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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B41J2/01 307
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020049647
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021146635
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 大輔
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/111365(WO,A1)
【文献】特開2017-045004(JP,A)
【文献】特開2008-062534(JP,A)
【文献】特開2002-148550(JP,A)
【文献】登録実用新案第3221875(JP,U)
【文献】特開2016-168798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087905(US,A1)
【文献】国際公開第2019/044031(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/109833(WO,A1)
【文献】特開2018-114722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着スペースを有するヘッドベースと、
インクを吐出する記録ヘッドを含むヘッドユニットと、
前記装着スペースに挿入された前記ヘッドユニットの前記装着スペース内での位置を調整するための調整機構と、を備え、
前記調整機構は、
ガイドねじと、
前記ガイドねじに螺合された軸穴を有し、前記ガイドねじに対して回転することにより、前記ガイドねじの軸方向に移動する移動部材と、
前記移動部材を回転させるための操作部材と、
前記移動部材に当接する第1当接部および前記ヘッドユニットに当接する第2当接部を有する調整部材と、を含み、
前記第2当接部は、前記第1当接部と当接する前記移動部材が前記ガイドねじの軸方向に移動することにより、前記ヘッドユニットに向かう方向および前記ヘッドユニットから離れる方向に移動することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記調整機構は、ホルダーをさらに含み、
前記ヘッドベースは、位置決めピンを有し、
前記ホルダーは、前記位置決めピンが挿入された第1位置決め穴を有するとともに、前記ガイドねじ、前記操作部材および前記移動部材を保持し、
前記調整部材は、前記位置決めピンが挿入された第2位置決め穴を有し、前記ホルダーには保持されず、前記第2位置決め穴に挿入された前記位置決めピンによって保持されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第2当接部は、前記第1当接部に当接する前記移動部材が前記ガイドねじの軸方向に移動すると、前記位置決めピンを支点として、前記ヘッドユニットに向かう方向および前記ヘッドユニットから離れる方向に回動することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第2当接部と前記第2位置決め穴との距離は、前記第1当接部と前記第2位置決め穴との距離よりも短いことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記調整機構は、第1歯車をさらに含み、
前記第1歯車は、前記操作部材に連結され、前記操作部材が回転すると、前記操作部材の回転角度と同じ角度だけ回転し、
前記第1歯車よりも歯数が多い第2歯車が前記移動部材として用いられ、
前記第1歯車に前記第2歯車が噛み合わされていることにより、前記移動部材としての前記第2歯車が前記操作部材の回転に連動して回転することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記調整機構は、ストッパー部材をさらに含み、
前記操作部材は、円盤状であり、
前記操作部材の外周面は、円周方向に所定ピッチで配置された複数の凹部を有し、
前記ストッパー部材は、複数の前記凹部のうち所定位置にある前記凹部に嵌め込まれる凸部を有し、
前記凸部は、前記操作部材に向かう方向に付勢されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記調整機構は、付勢部材をさらに含み、
前記付勢部材は、前記調整部材を付勢することにより、前記第1当接部を前記移動部材に当接させることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出するヘッドユニットを備えるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドを含むヘッドユニットを備える。ヘッドユニットは、ヘッドユニット用のベース部材に装着される。たとえば、ベース部材は、装着スペースを有する。ヘッドユニットは、装着スペースに挿入される。これにより、ベース部材にヘッドユニットが装着された状態となる。
【0003】
ここで、通常では、装着スペースへのヘッドユニットの挿入後、装着スペース内でのヘッドユニットの位置調整が行われる。たとえば、ヘッドユニットを押圧してヘッドユニットの位置を微調整する機構を設けるのが一般的である。
【0004】
調整対象物を押圧することによって位置調整を行う機構は種々提案されている。たとえば、特許文献1には、光走査装置において、ビーム光を偏向させる反射部材の位置を微調整するための機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-97196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、種々の部材によって調整機構が構成される。一例を挙げると、調整部材および減速回転部材である。特許文献1の調整部材は、ウオームに螺合するホイールからなるギア部、調整対象物に向かって突出し調整対象物に当接する当接部、および、ネジに螺合するネジ穴部などが一体的に形成された部材である。また、特許文献1の減速回転部材は、段付き円柱の小径部にウオームからなる減速ギア部が形成された部材である。
【0007】
このように、微小な調整を行うための調整機構の構成部材は形状が複雑になり易い。このため、金型を起こして部材を作成する必要がある。その結果、コストアップに繋がる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、装着スペース内でのヘッドユニットの位置調整を簡単な構成で行うことが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録装置は、装着スペースを有するヘッドベースと、インクを吐出する記録ヘッドを含むヘッドユニットと、装着スペースに挿入されたヘッドユニットの装着スペース内での位置を調整するための調整機構と、を備える、調整機構は、ガイドねじと、ガイドねじに螺合された軸穴を有し、ガイドねじに対して回転することにより、ガイドねじの軸方向に移動する移動部材と、移動部材を回転させるための操作部材と、移動部材に当接する第1当接部およびヘッドユニットに当接する第2当接部を有する調整部材と、を含む。第2当接部は、第1当接部と当接する移動部材がガイドねじの軸方向に移動することにより、ヘッドユニットに向かう方向およびヘッドユニットから離れる方向に移動する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成では、装着sペース内でのヘッドユニットの位置調整を簡単な構成で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態によるプリンターの概略図である。
図2】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドユニットに含まれる記録ヘッドを示す図である。
図3】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドユニットがヘッドベースに装着された状態を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドユニットを前側上方から見た斜視図である。
図5】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドユニットを後側上方から見た斜視図である。
図6】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドユニットの後側位置決め部の平面図である。
図7】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドユニットの前側位置決め部の平面図である。
図8】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドベースの斜視図である。
図9】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドベースの後側装着部の斜視図である。
図10】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドベースの前側装着部の斜視図である。
図11】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドベースにヘッドユニットが装着された状態の斜視図(ヘッドユニットの後方部分の斜視図)である。
図12】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドベースにヘッドユニットが装着された状態の斜視図(ヘッドユニットの前方部分の斜視図)である。
図13】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドベースの装着スペースにヘッドユニットが挿入されるときのボールプランジャーの状態を示す図である。
図14】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構を装着スペースの外側から見た斜視図である。
図15】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構を装着スペースの内側から見た斜視図である。
図16】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構の斜視図である。
図17】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構の斜視図である。
図18】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構の斜視図である。
図19】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構の斜視図である。
図20】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構の分解斜視図である。
図21】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構の分解斜視図である。
図22】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドベースに対する調整機構の取付位置を示す図である。
図23】本発明の一実施形態によるプリンターのヘッドベースに対する調整機構の取付位置を示す図である。
図24】本発明の一実施形態によるプリンターの調整機構による位置調整について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態によるインクジェット記録装置について、インクジェット記録式のプリンターを例にとって説明する。
【0013】
<プリンターの構成>
図1に示すように、本実施形態のプリンター100は、給紙カセット10Aおよび手差しトレイ10Bを備える。また、プリンター100は、排出トレイ20を備える。給紙カセット10Aのシート搬送方向下流側(図1では、給紙カセット10Aの右側)には、給紙カセット用のシート給送装置11が配置される。手差しトレイ10Bのシート搬送方向下流側(図1では、手差しトレイ10Bの左側)には、手差しトレイ用のシート給送装置12が配置される。
【0014】
シート給送装置11は、給紙カセット10AにセットされたシートSを1枚ずつ第1シート搬送路P1に供給する。シート給送装置12は、手差しトレイ10BにセットされたシートSを1枚ずつ第1シート搬送路P1に供給する。シート搬送路P1に供給されたシートSは、レジストローラー対13に向けて搬送される。
【0015】
レジストローラー対13にシートSが到達した時点では、レジストローラー対13は回転を停止している。回転停止中のレジストローラー対13にシートSが突き当たることにより、シートSの斜行が矯正される。
【0016】
レジストローラー対13のシート搬送方向下流側には、第1搬送ベルト14が設置される。第1搬送ベルト14は、無端ベルトである。第1搬送ベルト14は、駆動ローラーおよび従動ローラーによって張架される。駆動ローラーが回転することにより、第1搬送ベルト14が周回する。
【0017】
レジストローラー対13は、第1搬送ベルト14に向けてシートSを搬送する。シートSは第1搬送ベルト14上に至る。第1搬送ベルト14には、ベルトの厚み方向に貫通する吸引孔が形成される。また、第1搬送ベルト14の外周面の裏側(第1搬送ベルト14の外周の内側)には、吸引ユニットが設置される。吸引ユニットは、負圧を発生させ、第1搬送ベルト14上のシートSを吸引する。これにより、第1搬送ベルト14上のシートSが搬送される。
【0018】
第1搬送ベルト14によるシートSの搬送中、記録部30によって、第1搬送ベルト14上のシートSに対する印刷が行われる。記録部30は、4つのヘッドユニット3を備える。4つのヘッドユニット3は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックに対応する。各ヘッドユニット3は、ヘッドベース4に装着される(図2参照)。ヘッドベース4に各ヘッドユニット3を装着することにより、各ヘッドユニット3が第1搬送ベルト14の上方に配置された状態となる。
【0019】
各ヘッドユニット3は、第1搬送ベルト14によるシートSの搬送中(第1搬送ベルト14上にシートSがあるとき)、第1搬送ベルト14に向けてインクを吐出する。各ヘッドユニット3から吐出されるインクはシートSに着弾する。これにより、シートSに画像が印刷される。
【0020】
各ヘッドユニット3には、図2に示すように、対応する色のインクを吐出する記録ヘッド310が3つずつ設けられる。各記録ヘッド310は、ノズル面を有する。ノズル面には、インクを吐出するための複数のノズル310aが形成される。
【0021】
図1に戻り、第1搬送ベルト14のシート搬送方向下流側には、第2搬送ベルト15が設置される。第2搬送ベルト15は、無端ベルトである。第2搬送ベルト15は、駆動ローラーおよび従動ローラーによって張架される。駆動ローラーが回転することにより、第2搬送ベルト15が周回する。
【0022】
第1搬送ベルト14は、第2搬送ベルト15に向けてシートSを搬送する。すなわち、印刷済みのシートSが第2搬送ベルト15上に至る。第2搬送ベルト15には、ベルトの厚み方向に貫通する吸引孔が形成される。また、第2搬送ベルト15の外周面の裏側(第2搬送ベルト15の外周の内側)には、吸引ユニットが設置される。吸引ユニットは、負圧を発生させ、第2搬送ベルト15上のシートSを吸引する。これにより、第2搬送ベルト15上のシートSが搬送される。
【0023】
第2搬送ベルト15のシート搬送方向下流側には、デカーラー16が設置される。第2搬送ベルト15は、デカーラー16に向けてシートSを搬送する。シートSにカールが生じている場合には、デカーラー16によってカールが矯正される。
【0024】
デカーラー16を通過したシートSは第2シート搬送路P2に供給される。第2シート搬送路P2に沿って搬送されるシートSは排出トレイ20に排出される。
【0025】
両面印刷の実行時には、デカーラー16を通過したシートSが反転搬送路P3に引き込まれる。反転搬送路P3に沿って搬送されるシートSは、スイッチバックされ、第1シート搬送路P1(第1搬送ベルト14のシート搬送方向上流側)に戻される。これにより、シートSの表裏面の向きが反転した状態となる。その後、第1搬送ベルト14によってシートSが再度搬送される。このときには、シートSの両面のうち未印刷面が上向きとなるので、シートSの未印刷面に対する印刷が行われる。
【0026】
第2搬送ベルト15の下方には、メンテナンスユニット17が設置される。メンテナンスユニット17は、記録部30のメンテナンスを行う。メンテナンスユニット17は、記録部30のメンテナンスを行うとき、記録部30の下方に移動する。
【0027】
<ヘッドユニットの装着>
本実施形態では、図3に示すように、4色分のヘッドユニット3が単一のヘッドベース4に装着される。ヘッドベース4には、4色分のヘッドユニット3にそれぞれ対応する4つの装着スペース40(図8参照)が設けられる。各ヘッドユニット3は、ヘッドベース4への装着時、ヘッドベース4の上方から、対応する装着スペース40に挿入される。なお、図3は、プリンター100の前方右上から見た場合の斜視図である。
【0028】
以下の説明では、シート搬送方向をX方向と称し、X方向と水平に直交する方向をY方向と称する。X方向およびY方向の両方と直交する方向をZ方向と称する。なお、Z方向は、プリンター100の上下方向である。Y方向は、プリンター100の前後方向である。X方向は、プリンター100の左右方向である。
【0029】
各ヘッドユニット3は、図4および図5に示すように、後方位置決め部31および前方位置決め部32を有する。後方位置決め部31は、Y方向の後側に位置する。前方位置決め部32は、Y方向の前側に位置する。
【0030】
後方位置決め部31および前方位置決め部32は、それぞれ、金属製の部材からなる。後方位置決め部31の平面図(Z方向の上側から見た図)を図6に示し、前方位置決め部32の平面図(Z方向の上側から見た図)を図7に示す。
【0031】
後方位置決め部31は、Z方向に貫通する位置決め穴311を有する。位置決め穴311は、平面的に見て、扇状に形成される。具体的には、位置決め穴311は、Y方向の後側から前側に向かって放射状に広がる一対の内側面311aを有する。
【0032】
ヘッドベース4は、図8に示すように、後方プレート4Rおよび前方プレート4Fを有する。後方プレート4Rおよび前方プレート4Fは、それぞれ、金属性である。
【0033】
後方プレート4Rおよび前方プレート4Fは、それぞれの主面(板厚方向に垂直な面)がY方向に互いに対向するよう配置される。後方プレート4Rおよび前方プレート4Fの各主面で挟まれた領域は4つに区画される。当該4つの領域がそれぞれ装着スペース40となる。
【0034】
以下の説明では、後方プレート4Rのうち、4つの装着スペース40にそれぞれ対応する4つの部分41を後方装着部41と称する。また、前方プレート4Fのうち、4つの装着スペース40にそれぞれ対応する4つの部分42を前方装着部42と称する。後方装着部41の拡大図を図9に示し、前方装着部42の拡大図を図10に示す。
【0035】
各後方装着部41は、Z方向に立設する位置決めピン411を有する。各位置決めピン411は、対応する装着スペース40に挿入されたヘッドユニット3の位置決めに使用される。
【0036】
各ヘッドユニット3のヘッドベース4への装着時、各ヘッドユニット3はヘッドベース4の上方(Z方向の上側)から対応する装着スペース40に挿入される。このとき、各ヘッドユニット3の位置決め穴311(図6参照)に位置決めピン411が挿入される。これにより、図3に示す状態となる。なお、図3において、符号Cを付した部材はフレキシブルプリント基板であり、各ヘッドユニット3の装着時には邪魔にならないよう退けることができる。
【0037】
ここで、各ヘッドユニット3は、対応する装着スペース40内において、押圧部材で押圧される。これにより、各ヘッドユニット3は、対応する装着スペース40内で固定される(ガタつかないように保持される)。押圧部材として使用されるのはボールプランジャーである。ボールプランジャーは、円筒状のプランジャーケース、プランジャーケースの内側から外側に一部が突出するようプランジャーケース内に挿入されたボール、および、プランジャーケースの内側から外側に向かってプランジャーケース内のボールを付勢するスプリングを含む。
【0038】
以下に、各ヘッドユニット3の保持機構について具体的に説明する。なお、保持機構の構成は各ヘッドユニット3で共通である。したがって、ここでは、1つのヘッドユニット3に着目して保持機構の構成を説明し、他のヘッドユニット3の保持機構については構成の説明を省略する。
【0039】
ヘッドユニット3は、装着スペース40内において、押圧部材としての第1ボールプランジャー51によってY方向に押圧される。第1ボールプランジャー51は、図9に示すように、後方装着部41に取り付けられる。すなわち、第1ボールプランジャー51のプランジャーケースが後方装着部41に取り付けられる。第1ボールプランジャー51のボール51aは、Y方向の後側から前側に向かって突出する。なお、第1ボールプランジャー51の設置数は2つである。位置決めピン411のX方向の左側および右側にそれぞれ1つずつ第1プランジャー51が設置される。
【0040】
第1ボールプランジャー51のボール51aは、図11に示すように、後方位置決め部31に当接する。これにより、ヘッドユニット3がY方向の後側から前側に向かって押圧された状態となる。このようにヘッドユニット3が押圧されることにより、位置決め穴311の一対の内側面311aが位置決めピン411に当接した状態が維持される。これにより、ヘッドベース4に対してヘッドユニット3を回転させて位置調整する際の、回転軸が定まる。また、2つの第1ボールプランジャー51の間に配置された、位置決め穴311と位置決めピン411とで、回転軸を定めていることにより、回転軸をよりずれ難くできる。
【0041】
また、ヘッドユニット3は、装着スペース40内において、押圧部材としての第2ボールプランジャー52によってX方向に押圧される。第2ボールプランジャー52は、図7に示すように、前方位置決め部32に取り付けられる。すなわち、第2ボールプランジャー52のブランジャーケースが前方位置決め部32に取り付けられる。第2ボールプランジャー52のボール52aは、X方向の左側から右側に向かって突出する。
【0042】
第2ボールプランジャー52のボール52aは、図12に示すように、前方装着部42に当接する。これにより、ヘッドユニット3がX方向の右側から左側に向かって押圧された状態となる。このようにヘッドユニット3が押圧されることにより、後述する調整機構6の一部に前方位置決め部32が当接した状態が維持される。
【0043】
さらに、ヘッドユニット3は、装着スペース40内において、第3ボールプランジャー53によってZ方向に押圧される。第3ボールプランジャー53は、図6および図7に示すように、後方位置決め部31および前方位置決め部32にそれぞれ取り付けられる。すなわち、後方位置決め部31および前方位置決め部32のそれぞれに第3ボールプランジャー53のプランジャーケースが取り付けられる。後方位置決め部31および前方位置決め部32の各第3ボールプランジャー53のボール53aは、Z方向の下側から上側に向かって突出する。
【0044】
後方位置決め部31の第3プランジャー53のボール53aは、図11に示すように、後方装着部41に取り付けられた押え板41aに当接する。前方位置決め部32の第3ボールプランジャー53のボール53aは、図12に示すように、前方装着部42に取り付けられた押え板42aに当接する。これにより、ヘッドユニット3がZ方向の上側から下側に向かって押圧された状態となる。なお、押え板41aおよび42aは、それぞれ、装着スペース40へのヘッドユニット3の挿入後、ヘッドベース4に取り付けられる。
【0045】
ヘッドベース4へのヘッドユニット3の装着時には、ヘッドユニット3はZ方向の上側から装着スペース40に挿入されるので、図13上図に示すように、第1ボールプランジャー51のボール51aの上側部分にヘッドユニット3が当接する。そして、図13上図に示す状態から、ヘッドユニット3がさらに下方に挿入されると、第1ボールプランジャー51のボール51aはプランジャーケースの内側に向かって押し込まれ、図13下図に示す状態となる。
【0046】
また、図示しないが、ヘッドベース4へのヘッドユニット3の装着時には、第2ボールプランジャー52のボール52aの下側部分にヘッドベース4(前方装着部42)が当接する。その状態から、ヘッドユニット3がさらに下方に挿入されると、第2ボールプランジャー52のボール52aがプランジャーケースの内側に向かって押し込まれる。
【0047】
このように、ヘッドユニット3を装着スペース40に挿入するときには、第1ボールプランジャー51のボール51aおよび第2ボールプランジャー52のボール52aがそれぞれプランジャーケースの内側に押し込まれるので、ヘッドユニット3の挿入作業に支障をきたすことはない。
【0048】
<ヘッドユニットの位置調整>
本実施形態では、図3に示すように、ヘッドベース4の各装着スペース40に調整機構6が設置される。各調整機構6は、対応する装着スペース40に挿入されたヘッドユニット3の位置を調整するための機構である。
【0049】
以下に、各ヘッドユニット3に対応する調整機構6について具体的に説明する。なお、調整機構6の構成は各ヘッドユニット3で共通である。したがって、ここでは、1つのヘッドユニット3に着目して対応する調整機構6の構成を説明し、他のヘッドユニット3に対応する調整機構6については構成の説明を省略する。
【0050】
まず、調整機構6の取付位置について説明する。調整機構6は、対応する装着スペース40の前方装着部42に取り付けられる。調整機構6が前方装着部42に取り付けられると、図14および図15に示す状態となる。なお、図14は、装着スペース40の外側から前方装着部42を見た場合の図である。図15は、装着スペース40の内側から前方装着部42を見た場合の図である。すなわち、調整機構6の後述する各部材は装着スペース40の内側に配置される。
【0051】
次に、図16図21を参照し、調整機構6の構成について詳細に説明する。調整機構6は、ホルダー61を備える。ホルダー61は、金属製の板材に対して板金加工(切断、穴あけおよび折り曲げなど)を行うことで得られる。ホルダー61は、部材保持部611および部材保持部611に対して垂直に折り曲げられた取付部612を有する。調整機構6が前方装着部42に取り付けられた状態では、部材保持部611の主面(板厚方向に垂直な面)が前方装着部42の主面(板厚方向に垂直な面)とY方向に対向する。すなわち、部材保持部611の主面の法線方向はY方向である。
【0052】
部材保持部611には、板厚方向に貫通する円形状の連結穴611aが形成される。連結穴611aには、円盤状に形成された連結部材62が嵌め込まれる。連結部材62は、金属製の板材に対して板金加工(レーザー切断加工など)を行うことで得られる。連結部材62は、連結穴611aに嵌め込まれた状態で回転可能である(はめあい公差がすきまばめである)。
【0053】
なお、連結部材62の厚みはホルダー61の板厚よりも大きい。たとえば、連結部材62の一部がY方向の後側に突出するよう連結部材62が連結穴611aに嵌め込まれる。連結部材62の突出した部分には、円環状のスペーサー63が嵌められる。スペーサー63は、金属製の板材に対してレーザー切断加工などを行うことで得られる。
【0054】
部材保持部611のY方向の前側には、円盤状の操作部材70が配置される。操作部材70は、金属製の板材に対してレーザー切断加工などを行うことで得られる。
【0055】
操作部材70の外周面には、円弧状に凹む凹部70aが複数形成される。複数の凹部70aは、円周方向に所定ピッチで配列される。
【0056】
また、操作部材70の円中心には、板厚方向に貫通する六角穴70bが形成される。六角穴70bには六角レンチ(図示せず)が挿入される。
【0057】
部材保持部611のY方向の後側には、小径歯車71が配置される。小径歯車71は「第1歯車」に相当する。小径歯車71は、金属製の板材に対してレーザー切断加工などを行うことで得られる。
【0058】
小径歯車71は、部材保持部611を挟んで操作部材70とY方向に対向する。小径歯車71は、操作部材70との間に連結部材62を挟み込んだ状態で、スプリングピン64を介して、操作部材70に連結される。これにより、操作部材70が回転すると、操作部材70の回転角度と同じ角度だけ小径歯車71が回転する。なお、小径歯車71に形成されたピン穴(スプリングピン64が挿入される穴)とスプリングピン64とのはめあい公差がすきまばめである場合には、ビス65を用いて、小径歯車71と操作部材70とを締結してもよい。
【0059】
また、部材保持部611のY方向の後側には、大径歯車72が配置される。大径歯車72は、「移動部材」および「第2歯車」に相当する。大径歯車72は、金属製の板材に対してレーザー切断加工を行うことで得られる。
【0060】
大径歯車72は、小径歯車71に噛み合わされる。このため、操作部材70が回転すると、小径歯車71と共に大径歯車72が回転する。すなわち、大径歯車72は、操作部材70の回転に連動して回転する。なお、大径歯車72は小径歯車71よりも歯数が多い。したがって、大径歯車72の回転は減速される。
【0061】
部材保持部611には、ガイドねじ73が取り付けられる。ガイドねじ73は市販のビスである。ガイドねじ73は、部材保持部611のY方向の前側から、部材保持部611に形成されたねじ穴611bを介して、部材保持部611のY方向の後側に突出する。すなわち、ガイドねじ73の軸方向(ガイドねじ73のねじ軸が延伸する方向)はY方向である。大径歯車72の軸穴72aは、ガイドねじ73に螺合される。たとえば、ガイドねじ73の緩み止めにはスプリングワッシャー66が用いられる。スプリングワッシャー66に代えて菊座が用いられてもよい。
【0062】
大径歯車72の軸穴72aにガイドねじ73が螺合されていることにより、大径歯車72が回転すると、大径歯車72がガイドねじ73の軸方向に移動する。すなわち、操作部材70が回転すると、大径歯車72がガイドねじ73の軸方向に移動する。
【0063】
また、部材保持部611のY方向の前側には、ストッパー部材74が配置される。ストッパー部材74は、金属製の板材に対して板金加工(切断、穴あけおよび折り曲げなど)を行うことで得られる。ストッパー部材74は、スプリングピン67を介して、部材保持部611に固定される。
【0064】
ストッパー部材74は、弾性変形可能に形成される。ストッパー部材74は、凸部74aを有する。ストッパー部材74の凸部74aは、操作部材70の複数の凹部70aのうち所定位置にある凹部70aに嵌め込まれる。ストッパー部材74の凸部74bは、ストッパー部材74の弾性力により、操作部材70に向かう方向に付勢されている。
【0065】
操作部材70のいずれかの凹部70aにストッパー部材74の凸部74aが嵌め込まれた状態から操作部材70が回転すると、操作部材70の凹部70a間に凸部74aが乗り上げる(ストッパー部材74が変形する)。その後、操作部材70がさらに回転すると(別の凹部70aが所定位置に至ると)、所定位置に至った別の凹部70aに凸部74aが嵌め込まれる。ストッパー部材74は、操作部材70の回転止めとして機能する。
【0066】
また、部材保持部611には、バネ75が取り付けられる。バネ75は「付勢部材」に相当する。バネ75の用途については後述する。
【0067】
取付部612には、2つの位置決め穴612aおよび612bが形成される。一方の位置決め穴612aは基準穴であり、他方の位置決め穴612bは副基準穴(X方向に長い長穴)である。位置決め穴612aは「第1位置決め穴」に相当する。また、取付部612には、取付穴612cが形成される。
【0068】
調整機構6は、梃部材80をさらに備える。梃部材80は「調整部材」に相当する。梃部材80は、金属製の板材に対してレーザー切断加工などを行うことで得られる。梃部材80は、平面的に見て(Z方向から見て)、略L字形状に形成される。言い換えると、梃部材80は、平面的に見て、X方向に延びる第1部分81およびY方向に延びる第2部分82を有する。なお、梃部材80の板厚方向はZ方向である。
【0069】
梃部材80の第1部分81には、Y方向の前側に突出する第1当接部811が形成される。第1当接部811は、第1部分81のうち、第2部分82との連結部83とは反対側の端部(X方向の左側)に位置する。
【0070】
梃部材80の第2部分82には、板厚方向に貫通する位置決め穴80aが形成される。位置決め穴80aは「第2位置決め穴」に相当する。位置決め穴80aは、第2部分82のうち、第1部分81との連結部83とは反対側の端部(Y方向の前側)に位置する。
【0071】
また、第2部分82には、X方向の右側に突出する第2当接部821が形成される。第2当接部821は、第2部分82のうち、位置決め穴80aと連結部83との間の部分に位置する。第2当接部821は、梃部材80のうち、第1当接部811の形成位置よりも位置決め穴80aに近い位置に形成される。換言すれば、第2当接部821と位置決め穴80aとの距離は、第1当接部811と位置決め穴80aとの距離よりも短い。
【0072】
また、第2部分82には、スプリングピン68A、68Bおよび68Cが取り付けられる。スプリングピン68A~68Cは、それぞれ、第2部分82からZ方向の下側に向かって突出する。スプリングピン68Aは、Y方向の位置が第2当接部821の形成位置と略一致するよう配置される。スプリングピン68Bおよび68Cは、それぞれ、スプリングピン68AのY方向の後側および前側に配置される。
【0073】
梃部材80は、取付部612の下側に配置される。そして、梃部材80は、ホルダー61とは別に前方装着部42に取り付けられる。梃部材80はホルダー61には取り付けられていない。ホルダー61は、操作部材70、小径歯車71、ガイドねじ73(ガイドねじ73に螺合された大径歯車72)、ストッパー部材74およびバネ75などを保持するが、梃部材80は保持しない。
【0074】
ヘッドベース4の前方装着部42には、図22および図23に示すように、位置決めピン43および44が設置される。位置決めピン43および44は、Z方向に立設する。また、前方装着部42には、ねじ穴42aが形成される。
【0075】
ヘッドベース4の位置決めピン43は、梃部材80の位置決め穴80aに挿入される。梃部材80は、位置決め穴80aに挿入された位置決めピン43によって保持される。なお、梃部材80は、ヘッドベース4に対してねじ止めされていない。このため、梃部材80は、位置決めピン43を支点に回動可能である(位置決めピン43が梃部材80の回転軸として機能する)。
【0076】
また、ヘッドベース4の位置決めピン43は、ホルダー61(取付部612)の位置決め穴612aに挿入される。ヘッドベース4の位置決めピン44は、ホルダー61の位置決め穴612bに挿入される。また、ホルダー61は、ヘッドベース4に対してねじ止めされる。これにより、調整機構6がヘッドベース4に取り付けられた状態となる。
【0077】
調整機構6がヘッドベース4に取り付けられた状態では、図24に示すように、梃部材80の第1当接部811が大径歯車72に当接する。また、ホルダー61に取り付けられたバネ75により、梃部材80のスプリングピン68AがX方向の左側に付勢される。言い換えると、バネ75は、第1当接部811が位置決めピン43を支点に大径歯車72に向かう方向に回動するよう梃部材80を付勢する。これにより、第1当接部811と大径歯車72との当接が維持される。
【0078】
調整機構6がヘッドベース4に取り付けられた状態において、大径歯車72が回転することによってY方向の後側に移動すると、バネ75の付勢力に抗して、第1当接部811が大径歯車72と共にY方向の後側に移動する(Z方向の上側から見て、第1当接部811が位置決めピン43を支点に時計回りに回動する)。なお、大径歯車72が回転することによってY方向の前側に移動しても、バネ75の付勢力により、第1当接部811が大径歯車72と共にY方向の前側に移動する(Z方向の上側から見て、第1当接部811が位置決めピン43を支点に反時計回りに回転する)。これにより、大径歯車72に対する第1当接部811の当接が維持される。
【0079】
また、調整機構6がヘッドベース4に取り付けられた状態では、梃部材80の第2当接部821がヘッドユニット3の前方位置決め部32に当接する。梃部材80のうち、ヘッドユニット3に当接するのは第2当接部821だけであり、他の部分はヘッドユニット3に当接しない。
【0080】
第2当接部821は、第1当接部811がY方向の後側に移動することにより、X方向の右側に移動する(Z方向の上側から見て、第2当接部821が位置決めピン43を支点に時計回りに回動する)。一方で、第2当接部821は、第1当接部811がY方向の前側に移動することにより、X方向の左側に移動する(Z方向の上側から見て、第2当接部821が位置決めピン43を支点に反時計回りに回動する)。すなわち、第2当接部821は、ヘッドユニット3(前方位置決め部32)に向かう方向およびヘッドユニット3(前方位置決め部32)から離れる方向に移動可能である。
【0081】
ここで、ヘッドユニット3は、第1ボールプランジャー51、第2ボールプランジャー52および第3ボールプランジャー53によって押圧されている。しかし、ヘッドユニット3は、ヘッドベース4にはねじ止めされていない。さらに、ヘッドユニット3(後方位置決め部31)の位置決め穴311には位置決めピン411が挿入されている(図11参照)。
【0082】
このため、ヘッドユニット3の前方位置決め部32が設けられた部分(以下、ヘッドユニット3の前方部分と称する)は、第2当接部821のX方向への移動に連動してX方向に移動する。言い換えると、ヘッドユニット3の前方部分は、位置決めピン411を支点に回動する。
【0083】
具体的には、ヘッドユニット3の前方部分は、第2当接部821がX方向の右側に移動すると、第2ボールプランジャー52の押圧力に抗して、X方向の右側に移動する(Z方向の上側から見て、位置決めピン411を支点に反時計回りに回動する)。一方で、ヘッドユニット3の前方部分は、第2当接部821がX方向の左側に移動すると、第2ボールプランジャー52の押圧力により、X方向の左側に移動する(Z方向の上側から見て、位置決めピン411を支点に時計回りに回動する)。
【0084】
なお、梃部材80の第2当接部821のX方向への移動(回動)は、操作部材70の回転に連動する。操作部材70は、ストッパー部材74の機能により、フリーに回転しないようになっている。このため、ヘッドユニット3の前方部分は第2ボールプランジャー52によってX方向の左側に押圧されているが、ヘッドユニット3の前方部分のX方向の移動(回動)は梃部材80によって規制される。すなわち、ヘッドユニット3は、装着スペース40内で固定された状態となる。
【0085】
このような調整機構6を設けることにより、装着スペース40内でのヘッドユニット3の位置を調整(補正)することができる。言い換えると、ヘッドユニット3のY方向の傾きを補正することができる。さらに言い換えると、主走査ラインの傾きを補正することができる。ヘッドユニット3の位置調整は操作部材70を操作する(操作部材70を六角レンチで回す)ことによって行われる。すなわち、ヘッドユニット3の位置調整は人(たとえば、メーカーの調整担当者)によって行われる。
【0086】
以下に、一例として、ヘッドユニット3の前方部分をX方向の右側に移動させる場合に行われる操作ついて説明する。
【0087】
まず、ヘッドユニット3の位置調整を行うときには、操作部材70の六角穴70aに六角レンチを嵌め込む必要がある。ここで、図14および図15に示すように、操作部材70は、装着スペース40の内側に配置される。このため、前方装着部42のうち六角穴70aとY方向に対向する部分には、板厚方向に貫通する作業穴42bが形成される。これにより、装着スペース40の外側から、作業穴42bを介して、六角穴70aに六角レンチを嵌め込むことができる。六角穴70aに嵌め込んだ六角レンチを回すことにより、操作部材70を回転させることができる。
【0088】
ヘッドユニット3の前方部分をX方向の右側に移動させる場合、装着スペース40の外側から見て、作業者は操作部材70を反時計回りに回転させる。これにより、小径歯車71も反時計回りに回転する。大径歯車72は時計回りに回転する。なお、大径歯車72の軸穴72aにはガイドねじ73が螺合されている。これにより、大径歯車72が回転すると、大径歯車72がガイドねじ73の軸方向に移動する。大径歯車72の移動方向は、大径歯車72の回転方向によって変わる。
【0089】
大径歯車72が時計回りに回転した場合(操作部材70が反時計回りに回転した場合)には、大径歯車72がY方向の後側に移動する。すなわち、大径歯車72は、梃部材80の第1当接部811を後側に向かって押圧する方向に移動する。
【0090】
梃部材80は、第1当接部811がY方向の後側に押圧されると、Z方向の上側から見て、位置決めピン43を支点に時計回りに回動する。すなわち、梃部材80の第2当接部821がX方向の右側に移動する。これにより、ヘッドユニット3の前方部分が第2当接部821によってX方向の右側に押圧される。ヘッドユニット3の前方部分は、第2ボールプランジャー52の押圧力に抗して、X方向の右側に移動する。なお、ヘッドユニット3の前方部分をX方向の左側に移動させたい場合には、操作部材70を時計回りに回転させればよい。
【0091】
ここで、操作部材70の外周面の凹部70aが円周方向に30°ピッチで形成されているとする。すなわち、凹部70aの形成数が12個であるとする。また、小径歯車71の歯数が18であり、大径歯車72の歯数が24であるとする。また、ガイドねじ73のねじピッチが0.5mmであるとする。また、梃部材80の梃比が0.5であるとする。
【0092】
この例では、ヘッドユニット3の位置を調整する作業を行うとき、作業者は操作部材70を正確に30°ずつ回転させることができる。操作部材70が30°回転すると、回転前にストッパー部材74の凸部74aが嵌め込まれていた凹部70aに対して円周方向に隣接する凹部70aに凸部74aが嵌め込まれる。これにより、作業者が操作部材70を30°回転させるごとに、作業者にクリック感が付与される。
【0093】
操作部材70を30°回転させた場合(操作部材70を1クリック分だけ回転させた場合)、小径歯車71に噛み合う大径歯車72は22.5°回転する(減速される)。大径歯車72が22.5°回転した場合には、ガイドねじ73のねじピッチが0.5mmであるので、大径歯車72がガイドねじ73の軸方向に0.03125mm移動する。また、梃部材80の梃比が0.5であるので、梃部材80の第2当押部821がX方向に0.015625mm移動する。ヘッドユニット3の前方部分は、第2当接部821のX方向への移動量に応じた量だけX方向に移動する。
【0094】
本実施形態のプリンター100(インクジェット記録装置)は、上記のように、装着スペース40を有するヘッドベース4と、インクを吐出する記録ヘッド310を含むヘッドユニット3と、装着スペースに40挿入されたヘッドユニット3の装着スペース40内での位置を調整するための調整機構6と、を備える。調整機構6は、ガイドねじ73と、ガイドねじ73に螺合された軸穴72aを有し、ガイドねじ73に対して回転することにより、ガイドねじ73の軸方向に移動する大径歯車72(移動部材、第2歯車)と、大径歯車72を回転させるための操作部材70と、大径歯車72に当接する第1当接部811およびヘッドユニット3に当接する第2当接部821を有する梃部材80(調整部材)と、を含む。
【0095】
また、調整機構6は、小径歯車71(第1歯車)を含む。小径歯車71は、操作部材70に連結され、操作部材70が回転すると、操作部材70の回転角度と同じ角度だけ回転する。そして、小径歯車71に大径歯車72が噛み合わされていることにより、大径歯車72が操作部材70の回転に連動して回転する。
【0096】
梃部材80は、ヘッドベース4に設けられた位置決めピン43を支点に回動可能となっている。第2当接部821は、第1当接部811に当接する大径歯車72がガイドねじ73の軸方向に移動すると、ヘッドユニット3の前方部分に向かう方向およびヘッドユニット4の前方部分から離れる方向に回動する。
【0097】
本実施形態の構成では、作業者の操作によって回転する操作部材70に小径歯車71を連結し、ガイドねじ73に螺合された軸穴72aを有する大径歯車72に小径歯車71を噛み合わせることにより、簡単な構成で、ヘッドユニット3の前方部分に当接する梃部材80の第2当接部821をX方向に移動させることができる。第2当接部821がX方向に移動すると、ヘッドユニット3の前方部分がX方向に移動する(ヘッドユニット3の前方部分が位置決めピ411を支点に回動する)。すなわち、本実施形態の構成では、簡単な構成で、ヘッドユニット3の位置調整(傾き調整)を行うことができる。
【0098】
ここで、操作部材70、小径歯車71、大径歯車72および梃部材80など、調整機構6の主要部材は金属製の板材をレーザー切断することによって得られる。また、ガイドねじ73は市販のビスである。このため、新規で金型を起こさなくても、調整機構6を得ることができる。これにより、コストアップを抑制することができる。
【0099】
また、大径歯車72は小径歯車71よりも歯数が多い。さらに、梃部材80の第2当接部821は、第1当接部811の形成位置よりも、位置決めピン43が挿入される位置決め穴80a(第2位置決め穴)に近い位置に形成される。これにより、操作部材70の回転角に対して、梃部材80の第2当接部821の移動量を小さくすることができる。その結果、容易に、かつ、精度良く、ヘッドユニット3の前方部分の位置を微調整することができる。
【0100】
また、本実施形態では、上記のように、位置決めピン43が挿入される位置決め穴612a(第1位置決め穴)がホルダー61に形成され、位置決めピン43が挿入される位置決め穴80a(第2位置決め穴)が梃部材80に形成される。これにより、ホルダー61の位置決めが位置決めピン43を基準に行われ、梃部材80の位置決めも位置決めピン43を基準に行われる。その結果、累積公差を小さくすることができる。
【0101】
また、本実施形態では、上記のように、操作部材70の回り止めとして機能するストッパー部材74が設置される。ここで、操作部材70には複数の凹部70aが所定ピッチで形成され、所定位置にある凹部70aに嵌め込まれる凸部74aがストッパー部材74に形成される。この構成では、作業者は確実に、所定ピッチずつ操作部材70を回転させることができる。これにより、操作部材70を細かく回転させることができない(微調整を行うことができない)という不都合が発生するのを抑制することができる。また、作業者からすると、操作部材70を所定ピッチ回すごとにクリック感が得られるので、作業性が良い(操作部材70をどれだけ回したかが分かりやすい)。
【0102】
また、本実施形態では、上記のように、梃部材80がバネ75によって常に付勢されている。これにより、梃部材80の第1当接部811が大径歯車72から離れるのを抑制することができる。
【0103】
また、本実施形態では、上記のように、ヘッドユニット3は、装着スペース40内において、第1ボールプランジャー51、第2ボールプランジャー52および第3ボールプランジャー53によって押圧され、それによって固定されている。このような方法を用いてヘッドユニット3を固定することにより、作業者によって操作部材70に対する操作が行われたとき、各ボールプランジャーのボールがプランジャーケースの内側に向かって移動するとともに、各ボールプランジャーのボールが転がるので、ヘッドユニット3をスムーズに移動させることができる。
【0104】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0105】
3 ヘッドユニット
4 ヘッドベース
6 調整機構
40 装着スペース
43 位置決めピン
61 ホルダー
70 操作部材
70a 凹部
71 小径歯車(第1歯車)
72 大径歯車(移動部材、第2歯車)
72a 軸穴
73 ガイドねじ
74 ストッパー部材
74a 凸部
75 バネ(付勢部材)
80 梃部材(調整部材)
80a 位置決め穴(第2位置決め穴)
310 記録ヘッド
612a 位置決め穴(第1位置決め穴)
811 第1当接部
821 第2当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図19
図20
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図22
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図24