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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】通信システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/02 20090101AFI20240214BHJP
   H04W 40/28 20090101ALI20240214BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20240214BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
H04W40/02 110
H04W40/28
H04W84/18
H04W76/10 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020043781
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021145274
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】洞谷 矩仁
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 修一
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033340(JP,A)
【文献】特開2012-217164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0013154(US,A1)
【文献】特表2015-523787(JP,A)
【文献】国際公開第2007/058008(WO,A1)
【文献】横山 智之、他3名,同時送信フラッディングとOpportunistic Routingを併用したパケット転送手法,電子情報通信学会2020年総合大会講演論文集 通信2,2020年03月03日,B-6-97,97頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階層のいずれかの階層に属する複数の通信端末を備え、同一の階層に属する一以上の前記通信端末が伝送データを同時に送信する通信システムであって、
前記複数の通信端末のそれぞれは、
自端末が属する階層である自端末階層を記憶する記憶部と、
前記複数の通信端末のうちの他通信端末が送信した前記伝送データを受信するデータ受信部と、
前記データ受信部が受信した前記伝送データに含まれている送信先情報が示す送信先の階層である送信先階層を特定する送信先階層特定部と、
特定された送信先階層が前記記憶部に記憶された自端末階層と異なることを条件として、前記データ受信部が受信した前記伝送データを送信するデータ送信部と、
を有し、
前記複数の通信端末のうちの送信元端末が、前記伝送データにおける送信元階層を示す領域に前記送信元端末の自端末階層を入れた前記伝送データを送信し、
前記伝送データを受信した受信端末の前記データ送信部は、前記受信端末の自端末階層と前記伝送データが示す送信元階層とが異なる場合において、前記受信端末の自端末階層が、受信した前記伝送データに含まれる送信元階層と送信先階層との間にある場合に前記伝送データを送信し、前記受信端末の自端末階層が受信した前記伝送データに含まれる送信元階層と送信先階層との間にない場合に伝送データを送信しない通信システム。
【請求項2】
前記データ送信部は、前記自端末階層が、前記データ受信部が受信した前記伝送データを送信した前記他通信端末が属する送信元階層よりも前記送信先階層に近いことを条件として、前記伝送データを送信する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記送信先情報には、同一の階層に含まれる前記複数の通信端末のうち前記伝送データが送信されるべき一部の通信端末の範囲を指定する範囲情報が含まれており、
前記記憶部は前記自端末の位置を示す情報をさらに記憶しており、
前記データ送信部は、前記範囲情報が示す範囲から所定の範囲内に、前記記憶部に記憶された前記自端末の位置が含まれていることを条件として前記伝送データを送信する、
請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記送信先情報には、前記伝送データが伝送されるルートを示すルーティング情報が含まれており、
前記記憶部は前記自端末の位置を示す情報をさらに記憶しており、
前記データ送信部は、前記記憶部に記憶された前記自端末の位置が前記ルーティング情報に含まれていることを条件として前記伝送データを送信する、
請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項5】
複数の階層のいずれかの階層に属する複数の通信端末を備え、同一の階層に属する前記通信端末が伝送データを同時に送信する通信システムに含まれる前記通信端末のプロセッサを、
前記複数の通信端末のうちの他の通信端末が送信した前記伝送データを受信するデータ受信部、
前記データ受信部が受信した前記伝送データに含まれている送信先情報が示す送信先の階層である送信先階層を特定する送信先階層特定部、及び
特定された送信先階層が、前記通信端末が属する階層と異なることを条件として、前記データ受信部が受信した前記伝送データを次の階層の他の通信端末に送信するデータ送信部、
として機能させ
前記複数の通信端末のうちの送信元端末が、前記伝送データにおける送信元階層を示す領域に前記送信元端末の自端末階層を入れた前記伝送データを前記データ受信部が受信した場合に、前記データ送信部は、前記通信端末の自端末階層と前記伝送データが示す送信元階層とが異なる場合において、前記通信端末の自端末階層が、受信した前記伝送データに含まれる送信元階層と送信先階層との間にある場合に前記伝送データを送信し、前記通信端末の自端末階層が受信した前記伝送データに含まれる送信元階層と送信先階層との間にない場合に伝送データを送信しない、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信端末を備える通信システム及び通信端末が実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の通信端末間でマルチホップ技術を用いてデータを伝送する技術が知られている。特許文献1及び非特許文献1には、他の通信端末からブロードキャストされたデータを受信した通信端末が、受信したデータをブロードキャストすることを繰り返す同時送信フラッディング技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-21964号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】ソナス株式会社,「同時送信フラッディングとは」,[online],[令和2年3月9日検索],インターネット <https://www.sonas.co.jp/technology/unisonet/mechanism>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の同時送信フラッディング技術においては、データを受信した通信端末が、データの送信先によらず、受信したデータをブロードキャスト送信する。したがって、受信したデータをブロードキャスト送信することが無意味であるにもかかわらず、通信端末がブロードキャスト送信することがあった。その結果、通信システム全体の消費電力が必要以上に大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、マルチホップ方式でデータを伝送する通信システムの消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の通信システムは、複数の階層のいずれかの階層に属する複数の通信端末を備え、同一の階層に属する一以上の前記通信端末が伝送データを同時に送信する通信システムであって、前記複数の通信端末のそれぞれは、自端末が属する階層である自端末階層を記憶する記憶部と、前記複数の通信端末のうちの他通信端末が送信した伝送データを受信するデータ受信部と、前記データ受信部が受信した前記伝送データに含まれている送信先情報が示す送信先の階層である送信先階層を特定する送信先階層特定部と、前記送信先階層が前記自端末階層と異なることを条件として、前記データ受信部が受信した前記伝送データを送信するデータ送信部と、を有する。
【0008】
前記データ送信部は、前記自端末階層が、前記データ受信部が受信した前記伝送データを送信した前記他通信端末が属する送信元階層よりも前記送信先階層に近いことを条件として、前記伝送データを送信してもよい。
【0009】
前記送信先情報には、同一の階層に含まれる前記複数の通信端末のうち前記伝送データが送信されるべき一部の通信端末の範囲を指定する範囲情報が含まれており、前記記憶部は前記自端末の位置を示す情報をさらに記憶しており、前記データ送信部は、前記範囲情報が示す範囲から所定の範囲内に、前記記憶部に記憶された前記自端末の位置が含まれていることを条件として前記伝送データを送信してもよい。
【0010】
前記送信先情報には、前記伝送データが伝送されるルートを示すルーティング情報が含まれており、前記記憶部は前記自端末の位置を示す情報をさらに記憶しており、前記データ送信部は、前記記憶部に記憶された前記自端末の位置が前記ルーティング情報に含まれていることを条件として前記伝送データを送信してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様のプログラムは、複数の階層のいずれかの階層に属する複数の通信端末を備え、同一の階層に属する前記通信端末が伝送データを同時に送信する通信システムに含まれる前記通信端末のプロセッサを、前記複数の通信端末のうちの他の通信端末が送信した伝送データを受信するデータ受信部、前記データ受信部が受信した前記伝送データに含まれている送信先情報が示す送信先の階層である送信先階層を特定する送信先階層特定部、及び前記送信先階層が、前記通信端末が属する階層と異なることを条件として、前記データ受信部が受信した前記伝送データを次の階層の他の通信端末に送信するデータ送信部、として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マルチホップ方式でデータを伝送する通信システムの消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】通信システムの概要を説明するための図である。
図2】通信システムにおいて伝送される伝送データのフォーマットの一例を示す図である。
図3】通信端末に構成を示す図である。
図4】通信システムの他の動作例を示す図である。
図5】通信システムの他の動作例を示す図である。
図6】通信システムの他の動作例を示す図である。
図7】通信システムの他の動作例を示す図である。
図8】通信システムの他の動作例を示す図である。
図9】通信システムの他の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[通信システムSの概要]
図1は、通信システムSの概要を説明するための図である。通信システムSは、複数の階層のいずれかの階層に属する複数の通信端末1を備え、同一の階層に属する一以上の通信端末1が伝送データを同時に送信する同時送信フラッディング方式のマルチホップ伝送を行うシステムである。複数の通信端末1のそれぞれは、例えば920MHz帯の電波を用いて、伝送データをブロードキャスト送信する。
【0015】
図1における複数の長方形のそれぞれは、通信端末1を示す。図1の横方向は、通信システムSにおいて伝送データが伝送される階層を示しており、例えば、第1階層X1に属する通信端末1-1Gから送信された伝送データは、第1階層X1、第2階層X2、第3階層X3、第4階層X4、第5階層X5、第6階層X6、第7階層X7の順に伝送される。ただし、伝送データが伝送される向きはこの向きに限らない。例えば第4階層X4に属する通信端末1が送信した伝送データは、第5階層X5、第6階層X6、第7階層X7に向けて伝送されるとともに、第3階層X3、第2階層X2、第1階層X1に向けて伝送される。
【0016】
図1の縦方向は、同一の階層に属する複数の通信端末1の位置に対応している。本明細書においては、第n階層に含まれるPの位置の通信端末1を通信端末1-nP(Pは、A~Lのいずれか)と記載する。
【0017】
図1においては、斜線で示す通信端末1-1Gから、黒色で示す通信端末1-5Eに向けて伝送データを送信する場合に、伝送データが伝送されるパスを矢印で示している。ただし、図1においては、伝送データの流れを把握しやすくするために、伝送データが伝送される全てのパス及び全ての向きに矢印を付してはいない。この点は、通信システムSの構成を示す他の図面においても同様である。
【0018】
通信端末1-1Gが送信した伝送データは、通信端末1-2H及び通信端末1-2Fが受信している。通信端末1-2H及び通信端末1-2Fは、伝送データを受信してから所定の待機時間(例えば10ms以上100ms以下の所定の時間)が経過したタイミングで、受信した伝送データを他の通信端末1に転送するために、受信した伝送データを送信する。
【0019】
図2は、通信システムSにおいて伝送される伝送データのフォーマットの一例を示す図である。通信システムSにおいて通信端末1が送信する伝送データは、プリアンブル(PR)、同期用データ(SYN)、データ識別情報(ID)、送信先情報、及びペイロードを含む。データ識別情報は、伝送データに固有の数字又はアルファベット等の文字列である。送信先情報は、送信先の通信端末1のアドレスであり、階層を示す情報が含まれている。図1に示す例においては通信端末1-5Eのアドレスとして1-5Eが送信先情報に含まれる。
【0020】
通信端末1-2Hが送信した伝送データは、通信端末1-3I及び通信端末1-3Gが受信する。通信端末1-2Fが送信した伝送データは、通信端末1-3G及び通信端末1-3Eが受信する。通信端末1-3Gは、通信端末1-2Hが送信した伝送データ、及び通信端末1-2Fが送信した伝送データの両方をほぼ同時に受信する。通信端末1-2Fが送信した伝送データと、通信端末1-2Hが送信した伝送データとは同一の内容であるため、通信端末1-3Gがこれらの伝送データをほぼ同時に受信したとしても、正常に伝送データを受信することができる。
【0021】
このように、第2階層X2から第4階層X4に含まれる複数の通信端末1が、受信した伝送データを順次転送することにより、第5階層X5に含まれる複数の通信端末1が伝送データを受信する。第5階層X5に含まれる複数の通信端末1は、伝送データに含まれている送信先情報が、第5階層X5に属する通信端末1-5Eを示していることを確認する。第5階層X5に含まれる複数の通信端末1は、送信先情報が示す送信先の階層が、自身が属する階層に一致していると判定し、受信した伝送データを転送することなく削除する。
【0022】
通信端末1がこのように動作することで、通信システムSにおいては、第6階層及び第7階層に属する通信端末1が伝送データを受信及び送信しない。その結果、通信システムSは、通信システムSに含まれる複数の通信端末1の消費電力の合計値を低減することができる。
以下、通信端末1の構成及び動作について詳細に説明する。
【0023】
[通信端末1の構成]
図3は、通信端末1に構成を示す図である。通信端末1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。制御部13は、データ受信部131と、送信先階層特定部132と、データ送信部133と、データ処理部134と、を有する。
【0024】
通信部11は、伝送データを送受信するための無線通信コントローラを有する。通信部11は、他の通信端末1から受信した伝送データをデータ受信部131に入力する。また、通信部11は、データ送信部133から入力された伝送データを送信する。
【0025】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を有する。記憶部12は、自端末が属する階層である自端末階層を記憶する。記憶部12は、例えば通信端末1が属する階層を示す情報を含むアドレスを記憶している。アドレスは、通信端末1の位置をさらに示す情報であってもよい。また、記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。
【0026】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、データ受信部131、送信先階層特定部132、データ送信部133及びデータ処理部134として機能する。
【0027】
データ受信部131は、通信部11を介して、通信システムSに含まれる複数の通信端末1のうちの他の通信端末1が送信した伝送データを受信する。データ受信部131は、受信した伝送データを送信先階層特定部132に入力する。
【0028】
送信先階層特定部132は、データ受信部131が受信した伝送データに含まれている送信先情報が示す送信先の階層である送信先階層を特定する。図1に示す例の場合、送信先情報には、通信端末1-5Eの階層が第5階層X5であることを示す「5」という数字が含まれているので、送信先階層特定部132は、送信先階層が第5階層X5であることを特定する。
【0029】
データ送信部133は、例えば、送信先階層が自端末階層と異なることを条件として、データ受信部131が受信した伝送データを送信する。具体的には、データ送信部133は、送信先階層特定部132から送信先階層の通知を受けると、記憶部12に記憶されている自端末階層を読み出す。データ送信部133は、送信先階層と自端末階層とが等しい場合には伝送データを送信することなく消去し、送信先階層と自端末階層とが異なる場合に、通信部11を介して、伝送データを送信する。
【0030】
例えば、第5階層X5に属していない通信端末1(例えば通信端末1-2H)が通信端末1-5E宛ての伝送データを受信した場合、当該通信端末1のデータ送信部133は、送信先階層と自端末階層とが異なると判定し、データ受信部131が伝送データを受信してから所定の待機時間が経過した後に伝送データを送信する。一方、第5階層X5に属している通信端末1(例えば通信端末1-5C、通信端末1-5E、通信端末1-5G、通信端末1-5I、通信端末1-5K)のデータ送信部133は、送信先階層と自端末階層とが一致していると判定し、伝送データを送信しない。
【0031】
また、データ送信部133は、送信先情報が示すアドレスと自身のアドレスとが一致している場合、通信部11を介して伝送データを送信することなく、伝送データをデータ処理部134に入力する。図1に示す例の場合、通信端末1-5Eのデータ送信部133は、送信先情報が示すアドレスと自身のアドレスとが一致していると判定し、伝送データをデータ処理部134に入力する。
【0032】
データ処理部134は、データ送信部133から入力された伝送データに対して所定の処理を実行する。所定の処理は、例えば、伝送データ内のペイロードに含まれるデータを記憶部12に記憶させたり、ペイロードに含まれるデータを所定の外部装置に送信したりする処理である。一例として、通信システムSがガス検針の用途に用いられており、通信端末1が各家庭のガス検針メーターに設けられている場合、通信端末1は、例えばペイロードに含まれるデータを、通信部11と異なる通信インターフェース(不図示)を介して、ガス会社が管理するサーバに送信する。
【0033】
[通信システムSの他の動作例]
通信端末1による伝送データの送信処理の方法は、図1に示した例に限らず、さまざまなバリエーションが想定される。以下、通信システムSの他の動作例を説明する。
【0034】
図4は、通信システムSの他の動作例を示す図である。図1においては、通信端末1が送信した伝送データは隣の階層の通信端末1にのみ到達することが前提になっていたが、無線通信環境の状態によっては、想定されていない階層の通信端末1に伝送データが到達する場合も考えられる。図4に示す例においては、通信端末1-4Dが送信した伝送データが通信端末1-6Dに到達している。
【0035】
このように、通信端末1が想定していない伝送データを受信した場合に受信した伝送データを送信しないように、データ送信部133は、自端末階層が送信先階層と一致していない場合であっても、自端末階層(例えば第6階層X6)が、送信先階層(例えば第5階層X5)に属する通信端末1が送信した伝送データを受信することが想定されている階層である場合には伝送データを送信しないようにしてもよい。
【0036】
図4に示す例においては、通信端末1-6Dが通信端末1-4Dから伝送データを受信しているが、通信端末1-6Dが属する第6階層X6は、送信先階層である第5階層X5の通信端末1から伝送データを受信することが想定されている階層なので、通信端末1-6Dは伝送データを送信していない。通信端末1が、このように送信先階層に属する他の通信端末1から伝送データを受信することが想定されている階層に属する場合に伝送データを送信しないようにすることで、通信システムSは消費電力をさらに低減することができる。
【0037】
なお、通信端末1は、自端末階層が送信元階層と異なる場合において、自端末階層が送信元階層と送信先階層との間にある場合に伝送データを送信し、自端末階層が送信元階層と送信先階層との間にない場合に伝送データを送信しないようにしてもよい。
【0038】
データ送信部133が送信元階層と自端末階層との関係に基づいて伝送データを送信するか否かを決定することができるように、送信元階層を示す領域を伝送データが有しており、送信元の通信端末1のデータ送信部133が、送信元階層を示す領域に自端末階層を入れた伝送データを送信してもよい。図4に示す例において、通信端末1-6Dの自端末階層は、送信元端末である通信端末1-4Dが属する送信元階層と通信端末1-5Eが属する送信先階層との間にないため、通信端末1-6Dは伝送データを送信しない。なお、送信元階層を示す領域には、最初に伝送データを送信した通信端末1が属する階層(図4に示す例においては第1階層X1)が含まれており、当該データは他の通信端末1が更新できないようにしてもよい。
【0039】
図5は、通信システムSの他の動作例を示す図である。データ送信部133は、自端末階層が、データ受信部131が受信した伝送データを送信した他の通信端末1が属する送信元階層よりも送信先階層に近いことを条件として、伝送データを送信してもよい。この場合、データ送信部133は、自端末階層が送信先階層と同一であっても伝送データを送信してもよい。データ送信部133が送信元階層に基づいて伝送データを送信するか否かを決定することができるように、この場合においても、送信元階層を示す領域を伝送データが有しており、送信元の通信端末1のデータ送信部133が、送信元階層を示す領域に自端末階層を入れた伝送データを送信してもよい。
【0040】
図5に示す例の場合、通信端末1-4Dが送信した伝送データを通信端末1-4B及び通信端末1-5Cが受信している。通信端末1-4Bの自端末階層は、伝送データを送信した通信端末1-4Dが属する送信元階層と同一であり、かつ送信先端末である通信端末1-5Eからの距離が送信元端末である通信端末1-4Dから通信端末1-5Eまでの距離よりも長い。このような場合、通信端末1-4Bは、自端末階層が送信先階層と一致していないとしても伝送データを送信しない。通信端末1-4Bがこのように動作することで、必要性が低い伝送データを送信しないので、通信システムSは消費電力をさらに低減することができる。
【0041】
一方、通信端末1-5Cの自端末階層は、伝送データを送信した通信端末1-4Dが属する送信元階層よりも送信先階層に近く、かつ送信先端末である通信端末1-5Eからの距離が、送信元端末である通信端末1-4Dから通信端末1-5Eまでの距離よりも短い。このような場合、通信端末1-5Cは、自端末階層が送信先階層と一致しているとしても伝送データを送信する。通信端末1-5Cが伝送データを送信することで、通信端末1-5Eは、通信端末1-4D及び通信端末1-4Fから伝送データを正常に受信できない場合であっても、通信端末1-5Cから伝送データを受信することができる。
【0042】
なお、図5に示す例において、通信端末1-5Eは、第4階層X4に属する通信端末1-4D及び通信端末1-4Fが伝送データを送信した後に、通信端末1-5C及び通信端末1-5Gから同一の伝送データを受信することになる。このように、データ受信部131が同一の伝送データを複数回にわたって受信した場合、データ受信部131は、2回目以降に受信したデータを送信先階層特定部132に入力することなく削除してもよい。
【0043】
図6は、通信システムSの他の動作例を示す図である。図1に示した例において、送信元端末である通信端末1-1Gは、1台の送信先端末である通信端末1-5Eに伝送データを送信したが、送信元端末が複数の送信端末に向けて伝送データを送信してもよい。通信システムSがこのように動作するために、送信先情報には、同一の階層に含まれる複数の通信端末1のうち伝送データが送信されるべき一部の通信端末1の範囲を指定する範囲情報が含まれている。範囲情報は、例えば、同一の階層における位置の範囲を特定するためのテキストである。送信先情報には、伝送データを送信する対象として複数の階層を示す情報が含まれていてもよい。
【0044】
図6に示す例においては、各階層における位置J、K、Lに属する通信端末1に対して伝送データが送信されている。データ送信部133は、範囲情報が示す範囲から所定の範囲内に、記憶部12に記憶された自端末の位置が含まれていることを条件として伝送データを送信する。図6では、伝送データを送信する対象となる所定の範囲に含まれる通信端末1、及び所定の範囲に含まれる通信端末1に電波が届く範囲に含まれる位置H及び位置Iの通信端末1のデータ送信部133は、データ受信部131が受信した伝送データを送信するが、他の位置のデータ送信部133は伝送データを送信しない。
【0045】
データ送信部133がこのように動作することで、伝送データを送信する対象となる範囲に伝送データを送信できる可能性がある通信端末1が伝送データを送信し、他の通信端末1が伝送データを送信しない。その結果、通信システムSは、消費電力をさらに低減することができる。
【0046】
図7は、通信システムSの他の動作例を示す図である。図7に示す例においては、各階層において、伝送データを送信する範囲(図7の範囲R0)に対応する位置G及びHに属する通信端末1に対して伝送データが送信されている。そして、当該範囲の両側の位置E及び位置Fに対応する範囲(図7の範囲R1)と、位置I及び位置Jに対応する範囲(図7の範囲R2)に含まれる通信端末1のデータ送信部133は、データ受信部131が受信した伝送データを送信するが、他の位置のデータ送信部133は伝送データを送信しない。このように、伝送データを送信する対象となる範囲の近傍の通信端末1が伝送データを送信するようにすることで、伝送データを送信する対象となる範囲内の通信端末1が伝送データを受信できる確率を高めるとともに、通信システムSにおける消費電力を低減することができる。
【0047】
図8は、通信システムSの他の動作例を示す図である。図8に示す例においては、伝送データに、当該伝送データを伝送するルートを示す情報が含まれている。具体的には、送信先情報に、伝送データが伝送されるルートを示すルーティング情報が含まれている。ルーティング情報は、例えば、伝送データが伝送されるべきルート上の複数の通信端末1のアドレスを含む。図8に示す例においては、通信端末1-2H、通信端末1-3I、通信端末1-4J、通信端末1-5I、通信端末1-6J、通信端末1-7Kという情報がルーティング情報に含まれている。
【0048】
この場合、データ送信部133は、記憶部12に記憶された自端末の位置がルーティング情報に含まれていることを条件として伝送データを送信する。図8に示す例の場合、通信端末1-2H、通信端末1-3I、通信端末1-4J、通信端末1-5I、通信端末1-6J、通信端末1-7Kのデータ送信部133は、データ受信部131が受信した伝送データを送信し、他の通信端末1のデータ送信部133は伝送データを送信しない。このように、データ送信部133が、伝送データに含まれたルーティング情報に基づいて、データ受信部131が受信した伝送データを送信するか否かを決定することにより、ルーティング情報において定められた通信端末1のみが伝送データを送信するので、通信システムSは、消費電力をさらに低減することができる。
【0049】
図9は、通信システムSの他の動作例を示す図である。図1に示した例においては、第1階層X1から第7階層X7に向けて伝送データが伝送されることが想定されていた。これに対して、図9に示す例においては、伝送データが伝送される向きが一つではなく、送信元の通信端末1が属する階層に対して両側の階層に向けて伝送データが伝送されるという点で異なる。
【0050】
図9に示す例においては、第4階層X4に属する通信端末1-4Fが送信元端末であり、通信端末1-4Fが送信した伝送データが、第3階層X3、第4階層X4及び第5階層X5の範囲内の通信端末1に対して伝送されることが想定されている。通信端末1のデータ送信部133は、自端末階層が、第3階層X3、第4階層X4及び第5階層X5のいずれかと一致すると判定した場合に、データ受信部131が受信した伝送データを送信する。
【0051】
一方、通信端末1のデータ送信部133は、自端末階層が、第3階層X3、第4階層X4及び第5階層X5のいずれにも一致しないと判定した場合に、データ受信部131が受信した伝送データを送信しない。通信端末1がこのように動作することで、通信システムSは、伝送データを伝送すべき範囲に伝送データを送信しつつ、通信システムSの消費電力を低減することができる。
【0052】
図1においては、送信先階層に属する通信端末1(例えば第5階層X5に属する通信端末1)が、受信した伝送データを送信しない場合を例示した。しかしながら、送信先階層に属する通信端末1が伝送データを送信し、送信先階層に属する通信端末1から伝送データを受信した通信端末1(例えば第6階層X6に属する通信端末1)が伝送データを送信しないようにしてもよい。すなわち、データ送信部133は、自端末階層が送信元階層と送信先階層との間にある場合、又は自端末階層が送信先階層と同一の場合に、受信した伝送データを送信し、それ以外の場合には、受信した伝送データを送信しない。
【0053】
この場合、送信元階層を示す領域を伝送データが有しており、伝送データの送信元の通信端末1のデータ送信部133が、送信元階層を示す領域に自端末階層を入れた伝送データを送信してもよい。通信システムSがこのように動作することで、送信先端末が、他の階層(例えば第4階層X4)の通信端末1から伝送データを受信できない場合であっても、同じ階層(例えば第5階層X5)に属する他の通信端末1から伝送データを受信することができるので、送信先端末が伝送データを受信できる確率が高まる。
【0054】
[通信システムSによる効果]
以上説明したように、通信システムSに含まれる複数の通信端末1のそれぞれは、データ受信部131が受信した伝送データに含まれている送信先情報が示す送信先の階層である送信先階層を特定する送信先階層特定部132と、送信先階層が自端末階層と異なることを条件として、データ受信部131が受信した伝送データを送信するデータ送信部133と、を有する。このように、データ送信部133が、送信先階層が自端末階層と異なることを条件として伝送データを送信することにより、通信端末1が伝送データを送信する必要がない場合に伝送データが送信されない。その結果、伝送データを送信する通信端末1の数が削減されるので、通信システムSは消費電力を低減することができる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0056】
1 通信端末
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 データ受信部
132 送信先階層特定部
133 データ送信部
134 データ処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9