(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20240214BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20240214BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240214BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20240214BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240214BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61F13/494 111
A61F13/15 355A
A61F13/53 100
A61F13/534 100
A61F13/535 200
A61F13/539
(21)【出願番号】P 2020039777
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-273856(JP,A)
【文献】特開2012-249942(JP,A)
【文献】特開2013-252323(JP,A)
【文献】特開2017-029242(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208729(WO,A1)
【文献】特開2019-118591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/494
A61F 13/15
A61F 13/53
A61F 13/534
A61F 13/535
A61F 13/539
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の排出した液体を吸収する吸収性物品であって、
吸収体と、
前記吸収体の肌面側に配置された液透過性の肌面側シートと、
前記吸収体の非肌面側に配置された液不透過性の非肌面側シートと、
前記吸収性物品の幅方向の両側の肌面側に配置され、前記幅方向に直交する長手方向に沿って延在する一対の側方シートと、
を備え、
前記側方シートは、前記幅方向の外側に配置された固定端部と、前記幅方向の内側に配置された自由端部と、前記長手方向に伸長状態で前記自由端部に取り付けられた弾性部材と、を有し、
前記弾性部材が収縮することによって前記自由端部が肌面側に起立して立体ギャザーが形成され、
前記吸収体は、前記自由端部の前記幅方向の外側を含んで配置されており、
前記吸収体上に配置される前記固定端部の非肌面側の全面が前記吸収体と接着剤によって接着されて
おり、
前記吸収体は、前記自由端部の前記幅方向の内側に配置された第1マット部と、前記自由端部の前記幅方向の外側に配置されて、前記固定端部の非肌面側の全面が接着剤によって接着された第2マット部と、を有する、
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された上層吸収マットと、前記非肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された下層吸収マットと、を有し、
前記上層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の外側を含んで配置されており、
前記下層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の内側に配置されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
着用者の排出した液体を吸収する吸収性物品であって、
吸収体と、
前記吸収体の肌面側に配置された液透過性の肌面側シートと、
前記吸収体の非肌面側に配置された液不透過性の非肌面側シートと、
前記吸収性物品の幅方向の両側の肌面側に配置され、前記幅方向に直交する長手方向に沿って延在する一対の側方シートと、
を備え、
前記側方シートは、前記幅方向の外側に配置された固定端部と、前記幅方向の内側に配置された自由端部と、前記長手方向に伸長状態で前記自由端部に取り付けられた弾性部材と、を有し、
前記弾性部材が収縮することによって前記自由端部が肌面側に起立して立体ギャザーが形成され、
前記吸収体は、前記自由端部の前記幅方向の外側を含んで配置されており、
前記吸収体上に配置される前記固定端部の非肌面側の全面が前記吸収体と接着剤によって接着されており、
前記吸収体は、前記肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された上層吸収マットと、前記非肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された下層吸収マットと、を有し、
前記上層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の外側を含んで配置されており、
前記下層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の内側に配置されており、
前記上層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の内側に配置された第1マット部と、前記自由端部の前記幅方向の外側に配置された第2マット部と、を有する、
吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、前記肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された上層吸収マットと、前記非肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された下層吸収マットと、を有し、
前記下層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の外側を含んで配置されており、
前記上層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の内側に配置されている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記上層吸収マット及び前記下層吸収マットを包む包装シートを有する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記下層吸収マットは、高吸収性重合体であるSAPの粒子を含む、
請求項2から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記自由端部の前記幅方向の外側における前記吸収体の前記パルプの坪量は、230g/m
2以上330g/m
2以下である、
請求項2から6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体は、前記自由端部の前記幅方向の外側に配置された高吸収性重合体であるSAPの粒子を備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記SAPの粒子の坪量は、90g/m
2以上190g/m
2以下である、
請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記固定端部の前記幅方向の端部と前記非肌面側シートとは、接着剤によって接着されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記側方シートは、シート部材が二重となる構造を有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、吸収性パッド(尿パッド)、生理用品等の吸収性物品が知られている。吸収性物品は、パルプや高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)により形成され、尿や体液等の液体を吸収する吸収体を備える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、吸収性物品には幅方向外側に尿等の液体が漏れる横漏れを抑制するために立体ギャザーが設けられている。しかしながら、立体ギャザーの幅方向外側に延在する吸収体に一旦吸収された液体が肌面側に漏れる逆戻りが生じる虞がある。立体ギャザーの幅方向外側において液体の逆戻りが生じると、吸収性物品から当該液体が漏れてしまう。
【0005】
本発明は、液体の漏れを抑制し得る吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸収性物品は、吸収体上に配置される側方シートの固定端部の非肌面側の全面を吸収体と接着剤によって接着する構成を備える。
【0007】
詳細には、本発明は、着用者の排出した液体を吸収する吸収性物品であって、吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置された液透過性の肌面側シートと、前記吸収体の非肌面側に配置された液不透過性の非肌面側シートと、前記吸収性物品の幅方向の両側の肌面側に配置され、前記幅方向に直交する長手方向に沿って延在する一対の側方シートと、を備え、前記側方シートは、前記幅方向の外側に配置された固定端部と、前記幅方向の内側に配置された自由端部と、前記長手方向に伸長状態で前記自由端部に取り付けられた弾性部材と、を有し、前記弾性部材が収縮することによって前記自由端部が肌面側に起立して立体ギャザーが形成され、前記吸収体は、前記自由端部の前記幅方向の外側を含んで配置されており、前記吸収体上に配置される前記固定端部の非肌面側の全面が前記吸収体と接着剤によって接着されている。
【0008】
上記の吸収性物品では、前記吸収体は、前記肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された上層吸収マットと、前記非肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された下層吸収マットと、を有し、前記上層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の外側を含んで配置されており、前記下層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の内側に配置されていてもよい。
【0009】
上記の吸収性物品では、前記上層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の内側に配置された第1マット部と、前記自由端部の前記幅方向の外側に配置された第2マット部と、を有していてもよい。
【0010】
上記の吸収性物品では、前記吸収体は、前記肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された上層吸収マットと、前記非肌面側シート側に配置され、パルプを含んで形成された下層吸収マットと、を有し、前記下層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の外側を含んで配置されており、前記上層吸収マットは、前記自由端部の前記幅方向の内側に配置されていてもよい。
【0011】
上記の吸収性物品では、前記吸収体は、前記上層吸収マット及び前記下層吸収マットを包む包装シートを有していてもよい。
【0012】
上記の吸収性物品では、前記下層吸収マットは、高吸収性重合体であるSAPの粒子を含んでいてもよい。
【0013】
上記の吸収性物品では、前記自由端部の前記幅方向の外側における前記吸収体の前記パルプの坪量は、230g/m2以上330g/m2以下であってもよい。
【0014】
上記の吸収性物品では、前記吸収体は、前記自由端部の前記幅方向の外側に配置された高吸収性重合体であるSAPの粒子を備えていてもよい。
【0015】
上記の吸収性物品では、前記SAPの粒子の坪量は、90g/m2以上190g/m2以下であってもよい。
【0016】
上記の吸収性物品では、前記固定端部の前記幅方向の端部と前記非肌面側シートとは、接着剤によって接着されていてもよい。
【0017】
上記の吸収性物品では、前記側方シートは、シート部材が二重となる構造を有していてもよい。
【0018】
また、本発明は、吸収性物品の製造方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置された液透過性の肌面側シートと、前記吸収体の非肌面側に配置された液不透過性の非肌面側シートと、を備える吸収性物品の製造方法であって、前記吸収性物品の幅方向の両側の肌面側に、前記吸収体の長手方向に沿って延在する一対の側方シートを接着する工程と、前記側方シートを接着する工程の次に前記吸収体と前記側方シートとを圧縮する工程と、を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記の吸収性物品であれば、液体の漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る吸収性パッドの平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る吸収性パッドの端面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の変形例1に係る吸収性パッドの端面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の変形例2に係る吸収性パッドの端面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2における側臥位吸収試験の結果を示す表である。
【
図6】
図6は、実施形態3における側臥位吸収試験の結果を示す表である。
【
図7】
図7は、実施形態4に係る吸収性パッドの端面図である。
【
図8】
図8は、実施形態5に係る吸収性パッドの平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態5に係る吸収性パッドの端面図である。
【
図10】
図10は、実施形態6における吸収性パッドの製造方法に関するフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態7に係る吸収性パッドの平面図である。
【
図12】
図12は、実施形態7に係る吸収性パッドの端面図である。
【
図13】
図13は、実施形態8に係る吸収性パッドの平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態8に係る吸収性パッドの端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0022】
<実施形態1>
本実施形態では、尿取り用の吸収性パッド(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「吸収性物品」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃(
図1に示す前身頃領域1F)と背部に対向して配置される後身頃(
図1に示す後身頃領域1R)とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部(
図1に示す股下領域1B)が位置する。また、吸収性パッド1が着用者に装着された状態(以下、「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0023】
図1は、実施形態1に係る吸収性パッド1を肌面側から見た平面図である。
図2は、
図1に示す吸収性パッド1をA-A線で切断した端面図である。吸収性パッド1は、尿等の液体を吸収して保持するために用いられ、単独でも使用することができるし、使い捨ておむつの内側に重ねて使用することもできる。吸収性パッド1は、装着状態において着用者の腹部側に位置する前身頃領域1F、股下に位置する股下領域1B、及び背部側に位置する後身頃領域1Rを備える。また、吸収性パッド1は、平面視において、股下領域1Bがくびれた瓢箪形状を有する。このように、吸収性パッド1は、瓢箪形状の最幅狭の領域が股下領域1B内に位置している。
【0024】
吸収性パッド1は、装着状態における肌面側に配置されたトップシート2(本願でいう「肌面側シート」の一例)を備える。トップシート2は、吸収性パッド1の装着状態において着用者の肌に接する部分(肌対向面)であり、尿等の液体を透過する液透過性の材料で形成されている。トップシート2には、織布、不織布、多孔性フィルム等が用いられる。なお、不織布には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理したものを用いてもよいし、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等を用いてもよい。
【0025】
また、吸収性パッド1は、装着状態における肌面側の反対側である非肌面側に配置されたバックシート3(本願でいう「非肌面側シート」の一例)を備える。バックシート3は、尿等の液体を透過しない液不透過性の材料で形成されている。例えば、バックシート3には、ポリエチレン樹脂で形成された液不透過性のフィルムが用いられる。なお、バックシート3には、液不透過性を維持しつつ装着状態での蒸れを防ぐための通気性を得るために、0.1~4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムが用いられてもよい。
【0026】
トップシート2とバックシート3は、長手方向の各端部で接合されている。また、吸収性パッド1は、トップシート2とバックシート3との間に配置され、尿等の液体を吸収する吸収体4を備える。吸収体4は、着用者の排出した液体を吸収するために股下領域1Bを含んで配置されている。
【0027】
また、吸収体4は、針葉樹等の繊維材料を解砕して得られるフラッフパルプ(以下、「パルプ」と称する)を含んで形成された吸収マットを有する。本実施形態において吸収体4は、吸収マットとして、トップシート2側に配置された上層吸収マット4Aと、バックシート3側に配置された下層吸収マット4Bとを有する。上層吸収マット4Aは、平面視において、吸収性パッド1と概ね同じ瓢箪形状を有する。下層吸収マット4Bは、トップシート2側から見て上層吸収マット4Aの下方に配置されており、平面視において、吸収性パッド1の長手方向が長辺となる矩形状(長方形状)を有する。上層吸収マット4Aと下層吸収マット4Bは、各々の幅方向の中心が略一致するように厚み方向に積層されている。また、平面視において、上層吸収マット4Aは、下層吸収マット4Bよりも大きく形成されている。吸収性パッド1は、尿等の液体が排泄されたときに相対的に大きく、トップシート2側に配置された上層吸収マット4Aにより尿を迅速に吸収することができる。なお、吸収体4の長手方向は、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bの長手方向及び吸収性パッド1の長手方向と一致している。また、吸収体4の幅方向は、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bの幅方向及び吸収性パッド1の幅方向と一致している。
【0028】
なお、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bには、パルプや、高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)、親水性シート等やこれらを組み合わせたものが用いられる。また、SAPは、自重の10~100倍程度(本実施形態では、60倍)の液体を吸収する。SAPには、例えば、液体吸収前の状態において0.1~0.5mm程度の直径を有する粒状のものが用いられる。なお、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bは、パルプの坪量が均一に形成されていてもよいし、幅方向においてパルプの坪量が変化するように形成されていてもよい。
【0029】
また、吸収体4は、上層吸収マット4Aを厚み方向に貫通して形成された上層肉抜き溝5を有する。上層肉抜き溝5は、上層吸収マット4Aの長手方向に延在し、上層吸収マット4Aの幅方向略中央に形成されている。平面視において、上層肉抜き溝5は、前後の両端が円弧状に形成された長方形状を有する。上層肉抜き溝5の前側の端部は、前身頃領域1Fの中程に位置し、上層肉抜き溝5の後側の端部は、後身頃領域1Rの前部に位置している。また、上層肉抜き溝5は、一定の幅を有している。例えば、当該幅は、20mm以上35mm以下である。また、上層肉抜き溝5の長さは、245mm以上355mm以下に形成されている。このサイズの上層肉抜き溝5を備えた吸収性パッド1は大人用に適している。なお、上層肉抜き溝5は、平面視において、長方形状ではなく、その他の多角形状や楕円形状に形成されていてもよい。
【0030】
また、吸収性パッド1において、
図1に示す円で囲んだ領域6を着用者の尿道口が当接する尿道口当接位置に規定する。領域6は、股下領域1B内の吸収性パッド1の幅方向中央部に配置され、トップシート2上に規定される。また、吸収性パッド1を厚み方向に見て、領域6と重なる部分が尿道口に対応する部位である。言い換えると、尿道口に対応する部位は、排尿位置である。上層肉抜き溝5は、着用者が排泄した尿が流入し易いように、尿道口に対応する部位を含んで形成されている。吸収性パッド1を平面視した場合、尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位は同じ位置であり、上層吸収マット4Aの後側端部から前方に上層吸収マット4Aの長手方向の長さの60%の位置に規定される。例えば、上層吸収マット4Aの長手方向の長さが500mmである場合、上層吸収マット4Aの後側端部から前方に300mmの位置が尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位に規定される。なお、股下領域1Bの左右両端部に円弧状に切り抜いたRカットが形成されており、Rカット形成部位の前後方向の長さが30mm以内であり、且つ、上層吸収マット4Aの幅方向の最狭部が当該Rカットの形成された部分である場合には、当該最狭部の左端と右端とを結ぶ直線と上層吸収マット4Aの幅方向中央部を通る直線との交点を尿道口当接位置及び尿道口に対応する部位に規定してもよい。
【0031】
着用者によって排泄された尿等の液体は、上層肉抜き溝5内を流れて拡散する。また、上層吸収マット4A上に排泄された尿等の液体を、上層肉抜き溝5を介して下層吸収マット4Bに導くことができる。このように、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bを有する吸収体4によって、液体を吸収することができる。
【0032】
また、吸収性パッド1は、吸収性パッド1の幅方向の両側の肌面側に配置され、長手方向に沿って延在する一対のサイドシート7L,7R(本願でいう「一対の側方シート」の一例)を備える。サイドシート7L,7Rは、長手方向の端部がトップシート2の長手方向の端部と合うように配置されている。サイドシート7L,7Rは、幅方向外側に配置された固定端部7LA,7RAを有する。固定端部7LA,7RAは、その非肌面側(下層)に配置された部材と接着剤によって接着されている。
図2に示すように、固定端部7LA,7RAの非肌面側には、上層吸収マット4Aの幅方向の端部と、バックシート3の幅方向の端部とが配置されている。また、上層吸収マット4Aは、トップシート2よりも幅広な寸法で形成されており、上層吸収マット4Aの幅方向の端部は、トップシート2に重ならず、サイドシート7L,7Rの固定端部7LA,7RAと重なって固定端部7LA,7RAに接着されている。本実施形態では、吸収体4の上層吸収マット4A上に配置される固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面が上層吸収マット4Aと接着剤によって接着されている。なお、固定端部7LAの幅方向の外側の縁は、バックシート3と同じ形状に形成されており、固定端部7LAとバックシート3の縁同士が接着されている。
【0033】
また、サイドシート7L,7Rは、吸収性パッド1の幅方向の内側に配置された自由端部7LB,7RBと、吸収性パッド1の長手方向に伸長状態で自由端部7LB,7RBに配置された糸ゴム8L,8R(「弾性部材」の一例)を有する。自由端部7LB,7RBは吸収性パッド1のいずれの部位にも接合されておらず、
図2に示すように糸ゴム8L,8Rが収縮することによって自由端部7LB、7RBが肌面側に起立して立体ギャザー10L,10Rが形成される。立体ギャザー10L,10Rは、液体の横漏れを抑制する。
【0034】
また
図1に示すように、平面視において自由端部7LB,7RBよりも幅方向の外側(立体ギャザー10L,10Rの幅方向の外側)に延在する領域が耳部11L、11Rである。本実施形態では、耳部11L,11Rは、前身頃領域1Fから後身頃領域1Rに亘って形成されており、股下領域1Bよりも前身頃領域1F及び後見頃領域1Rの方が広く形成されている。また、上層吸収マット4Aは、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側を含んで配置されており、下層吸収マット4Bは、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されている。吸収性パッド1は、耳部11L、11Rにおけるクッション性を高めつつ、上層吸収マット4Aを大きく形成することで液体の吸収量を大きくすることができる。なお、耳部11L,11Rは、前身頃領域1F又は後身頃領域1Rのいずれか一方に形成されていてもよい。
【0035】
ところで、吸収性パッド等の吸収性物品においては、立体ギャザーの幅方向の外側に延在する吸収体に一旦吸収された液体が肌面側に漏れる逆戻りが生じる虞がある。立体ギャザーの幅方向の外側において液体の逆戻りが生じると、吸収性物品から当該液体が漏れてしまう。そこで、本実施形態に係る吸収性パッド1では、耳部11L,11Rにおける上層吸収マット4Aが一旦吸収した液体が逆戻りするのを防ぐために、上層吸収マット4A上に配置される固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面が上層吸収マット4Aと接着剤によって接着されている。本実施形態では、固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面に接着剤が塗布されて当該非肌面側に配置された部材に接着されている。
図1の平面図において固定端部7LA,7RAの接着剤塗布領域12L,12Rはドットハッチングで表されており、
図2の端面図において接着剤塗布領域12L,12Rは実線の太線で表されて
いる。接着剤には、例えばホットメルトが用いられる。接着剤を塗布することによって固定端部7LA,7RAを非肌面側の部材に対して固定しつつ、固定端部7LA,7RAを液不透過性とすることができる。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、立体ギャザー10L,10R(自由端部7LB,7RB)の幅方向の外側から一旦上層吸収マット4Aに吸収された液体が肌面側に漏れる逆戻りを抑制できるため、液体の漏れを抑制できる。
【0036】
また、吸収性物品において、立体ギャザーの幅方向の外側での逆戻りを抑制するために耳部の肌面側に疎水性のシート部材を積層すると吸収性物品の部品(部材)点数が多くなってしまう。また、疎水性のシート部材を積層したことによって肌触りが悪くなり、これによって褥瘡対策が必要になったりする虞がある。一方、本実施形態に係る吸収性パッド1では、立体ギャザー10L,10Rの幅方向の外側に疎水性のシート部材を積層しなくてもサイドシート7L,7Rの固定端部7LA,7RAの非肌面側に接着剤を塗布することで立体ギャザー10L,10Rの幅方向の外側からの逆戻りを抑制できる。
【0037】
また、立体ギャザーの幅方向の外側に疎水性のシート部材を積層する場合、当該シート部材が立体ギャザー形成用のサイドシートに接合し難い場合もある。また、当該シート部材が着用者に与える肌トラブル等の影響を考慮して吸収性物品を設計する必要もある。これに対し、本実施形態に係る吸収性パッド1では、立体ギャザー10L,10Rの幅方向の外側に疎水性のシート部材を積層しなくてもよいのでこれらの問題は生じない。
【0038】
また本実施形態に係る吸収性パッド1は、吸収体4上に配置される固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面が吸収体4の上層吸収マット4Aと接着剤によって接着されているため、サイドシート7L,7Rの固定端部7LA,7RAと上層吸収マット4Aが強固に接着するので、上層吸収マット4Aを割れ難くすることができる。また、固定端部7LA,7RAの幅方向の端部とバックシート3とは、接着剤によって接着されている。吸収性パッド1は、サイドシート7L,7Rと、吸収体4よりも非肌面側に配置されたシート部材(例えば、バックシート3)が接着することで吸収体4を動かないように固定することができ、吸収体4が不用意に動いて割れてしまうのを防ぐことができる。
【0039】
また、吸収性物品において、液体は、吸収体が割れてない状態では当該吸収体内を同心円状に広がっていき、吸収体が割れている状態では当該吸収体の割れ目を伝って移動する。液体は、吸収体が割れている状態では吸収体が割れていない状態よりも吸収体端部に到達し易くなる。吸収体の割れ目が吸収体端部にまで延在している場合には特に迅速に液体が吸収体端部に到達してしまう。また、吸収体の割れ目が生じ当該割れ目が吸収体端部にまで延在してない状態であっても吸収体が割れていない状態よりも早く液体が吸収体端部に到達してしまう。吸収性物品は、吸収体端部に液体が早く到達してしまうと液体の漏れが生じてしまう虞がある。しかしながら、本実施形態に係る吸収性パッド1は、上述の通り、吸収体4が割れるのを防ぐことができるため、吸収体4の端部に液体が早く到達するのを抑制することで液体の漏れを抑制できる。
【0040】
また、上層吸収マット4Aは、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側を含んで配置されており、下層吸収マット4Bは、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されている。この構成によれば、上層吸収マット4A内の尿を下層吸収マット4Bが吸収・保持し、下層吸収マット4Bの幅方向の端部は立体ギャザー10L,10Rの内側(範囲内)にあるため、下層吸収マット4Bから尿が絞り出されたとしてもその肌面側には上層吸収マット4Bが配置され、さらにその幅方向の外側には立体ギャザー10L,10Rも配置されているため、吸収性パッド1と着用者の肌との間に形成される空間からの液体の漏れを抑制できる。また、この構成によれば、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側(耳部11L,11R)に尿を到達し難くし、下層吸収マット4Bの幅方向の端部から尿が絞り
出されたとしても当該端部の周囲にある上層吸収マット4Aでこの尿を吸収・保持でき、更に、上層吸収マット4A上に配置される固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面が上層吸収マット4Aと接着剤によって接着されているため、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側からの液体の漏れを抑制できる。
【0041】
また、下層吸収マット4Bは、SAPの粒子を含んでいてもよい。吸収性パッド1は、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置された下層吸収マット4BにSAPの粒子を含ませることで下層吸収マット4B内において尿を保持することができるので、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側(耳部11L,11R)に尿が移動する可能性を低減でき、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側から液体が漏れるのを抑制できる。なお、上層吸収マット4Aは、SAPの粒子を含んでいてもよいし、SAPの粒子を含んでいなくてもよい。
【0042】
また、上層吸収マット4Aと下層吸収マット4Bの間にSAPの粒子で形成されたSAP層が配置されていてもよい。SAP層は、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されている。吸収性パッド1は、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されたSAP層において尿を保持することができるので、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側(耳部11L,11R)に尿が移動する可能性を低減でき、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側から液体が漏れるのを抑制できる。
【0043】
<変形例1>
次に、本実施形態の変形例1に係る吸収性パッド1について
図3を用いて説明する。
図3は、
図2と同様の吸収性パッドの端面図である。本変形例に係る吸収性パッド1は、サイドシート11L,11Rが自由端部7LB,7RBの幅方向の内側端部で折り返されてシート部材が二重となる構造を有する。サイドシート7L,7Rが当該構造を有することで立体ギャザー10L,10Rの幅方向の外側における液不透過性を向上させつつ、立体ギャザーの幅方向の外側10L,10R(耳部11L,11R)におけるクッション性を向上できる。なお、サイドシート7L,7Rは、固定端部7LA,7RAで折り返されることによってシート部材が二重になっていてもよいし、2枚のシート部材を積層させることでシート部材が二重になっていてもよい。
【0044】
<変形例2>
次に、本実施形態の変形例2に係る吸収性パッド1について
図4を用いて説明する。
図4は、
図2と同様の吸収性パッドの端面図である。本変形例に係る吸収性パッド1では、上層吸収マット4Aは、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置された第1マット部41Aと、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側に配置された第2マット部42Aと、を有する。第1マット部41Aと第2マット部42Aは、吸収性パッド1の幅方向に所定の隙間を設けて互いに分離している。第1マット部41Aは下層吸収マット4Bの肌面側に積層されており、第2マット部42Aは、固定端部7LA,7LBに接着剤で接着されている。第1マット部41Aと第2マット部42Aが分離されているため、上層吸収マット4Aを通じて自由端部7LB,RBの幅方向の外側に液体が移動するのが阻害され、自由端部7LB,RBの幅方向の外側に移動する液体を少なくすることができる。このため、本変形例に係る吸収性パッド1は、自由端部7LB,RBの幅方向の外側で逆戻りが生じるのを防ぎ、液体が漏れるのを抑制できる。
【0045】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る吸収性パッド1について説明する。本実施形態に係る吸収性パッド1は、上記実施形態1に係る吸収性パッド1と同一の構成を備えている。本実施形態において、吸収体4は、自由端部7LB,7RB(立体ギャザー10L,10R)の幅方向の外側に配置されたSAPの粒子を備える。本実施形態ではSAPの粒子は、吸収体4
の上層吸収マット4Aに含有されている。
【0046】
吸収体4が自由端部7LB,7RB(立体ギャザー10L,10R)の幅方向の外側に配置されたSAPの粒子を備える吸収性パッドについて側臥位吸収試験(以下、単に「試験」と称する)を行い漏れ抑制の性能を評価した。本試験は、ダミー人形に吸収性パッドを装着し、当該ダミー人形を側臥位状態にして行う。本試験における準備物は、ダミー人形、送液ポンプ、チューブ、チューブジョイント、200ml用ポリカップ、電子天秤、ストップウォッチ、人工尿、定規、分度器、重り、位置ずれ防止用のゴムシート、吸収性パッド、吸収性パッド固定用のアウターパンツ、高さ調整用の治具である。人工尿は、蒸留水1000mLに対して、尿素20g、塩化ナトリウム8g、硫酸マグネシウム7水和物0.8g、塩化カルシウム2水和物0.3gを溶解させて調製した。
【0047】
また、ダミー人形の寸法は、お腹まわりが760mmであり、お尻まわりが850mmであり、足のつけ根まわりが460mmであり、股のつけ根まわりが390mmであり、太ももまわりが350mmであり、おへそから股を通って背中までの長さが650mmでである。なお、本実施形態では、女性のダミー人形を用いた。
【0048】
まず、送液ポンプにチューブを取りつけ、チューブジョイントを介してダミー人形と当該チューブを接続する。送液ポンプの回転数を調整して、人工尿が10ml/秒で排出されるように設定する。この際、正確な試験結果を得るために、チューブやチューブジョイント内に液体が残留していないことを確認しておく。また、準備段階において、吸収性パッドの重さを電子天秤で計測しておく。
【0049】
次いで、吸収性パッドにおける尿道口当接位置に油性ペン等で印を記入する。尿道口当接位置の詳細は上述の通りである。
【0050】
次いで、ダミー人形の尿道口と吸収性パッドの尿道口当接位置とを位置合わせをして、ダミー人形に吸収性パッドを装着し、吸収性パッドの上からアウターパンツをダミー人形に履かせて吸収性パッドをダミー人形に固定する。
【0051】
次いで、ダミー人形を平面に設置した後、ダミー人形を平面から30度傾けた状態で固定する。この際、例えば、ダミー人形を壁等に立て掛けて30度傾けた状態に調整する。
【0052】
次いで、高さ調整用の治具を用いて、ダミー人形において最も横幅の広い箇所(臀部に相当)の高さを上記平面から232mmに合わせ、ダミー人形の上部の高さを上記平面から210mmに合わせる。なお、これらの高さは準備した定規で計測されて調整される。
【0053】
次いで、位置ずれ防止用のゴムシートと当該ゴムシート上に重りを設置して、ダミー人形の側部(脇腹に相当)に重りの側面を当接させて、試験中にダミー人形の位置や角度ずれがない様にダミー人形を固定する。この際、分度器で、ダミー人形と上記平面との角度が30度に調整されているかを確認する。これで、本試験の準備は完了である。
【0054】
次いで、人工尿150mlをポリカップ内に準備し、送液ポンプを用いて10m/秒の速度でダミー人形の尿道口から吸収性パッドに注入する。なお、一般的に介護が必要な成人の1回の排尿量は150mlであり、排尿速度は、10ml/秒である。本実施形態では、この排尿量及び排尿速度を再現して漏れ試験を行う。本試験では、1回での人工尿の注入量は150mlであり、人工尿を4回に分けて注入する。1回の注入にかかる時間は15秒であり、この時間をストップウォッチで計測する。
【0055】
図5は、本試験結果を示す表である。
図5の表の「SAP坪量(g/m
2)」の欄は、
本試験で作製した各吸収性パッドで自由端部7LB,7RBの幅方向の外側に配置されるSAPの粒子の坪量を示している。本試験では、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側に配置されるSAPの粒子の坪量(g/m
2)を0~350g/m
2内で10g/m
2毎に設定し、吸収性パッドを作製した。なお、SAPの粒子は、吸収体4の上層吸収マット4Aに含有されている。また、
図5の表の「漏れ抑制」の欄は、各吸収性パッドが液体の漏れを抑制できたか否かを示している。当該欄の「〇」は、各吸収性パッドが液体の漏れを抑制できたことを示しており、当該欄の「◎」は、各吸収性パッドが液体の漏れをより抑制できたことを示している。
図5の表に示すように、SAPの粒子の坪量が90g/m
2以上190g/m
2以下である場合に、液体の漏れをより抑制できた結果となった。
【0056】
本実施形態に係る吸収性パッド1において、吸収体4は、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側に配置されたSAPの粒子を備える。SAPの粒子の坪量は、好ましくは0g/m2以上であり、より好ましくは90g/m2以上190g/m2以下である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、立体ギャザー10L,10Rの幅方向の外側からの逆戻りを抑制できるため、液体の漏れを抑制できる。
【0057】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係る吸収性パッド1について説明する。本実施形態に係る吸収性パッド1は、上記実施形態1に係る吸収性パッド1と同一の構成を備えている。本実施形態では、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側における吸収体4のパルプの坪量を規定する。
【0058】
本実施形態では、吸収性パッドについて上記実施形態2と同様に試験を行い漏れ抑制の性能を評価した。
図6は、本試験結果を示す表である。
図6の表の「パルプ坪量(g/m
2)」の欄は、本試験で作成した各吸収性パッドで自由端部7LB,7RBの幅方向の外側における吸収体4のパルプの坪量を示している。本試験では、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側における吸収体4の上層吸収マット4Aのパルプの坪量を0~350g/m
2内で10g/m
2毎に設定し、吸収性パッドを作製した。また、
図6の表の「漏れ抑制」の欄は、各吸収性パッドが液体の漏れを抑制できたか否かを示している。当該欄の「〇」は、各吸収性パッドが液体の漏れを抑制できたことを示しており、当該欄の「◎」は、各吸収性パッドが液体の漏れをより抑制できたことを示している。
図6の表に示すように、上層吸収マット4Aのパルプの坪量が230g/m
2以上330g/m
2以下である場合に、液体の漏れをより抑制できた結果となった。
【0059】
本実施形態に係る吸収性パッド1において、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側における上層吸収マット4Aのパルプの坪量は、好ましくは100g/m2以上350g/m2以下であり、より好ましくは230g/m2以上320g/m2以下である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、立体ギャザー10L,10Rの幅方向の外側からの逆戻りを抑制できるため、液体の漏れを抑制できる。
【0060】
<実施形態4>
次に、実施形態4に係る吸収性パッド1について
図7を用いて説明する。なお、上記実施形態に係る吸収性パッド1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図7は、
図2と同様の吸収性パッド1の端面図である。本実施形態において、吸収体4は、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bを包むコアラップシート4C(本願でいう「包装シート」の一例)を有する。コアラップシート4Cには、ティッシュペーパーのような薄葉紙や不織布等が用いられる。吸収性パッド1は、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bを包むコアラップシートを有することで着用者が排出した液体を上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bの全体に拡散することができる。なお、コアラップシート4Cは、1枚のシート部材で形成されていてもよいし、2枚以
上のシート部材で形成されていてもよい。
【0061】
また、吸収体4上に配置される固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面がコアラップシート4Cと接着剤によって接着されている。本実施形態に係る吸収性パッド1は、接着剤によって接着された固定端部7LA,7RAを液不透過性とすることができるため、立体ギャザー10L,10R(自由端部7LB,7RB)の幅方向の外側から一旦上層吸収マット4Aに吸収された液体が肌面側に漏れる逆戻りを抑制できるため、液体の漏れを抑制できる。
【0062】
<実施形態5>
次に、実施形態5に係る吸収性パッド1について
図8及び
図9を用いて説明する。なお、上記実施形態に係る吸収性パッド1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図8は、本実施形態に係る吸収性パッド1を肌面側から見た平面図である。
図9は、
図8に示す吸収性パッド1をB-B線で切断した端面図である。本実施形態では平面視において、上層吸収マット4Aは矩形状を有し、下層吸収マット4Bは吸収性パッド1と概ね同じ瓢箪形状を有する。
【0063】
上層吸収マット4Aは、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されており、下層吸収マット4Bは、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側を含んで配置されている。吸収性パッド1は、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側の耳部11L,11Rにおけるクッション性を高めつつ、下層吸収マット4Bを大きく形成することで液体の吸収量を大きくすることができる。なお、耳部11L,11Rは、前身頃領域1F又は後身頃領域1Rのいずれか一方に形成されていてもよい。
【0064】
また、本実施形態に係る吸収性パッド1では、自由端部7LB、7RB(立体ギャザー10L,10R)の幅方向の外側における下層吸収マット4Aが一旦吸収した液体が逆戻りするのを防ぐために、吸収体4の下層吸収マット4B上に配置される固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面が下層吸収マット4Bと接着剤によって接着されている。接着剤を塗布することによって固定端部7LA,7RAを下層吸収マット4Bに対して固定しつつ、固定端部7LA,7RAを液不透過性とすることができる。これにより、本実施形態に係る吸収性パッド1は、立体ギャザー10L,10R(自由端部7LB,7RB)の幅方向の外側から一旦下層吸収マット4Bに吸収された液体が肌面側に漏れる逆戻りを抑制できるため、液体の漏れを抑制できる。
【0065】
また、上層吸収マット4Aは、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されており、下層吸収マット4Bは、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側を含んで配置されている。この構成によれば、下層吸収マット4B内の尿を上層吸収マット4Aが吸収・保持し、上層吸収マット4Aの幅方向の端部は立体ギャザー10L,10Rの内側(範囲内)にあるため、立体ギャザー10L,10R(自由端部7LB,7RB)の幅方向の外側からの液体の漏れを抑制できる。なお、下層吸収マット4Bは、SAPの粒子を含んでいてもよいし、上層吸収マット4Aは、SAPの粒子を含んでいてもよいし、SAPの粒子を含んでいなくてもよい。
【0066】
なお、本実施形態においても、
図4に示す実施形態1の変形例と同様に、下層吸収マット4Bは、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置された第1マット部と、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側に配置された第2マット部と、を有するように構成してもよい。この構成によれば、吸収性パッド1は、自由端部7LB,RBの幅方向の外側で逆戻りが生じるのを防ぎ、液体が漏れるのを抑制できる。
【0067】
<実施形態6>
次に、実施形態6における吸収性パッド1の製造方法について説明する。
図10は、本実施形態に係る吸収性パッド1の製造方法の概要を示したフローチャートである。本実施形態に係る製造方法では、吸収性パッド1の幅方向の両側の肌面側に、吸収体4の長手方向に沿って延在する一対のサイドシート7L,7Rを接着する(ステップS101)。ステップS101において、吸収体4上に配置されるサイドシート7L,7Rの固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面を吸収体4と接着剤によって接着する。接着剤にはホットメルトが用いられる。サイドシート7L,7Rを接着する工程(ステップS101)の次に吸収体4とサイドシート7L,Rとを圧縮する(ステップS102)。本実施形態に係る吸収性パッド1の製造方法によれば、ステップS101おいてサイドシート7L,7Rに対して吸収体4の上層吸収マット4Aや下層吸収マット4Bを形成するパルプ等が均一の状態で固定され、次のステップS102においてサイドシート7L,7Rがプレス装置によって圧縮されるため、圧縮工程の際に吸収体4のパルプが位置ずれ等してパルプが偏ってしまい、吸収性パッド1の使用時において吸収体4に割れが生じるのを防止できる。本実施形態に係る吸収性パッド1の製造方法は、吸収体4が割れるのを防ぐことができるため、吸収体4の端部に液体が早く到達するのを抑制することで液体の漏れを抑制できる。なお、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bは、パルプの坪量が均一に形成されていてもよいし、幅方向においてパルプの坪量が変化するように形成されていてもよい。
【0068】
<実施形態7>
次に、実施形態7に係る吸収性パッド1について
図11及び
図12を用いて説明する。なお、上記実施形態に係る吸収性パッド1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図11は、本実施形態に係る吸収性パッド1を肌面側から見た平面図である。
図12は、
図11に示す吸収性パッド1をC-C線で切断した端面図である。本実施形態に係る吸収性パッド1は、自由端部7LB,RB(立体ギャザー10L,10R)の幅方向の外側に流入する液体量を制御する流量制御部21L、21Rを備える。
図11及び
図12において、流量制御部21L、21Rは右下がりハッチングで示す領域に配置されている。
【0069】
本実施形態では、上層吸収マット4Aは、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側を含んで配置されており、下層吸収マット4Bは、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されている。流量制御部21L、21Rは上層吸収マット4A内に設けられる。例えば、流量制御部21L、21Rは上層吸収マット4A内に配置されたSAPにより形成されている。SAPは、液体を吸収するとゲル状となって膨張し、液体の移動を阻害する。本実施形態に係る吸収性パッド1は、SAPで形成された流量制御部21L、21Rによって自由端部7LB,RBの幅方向の外側に移動する液体量を制御できる。本実施形態に係る吸収性パッド1は、自由端部7LB,RBの幅方向の外側に移動する液体を少なくすることができるので、自由端部7LB,RBの幅方向の外側で逆戻りが生じるのを防ぎ、液体が漏れるのを抑制できる。
【0070】
なお、本実施形態では、固定端部7LA、7LBの非肌面側の全体が接着剤によって非肌面側に配置された部材に接着されていなくてもよい。このような構成であっても、本実施形態に係る吸収性パッド1は、流量制御部21L、21Rを備えることで、自由端部7LB,RBの幅方向の外側で逆戻りが生じるのを防ぎ、液体が漏れるのを抑制できる。
【0071】
<実施形態8>
次に、実施形態8に係る吸収性パッド1について
図13及び
図14を用いて説明する。なお、上記実施形態に係る吸収性パッド1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
図13は、本変形例に係る吸収性パッド1を肌面側から見た平面図である。
図14は、
図13に示す吸収性パッド1をD-D線で切断した端面図である。本変形例に係る吸収性パッド1は、自由端部7LB,RB(立体ギャザー1
0L,10R)の幅方向の外側に流入する液体量を制御する流量制御部としての貫通溝22L、22Rを備える。
【0072】
本実施形態では、上層吸収マット4Aは、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側を含んで配置されており、下層吸収マット4Bは、自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されている。貫通溝22L、22Rは、上層吸収マット4Aを厚み方向に貫通して形成されている。貫通溝22L、22Rは、自由端部7LB,RBの幅方向の外側に液体が移動するのを阻害するため、自由端部7LB,RBの幅方向の外側に移動する液体を少なくすることができる。このため、本実施形態に係る吸収性パッド1は、自由端部7LB,RBの幅方向の外側で逆戻りが生じるのを防ぎ、液体が漏れるのを抑制できる。
【0073】
なお、本実施形態において貫通溝22L、22Rは、股下領域1Bから後身頃領域1Rに跨って設けられている。貫通溝22L、22Rは、後身頃領域1R内や前身頃領域1F内に設けられていてもよい。
【0074】
<その他の実施形態>
次に、その他の実施形態について説明する。吸収性パッド1は、上層吸収マット4Aと下層吸収マット4Bとの間に配置されたSAP層を備えていてもよい。SAP層は、高吸収性重合体(SAP)の粒子が複数集まって形成されている。吸収性パッド1は、SAP層を備えることにより、全体として液体の吸収量を増加させることができる。
【0075】
また、トップシート2を上層吸収マット4Aと同程度に幅広に形成し、トップシート2上に配置される固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面をトップシート2と接着剤によって接着してもよい。また、トップシート2と上層吸収マット4Aやコアラップシート4Cの間に上層吸収マット4Aと同程度に幅広に形成した中間シート(セカンドシート)を配置し、中間シート上に配置される固定端部7LA,7RAの非肌面側の全面を中間シートと接着剤によって接着してもよい。これらの構成によっても、吸収性パッド1は、自由端部7LB,7RBの幅方向の外側からの液体の漏れを抑制できる。
【0076】
また、吸収性パッド1は、下層吸収マット4Bを厚み方向に貫通して形成された貫通溝を備えていてもよい。吸収性パッド1は、当該貫通溝を備えることで、下層吸収マット4Bへの液体の拡散性を向上できる。
【0077】
また、吸収性パッド1においては、上層吸収マット4AがSAPの粒子を含み、下層吸収マット4BがSAPの粒子を含まない構成としてもよい。この構成において、SAPの粒子は上層吸収マット4A全体に均一に配置されていてもよいし、自由端部7LB,7RB(立体ギャザー10L,10R)の幅方向の外側が自由端部7LB,7RBの幅方向の内側よりもSAPの坪量が大きくなるように構成してもよいし、自由端部7LB,7RB(立体ギャザー10L,10R)の幅方向の内側が自由端部7LB,7RBの幅方向の外側よりもSAPの坪量が大きくなるように構成してもよい。また、吸収性パッド1においては、上層吸収マット4A及び下層吸収マット4BがSAPの粒子を含む構成としてもよし、上層吸収マット4AがSAPの粒子を含まず、下層吸収マット4BがSAPの粒子を含む構成としてもよい。吸収体4におけるSAPの粒子のこれらの配置パターンは適宜組み合わせることができる。
【0078】
また、上記実施形態7、8において、
図9に示すように上層吸収マット4Aを自由端部7LB,7RBの幅方向の内側に配置されるように形成し、下層吸収マット4Bを自由端部7LB,7RBの幅方向の外側を含んで配置されるように形成し、下層吸収マット4Bに流量制御部21L、21Rや貫通溝22L、22Rを設けてもよい。また、
図9に示すように上層吸収マット4A及び下層吸収マット4Bを形成した場合であっても、上述のS
APの粒子の配置パターンを適用できる。例えば、SAPの粒子は下層吸収マット4B全体に均一に配置されていてもよいし、自由端部7LB,7RB(立体ギャザー10L,10R)の幅方向の外側が自由端部7LB,7RBの幅方向の内側よりもSAPの坪量が大きくなるように構成してもよいし、自由端部7LB,7RB(立体ギャザー10L,10R)の幅方向の内側が自由端部7LB,7RBの幅方向の外側よりもSAPの坪量が大きくなるように構成してもよい。
【0079】
また、上記実施形態において、吸収体4は上層吸収マット4Aと下層吸収マット4Bの2層の吸収マットを有しているが、吸収体4は1層の吸収マットを有する構成としてもよい。当該構成においても、吸収体4は、コアラップシート4Cを有していてもよいし、SAPの粒子を含んでいてもよい。
【0080】
上記実施形態及び実施例では、吸収性パッド1が例示されていたが、その他の形態の吸収性物品においても上記構成を適用可能である。上記構成を適用可能な吸収性物品としては、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつ、尿パッド、軽失禁パッドといったギャザー付きの各種形態の吸収性物品や、ギャザーの無いフラットな吸収性物品を挙げることができる。また、上記実施形態1~8の構成は、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0081】
1・・吸収性パッド
1F・・前身頃領域
1B・・股下領域
1R・・後身頃領域
2・・トップシート
3・・バックシート
4・・吸収体
4A・・上層吸収マット
4B・・下層吸収マット
4C・・コアラップシート
5・・上層肉抜き溝
6・・領域
7L、7R・・サイドシート
8・・糸ゴム
10L、10R・・立体ギャザー
11L、11R・・耳部
12L、12R・・ホットメルト塗布領域
21L、21R・・流量制御部
22L、22R・・貫通溝
41A・・第1マット部
42A・・第2マット部