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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】文書処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 11/60 20060101AFI20240214BHJP
   H04N 1/387 20060101ALI20240214BHJP
   G06F 40/103 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
G06T11/60 100A
H04N1/387 110
G06F40/103
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020041483
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021144377
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横瀬 太郎
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-216174(JP,A)
【文献】特開2006-103280(JP,A)
【文献】特開2008-129702(JP,A)
【文献】特開平11-126265(JP,A)
【文献】特開2007-133780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/60
H04N 1/387
G06F 40/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
文書を構成する複数の要素を取得し、
文書を構成する各要素の文書上における各要素間の論理的な位置関係を示す位置関係情報を参照して、各要素が文書上に配置される範囲を特定する配置データを設定し、
配置データが設定又は更新されたことに応じて、各要素がそれぞれ最新の配置データにより特定される当該要素に対応する範囲内に収まるよう要素に対する編集処理を実行し、
編集処理が実行されたことに応じて、各要素と当該要素に対応する範囲との大きさの差から得られる各要素の編集処理後の品質の評価を参照に配置データの評価を行い、
評価が所定の条件を満たす配置データに従って各要素を配置する範囲を決定する、
ことを特徴とする文書処理装置。
【請求項2】
前記編集処理の対象となる要素は、画像データであることを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記画像データのアスペクト比を維持した状態で拡縮することによって当該画像データが対応する範囲内に収まるよう編集することを特徴とする請求項2に記載の文書処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記画像データが前記最新の配置データにより特定される当該画像データに対応する範囲からはみ出す部分を切除することで当該画像データが対応する範囲内に収まるよう編集することを特徴とする請求項2又は3に記載の文書処理装置。
【請求項5】
前記編集処理の対象となる要素は、テキストデータであることを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記テキストデータの大きさと前記最新の配置データにより特定される当該テキストデータに対応する範囲の大きさとの関係に応じて、当該テキストデータに含まれる文字の大きさを調整することで当該テキストデータが対応する範囲内に収まるよう編集することを特徴とする請求項5に記載の文書処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記編集処理の対象となる要素に一体として取り扱われる部品要素が含まれている場合、前記部品要素の一部でも前記最新の配置データにより特定される当該要素に対応する範囲からはみ出さないように編集することを特徴とする請求項2又は5に記載の文書処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記編集処理後の要素の大きさと前記最新の配置データにより特定される当該要素に対応する範囲の大きさとの差が大きいほど品質の評価が悪くなるよう当該編集処理後の要素の品質を評価することを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記編集処理の対象となる要素に一体として取り扱われる部品要素が含まれている場合、前記部品要素を含まない要素に比して前記部品要素を含む要素の品質の評価が悪くなるように評価することを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記要素の種類に応じた評価方法を設定することを特徴とする請求項8又は9に記載の文書処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
配置データに対する評価が所定の条件を満たすまで、各要素が文書上に配置される範囲を変更する変更処理が実行されることに応じて配置データを繰り返し更新し、
配置データに対する評価が所定の条件を満たした場合、当該配置データに従って各要素を配置する範囲を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記変更処理において、画面に表示されている文書上の、各要素に対応する範囲の境界線をユーザに移動させることによって各要素に対応する範囲を変更させることを特徴とする請求項11に記載の文書処理装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、各要素に対応する範囲間に隙間がないように配置データを設定又は更新することを特徴とする請求項1又は12に記載の文書処理装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記配置データに対する評価が所定の条件を満たさなくても所定の終了条件を満たした場合、所定の終了条件を満たした時点で文書上に各要素を配置する範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項15】
コンピュータに、
文書を構成する複数の要素を取得する機能、
文書を構成する各要素の文書上における各要素間の論理的な位置関係を示す位置関係情報を参照して、各要素が文書上に配置される範囲を特定する配置データを設定する機能、
配置データが設定又は更新されたことに応じて、各要素がそれぞれ最新の配置データにより特定される当該要素に対応する範囲内に収まるよう要素に対する編集処理を実行する機能、
編集処理が実行されたことに応じて、各要素と当該要素に対応する範囲との大きさの差から得られる各要素の編集処理後の品質の評価を参照に配置データの評価を行う機能、
評価が所定の条件を満たす配置データに従って各要素を配置する範囲を決定する機能、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
文書の作成方法として、例えば、予め提供されているコンテンツ等の要素を文書上の所定の領域に当てはめていくことで文書を作成する作成方法がある。所定の領域に当てはめる要素としては、テキストや画像、あるいはこれらが混在したコンテンツが一般的である。提供された要素の大きさと当該コンテンツを当てはめる領域との大きさとが異なる場合、所定の領域にちょうど収まるように要素を拡縮やトリミングなどの調整をしたり、提供された各要素が収まるよう各領域の大きさを調整したりする。あるいは、双方の大きさを調整する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-242021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、文書を構成する複数の要素が文書の所定の領域に収まるよう配置する際に、要素の特性を考慮せずに配置した場合と比較して編集処理される要素の特性を考慮しつつ各要素を配置する範囲を設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る文書処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、文書を構成する複数の要素を取得し、文書を構成する各要素の文書上における各要素間の論理的な位置関係を示す位置関係情報を参照して、各要素が文書上に配置される範囲を特定する配置データを設定し、配置データが設定又は更新されたことに応じて、各要素がそれぞれ最新の配置データにより特定される当該要素に対応する範囲内に収まるよう要素に対する編集処理を実行し、編集処理が実行されたことに応じて、各要素と当該要素に対応する範囲との大きさの差から得られる各要素の編集処理後の品質の評価を参照に配置データの評価を行い、評価が所定の条件を満たす配置データに従って各要素を配置する範囲を決定することを特徴とする。
【0006】
また、前記編集処理の対象となる要素は、画像データであることを特徴とする。
【0007】
また、前記プロセッサは、前記画像データのアスペクト比を維持した状態で拡縮することによって当該画像データが対応する範囲内に収まるよう編集することを特徴とする。
【0008】
また、前記プロセッサは、前記画像データが前記最新の配置データにより特定される当該画像データに対応する範囲からはみ出す部分を切除することで当該画像データが対応する範囲内に収まるよう編集することを特徴とする。
【0009】
また、前記編集処理の対象となる要素は、テキストデータであることを特徴とする。
【0010】
また、前記プロセッサは、前記テキストデータの大きさと前記最新の配置データにより特定される当該テキストデータに対応する範囲の大きさとの関係に応じて、当該テキストデータに含まれる文字の大きさを調整することで当該テキストデータが対応する範囲内に収まるよう編集することを特徴とする。
【0011】
また、前記プロセッサは、前記編集処理の対象となる要素に一体として取り扱われる部品要素が含まれている場合、前記部品要素の一部でも前記最新の配置データにより特定される当該要素に対応する範囲からはみ出さないように編集することを特徴とする。
【0012】
また、前記プロセッサは、前記編集処理後の要素の大きさと前記最新の配置データにより特定される当該要素に対応する範囲の大きさとの差が大きいほど品質の評価が悪くなるよう当該編集処理後の要素の品質を評価することを特徴とする。
【0013】
また、前記プロセッサは、前記編集処理の対象となる要素に一体として取り扱われる部品要素が含まれている場合、前記部品要素を含まない要素に比して前記部品要素を含む要素の品質の評価が悪くなるように評価することを特徴とする。
【0014】
また、前記プロセッサは、前記要素の種類に応じた評価方法を設定することを特徴とする。
【0015】
また、前記プロセッサは、配置データに対する評価が所定の条件を満たすまで、各要素が文書上に配置される範囲を変更する変更処理が実行されることに応じて配置データを繰り返し更新し、配置データに対する評価が所定の条件を満たした場合、当該配置データに従って各要素を配置する範囲を決定することを特徴とする。
【0016】
また、前記プロセッサは、前記変更処理において、画面に表示されている文書上の、各要素に対応する範囲の境界線をユーザに移動させることによって各要素に対応する範囲を変更させることを特徴とする。
【0017】
また、前記プロセッサは、各要素に対応する範囲間に隙間がないように配置データを設定又は更新することを特徴とする。
【0018】
また、前記プロセッサは、前記配置データに対する評価が所定の条件を満たさなくても所定の終了条件を満たした場合、所定の終了条件を満たした時点で文書上に各要素を配置する範囲を決定することを特徴とする。
【0019】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、文書を構成する複数の要素を取得する機能、文書を構成する各要素の文書上における各要素間の論理的な位置関係を示す位置関係情報を参照して、各要素が文書上に配置される範囲を特定する配置データを設定する機能、配置データが設定又は更新されたことに応じて、各要素がそれぞれ最新の配置データにより特定される当該要素に対応する範囲内に収まるよう要素に対する編集処理を実行する機能、編集処理が実行されたことに応じて、各要素と当該要素に対応する範囲との大きさの差から得られる各要素の編集処理後の品質の評価を参照に配置データの評価を行う機能、評価が所定の条件を満たす配置データに従って各要素を配置する範囲を決定する機能、を実現させる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、文書を構成する複数の要素が文書の所定の領域に収まるよう配置する際に、要素の特性を考慮せずに配置した場合と比較して編集処理される要素の特性を考慮しつつ各要素を配置する範囲を設定することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、画像データを文書への掲載対象とすることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、画像データの品質を維持することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、画像データの品質を維持しつつ、対応する範囲内に収まるよう編集することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、テキストデータを文書への掲載対象とすることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、テキストデータに含まれる文字の判読性を考慮しつつ、対応する範囲内に収まるよう編集することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、部品要素全体を認識できる状態にて要素を文書に配置することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、品質の評価の悪い要素を配置する配置データが最終的に選択されにくくすることができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、部品要素を含む要素を編集処理の対象とした配置データが最終的に選択されにくくすることができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、各要素に対して要素の種類に適合した評価を行うことができる。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、各要素が文書上に配置される範囲を変更しながら所定の条件を満たす配置データを見つけ出すことができる。
【0031】
請求項12に記載の発明によれば、各要素に対応する範囲をユーザに指定させることができる。
【0032】
請求項13に記載の発明によれば、文書上のスペースを無駄にすることなく各要素を配置することができる。
【0033】
請求項14に記載の発明によれば、配置データに対する評価が所定の条件を満たさなくても配置データを更新する処理を終了させることができる。
【0034】
請求項15に記載の発明によれば、文書を構成する複数の要素が文書の所定の領域に収まるよう配置する際に、要素の特性を考慮せずに配置した場合と比較して編集処理される要素の特性を考慮しつつ各要素を配置する範囲を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る文書処理装置の一実施の形態を示すブロック構成図である。
図2】本実施の形態におけるコンテンツデータ記憶部に記憶されるコンテンツデータのデータ構成の一例を示す図である。
図3A】本実施の形態における位置関係情報記憶部に記憶される位置関係情報のデータ構成の一例を、コンテンツの階層構造にて示す図である。
図3B】本実施の形態における位置関係情報記憶部に記憶される位置関係情報のデータ構成の一例を、コンテンツを文書上に配置したときの状態を模式的に示す図である。
図4】本実施の形態における文書作成処理を示すフローチャートである。
図5A図3Bに対応する文書を示す模式図である。
図5B】本実施の形態において設定する配置データのデータ構成の一例を示す図である。
図6】本実施の形態において文書の領域とアスペクト比が同じ画像コンテンツを当該領域に配置したときの模式図である。
図7A】本実施の形態において文書の領域とアスペクト比が異なる画像コンテンツを当該領域に配置したときの模式図である。
図7B】本実施の形態において文書の領域とアスペクト比が異なる画像コンテンツを当該領域に配置したときの他の模式図である。
図8】本実施の形態において画像コンテンツと文書上の当該画像コンテンツに対応する領域の大きさの関係を示す図である。
図9】本実施の形態において画像コンテンツと文書上の当該画像コンテンツに対応する領域の大きさの他の関係を示す図である。
図10】本実施の形態においてトリミングの対象とする範囲を示す図である。
図11A】本実施の形態において文書上に配置するテキストコンテンツの一例を示す図である。
図11B図11Aに示すテキストコンテンツを領域に配置する場合の一例を示す図である。
図11C図11Aに示すテキストコンテンツを領域に配置する場合の他の例を示す図である。
図11D図11Aに示すテキストコンテンツを領域に配置する場合の他の例を示す図である。
図11E図11Aに示すテキストコンテンツを領域に配置する場合の他の例を示す図である。
図12A】本実施の形態において会社のロゴの画像コンテンツを領域に配置する場合の一例を示す図である。
図12B】本実施の形態において会社のロゴの画像コンテンツを領域に配置する場合の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0037】
本実施の形態における文書処理装置10は、パーソナルコンピュータ(PC)等の従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、文書処理装置10は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)等のファイルの記憶手段、通信インタフェース及びユーザインタフェースを搭載する汎用的なハードウェア構成により実現される。
【0038】
図1は、本発明に係る文書処理装置の一実施の形態を示すブロック構成図である。本実施の形態における文書処理装置10は、初期位置設定部11、コンテンツ編集部12、評価部13、判定部14、配置データ変更部15、文書作成部16、コンテンツデータ記憶部21、位置関係情報記憶部22、配置データ記憶部23及び編集後コンテンツ記憶部24を有している。なお、本実施の形態において説明に用いない構成要素については、図から省略している。
【0039】
図2は、本実施の形態におけるコンテンツデータ記憶部21に記憶されるコンテンツデータのデータ構成の一例を示す図である。本実施の形態では、コンテンツが文書を構成する要素に相当する。図2には、コンテンツとして、画像データを含む画像コンテンツとテキストデータにより構成されるテキストコンテンツの各データ構成が示されている。
【0040】
画像コンテンツのコンテンツデータには、当該コンテンツのデータ名、コンテンツの実体であるデータ、コンテンツの画像サイズ、アスペクト比、ビット数、トリミング、色情報等が含まれている。このうち、画像サイズは、コンテンツの幅及び高さによって付与されており、アスペクト比は、コンテンツの幅及び高さの比から得られる。トリミングは、当該コンテンツをトリミングしてよいか否かを示すためのフラグ情報であり、“可”又は“不可”が設定される。本実施の形態では、トリミングの項目によってトリミングの可否を直接設定できるようにしたが、例えば、データの種類を設定して、その種類からトリミングの可否を判断するようにしてもよい。
【0041】
テキストコンテンツのコンテンツデータには、当該コンテンツのデータ名、コンテンツの実体であるデータ、フォント、フォントサイズ、1行当たりの文字数を示す改行幅、コンテンツを文書に掲載させる大きさを示すテキストエリア等が含まれている。
【0042】
図3A及び図3Bは、本実施の形態における位置関係情報記憶部22に記憶される位置関係情報のデータ構成の一例を示す図である。位置関係情報は、文書を構成する各要素の文書上における各コンテンツ間の論理的な位置関係を示す情報である。コンテンツ間の論理的な位置関係は、階層構造にて表すことができる。図3Aは、この文書上におけるコンテンツの階層構造を示す図である。図3Bは、図3Aに示す階層構造に基づき各コンテンツを文書上に配置したときの模式図である。
【0043】
図1に戻り、初期位置設定部11は、コンテンツデータ記憶部21に記憶されるコンテンツデータ及び位置関係情報記憶部22に記憶される位置関係情報を参照して、各コンテンツが文書上に配置される範囲を特定する配置データを初期設定し、その設定した配置データを配置データ記憶部23に保存する。コンテンツ編集部12は、配置データ記憶部23に保存されている最新の配置データを参照して、各コンテンツがそれぞれ最新の配置データにより特定される当該コンテンツに対応する範囲内に収まるようコンテンツに対する編集処理を実行し、編集処理後におけるコンテンツを編集後コンテンツ記憶部24に保存する。評価部13は、コンテンツ編集部12により編集処理が実行されたことに応じて、コンテンツデータにより規定される各コンテンツと、配置データ記憶部23に保存されている最新の配置データにより特定される当該コンテンツに対応する範囲との大きさの差から得られる各コンテンツの編集処理後の品質の評価を参照に配置データの評価を行う。判定部14は、評価部13による配置データの評価結果に従って当該配置データを文書の作成の際に利用するかどうかを判定する。配置データ変更部15は、判定部14が最新の配置データを利用しないと判定した場合、配置データを新たに作成することによって最新の配置データを更新する。文書作成部16は、文書の作成に利用する配置データが判定部14により決定されたときに、その配置データを利用して文書を作成する。
【0044】
文書処理装置10における各構成要素11~16は、文書処理装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部21~24は、文書処理装置10に搭載されたHDDにて実現される。あるいは、RAM又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0045】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD-ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0046】
次に、本実施の形態における動作について説明する。本実施の形態においては、文書上にコンテンツを配置することによって文書を作成するが、以下に説明する文書作成処理の実行を開始するまでに文書上に配置するコンテンツに関するコンテンツデータをコンテンツデータ記憶部21に登録すると共に、これらのコンテンツの論理的な位置関係を示す位置関係情報を位置関係情報記憶部22に登録しておく必要がある。以下、本実施の形態における文書作成処理について図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0047】
なお、本実施の形態において作成する「文書」は、説明の便宜上、チラシなど1ページで構成される文書を想定して説明する。また、本実施の形態では、コンテンツが配置されていない白紙の状態の電子化されたシート上にコンテンツを配置することによって電子化された文書を作成することになるが、説明の便宜上、白紙の状態の電子化されたシートのことも「文書」と称したり、あるいは文書の「用紙」と称したりする。もちろん、本実施の形態において作成する文書というのは、コンテンツが配置された状態の電子文書であることは言うまでもない。
【0048】
初期位置設定部11は、位置関係情報記憶部22に記憶される位置関係情報を参照して、各コンテンツが文書上に配置される範囲を特定する配置データを初期設定するが(ステップ101)、ここで、図3A及び図3Bを用いて位置関係情報に従って配置されるコンテンツの論理的な位置関係について説明する。
【0049】
図3Aによると、文書30は、イメージ#1とその他のコンテンツ(つまり、イメージ#2、イメージ#3、テキスト#1)との枝に二分されている。図3Bに例示するように、文書30の用紙を縦方向にしてコンテンツを配置する場合、文書30の用紙の長手方向(図3Bにおいては図面縦方向)を二分化し、一方(図3Bにおいては、上側)にイメージ#1を配置するための領域31を設ける。この結果、その他のコンテンツは、他方の領域32(図3Bにおいては、下側)に配置されることになる。なお、本実施の形態では、用紙上の「領域」とコンテンツが配置される「範囲」を同義に用いる。
【0050】
図3Aにおいて、イメージ#1ではない方の枝は、イメージ#2とその他のコンテンツ(つまり、イメージ#3、テキスト#1)との枝に二分されている。図3Bに例示するように、領域32の長手方向(図3Bにおいては図面横方向)を二分化し、一方(図3Bにおいては、左側)にイメージ#2を配置する。そして、その他のコンテンツは、他方の領域33(図3Bにおいては、右側)に配置されることになる。
【0051】
図3Aにおいて、イメージ#2ではない方の枝は、イメージ#3とテキスト#1との枝に二分されている。図3Bに例示するように、領域33の長手方向(図3Bにおいては図面縦方向)を二分化し、一方の領域33a(図3Bにおいては、上側)にイメージ#3が、他方の領域33b(図3Bにおいては、下側)にテキスト#1が、それぞれ配置されることになる。
【0052】
図5Aは、図3Bに対応する文書を示す模式図である。図5Aには、各コンテンツの境目を示す境界線34a,34b,34cが示されている。なお、境界線34a,34b,34cを相互に区別する必要はない場合は「境界線34」と総称する。図3Bを用いて説明したように、初期位置設定部11は、文書30上の割り当てていない領域を等分割して各コンテンツに割り当てるようにして、各コンテンツに割り当てる範囲を初期設定する。初期位置設定部11は、この初期設定により各コンテンツに割り当てられた範囲を特定するための配置データを生成するが、この配置データのデータ構成の一例を図5Bに示す。
【0053】
本実施の形態では、図5Aに例示したように、文書30の左上角を原点(0.0)として、図面横方向(用紙の短辺方向)をx軸方向、図面縦方向(用紙の長辺方向)をy軸方向とする2次元座標上に文書30を配置する。そして、各コンテンツに対して当該コンテンツの位置及び大きさを設定する。なお、文書のxy軸方向は、文書を図示する他の図においても同様とする。
【0054】
例えば、イメージ#1のコンテンツが配置される領域31の場合、左角の位置は、(0,0)であり、x軸方向の大きさは480、y軸方向の大きさは320なので、本実施の形態では、図5Bに示すように、bbox=[0,0,480,320]と表現する。すなわち、bboxの第1項がx座標値、第2項がy座標値、第3項がx軸方向の大きさ、第4項がy軸方向の大きさである。「bbox」は、各コンテンツが配置される領域の位置及び大きさを示す変数名である。そして、「アスペクト比」は、領域31に配置されるイメージ#1の幅及び高さから得られるアスペクト比であり、ここでは、“1:1”と設定された例が示されている。本実施の形態では、文書30上に形成される各領域とコンテンツとは1対1の関係にあるので、文書30上における領域31には、イメージ#1が固定的に割り当てられる。従って、初期位置設定部11は、コンテンツデータ記憶部21からイメージ#1のコンテンツデータを参照してアスペクト比を計算し、イメージ#1に対応させて配置データに含めるようにした。ただ、配置データに含めずに、イメージ#1のアスペクト比が必要なときにコンテンツデータ記憶部21を参照するように処理してもよい。
【0055】
また、テキスト#1のコンテンツが配置される領域33bの場合、左角の位置は、(240,480)であり、x軸方向の大きさは240、y軸方向の大きさは160なので、本実施の形態では、bbox=[240,480,240,160]と表現する。そして、「テキストエリア」は、当該テキストコンテンツの大きさを示している。図5Bに例示する[200,10]は、x軸方向の大きさが200、y軸方向の大きさが10であることを示している。図5Bに示すように、画像コンテンツの場合は当該画像コンテンツをアスペクト比で大きさを表し、テキストデータ、すなわち、テキストコンテンツの場合は、座標値によって大きさを表す。その理由については、後述する。
【0056】
なお、前述したように、イメージ#1は領域31に、テキスト#1は領域33bに、というように、文書を構成するコンテンツが決まれば、当該コンテンツを当てはめる領域は一意に決まる。従って、以降の説明においては、説明の簡略化のために処理対象とするコンテンツを示した場合、そのコンテンツを当てはめる対象となる領域がどれかということに関しては、その都度明示しないで説明することにする。
【0057】
初期位置設定部11が初期設定した配置データを配置データ記憶部23に保存すると、続いて、コンテンツ編集部12は、各コンテンツを、対応する領域に当てはめることで配置するが、コンテンツと領域の大きさが一致しないと、コンテンツが領域からはみ出すことでコンテンツ同士が重なってしまったり、文書30の用紙からはみ出してしまったりする。あるいは、その逆に領域内に空白ができたりする。このように配置することは文書レイアウト上好ましくないので、本実施の形態では、コンテンツ編集部12を設けて、コンテンツを編集できるようにした。本実施の形態では、画像コンテンツとテキストコンテンツで取り扱いを変えている。最初に画像コンテンツについて具体例をあげて説明する。
【0058】
図6は、画像コンテンツを文書30の領域31に配置したときの模式図である。図6に示す画像コンテンツのアスペクト比は3対2である。領域31のアスペクト比が3対2の場合、コンテンツ編集部12は、画像コンテンツをそのままあるいはアスペクト比を維持した状態で拡縮することによって領域31にちょうど収まるよう配置することができる。
【0059】
図7A及び図7Bは、図6と同様に文書30の領域31に画像コンテンツを配置したときの模式図である。図7A及び図7Bに示す画像コンテンツのアスペクト比は、図2に示すイメージ#1のように1対1である。領域31のアスペクト比は、図6と同様に3対2とする。このように、画像コンテンツと領域のアスペクト比が異なる場合において、図7Aでは、文書30の領域31に余白ができないように、画像コンテンツの横(すなわち、x軸方向)を、領域31の長辺に合うよう拡縮して配置した場合を示している。この場合、画像コンテンツは、領域31の下方の領域32,33にまではみ出してしまい、この状態で文書が作成されると画像コンテンツの一部分36が他のコンテンツと重なってしまうことになる。一方、図7Bでは、文書30上の他の領域32,33まではみ出さないように、画像コンテンツの縦(すなわち、y軸方向)を、領域31の短辺に合うよう拡縮して配置した場合を示している。この場合、画像コンテンツは、文書30の領域31内に余白の部分37ができてしまうことになる。
【0060】
そこで、本実施の形態におけるコンテンツ編集部12は、作成される文書30が図7A及び図7Bで示した状態とならないようにコンテンツを編集する(ステップ102)。つまり、コンテンツが対応する領域からはみ出さないように、かつ余白ができないようにコンテンツを編集する。このコンテンツの編集について図8,9を用いて説明する。
【0061】
図8は、画像コンテンツと文書上の当該画像コンテンツに対応する領域の大きさの関係を示す図である。図8において、画像コンテンツ40は、幅w0、高さh0の大きさである。太線で示される領域41は、幅(すなわち、x軸方向)がw1、高さ(すなわち、y軸方向)がh1の大きさである。そして、w0>w1の関係にあるとする。
【0062】
この場合、コンテンツ編集部12は、コンテンツ配置後の領域41内に余白ができないように画像コンテンツ40を配置するために、画像コンテンツ40のアスペクト比を維持した状態で拡縮を試みる。画像コンテンツ40と領域41の大きさ及びアスペクト比の関係から、画像コンテンツ40の高さh0を、領域41の高さh1に合わせるように縮小して領域41に当てはめると領域41に余白ができてしまう。一方、画像コンテンツ40の幅w0を、領域41の幅w1に合わせるように縮小して領域41に当てはめると領域41に余白ができない。そこで、コンテンツ編集部12は、画像コンテンツ40の幅w0を、領域41の幅w1に合わせるように縮小して領域41に配置する。なお、図8では、縮小後の画像コンテンツ40aの下辺を領域41の下辺に合わせるように配置した場合を示している。この場合、画像コンテンツ40aの上側は、Δhの高さ分が領域41からはみ出すことになるので、コンテンツ編集部12は、その高さΔh分の範囲(図8におけるハッチング部分)をトリミングするよう編集する。なお、トリミングにより切除される部分の面積は、画像コンテンツ40aの幅w1と高さΔhから算出できる。このようにして、コンテンツ編集部12は、コンテンツデータにより規定されている大きさの画像コンテンツ40が領域41に収まるように画像コンテンツ40を編集する。
【0063】
図9は、図8と同様に画像コンテンツと文書上の当該画像コンテンツに対応する領域の大きさの他の関係を示す図である。図9において、画像コンテンツ40は、図8と同じコンテンツである。太線で示される領域42は、幅(すなわち、x軸方向)がw2、高さ(すなわち、y軸方向)がh2の大きさである。そして、h0<h2の関係にあるとする。画像コンテンツ40の幅w0と領域42の幅w2との大小関係は問わないが、近い数値であるものとする。
【0064】
この場合、コンテンツ編集部12は、コンテンツ配置後の領域42内に余白ができないように画像コンテンツ40を配置するために、画像コンテンツ40のアスペクト比を維持した状態で拡縮を試みる。画像コンテンツ40と領域42の大きさ及びアスペクト比の関係から、画像コンテンツ40の幅w0を、領域42の幅w2に合わせるように拡縮して領域41に当てはめると領域42に余白ができてしまう。一方、画像コンテンツ40の高さh0を、領域42の高さh2に合わせるように拡大して領域42に当てはめると領域42に余白ができない。そこで、コンテンツ編集部12は、画像コンテンツ40の高さh0を、領域42の高さh2に合わせるように拡大して領域42に配置する。なお、ここでは、拡大後の画像コンテンツ40bの左辺を領域42の左辺に合わせるように配置したとする。この場合、画像コンテンツ40bの右側は、Δwの幅分が領域42からはみ出すことになるので、コンテンツ編集部12は、その幅Δw分の範囲(図9におけるハッチング部分)をトリミングするよう編集する。なお、切除される部分の面積は、画像コンテンツ40bの高さh2と幅Δwから算出できる。このようにして、コンテンツ編集部12は、コンテンツデータにより規定されている大きさの画像コンテンツ40が領域42に収まるように画像コンテンツ40を編集する。
【0065】
画像コンテンツを変倍、すなわち画像コンテンツの縦横の比を変えて拡縮すると、画像から得られるイメージ(「画像が与える印象」ともいう)が変わってきてしまい、画像コンテンツの品質が低下してしまう可能性がある。画像コンテンツの品質の低下というのは、オリジナル画像から得られるイメージと変わってしまうことをいう。これに対し、アスペクト比を固定して拡縮しても画像から得られるイメージは、画像コンテンツ内の物体が確認できないほど極端に縮小されなければ、それほど変わらないと考えられる。そこで、本実施の形態においては、画像から得られるイメージを損なわないように画像コンテンツのアスペクト比を維持した状態で画像コンテンツを拡縮することによって画像コンテンツが領域に収まるように編集するようにした。
【0066】
ところで、図7~9では、コンテンツと対応する領域の大きさの関係について説明した。特に、大きさが合致しない場合には、画像コンテンツを拡縮し、そしてトリミングすることで対応するよう編集すると説明したが、画像コンテンツとして削除したくない情報がトリミングされる部分に含まれないように編集するのが好ましい。例えば、画像コンテンツ40が2人の人物を写した画像だとする。図8においては、画像コンテンツ40aの下辺と領域41の下辺が合うように配置したので、画像コンテンツ40aの一部がトリミングされても人物は削除されない。一方、図9では、画像コンテンツ40bの一部がトリミングされたことによって人体の一部が削除されている。
【0067】
そこで、コンテンツ編集部12は、画像コンテンツを編集する際には、画像解析を行うことによって画像コンテンツ上、画像の特徴部分が削除されないようにトリミングを行うようにするのが好適である。例えば、コンテンツ編集部12は、画像コンテンツ40を画像解析することで画像の特徴部分として2人の人物を検出すると、図10に示すように2人の人物が削除されないように画像コンテンツ40bの両端をトリミングして画像コンテンツ40bを領域42に配置する。なお、図9図10に示すトリミングされる幅は、Δw=Δw1+Δw2の関係にある。ここでは、画像コンテンツの幅を例にして説明したが、高さ方向においても同様である。また、画像コンテンツの幅及び高さの双方を切除の対象としてもよい。
【0068】
コンテンツ編集部12における編集処理では、画像コンテンツと領域の大きさが一致していない場合、前述したように画像コンテンツが対応する領域に収まるようにトリミング編集を行うことで、編集処理後においては、全ての画像コンテンツが当該領域に収まるようになる。ただ、画像コンテンツと領域の大きさが一致している場合、画像コンテンツを編集しなくても余白が形成されない状態で領域に収まる。このように、コンテンツ編集部12における編集処理では、コンテンツの大きさによってはコンテンツを編集の対象とする必要がない場合がある。つまり、常に編集を行う必要はない。
【0069】
コンテンツがテキストコンテンツの場合、画像コンテンツのようにトリミングすると文字情報が欠落してしまい、テキストコンテンツの品質が低下してしまう可能性がある。テキストコンテンツの品質の低下というのは、オリジナル文書から得られる情報が欠落してしまうことをいう。従って、コンテンツ編集部12は、テキストコンテンツに対しては、改行幅の設定にも依存するが、基本的には、文字情報が欠落しないようにテキストエリアの形状を維持したまま、またテキストエリア全体が領域に含まれるように拡縮するのが好ましい。このため、テキストコンテンツの場合には領域内に余白が生じる場合がある。テキストコンテンツに関しては、評価処理のところで詳述する。
【0070】
コンテンツ編集部12は、以上のようにして配置データにて設定された文書上の対応する各領域に収まるようにコンテンツに対する編集処理を実行し、そして編集処理後のコンテンツを編集後コンテンツ記憶部24に保存する(ステップ103)。
【0071】
前述したように、コンテンツ編集部12は、コンテンツが対応する領域に収まるように編集処理を実行するが、実際には、前述したようにコンテンツが領域からはみ出したり、あるいは領域内に余白が形成されたりする場合がある。そこで、評価部13は、配置データにて設定された各コンテンツに対応する各領域の配置について評価する(ステップ104)。
【0072】
ところで、「配置」とは、物を適当な位置に割り当てることをいうが、本実施の形態では、位置関係情報によって各コンテンツの論理的な位置関係(図3Bに示すように、文書の用紙上における各コンテンツの上下や左右の相対的な位置関係)は規定されている。つまり、本実施の形態において各領域の配置について評価するということは、各コンテンツに対応する文書上の各領域の大きさを評価することであり、より具体的には文書上の各領域の大きさを設定している配置データを評価することに等しい。また、配置データが設定する領域の大きさが適切でないと各領域に配置されるコンテンツの品質も低下することになる。よって、評価部13が行う評価というのは、コンテンツの編集処理後の品質の評価であるとも言える。
【0073】
本実施の形態では、編集後コンテンツ記憶部24に保存された編集処理後の各コンテンツと配置データにより設定された各コンテンツに対応する領域の大きさの差分に基づく以下の評価式に従って配置を評価する。
【0074】
C=ΣCimage+ΣCtext ・・・(1)
【0075】
ここで、Cは、配置データに対して損失や犠牲などを表すコスト的な意味を持つ評価値である。ここでは、説明の便宜上、算出値を「コスト」と称することにする。原則、領域からのはみ出し部分、あるいは余白部分が多いほど算出されるコストは高くなり、配置データの評価は低くなる。また、Cimageは、各画像コンテンツのコストである。Ctextは、各テキストコンテンツのコストである。Σは、コンテンツの種類毎のコストの総和を表す。
【0076】
画像コンテンツ及びテキストコンテンツの各コストは、
image=Ctext=mag×|Δh|×w+mag×h×|Δw| ・・・(2)
と一般化できる。但し、
Δh=hbbox-himage
Δw=wbbox-wimage
である。hbboxは領域の高さであり、himageは編集処理後のコンテンツの高さである。また、wbboxは領域の幅であり、wimageは編集処理後のコンテンツの幅である。mag及びmagは重み係数である。画像コンテンツの場合、特に断らない限り、mag=mag=1とする。
【0077】
式(2)から明らかなように、編集処理後のコンテンツの大きさと領域の大きさとの差が大きいほど、換言すると領域からはみ出す編集処理後のコンテンツの面積が大きいほど、評価部13は、コストが高くなるように算出し、評価対象の配置データの評価が低くなるようにする。つまり、評価対象の配置データは、はみ出す面積が大きいほど評価が低くなるため、文書の作成のための配置データとして選ばれにくくなる。
【0078】
画像コンテンツの場合、編集処理後のコンテンツと領域の大きさが一致しない場合、編集処理後のコンテンツは、図8又は図9に示すように対応する領域から高さ方向又は幅方向のいずれかにはみ出すことになる。高さ方向にはみ出している場合は幅方向が一致しているので|Δw|=0となり、第2項は0になる。一方、幅方向にはみ出している場合は高さ方向が一致しているので|Δh|=0となり、第1項は0になる。
【0079】
画像コンテンツに限定すると図8に示すように高さ方向にはみ出す場合、
image=mag×|Δh|×w
図9に示すように幅方向にはみ出す場合、
image=mag×h×|Δw|
と表すことができる。
【0080】
imageの式の各項は、はみ出した部分の面積を表していることから明らかなように、はみ出した部分が大きいほどコストが高くなり、評価が低くなる。なお、編集処理後のコンテンツと領域の大きさが一致する場合、編集処理後のコンテンツが領域からはみ出している部分がないので、Cimage=0となり、最高評価となる。
【0081】
テキストコンテンツの場合も、基本的な考え方は画像コンテンツと同じである。但し、画像コンテンツとは異なり、次のように評価する。この評価に関し、コンテンツの編集と合わせて図11A~11Eを用いて説明する。
【0082】
図11Aは、テキストコンテンツ45の一例を示す図である。テキストコンテンツ45に対応する領域がテキストコンテンツ45を包含する大きさの場合、テキストコンテンツ45の大きさを拡縮してもよいし、拡縮しなくてもよい。
【0083】
図11Bには、テキストコンテンツ45を包含する大きさの領域46にテキストコンテンツ45を配置する場合において、コンテンツ編集部12がテキストコンテンツ45を、テキストコンテンツ45に含まれる文字情報が欠落しない範囲で拡大して領域46に配置する場合が示されている。このとき、コンテンツ編集部12は、テキストコンテンツ45の拡大に応じてフォントサイズが大きくなるように調整する。図11Bに示す例では、テキストコンテンツ45の文字情報を欠落させないように拡大すると高さ方向にΔhの余白が生じる。なお、横書きのテキストコンテンツ45の場合は、テキストコンテンツ45の領域と、テキストコンテンツ45に対応する領域46の左上の角を合わせた状態で拡縮する。縦書きのテキストコンテンツの場合は、右上の角を合わせた状態で拡縮する。図11Bに示す領域46の幅w3と、テキストコンテンツ45aと領域46の高さとの差Δhから形成される範囲(図11Bにおけるハッチング部分)が余白部分となるが、この余白部分は、画像コンテンツにおいてトリミングされる部分と同様、評価処理におけるコスト計算に利用される。
【0084】
テキストコンテンツ45の大きさより小さい領域47にテキストコンテンツ45を配置する場合において、テキストコンテンツ45の改行幅を変えないまま領域47に配置しようとすると、図11Cに示すようにテキストコンテンツ45の文字情報「いつもお世話になっています。」は、領域47に収まらない。
【0085】
そこで、コンテンツ編集部12は、改行幅が設定されていない文章であれば、図11Dに示すように文字情報を改行させてテキストコンテンツ45bが領域47に収まるように配置してもよい。この場合、テキストエリアを変更するよう編集する。テキストエリアの高さは、行数と、フォントサイズと、上下段に位置する文字との間隔長と、の乗算により算出できる。テキストエリアの幅は、1行の文字数が最大の行における文字数と、フォントサイズと、左右に位置する文字との間隔長と、の乗算により算出できる。より厳密には、全角と半角を区別したりする必要もある。
【0086】
あるいは、コンテンツ編集部12は、改行幅が設定されている文章であれば、図11Eに示すように文字情報が欠落しないようにテキストコンテンツ45を縮小して領域47に配置する。具体的には、文字情報全体が収まるようにテキストコンテンツ45のテキストエリアを縮小する。また、テキストコンテンツ45の縮小によりフォントサイズを小さくする必要が生じてくれば、図11Eに示すようにフォントサイズを合わせて小さくする。なお、図11Eに示す領域47の幅w4と、テキストコンテンツ45cと領域47の高さとの差Δhから形成される範囲(図11Eにおけるハッチング部分)が余白部分となる。
【0087】
このように、テキストコンテンツを拡縮する場合、コンテンツ編集部12は、文字情報に含まれる文字の大きさ、すなわちフォントサイズを調整することでテキストコンテンツ全体が領域に収まるように編集する。但し、図11Eに例示するように、テキストコンテンツ45を縮小して領域47に配置する場合においてフォントサイズを小さくすると、文字が読みづらく、あるいは視認できなくなる可能性が生じてくる。従って、フォントサイズを小さくするようなテキストコンテンツの縮小は極力回避したい。
【0088】
前述したように、テキストコンテンツのコストは、
text=mag×|Δh|×w+mag×h×|Δw|
と言う式にて表されるが、図11Eに示すように配置データにより設定されたテキストコンテンツ45の大きさより小さい領域47にテキストコンテンツ45を当てはめる必要が生じる場合、つまり、Δhが負の値となるような配置データが設定された場合、文字のフォントサイズが小さくなって読めなくなる場合を想定してmagを大きい値に設定する。これにより、算出されるコストが高くなるので、評価対象の配置データが判定部14によって選ばれなくなる。Δwが負の値となる場合も同様にmagを大きい値に設定する。Δh及びΔwが正の値となるような場合は、画像コンテンツと同様に、mag=mag=1でよい。
【0089】
なお、図11Bの場合も、Δhが負の値となるが、フォントサイズが無駄に大きくなることを回避するために上記説明したように重み係数を大きくしたままとしてもよい。あるいは、フォントサイズが小さくならないので、mag=mag=1となるように設定してもよい。また、フォントサイズが小さくなる場合でも、実際のデータのフォントサイズが十分に大きかった場合、縮小後のフォントサイズが判読できるような所定のサイズ以上の場合は、重み係数、mag及びmagを必ずしも大きい値に設定する必要はない。
【0090】
なお、テキストコンテンツに関しては、フォントサイズを縮小するという編集を施すが、編集の対象とするテキストの属性情報は、フォントサイズに限定する必要はない。例えば、小さい文字でも判読しやすいようなフォントに変更したり、文字色を変更したりするなど他の属性を変更して対応してもよい。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態においては、画像及びテキストというコンテンツの種類に応じて適切な評価方法を採るようにしている。
【0092】
ところで、本実施の形態では、画像コンテンツに対しては、例えば特徴部分でない背景部分をトリミングによる欠落させてもテキストコンテンツと違って問題ない場合が多いと考えられるため、トリミングという方法にて画像コンテンツを編集するようにした。ただ、画像コンテンツの中には、テキストコンテンツと同様にトリミングによる編集に適さないコンテンツが存在する。例えば、会社のロゴなどは、画像全体によって識別機能を提供するため部分的に欠落させることに適さない。従って、会社のロゴのように画像コンテンツ全体が一体として取り扱うのが好ましいコンテンツの場合、図12Aのように画像コンテンツ48が文書上の領域49からはみ出す大きさの場合、図12Bに示すようにハッチングで示す余白を生じさせても画像コンテンツ48a全体が領域49に収まるように縮小させるよう編集するのが好ましい。
【0093】
このために、評価部13は、例えば画像コンテンツのコンテンツデータのトリミングの項目を参照して、トリミングが不可の画像コンテンツの場合において、画像コンテンツが領域からはみ出す範囲がある場合、すなわちΔh又はΔwの少なくとも一方が負の値の場合、重み係数を大きい値として、評価対象の配置データの評価が低くなるようにし、その評価データが判定部14によって選ばれにくくなるようにする。
【0094】
評価部13は、以上のようにして画像コンテンツ及びテキストコンテンツに対して個々に評価を行い、前述した式(1)に代入し、配置データに対するコストを計算することによって評価する。
【0095】
なお、上記説明では、コンテンツの切除される部分や領域の余白部分の面積に基づきコストを算出するようにしたが、これに限る必要はない。例えば、
image=Ctext=mag×Δh×w+mag×h×Δw
などのように二乗誤差を用いてもよい。
【0096】
続いて、判定部14は、評価部13による評価結果、すなわち算出されたコストを予め設定されている閾値と比較することで、評価された配置データを採用するかどうかを判定する。閾値は、評価対象の配置データに基づき文書を作成してよいかどうかを示す閾値である。コストが閾値以下の場合、評価対象の配置データは評価部13から高い評価が得られたことになり、この配置データに従うと文書全体に対してコンテンツを適切に配置できると判断する。この場合(ステップ105でY)、文書作成部16は、各コンテンツを評価対象の評価データによって設定された領域に配置することで文書を作成する(ステップ111)。各領域に配置するコンテンツは、コンテンツ編集部12による編集処理後のコンテンツである。高い評価の配置データに従ってコンテンツを領域に配置することで、領域の余白部分が少なく、画像コンテンツの切除部分の少ない文書が作成されることになる。
【0097】
一方、コストが閾値を上回った場合、評価対象の配置データは評価部13から低い評価が得られたことになり、この配置データに従うと文書全体に対してコンテンツを適切に配置できないと判断する。この場合(ステップ105でN)、判定部14は、続いて現時点の状態が評価の終了条件に合致するかどうかを判断する。評価の終了条件としては、例えば、評価を規定回数(例えば、100回)繰り返した場合、繰り返して実施される評価の結果(すなわち、式(1)で算出されるコスト)の遷移が所定の遷移条件に合致する場合などである。遷移条件は、例えば、直前の評価により算出されたコストとの差が所定値以内である場合やn(nは2以上の整数)回繰り返してもコストが改善されない(つまり、繰り返し評価を実施してもコストが所定値より小さくならない)場合などである。
【0098】
現時点の状態が評価の終了条件に合致しない場合(ステップ106でN)、配置データ変更部15は、コンテンツの領域を自動的に変更して配置データを更新し、配置データ記憶部23に最新の配置データとして登録する(ステップ113)。この配置データ変更部15における処理について図5Aを用いて説明する。
【0099】
初期の配置データを設定する際には、文書30の用紙を均等に二分化してコンテンツに対応する領域を設定していた。図5Aには、各領域の境界線34a、34b、34cが示されているが、配置データ変更部15は、境界線34を移動させて領域の大きさを調整する。例えば、境界線34aの場合は矢印a1又は矢印a2方向に動かす。境界線34bの場合は矢印b1又は矢印b2方向に動かす。境界線34cの場合は矢印c1又は矢印c2方向に動かす。配置データ変更部15は、任意の方向に各境界線34をいずれかの方向に動かすが、少なくとも1つの境界線34を動かして配置データを設定するようにしてもよい。また、図8,9に示す切除される部分の位置や図11Bに示す余白部分の位置を参照して余白部分を無くすように、切除される部分が小さくなるように、あるいは、コストが所定値以内になった場合の領域の大きさ差を変動させない、など移動に関する規則や、各境界線34に動かす順番の優先順位を付けるなどの所定の規則に従って境界線34の移動を制御するようにしてもよい。配置データ変更部15は、このようにして領域にコンテンツが配置されたときのコンテンツ間に隙間が生じないように、また切除される部分が極力少なくなるように配置データを更新する。
【0100】
配置データが更新されると、前述したステップ102~104を実施する。そして、更新された配置データが高い評価を得られたら(ステップ105でY)、文書作成部16は、各コンテンツをその配置データにより設定された領域に配置することによって文書を作成する(ステップ111)。
【0101】
一方、配置データの評価が低い場合(ステップ105でN)、判定部14は、続いて現時点の状態が評価の終了条件に合致するかどうかを判断する。現時点の状態が評価の終了条件に合致しない場合については前述したとおりなので説明を省略するが、本実施の形態における文書処理装置10は、配置データに対する評価が所定の条件を満たすまで、すなわち高い評価が得られるか、あるいは所定の終了条件に合致するまで、配置データ変更部15は、各コンテンツが文書上に配置される範囲を変更する変更処理が実行することに応じて、配置データは繰り返し更新される。
【0102】
そして、現時点の状態が評価の終了条件に合致した場合(ステップ106でY)、評価データの評価を終了することになる。この場合、配置データの評価を規定回数(例えば100回)繰り返しても、高く評価された配置データは存在しなかったことになるが、判定部14は、この場合でも高く評価されなかった配置データの中から文書の作成に利用する配置データを決定し(ステップ115)、各コンテンツが配置される領域の大きさを決定する必要がある。例えば、判定部14は、終了条件に合致したタイミングで評価対象とされた配置データ、つまり規定回数、例えば100回目に作成された配置データを採用する。この場合、配置データ記憶部23には、配置データを上書き更新することで最新の配置データのみが保存されるようにしてもよい。あるいは、評価部13は、評価対象の配置データに対する評価、すなわち評価部13が算出したコストを当該配置データに対応付けして配置データ記憶部23に保存しておく。この場合、配置データ記憶部23には、規定回数分の配置データが保存されることになる。そして、判定部14は、コストの最も低い、換言すると上記閾値を上回ったものの評価の最も高い配置データを採用する。そして、文書作成部16は、各コンテンツをその配置データにより設定された領域に配置することによって文書を作成する(ステップ111)。
【0103】
本実施の形態においては、コンテンツの特性を考慮して各コンテンツを文書全体に適切に配置できるようにした。コンテンツの特性として、例えば画像コンテンツの場合、領域に収める際にアスペクト比を維持した状態で拡縮を行い、また必要に応じてトリミングによる編集を実施して領域内に収まるように編集する。テキストコンテンツの場合、領域に収める際にコンテンツが一部切除すると文字情報が欠落してしまう可能性があり、またコンテンツを極端に縮小するとフォントサイズが小さくなって読めなくなる可能性が生じてくる。従って、このテキストコンテンツの特性を考慮しつつ文書上における領域の大きさを設定する。
【0104】
前述したように、本実施の形態では、ステップ113において、配置データ変更部15が領域の大きさを自動調整することを想定しているが、操作画面を用意して境界線34をユーザに移動させるようにしてもよい。例えば、図5Aに示す文書を表示する操作画面をユーザが使用するPC等の端末に画面表示させ、境界線34をユーザに移動させる。そして、境界線34の移動に伴い、評価部13は、コストを自動計算して画面上に表示する。この境界線34をユーザに移動させるユーザインタフェースは、まさにバウンディングボックスのようなユーザインタフェースとなる。
【0105】
上記実施の形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0106】
また上記実施の形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施の形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0107】
10 文書処理装置、11 初期位置設定部、12 コンテンツ編集部、13 評価部、14 判定部、15 配置データ変更部、16 文書作成部、21 コンテンツデータ記憶部、22 位置関係情報記憶部、23 配置データ記憶部、24 編集後コンテンツ記憶部。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B