(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光学機器
(51)【国際特許分類】
H04N 23/52 20230101AFI20240214BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240214BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240214BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
H04N23/52
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G03B17/02
G03B17/55
(21)【出願番号】P 2020031565
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪田 岳司
(72)【発明者】
【氏名】中塚 均
(72)【発明者】
【氏名】奥濃 基晴
(72)【発明者】
【氏名】有吉 智規
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-039075(JP,A)
【文献】特開2017-200109(JP,A)
【文献】特開2017-167504(JP,A)
【文献】特開平10-160841(JP,A)
【文献】特開2019-118044(JP,A)
【文献】特開2019-215491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/52
G02B 7/02
G03B 17/02
G03B 17/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学レンズと、
前記光学レンズを保持する鏡筒と、
前記光学レンズの光軸と直交する方向において前記鏡筒を取り囲んでこれを支持するとともに、周囲からの入熱を受けて昇温するマウント部材と、
前記光学レンズの光軸方向において前記光学レンズと対向するように配置された透光板とを備え、
前記鏡筒は、前記マウント部材よりも前記透光板側に向けて突出する部分を有し、
前記透光板は、前記鏡筒の先端部から距離をもって配置され、
昇温した前記マウント部材を保温するための断熱カバーが、前記マウント部材を取り囲むように設けられているとともに、昇温した前記マウント部材の熱によって前記鏡筒と前記透光板との間の空間を加熱するための伝熱部材が、前記マウント部材から前記空間側に向けて延びるように設けられている、光学機器。
【請求項2】
前記伝熱部材が、前記光学レンズの光軸と直交する方
向において前記空間に対面することとなるように、前記鏡筒よりも前記透光板側に向けて突出した部分を有している、請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記伝熱部材の前記部分が、前記空間を挟み込むように一対設けられている、請求項2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記断熱カバーが、前記マウント部材のうちの前記光学レンズの光軸と直交する方向の外表面を覆う第1カバー部と、前記マウント部材のうちの前記透光板側に位置する外表面を覆う第2カバー部とを含み、
前記第2カバー部の一部に欠除部が設けられるとともに、前記欠除部の内部に前記伝熱部材の一部または前記マウント部材の一部が配置されることにより、前記欠除部の内側の部分に伝熱経路が形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の光学機器。
【請求項5】
前記伝熱部材が、伝熱部材本体と、締結部材とを含み、
前記欠除部に前記締結部材が挿入されることにより、前記伝熱部材本体が前記マウント部材に固定されるとともに、前記断熱カバーが前記伝熱部材本体と前記マウント部材とによって挟み込まれることで固定されている、請求項4に記載の光学機器。
【請求項6】
前記光学レンズを加熱するためのヒータをさらに備え、
前記ヒータが前記マウント部材に組み付けられることにより、前記ヒータの熱が前記マウント部材および前記鏡筒を介して前記光学レンズに伝熱されるように構成されている、請求項1から5のいずれかに記載の光学機器。
【請求項7】
前記光学レンズの温度を検出するための温度センサと、
前記温度センサの検出結果に基づいて前記光学レンズが一定温度となるように前記ヒータの動作を制御する制御部とをさらに備えた、請求項6に記載の光学機器。
【請求項8】
前記光学レンズによって形成される、光学的に共役な関係にある一対の共役面のうちの一方に配置された光学デバイスをさらに備えた、請求項1から7のいずれかに記載の光学機器。
【請求項9】
前記光学デバイスが、パターン照明を形成するパターン照明形成素子からなり、
前記光学レンズが、前記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に対してパターン照明を投影することで投影パターンを結像するための投光レンズからなる、請求項8に記載の光学機器。
【請求項10】
前記光学デバイスが、撮像面を有する撮像素子からなり、
前記光学レンズが、前記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に投影された投影パターンを前記撮像面に結像するための受光レンズからなる、請求項9に記載の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学機器に関し、特に、光学レンズを保持する鏡筒と当該鏡筒を支持するマウント部材とを備えた光学アセンブリが筐体の内部に収容されてなる光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラやプロジェクタ等に代表される光学機器においては、その用途に応じて各種の光学レンズが設けられる。この光学レンズを筐体に対して組み付ける組付構造としては、様々なものが知られているが、その一つに、光学レンズを鏡筒にて保持するとともに当該鏡筒をマウント部材にて支持し、さらにこの鏡筒を支持したマウント部材を筐体に固定するという組付構造がある。
【0003】
上記組付構造が採用された光学機器においては、その製造に際して、まず、上述した光学レンズや鏡筒、マウント部材、さらには各種の光学デバイス等が相互に組み付けられることで構成された光学アセンブリが準備され、その後に、このうちのマウント部材が筐体に対して固定されることになる。その場合、筐体には、透光板が嵌め込まれた窓部が設けられ、上述した光学レンズは、この透光板に対向するように配置される。
【0004】
ここで、上記構成の光学機器において、筐体の内部の空間と筐体の外部の空間との間に温度差が生じた場合には、この温度差に起因して透光板に結露が発生してしまうおそれがある。この結露の発生は、光学機器の動作に悪影響を与えてしまうため、何らかの対策を施すことが必要になる。
【0005】
たとえば特開2019-118044号公報(特許文献1)には、透光板(半球状のレンズ保護部材)に結露が発生してしまうことが防止可能となるように、撮像素子にて発生する熱と、レンズ駆動部(より特定的にはステッピングモータ)にて発生する熱とを、マウント部材(放熱部材)を用いて伝熱し、これによって透光板とマウント部材との間の空間(すなわち、透光板と光学アセンブリとの間の空間)が加熱されるように構成されたネットワークカメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ある種の光学機器においては、光学的な特性の安定化を図るために、作動時において上述した光学レンズに温度変化が発生することを抑制することが必要になる。その場合、周囲からの入熱を受けて昇温するマウント部材を断熱カバーにて覆うことが有効であり、このように構成すればマウント部材が断熱カバーによって保温されることになり、マウント部材の温度が安定することで当該マウント部材によって保持された光学レンズに温度変化が生じることが抑制できることになる。
【0008】
しかしながら、断熱カバーは、通常はマウント部材よりも熱伝導率が小さい材料にて構成されるため、上述した特許文献1に開示される如くの構成を採用しつつ、鏡筒を支持するマウント部材を取り囲むようにこの断熱カバーを設けた場合には、透光板と光学アセンブリとの間の空間に向けてマウント部材の熱を当該マウント部材を用いて伝熱することが困難になる。そのため、何らかの構造上の工夫が必要になる。
【0009】
ここで、上述したある種の光学機器としては、たとえば光学的な手法を用いて被写体の三次元形状を計測する三次元計測装置が挙げられる。この三次元計測装置は、所定の投影パターンを被写体に投影するとともに、投影パターンが投影された状態において被写体を撮像することで得られる画像に基づいて被写体の各部の位置(三次元計測装置の計測ヘッドからの距離)を計測し、これにより被写体の三次元形状を計測するものである。
【0010】
この三次元計測装置に具備される投影部および撮像部には、これらの光学的な特性の安定化を図るために上述した断熱カバーが設けられることが好ましい。そのため、当該三次元計測装置において透光板の結露の発生を抑制するためには、上述した構造上の工夫を施すことが必要不可欠である。
【0011】
したがって、本開示の目的とするところは、鏡筒を支持するマウント部材を保温するための断熱カバーが設けられた光学機器において、光学レンズに対向して配置される透光板に結露が発生してしまうことを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に従ったある局面に係る光学機器は、光学レンズと、上記光学レンズを保持する鏡筒と、上記光学レンズの光軸と直交する方向において上記鏡筒を取り囲んでこれを支持するとともに、周囲からの入熱を受けて昇温するマウント部材と、上記光学レンズの光軸方向において上記光学レンズと対向するように配置された透光板とを備えている。上記鏡筒は、上記マウント部材よりも上記透光板側に向けて突出する部分を有しており、上記透光板は、上記鏡筒の先端部から距離をもって配置されている。本開示に従った上記ある局面に係る光学機器にあっては、昇温した上記マウント部材を保温するための断熱カバーが、上記マウント部材を取り囲むように設けられているとともに、昇温した上記マウント部材の熱によって上記鏡筒と上記透光板との間の空間を加熱するための伝熱部材が、上記マウント部材から上記空間側に向けて延びるように設けられている。
【0013】
このように構成することにより、マウント部材を断熱カバーで覆いつつも、マウント部材とは別に設けた伝熱部材により、マウント部材の熱を鏡筒と透光板との間の空間に伝熱することが可能になる。したがって、鏡筒を支持するマウント部材を保温するための断熱カバーが設けられてなる光学機器において、光学レンズに対向して配置される透光板に結露が発生してしまうことが効果的に抑制できる。
【0014】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器にあっては、上記伝熱部材が、上記光学レンズの光軸と直交する方向の少なくとも一部において上記空間に対面することとなるように、上記鏡筒よりも上記透光板側に向けて突出した部分を有していてもよい。
【0015】
このように構成することにより、鏡筒と透光板との間の空間に直接的に対面するように伝熱部材の一部が配置されることになるため、伝熱部材の当該部分によって上記空間を効率的に加熱することができる。
【0016】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器にあっては、上記伝熱部材の上記部分が、上記空間を挟み込むように一対設けられていてもよい。
【0017】
このように構成することにより、鏡筒と透光板との間の空間が伝熱部材の一部によって挟み込まれて囲われることになるため、さらに効率的に上記空間を加熱することができる。
【0018】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器にあっては、上記断熱カバーが、上記マウント部材のうちの上記光学レンズの光軸と直交する方向の外表面を覆う第1カバー部と、上記マウント部材のうちの上記透光板側に位置する外表面を覆う第2カバー部とを含んでいてもよく、その場合には、上記第2カバー部の一部に欠除部が設けられるとともに、上記欠除部の内部に上記伝熱部材の一部または上記マウント部材の一部が配置されることにより、上記欠除部の内側の部分に伝熱経路が形成されていてもよい。
【0019】
このように構成することにより、マウント部材の外周面のみならず、鏡筒が前方に向けて突出配置された部分であるマウント部材の前端面側においても、当該マウント部材の外表面を断熱カバーによって覆うことが可能になるため、マウント部材の保温性が飛躍的に向上することになる。さらには、マウント部材の上記前端面を覆う部分である断熱カバーの第2カバー部の一部に欠除部を設けて当該欠除部の内側に伝熱経路を設けることにより、マウント部材の熱を当該伝熱経路を介して最短距離で上記空間に伝熱させることができる。したがって、光学レンズを効率的に加熱しつつも、透光板が結露することが確実に防止できることになる。
【0020】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器にあっては、上記伝熱部材が、伝熱部材本体と、締結部材とを含んでいてもよく、上記欠除部に上記締結部材が挿入されることにより、上記伝熱部材本体が上記マウント部材に固定されるとともに、上記断熱カバーが上記伝熱部材本体と上記マウント部材とによって挟み込まれることで固定されていてもよい。
【0021】
このように構成することにより、締結部材を用いることで伝熱部材をマウント部材に対して容易に固定することができるばかりでなく、簡素な構成にて上述した伝熱経路を構築することが可能になるため、組立て作業の容易化と製造コストの削減とが図られることになる。
【0022】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器は、上記光学レンズを加熱するためのヒータをさらに備えていてもよい。その場合には、上記ヒータが上記マウント部材に組み付けられることにより、上記ヒータの熱が上記マウント部材および上記鏡筒を介して上記光学レンズに伝熱されるように構成されていてもよい。
【0023】
このように構成することにより、ヒータの熱によって光学レンズならびに上記空間をより効率的に加熱することが可能になるため、高性能の光学機器とすることができる。
【0024】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器は、上記光学レンズの温度を検出するための温度センサと、上記温度センサの検出結果に基づいて上記光学レンズが一定温度となるように上記ヒータの動作を制御する制御部とをさらに備えていてもよい。
【0025】
このように構成することにより、ヒータの熱によって光学レンズが一定温度に保たれるようになるため、作動時において光学レンズに温度変化が発生することが確実に防止できる。したがって、高性能の光学機器とすることができる。
【0026】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器は、上記光学レンズによって形成される、光学的に共役な関係にある一対の共役面のうちの一方に配置された光学デバイスをさらに備えていてもよい。
【0027】
このように構成することにより、用途に応じた様々な機能を備えた光学機器において、光学レンズに対向して配置される透光板に結露が発生してしまうことが効果的に抑制できる。
【0028】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器にあっては、上記光学デバイスが、パターン照明を形成するパターン照明形成素子にて構成されているとともに、上記光学レンズが、上記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に対してパターン照明を投影することで投影パターンを結像するための投光レンズにて構成されていてもよい。
【0029】
このように構成した場合には、光学機器としての三次元計測装置の投影部に具備された投光レンズに対向して配置される透光板に結露が発生してしまうことが抑制可能となる。
【0030】
本開示に従った上記ある局面に係る光学機器にあっては、上記光学デバイスが、撮像面を有する撮像素子にて構成されているとともに、上記光学レンズが、上記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に投影された投影パターンを上記撮像面に結像するための受光レンズにて構成されていてもよい。
【0031】
このように構成した場合には、光学機器としての三次元計測装置の撮像部に具備された受光レンズに対向して配置される透光板に結露が発生してしまうことが抑制可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、鏡筒を支持するマウント部材を保温するための断熱カバーが設けられた光学機器において、光学レンズに対向して配置された透光板に結露が発生してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施の形態に係る三次元計測装置の概略図である。
【
図2】
図1に示す計測ヘッドの機能ブロックの構成を示す模式図である。
【
図3】
図1に示す計測ヘッドの具体的な構造の概念を示す模式図である。
【
図4】
図1に示す画像計測装置の機能ブロックの構成を示す模式図である。
【
図5】
図1に示す三次元計測装置において計測ヘッドから照射される投影パターンの一例を示す図である。
【
図6】
図1に示す三次元計測装置が実行する三次元計測の原理を説明するための図である。
【
図7】
図1に示す三次元計測装置の撮像部側の計測レンジを示す図である。
【
図8】
図1に示す計測ヘッドの外観構造を示す概略斜視図である。
【
図9】
図1に示す計測ヘッドの内部構造を示す概略斜視図である。
【
図12】
図9に示す投影部の組付構造を示す分解斜視図である。
【
図13】
図9に示す投影部の組付構造を示す分解斜視図である。
【
図16】
図9に示す撮像部の組付構造を示す分解斜視図である。
【
図17】
図9に示す撮像部の組付構造を示す分解斜視図である。
【
図18】
図1に示す計測ヘッドの要部の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0035】
<A.三次元計測装置>
図1は、実施の形態に係る三次元計測装置の概略図である。まず、この
図1を参照して、本実施の形態に係る三次元計測装置1について説明する。
【0036】
図1に示すように、三次元計測装置1は、計測ヘッド10および画像計測装置1000を備えている。このうち、画像計測装置1000は、センサコントローラあるいは視覚センサとも称される。
【0037】
画像計測装置1000は、計測ヘッド10から予め定められた投影パターンを計測対象物としての被写体に投影した状態において、当該被写体を計測ヘッド10で撮像した画像(以下、「入力画像」とも称する)を取得する。典型的には、投影パターンとしては、構造化照明に従う投影パターンが採用される。すなわち、投影パターンとしては、それぞれ固有のコードが割当てられた複数種類の基準パターンを所定規則に従って配置したものが採用される(この種の方法は、固有コード法と称される)。
【0038】
画像計測装置1000は、投影パターンの情報および取得した入力画像に現れる投影パターンの情報を用いて三次元計測処理を実行することにより、三次元計測結果(三次元計測結果画像)を取得する。
【0039】
より具体的には、画像計測装置1000は、投影された投影パターンに含まれる各基準パターン(以下、「プリミティブ」とも称する)を入力画像内で探索することで、各プリミティブが照射された位置および当該照射されたプリミティブが示すコードの集合を取得する。そして、画像計測装置1000は、投影パターンに設定される単位領域(以下、「ワード」とも称する)に含まれる所定数の基準パターンが示すコードの配列と同一の配列を示す対応領域(以下、「格子状コードパターン」とも称する)を当該コードの集合から探索する。最終的に、画像計測装置1000は、格子状コードパターンの探索結果に基づいて、投影パターンの後述する照射基準面から被写体の各部までの距離を算出する。この算出された距離の集合は、三次元計測結果画像として表現される。
【0040】
三次元計測装置1は、各種の用途に用いることができるが、本例では、コンベヤC上を搬送されるワークWKおよびその周囲の三次元形状を計測する用途に用いられる。具体的には、計測ヘッド10に設けられた投影部12から投影パターンが被写体としてのワークWKおよびその周囲に向けて投影され、計測ヘッド10に設けられた撮像部13により、投影パターンが投影されたワークWKおよびその周囲が撮像される。
【0041】
<B.計測ヘッド>
図2は、
図1に示す計測ヘッドの機能ブロックの構成を示す模式図であり、
図3は、
図1に示す計測ヘッドの具体的な構造の概念を示す模式図である。次に、これら
図2および
図3を参照して、計測ヘッド10の構成について説明する。
【0042】
図2に示すように、計測ヘッド10は、処理部11と、上述した投影部12および撮像部13と、表示部14と、記憶部15と、通信インターフェイス(I/F)部16とを含んでいる。このうち、投影部12は、上述したように、投影パターンを被写体に対して投影し、撮像部13は、投影パターンが投影された被写体を撮像する。
【0043】
処理部11は、計測ヘッド10における全体処理を司る。処理部11は、典型的には、プロセッサと、プロセッサで実行される命令コードを格納するストレージと、命令コードを展開するメモリとを含んでいる。この場合、処理部11において、プロセッサが命令コードをメモリ上に展開して実行することで各種処理を実現する。処理部11の全部または一部を専用のハードウェア回路(たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等)を用いて実装してもよい。
【0044】
表示部14は、計測ヘッド10において取得あるいは算出された各種情報を外部へ通知する。
【0045】
記憶部15は、撮像部13により撮像された画像や予め設定されるキャリブレーションパラメータなどを格納する。
【0046】
通信インターフェイス部16は、計測ヘッド10と画像計測装置1000との間のデータの遣り取りを担当する。
【0047】
図3に示すように、投影部12は、光学デバイスとしてのパターン照明形成素子である光源241およびフォトマスク244と、光学レンズとしての投光レンズ220と、後述する図示しないレンズ支持部等を有している。すなわち、投影部12は、これら光源241、フォトマスク244、投光レンズ220、レンズ支持部等が互いに組み付けられることで構成された光学アセンブリにて構成されるが、その詳細な構造については後述することとする。
【0048】
光源241は、所定の波長の光をフォトマスク244の方向に向けて照射する。フォトマスク244には、所定のパターンが形成されている。フォトマスク244を通過した光は、投光レンズ220を介して、外部に照射される。これにより、外部空間に投影パターンが照射される。
【0049】
一方、撮像部13は、光学デバイスとしての撮像素子341と、光学レンズとしての受光レンズ320と、後述する図示しないレンズ支持部等とを有している。すなわち、撮像部13は、これら撮像素子341、受光レンズ320、レンズ支持部等が互いに組み付けられることで構成された光学アセンブリにて構成されるが、その詳細な構造については後述することとする。
【0050】
撮像部13は、投影パターンが投影された状態の被写体を撮像する。詳しくは、受光レンズ320を通過した光を撮像素子341が受光することにより、入力画像が得られる。
【0051】
ここで、
図2に示すように、投影部12には、投光レンズ220の温度を検出するための温度センサ254が設けられており、撮像部13には、受光レンズ320の温度を検出するための温度センサ354が設けられている。
【0052】
また、投影部12には、投光レンズ220を加熱するためのヒータであるフレキシブルヒータ250(
図10(B)等参照)のヒータ部253が設けられており、撮像部13には、受光レンズ320を加熱するためのヒータであるフレキシブルヒータ350(
図14(B)等参照)のヒータ部353が設けられている。
【0053】
一方、処理部11には、制御部11aが設けられている。制御部11aは、三次元計測時において投光レンズ220の温度および受光レンズ320の温度をそれぞれ予め定めた一定温度に保つための制御を行なう。
【0054】
具体的には、制御部11aは、温度センサ254の検出結果に基づいてヒータ部253の動作を制御することで投光レンズ220の温度を一定温度に維持するとともに、温度センサ354の検出結果に基づいてヒータ部353の動作を制御することで受光レンズ320の温度を一定温度に維持する。なお、この点の詳細については後述することとする。
【0055】
<C.画像計測装置>
図4は、
図1に示す画像計測装置の機能ブロックの構成を示す模式図である。次に、この
図4を参照して、画像計測装置1000の機能ブロックの構成について説明する。
【0056】
図4に示すように、画像計測装置1000は、典型的には汎用コンピュータを用いて実現される。画像計測装置1000は、プロセッサ1020と、メインメモリ1040と、ストレージ1060と、入力部1080と、表示部1100と、光学ドライブ1120と、下位インターフェイス部1140と、上位インターフェイス部1160とを含んでいる。これらのコンポーネントは、プロセッサバス1180を介して接続されている。
【0057】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等で構成され、ストレージ1060に格納されたプログラム(一例として、OS1061および三次元計測プログラム1062)を読出して、メインメモリ1040に展開して実行することで、後述するような各種処理を実現する。
【0058】
メインメモリ1040は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性記憶装置等で構成される。ストレージ1060は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置等で構成される。
【0059】
ストレージ1060には、基本的な機能を実現するためのOS1061に加えて、画像計測装置1000としての機能を提供するための三次元計測プログラム1062が格納される。
【0060】
入力部1080は、キーボードやマウスなどで構成され、ユーザ操作を受付ける。表示部1100は、ディスプレイ、各種インジケータ、プリンタ等で構成され、プロセッサ1020からの処理結果等を出力する。
【0061】
下位インターフェイス部1140は、計測ヘッド10との間のデータの遣り取りを担当する。上位インターフェイス部1160は、図示しない上位装置(たとえば、PLC(プログラマブルコンピュータ)等)との間のデータの遣り取りを担当する。
【0062】
画像計測装置1000は、光学ドライブ1120を有しており、コンピュータ読取可能なプログラムを非一過的に格納する記録媒体1150(たとえば、DVD(Digital Versatile Disc)等の光学記録媒体)から、その中に格納されたプログラムが読取られてストレージ1060等にインストールされる。
【0063】
画像計測装置1000で実行される三次元計測プログラム1062等は、コンピュータ読取可能な記録媒体1150を介してインストールされてもよいが、ネットワーク上のサーバ装置などからダウンロードする形でインストールされるようにしてもよい。また、本実施の形態に係る三次元計測プログラム1062が提供する機能は、OSが提供するモジュールの一部を利用する形で実現される場合もある。
【0064】
図4には、プロセッサ1020がプログラムを実行することで、画像計測装置1000として必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードウェア回路(たとえば、ASICまたはFPGA等)を用いて実装してもよい。
【0065】
<D.三次元計測>
次に、本実施の形態に係る三次元計測装置1による三次元計測について説明する。本実施の形態においては、構造化照明と称される手法を用いて三次元計測を実現する。構造化照明の手法では、所定の投影パターンを被写体に投影するともに、投影パターンが投影された状態において被写体を撮像することで得られる画像に基づいて被写体の各部の位置(計測ヘッドからの距離)を計測し、これにより被写体の三次元形状を計測する。
【0066】
本実施の形態においては、構造化照明の一例として、予め定められた投影パターン(典型的には、濃淡パターン)をもつ計測光が照射される方法を採用している。なお、以下の説明においては、投影部12の照射面を投影パターンの「照射基準面」と見なす。
【0067】
三次元計測装置1において、計測ヘッド10に含まれる投影部12と撮像部13との間でキャリブレーションが実行されており、投影部12および撮像部13の光学パラメータおよび両者を関連付ける行列は予め決定されている。投影部12および撮像部13の光学パラメータは、いずれも同じ基準点に基づいて決定されており、投影部12の投影面の高さを指定すれば、投影部12から照射される投影パターンが撮像部13の撮像面上のどの画素に対応するのかを算出できる。
【0068】
投影部12から照射される投影パターンは、投影部12の光軸に対する被写体の位置や傾きに応じて大きさや位置(隣接する要素間の間隔の伸縮)が変化することになり、このような情報に基づいて、三角測量の原理によって、被写体の形状を計測できる。
【0069】
図5は、本実施の形態に係る三次元計測装置において計測ヘッドから照射される投影パターンの一例を示す図である。
図6は、本実施の形態に係る三次元計測装置が実行する三次元計測の原理を説明するための図である。
【0070】
計測ヘッド10の投影部12からは、たとえば、
図5に示すような投影パターンPを含む計測光が被写体に対して照射される。計測ヘッド10の撮像部13は、投影パターンPが投影された状態で被写体を撮像する。
【0071】
図5に示す投影パターンPは、空間コードを格子状に配置したもの(以下、「格子状コード」とも称する)であって、所定方向において所定長のパターンについて自己相関が生じないような固有のコードが割当てられている。より具体的には、投影パターンPは、複数種類のプリミティブ(基準パターンに相当)の組合せによって規定される。
【0072】
図6(A)には、4種類のプリミティブが示される。各プリミティブは、それぞれに割当てられたコード(
図6(A)に示す例では、1~4の4つの数値)を示す。各プリミティブは、4つの大きな正方形Qa~Qdと、中心部に位置する1つの小さな正方形Qeとで構成される。正方形Qa~Qdの各々は、プリミティブ位置Rがコーナとなるように配置されている。プリミティブ位置Rは、小さな正方形Qeの中心位置でもある。
【0073】
図6(A)に示すように、大きな正方形Qa~Qdの交点(格子のコーナ一点)がプリミティブ位置Rと定義される。なお、プリミティブ位置Rについての大きさおよび形状については限定されない。プリミティブの各々が三次元点の1つとして復元される。
【0074】
図6(A)に示すように、プリミティブ位置Rが「白」のときp0=1とし、「黒」のときp0=0とし、プリミティブ位置Rの左上の大きい正方形Qbが「白」のときp1=1とし、「黒」のときp1=0と表現する。プリミティブの種類は、2p1+p0と数値表現できる。
【0075】
図6(B)には、投影パターンP(
図5参照)の部分に含まれるプリミティブの種類を数値で表現したものである。すなわち、投影パターンPに含まれる各プリミティブの種類を特定し、各特定したプリミティブの種類を数値で表現することにより、投影パターンPと等価な行列Kを生成できる。
【0076】
以下の説明においては、投影パターンPの面内方向をX方向およびY方向と規定するとともに、光軸方向(高さ)方向をZ方向と規定する。
【0077】
図6(C)には、
図6(B)に示す行列Kの部分行列が示される。ここでは、行列Kに設定される所定の大きさ(ワード高さHword×ワード幅Wword)の部分行列を想定する。このような部分行列を「ワード」とも称する。すなわち、各ワードは、所定数のプリミティブの種類の組合せ(
図6(C)に示す例では、3×3)によって規定される。投影パターンPは、すべてのワードの各々がユニークとなるように、プリミティブが配置されることで生成される。
【0078】
投影パターンPが被写体に投影した状態で撮像することで取得される入力画像から、行列Kに含まれるすべてのワードが抽出される。なお、プリミティブを抽出して、ワードを特定あるいは再構成する処理を(ワードの)「デコード」とも称する。
【0079】
図6(C)には、抽出された3つのワード(ワードW1,W2,W3)を示している。入力画像に写るパターンからすべてのワードを抽出したときに、各抽出したワード中に部分行列の数値の並びがユニークであれば、そのワードのパターン中での位置が特定される。すなわち、投影パターンPにおける位置(ワードの位置)を特定できる。
【0080】
計測ヘッド10(投影部12)から投影パターンPを照射する場合において、被写体の表面形状に応じて、投影された像から特定されるワードの位置は変化することになる。
【0081】
このような投影パターンPを被写体に投影した状態において、当該被写体を撮像して得られる画像に含まれるプリミティブから規定されるワードの大きさおよび隣接するワード間の位置ずれに基づけば、計測ヘッド10から被写体の各部までの距離および被写体の三次元形状が計測できる。
【0082】
たとえば、
図6(C)に示す例においては、隣り合うワードW1~W3は一部のプリミティブを共有している。
【0083】
画像計測装置1000は、それぞれの計測ヘッド10から出力される画像に対して、プリミティブの抽出処理、ならびに、抽出されたプリミティブにより特定されたワードの位置および大きさの評価処理を実行することにより、被写体の三次元形状の計測結果を出力する。
【0084】
なお、
図6(A)においては、4種類のプリミティブを使用する例を示しているが、プリミティブの種類数は4種類に限定されない。また、
図6(A)に示すようなプリミティブの形状および色に限定されることなく、任意の形状および色を採用できる。
【0085】
また、プリミティブの検出手法としては、各プリミティブをモデルとしたパターンマッチングや、黒画素方向/白画素方向および中央値の色を条件とするフィルタ処理などを採用できる。
【0086】
<E.計測レンジ>
上述した本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、定められた温度域において計測レンジが広く確保されることが重要である。ここで、計測レンジとは、被写体の三次元形状の計測が可能となる計測ヘッド10と被写体との間の光軸方向に沿った距離の範囲のことを意味しており、当該計測レンジが極端に狭まったりあるいは当該計測レンジ自体が存在しなくなってしまったりした場合には、被写体の三次元形状を計測することができない。
【0087】
この計測レンジには、投影部12側での計測レンジと、撮像部13側での計測レンジとが含まれている。投影部12側の計測レンジの外側に被写体が配置された場合には、被写体に投影された投影パターンPがぼやけることになり、入力画像における投影パターンPが不鮮明になる。また、撮像部13側の計測レンジの外側に被写体が配置された場合には、撮像素子341の撮像面上に形成される像がぼやけることになり、入力画像における投影パターンPが不鮮明になる。そのため、いずれの場合にも、取得した入力画像から上述したプリミティブを抽出することができず、結果として被写体の三次元形状を計測することが不可能になってしまう。
【0088】
上述したように、三次元計測装置1の計測ヘッド10には、投影パターンPを被写体上において結像するための投光レンズ220と、投影パターンPが被写体に投影された状態の像を撮像素子341の撮像面上において結像するための受光レンズ320とが設けられている。これら光学レンズ(すなわち、投光レンズ220および受光レンズ320)は、複数のレンズが組み合わされた複合レンズにて構成されることが一般的であるが、通常、温度に応じて焦点位置が変化する性質(温度特性)を有している。上述した計測レンジの有無ならびに広狭には、この光学レンズの温度特性が大きく影響する。
【0089】
図7は、
図1に示す三次元計測装置の撮像部側の計測レンジを示す図である。以下、この
図7を参照して、光学レンズの温度特性が三次元計測装置1の計測レンジに与える影響について、受光側を例に挙げて詳説する。なお、理解を容易とするために、
図7においては、受光レンズ320を単一のレンズにて構成した場合を図示しているが、後述する
図15等において示すように、受光レンズ320を複数のレンズからなる組レンズにて構成してもよい。
【0090】
ここで、
図7(A)は、受光レンズ320が温度Tにある状態を示しており、
図7(B)は、受光レンズ320が温度T+ΔTに昇温した状態を示しており、
図7(C)は、受光レンズ320が温度T-ΔTに降温した状態を示している。なお、使用する受光レンズ320としては、温度の上昇に伴って焦点位置が遠ざかる方向に変化するものを例示する。
【0091】
図7(A)に示すように、受光レンズ320は、光学的に共役な関係にある一対の共役面としての物体面および像面を形成する。受光レンズ320の主点から物体面までの距離である物体距離Aと、受光レンズ320の主点から像面までの距離である像距離Bとは、受光レンズ320の焦点距離fを用いて下記の式(1)によって決まる。
【0092】
(1/A)+(1/B)=1/f ・・・(1)
【0093】
ここで、物体面に被写体が配置されるとともに、像面に撮像素子341が配置されることにより、撮像素子341の撮像面に被写体の像が鮮明に結像される。なお、受光レンズ320は、その許容散乱円径Φによって決まる焦点深度δを有しており、当該焦点深度δの範囲内に撮像素子341が配置される限りにおいては、被写体の像が撮像素子341の撮像面上に鮮明に結像されることになる。
【0094】
受光側の計測レンジは、被写界深度DOF(Depth of Field)によって決まる。被写界深度DOFは、像面において像が鮮明に結像する、被写体が配置される側における光軸方向に沿った範囲であり、物体面から見て受光レンズ320側に位置する前側被写界深度Lfと、物体面から見て受光レンズ320側とは反対側に位置する後側被写界深度Lrとの和として表わされる。一般に、被写界深度DOFの受光レンズ320側の端点は「近点」と称され、被写界深度DOFの受光レンズ320側とは反対側の端点は「遠点」と称される。
【0095】
ここで、受光レンズ320の主点から近点までの距離である近点距離Snと、受光レンズ320の主点から遠点までの距離である遠点距離Sfとは、上述した焦点距離f、物体距離Aおよび許容散乱円径Φと、受光レンズ320の明るさFとを用いて、それぞれ下記の式(2)および式(3)によって決まる。
【0096】
Sn=Φ×F×A2/(f2+Φ×F×A) ・・・(2)
Sf=Φ×F×A2/(f2-Φ×F×A) ・・・(3)
【0097】
したがって、撮像素子341と受光レンズ320との間の光軸方向に沿った距離(これを「素子間距離」と称する)が上述した像距離Bである撮像部13においては、被写体が、受光レンズ320からの距離が上記式(2)で表わされる近点距離Sn以上で、かつ、上記式(3)で表わされる遠点距離Sf以下の範囲内に配置されることにより、被写体の鮮明な入力画像が取得できることになる。すなわち、当該範囲が、温度Tにおける計測レンジとなる。
【0098】
一方、
図7(B)に示すように、受光レンズ320が
図7(A)に示す状態よりも温度ΔTだけ昇温した状態においては、受光レンズ320の焦点位置が受光レンズ320から遠ざかる方向に向けて移動し、これに伴って物体面も受光レンズ320から遠ざかる。この遠ざかる距離をΔAとすると、物体距離は、A+ΔAとなる。この場合、近点距離Snおよび遠点距離Sfは、それぞれ下記の式(4)および式(5)によって決まる。
【0099】
Sn=Φ×F×(A+ΔA)2/(f2+Φ×F×(A+ΔA)) ・・・(4)
Sf=Φ×F×(A+ΔA)2/(f2-Φ×F×(A+ΔA)) ・・・(5)
【0100】
すなわち、温度T+ΔTにおける計測レンジは、上述した温度Tにおける計測レンジよりも受光レンズ320から遠ざかる方向に向けてシフトすることになる。
【0101】
なお、上述のとおり、物体面が受光レンズ320から遠ざかった場合には、像面は受光レンズ320に近づくことになり、その際の像距離を図中においては、B’で表わしている。ここで、B’は、上記式(1)に基づき、f×(A+ΔA)/(A+ΔA-f)となる。
【0102】
他方、
図7(C)に示すように、受光レンズ320が
図7(A)に示す状態よりも温度ΔTだけ降温した状態においては、受光レンズ320の焦点位置が受光レンズ320に近づく方向に向けて移動し、これに伴って物体面も受光レンズ320に近づく。この近づく距離をΔAとすると、物体距離は、A-ΔAとなる。この場合、近点距離Snおよび遠点距離Sfは、それぞれ下記の式(6)および式(7)によって決まる。
【0103】
Sn=Φ×F×(A-ΔA)2/(f2+Φ×F×(A-ΔA)) ・・・(6)
Sf=Φ×F×(A-ΔA)2/(f2-Φ×F×(A-ΔA)) ・・・(7)
【0104】
すなわち、温度T-ΔTにおける計測レンジは、上述した温度Tにおける計測レンジよりも受光レンズ320に近づく方向に向けてシフトすることになる。
【0105】
なお、上述のとおり、物体面が受光レンズ320から近づいた場合には、像面は受光レンズ320から遠ざかることになり、その際の像距離を図中においては、B”で表わしている。ここで、B”は、上記式(1)に基づき、f×(A-ΔA)/(A-ΔA-f)となる。
【0106】
以上により、温度T-ΔTから温度T+ΔTまでの範囲を計測可能温度域とする三次元計測装置を製作すること想定したとするならば、当該三次元計測装置における実際上の計測レンジは、受光レンズ320からの距離が上記式(4)で表わされる温度T+ΔTにおける近点距離Sn以上で、かつ、上記式(7)で表わされる温度T-ΔTにおける遠点距離Sf以下の範囲(すなわち、図中において符号MRで示す範囲)となる。すなわち、この実際上の計測レンジMRを確保するためには、少なくとも(上記式(4)の右辺)<(上記式(7)の右辺)で示される条件を満たしていることが必要であり、さらに十分にこれを確保するためには、上記式(7)で示される温度T-ΔTにおける遠点距離Sfが、上記式(4)で表わされる温度T+ΔTにおける近点距離Snよりも、十分に大きいことが必要になる。
【0107】
しかしながら、焦点距離f、許容散乱円径Φおよび明るさFは、いずれも使用する受光レンズ320の光学特性によって決まり、多少の微調整は可能ではあるものの、三次元計測を実現する上での種々の制約に基づき、これが自由に設定できるものではない。そのため、本発明者が実仕様を想定して各種の試算を行なったところ、三次元計測を実現する上で光学レンズに求められる上記光学特性を満たしつつ、上述した実際上の計測レンジMRを十分に広く確保することが非常に困難な状況にあることが確認され、当該実際上の計測レンジMRが極端に狭まるか、あるいは、これがそもそも存在しなくなる問題があることが判明した。
【0108】
なお、ここではその詳細な説明は省略するが、受光レンズ320が温度の上昇に伴って焦点位置が近づく方向に変化するものである場合においても、上述した理由と同様の理由によって同じ問題が発生することになり、また、上述した受光レンズ320の温度特性が三次元計測装置1の撮像部13側の計測レンジに与える影響と同様の理由により、投影部12に設けられる投光レンズ220についても、その温度特性が三次元計測装置1の投影部12側の計測レンジに影響を与えることになる。
【0109】
そのため、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、投光レンズ220および受光レンズ320を保持する後述するレンズ保持部材の一部を断熱カバーによって覆うとともに、三次元計測時に上述した制御部11aによって投光レンズ220の温度および受光レンズ320の温度がそれぞれ予め定めた一定温度に保つように制御されることにより、定められた温度域において計測レンジが広く確保されている。この点については、後において詳説する。
【0110】
<F.解決すべき課題>
次に、本開示が解決すべき課題について説明する。本開示が解決すべき課題は、上述した投光レンズや受光レンズ等の光学レンズに対向して配置される透光板に結露が発生してしまうことを抑制することにある。
【0111】
すなわち、光学レンズや鏡筒、マウント部材、さらには各種の光学デバイス等が相互に組み付けられることで構成された光学アセンブリが筐体の内部に収容されるように構成された光学機器においては、光学レンズに対向するように筐体に透光板が設けられることになるが、この透光板には、筐体の内部の空間と筐体の外部の空間との間に温度差が生じた場合に、結露が発生してしまうおそれがある。
【0112】
この結露の発生を抑制するためには、透光板と光学アセンブリとの間の空間を加熱することが有効であり、光学アセンブリにて発生する熱をこの加熱に利用することができれば、低コストに上述した結露の発生が抑制できることになる。
【0113】
しかしながら、光学アセンブリの一部を取り囲むように上述した断熱カバーを設けた場合には、透光板と光学アセンブリとの間の空間に向けてマウント部材の熱を当該マウント部材を用いて伝熱することが困難になり、そのため当該空間をマウント部材によって加熱することができなくなる。
【0114】
この点、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、後述するようにマウント部材とは別に伝熱部材を設けることにより、この問題の解決を図っている。以下、本実施の形態に係る三次元計測装置1について、この点を含めてより詳細に説明する。
【0115】
<G.計測ヘッドの詳細な構造>
図8および
図9は、それぞれ
図1に示す計測ヘッドの外観構造および内部構造を示す概略斜視図である。まず、これら
図8および
図9を参照して、本実施の形態に係る計測ヘッド10の全体構造について説明する。なお、
図9においては、内部構成部品の一部について、その図示を省略している。
【0116】
図8に示すように、光学機器としての計測ヘッド10は、略直方体形状の外形を有しており、筐体100と、当該筐体100の内部に収容された光学アセンブリとしての投影部12および撮像部13とを備えている。
【0117】
筐体100は、平板状の底板部101(
図9参照)と、下面開口の箱形状の蓋部102とを有しており、底板部101によって蓋部102の下面開口が閉塞されることで全体として略直方体形状を有している。底板部101と蓋部102とは、図に現れないビスによって固定されている。底板部101および蓋部102は、いずれも高熱伝導性の金属製の部材にて構成されており、好ましくはアルミニウム合金等によって形成される。
【0118】
筐体100の前面には、照明用窓部110、投光用窓部120および受光用窓部130の合計で3つの窓部が設けられている。これら照明用窓部110、投光用窓部120および受光用窓部130には、それぞれ透光板111,121,131が嵌め込まれている。
【0119】
筐体100の内部であってかつ照明用窓部110の後方の位置には、たとえばLED(Light Emitting Diode)等からなる照明用光源112が配置されている。照明用光源112から出射された光は、上述した透光板111を透過することで照明用窓部110から外部空間に向けて照射され、これにより計測エリアが明るく照らされることになる。この照明用光源112は、計測エリアを照らす照明設備がない場合等を考慮して設けられたものであり、上述した三次元計測の実行時以外に照明として使用されるものである。
【0120】
筐体100の内部であってかつ投光用窓部120の後方の位置には、投影部12が配置されている。
図9を参照して、投影部12は、上述したように、光源241、フォトマスク244、投光レンズ220、レンズ支持部210等(このうちの光源241とフォトマスク244は、
図9においては現れていない)が互いに組み付けられることで構成された光学アセンブリにて構成されている。
【0121】
投影部12の前方の位置には、レンズ支持部210の一部となる鏡筒212が配設されている。鏡筒212は、その内部において投光レンズ220を保持している。これにより、投光レンズ220は、上述した投光用窓部120を覆う透光板121に面するように配置されている。
【0122】
投影部12の内部においてフォトマスク244を通過し、その後投光レンズ220を介して投影部12から出射された光は、上述した透光板121を透過することで投光用窓部120から外部空間に向けて照射され、これにより外部空間に向けて投影パターンが照射される。上述したように、この投影部12から照射された投影パターンがワークWKおよびその周囲に投影されることにより、三次元計測が可能になる。
【0123】
筐体100の内部であってかつ受光用窓部130の後方の位置には、撮像部13が配置されている。
図9を参照して、撮像部13は、上述したように、撮像素子341、受光レンズ320、レンズ支持部310等(このうちの撮像素子341は、
図9においては現れていない)が互いに組み付けられることで構成された光学アセンブリにて構成されている。
【0124】
撮像部13の前方の位置には、レンズ支持部310の一部となる鏡筒312が配設されている。鏡筒312は、その内部において受光レンズ320を保持している。これにより、受光レンズ320は、上述した受光用窓部130を覆う透光板131に面するように配置されている。
【0125】
投影パターンが投影されたワークWKおよびその周囲から発せられた反射光は、上述した透光板131を透過することで受光用窓部130から撮像部13へと入射し、受光レンズ320を介して撮像素子341へと照射される。これにより、上述したように、撮像素子341にてこの光が受光されることにより、三次元計測が可能になる。
【0126】
また、
図8に示すように、筐体100の側面の所定位置には、接続端子141,142が設けられている。当該接続端子141,142は、計測ヘッド10と画像計測装置1000等を電気的に接続するためのものである。
【0127】
図9に示すように、筐体100の内部であって投影部12および撮像部13の後方の位置には、金属製の板状部材からなるシャーシ150が設けられている。当該シャーシ150は、筐体100の底板部101から上方に向けて起立するように設けられており、このシャーシ150の前面側には、回路基板160が組み付けられている。これにより、回路基板160は、シャーシ150の前方であってかつ投影部12および撮像部13の後方の位置に起立姿勢にて配置されている。
【0128】
回路基板160は、上述した処理部11が設けられてなるものであり、処理部11は、図示しない配線等によって投影部12および撮像部13にそれぞれ電気的に接続されている。また、回路基板160には、後述するフレキシブルヒータ250,350の動作を制御するための制御部11aも設けられており、制御部11aは、このフレキシブルヒータ250,350の配線部252,352にも電気的に接続されている。
【0129】
ここで、
図9に示すように、筐体100の底板部101には、当該底板部101の周縁に沿って延在するように溝部101aが設けられている。この溝部101aは、筐体100の蓋部102の下端部の周縁と対向するように設けられており、溝部101aの内部には、図示しないパッキンが収容される。
【0130】
これにより、底板部101と蓋部102との間にパッキンが介在することになり、当該パッキンが底板部101および蓋部102の双方に密着することで底板部101と蓋部102との境目において生じ得る隙間がパッキンによって封止される。そのため、当該パッキンによって筐体100の内部の空間が筐体100の外部の空間から密閉されることになる。
【0131】
<H.投影部の構造>
図10および
図11は、それぞれ上述した投影部の概略斜視図および模式断面図であり、
図12および
図13は、当該投影部の組付構造を示す分解斜視図である。次に、前述の
図9と、これら
図10ないし
図13とを参照して、本実施の形態に係る投影部12の詳細な構造について説明する。
【0132】
ここで、
図10(A)は、後述する断熱カバー260および伝熱部材280が投影部12に組み付けられた状態を示しており、
図10(B)は、投影部12から当該断熱カバー260および伝熱部材280が取り外された状態を示している。また、
図11(A)および
図11(B)は、それぞれ
図10(A)に示すXIA-XIA線およびXIB-XIB線に沿った断面を表わしている。また、
図12は、投影部12のうちの一部分(すなわち参照符号12’で示される部分)の組付構造を示す図であり、
図13は、当該一部分とその余の部分との組付構造を示す図である。
【0133】
図9ないし
図13に示すように、投影部12は、ベース部200と、レンズ支持部210と、投光レンズ220と、基板230と、光源241と、フォトマスク244と、フレキシブルヒータ250と、温度センサ254と、断熱カバー260と、伝熱部材280とを主として備えている。
【0134】
ベース部200は、投影部12の台座となる部分であり、筐体100の底板部101上に設置されている。ベース部200は、底板部101に図示しないビスによって固定された第1ベース201と、当該第1ベース201にビス291(
図12参照)によって固定された第2ベース202とを含んでいる。このうち、第2ベース202は、第1ベース201上に載置された状態で固定されており、投光レンズ220の光軸と平行な方向に沿って延びる中空部202aを有する外形が角形の筒状部材からなる。
【0135】
図11および
図12に示すように、第2ベース202の後端面(すなわち、上述した回路基板160が位置する側の端面)には、基板230が組み付けられている。より詳細には、基板230は、ビス292によって第2ベース202の後端面に固定されており、これにより第2ベース202に設けられた中空部202aが、基板230によって閉塞されている。
【0136】
中空部202aを閉塞する部分の基板230の表面には、光源241が実装されており、これにより、光源241は、当該中空部202aに面している。光源241は、レンズ242,243およびフォトマスク244と相まって光学デバイスとしてのパターン照明形成素子を構成するものであり、本実施の形態においては、LEDにて構成されている。
【0137】
第2ベース202は、その内部においてレンズ242,243を支持している。より詳細には、レンズ242,243は、その周縁が第2ベース202によって支持されることで当該第2ベース202に固定されており、これにより光源241に対向するように当該光源241の前方に配置されている。これらレンズ242,243は、光源241から出射された光を平行光化するいわゆるコリメータレンズであり、光源241およびフォトマスク244と相まって光学デバイスとしてのパターン照明形成素子を構成するものである。
【0138】
第2ベース202の前端部には、中空部202aを覆うようにレンズ支持部210が組み付けられている。レンズ支持部210は、その後端部が中空部202aに嵌め込まれるとともに、ビス294によって第2ベース202に固定されたマウント部材211と、投光レンズ220を支持するとともに、マウント部材211に固定された鏡筒212とを含んでいる。
【0139】
マウント部材211は、たとえばアルミニウム合金等に代表される高熱伝導性の金属製の部材からなり、投光レンズ220の光軸と平行な方向に沿って延びる中空部211aを有する外形が角形の筒状部材からなる。マウント部材211は、上述したようにその後端部が第2ベース202に固定されているとともに、当該後端部寄りの部分においてフォトマスク244および保護部材245を支持している。
【0140】
フォトマスク244は、上述した光源241およびレンズ242,243と相まって光学デバイスとしてのパターン照明形成素子を構成するものであり、第2ベース202によって支持されたコリメータレンズとしてのレンズ242,243に対向して配置されている。保護部材245は、フォトマスクを保護するための部材であり、たとえばガラスによって構成される。これらフォトマスク244および保護部材245は、これらが重ね合わされた状態でその周縁がマウント部材211によって支持されることで当該マウント部材211に固定されている。
【0141】
鏡筒212は、たとえばアルミニウム合金等に代表される高熱伝導性の金属製の円筒状の部材からなり、その後端部がマウント部材211の中空部211aに嵌め込まれることで固定されている。鏡筒212は、その前端部がマウント部材211から前方に向けて突出しており、これにより当該前端部が、投影部12の前方の位置に配設されている。
【0142】
ここで、より詳細には、鏡筒212の外周面の後端部に雄ネジが設けられており、マウント部材211の中空部211aの内周面の前端部に雌ネジが設けられている。これにより、鏡筒212は、マウント部材211に対して螺合されることで固定されている。この種の固定方式は、一般にSマウントと称されるレンズの固定方式である。なお、本実施の形態においては、鏡筒212の雄ネジが設けられた部分に、内周面に雌ネジが設けられたボルト状の固定部材213がさらに螺合されており、これにより鏡筒212がマウント部材211に強固に固定されている。
【0143】
投光レンズ220は、複数のレンズ221~223が組み合わされた複合レンズにて構成されており、これら複数のレンズ221~223は、互いの光軸が重なるように鏡筒212の内部において鏡筒212の軸方向に整列して設けられている。これら複数のレンズ221~223の各々は、それらの周縁が鏡筒212によって支持されている。すなわち、鏡筒212は、投光レンズ220の光軸と直交する方向において当該投光レンズ220を取り囲んでこれを支持している。
【0144】
以上により、光源241、コリメータレンズとしてのレンズ242,243、フォトマスク244、および、投光レンズ220としての複数のレンズ221~223が、投影部12の内部において投光レンズ220の光軸上に並んで配置されることになり、当該投影部12から投影パターンを外部に向けて照射することが可能になる。
【0145】
ここで、
図10ないし
図13に示すように、レンズ支持部210の一部であるマウント部材211の外周面上には、フレキシブルヒータ250のヒータ部253が組み付けられている。より詳細には、フレキシブルヒータ250は、電熱線および当該電熱線に通電するための配線が設けられたフレキシブル基板(たとえばポリイミド基板等)からなり、マウント部材211の外周面を取り囲む部分である囲繞部251に上述した電熱線が配設されたヒータ部253が設けられており、このヒータ部253が、図示しない高熱伝導性の接着テープを介してマウント部材211の外周面に貼り付けられている。
【0146】
一方、フレキシブルヒータ250の上述した配線が設けられた部分である配線部252は、投影部12の上面から外部に向けて引き出され、その先端が上述した回路基板160に接続されることで制御部11aに電気的に接続されている。また、フレキシブルヒータ250の囲繞部251の所定位置には、温度センサ254が実装されており、当該温度センサ254も、フレキシブルヒータ250に設けられた配線を介して制御部11aに電気的に接続されている。
【0147】
これにより、フレキシブルヒータ250の通電時において、マウント部材211および鏡筒212を介して投光レンズ220が加熱されることになる。また、所定時間にわたってフレキシブルヒータ250が通電されることにより、投光レンズ220、鏡筒212、マウント部材211およびフレキシブルヒータ250のヒータ部253の各々の温度は同等となるため、温度センサ254によって投光レンズ220の温度が検出可能になる。
【0148】
図9ないし
図11および
図13に示すように、投影部12には、マウント部材211を取り囲むように断熱カバー260が設けられている。これにより、上述したフレキシブルヒータ250のヒータ部253と、フレキシブルヒータ250の囲繞部251に実装された温度センサ254とが、断熱カバー260によって覆われている。
【0149】
より詳細には、断熱カバー260は、マウント部材211の外周面のうちの第1ベース201に面する部分以外の部分を覆う第1カバー部261と、マウント部材211の前端面を覆う第2カバー部262とを含む略箱形状を有しており、このうちの第2カバー部262がビス293によってマウント部材211に固定されることにより、マウント部材211に組み付けられている。
【0150】
ここで、第2カバー部262の所定位置には、挿通孔262a(
図13参照)が設けられており、当該挿通孔262aには、マウント部材211の前端面から突出する部分の鏡筒212が挿通配置される。これにより、断熱カバー260は、マウント部材211の上述した部分の外周面および前端面をほぼ全域にわたって覆っている。そのため、断熱カバー260は、マウント部材211を覆い隠す略密閉構造を有することになる。
【0151】
図11に示すように、断熱カバー260とフレキシブルヒータ250との間には、空気層270が設けられている。当該空気層270は、断熱カバー260の内面とフレキシブルヒータ250の露出表面との間に所定のクリアランスを設けることで構成されており、当該空気層270は、実質的に断熱カバー260によって密閉されている。
【0152】
さらに、本実施の形態においては、第1ベース201とマウント部材211との間にも所定のクリアランスが設けられることによって空気層270が設けられており、当該部分に設けられた空気層270も、断熱カバー260によって密閉されている。
【0153】
このように、投影部12においては、投光レンズ220を取り囲んでこれを支持するレンズ支持部210としての鏡筒212およびマウント部材211が、断熱カバー260によって空気層270を介して取り囲まれているとともに、フレキシブルヒータ250のヒータ部253および温度センサ254が、いずれも断熱カバー260によって覆われた状態とされている。
【0154】
ここで、上述したように、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、その三次元計測時において、制御部11aが、投光レンズ220の温度を予め定めた一定温度に保つための制御を行なう。より詳細には、制御部11aは、温度センサ254の検出結果に基づいてヒータ部253の動作の制御(たとえば通電の有無やヒータ出力の調整等)を行なうことで投光レンズ220の温度を一定温度に維持する。
【0155】
これにより、投光レンズ220の温度を一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において投光レンズ220の焦点位置に変化が生じることが実質的に抑制可能となる。そのため、予め加熱後の状態において投光レンズ220の焦点位置にパターン照明形成素子としてのフォトマスク244が配置されるように構成しておくことにより、三次元計測時においてフォトマスク244を投光レンズ220の焦点位置に常時配置させた状態を維持することができる。したがって、当該構成を採用することにより、三次元計測装置1の投影部12側において、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保することが可能になる。
【0156】
さらには、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、投光レンズ220を支持するレンズ支持部210としてのマウント部材211および鏡筒212の各々の温度も一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において投光レンズ220とフォトマスク244との間の光軸方向における距離である素子間距離に変動が生じることも実質的に抑制することができる。そのため、三次元計測時においてフォトマスク244を投光レンズ220の焦点位置に常時配置させた状態がより確実に維持できることにもなる。
【0157】
なお、本実施の形態のように、投光レンズ220を複数のレンズからなる組レンズにて構成した場合には、マウント部材211および鏡筒212からなるレンズ支持部210の温度による膨張および収縮が投光レンズ220の焦点位置の変動に大きく影響を与えてしまうことになるため、上記のようにレンズ支持部210の温度を一定に保つことが特に有効となる。
【0158】
すなわち、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、当該三次元計測装置1が設置される周囲環境(特に周囲環境温度)の影響を殆ど受けることなく、三次元計測時において投光レンズ220が予め定めた一定温度に維持されるため、上述したように、投影部12側において、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保することが可能になる。
【0159】
ここで、上述したベース部200としての第1ベース201および第2ベース202は、レンズ支持部210としてのマウント部材211および鏡筒212の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する部材にて構成されていることが好ましい。このように構成することにより、ベース部200によって断熱効果が発揮されることになる。
【0160】
そのため、当該構成を採用することにより、投光レンズ220、マウント部材211および鏡筒212を効率的に加熱することができるとともに、これらの温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。したがって、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間の短縮化が可能になるとともに、三次元計測時においてフォトマスク244を投光レンズ220の焦点位置に常時配置させた状態をより確実に維持することができる。
【0161】
また、上述した断熱カバー260は、レンズ支持部210としてのマウント部材211および鏡筒212の熱伝導率と同じかそれよりも小さい熱伝導率を有する部材にて構成されていることが好ましい。より詳細には、本実施の形態の如く断熱カバー260とマウント部材211との間に空気層270を設ける場合には、断熱カバー260の熱伝導率をレンズ支持部210の熱伝導率と同じかされよりも小さくすることが好ましく、本実施の形態とは異なり、断熱カバー260をマウント部材211等に密着させる構成を採用する場合には、断熱カバー260の熱伝導率をレンズ支持部210の熱伝導率よりも小さくすることが好ましい。このように構成することにより、断熱カバー260あるいはこれに加えて空気層270によって断熱効果が発揮されることになる。
【0162】
そのため、当該構成を採用することにより、投光レンズ220、マウント部材211および鏡筒212を効率的に加熱することができるとともに、これらの温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。したがって、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間の短縮化が可能になるとともに、三次元計測時においてフォトマスク244を投光レンズ220の焦点位置に常時配置させた状態をより確実に維持することができる。
【0163】
なお、上述した観点から、ベース部200としての第1ベース201および第2ベース202、ならびに、断熱カバー260は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂等に代表される樹脂製の部材にて構成されるか、あるいは、比較的低い熱伝導率の金属製の部材にて構成されることが好ましい。ただし、本実施の形態の如く断熱カバー260とマウント部材211との間に空気層270を設ける場合には、断熱カバー260としては、比較的高い熱伝導率の金属製の部材(たとえばアルミニウム合金製)としてもよい。
【0164】
図9ないし
図11および
図13に示すように、投影部12には、マウント部材211から前方側に向けて延びるように伝熱部材280が設けられている。当該伝熱部材280は、鏡筒212と透光板121(
図8参照)との間の空間(すなわち、透光板121と投影部12との間の空間)を加熱するためのものであり、金属製の板状部材のプレス成形品からなる伝熱部材本体と、締結部材としてのビス283とを含んでいる。
【0165】
伝熱部材本体は、断熱カバー260の第2カバー部262に宛がわれる平板状の基部281と、当該基部281の幅方向(すなわち左右方向)の端部から立設された平板状の一対の立壁部282とを含んでいる。このうち、基部281は、伝熱部材本体をマウント部材211に固定するための部位であり、一対の立壁部282は、マウント部材211から伝熱部材本体に伝熱された熱を上記空間に伝熱させることで上記空間を加熱するための部位である。
【0166】
基部281の所定位置には、挿通孔281a(
図13参照)が設けられており、当該挿通孔281aには、断熱カバー260の第2カバー部262から突出する部分の鏡筒212が挿通配置される。また、一対の立壁部282は、この基部281に設けられた挿通孔281aを挿通する部分の鏡筒212を挟み込むように伝熱部材本体の縁部を折り曲げることで形成されている。
【0167】
基部281の所定位置には、複数の貫通孔281b(
図13参照)が設けられている。複数の貫通孔281bは、伝熱部材本体をマウント部材211に固定するために用いられる部位であり、当該複数の貫通孔281bには、それぞれビス283が挿入される。
【0168】
ここで、断熱カバー260の第2カバー部262には、伝熱部材280の基部281に設けられた複数の貫通孔281bに対応して、欠除部としての複数の貫通孔262b(
図13参照)が設けられている。また、マウント部材211の前端面には、伝熱部材280の基部281に設けられた複数の貫通孔281bに対応して複数の突出部211b(
図13参照)が設けられている。当該複数の突出部211bの頂面には、ビス283に螺合するビス孔がそれぞれ設けられている。
【0169】
マウント部材211の前端面に設けられた突出部211bは、断熱カバー260の第2カバー部262に設けられた貫通孔262bに挿入されて当該貫通孔262bに嵌め込まれる。さらに、マウント部材211の前端面に設けられた突出部211bの頂面には、伝熱部材280の基部281に設けられた貫通孔281bが宛がわれ、この状態において貫通孔281bにビス283が挿入されることでビス283が突出部211bの頂面に設けられたビス孔に螺合される。
【0170】
このように構成すれば、締結部材としてのビス283を用いることで伝熱部材本体をマウント部材211に対して容易に固定することができるばかりでなく、この伝熱部材本体のマウント部材211への固定により、断熱カバー260を伝熱部材本体とマウント部材211とによって挟み込んで固定することが可能になる。したがって、組立て作業が容易化し、製造コストが削減できることになる。
【0171】
また、断熱カバー260の第2カバー部262に設けられた欠除部としての複数の貫通孔262bの内部に、マウント部材211の前端面に設けられた突出部211bおよび伝熱部材の一部を構成するビス283が配置されることにより、これらによってマウント部材211の熱を伝熱部材本体に伝熱させるための伝熱経路が構築されることになり、断熱カバー260によるマウント部材211の保温を行ないつつ、その熱の一部を効率的に断熱カバー260の外側へ取り出すことができる。したがって、マウント部材211の熱を上記伝熱経路を介して最短距離で上記空間(すなわち、鏡筒212と透光板121との間の空間)に伝熱させることが可能になる。
【0172】
ここで、伝熱部材280は、熱伝導率が大きい部材にて構成されていることが好ましく、好適にはマウント部材211と同等程度の熱伝導率の部材にて構成される。具体的には、たとえばアルミニウム合金やステンレス合金等からなる部材が利用できる。
【0173】
<I.撮像部の構造>
図14および
図15は、それぞれ上述した撮像部の概略斜視図および模式断面図であり、
図16および
図17は、当該撮像部の組付構造を示す分解斜視図である。次に、前述の
図9と、これら
図14ないし
図17とを参照して、本実施の形態に係る撮像部13の詳細な構造について説明する。
【0174】
ここで、
図14(A)は、後述する断熱カバー360および伝熱部材380が撮像部13に組み付けられた状態を示しており、
図14(B)は、撮像部13から当該断熱カバー360および伝熱部材380が取り外された状態を示している。また、
図15(A)および
図15(B)は、それぞれ
図14(A)に示すXVA-XVA線およびXVB-XVB線に沿った断面を表わしている。また、
図16は、撮像部13のうちの一部分(すなわち参照符号13’で示される部分)の組付構造を示す図であり、
図17は、当該一部分とその余の部分との組付構造を示す図である。
【0175】
図9および
図14ないし
図17に示すように、撮像部13は、ベース部300と、レンズ支持部310と、受光レンズ320と、基板330と、撮像素子341と、フレキシブルヒータ350と、温度センサ354と、断熱カバー360と、伝熱部材380とを主として備えている。
【0176】
ベース部300は、撮像部13の台座となる部分であり、筐体100の底板部101上に設置されている。ベース部300は、底板部101に図示しないビスによって固定されている。
【0177】
ベース部300上には、レンズ支持部310が載置された状態で固定されている。レンズ支持部310は、ビス391(
図16参照)によってベース部300に固定されたマウント部材311と、受光レンズ320を支持するとともに、マウント部材311に固定された鏡筒312とを含んでいる。
【0178】
マウント部材311は、たとえばアルミニウム合金等に代表される高熱伝導性の金属製の部材からなり、受光レンズ320の光軸と平行な方向に沿って延びる中空部311aを有する外形が角形の筒状部材からなる。
【0179】
図15および
図16に示すように、マウント部材311の後端面(すなわち、上述した回路基板160が位置する側の端面)には、基板330が組付けられている。より詳細には、基板330は、ビス392によってマウント部材311の後端面に固定されており、これによりマウント部材311に設けられた中空部311aが、基板330によって閉塞されている。
【0180】
中空部311aを閉塞する部分の基板330の表面には、撮像素子341が実装されており、これにより、撮像素子341は、当該中空部311aに面している。撮像素子341は、たとえば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Charged-Coupled Devices)イメージセンサ等からなる。基板330の表面であって撮像素子341の周囲には、額縁状の遮光部材342が設けられている。
【0181】
鏡筒312は、たとえばアルミニウム合金等に代表される高熱伝導性の金属製の円筒状の部材からなり、その後端部がマウント部材311の中空部311aに嵌め込まれることで固定されている。鏡筒312は、その前端部がマウント部材311から前方に向けて突出しており、これにより当該前端部が、撮像部13の前方の位置に配設されている。
【0182】
ここで、より詳細には、鏡筒312の外周面の後端部に雄ネジが設けられており、マウント部材311の中空部311aの内周面の前端部に雌ネジが設けられている。これにより、鏡筒312は、マウント部材311に対して螺合されることで固定されている。この種の固定方式は、一般にSマウントと称されるレンズの固定方式である。なお、本実施の形態においては、鏡筒312の雄ネジが設けられた部分に、内周面に雌ネジが設けられたボルト状の固定部材313がさらに螺合されており、これにより鏡筒312がマウント部材311に強固に固定されている。
【0183】
受光レンズ320は、複数のレンズ321~323が組み合わされた複合レンズにて構成されており、これら複数のレンズ321~323は、互いの光軸が重なるように鏡筒312の内部において鏡筒312の軸方向に整列して設けられている。これら複数のレンズ321~323の各々は、それらの周縁が鏡筒312によって支持されている。すなわち、鏡筒312は、受光レンズ320の光軸と直交する方向において当該受光レンズ320を取り囲んでこれを支持している。
【0184】
以上により、撮像素子341、および、受光レンズ320としての複数のレンズ321~323が、撮像部13の内部において受光レンズ320の光軸上に並んで配置されることになり、当該撮像部13に入射した光を撮像素子341が受光することにより、入力画像が得られることになる。
【0185】
ここで、
図14ないし
図17に示すように、レンズ支持部310の一部であるマウント部材311の外周面上には、フレキシブルヒータ350のヒータ部353が組み付けられている。より詳細には、フレキシブルヒータ350は、電熱線および当該電熱線に通電するための配線が設けられたフレキシブル基板(たとえばポリイミド基板等)からなり、マウント部材311の外周面を取り囲む部分である囲繞部351に上述した電熱線が配設されたヒータ部353が設けられており、このヒータ部353が、図示しない高熱伝導性の接着テープを介してマウント部材311の外周面に貼り付けられている。
【0186】
一方、フレキシブルヒータ350の上述した配線が設けられた部分である配線部352は、撮像部13の上面から外部に向けて引き出され、その先端が上述した回路基板160に接続されることで制御部11aに電気的に接続されている。また、フレキシブルヒータ350の囲繞部351の所定位置には、温度センサ354が実装されており、当該温度センサ354も、フレキシブルヒータ350に設けられた配線を介して制御部11aに電気的に接続されている。
【0187】
これにより、フレキシブルヒータ350の通電時において、マウント部材311および鏡筒312を介して受光レンズ320が加熱されることになる。また、所定時間にわたってフレキシブルヒータ350が通電されることにより、受光レンズ320、鏡筒312、マウント部材311およびフレキシブルヒータ350のヒータ部353の各々の温度は同等となるため、温度センサ354によって受光レンズ320の温度が検出可能になる。
【0188】
図9、
図14、
図15および
図17に示すように、撮像部13には、マウント部材311を取り囲むように断熱カバー360が設けられている。これにより、上述したフレキシブルヒータ350のヒータ部353と、フレキシブルヒータ350の囲繞部351に実装された温度センサ354とが、断熱カバー360によって覆われている。
【0189】
より詳細には、断熱カバー360は、マウント部材311の外周面のうちのベース部300に面する部分以外の部分を覆う第1カバー部361と、マウント部材311の前端面を覆う第2カバー部362とを含む略箱形状を有しており、このうちの第2カバー部362がビス393によってマウント部材311に固定されることにより、マウント部材311に組み付けられている。
【0190】
ここで、第2カバー部362の所定位置には、挿通孔362a(
図17参照)が設けられており、当該挿通孔362aには、マウント部材311の前端面から突出する部分の鏡筒312が挿通配置される。これにより、断熱カバー360は、マウント部材311の上述した部分の外周面および前端面をほぼ全域にわたって覆っている。そのため、断熱カバー360は、マウント部材311を覆い隠す略密閉構造を有することになる。
【0191】
図15に示すように、断熱カバー360とフレキシブルヒータ350との間には、空気層370が設けられている。当該空気層370は、断熱カバー360の内面とフレキシブルヒータ350の露出表面との間に所定のクリアランスを設けることで構成されており、当該空気層370は、実質的に断熱カバー360によって密閉されている。
【0192】
このように、撮像部13においては、受光レンズ320を取り囲んでこれを支持するレンズ支持部310としての鏡筒312およびマウント部材311が、断熱カバー360によって空気層370を介して取り囲まれているとともに、フレキシブルヒータ350のヒータ部353および温度センサ354が、いずれも断熱カバー360によって覆われた状態とされている。
【0193】
ここで、上述したように、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、その三次元計測時において、制御部11aが、受光レンズ320の温度を予め定めた一定温度に保つための制御を行なう。より詳細には、制御部11aは、温度センサ354の検出結果に基づいてヒータ部353の動作の制御(たとえば通電の有無やヒータ出力の調整等)を行なうことで受光レンズ320の温度を一定温度に維持する。
【0194】
これにより、受光レンズ320の温度を一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において受光レンズ320の焦点位置に変化が生じることが実質的に抑制可能となる。そのため、予め加熱後の状態において受光レンズ320の焦点位置に撮像素子341が配置されるように構成しておくことにより、三次元計測時において撮像素子341を受光レンズ320の焦点位置に常時配置させた状態を維持することができる。したがって、当該構成を採用することにより、三次元計測装置1の撮像部13側において、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保することが可能になる。
【0195】
さらには、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、受光レンズ320を支持するレンズ支持部310としてのマウント部材311および鏡筒312の各々の温度も一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において受光レンズ320と撮像素子341との間の光軸方向における距離である素子間距離に変動が生じることも実質的に抑制することができる。そのため、三次元計測時において撮像素子341を受光レンズ320の焦点位置に常時配置させた状態がより確実に維持できることにもなる。
【0196】
なお、本実施の形態のように、受光レンズ320を複数のレンズからなる組レンズにて構成した場合には、マウント部材311および鏡筒312からなるレンズ支持部310の温度による膨張および収縮が受光レンズ320の焦点位置の変動に大きく影響を与えてしまうことになるため、上記のようにレンズ支持部310の温度を一定に保つことが特に有効となる。
【0197】
すなわち、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、当該三次元計測装置1が設置される周囲環境(特に周囲環境温度)の影響を殆ど受けることなく、三次元計測時において受光レンズ320が予め定めた一定温度に維持されるため、上述したように、撮像部13側において、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保することが可能になる。
【0198】
ここで、上述したベース部300は、レンズ支持部310としてのマウント部材311および鏡筒312の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する部材にて構成されていることが好ましい。このように構成することにより、ベース部300によって断熱効果が発揮されることになる。
【0199】
そのため、当該構成を採用することにより、受光レンズ320、マウント部材311および鏡筒312を効率的に加熱することができるとともに、これらの温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。したがって、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間の短縮化が可能になるとともに、三次元計測時において撮像素子341を受光レンズ320の焦点位置に常時配置させた状態をより確実に維持することができる。
【0200】
また、上述した断熱カバー360は、レンズ支持部310としてのマウント部材311および鏡筒312の熱伝導率と同じかそれよりも小さい熱伝導率を有する部材にて構成されていることが好ましい。より詳細には、本実施の形態の如く断熱カバー360とマウント部材311との間に空気層370を設ける場合には、断熱カバー360の熱伝導率をレンズ支持部310の熱伝導率と同じかされよりも小さくすることが好ましく、本実施の形態とは異なり、断熱カバー360をマウント部材311等に密着させる構成を採用する場合には、断熱カバー360の熱伝導率をレンズ支持部310の熱伝導率よりも小さくすることが好ましい。このように構成することにより、断熱カバー360あるいはこれに加えて空気層370によって断熱効果が発揮されることになる。
【0201】
そのため、当該構成を採用することにより、受光レンズ320、マウント部材311および鏡筒312を効率的に加熱することができるとともに、これらの温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。したがって、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間の短縮化が可能になるとともに、三次元計測時において撮像素子341を受光レンズ320の焦点位置に常時配置させた状態をより確実に維持することができる。
【0202】
なお、上述した観点から、ベース部300および断熱カバー360は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂等に代表される樹脂製の部材にて構成されるか、あるいは、比較的低い熱伝導率の金属製の部材にて構成されることが好ましい。ただし、本実施の形態の如く断熱カバー360とマウント部材311との間に空気層370を設ける場合には、断熱カバー360としては、比較的高い熱伝導率の金属製の部材(たとえばアルミニウム合金製)としてもよい。
【0203】
図9、
図14、
図15および
図17に示すように、撮像部13には、マウント部材311から前方側に向けて延びるように伝熱部材380が設けられている。当該伝熱部材380は、鏡筒312と透光板131(
図8参照)との間の空間(すなわち、透光板131と撮像部13との間の空間)を加熱するためのものであり、金属製の板状部材のプレス成形品からなる伝熱部材本体と、締結部材としてのビス383とを含んでいる。
【0204】
伝熱部材本体は、断熱カバー360の第2カバー部362に宛がわれる平板状の基部381と、当該基部381の幅方向(すなわち左右方向)の端部から立設された平板状の一対の立壁部382とを含んでいる。このうち、基部381は、伝熱部材本体をマウント部材311に固定するための部位であり、一対の立壁部382は、マウント部材311から伝熱部材本体に伝熱された熱を上記空間に伝熱させることで上記空間を加熱するための部位である。
【0205】
基部381の所定位置には、挿通孔381a(
図17参照)が設けられており、当該挿通孔381aには、断熱カバー360の第2カバー部362から突出する部分の鏡筒312が挿通配置される。また、一対の立壁部382は、この基部381に設けられた挿通孔381aを挿通する部分の鏡筒312を挟み込むように伝熱部材本体の縁部を折り曲げることで形成されている。
【0206】
基部381の所定位置には、複数の貫通孔381b(
図17参照)が設けられている。複数の貫通孔381bは、伝熱部材本体をマウント部材311に固定するために用いられる部位であり、当該複数の貫通孔381bには、それぞれビス383が挿入される。
【0207】
ここで、断熱カバー360の第2カバー部362には、伝熱部材380の基部381に設けられた複数の貫通孔381bに対応して、欠除部としての複数の貫通孔362b(
図17参照)が設けられている。また、マウント部材311の前端面には、伝熱部材380の基部381に設けられた複数の貫通孔381bに対応して複数の突出部311b(
図17参照)が設けられている。当該複数の突出部311bの頂面には、ビス383に螺合するビス孔がそれぞれ設けられている。
【0208】
マウント部材311の前端面に設けられた突出部311bは、断熱カバー360の第2カバー部362に設けられた貫通孔362bに挿入されて当該貫通孔362bに嵌め込まれる。さらに、マウント部材311の前端面に設けられた突出部311bの頂面には、伝熱部材380の基部381に設けられた貫通孔381bが宛がわれ、この状態において貫通孔381bにビス383が挿入されることでビス383が突出部311bの頂面に設けられたビス孔に螺合される。
【0209】
このように構成すれば、締結部材としてのビス383を用いることで伝熱部材本体をマウント部材311に対して容易に固定することができるばかりでなく、この伝熱部材本体のマウント部材311への固定により、断熱カバー360を伝熱部材本体とマウント部材311とによって挟み込んで固定することが可能になる。したがって、組立て作業が容易化し、製造コストが削減できることになる。
【0210】
また、断熱カバー360の第2カバー部362に設けられた欠除部としての複数の貫通孔362bの内部に、マウント部材311の前端面に設けられた突出部311bおよび伝熱部材の一部を構成するビス383が配置されることにより、これらによってマウント部材311の熱を伝熱部材本体に伝熱させるための伝熱経路が構築されることになり、断熱カバー360によるマウント部材311の保温を行ないつつ、その熱の一部を効率的に断熱カバー360の外側へ取り出すことができる。したがって、マウント部材311の熱を上記伝熱経路を介して最短距離で上記空間(すなわち、鏡筒312と透光板131との間の空間)に伝熱させることが可能になる。
【0211】
ここで、伝熱部材380は、熱伝導率が大きい部材にて構成されていることが好ましく、好適にはマウント部材311と同等程度の熱伝導率の部材にて構成される。具体的には、たとえばアルミニウム合金やステンレス合金等からなる部材が利用できる。
【0212】
<J.結露防止構造の詳細>
図18は、
図1に示す計測ヘッドの要部を示す図であり、より特定的には、当該計測ヘッドに設けられた投光用窓部および受光用窓部の近傍の構造を示す模式断面図である。次に、この
図18を参照して、本実施の形態に係る計測ヘッド10における結露防止構造の詳細について説明する。
【0213】
図18を参照して、本実施の形態に係る計測ヘッド10においては、上述したように、筐体100の蓋部102の前面に設けられた投光用窓部120に透光板121が嵌め込まれるとともに、当該透光板121よりも後方に位置するように、投影部12が筐体100の内部に収容されている。投影部12の鏡筒212は、マウント部材211よりも透光板121側に向けて突出する部分を有しており、透光板121は、鏡筒212の先端部から図中に示す距離A1をもって配置されている。
【0214】
投影部12のマウント部材211は、作動時において周囲からの入熱を受けて昇温する。断熱カバー260は、この周囲からの入熱を受けて昇温するマウント部材211を保温するために、当該マウント部材211を取り囲むように設けられている。ここで、マウント部材211に入熱する熱は、主として上述したフレキシブルヒータ250にて発生する熱であり、さらには光源241にて発生する熱もマウント部材211に入熱され得る。
【0215】
ここで、伝熱部材280は、マウント部材211の前端面と熱接触するように当該マウント部材211に組み付けられており、これにより伝熱部材280は、マウント部材211から透光板121側に向けて延在している。特に、本実施の形態においては、上述したように断熱カバー260に欠除部としての貫通孔262b(
図13参照)が設けられており、この貫通孔262bの内部にマウント部材211の一部および伝熱部材280の一部が配置されることにより、マウント部材211からの熱を断熱カバー260の外側に引き出すための伝熱経路が構築されている。
【0216】
そして、伝熱部材280の一対の立壁部282の各々は、鏡筒212と透光板121との間の空間S1に向けて延びており、これにより当該空間S1は、伝熱部材280によって加熱されることになる。そのため、透光板121に結露が発生してしまうことが効果的に抑制できることになる。
【0217】
ここで、伝熱部材280の一対の立壁部282は、その先端部が投光レンズ220の光軸と直交する方向において上記空間S1と対面することとなるように、その先端部が鏡筒212の先端部よりも透光板121側に向けて突出していることが好ましい。すなわち、一対の立壁部282の先端部と透光板121との間の距離A2は、上述した鏡筒212の先端部と透光板121との間の距離A1よりも小さいことが好ましい(すなわちA1>A2)。このように構成することにより、効率的に上記空間S1を加熱することができる。
【0218】
一方、本実施の形態に係る計測ヘッド10においては、上述したように、筐体100の蓋部102の前面に設けられた受光用窓部130に透光板131が嵌め込まれるとともに、当該透光板131よりも後方に位置するように、撮像部13が筐体100の内部に収容されている。撮像部13の鏡筒312は、マウント部材311よりも透光板131側に向けて突出する部分を有しており、透光板131は、鏡筒312の先端部から図中に示す距離B1をもって配置されている。
【0219】
撮像部13のマウント部材311は、作動時において周囲からの入熱を受けて昇温する。断熱カバー360は、この周囲からの入熱を受けて昇温するマウント部材311を保温するために、当該マウント部材311を取り囲むように設けられている。ここで、マウント部材311に入熱する熱は、主として上述したフレキシブルヒータ350にて発生する熱であり、さらには撮像素子341にて発生する熱もマウント部材311に入熱され得る。
【0220】
ここで、伝熱部材380は、マウント部材311の前端面と熱接触するように当該マウント部材311に組み付けられており、これにより伝熱部材380は、マウント部材311から透光板131側に向けて延在している。特に、本実施の形態においては、上述したように断熱カバー360に欠除部としての貫通孔362b(
図17参照)が設けられており、この貫通孔362bの内部にマウント部材311の一部および伝熱部材380の一部が配置されることにより、マウント部材311からの熱を断熱カバー360の外側に引き出すための伝熱経路が構築されている。
【0221】
そして、伝熱部材380の一対の立壁部382の各々は、鏡筒312と透光板131との間の空間S2に向けて延びており、これにより当該空間S2は、伝熱部材380によって加熱されることになる。そのため、透光板131に結露が発生してしまうことが効果的に抑制できることになる。
【0222】
ここで、伝熱部材380の一対の立壁部382は、その先端部が受光レンズ320の光軸と直交する方向において上記空間S2と対面することとなるように、その先端部が鏡筒312の先端部よりも透光板131側に向けて突出していることが好ましい。すなわち、一対の立壁部382の先端部と透光板131との間の距離B2は、上述した鏡筒312の先端部と透光板131との間の距離B1よりも小さいことが好ましい(すなわちB1>B2)。このように構成することにより、効率的に上記空間S2を加熱することができる。
【0223】
以上において説明した本実施の形態に係る三次元計測装置1の計測ヘッド10とすることにより、鏡筒212,312を支持するマウント部材211,311を保温するための断熱カバー260,360を設けた場合にも、投光レンズ220および受光レンズ320に対向して配置された透光板121,131に結露が発生してしまうことが抑制可能になる。
【0224】
ここで、本実施の形態においては、投影部12に設けられた伝熱部材280の一対の立壁部282のうちの撮像部13側に位置する立壁部と、撮像部13に設けられた伝熱部材380の一対の立壁部382のうちの投影部12側に位置する立壁部とが、投影部12の鏡筒212と撮像部13の鏡筒312との間の位置においていずれもこれら投影部12と撮像部13とが並ぶ方向(すなわち左右方向)と直交する方向(すなわち上下方向および前後方向)に延在するように位置している。
【0225】
このように構成した場合には、投影部12からの出射光がこれら立壁部によって遮られることになるため、この出射光が筐体100の内部において迷光として撮像部13に入射されてしまうことが抑制できることになる。したがって、上記構成を採用することにより、入力画像にノイズがのったり入力画像が不鮮明になったりする不具合を回避できるという副次的な効果を得ることもできる。なお、この迷光を防ぐ観点からは、伝熱部材を反射率が低い黒色の部材にて構成することが好ましい。
【0226】
本実施の形態においては、上述したように一対の立壁部によって鏡筒が左右方向において挟み込まれるように構成した場合を例示して説明を行なったが、一対の立壁部によって鏡筒が上下方向において挟み込まれるように構成してもよいし、左右方向および上下方向の双方において鏡筒が複数の立壁部によって挟み込まれるように構成してもよい。また、立壁部は必ずしも複数設ける必要はなく、これが一つのみであってもよい。
【0227】
また、本実施の形態においては、上述したように一対の立壁部の先端部が鏡筒の先端部よりも透光板側に向けて突出するように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成する必要はなく、一対の立壁部の先端部と鏡筒の先端部とが透光板と同距離に配置されてもよいし、鏡筒の先端部が一対の立壁部の先端部よりも透光板側に向けて突出するように構成してもよい。ただし、上記空間の効率的な加熱を考慮した場合には、一対の立壁部の先端部と鏡筒の先端部とが透光板から同距離に配置されるように構成するか、あるいは、一対の立壁部の先端部が鏡筒の先端部よりも透光板側に向けて突出するように構成することが好ましい。
【0228】
なお、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、撮像部13にて撮像された画像をもとに、透光板121,131において結露が発生されているか否かをたとえば画像解析を行なうことで判別することもできる。その場合において、結露が発生していると判断した場合には、三次元計測を一時的に停止し、フレキシブルヒータ250,350による加熱温度を上昇させ、これによって結露した水分の蒸発を図り、結露が解消した時点で三次元計測を再開するようにしてもよい。
【0229】
<K.その他の形態等>
上述した実施の形態においては、断熱カバーがマウント部材の外周面のみならず前端面をも覆うように構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成する必要はなく、断熱カバーがマウント部材の外周面のみを覆うように構成してもよい。その場合にもマウント部材の前端面に熱接触するように伝熱部材を設けることにより、透光板に結露が発生してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0230】
また、上述した実施の形態においては、光学レンズを一定温度に保つためのヒータを設けた場合を例示して説明を行なったが、必ずしもヒータを設ける必要はなく、マウント部材に入熱する光源や撮像素子の熱を伝熱部材を用いて伝熱することで結露の発生を防止するように構成してもよい。
【0231】
また、上述した実施の形態においては、単一の投影部および単一の撮像部を備えた三次元計測装置の計測ヘッドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明は、この種のものにその適用範囲が制限されるものではない。すなわち、本発明は、単一の投影部および複数の撮像部を備えた三次元計測装置の計測ヘッド、複数の投影部および単一の撮像部を備えた三次元計測装置の計測ヘッド、ならびに、複数の投影部および複数の撮像部を備えた三次元計測装置の計測ヘッドのいずれにもその適用が可能なものである。
【0232】
また、上述した実施の形態においては、三次元計測装置として、固有コード法を適用したものを例示して説明を行なったが、この他にも、三次元計測装置としては、ランダムドット法、位相シフト法、空間コード法等を適用したものがある。本発明は、これらいずれの三次元計測装置の計測ヘッドにも適用することができるものであり、固有コード法が適用された三次元計測装置の計測ヘッドにその適用が制限されるものではない。
【0233】
また、上述した実施の形態においては、三次元計測装置の用途として、コンベヤ上を搬送されるワークの三次元形状を計測する用途を例示したが、当然にこの他にも、種々の用途に用いられる三次元計測装置の計測ヘッドに本発明を適用することができる。ここで、他の用途としては、たとえば、ばら積み状態にあるワークをロボットハンドによって個別にピッキングするに際し、当該ばら積み状態にあるワークの三次元形状を計測してそれらワークの三次元的な位置や姿勢等を個別に認識する用途等が挙げられる。
【0234】
また、上述した実施の形態においては、三次元計測装置として、特定の波長の光を用いて投影パターンを被写体に投影するように構成されたものを例示して説明を行なったが、本発明は、複数の波長の光を用いたり白色光を用いたりすることで投影パターンを被写体に投影するように構成された三次元計測装置の計測ヘッドにも当然にその適用が可能である。
【0235】
また、上述した実施の形態においては、投影部に設けられるパターン照明形成素子の光源として、LEDを用いた場合を例示して説明を行なったが、当該光源としては、この他にも、たとえばLD(Laser diode)、水銀ランプ等が利用できる。また、パターン照明形成素子としては、たとえば、上述した光源と液晶デバイスとの組み合わせ、上述した光源とマイクロミラーアレイ(たとえば光源からの光を反射する複数のマイクロミラーを含むDMD(Digital Mirror Device)等)との組み合わせ、有機EL(electro-luminescence)、アレイ状に配置されたマイクロLED等を利用することもできる。
【0236】
なお、本発明の適用対象は、三次元計測装置の計測ヘッドに限定されるものではなく、様々な種類の他の光学機器への適用が可能である。ただし、その場合にも、光学レンズを保持する鏡筒と当該鏡筒を支持するマウント部材とを備えた光学アセンブリが筐体の内部に収容されてなる光学機器に限定されることは言うまでもない。
【0237】
ここで、上述した実施の形態に係る三次元計測装置の計測ヘッドの如く、産業用途に用いられることが想定された光学機器においては、高い防水性や防塵性が求められる場合が多い。この要求を満たすためには、筐体の密閉性を高めることが必要であり、その場合には、上述した如くの結露の問題が顕著に発生し得る。これは、筐体内部の各種部品が僅からながら吸湿しており、作動時においてこれら部品が昇温することで当該水分が蒸発し、さらにこの状態において周囲の環境温度が低いことにより、筐体内部の空間の水蒸気量が飽和水蒸気量を超えることで発生する。
【0238】
したがって、本発明は、産業用途に用いられることが想定された光学機器において特に好適に利用できるものであるが、その一方で、本発明の適用対象は、産業用途の光学機器に限定されず、他の用途の光学機器にも当然に適用が可能である。
【0239】
<L.付記>
上述した本実施の形態に係る三次元計測装置の計測ヘッドの特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
[構成1]
光学レンズ(220,320)と、
前記光学レンズを保持する鏡筒(212,312)と、
前記光学レンズの光軸と直交する方向において前記鏡筒を取り囲んでこれを支持するとともに、周囲からの入熱を受けて昇温するマウント部材(211,311)と、
前記光学レンズの光軸方向において前記光学レンズと対向するように配置された透光板(121,131)とを備え、
前記鏡筒は、前記マウント部材よりも前記透光板側に向けて突出する部分を有し、
前記透光板は、前記鏡筒の先端部から距離をもって配置され、
昇温した前記マウント部材を保温するための断熱カバー(260,360)が、前記マウント部材を取り囲むように設けられているとともに、昇温した前記マウント部材の熱によって前記鏡筒と前記透光板との間の空間(S1,S2)を加熱するための伝熱部材(280,280)が、前記マウント部材から前記空間側に向けて延びるように設けられている、光学機器。
[構成2]
前記伝熱部材が、前記光学レンズの光軸と直交する方向の少なくとも一部において前記空間に対面することとなるように、前記鏡筒よりも前記透光板側に向けて突出した部分を有している、構成1に記載の光学機器。
[構成3]
前記伝熱部材の前記部分が、前記空間を挟み込むように一対設けられている、構成2に記載の光学機器。
[構成4]
前記断熱カバー(260,360)が、前記マウント部材のうちの前記光学レンズの光軸と直交する方向の外表面を覆う第1カバー部(261,361)と、前記マウント部材のうちの前記透光板側に位置する外表面を覆う第2カバー部(262,362)とを含み、
前記第2カバー部の一部に欠除部(262b,362b)が設けられるとともに、前記欠除部の内部に前記伝熱部材の一部または前記マウント部材の一部が配置されることにより、前記欠除部の内側の部分に伝熱経路が形成されている、構成1から3のいずれかに記載の光学機器。
[構成5]
前記伝熱部材(280,380)が、伝熱部材本体と、締結部材(283,383)とを含み、
前記欠除部に前記締結部材が挿入されることにより、前記伝熱部材本体が前記マウント部材に固定されるとともに、前記断熱カバーが前記伝熱部材本体と前記マウント部材とによって挟み込まれることで固定されている、構成4に記載の光学機器。
[構成6]
前記光学レンズを加熱するためのヒータ(250,350)をさらに備え、
前記ヒータが前記マウント部材に組み付けられることにより、前記ヒータの熱が前記マウント部材および前記鏡筒を介して前記光学レンズに伝熱されるように構成されている、構成1から5のいずれかに記載の光学機器。
[構成7]
前記光学レンズの温度を検出するための温度センサ(254,354)と、
前記温度センサの検出結果に基づいて前記光学レンズが一定温度となるように前記ヒータの動作を制御する制御部(11a)とをさらに備えた、構成6に記載の光学機器。
[構成8]
前記光学レンズによって形成される、光学的に共役な関係にある一対の共役面のうちの一方に配置された光学デバイスをさらに備えた、構成1から7のいずれかに記載の光学機器。
[構成9]
前記光学デバイスが、パターン照明を形成するパターン照明形成素子(241,244)からなり、
前記光学レンズが、前記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に対してパターン照明を投影することで投影パターンを結像するための投光レンズ(220)からなる、構成8に記載の光学機器。
[構成10]
前記光学デバイスが、撮像面を有する撮像素子(341)からなり、
前記光学レンズが、前記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に投影された投影パターンを前記撮像面に結像するための受光レンズ(320)からなる、構成9に記載の光学機器。
【0240】
今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0241】
1 三次元計測装置、10 計測ヘッド、11 処理部、11a 制御部、12 投影部、13 撮像部、14 表示部、15 記憶部、16 通信I/F部、100 筐体、101 底板部、101a 溝部、102 蓋部、110 照明用窓部、111 透光板、112 照明用光源、120 投光用窓部、121 透光板、130 受光用窓部、131 透光板、141,142 接続端子、150 シャーシ、160 回路基板、200 ベース部、201 第1ベース、202 第2ベース、202a 中空部、210 レンズ支持部、211 マウント部材、211a 中空部、211b 突出部、212 鏡筒、213 固定部材、220 投光レンズ、221~223 レンズ、230 基板、241 光源、242,243 レンズ、244 フォトマスク、245 保護部材、250 フレキシブルヒータ、251 囲繞部、252 配線部、253 ヒータ部、254 温度センサ、260 断熱カバー、261 第1カバー部、262 第2カバー部、262a 挿通孔、262b 貫通孔、270 空気層、280 伝熱部材、281 基部、281a 挿通孔、281b 貫通孔、282 立壁部、283,291~294 ビス、300 ベース部、310 レンズ支持部、311 マウント部材、311a 中空部、311b 突出部、312 鏡筒、313 固定部材、320 受光レンズ、321~323 レンズ、330 基板、341 撮像素子、342 遮光部材、350 フレキシブルヒータ、351 囲繞部、352 配線部、353 ヒータ部、354 温度センサ、360 断熱カバー、361 第1カバー部、362 第2カバー部、362a 挿通孔、362b 貫通孔、370 空気層、380 伝熱部材、381 基部、381a 挿通孔、381b 貫通孔、382 立壁部、383,391~393 ビス、1000 画像計測装置、1020 プロセッサ、1040 メインメモリ、1060 ストレージ、1061 OS、1062 三次元計測プログラム、1080 入力部、1100 表示部、1120 光学ドライブ、1140 下位I/F部、1150 記録媒体、1160 上位I/F部、1180 プロセッサバス、C コンベヤ、MR 計測レンジ、P 投影パターン、R プリミティブ位置、W1,W2,W3 ワード、WK ワーク。