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特許7435082ドライブレコーダ、データ記録方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ドライブレコーダ、データ記録方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020045246
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021149151
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】安形 年裕
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005884(JP,A)
【文献】特開2012-056405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバックドアに取り付けられるドライブレコーダであって、
前記車両に関する異常を検出する異常検出部と、
前記バックドアの開閉を検出する開閉検出部と、
前記異常検出部および前記開閉検出部の検出結果に基づいてイベントを検出するイベント検出部と、
前記イベントの検出を契機にイベントデータを記録する記録制御部と、を備え
前記開閉検出部は、前記ドライブレコーダが備えるセンサの検出値に基づいて、前記車両が加速または減速をしておらず、かつ、前記車両に対する前記バックドアの相対位置が変化していない静的状態であるか、または、前記静的状態以外の状態である動的状態であるかを判定し、前記センサの検出値に基づいて前記静的状態における姿勢を検出し、前記静的状態である場合、前記姿勢に基づいて前記バックドアの開閉を検出することを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
車両のバックドアに取り付けられるドライブレコーダであって、
前記車両に関する異常を検出する異常検出部と、
前記バックドアの開閉を検出する開閉検出部と、
前記異常検出部および前記開閉検出部の検出結果に基づいてイベントを検出するイベント検出部と、
前記イベントの検出を契機にイベントデータを記録する記録制御部と、を備え、
前記開閉検出部は、前記ドライブレコーダが備えるセンサの検出値に基づいて静的状態または前記静的状態以外の状態である動的状態のいずれであるかを判定し、前記動的状態における前記バックドアの開閉の回転軸に直交する径方向および周方向の前記センサの検出値に基づいて、前記バックドアの開閉を検出することを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項3】
前記開閉検出部は、前記ドライブレコーダが備える前記センサの検出値に基づいて、前記バックドアの回転軸の向きを検出することを特徴とする請求項1または2に記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
車両に関する異常を検出するステップと、
前記車両のバックドアに取り付けられるセンサの検出値に基づいて、前記車両が加速または減速をしておらず、かつ、前記車両に対する前記バックドアの相対位置が変化していない静的状態であるか、または、前記静的状態以外の状態である動的状態であるかを判定し、前記センサの検出値に基づいて前記静的状態における姿勢を検出し、前記静的状態である場合、前記姿勢に基づいて前記バックドアの開閉を検出するステップと、
前記異常の検出結果および前記開閉の検出結果に基づいてイベントを検出するステップと、
前記イベントの検出を契機にイベントデータを記録するステップと、を備えることを特徴とするデータ記録方法。
【請求項5】
車両に関する異常を検出する機能と、
前記車両のバックドアに取り付けられるセンサの検出値に基づいて、前記車両が加速または減速をしておらず、かつ、前記車両に対する前記バックドアの相対位置が変化していない静的状態であるか、または、前記静的状態以外の状態である動的状態であるかを判定し、前記センサの検出値に基づいて前記静的状態における姿勢を検出し、前記静的状態である場合、前記姿勢に基づいて前記バックドアの開閉を検出する機能と、
前記異常の検出結果および前記開閉の検出結果に基づいてイベントを検出する機能と、
前記イベントの検出を契機にイベントデータを記録する機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダ、データ記録方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の周囲の画像を撮像して記録するドライブレコーダが広く普及している。ドライブレコーダは、例えば、加速度センサの検出値が所定の閾値を超えることをトリガとして、トリガ検出の前後数秒間に取得される各種データをイベントデータとして記録する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-212110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の後方の画像を撮像して記録するリア用のドライブレコーダの場合、車両のバックドアにドライブレコーダが取り付けられることがある。この場合、バックドアの開閉時の衝撃をトリガとしてイベントデータが記録されてしまうことがある。そうすると、事故等の衝撃をトリガとしてイベントデータを記録するための記録容量が不足したり、過去に記録されたイベントデータが上書きされたりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、バックドアの開閉時に不必要なイベントデータが記録されることを防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、車両のバックドアに取り付けられるドライブレコーダであって、車両に関する異常を検出する異常検出部と、バックドアの開閉を検出する開閉検出部と、異常検出部および開閉検出部の検出結果に基づいてイベントを検出するイベント検出部と、イベントの検出を契機にイベントデータを記録する記録制御部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、データ記録方法である。この方法は、車両に関する異常を検出するステップと、バックドアの開閉を検出するステップと、異常の検出結果および開閉の検出結果に基づいてイベントを検出するステップと、イベントの検出を契機にイベントデータを記録するステップと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バックドアの開閉時に不必要なイベントデータが記録されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るドライブレコーダが取り付けられる車両を模式的に示す図である。
図2】実施の形態に係るドライブレコーダの機能構成を模式的に示すブロック図である。
図3図3(a),(b)は、バックドアの姿勢検出方法を模式的に示す側面図である。
図4】バックドアの開閉検出の一例を模式的に示す図である。
図5】実施の形態に係るデータ記録方法の流れを示すフローチャートである。
図6図5の開状態フラグの更新処理の詳細を示すフローチャートである。
図7図7(a),(b)は、実施の形態に係るドライブレコーダが取り付けられる別の車両を模式的に示す図である。
図8図5の開状態フラグの更新処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、図面において、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、実施の形態に係るドライブレコーダ10が取り付けられる車両50を模式的に示す図である。ドライブレコーダ10は、車両50のバックドア52に取り付けられ、車両50の後方の画像を撮像して記録するよう構成される。ドライブレコーダ10は、例えば、車両50の車室内に取り付けられ、車両50のバックウィンドウ54越しに車両50の後方の画像を撮像する。車両50は、いわゆるハッチバック車であり、バックドア52が上方に跳ね上がるように開くよう構成される。図1において、開いた状態のバックドア52を破線で示している。バックドア52は、車両50の上部に設けられるヒンジ56を回転軸として回動することで開閉するよう構成される。
【0013】
図1では、車両50を基準とする座標系を示しており、車両50の上下方向をz軸とし、車両50の前後方向をy軸とし、車両50の左右方向をx軸としている。図1において、バックドア52の回転軸の向きは、車両50の左右方向(x軸)である。
【0014】
ドライブレコーダ10は、車両50の異常を検出するためのセンサとして、例えば加速度センサを備える。加速度センサによって衝撃が検出された場合、車両50に何らかの異常が発生したと判断して、車両後方を撮像した画像をイベントデータとして記録する。ドライブレコーダ10は、バックドア52に対して固定されているため、バックドア52の開閉時にバックドア52と一緒に車両本体58に対して変位する。そのため、バックドア52を勢いよく閉めようとすると、バックドア52が閉まるときの衝撃を車両50の異常として検出し、ドライブレコーダ10がイベントデータを記録してしまうおそれがある。そこで、本実施の形態では、バックドア52の開閉を検出し、バックドア52の開閉時に生じる衝撃などを契機としてイベントデータが記録されるのを防止する。
【0015】
図2は、実施の形態に係るドライブレコーダ10の機能構成を模式的に示すブロック図である。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0016】
ドライブレコーダ10は、カメラ12と、センサ14と、制御装置16とを備える。制御装置16は、画像取得部18と、検出値取得部20と、異常検出部22と、開閉検出部24と、イベント検出部26と、記録制御部28とを備える。ドライブレコーダ10は、設定記憶部30を備えてもよい。
【0017】
カメラ12は、例えば、CCDセンサやCMOSセンサなどの撮像素子と、撮像素子に画像を結像させるためのレンズなどの光学素子とを有する。カメラ12は、バックドア52が閉じた状態において、車両の後方正面を撮像するように撮像方向が調整される。つまり、バックドア52が閉じた状態において図1の-y方向がカメラ12の撮像方向となる。カメラ12は、例えば、ドライブレコーダ10の動作中において連続的に動画像を撮像するよう構成される。カメラ12は、静止画像を撮像するよう構成されてもよい。
【0018】
センサ14は、ドライブレコーダ10に作用する加速度を検出する加速度センサを含む。加速度センサは、X軸、Y軸およびZ軸の3軸の加速度を検出可能となるよう構成される。ここで、加速度センサの検出軸(X軸、Y軸およびZ軸)は、ドライブレコーダ10を基準とする座標系であり、図1に示される車両50を基準とする座標系とは異なる。加速度センサの座標系は、バックドア52がヒンジ56に対して回動することにより、車両50の座標系に対して回転する。加速度センサの座標系は、X軸がバックドア52の回転軸に相当し、Y軸がバックドア52の回転における周方向に相当し、Z軸がバックドア52の回転における径方向に相当する。
【0019】
加速度センサの座標系の設定方法は任意であるが、例えば、カメラ12の撮像方向を基準に設定することができ、カメラ12の撮像方向をY軸とし、カメラ12の画角の上下方向をZ軸とし、カメラ12の画角の左右方向をX軸とすることができる。このように座標系を設定した場合、バックドア52が閉じた状態において、車両50を基準とする座標系と加速度センサを基準とする座標系とが一致する。
【0020】
センサ14は、上述の加速度センサとは異なるセンサを含んでもよい。センサ14は、ジャイロセンサ、ドアセンサ、車速センサ、ハンドル舵角センサ、燃料センサ、温度センサ、マイク、レーダセンサ、ライダ(LiDAR;Light Detection and Ranging)、位置情報センサ(例えば、GNSS;Global Navigation Satellite System)などを含んでもよい。ドライブレコーダ10は、車両50に関する情報をCAN(Controller Area Network)などを介して車両情報として取得してもよく、例えば、車両50のドアの開閉、車速、舵角、アクセル操作量、ブレーキ操作量、位置情報といった情報を取得してもよい。
【0021】
画像取得部18は、カメラ12が撮像する画像データを取得する。検出値取得部20は、センサ14の少なくとも一つの検出値を取得する。検出値取得部20は、例えば、センサ14に含まれる加速度センサが検出するX軸、Y軸およびZ軸のそれぞれの加速度の値を取得する。
【0022】
異常検出部22は、検出値取得部20が取得する少なくとも一つの検出値に基づいて、車両50に関する異常を検出する。異常検出部22は、例えば、検出値取得部20が取得する加速度の値に基づいて、ドライブレコーダ10に衝撃が加わったか否かを検出する。異常検出部22は、例えば、加速度のピーク値が所定の閾値以上である場合、加速度の時間積分値が所定の閾値以上である場合、加速度が所定値以上のままとなる継続時間が所定の閾値以上である場合などに衝撃を検出する。
【0023】
異常検出部22は、加速度に基づく衝撃の検出に限定されず、他の情報に基づいて車両50の異常を検出してもよい。衝撃検出部22は、画像取得部18が取得するカメラ12の画像に基づいて、他車両の接近や衝突を画像認識技術を用いて検出してもよい。衝撃検出部22は、検出値取得部20が取得する検出値に基づいて、異常音や衝突音などを音声解析技術を用いて検出してもよい。衝撃検出部22は、CANなどを介して取得する車両情報に基づいて、車両50の走行の異常や、車両50の各部の異常発熱などを検出してもよい。
【0024】
開閉検出部24は、検出値取得部20が取得する少なくとも一つの検出値に基づいて、ドライブレコーダ10が取り付けられているバックドア52の開閉を検出する。開閉検出部24は、例えば、加速度センサの検出値に基づいてバックドア52が静的状態または動的状態のいずれであるかを判定し、静的状態である場合にバックドア52の姿勢を検出する。開閉検出部24は、バックドア52の姿勢の検出結果に基づいて、バックドア52が開状態または閉状態のいずれであるかを判定する。
【0025】
ここで「静的状態」とは、車両50が加速または減速をしておらず、かつ、車両本体58に対するバックドア52の相対位置が変化していない状態をいう。「動的状態」は、静的状態以外の状態であり、車両50が加速または減速をしている状態や、車両50が停止している状態で、車両本体58に対してバックドア52の相対位置が変化している状態、つまり、バックドア52が開閉中である状態などが含まれる。
【0026】
バックドア52が静的状態である場合、センサ14が含む加速度センサも静止しているため、加速度センサは重力加速度のみを検出する。したがって、加速度の検出値が重力加速度のみであれば、バックドア52が静的状態であると判定できる。開閉検出部24は、例えば、加速度センサの3軸の加速度a,a,aの二乗和平方根(つまり、√(a +a +a ))が重力加速度(つまり、1[G])に一致する場合、バックドア52が静的状態であると判定する。開閉検出部24は、加速度センサの3軸の加速度の二乗和平方根と重力加速度の差が所定値未満(例えば0.05[G]未満)である場合に、バックドア52が静的状態であると判定してもよい。一方、加速度センサの3軸の加速度の二乗和平方根と重力加速度の差が所定値以上である場合、開閉検出部24は、バックドア52が動的状態であると判定する。開閉検出部24は、バックドア52の開閉の回転軸に直交する周方向(Y軸)および径方向(Z軸)についてのセンサ14の少なくとも一つの検出値に基づいて、バックドア52が開閉(回動)方向に動作する動的状態を検出してもよい。
【0027】
図3(a),(b)は、バックドア52の姿勢検出方法を模式的に示す側面図である。開閉検出部24は、バックドア52が静的状態であると判定した場合、取得する加速度の値に基づいてバックドア52の姿勢を検出する。開閉検出部24は、センサ14を基準とする座標系における重力加速度の方向を特定することで、バックドア52の姿勢を検出する。
【0028】
図3(a)は、閉状態のバックドア52を示し、車両50を基準とする第1座標系(x,y,z)とセンサ14を基準とする第2座標系(X,Y,Z)とが一致している場合を示す例である。重力加速度Gは、第1座標系において-z方向となっているため、第2座標系においても-Z方向となる。したがって、センサ14が検出する加速度は、Z軸の加速度a=-1[G]となり、X軸およびY軸の加速度が0となる。
【0029】
図3(b)は、開状態のバックドア52を示し、図3(a)に示す閉状態からバックドア52を角度θだけ回動させて跳ね上げた状態を示している。重力加速度Gは、図3(a)の状態と変わらず、第1座標系において-z方向となっている。一方、センサ14を基準とする第2座標系(X,Y,Z)は、車両50を基準とする第1座標系(x,y,z)に対してが角度θだけ回転している。そのため、バックドア52が静的状態である場合、センサ14が検出する加速度は、Y軸の加速度a=-sinθ[G]となり、Z軸の加速度a=-cosθ[G]となる。したがって、Y軸およびZ軸の加速度a,aの少なくとも一方の検出値から、a=-sinθの式およびa=-cosθの式の少なくとも一方を用いて角度θを算出することができ、バックドア52の姿勢を検出できる。
【0030】
開閉検出部24は、バックドア52が静的状態であると判定した場合、バックドア52の姿勢を示す値(例えば、角度θ)を算出する。開閉検出部24は、バックドア52の姿勢を示す角度が車両ごとにあらかじめ定められる所定値(例えば、初期値0度)である場合や、所定範囲内(例えば初期値に対して±5度以内)である場合、バックドア52が閉状態であると判定する。開閉検出部24は、バックドア52の姿勢を示す角度が所定値(例えば、初期値0度)とは異なる場合や、所定範囲(例えば初期値に対して±5度以内)を超える場合、バックドア52が開状態であると判定する。開閉検出部24は、バックドア52の姿勢を示す角度がヒンジ56の回動範囲に含まれる場合にのみ、バックドア52が開状態であると判定してもよい。バックドア52の姿勢を示す角度がヒンジ56の回動範囲から外れる場合には、開閉検出部24がエラーを出力してもよい。
【0031】
開閉検出部24は、バックドア52の静的状態における姿勢の検出結果に基づいて、バックドア52が開状態であることを示す「開状態フラグ」を更新する。開状態フラグは、バックドア52が静的状態で開状態である場合にオンに設定される。開状態フラグは、バックドア52が静的状態で閉状態である場合にオフに設定される。
【0032】
図4は、バックドア52の開閉検出の一例を模式的に示す図であり、バックドア52の姿勢(角度θ)が時間経過とともに変化する場合における開閉検出部24の動作を模式的に示す。上段(i)は、バックドア52の姿勢(角度θ)の時間変化を示す。バックドア52は、時刻t1となるまで閉状態(θ=0)であり、時刻t1~t2において開く方向に回動して角度θが増えていく。バックドア52は、時刻t2~t3において開状態が維持され、角度θが一定値のままとなる。バックドア52は、時刻t3~t4において閉じる方向に回動して角度θがわずかに減少し、時刻t4~t5において開状態が維持される。時刻t3~t5は、例えば、バックドア52を閉じるためにバックドア52に手をかけるといった準備動作がなされる期間である。その後、時刻t5~t6においてバックドア52が閉じる方向に回動して角度θが減少していき、時刻t6においてバックドア52が完全に閉じた状態となる。その後、時刻t6以降においてバックドア52の閉状態が維持される。このような時系列では、時刻t6においてバックドア52が車両本体58に勢いよく衝突することで衝撃が発生することが想定される。
【0033】
図4の中段(ii)は、開閉検出部24が静的状態または動的状態のいずれと判定するかを示す。開閉検出部24は、バックドア52の姿勢が維持される場合に静的状態であると判定し、バックドア52の姿勢が変化する場合に動的状態であると判定する。図示する例では、t1~t2、t3~t4、および、t5~t6の期間において動的状態であると判定する。なお、バックドア52の姿勢を維持した直後のタイミングでは、バックドア52がわずかな揺れていることがあるため、バックドア52の姿勢が固定される時刻t2、t4、t6から静的状態と判定されるまでには多少の遅れが生じうる。
【0034】
図4の下段(iii)は、開閉検出部24が保持する開状態フラグを示す。時刻t1となるまではバックドア52が閉状態であるため、開状態フラグはオフとなる。その後、時刻t1~t2においてバックドア52が動的状態となると、バックドア52の姿勢は検出されず、開状態フラグはオフのまま維持される。時刻t2を過ぎてバックドア52が静的状態となり、バックドア52の姿勢検出によって開状態であることが検知されると、開状態フラグはオンに更新される。その後、時刻t3~t4においてバックドア52が動的状態となると、バックドア52の姿勢は検出されず、開状態フラグはオンのまま維持される。時刻t4を過ぎるとバックドア52が静的状態となってバックドア52の姿勢検出によって開状態であることが検知され、開状態フラグはオンのまま更新されない。その後、時刻t5~t6においてバックドア52が動的状態となるため、バックドア52の姿勢は検出されず、開状態フラグはオンのまま維持される。時刻t6を過ぎるとバックドア52が静的状態となってバックドア52の姿勢検出によって閉状態であることが検知されると、開状態フラグはオンからオフに更新される。
【0035】
図2に戻り、イベント検出部26は、異常検出部22および開閉検出部24の検出結果に基づいてイベントを検出する。ここで「イベント」とは、イベントデータの記録の契機となる事象のことをいい、車両の事故や衝突といった事象の発生を意味する。イベント検出部26は、原則として、異常検出部22が車両50に関する異常を検出した場合にイベントを検出する。しかしながら、イベント検出部26は、バックドア52の開閉動作に伴う異常が発生した場合にはイベントを検出しないようにする。言いかえれば、イベント検出部26は、バックドア52の開閉がなされていない状況下で異常検出部22が異常を検出した場合にイベントを検出する。
【0036】
イベント検出部26は、開閉検出部24が保持する開状態フラグに基づいて、イベントを検出する。イベント検出部26は、開状態フラグがオフであるときに異常または衝撃が検出された場合にイベントを検出し、開状態フラグがオンであるときに異常または衝撃が検出された場合にイベントを検出しないようにする。例えば、図4の時刻t6において、バックドア52を閉じる際に異常または衝撃が検出された場合、時刻t6におけるフラグがオンであるため、イベントを検出しないようにする。一方、バックドア52の閉状態が維持されて開状態フラグがオフとなる期間に異常または衝撃が検出された場合、イベント検出部26はイベントを検出する。これにより、例えば、バックドア52を閉じた状態で車両50が道路を走行している状況下において、車両50に関する異常の発生を契機としてイベントを検出することができる。
【0037】
イベント検出部26は、開状態フラグがオフとなるタイミング、言いかえれば、バックドア52が閉められたタイミングから、所定の時間が経過するまでの期間においてイベントを検出しないようにしてもよい。イベント検出部26は、開閉検出部24がバックドア52が動的状態であると判定し、かつ、バックドア52の開閉の回転軸に直交する径方向および周方向(例えばY軸およびZ軸)において動的状態である場合に、イベントを検出しないようにしてもよい。
【0038】
記録制御部28は、イベント検出部26がイベントを検出した場合、イベントデータを記録媒体32に記録する。イベントデータとして、例えば、イベントの検出タイミングの前後の所定期間においてカメラ12が撮像した画像データが記録される。イベントデータには、イベントの検出契機となった異常に関する情報や加速度の値が記録されてもよいし、イベントの検出タイミングにおける車両50の走行の関する任意の情報が記録されてもよい。
【0039】
記録制御部28は、イベントデータを記録媒体32に上書禁止の属性で記録する。記録制御部28は、イベントが検出されていないときの画像データを上書可能の属性で記録媒体32に記録してもよい。記録制御部28は、常時撮像する画像データを記録媒体32の第1記録領域に記録し、イベントデータを記録媒体32の第1記録領域とは異なる第2記録領域に記録してもよい。第2記録領域は、イベントデータ専用の記録領域であってもよい。第1記録領域および第2記録領域は、記録媒体32にあらかじめ設けられる独立した区画であってもよいし、ファイルシステム上のフォルダやファイル名などで区別された領域であってもよい。
【0040】
設定記憶部30は、開閉検出部24がバックドア52の開閉を検出するために用いる設定値を記憶する。設定記憶部30は、バックドア52が閉状態であるときの姿勢を示す初期値(例えば角度θ)を記憶する。バックドア52の閉状態に対応する姿勢を示す初期値は、例えば、ドライブレコーダ10をバックドア52に取り付けた後、バックドア52を閉じた状態で初期設定操作をすることで設定記憶部30に記憶される。例えば、初期設定操作をしたときのセンサ14の検出値に基づいてバックドア52の角度θが算出され、その角度が初期値として設定記憶部30に記憶される。設定記憶部30は、バックドア52の回動範囲を示す値を記憶してもよい。例えば、バックドア52を上限まで跳ね上げた状態で初期設定操作をすることで、バックドア52の回動範囲の上限値が設定記憶部30に記憶されてもよい。
【0041】
記録媒体32は、例えば、SDカード(登録商標)などのフラッシュメモリで構成される。記録媒体32は、例えば、ドライブレコーダ10に設けられるスロットに挿入して使用され、ドライブレコーダ10から取り外し可能となるよう構成される。記録媒体32は、ドライブレコーダ10に内蔵されるフラッシュメモリなどの不揮発性メモリであってもよい。記録媒体32は、ハードディスクドライブなどの磁気記憶装置で構成されてもよい。
【0042】
図5は、実施の形態に係るデータ記録方法の流れを示すフローチャートである。ドライブレコーダ10は、センサ14の検出値を取得し(S10)、取得した検出値(例えば加速度の検出値)に基づいてバックドア52が開状態であるかを示す開状態フラグの更新処理を実行する(S12)。ドライブレコーダ10は、取得した検出値(例えば加速度の検出値)に基づいて車両50に関する異常が検出され(S14のY)、開状態フラグがオフであれば(S16のY)、イベントを検出し(S18)、イベントデータを記録する(S20)。ドライブレコーダ10は、車両50に関する異常が検出されない場合(S14のN)、および、開状態フラグがオンの場合(S16のN)、S18およびS20の処理をスキップする。
【0043】
図6は、図5の開状態フラグの更新処理(S12)の詳細を示すフローチャートである。開閉検出部24は、取得した検出値に基づいて静的状態であるか否かを判定し(S30)、静的状態であると判定した場合(S30のY)、取得した検出値に基づいて姿勢を検出する(S32)。姿勢の検出結果に基づいて、バックドア52が開状態であると判定した場合(S34のY)、開状態フラグをオンにする(S36)。S34において、バックドア52が閉状態であると判定した場合(S34のN)、開状態フラグをオフにする(S38)。S30において、動的状態であると判定した場合(S30のN)、S32~S38の処理をスキップする。
【0044】
本実施の形態によれば、バックドア52に取り付けられるリア用のドライブレコーダ10において、バックドア52の開閉を検出することで、バックドア52の開閉に起因する異常または衝撃が発生したときにイベントが検出されてしまうことを防止できる。これにより、衝突や事故とは関係しない異常または衝撃の発生を契機にイベントデータが記録されることを防止でき、不必要なイベントデータの記録を防ぐことができる。これにより、不必要なイベントデータが記録されることによる記録媒体32の記録容量の逼迫を防止できる。本来残しておくべき過去のイベントデータが不必要なイベントデータによって上書消去されることを防止できる。また、バックドア52の閉状態においてイベント検出を可能とすることで、衝突や事故による異常または衝撃の発生を契機としたイベントデータを確実に記録できる。
【0045】
(第2の実施の形態)
図7(a),(b)は、実施の形態に係るドライブレコーダ10が取り付けられる別の車両60を模式的に示す図である。図7(a)は、車両60を横から見た側面図を示し、図7(b)は、車両60を上から見た上面図を示す。図7の車両60は、バックドア62が横開きとなっており、バックドア62の回転軸が車両60の上下方向(z軸)となる点で上述の実施の形態と相違する。ドライブレコーダ10は、横開きのバックドア62に取り付けられ、バックウィンドウ64越しに車両60の後方の画像を撮像する。バックドア62を回動させるためのヒンジ66は、車両本体68の側部に設けられている。本実施の形態について、上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0046】
図7(b)は、横開きのバックドア62を矢印Rで示すように開けた状態を示しており、閉状態のバックドア62の位置を破線で示している。バックドア62の回転軸はz軸であるため、ドライブレコーダ10を基準とする座標系は、車両60を基準とする座標系に対してz軸まわりに回転する。その結果、バックドア62の開閉によらず、車両60を基準とする第1座標系のz軸とドライブレコーダ10を基準とする第2座標系のZ軸は一致したままとなり、重力加速度Gが検出される方向が第2座標系において変化しない。その結果、バックドア62が横開きの場合、静的状態における重力加速度の方向に基づいてバックドア62の姿勢を検出することができない。
【0047】
そこで、バックドア62が横開きである場合、センサ14の少なくとも一つの検出値に基づいて、バックドア62の開閉時における回転運動を検出することで、バックドア62の開閉を検出する。バックドア62が開閉する場合、ドライブレコーダ10は、ヒンジ66を回転軸として回転半径rが一定となる円運動をする。このとき、ドライブレコーダ10の移動方向はY軸に沿った方向となるため、ドライブレコーダ10の円運動の速度v(t)はY軸方向の成分で構成される。したがって、速度v(t)は、Y軸の加速度aを時間積分することで算出することができ、v(t)=∫adtとなる。また、円運動の遠心力Fは、X軸に沿った方向となるため、X軸の加速度aに比例し、質量mを用いてF=maとなる。円運動の遠心力Fは、速度v(t)と回転半径rを用いてF=mv/rと表されるため、X軸の加速度a=v(t)/rとなる。ここで、v(t)=∫adtの関係式を用いると、回転半径r={∫adt}/aとなり、X軸およびY軸の加速度a,aから回転半径rを算出することができる。算出された回転半径rがドライブレコーダ10の取り付け位置に対応した回転半径と一致していれば、ドライブレコーダ10がバックドア62の開閉に伴う円運動をしていることを推定できる。回転半径rの大きさは、ドライブレコーダ10の取り付け位置やバックドア62の大きさにもよるが、0.5m~1.5m程度である。そのため、車両60がカーブや交差点を走行する場合における車両60の回転半径(例えば10m以上)と有為に区別することができる。
【0048】
本実施の形態において、開閉検出部24は、検出値取得部20が取得する検出値(例えば加速度の検出値)に基づいて、ドライブレコーダ10が取り付けられているバックドア62の開閉を検出する。開閉検出部24は、センサ検出値(例えば加速度の検出値)に基づいてバックドア62が静的状態または動的状態のいずれであるかを判定する。開閉検出部24は、バックドア62が動的状態である場合、X軸およびY軸の加速度a,aから回転半径rを算出する。開閉検出部24は、算出した回転半径rが所定範囲内であれば、バックドア62が開状態であると判定する。開閉検出部24は、算出した回転半径rが所定範囲外であれば、バックドア62が開状態ではないと判定する。
【0049】
開閉検出部24は、バックドア62が開状態であるか否かの判定結果に基づいて、開状態フラグを更新する。開閉検出部24は、算出した回転半径rに基づいてバックドア62が開状態であると判定する場合、開状態フラグをオンにする。開閉検出部24は、算出した回転半径rに基づいてバックドア62が開状態ではないと判定する場合、開状態フラグをオフにする。開閉検出部24は、バックドア62が静的状態である場合、開状態フラグをオフにする。
【0050】
設定記憶部30は、開閉検出部24がバックドア62の開閉を検出するために用いる設定値を記憶する。設定記憶部30は、例えば、バックドア62に取り付けられるドライブレコーダ10の回転半径rの設定値を記憶する。回転半径rの設定値は、ドライブレコーダ10をバックドア62に取り付けた後、ドライブレコーダ10の初期設定操作においてバックドア62を開閉させることで設定記憶部30に記憶される。例えば、初期設定操作をしたときのセンサ14の検出値に基づいて回転半径rが算出され、設定記憶部30に記憶される。なお、回転半径rの設定値をユーザが直接入力できるようにドライブレコーダ10が構成されてもよい。
【0051】
図8は、図5の開状態フラグ更新処理(S12)の詳細を示すフローチャートであり、ドライブレコーダ10が横開きのバックドア62に取り付けられる場合の処理を示す。開閉検出部24は、取得した検出値(例えば加速度の値)に基づいて動的状態であるか否かを判定し、動的状態であると判定した場合(S40のY)、径方向(Y軸)および周方向(X軸)のセンサ検出値(例えば加速度の値)から円運動の回転半径rを算出する(S42)。算出した回転半径rが所定範囲内であれば(S44のY)、開状態フラグをオンにする(S46)。算出した回転半径rが所定範囲外であれば(S44のN)、開状態フラグをオフにする(S48)。S40において静的状態であると判定した場合(S40のN)、開状態フラグをオフにする(S48)。
【0052】
本実施の形態によれば、横開きのバックドア62に取り付けられるリア用のドライブレコーダ10において、バックドア62の開閉を検出することで、バックドア62の開閉に起因する異常または衝撃が発生したときにイベントが検出されてしまうことを防止できる。また、バックドア62の開閉が検出されない場合においてイベントの検出を可能とすることで、衝突や事故による異常または衝撃の発生を契機としたイベントデータを確実に記録することができる。
【0053】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0054】
上述の実施の形態において、ドライブレコーダ10は、縦開きのバックドア52のみに対応可能であってもよいし、横開きのバックドア62のみに対応可能であってもよい。ドライブレコーダ10は、縦開きのバックドア52および横開きのバックドア62の双方に対応可能であってもよい。この場合、設定記憶部30には、ドライブレコーダ10を取り付けたバックドアが縦開きまたは横開きのいずれであるかの設定情報が記憶されてもよい。
【0055】
上述の実施の形態において、ドライブレコーダ10は、ドライブレコーダ10を取り付けたバックドアが縦開きまたは横開きのいずれであるかを自動検出する機能を有してもよい。つまり、ドライブレコーダ10は、ドライブレコーダ10を取り付けたバックドアの回転軸の向きを自動検出してもよい。例えば、開閉検出部24が静的状態において開状態のバックドアを検出可能であった場合、開閉検出部24は、バックドアが縦開き(回転軸がX軸)であることを検出してもよい。また、開閉検出部24が動的状態においてバックドアの開閉を回転半径rに基づいて検出可能であった場合、開閉検出部24は、バックドアが横開き(回転軸がZ軸)であることを検出してもよい。
【0056】
上述の実施の形態において、ドライブレコーダ10は、フロント用のドライブレコーダとして利用可能であってもよい。この場合、設定記憶部30には、ドライブレコーダ10をフロント用として機能させるための設定情報が記憶されてもよい。ドライブレコーダ10をフロント用として機能させる場合、開閉検出部24の動作をオフにし、開状態フラグが常時オフとなるようにしてもよい。また、ドライブレコーダ10をバックドアに取り付けて使用する場合、設定記憶部30には、ドライブレコーダ10をリア用として機能させるための設定情報が記憶されてもよい。ドライブレコーダ10をリア用として機能させる場合、開閉検出部24の動作をオンにし、バックドアの開閉検出に基づいて開状態フラグのオンオフが更新されるようにしてもよい。
【0057】
上述の実施の形態において、センサ14がジャイロセンサを含む場合、開閉検出部24は、ジャイロセンサによって検出した角速度に基づいてバックドア52の動的状態および静的状態を判定してもよいし、バックドア52の開状態および閉状態を判定してもよい。また、センサ14がドアセンサを含む場合、開閉検出部24は、ドアセンサの検出値に基づいてバックドア52の開状態および閉状態を判定してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…ドライブレコーダ、12…カメラ、14…加速度センサ、16…制御装置、18…画像取得部、20…検出値取得部、22…異常検出部、24…開閉検出部、26…イベント検出部、28…記録制御部、30…設定記憶部、50,60…車両、52,62…バックドア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8