(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】医療用容器
(51)【国際特許分類】
A61J 1/14 20230101AFI20240214BHJP
【FI】
A61J1/14 520
A61J1/14 390Z
(21)【出願番号】P 2020046360
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】坂根 寛人
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/066865(WO,A1)
【文献】特開2002-337888(JP,A)
【文献】特開2019-026271(JP,A)
【文献】特開2015-227177(JP,A)
【文献】特開2011-078737(JP,A)
【文献】特表2014-510567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/14
B65D 30/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された一組のシート状部材の周縁が接合されて形成された医療用容器であって、
幅方向の中央部に配置される収容部と、
前記収容部の高さ方向の上端側に配置され
、収容物の取り出し時に指が挿入されて折り返される傾斜部と、
前記傾斜部の高さ方向の上端側に配置され
、収容物の取り出し時に切断される矩形部と、
を備え、
前記傾斜部は、上端側から下端側に向かって幅が漸次小さくなるように構成され、
前記矩形部は、前記収容部の幅よりも大きい幅を有し、
幅方向について、前記収容部の上端部の端部と前記傾斜部の上端部の端部との距離aは、35mm以上70mm以下であり、
高さ方向について、前記収容部の上端部と前記傾斜部の上端部との距離bは、20mm以上40mm以下であり、
前記矩形部と前記傾斜部との境界部の位置は、収容物を前記収容部に収容した状態における該収容物の上端部よりも上端側に位置する医療用容器。
【請求項2】
前記収容部の上端部の幅dは、前記距離a以下の大きさである請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記傾斜部の上端部の幅cは、200mm以下である請求項1又は2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記傾斜部の側辺の幅方向に対する鋭角側の角度θは、20°以上40°以下である請求項1~3のいずれかに記載の医療用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療に用いられる器具や製剤等は、外界からの保護及び汚染の防止のため、樹脂製の容器により密封された状態で保存及び運搬される(例えば、特許文献1参照)。そして、これら器具や製剤等の収容物を使用する場合には、不潔野と清潔野とが区分された手術室等において不潔野の担当者により容器が開封され、収容物は清潔野の担当者により容器から取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、容器の外側は、外界と接触しているため不潔野に区分される。また、容器の開封部分である開口部も汚染されていると考えられる。そのため、開口部に接触することなく容器から収容物を取り出せることが望ましい。
【0005】
従って、本発明は、収容物を汚染させずに取り出せる医療用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対向して配置された一組のシート状部材の周縁が接合されて形成された医療用容器であって、幅方向の中央部に配置される収容部と、前記収容部の高さ方向の上端側に配置される傾斜部と、前記傾斜部の高さ方向の上端側に配置される矩形部と、を備え、前記傾斜部は、上端側から下端側に向かって幅が漸次小さくなるように構成され、前記矩形部は、前記収容部の幅よりも大きい幅を有し、幅方向について、前記収容部の上端部の端部と前記傾斜部の上端部の端部との距離aは、35mm以上70mm以下であり、高さ方向について、前記収容部の上端部と前記傾斜部の上端部との距離bは、20mm以上40mm以下である医療用容器に関する。
【0007】
また、前記収容部の上端部の幅dは、前記距離a以下の大きさであることが好ましい。
【0008】
また、前記傾斜部の上端部の幅cは、200mm以下であることが好ましい。
【0009】
また、前記傾斜部の側辺の幅方向に対する鋭角側の角度θは、20°以上40°以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療用容器によれば、開口部が収容物に触れないように反転部を容易に反転させられるので、収容物を汚染させずに取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る医療用容器を示す平面図である。
【
図2】上記実施形態に係る医療用容器に収容物が収容された状態を示す平面図である。
【
図4】上記実施形態に係る医療用容器の使用方法を示す図であり、医療用容器の上端部を切断して開封した状態を示す図である。
【
図5】上記実施形態に係る医療用容器の使用方法を示す図であり、傾斜部を持った状態を示す図である。
【
図6】上記実施形態に係る医療用容器の使用方法を示す図であり、傾斜部を持ち、開口部において一組のシート状部材を反転させた状態を示す図である。
【
図7】本発明の実施例3において、切断位置を説明するための図である。
【
図8】上記実施形態に係る医療用容器における収容部の上端部の幅の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の医療用容器の好ましい実施形態につき、図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態の医療用容器の構成につき、
図1~
図3を参照しながら説明する。
医療用容器は、医療に用いられる器具や製剤等を収容物として収容し、収容物を汚染から守って衛生状態を維持させるために用いられる。本実施形態の医療用容器1は、再生医療等に用いられる細胞を収容した収容容器60を収容物として収容する。
【0013】
医療用容器1は、
図1~
図3に示すように、対向して配置された一組(2枚)のシート状部材50,50(
図3参照)の周縁が、収容物を収容するための収容用開口部40(
図1においては上辺部分)を除いてヒートシールや超音波接合により接合されて袋状に形成される。シート状部材50は、可撓性を有する熱可塑性樹脂により構成される。シート状部材を構成する材料としては、EVA樹脂(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、塩化ビニル等が挙げられる。本実施形態では、シート状部材50は、EVA樹脂により構成される。シート状部材50をEVA樹脂により構成することにより、医療用容器1を凍結保存した場合においても柔軟性を維持でき、医療用容器1が低温下において破損することを防げる。
【0014】
医療用容器1は、
図1~
図3に示すように、収容部10と、傾斜部20と、矩形部30と、収容用開口部40と、を備える。
【0015】
収容部10は、
図1及び
図2に示すように、幅方向WDの長さd(以下、収容部10の幅dとも言う)が高さ方向HDの長さよりも短い平面視において矩形形状に形成され、医療用容器1の幅方向WDの中央部に配置される。収容部10には、無菌状態が保たれた医療に用いられる器具や製剤等が収容物として収容される。本実施形態では、
図2に示すように、収容部10には、再生医療に用いられる細胞が収容された筒状の収容容器60が収容される。収容容器60は、一端側が開口した筒状の本体部61及び本体部61に着脱可能に取り付けられるキャップ62を備え、キャップ62が医療用容器1の高さ方向HDの一端側である上端側に位置するように、収容部10に収容される。収容部10の幅dは、収容容器60が挿入可能な長さに構成すればよい。本実施形態では、
図2に示すように、収容部10の幅dは、収容容器60のキャップ62の幅Wの2倍程度の長さとした。これにより、収容容器60を収容部10に挿入する場合に容易に挿入することができる。ここで、収容容器60が収容部10に収容された状態で、収容容器60が収容部10の上端部から10mm~15mm程度、飛び出すように、収容部10の高さ方向HDの長さを設定することが好ましい。これにより、収容部10からの収容容器60の取り出しを容易に行うことができる。
【0016】
尚、本明細書において、
図1における左右方向を医療用容器1の幅方向WD、幅方向WDに交差する方向であってシート状部材50の面方向に沿う方向(
図1における上下方向)を高さ方向HD、一組のシート状部材50,50の重ね合わせ方向(
図3における上下方向)を厚さ方向TDとする。
【0017】
傾斜部20は、収容部10の高さ方向HDの一端側(収容部10の上端側)に配置される。傾斜部20は、収容部10に連通しており、高さ方向HDの一端側(上側)に向かうに従って幅方向WDの長さが長くなる(幅が広くなる)形状に形成される。傾斜部20は、高さ方向HDに対して傾斜して幅方向WDの両側に延びる一対の側辺を有する。傾斜部20は、一対の側辺において一組のシート状部材50が接合されており、その他の部分においては、一組のシート状部材50は接合されていない。傾斜部20の幅方向WDの長さは、収容部10から矩形部30に向かって漸次大きくなるように構成される。傾斜部20の最小幅は収容部10の上端部の幅dと同じ幅であり、最大幅は、矩形部30の幅cと同じ幅となっている。本実施形態では、傾斜部20の一対の側辺は、高さ方向HDに対して同じ角度で傾斜して延びている。
【0018】
矩形部30は、傾斜部20の高さ方向HDの一端側(傾斜部20の上端側)に配置される。矩形部30は、高さ方向HDに沿う側辺において一組のシート状部材50が接合されており、その他の部分においては、一組のシート状部材50は接合されていない。矩形部30の幅方向WDの長さc(以下、矩形部30の幅cとも言う)は、収容部10の上端部の幅dよりも大きく構成される。また、後に詳しく説明するが、医療用容器1は、収容容器60の取り出しの際に、矩形部30における傾斜部20との境界部BDの近傍で幅方向WDに沿って切断される。
【0019】
収容用開口部40は、一組のシート状部材50の周縁の一部が接合されずに形成される。本実施形態では、収容用開口部40は、高さ方向の一端側(上端側)の辺、即ち矩形部30の上端側の辺の全長に亘って形成される。
【0020】
以上説明した本実施形態の医療用容器1は、以下のようにして使用される。
【0021】
医療用容器1に収容容器60を収容する場合には、収容用開口部40が形成される高さ方向HDの一端側の辺である上辺を除く各辺が接合された状態の医療用容器1に、収容用開口部40から細胞が収容された収容容器60が収容される。ここで、収容容器60は、キャップ62が上端側に位置するように収容部10に収容される。その後、医療用容器1の上辺が接合され、収容容器60は、密閉された状態で医療用容器1に収容される。この状態において、収容容器60の上端部60aは、矩形部30と傾斜部20との境界部BDよりも下端側、即ち、傾斜部20の内部に位置している(
図2参照)。
【0022】
収容容器60に収容された細胞は、使用されるまでの間、医療用容器1に収容され、密閉された状態で凍結保存される。ここで、医療用容器1をEVA樹脂により構成することにより、医療用容器1を凍結保存した場合においても柔軟性を維持でき、医療用容器1が低温下において破損することを防げる。
【0023】
収容容器60に収容された細胞を使用する場合、医療用容器1に収容された状態で、不潔野と清潔野とが区分された手術室等に運搬される。そして、医療用容器1は、不潔野の担当者により開封され、収容容器60は清潔野の担当者により医療用容器1から取り出される。
【0024】
本実施形態の医療用容器1は、傾斜部20の形状を適切に設定することにより、切断後に傾斜部20を容易に反転させることができる。
【0025】
医療用容器1から収容容器60を取り出す手順につき、
図4~
図6を参照しながら説明する。
まず、
図4に示すように、不潔野の担当者により、医療用容器1が所定の切断位置ではさみ等により切断される。これにより、医療用容器1の上辺側に取り出し用の開口部が形成される。ここで、医療用容器1は、矩形部30における傾斜部20との境界部BDの近傍で切断されることが好ましい(
図1及び
図2参照)。本実施形態では、傾斜部20の形状は、高さ方向HDについて、収容部10の上端部と境界部BDとの距離bが、20mm以上40mm以下となるように設定される。距離bを20mm以上とすることで、境界部BDの近傍で矩形部30を切断する際に、はさみ等が収容容器60の上端部60aに触れてしまうことを防げる。
【0026】
次いで、
図5に示すように、傾斜部20が不潔野の担当者により保持される。ここで、傾斜部20は、周縁部(側辺)を除いて一組のシート状部材50は接合されていないので、不潔野の担当者は、傾斜部20に、開口部からそれぞれ例えば親指を挿入すると共に、挿入した親指と人差し指とでシート状部材50を挟むことで、傾斜部20を保持できる。ここで、幅方向WDについて、収容部10の上端部の端部と矩形部30の端部との距離aを35mm以上とすることで、不潔野の担当者が収容容器60に触ることなく傾斜部20に、両手の親指を挿入することができる。
【0027】
次いで、
図6に示すように、傾斜部20が不潔野の担当者により保持された状態で、開口部において、一組のシート状部材50,50が反転される。より具体的には、傾斜部20において、一組のシート状部材50,50の間に挿入した親指とシート状部材50の外側に配置された担当者の人差し指とにより挟まれたシート状部材50の表裏を反転させることで、開口部近傍のシート状部材50の表裏が反転される。
これにより、開口部近傍においては、外界にさらされていない清潔なシート状部材50の内面が外側に露出する。この状態において、清潔野の担当者により、収容容器60が衛生的に取り出される。
【0028】
ここで、収容部10の上端部の端部と矩形部30の端部との距離aを70mm以下とし、収容部10の上端部と境界部BD(傾斜部20の上端部)との距離bを40mm以下とすることで、高さ方向HDについて傾斜部20の反転する位置を収容部10の上端部に近付けることができる。よって、収容容器60の上端部60aよりも傾斜部20の反転位置が下側となるため、収容容器60の上端部の、医療用容器1からの露出部分を多くでき、清潔野の担当者が収容容器60を容易に取り出し可能となる。尚、距離aが70mmを超える場合は、傾斜部20の指把持部分、及びその近傍部のシート状部材50部分については反転させやすいが、収容容器60を取り出す部位となる幅方向WDの中央部分の開口側を上手く反転させにくくなる。その結果、反転位置を適切な位置とすることが難しくなる。また、距離bが40mmを超える場合は、傾斜部20を反転させることが難しくなるため好ましくない。
即ち、収容部10の上端部の端部と矩形部30の端部との距離aを70mm以下とし、収容部10の上端部と境界部BD(傾斜部20の上端部)との距離bを40mm以下とすることで、収容容器60を適切な位置で反転させやすくでき、かつ、反転させた状態において収容容器60の上端部の医療用容器1からの露出部分を多くできるため、収容容器60を取り出しやすくできる。
【0029】
尚、本実施形態では、前述したように医療用容器1を開封するための切断位置を矩形部30における傾斜部20との境界部BDの近傍とすることで、矩形部30が境界部BDの近傍よりも上方で切断される場合に比べて、容易に傾斜部20を反転させられる。医療用容器1には、開封するための切断位置を示すための印を付してもよい。切断位置を示すための印としては、切断位置に沿ってシート状部材50に付された表示、又は矩形部30の側部に形成された切り欠き等が挙げられる。
【0030】
本発明者が検討した結果をまとめると、幅方向WDについて、収容部10の上端部の端部と矩形部30の端部との距離aが、35mm以上70mm以下である場合、かつ、高さ方向HDについて、収容部10の上端部と、収容部10と境界部BD(傾斜部20の上端部)との距離bが、20mm以上40mm以下である場合に、医療用容器1を境界部BDで切断後に傾斜部20を容易に反転させられることが分かった。
【0031】
また、本発明者は、様々な観点から容易に傾斜部20を反転させるための傾斜部20の好ましい形状について更に検討した。その結果、収容部10の幅方向WDの長さd(収容部10)は、収容部10の上端部の端部と矩形部30の端部との距離a以下の大きさであることが好ましく、また、矩形部30の幅方向WDの長さc(矩形部30の幅)は、200mm以下であることが好ましく、傾斜部20の側辺の幅方向WDに対する鋭角側の角度θは、20°以上40°以下であることが好ましいことが分かった。
【0032】
以上説明した実施形態の医療用容器1によれば、以下のような効果を奏する。
【0033】
(1)医療用容器1を、一組のシート状部材50,50の周縁を接合して形成すると共に、収容部10と、この収容部10の高さ方向HDの上端側に配置される傾斜部20と、この傾斜部20の高さ方向の上端側に配置される矩形部30と、を含んで構成し、傾斜部20を、上端側から下端側に向かって幅が漸次小さくなるように構成するものとし、幅方向WDについて、収容部10の上端部の端部と傾斜部20の上端部の端部との距離aを、35mm以上70mm以下であるものとし、高さ方向HDについて、収容部10の上端部と境界部BDとの距離bを、20mm以上40mm以下であるものとした。これにより、医療用容器1の高さ方向HDの一端側をはさみ等で開封して医療用容器1に収容された収容容器60を取り出す場合に、医療用容器1を矩形部30と傾斜部20との境界部BDの近傍で切断することにより、傾斜部20を両手で持って、一組のシート状部材50,50を容易に反転させられる。よって、汚染されていないシート状部材50の内面を露出させた状態で収容部10に収容された収容容器60を取り出せる。また、傾斜部20における反転位置を収容部10の近傍にすることができるので、収容容器60の取り出しが容易である。また、切断の際に、はさみ等が収容容器60の上端部60aに触れることを防げる。その結果、収容容器60を汚染することなく容易に取り出せる。また、傾斜部20において一組のシート状部材50,50の間に指を挿入して一組のシート状部材50,50を反転させることで、収容部10に指が接触しないので、収容容器60をより衛生的に取り出せる。
【0034】
(2)収容部10の上端部の幅dを、収容部10の上端部の端部と矩形部30の端部との距離a以下の大きさにするものとした。これにより、傾斜部20に指を入れて反転させる際の指の力が傾斜部20に伝わりやすくなるので、更に容易に傾斜部20を反転させることができる。
【0035】
(3)矩形部30の幅を、200mm以下であるものとした。これにより、傾斜部20における反転位置を収容部10の近傍にすることができるので、収容容器60の取り出しが容易である。
【0036】
(4)傾斜部20の側辺の幅方向WDに対する鋭角側の角度θを、20°以上40°以下であるものとした。これにより、傾斜部20を両手で持って、一組のシート状部材50,50を容易に反転させられる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
次に、本実施形態に係る医療用容器1について、収容部10の上端部の端部と傾斜部20の上端部の端部との距離aと、収容部10の上端部と境界部BD(傾斜部20の上端部)との距離bを様々に変化させた医療用容器を試験体として作製し、反転させやすさについて評価を行った。
尚、収容部10の幅dはいずれも27mmとした。その結果を表1に示し、距離aと距離bの関係を、傾斜部20の側辺の幅方向WDに対する鋭角側の角度θで表したものを表2に示す。実施例に用いた医療用容器1を構成するシート状部材としては、EVA樹脂により構成された厚さ0.35mmのシートを用いた。
表1の反転しやすさについては、傾斜部20に指を奥まで入れずに反転でき、抵抗感がないものを「◎」とし、傾斜部20に指を奥まで入れずに反転できるが、抵抗感があるものを「〇」とし、傾斜部20に指を奥まで入れれば反転はできるが、抵抗感あるものを「△1」、指の把持箇所近傍では反転可能だが、収容容器の収納した収容部を形成した中央部(開口部)での反転がスムースにできないものを「△2」とし、反転できないものを「×」として、5段階で評価した。尚、本発明の範囲に入る実施例は、表1及び表2において太枠で囲んだ。
【0038】
【0039】
【0040】
表1によれば、収容容器60の上部距離aが35mm以上70mm以下、かつ、距離bが20mm以上40mm以下の範囲においては、反転のしやすさはいずれも「◎」であり、容易に反転できることが分かった。尚、距離a及び距離bの本発明の範囲内における角度θは、おおよそ20°以上40°以下となることが確認できた。
【0041】
(実施例2)
次に、実施例1と同様の条件において、収容容器60が収容部10の上端部から上に飛び出る距離を一定(本実施例においては飛び出る距離を10mmとした)にして、傾斜部20を反転させた後の収容物の取り出しやすさを評価した。その結果を表3に示す。収容部10に指をほとんど入れなくても取り出せるものを「〇」とし、指を入れれば取り出せるものを「△」とし、指を奥まで入れないと取り出せない、又は、取り出せないものを「×」として、3段階で評価した。ただし、表1(実施例1)で評価の低かった(△1,△2、×)サンプルについては、実施例2の取り出し評価は行わず、未評価(-)とした。尚、本発明の範囲に入る実施例は、表3において太枠で囲んだ。
【0042】
【0043】
表3によれば、距離aが35mm以上70mm以下、かつ、距離bが20mm以上40mm以下の範囲においては、取り出しやすさ「〇」であり、容易に収容容器60を取り出せることが分かった。距離aが上記範囲(35mm~70mm)内にあっても、距離bが50mm以上の場合、表1に示されるように、反転性は悪くないものの〔サンプル例(a:51.5mm,b:50mm)、(a:61.5mm,b:50mm)〕、傾斜部20を反転させた際の反転位置が収容容器60の上部よりも上方に位置したため、指を入れて収容容器60を取り出す必要があった。そのため、取り出し評価としては、「△」とした。逆に、距離bが範囲内(20mm~40mm)であっても、距離aが範囲外〔サンプル例(a:34mm,b:37mm)〕のものでは、表1の反転性の評価は悪くなかったが、上記と同じく、反転位置が収容容器上部より上方に位置したため、取り出し性の評価は「△」となった。また、距離aが35mmより小さい場合の2例〔サンプル例(a:31.5mm,b:23mm)、(a:34.0mm,b:23mm)〕は、取り出し性は悪くないものの、表1の反転性の評価が◎ではなかったため、反転性に取り出し性を加味した総合的な評価として、範囲外とした。
【0044】
(実施例3)
次に、収容容器60を取り出す際に医療用容器1が切断される位置を変えた場合における反転のしやすさについて評価を行った。傾斜部20の条件は、距離aを41.5mmとし、距離bを27mmとし、角度θを33°とし、収容部10の幅dを27mmとして試験体を4つ作製した。
図8に示すように、傾斜部20と矩形部30との境界部BDをラインAとし、ラインAからそれぞれ上方に7mm毎にラインB~ラインDを設定した。それぞれのラインで作製した試験体を切断して、反転のしやすさについて評価を行った。
その結果、ラインA~ラインCで切断したものは、傾斜部を容易に反転させることができたが、ラインDで切断したものは、傾斜部を反転させるのが困難であった。
【0045】
以上、本発明の医療用容器の好ましい各実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、細胞を収容する収容容器60を収容物として収容したが、これに限らない。即ち、ピンセット等の医療に用いられる器具を収容物として収容してもよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、収容用開口部40を、医療用容器1の上辺の全長に亘って形成したが、これに限らない。即ち、収容用開口部を、医療用容器の上辺における収容部に対応する部分のみに形成し、上辺における矩形部に対応する部分は接合しておいてもよい。これにより、収容用開口部の開口長さを短くできるので、収容物を収容する場合における医療用容器の内部の汚染のリスクを低減できる。
【0047】
また、上述の実施形態では、収容部10の上端部の幅dは、幅方向WDについて収容部10の上端部の端部と矩形部30の端部との距離aよりも小さい例を示したがこれに限らない。例えば、
図7に示す医療用容器1Aのように、収容部10Aの上端部の幅dが、幅方向WDについて収容部10Aの上端部の端部と矩形部30Aの端部との距離aよりも大きくてもよい。これにより幅の大きい収容物60Aも収容することが可能である。
【0048】
また、上述の実施形態では、収容部10の形状は、高さ方向HDに延びる矩形形状としたがこれに限らない。所望の収容容器の形状に合わせて、収納可能な形状に収容部を形成すればよい。また、収容部10の高さ方向HDの大きさは、収容容器60の長さよりも小さい場合を示したが、これに限らない。即ち、収容容器60全体が収容部に収容されるように、収容部を構成してもよい。この場合は、不潔野の担当者が収容部の下部を持ち上げることにより、収容容器60を収容部10から飛び出させることができる。このようにして、清潔野の担当者が収容容器60を容易に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A 医療用容器
10,10A 収容部
20,20A 傾斜部
30 矩形部
40 収容用開口部
50 シート状部材
60,60A 収容容器(収容物)