(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エンジンの冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20240214BHJP
F01P 7/14 20060101ALI20240214BHJP
F01P 3/12 20060101ALI20240214BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20240214BHJP
【FI】
F01P7/16 504Z
F01P7/14 Z
F01P3/12
F01P7/16 505F
F01N13/08 A
(21)【出願番号】P 2020043961
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】森岡 遼
(72)【発明者】
【氏名】吉川 智
(72)【発明者】
【氏名】金井 英輝
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-031668(JP,A)
【文献】実開昭59-052025(JP,U)
【文献】特開2010-096139(JP,A)
【文献】特開平06-241044(JP,A)
【文献】特開2015-086794(JP,A)
【文献】特開2010-151096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
F01P 7/14
F01P 3/12
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロック及びシリンダヘッドを備えたエンジン本体と、
前記エンジン本体に接続された排気マニホールドと、
前記エンジン本体を冷媒の循環によって冷却するエンジン本体冷却回路と、
前記エンジン本体冷却回路に設けられ冷媒を冷却するラジエータと、
前記エンジン本体冷却回路に設けられ前記ラジエータへの流量を切り替える切替バルブと、
前記排気マニホールドを冷媒の通過によって冷却する冷媒ジャケットと、
前記エンジン本体冷却回路から分岐して前記冷媒ジャケットに至る第1接続通路と、
前記冷媒ジャケットから引き出されて前記エンジン本体冷却回路に合流する第2接続通路と、
前記第1接続通路又は前記第2接続通路に設けられる開閉バルブと、
前記開閉バルブを制御するバルブ制御手段と、
を備え、
前記バルブ制御手段は、エンジンの始動時
及びエンジンの自動停止時に前記開閉バルブを閉鎖し、エンジンのイグニッションオフ時に前記開閉バルブを開放するエンジンの冷却装置。
【請求項2】
前記バルブ制御手段は、エンジンの自動停止前に燃料噴射装置による燃料噴射を中止する場合には、燃料噴射を中止したのと同時に、又は、燃料噴射を中止した後、エンジンが自動停止するまでの間に、前記開閉バルブを閉鎖する請求項
1に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項3】
前記開閉バルブは、前記第1接続通路及び前記第2接続通路にそれぞれ設けられる請求項1
又は2に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項4】
前記排気マニホールドの前記冷媒ジャケットの周囲に保温部材が設けられている請求項1~
3の何れか1項に記載のエンジンの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷媒を循環させることによってエンジンの冷却を行うエンジンの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエンジンでは、シリンダブロック及びシリンダヘッドを備えたエンジン本体を冷却するために、冷媒として水を循環させる冷却装置が備えられる。このエンジンの冷却装置は、エンジン本体内に冷媒通路を形成し、その冷媒通路内に冷却水を流通させることでエンジン本体を冷却するとともに、その冷却に伴って温度が上昇した冷媒をラジエータと呼ばれる熱交換器で冷却するものである。
【0003】
また、例えば、特許文献1に示すように、エンジン本体に接続された排気マニホールドに冷媒ジャケットを形成した、水冷式排気マニホールドの技術もある。水冷式排気マニホールドでは、エンジン本体の冷媒通路の途中からエキマニ接続用冷媒通路を分岐させ、排気マニホールド内の冷媒ジャケットに接続させることで、排気マニホールドの冷却を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、エンジンの冷却水温度が所定温度未満の際に、サーモスタットの作用により、エンジン本体内の冷媒通路から排気マニホールドへの冷媒通路を閉鎖している(特許文献1の明細書段落0036等参照)。すなわち、エンジンの冷却水温度が所定温度以上である場合には、常に、排気マニホールドの冷媒ジャケットに冷媒が供給されている状態である。このため、例えば、冷却水温度が所定温度以上で暖機が成されているにもかかわらず、エンジンを始動することで排気マニホールドの冷却が開始され、排気マニホールドの温度が低下してしまう場合がある。
【0006】
また、いわゆるハイブリッド車やアイドリングストップ機能搭載車では、運転者のイグニッションオフ操作によらずに、運転状態に応じてエンジンが自動停止するように設定されている。このようなエンジンの自動停止後は、比較的短時間で再始動が行われるのが通常である。このため、排気マニホールドはその時点での温度が維持されることが望ましい。しかし、特許文献1の技術では、エンジンが自動停止した後、再始動するまでの間、排気マニホールドの冷却が継続していると考えらえる。
【0007】
そこで、この発明の課題は、より的確に排気マニホールドの温度低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明は、シリンダブロック及びシリンダヘッドを備えたエンジン本体と、前記エンジン本体に接続された排気マニホールドと、前記エンジン本体を冷媒の循環によって冷却するエンジン本体冷却回路と、前記エンジン本体冷却回路に設けられ冷媒を冷却するラジエータと、前記エンジン本体冷却回路に設けられ前記ラジエータへの流量を切り替える切替バルブと、前記排気マニホールドを冷媒の通過によって冷却する冷媒ジャケットと、前記エンジン本体冷却回路から分岐して前記冷媒ジャケットに至る第1接続通路と、前記冷媒ジャケットから引き出されて前記エンジン本体冷却回路に合流する第2接続通路と、前記第1接続通路又は前記第2接続通路に設けられる開閉バルブと、前記開閉バルブを制御するバルブ制御手段と、を備え、前記バルブ制御手段は、エンジンの始動時に前記開閉バルブを閉鎖するエンジンの冷却装置を採用した。
【0009】
ここで、前記バルブ制御手段は、エンジンの自動停止時に前記開閉バルブを閉鎖し、エンジンのイグニッションオフ時に前記開閉バルブを開放する構成を採用することができる。
【0010】
また、前記バルブ制御手段は、エンジンの自動停止前に燃料噴射装置による燃料噴射を中止する場合には、燃料噴射を中止したのと同時に、又は、燃料噴射を中止した後、エンジンが自動停止するまでの間に、前記開閉バルブを閉鎖する構成を採用することができる。
【0011】
また、前記開閉バルブは、前記第1接続通路及び前記第2接続通路にそれぞれ設けられる構成を採用することができる。
【0012】
さらに、前記排気マニホールドの前記冷媒ジャケットの周囲に保温部材が設けられている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、より的確に排気マニホールドの温度低下を抑制することができる、
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、一実施形態のエンジン及びそのエンジンの冷却装置の構成を示す模式図である。エンジンの構成は、内部に燃焼室(気筒)11を有するエンジン本体10と、燃焼室11内に吸気を送り込む吸気通路3、燃焼室11から引き出された排気通路4、吸気通路3又は燃焼室11内に燃料を噴射する燃料噴射装置31等を備えている。エンジン本体10は、シリンダブロック1及びシリンダブロック1上に配置されたシリンダヘッド2を備え、その内部に吸排気バルブ、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト等が収容されている。
【0016】
吸気通路3には、流路面積を調節するスロットルバルブを収容したスロットルボディ9が配置されている。スロットルバルブの開閉により、燃焼室11へ導入される吸気量が調整される。この実施形態では、スロットルボディ9として、内部に冷媒流通用通路(以下、スロットルボディ内ウォータージャケットと称する)を備えたものを採用し、内部の吸気と冷媒との間で熱交換することで、冷態時に吸気温度を上昇させ燃焼効率を向上させている。
【0017】
排気通路4は、エンジン本体10内の排気ポートと、その排気ポートに接続された排気マニホールド5、排気マニホールド5の下流側端に接続されたフロントパイプ等の排気管6等で構成され、さらにその下流側に、排気ガスに含まれる有害物質を低減する排気浄化装置、消音器等が配置されている。排気浄化装置は、エンジンの種別や仕様によって、また、低減又は除去しようとする有害物質の種別に応じて、それに対応する各種の形態のものが採用される。排気マニホールド5は、内部に冷媒流通用通路(以下、排気マニホールド内冷媒ジャケット20、又は、単に冷媒ジャケット20と称する)を備えたものを採用し、内部の排気ガスと冷媒との間で熱交換されるようになっている。
【0018】
エンジン本体10は、冷媒の循環によって冷却するエンジン本体冷却回路Aを備えている。エンジン本体冷却回路Aは、エンジン本体10内のシリンダブロック1に形成された冷媒流通用通路(以下、シリンダブロック内ウォータージャケット12と称する。/図中の矢印a,b参照)、シリンダヘッド2内に形成された冷媒流通用通路(以下、シリンダヘッド内ウォータージャケット14と称する。/図中の矢印c参照)、エンジン本体10から引き出されてスロットルボディ9を経てサーモスタット8に至る冷媒本通路16、及び、ポンプ流入通路19を経てエンジン本体10内に設けられたポンプ装置(ウォータポンプ)7に至る環状通路を備えている。ポンプ装置7は、クランクシャフトの回転によって駆動されている。
【0019】
また、エンジン本体冷却回路Aは、シリンダブロック内ウォータージャケット12又はシリンダヘッド内ウォータージャケット14から分岐するラジエータ側冷媒通路18を備えている。ラジエータ側冷媒通路18は、冷媒本通路16とは別の冷媒流通用通路として設けられ、空冷式のラジエータ13を経てポンプ流入通路19に合流している。ラジエータ側冷媒通路18のポンプ流入通路19への合流部には、ラジエータ13への冷媒の流量を切り替える切替バルブ8が配置されている。この実施形態では、切替バルブ8としてサーモスタットを採用しているので、以下、切替バルブ8をサーモスタット8と称する。この実施形態のサーモスタット8は、周知のワックス型の弁装置である。冷媒の温度が所定温度未満の場合は、サーモスタット8はラジエータ側冷媒通路18を閉じて冷媒本通路16に冷媒が流通する。また、冷媒の温度が所定温度以上の場合は、サーモスタット8は冷媒本通路16を閉じて、ラジエータ側冷媒通路18に冷媒が流通する。このように、サーモスタット8は、冷媒温度に応じて冷媒本通路16側のポートとラジエータ側冷媒通路18側のポートを選択的に開弁する。
【0020】
また、このエンジンでは、エンジン本体冷却回路Aから分岐して、排気マニホールド5の冷媒ジャケット20の流入口に至る第1接続通路15と、冷媒ジャケット20から引き出されてエンジン本体冷却回路Aに合流する第2接続通路17とを備えている。この実施形態では、エンジン本体冷却回路Aと第1接続通路15との分岐箇所は、シリンダヘッド内ウォータージャケット14の下流側端部であり、第2接続通路17とエンジン本体冷却回路Aとの合流箇所は、冷媒本通路16におけるスロットルボディ9の下流側としている。この第1接続通路15、冷媒ジャケット20、第2接続通路17からなる冷媒通路を、排気マニホールド冷却回路Bと称する。
【0021】
この実施形態では、エンジン本体冷却回路A、排気マニホールド冷却回路Bに流通する冷媒として、いずれも水(冷却水)を採用している。
【0022】
第1接続通路15と第2接続通路17には、それぞれ開閉バルブ23,22が設けられている。この実施形態では、開閉バルブ23,22は、第1接続通路15及び第2接続通路17にそれぞれ設けられているが、第1接続通路15のみに開閉バルブ23を設けた態様、第2接続通路17のみに開閉バルブ22を設けた態様も考えられる。
【0023】
排気マニホールド5の詳細を、
図2に示す。この実施形態は3気筒エンジンを想定しているので、排気マニホールド5の上流側管体は3本突出して設けられて、そのそれぞれが排気ポートに接続されるようになっている。また、排気マニホールド5の下流側管体は1本に合流して、フロントパイプ等の排気管6に続いている。この3本の上流側管体とそれらの合流部、さらに、1本の下流側管体の表面を覆うように、冷媒ジャケット20の水室21(下流側管体水室21a,合流部水室21b,上流側管体水室21c参照)が設けられている。すなわち、排気マニホールド5の排気ガスの通過空間の外周全域が、冷媒ジャケット20の水室21で覆われている。
【0024】
ただし、排気マニホールド5には、排気ガス中の酸素濃度を検出するO2(オーツー)センサ30が設けられている。O2センサ30は、センサ部が、排気マニホールド5の部材を貫通して内部の排気ガスの通過空間内に臨んでおり、信号を伝達するケーブルは外部に引き出されている。冷媒ジャケット20は、このO2センサ30の設置箇所を除く部分に設けられている。図中の符号24は、冷媒ジャケット20を配置していない冷媒ジャケット除外部24である。これは、冷媒ジャケット20内の冷却水により熱が奪われ、O2センサ30が活性温度に到達する時間が長くなることに鑑み、O2センサ30周囲を冷媒ジャケット除外部24とすることで、O2センサ30の活性温度到達時間を短縮したものである。
【0025】
また、冷媒ジャケット20の周囲には、保温部材50が設けられている。保温部材50は、グラスウール等の断熱素材が採用される。
図2では、保温部材50は排気マニホールド5の一部箇所のみに表示しているが、保温部材50は、
図1に示すように、冷媒ジャケット除外部24を含む冷媒ジャケット20の周囲全体に配置することが望ましい。
【0026】
このエンジンへの燃料や空気の供給、バルブの開閉、その他の制御は、エンジンを搭載する車両が備える電子制御ユニット(Electronic Control Unit)40が行っている。電子制御ユニット40は、エンジンが備える回転センサによるクランクシャフトの回転数の情報の他、エアフローセンサによる吸入空気量の情報、その他、吸気温度、吸気圧力、排気温度、空燃比等の各種情報を取得し、それらの情報を制御に活用し、運転状況に応じて必要な制御を行う。また、電子制御ユニット40は、開閉バルブ23,22を制御するバルブ制御手段41を備えている。バルブ制御手段41は、開閉バルブ23,22を開閉することによって、排気マニホールド5の冷媒ジャケット20への冷媒の供給を制御している。
【0027】
この実施形態のエンジンの冷却装置の作用について説明すると、エンジンの始動時等の冷態時において、冷媒である冷却水の温度が所定温度未満の際は、サーモスタット8の作用によって冷媒本通路16が開放され、ラジエータ側冷媒通路18は遮断される。このため、ポンプ装置7の駆動によって、冷却水は、エンジン本体10、冷媒本通路16、サーモスタット8、ポンプ流入通路19を順に通ってポンプ装置7へ戻っていく。冷却水がラジエータ13を迂回することにより、冷却水が速やかに昇温し暖機が促進される。また、温態時において、冷却水の温度が所定温度以上の際は、サーモスタット8の作用によってラジエータ側冷媒通路18が開放され、冷媒本通路16は閉鎖される。このため、ポンプ装置7の駆動によって、冷却水は、エンジン本体10、ラジエータ側冷媒通路18、ラジエータ13、ラジエータ側冷媒通路18、サーモスタット8、ポンプ流入通路19を順に通ってポンプ装置7へ戻っていく。冷却水がラジエータ13を通過することで、大気との熱交換を通じて冷却水の温度を低下させることができる。
【0028】
ここで、エンジンの始動時における冷媒ジャケット20への冷却水の供給について説明する。
【0029】
バルブ制御手段41は、エンジンの始動時において、開閉バルブ23,22の両方を、エンジンの始動後に所定時間が経過するまで閉鎖するように制御している。時間の経過は、タイマ32と、そのタイマ32の情報を処理するタイマ制御手段42によって把握される。
【0030】
この点、従来のエンジンでは、冷却水の温度が所定温度以上で暖機が成されているにもかかわらず、エンジンを始動することで排気マニホールド5の冷却が開始されてしまい、排気マニホールド5の温度が低下してしまう事態が生じていた。しかし、この発明では、エンジンの始動後も所定時間が経過するまで、冷媒ジャケット20へ冷却水を供給しないようにしたので、エンジンの始動後すぐに排気ガスの温度が低下する事態を回避することができる。なお、所定時間が経過後は、排気ガスの温度がある程度高い温度に安定しているので、その後は、通常どおり冷媒ジャケット20へ冷却水を供給しても、排気ガスの温度変化には支障がない。
【0031】
ここで、所定時間とは、例えば、エンジンの始動後10秒、あるいは、20秒といったように、予め決められた一定の時間とすることができる。あるいは、所定時間とは、排ガス温度が一定温度より高い状態になるまでに想定される時間と設定することもできる。
この一定温度は、エンジンの仕様に応じて適宜設定でき、また、一定温度の上昇に相当する所定時間は、予め演算等により算出しておくことができる。
【0032】
また、このエンジンを搭載する車両は、エンジンの自動停止・再始動装置33を備え、駆動用のモータを合わせて備えたハイブリッド車、あるいは、アイドリングストップ機能搭載車を想定している。エンジンの自動停止・再始動装置33は、電子制御ユニット40が備えるエンジン始動制御手段43によって制御される。すなわち、この車両は、運転者によるイグニッション装置34のオフ操作によらずに、運転状態に応じてエンジンが自動停止するように設定されている。エンジンの自動停止後は、比較的短時間で再始動が行われるのが通常であるので、エンジンの自動停止後も、排気マニホールド5はその時点での温度が維持されることが望ましい。
【0033】
このため、バルブ制御手段41は、エンジンの自動停止時に開閉バルブ23,22を閉鎖する制御を行い、冷媒ジャケット20内の冷却水の流動を規制することで、エンジンの自動停止後も、排気マニホールド5の温度の維持を図っている。この場合、冷媒ジャケット20内で冷却水が流動しないようにすることで、冷媒ジャケット20外への熱の放出を抑制している。これにより、エンジンの再始動時も排気ガスの温度が高い温度に維持されれば、再始動直後の排気ガスに含まれる有害成分の低減が可能である。ただし、運転者が行うエンジンのイグニッションオフ時には、エンジンの停止に合わせて開閉バルブ23,22を開放する制御を行い、排気マニホールド5の放熱を促進して早期の冷却を図っていく。
【0034】
また、この実施形態では、冷媒ジャケット20を挟んで上流側と下流側の両方に開閉バルブ23,22を配置している。すなわち、冷媒ジャケット20の上流側の第1接続通路15に開閉バルブ23を、下流側の第2接続通路17に開閉バルブ22を配置している。このため、冷媒ジャケット20内の冷却水と、冷媒ジャケット20外の冷却水とを物理的に遮断することで熱伝導を抑制して、排気マニホールド5の保温能力を高めることができる。また、冷媒ジャケット20の周囲に保温部材50を設けていることも、排気マニホールド5の保温能力向上に寄与している。
【0035】
なお、上記のように、バルブ制御手段41は、エンジンの自動停止時に開閉バルブ23,22を閉鎖する制御を行うが、その自動停止前に、燃料噴射装置31による燃料噴射を中止する場合には、燃料噴射を中止した後、実際にエンジンが自動停止するまでの間に、先行して開閉バルブ23,22の閉鎖を行うように制御する。このとき、燃料噴射の中止と同時に、開閉バルブ23,22を閉鎖することが望ましい。この点について、エンジンが自動停止する直前の運転状態は、車両が停止しているアイドリング状態か、あるいは、車両が走行していても低速で且つアクセルオフの状態(惰性で走行しているような状態)が多いと考えられる。このような自動停止直前の運転状態は、燃料噴射装置31による燃料噴射が中止された燃料カット状態である。燃料カット時は、燃焼室11内は非燃焼状態にあるので、開閉バルブ23,22を閉鎖することで、冷媒ジャケット20内の冷却水の温度の低下を抑制することができる。
【0036】
ここで、燃料噴射の中止が、その後に行われるエンジンの自動停止に伴うものであるかどうかは、運転状態に応じて電子制御ユニット40が判断することができる。また、燃料噴射装置31は、電子制御ユニット40が備える燃料噴射制御手段44によって制御されている。
【0037】
上記の実施形態において、エンジン本体冷却回路A、排気マニホールド冷却回路Bに流通する冷媒として、いずれも水(冷却水)を採用したが、この冷媒として、水以外の又は水を含む他の液体からなる冷媒を採用することは可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 シリンダブロック
2 シリンダヘッド
3 吸気通路
4 排気通路
5 排気マニホールド
7 ポンプ装置(ウォーターポンプ)
8 切替バルブ(サーモスタット)
9 スロットルボディ
10 エンジン本体
13 ラジエータ
15 第1接続通路
17 第2接続通路
20 冷媒ジャケット
21 冷媒室(水室)
22,23 開閉バルブ
30 O2センサ
40 電子制御ユニット
41 バルブ制御手段
50 保温部材
A エンジン本体冷却回路