(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】後処理装置および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 45/20 20060101AFI20240214BHJP
B65H 37/06 20060101ALI20240214BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240214BHJP
B65H 29/70 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B65H45/20
B65H37/06
G03G15/00 430
B65H29/70
(21)【出願番号】P 2020034921
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和江
(72)【発明者】
【氏名】羽生 良昭
(72)【発明者】
【氏名】池田 喜一
(72)【発明者】
【氏名】猿木 孝明
(72)【発明者】
【氏名】宮本 耕太
(72)【発明者】
【氏名】内田 憲一
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-61385(JP,A)
【文献】特開2016-124697(JP,A)
【文献】特開平6-16309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 45/00-45/30
B65H 37/00-37/06
G03G 15/00
B65H 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリとプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
搬送されてきた用紙を押圧して、用紙を湾曲させる湾曲装置を制御し、
前記湾曲装置により湾曲された用紙に対する折り処理を制御し、
搬送方向における用紙の両端が、折り処理後にそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理を行う場合、搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する
後処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
搬送されてきた用紙に対して、搬送方向における用紙の先端と後端をそれぞれ別方向に湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する
請求項1記載の後処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
搬送されてきた用紙に対して、用紙の搬送方向の断面がS字形状となるように用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する
請求項1記載の後処理装置。
【請求項4】
搬送方向における用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理は、用紙の搬送面に対してZ折りを施す折り処理である請求項1から3のいずれか記載の後処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
一枚の用紙を搬送中に、搬送されてきた用紙の一方の面を凸状に湾曲させる第1押圧ロールによる押圧と、前記一方の面を凹状に湾曲させる第2押圧ロールによる押圧と、を切り替えて、一枚の用紙の搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する
請求項1から4のいずれか記載の後処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
一枚の用紙を搬送中に、搬送されてきた用紙の一方の面を押圧する第1押圧ロールによる押圧と、前記用紙の他方の面を押圧する第2押圧ロールによる押圧と、を切り替えて、一枚の用紙の搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する
請求項1から4のいずれか記載の後処理装置。
【請求項7】
メモリとプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
画像形成装置により用紙に画像を形成し、
画像が形成されて搬送されてきた用紙を押圧して、用紙を湾曲させる湾曲装置を制御し、
前記湾曲装置により湾曲された用紙に対する折り処理を制御し、
搬送方向における用紙の両端が、折り処理後にそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理を行う場合、搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する
画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上面が凸面となっていた用紙を、デカーラを用いて下面が凸面となるように矯正して折り機能部へと供給することにより、用紙に内三つ折り処理を施す際の折り不良を抑制するようにしたシート処理装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、用紙のカール補正を行う場合に、用紙の画像密度が部分的に異なる状態に対応させて、カール補正の強さを変化させるようにした画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-061385号公報
【文献】特許第3722494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
折り機能を備えた後処理装置を用いて折り処理を行う際に、折り処理後の用紙の収容性と積載状態を向上させるために、用紙に一方向にカールをつけてから二つ折りや三つ折り等の折り処理を実行する場合がある。
【0006】
しかし、Z折り等の用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方の場合、用紙の一方向にカールをつけてしまうと、折り処理後の用紙の端部が複数の方向に反ってしまうために用紙の積載状態が悪くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方をする際に、用紙の一方向にカールをつけた場合と比較して、折り処理後の用紙の収容性を向上させることが可能な後処理装置および画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[後処理装置]
請求項1に係る本発明は、メモリとプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
搬送されてきた用紙を押圧して、用紙を湾曲させる湾曲装置を制御し、
前記湾曲装置により湾曲された用紙に対する折り処理を制御し、
搬送方向における用紙の両端が、折り処理後にそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理を行う場合、搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する後処理装置である。
【0009】
請求項2に係る本発明は、前記プロセッサが、搬送されてきた用紙に対して、搬送方向における用紙の先端と後端をそれぞれ別方向に湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する請求項1記載の後処理装置である。
【0010】
請求項3に係る本発明は、前記プロセッサが、搬送されてきた用紙に対して、用紙の搬送方向の断面がS字形状となるように用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する請求項1記載の後処理装置である。
【0011】
請求項4に係る本発明は、搬送方向における用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理は、用紙の搬送面に対してZ折りを施す折り処理である請求項1から3のいずれか記載の後処理装置である。
【0012】
請求項5に係る本発明は、前記プロセッサが、一枚の用紙を搬送中に、搬送されてきた用紙の一方の面を凸状に湾曲させる第1押圧ロールによる押圧と、前記一方の面を凹状に湾曲させる第2押圧ロールによる押圧と、を切り替えて、一枚の用紙の搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する請求項1から4のいずれか記載の後処理装置である。
【0013】
請求項6に係る本発明は、前記プロセッサが、一枚の用紙を搬送中に、搬送されてきた用紙の一方の面を押圧する第1押圧ロールによる押圧と、前記用紙の他方の面を押圧する第2押圧ロールによる押圧と、を切り替えて、一枚の用紙の搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する請求項1から4のいずれか記載の後処理装置である。
【0014】
[画像形成システム]
請求項7に係る本発明は、メモリとプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
画像形成装置により用紙に画像を形成し、
画像が形成されて搬送されてきた用紙を押圧して、用紙を湾曲させる湾曲装置を制御し、
前記湾曲装置により湾曲された用紙に対する折り処理を制御し、
搬送方向における用紙の両端が、折り処理後にそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理を行う場合、搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるよう前記湾曲装置を制御する画像形成システムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によれば、用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方をする際に、用紙の一方向にカールをつけた場合と比較して、折り処理後の用紙の収容性を向上させることが可能な後処理装置を提供することができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によれば、用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方する際に、用紙の一方向にカールをつけた場合と比較して、折り処理後の用紙の収容性を向上させることが可能な後処理装置を提供することができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によれば、用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方する際に、用紙の一方向にカールをつけた場合と比較して、折り処理後の用紙の収容性を向上させることが可能な後処理装置を提供することができる。
【0018】
請求項4に係る本発明によれば、用紙に対してZ折りを施す際に、用紙の一方向にカールをつけた場合と比較して、折り処理後の用紙の収容性を向上させることが可能な後処理装置を提供することができる。
【0019】
請求項5に係る本発明によれば、第1押圧ロール、第2押圧ロールという2つの押圧ロールを制御することにより、一枚の用紙の搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させることができる。
【0020】
請求項6に係る本発明によれば、第1押圧ロール、第2押圧ロールという2つの押圧ロールを制御することにより、一枚の用紙の搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させることができる。
【0021】
請求項7に係る本発明によれば、用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方する際に、用紙の一方向にカールをつけた場合と比較して、折り処理後の用紙の収容性を向上させることが可能な画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態の印刷システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態における画像形成システム10の構成を説明するための図である。
【
図3】制御部41のハードウェア構成を説明するための図である。
【
図4】デカール装置50の内部に設けられているデカールユニット51の構造を説明するための図である。
【
図5】デカールユニット51により用紙にダウンカールを付ける場合の動作を説明するための図である。
【
図6】デカールユニット51により用紙にアップカールを付ける場合の動作を説明するための図である。
【
図7】ダウンカールが付けられた用紙Pの例を示す図(
図7(A))、およびアップカールが付けられた用紙Pの例を示す図(
図7(B))である。
【
図8】折り装置60の折り処理ユニット61により用紙に施される折りの種類を説明するための図である。
【
図9】
図8に示した折り方により折り処理を施した用紙の斜視図を示す図である。
【
図10】一方向のカールが付けられた用紙を2つ折りした場合の様子を説明するための図である。
【
図11】一方向のカールが付けられた用紙を内3つ折りした場合の様子を説明するための図である。
【
図12】一方向のカールが付けられた用紙を外3つ折りした場合の様子を説明するための図である。
【
図13】本発明の一実施形態の画像形成システム10におけるデカール装置50と折り装置60の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図14】Z折りを行おうとする際に、デカール装置50により湾曲された状態の用紙Pの一例を示す図である。
【
図15】
図14に示したようなS字カールが施された用紙Pの斜視図である。
【
図16】S字カールが施された用紙PをZ折りする様子を説明するための図である。
【
図17】S字カールが付けられた用紙をZ折りしたものを用紙積載装置62に積載した際の様子を示す図である。
【
図18】用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方のZ折り以外の折り方の一例を示す図である。
【
図19】じゃばら4回折りを用紙に施す際に、事前にS字カールを用紙に施す場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施形態の印刷システムのシステム構成を示す図である。
【0025】
本発明の一実施形態の印刷システムは、
図1に示されるように、ネットワーク30により相互に接続された画像形成システム10、および端末装置20により構成される。端末装置20は、印刷データを生成して、ネットワーク30経由にて生成した印刷データを画像形成システム10に対して送信する。画像形成システム10は、端末装置20から送信された印刷データを受け付けて、印刷データに応じた画像を用紙上に出力する。
【0026】
次に、本実施形態の画像形成システム10の構成について
図2を参照して説明する。
【0027】
本実施形態の画像形成システム10は、画像形成装置40と、後処理装置90とから構成されている。そして、後処理装置90は、デカール装置50と、折り装置60と、フィニッシャ70とから構成されている。
【0028】
画像形成装置40は、画像形成装置40における印刷処理や後処理装置90における各種後処理を制御する制御部41と、複数の用紙供給カセット42と、用紙供給カセット42から供給された用紙を搬送する搬送路43と、搬送路43上を搬送される用紙に対して印刷ジョブ毎に画像を形成する画像形成部44とを備えている。
【0029】
画像形成部44は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各感光体が並んで配設されていると共に、中間転写ベルトが設けられている。そして、各感光体の周囲には、帯電装置、露光装置、現像装置、一次転写装置及びクリーニング装置など(図示せず)が配置され、各感光体に形成されたトナー像が中間転写ベルトに転写される。そして、中間転写ベルトのトナー像は、二次転写ロールにより、搬送路43上を搬送されてきた記録媒体等の用紙に転写され、定着装置により定着され、このトナー像が定着された用紙が後処理装置90に搬送されるようになっている。
【0030】
なお、デカールユニット51が画像形成装置40内に設けられた構成として、独立したデカール装置50が存在しないような画像形成システム10の構成としても良い。
【0031】
デカール装置50は、内部にデカールユニット51を備えていて、画像形成装置40から搬送されてきた用紙を押圧して、用紙を湾曲させる湾曲装置である。なお、デカール装置50は、単に用紙を湾曲させてカールをつけるためだけでなく、カールがついてしまった用紙を押圧して、カールをなくすまたは軽減するようなカール補正を行う場合にも使用される。
【0032】
このデカール装置50において用紙を湾曲する処理を実行しているデカールユニット51の詳細な構成および動作については後述する。
【0033】
折り装置60は、内部に折り処理ユニット61と、用紙積載装置62とを備えていて、デカール装置50によりデカールがつけられた、つまり湾曲された用紙に対する折り処理を実行する。折り処理ユニット61により折りが施された用紙は、用紙積載装置62に排出される。なお、用紙に施される折りの種類によっては、折り処理ユニット61により折りが施された用紙は元の搬送路上に戻されてフィニッシャ70に搬送されて排出トレイ上に排出される場合もある。
【0034】
フィニッシャ70は、内部に後処理ユニット71が設けられており、折り装置60から搬送されてきた用紙に対して、冊子作成処理、ステープル処理、パンチ穴処理等の各種後処理を実行する。
【0035】
次に、制御部41のハードウェア構成について
図3を参照して説明する。制御部41は、
図3に示されるように、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ等の記憶装置13、外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IFと略す。)14を有する。これらの構成要素は、制御バス15を介して互いに接続されている。
【0036】
CPU11は、メモリ12または記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、制御部41の動作を制御するプロセッサである。なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12または記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明するが、当該プログラムをCD-ROM等の記憶媒体に格納してCPU11に提供することも可能である。
【0037】
そして、制御部41は、画像形成装置40、デカール装置50、折り装置60、フィニッシャ70の動作を制御して、端末装置20から送信された印刷指示に基づいて用紙に画像を形成する印刷処理を実行するとともに、この印刷指示において指定されている後処理が、デカール装置50、折り装置60、フィニッシャ70において実行されるように制御する。
【0038】
つまり、制御部41は、画像形成装置40における印刷処理を制御するとともに、画像形成装置40から搬送されてきた用紙を押圧して用紙を湾曲させるデカール装置50を制御し、デカール装置50により湾曲された用紙に対する折り処理を実行する折り装置60を制御する。また、制御部41は、折り装置60から搬送されてきた用紙に対して後処理を実行するフィニッシャ70を制御する。
【0039】
なお、デカール装置50、折り装置60、フィニッシャ70の動作を制御するための制御部が、デカール装置50、折り装置60、フィニッシャ70においてそれぞれ設けられた構成としても良いし、デカール装置50、折り装置60、フィニッシャ70の動作を制御するための1つの制御部が後処理装置90のいずれかの場所に設けられた構成としても良い。
【0040】
次に、デカール装置50の内部に設けられているデカールユニット51の構造について
図4を参照して説明する。
【0041】
デカールユニット51は、
図4に示されたような構成となっており、画像形成装置40から用紙が搬送されてくる搬送路を挟んで2つの押圧ロール81、82が設けられた構成となっている。
【0042】
また、押圧ロール81、82と搬送路との間には、他のテンションロール等によりテンションが加えられたベルトがそれぞれ設けられており、押圧ロール81、82は、このベルトを介して搬送路上の用紙を押圧するような構成となっている。
【0043】
そして、押圧ロール81、82は、用紙に施すカールの向き、つまり湾曲の向きに応じて、上下に移動可能な構造となっている。具体的には、用紙の搬送方向両端が下を向くようなダウンカールを施す場合には、押圧ロール81、82は上方向に移動し、用紙の搬送方向両端が上を向くようなアップカールを施す場合には、押圧ロール81、82は下方向に移動するように制御される。
【0044】
次に、このデカールユニット51により用紙にダウンカールを付ける場合の動作について
図5を参照して説明する。
【0045】
用紙にダウンカールを付ける場合、デカールユニット51における押圧ロール81、82が、用紙に施すカール量に応じた距離だけ上方向に移動される。そして、この状態で画像形成装置40から搬送されてきた用紙が押圧ロール81、82間を通過することにより、用紙は上方向に押圧されたまま搬送されてゆく。その結果、デカールユニット51から折り処理装置60に搬送される用紙には用紙両端が下方向に向くようなカールが施される。
【0046】
次に、このデカールユニット51により用紙にアップカールを付ける場合の動作について
図6を参照して説明する。
【0047】
用紙にアップカールを付ける場合、デカールユニット51における押圧ロール81、82が、用紙に施すカール量に応じた距離だけ下方向に移動される。そして、この状態で画像形成装置40から搬送されてきた用紙が押圧ロール81、82間を通過することにより、用紙は下方向に押圧されたまま搬送されてゆく。その結果、デカールユニット51から折り処理装置60に搬送される用紙には用紙両端が上方向に向くようなカールが施される。
【0048】
このようにしてダウンカールが付けられた用紙Pの例を
図7(A)に示す。また、このようにしてアップカールが付けられた用紙Pの例を
図7(B)に示す。なお、
図7(A)、
図7(B)では、説明を分かり易くするために実際に用紙に施されるカール量をデフォルメして表しており、実際に用紙に施されるカール量はより小さくなっている。なお、以下の説明においても同様である。
【0049】
次に、折り装置60において実行される折り処理について説明する。まず、折り装置60の折り処理ユニット61により用紙に施される折りの種類について
図8を参照して説明する。
【0050】
なお、
図8では、折り処理ユニット61により施すことが可能な代表的な折りの種類について説明する。まず、折りの種類は、大きく分けて2つ折りと、3つ折りに分けられる。
【0051】
2つ折りは用紙の中央において1回折るような折り方である。なお、2つ折りにおいても印字面を内側とするか外側とするかにより折り方向が異なるが、ここでは印字面については考慮しないものとして説明する。
【0052】
そして、3つ折りは、用紙に対して2箇所で折りを行うような折り方である。この3つ折りには、用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方である外3つ折りと、用紙の両端のうちの一方が他方の内側となるような折り方である内3つ折りの2種類の折り方が存在する。ここで、外3つ折りは、いわゆるZ折りとも呼ばれ、用紙の断面形状または端面形状がZ字状となっている。また、内3つ折りは、いわゆるC折りとも呼ばれ、用紙の断面形状または端面形状がC字形状となっている。
【0053】
なお、Z折りとも呼ばれる外3つ折りにも、用紙を3等分した箇所で折りを行う折り方と、3等分した箇所からずらした箇所で折りを行う折り方とが存在する。
【0054】
この
図8に示した折り方により折り処理を施した用紙の斜視図を
図9に示す。
【0055】
ここで、折り装置60を用いて折り処理を行う際に、折り処理後の用紙の収容性と積載状態を向上させるために、用紙に一方向にカールをつけてから2つ折りや3つ折り等の折り処理を実行する場合がある。
【0056】
例えば、一方向のカールが付けられた用紙を2つ折りした場合の様子について
図10を参照して説明する。
【0057】
図10では、
図7に示したような一方向にカールが付けられて用紙に対して2つ折りを施した場合が示されている。この2つ折りが施された用紙はそれぞれの面の中央が膨らんだ状態となっているのが分かる。そのため、このような状態の用紙では、用紙が閉じる方向に力が加わっている。
【0058】
そのため、このような2つ折りがされた用紙が用紙積載装置62に排出された場合、用紙の収容性や積載状態は良好な状態に保たれる。
【0059】
ここで、収容性とは、折り処理後の用紙の、用紙内での収まりやすさを意味し、収容性が良いとは、折り処理後の用紙が開こうとしない状態、すなわち、折り処理後の用紙が閉じる方向に力が加わっている状態のことである。したがって、折り処理後の用紙が開こうとしないため、複数の折り処理後の用紙を積み重ねたとしても、用紙の積載状態が安定しており、積載装置または排紙トレイ等において多くの用紙を積載することが可能であることを意味する。そして、用紙の収容性が良いということは用紙が整然と収容されていることを意味するため、用紙の収容性を向上させることにより、用紙の積載状態も向上することになる。
【0060】
次に、一方向にカールが付けられた用紙を内3つ折りした場合の様子について
図11を参照して説明する。
【0061】
図11では、
図7に示したような一方向にカールが付けられて用紙に対して内3つ折りを施した場合が示されている。この内3つ折りが施された用紙はいずれの面の中央も膨らんだ状態となっているのが分かる。そのため、このような状態の用紙では、用紙が閉じる方向に力が加わっている。
【0062】
そのため、このような内3つ折りがされた用紙が用紙積載装置62に排出された場合、用紙の収容性や積載状態は良好な状態に保たれる。
【0063】
次に、一方向にカールが付けられた用紙を外3つ折りした場合の様子について
図12を参照して説明する。
【0064】
図12では、
図7に示したような一方向にカールが付けられて用紙に対して外3つ折りを施した場合が示されている。この外3つ折りが施された用紙では、外側のいずれかの面の中央が凹んだ状態となるため、用紙が開く方向に力が加わっている。
【0065】
そのため、このような外3つ折りがされた用紙が用紙積載装置62に排出された場合、折りが開きやすく用紙の収容性が悪くなるとともに、排出された複数の用紙の積載状態が不安定な状態、すなわち積載状態が悪くなってしまい倒れ易い等の問題が発生する。もしも、このような状態の様子を排出トレイの上に排出した場合には、排出トレイから落下してしまう等の弊害が発生する可能性もある。
【0066】
そこで、本実施形態の画像形成システム10では、いわゆるZ折りと呼ばれるような、用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方をする際に、用紙の一方向にカールをつけた場合と比較して、折り処理後の用紙の収容性を向上させるようにしている。
【0067】
具体的には、本実施形態における制御部41は、搬送方向における用紙の両端が、折り処理後にそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理を行う場合、搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるようデカール装置50を制御する。
【0068】
具体的には、制御部41は、搬送されてきた用紙に対して、搬送方向における用紙の先端と後端をそれぞれ別方向に湾曲させるようデカール装置50を制御する。
【0069】
つまり、制御部41は、搬送されてきた用紙に対して、用紙の搬送方向の断面がS字形状となるように用紙を湾曲させるようデカール装置50を制御する。
【0070】
なお、デカールユニット51が
図4に示したような構造となっているため、制御部41は、一枚の用紙を搬送中に、搬送されてきた用紙の一方の面を凸状に湾曲させる押圧ロール81による押圧と、一方の面を凹状に湾曲させる押圧ロール82による押圧とを切り替えて、一枚の用紙の搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるようデカール装置50を制御する。
【0071】
また、押圧ロール81、82はそれぞれ用紙の一方の面と他方の面を押圧するための押圧ロールであると考えた場合には、制御部41は、一枚の用紙を搬送中に、搬送されてきた用紙の一方の面を押圧する押圧ロール81による押圧と、用紙の他方の面を押圧する押圧ロール82による押圧と、を切り替えて、一枚の用紙の搬送面に対して複数方向に用紙を湾曲させるようデカール装置50を制御することになる。
【0072】
なお、Z折りを用紙に施す際の折り位置と用紙を湾曲させる位置とが合致している必要があるため、制御部41は、後段の折り装置60において用紙に折り処理を行う位置に応じて、用紙を湾曲させる位置を調整するようデカール装置50を制御する。
【0073】
具体的には、制御部41は、搬送される用紙の大きさによって、用紙を湾曲させる位置を調整するようデカール装置50を制御するようにしても良いし、搬送される用紙の種類によって、用紙を湾曲させる時間を調整するようデカール装置50を制御するようにしても良い。
【0074】
ここで、搬送方向における用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理の一例としては、用紙の搬送面に対してZ折りを施す折り処理が挙げられる。なお、Z折りを施す処理以外の、搬送方向における用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り処理については後述するが、以下の実施形態の説明では折り装置60においてZ折りを行う場合について説明する。
【0075】
次に、本実施形態の画像形成システム10の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0076】
まず、本実施形態の画像形成システム10におけるデカール装置50と折り装置60の動作について
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0077】
まず、制御部41は、ステップS101において、実行しようとする印刷ジョブにおいて指定されている折り処理における折り方が、用紙両端が外側で別方向に向く折り方であるか否か、具体的には外3つ折りであるZ折りであるか否かを判定する。
【0078】
そして、実行しようとする印刷ジョブにおいて指定されている折り処理における折り方がZ折りであった場合、制御部41は、ステップS102において、デカールユニット51を制御して、用紙前半の折り方向に合わせた方向に押圧ロール81、82を移動させる。
【0079】
そして、ステップS103において用紙先端が押圧ロール81、82を通過してから設定された時間が経過した場合、制御部41は、ステップ104において、用紙後半の折り方向に合わせた方向に押圧ロール81、82を移動させる。
【0080】
そして、ステップS105において用紙後端がデカールユニット51を通過して折り装置60に用紙が搬送されると、制御部41は、用紙両端が外側で別方向を向く折り、つまりZ折りを用紙に施すよう折り処理ユニット61を制御する。
【0081】
そして、このようにして折り処理が施された用紙は、ステップS107において、用紙積載装置62に排出される。
【0082】
なお、ステップS101において、実行しようとする印刷ジョブにおいて指定されている折り処理における折り方がZ折りではない場合、制御部41は、ステップS108において、用紙の折り方向に合わせた1方向のみにカールを施すようデカール装置50を制御する。
【0083】
そして、制御部41は、ステップS109において、1方向のみのカールが施された用紙に対して、指定された折りを実施するよう折り処理ユニット61を制御する。なお、このステップS109では、Z折り以外の折り、つまり2つ折りまたは内3つ折りと呼ばれるC折りが用紙に施されることになる。
【0084】
上記のような制御が行われることによって、折り装置60において外3つ折りであるZ折りを行おうとする際に、デカール装置50により湾曲された状態の用紙Pの一例を
図14に示す。なお、
図14では、このように用紙搬送方向における用紙の先端と後端をそれぞれ別方向に湾曲されたような状態をS字カールとして表している。
【0085】
そして、この
図14に示したようなS字カールが施された用紙Pの斜視図を
図15に示す。
図15を参照すると、用紙の搬送方向先端はアップカールが施され、後端はダウンカールが施された状態となっているのが分かる。
【0086】
次に、このようなS字カールが施された用紙Pを外三つ折りであるZ折りする様子を
図16に示す。
【0087】
図16(A)に示されたようなS字カールが施された用紙Pに対して折り装置60において折り処理が行われることにより、
図16(B)に示すように、用紙の先端部分と後端部分とが折り処理ユニット61において折られることになる。その結果、
図16(C)に示すようなZ折りが行われた状態の用紙が用紙積載装置62に排出されることになる。
【0088】
そして、このようにしてS字カールが付けられた用紙をZ折りした後に、用紙積載装置62にZ折りした用紙を積載した際の様子を
図17に示す。
【0089】
図17に示すように、Z折りを用紙に行う前にS字カールを用紙に施しておくことにより、用紙の外側の両方の面の中央も膨らんだ状態となるため、用紙が閉じる方向に力が加わっている。
【0090】
そのため、用紙にZ折りを施して用紙積載装置62に積載する場合でも、良好な積載状態を実現することができ、
図12に示したような状態の用紙と比較して、単位体積当たりに積載される用紙の枚数が多くなって積載状態が向上しているのが分かる。
【0091】
なお、上記では用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方の一例としてZ折りを用いて説明したが、Z折り以外の折り方の一例を
図18に示す。
【0092】
図18に示された折り方は、用紙を5分割して両端の部分がそれぞれ外側で別方向を向くように折る折り方であり、じゃばら4回折り、または外5つ折りと呼ばれる折り方である。また、用紙の両端がそれぞれ外側で別方向を向くような折り方の他の例としては、用紙を7分割して両端の部分がそれぞれ外側で別方向を向くように折る折り方も存在する。
【0093】
そして、
図18に示したような、じゃばら4回折りを用紙に施す際に、事前にS字カールを用紙に施す場合を
図19に示す。
【0094】
図19(A)では、じゃばら4回折りを用紙に施す前に行ったS字カールが示されている。そして、このようなS字カールが施された用紙に対してじゃばら4回折りを用紙に施した状態を
図19(B)に示す。
【0095】
図19(B)を参照すると、じゃばら4回折りを用紙に施す場合でも、用紙の折り方向に応じたS字カールを事前に用紙に施すことにより、外側の面を用紙が閉じる方向に力が加わった状態とすることができているのが分かる。
【0096】
上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0097】
また上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0098】
10 画像形成システム
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース
15 制御バス
20 端末装置
30 ネットワーク
40 画像形成装置
41 制御部
42 用紙供給カセット
43 搬送路
44 画像形成部
50 デカール装置
51 デカールユニット
60 折り装置
61 折り処理ユニット
62 用紙積載装置
70 フィニッシャ
71 後処理ユニット
81、82 押圧ロール
90 後処理装置