065】
図12において、ECU150は、制御基板101から送られてくる応答信号を受信すると(S13)、モータ11に印加される電圧値を応答信号のデューティサイクルに基づいて特定した後、特定結果を記憶媒体に記憶する(S14)。次いで、ECU150は、温度値、電流値、電圧値に基づいてモータ駆動速度を決定した後(S15)、決定結果に応じたデューティサイクルのモータ駆動命令信号を制御基板101に送信して(S16)、モータ11を適切な速度で駆動させる。その後、モータ駆動条件が成立しなくなると(S17)、ECU150は、10〔%〕のデューティサイクルのモータ停止命令信号を制御基板101に所定の周期だけ送信してモータ11の駆動を停止させる(S18、S19)。
【0066】
<電動オイルポンプ1、及びオイルポンプシステムの作用効果>
(1)電動オイルポンプ1は、ポンプ部40と、ポンプ部40を駆動するモータ部10と、モータ部10の駆動を制御する制御部たるインバータ100(制御基板101)とを備える。インバータ100は、通信線151を介して上位装置たるECU150と通信する。インバータ100は、モータ部10の駆動中にECU150から送られてくる命令信号のデューティサイクルについて、所定範囲内にあるか否かを判定する。インバータ100は、デューティサイクルについて所定範囲内にあると判定した場合には、デューティサイクルに応じた速度でモータ部10(モータ11)を駆動する。インバータ100は、デューティサイクルについて所定範囲内にないと判定した場合には、デューティサイクルに応じた情報の応答信号をECU150に送信する。
【0067】
かかる構成において、モータ部10の駆動中にECU150からインバータ100に対して通信線151を介して所定範囲外のデューティサイクルの命令信号が送られたとする。すると、インバータ100が、通信線151を介してデューティサイクルに応じた情報の応答信号をECU150に送信する。かかる構成において、ECU150がインバータ100に送信する命令信号のデューティサイクルを所定範囲外の領域で変化させると、インバータ100からECU150に返される応答信号の情報が変化する。これにより、通信線151における1つの線を介して、インバータ100からECU150に対して複数種類の情報を送信することが可能である。よって、電動オイルポンプ1によれば、通信線151の線数を増加させることなく、モータ部10の駆動中に、インバータ100からECU150に複数種類の情報を送信することができる。
【0068】
なお、ECU150からインバータ100に対してモータ駆動命令信号とは異なる命令信号を送信しているときには、モータ駆動命令信号によるモータ部10の回転速度(駆動速度)の調整を行うことができずに、モータ部10を定速で回転させることになる。しかしながら、電動オイルポンプ1においては、回転位置制御を必要とする用途で用いられることは殆どなく、ごく短時間での回転速度調整が必要ない。加えて、モータ駆動命令信号とは異なる命令信号がEUC150から発せられてから、それに応答した応答信号がECU150に送られるまでの時間はごく短時短である。即ち、EUC150からモータ駆動命令信号とは異なる命令信号を送信する時間はごく短時間である。よって、モータ部10の駆動中に、ごく短時間だけモータ駆動命令信号によらずにモータ部10を定速回転させても、何ら問題はない。
【0069】
(2)インバータ100は、(1)の構成を備え、且つ、命令信号のデューティサイクルについて所定範囲内から所定範囲外に変化したか否かを判定し、変化した場合には変化前と同じ速度でモータ部10を駆動する。
【0070】
かかる構成において、ECU150から送信される命令信号のデューティサイクルが所定範囲内から所定範囲外に変化すると、命令信号がモータ部の駆動速度を指示する信号から、インバータ100に対して情報の提供を要求する信号に変化する。このように命令信号が変化すると、インバータ100は、変化前と同じ速度でモータを駆動する。かかる構成によれば、モータ駆動中においてECU150がインバータ100に対してモータ駆動命令信号とは異なる命令信号を送信しているときに、モータ部10の駆動を停止させてしまうことを防止することができる。
【0071】
(3)インバータ100は、(2)の構成を備え、且つ、命令信号のデューティサイクルについて所定範囲外から所定範囲内に変化したか否かを判定し、変化した場合にはデューティサイクルに応じた速度でモータ部を駆動する。
【0072】
かかる構成において、モータ駆動中に、ECU150がインバータ100に対するモータ駆動命令信号の送信を再開すると、インバータ100がECU150から送られてくるモータ駆動命令信号のデューティサイクルに応じた速度でモータ部10を駆動する。かかる構成によれば、インバータ100からECU150への応答信号の通信の終了後に、モータ部10の駆動速度を適切な速度に変化させることができる。
【0073】
(4)電動オイルポンプ1は、(1)~(3)の何れかの構成を備える。また、電動オイルポンプ1は、ポンプ部40又はモータ部10の互いに異なる性状を検知する複数の性状検知部(電圧検知部39、温度検知部49、電流検知部125)を備え、命令信号のデューティサイクルに応じた情報は、互いに異なる複数種類の前記性状である。複数種類の前記性状のそれぞれは、所定範囲外であって且つ互いに異なる範囲内のデューティサイクルに関連付けられる。インバータ100は、命令信号のデューティサイクルについて、所定範囲外であるか否かを判定し、所定範囲外である場合に、デューティサイクルに関連付けられた前記性状の検知結果の応答信号を、検知結果に応じたデューティサイクルでECU150に送信する。
【0074】
かかる構成によれば、ECU150に対して電流値及び電圧値などとった複数の性状値を情報提供することができる。
【0075】
(5)電動オイルポンプ1は、(4)の構成を備え、且つ、複数の性状検知部の1つとして、モータ部10に供給される電流値を検知する電流検知部125を備える。インバータ100は、電流検知部125による電流値の検知結果の応答信号を検知結果に応じたデューティサイクルでECU150に送信する。
【0076】
かかる構成によれば、ECU150に対し、モータ11に流れる電流値を情報提供することができる。
【0077】
(6)電動オイルポンプ1は、(4)の構成を備え、且つ、複数の性状検知部の1つとして、モータ部10に供給される電圧値を検知する電圧検知部39を備える。インバータ100は、電圧検知部39による電圧値の検知結果の応答信号を検知結果に応じたデューティサイクルでECU150に送信する。
【0078】
かかる構成によれば、ECU150に対し、モータ11に供給される電圧値を情報提供することができる。
【0079】
(7)電動オイルポンプ1は、(4)~(6)の何れかの構成を備え、且つ、複数の性状検知部の1つとして、ポンプ部40又はモータ部10の温度を検知する温度検知部を備える。インバータ100は、温度検知部による温度の検知結果の応答信号を検知結果に応じたデューティサイクルでECU150に送信する。
【0080】
かかる構成によれば、ECU150に対し、ポンプ部40又はモータ部10の温度を情報提供することができる。
【0081】
(8)電動オイルポンプ1は、(1)~(7)の何れかの構成を備える。インバータ100は、命令信号のデューティサイクルについて所定の上限値以上であるか否か(あるいは上限値を超えるか否かでもよい)を判定し、上限値以上である場合には、モータ部10の駆動を停止させる。また、インバータ100は、命令信号のデューティサイクルについて所定の下限値未満であるか否か(あるいは下限値以下であるか否かでもよい)を判定し、下限値未満である場合にも、モータ部10の駆動を停止させる。
【0082】
かかる構成によれば、通信線151の接断、天絡又は地絡が発生した場合に、モータ部10を非常停止させることができる。
【0083】
(9)オイルポンプシステムは、電動オイルポンプ1と、電動オイルポンプに命令信号を送信するECU150とを備える。電動オイルポンプ1は、(1)~(8)の何れかである。ECU150は、モータ駆動命令信号のデューティサイクルを所定範囲内で変化させることでインバータ100に対してモータ部10の回転速度を変化させる処理を実行させる。また、ECU150は、所定範囲外のデューティサイクルの命令信号をインバータ100に送信することでデューティサイクルに応じた情報の信号をインバータ100から取得する。
【0084】
かかる構成によれば、通信線151の線数を増加させることなく、モータ部10の駆動中に、インバータ100からECU150に複数種類の情報を送信することができる。
【0085】
(10)電動オイルポンプ1は、(9)の構成を備える。オイルポンプシステムのECU150は、命令信号のデューティサイクルを所定範囲内から所定範囲外に変化させた後、応答信号を受信するまで、インバータ100への命令信号の送信を停止する。
【0086】
かかる構成によれば、通信線151における命令信号と応答信号との混信の発生を防止することができる。
【0087】
(11)電動オイルポンプ1は、(10)の構成を備える。オイルポンプシステムのECU150は、命令信号のデューティサイクルを所定範囲内から所定範囲外に変化させた後、応答信号を受信すると、所定範囲内のデューティサイクルの命令信号をインバータ100に送信する。
【0088】
かかる構成によれば、モータ部の駆動中において、ECU150からインバータ100に対するモータ駆動命令信号の送信を再開した後に、モータ部10の駆動速度を適切な速度に変化させることができる。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。例えば、0~100〔%〕のデューティサイクルの範囲において、モータ駆動命令信号とするデューティサイクルの所定範囲は、0~100〔%〕における中央範囲に限られない。30~40〔%〕、及び60~70〔%〕など、複数の範囲を所定範囲としてもよい。以上に説明した実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発名とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1:電動オイルポンプ
10:モータ部
11:モータ
39:電圧検知部(性状検知部)
40:ポンプ部
49:温度検知部(性状検知部)
100:インバータ(制御部)
101:制御基板
125:電流検知部(性状検知部)
150:ECU(上位装置)
151:通信線
J:中心軸