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特許7435110ポリヒドロキシイミド、ポリマー溶液、感光性樹脂組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシイミド、ポリマー溶液、感光性樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20240214BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240214BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08G73/10
C08L79/08
G03F7/038 504
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020049970
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147544
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】川崎 律也
(72)【発明者】
【氏名】山川 雄大
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/077364(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129546(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/123066(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/046180(WO,A1)
【文献】特開2010-031150(JP,A)
【文献】特開2013-015701(JP,A)
【文献】特開2020-033277(JP,A)
【文献】国際公開第2005/113647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00-73/26
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
G03C 3/00
G03F 7/004-7/04、7/06、7/075-7/115、
7/16-7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し構造を有するポリヒドロキシイミド。
【化1】
(一般式(1)中、Xは-C(CH -または-C(CF -を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。Yは下記一般式(1a)および下記一般式(1b)で表される基から選択され、複数存在するYは同一でも異なっていてもよい。nは平均値で2~500の数である。)
【化2】
(一般式(1a)中、 、R およびR が水素原子を示す。一般式(1b)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示し、R の少なくとも1つおよびR の少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基であり、複数存在するR同士、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリヒドロキシイミドと有機溶媒とを含むポリマー溶液。
【請求項3】
下記一般式(1)で表される繰り返し構造を有するポリヒドロキシイミドと、架橋剤と、感光剤と、を含む、感光性樹脂組成物。
【化3】
(一般式(1)中、Xは単結合、-SO -、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、または炭素数1~5の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。Yは下記一般式(1a)および下記一般式(1b)で表される基から選択され、複数存在するYは同一でも異なっていてもよい。nは平均値で2~500の数である。)
【化4】
(一般式(1a)中、R およびR は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR 同士、複数存在するR 同士は同一でも異なっていてもよい。R は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR 同士は同一でも異なっていてもよい。一般式(1b)中、R およびR は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR 同士、複数存在するR 同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【請求項4】
請求項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物で構成される硬化膜。
【請求項5】
請求項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂膜を備える半導体装置。
【請求項6】
層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に設けられた、請求項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂膜と、
前記樹脂膜中に埋設された再配線と、
を備えることを特徴とする、請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
下記一般式(a)で表されるビスアミノフェノールと、下記一般式(b)で表される酸無水物とを、100℃以上250℃以下の温度下でイミド化する工程を含む、一般式(1)で表される繰り返し構造を有するポリヒドロキシイミドの製造方法。
【化5】
(一般式(a)中、Xは-C(CH -または-C(CF を示す。)
【化6】
(一般式(b)中、Yは下記一般式(1a)および(1b)で表される基から選択される。)
【化7】
(一般式(1a)中、 、R およびR が水素原子を示す。一般式(1b)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示し、R の少なくとも1つおよびR の少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基であり、複数存在するR同士、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【化8】
(一般式(1)中、Xは一般式(a)と同義であり、Yは一般式(b)と同義である。nは平均値で2~500の数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシイミド、ポリマー溶液、感光性樹脂組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、高い機械強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性を有しているため、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料、カラーフィルタ等の電子材料用薄膜として広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、所定の構造を備えるヒドロキシポリイミドと、ジアゾナフトキノン化合物とを含むポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、酸二無水物、ジアミン、及び1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンを含むポリイミド前駆体が開示されている。
特許文献3~5には、所定の構造を備えるポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献6には、ポリマーと、フェノール性低分子化合物と、重合性基を有する低分子化合物と、光重合開始剤を含有することを特徴とするネガ型感光性樹脂前駆体組成物が開示されている。
特許文献7には、有機溶剤可溶性のポリイミド樹脂と、酸発生剤とを含むポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-249454号公報
【文献】特開2013-241607号公報
【文献】特開2013-95894号公報
【文献】特開2014-172994号公報
【文献】国際公開第2010/110335号
【文献】特開2004-133435号公報
【文献】国際公開第2010/071100号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~7に記載の従来の技術においては、感光性樹脂組成物から得られたポリイミドを含むフィルム等の機械強度に改善の余地があった。
【0007】
また、ポリイミド前駆体と有機溶剤とを含む感光性樹脂組成物を塗布硬化してフィルムを調製する場合、ポリイミド前駆体からポリイミドに変化する際の硬化収縮によりフィルムの寸法安定性に影響を与える。ポリイミドを有機溶剤に溶解した感光性樹脂組成物であれば、得られる樹脂の硬化収縮は抑制されるが、従来のポリイミドは有機溶剤への溶解性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の構造を備えるポリヒドロキシイミドであれば上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシイミドを提供することができる。
【化1】
(一般式(1)中、Xは単結合、-SO-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、または炭素数1~5の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。Yは下記一般式(1a)および下記一般式(1b)で表される基から選択され、複数存在するYは同一でも異なっていてもよい。nは平均値で2~500の数である。)
【化2】
(一般式(1a)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。一般式(1b)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
本発明によれば、前記ポリヒドロキシイミドと有機溶媒とを含むポリマー溶液を提供することができる。
本発明によれば、前記ポリヒドロキシイミドと、架橋剤と、感光剤と、を含む、感光性樹脂組成物を提供することができる。
本発明によれば、前記感光性樹脂組成物の硬化物で構成される硬化膜を提供することができる。
本発明によれば、前記感光性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂膜を備える半導体装置を提供することができる。
本発明によれば、下記一般式(a)で表されるビスアミノフェノールと、下記一般式(b)で表される酸無水物とを、100℃以上250℃以下の温度下でイミド化する工程を含む、一般式(1)で表されるポリヒドロキシイミドの製造方法を提供することができる。
【化3】
(一般式(a)中、Xは単結合、-SO-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、または炭素数1~5の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基を示す。)
【化4】
(一般式(b)中、Yは下記一般式(1a)および(1b)で表される基から選択される。)
【化5】
(一般式(1a)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。一般式(1b)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。*は結合手を示す。)
【化6】
(一般式(1)中、Xは一般式(a)と同義であり、Yは一般式(b)と同義である。nは平均値で2~500の数である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリヒドロキシイミドは、機械強度に優れたフィルム等の硬化物を得ることができ、さらに溶剤への溶解性に優れており前駆体の状態でワニスとする必要がないことから、寸法安定性に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の半導体装置の概略断面図である。
図2】実施例3で得られたポリマー溶液からなるフィルムの歪み-応力曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0013】
<ポリヒドロキシイミド>
本実施形態のポリヒドロキシイミドは、下記一般式(1)で表される。
【0014】
【化7】
【0015】
一般式(1)中、Xは単結合、-SO-、-C(=O)-、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、または炭素数1~5の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基を示し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。
Xは、本発明の効果の観点から、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキレン基、または炭素数1~5の直鎖または分岐のフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0016】
Yは下記一般式(1a)および下記一般式(1b)で表される基から選択され、複数存在するYは同一でも異なっていてもよい。
nは平均値で2~500の数である。
【0017】
【化8】
【0018】
一般式(1a)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。
およびRは、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましく水素原子である。
【0019】
は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。
は、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましく水素原子である。
【0020】
一般式(1b)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基を示し、複数存在するR同士、複数存在するR同士は同一でも異なっていてもよい。
およびRは、本発明の効果の観点から、好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはRの少なくとも1つおよびRの少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基であり、さらに好ましくは3つのRが炭素数1~3のアルキル基であり1つのRが水素原子であり、かつ3つのRが炭素数1~3のアルキル基であり1つのRが水素原子であり、特に好ましくは3つのRがメチル基であり1つのRが水素原子であり、かつ3つのRがメチル基であり1つのRが水素原子でる。
*は結合手を示す。
【0021】
本実施形態において、前記一般式(1)で表されるポリヒドロキシイミドとしては
Xが、-C(CH-または-C(CF-を示し、
Yが、前記一般式(1a)のR、RおよびRが水素原子である基、または前記一般式(1b)のRおよびRが水素原子または炭素数1~3のアルキル基である基を示し、Rの少なくとも1つおよびRの少なくとも1つは炭素数1~3のアルキル基である、
組み合わせであることが好ましい。
当該組み合わせであれば、より機械強度に優れたフィルムを提供することができる。
【0022】
本実施形態のポリヒドロキシイミドの重量平均分子量は、10,000~300,000であり、好ましくは20,000~200,000である。
【0023】
当該構造を備える本実施形態のポリヒドロキシイミドは、機械強度に優れたフィルムを提供することができる。この理由は明らかでないが、ポリマー鎖間の強いパッキングにより、ポリマー鎖の滑りぬけによる破断が抑えられ、伸びが向上し、可とう性に優れるためと推察される。
また、本実施形態のポリヒドロキシイミドは、溶剤への溶解性に優れており前駆体の状態でワニスとする必要がないことから、ポリヒドロキシイミドを含むワニスを調製することができ、当該ワニスから寸法安定性に優れたフィルム等の硬化物を得ることができる。
【0024】
<ポリヒドロキシイミドの製造方法>
本実施形態の一般式(1)で表されるポリヒドロキシイミドの製造方法は、
下記一般式(a)で表されるビスアミノフェノールと、下記一般式(b)で表される酸無水物とを、100℃以上250℃以下の温度下でイミド化する工程、を含む。
本実施形態によれば、有機溶剤に対する溶解性に優れたポリヒドロキシイミドを簡便な方法で合成することができる。
【0025】
【化9】
【0026】
一般式(a)中、Xは一般式(1)と同義である。
【0027】
【化10】
【0028】
一般式(b)中、Yは下記一般式(1a)および(1b)で表される基から選択される。
【0029】
【化11】
【0030】
一般式(1a)中、R、RおよびRは、一般式(1)のYにおける一般式(1a)のR、RおよびRと同義であり、一般式(1b)中、RおよびRは、一般式(1)のYにおける一般式(1b)のRおよびRと同義である。*は結合手を示す。
【0031】
得られるポリヒドロキシイミドの分子量を制御するために、エンドキャップ剤として少量の酸無水物や芳香族アミンを添加して反応を行うことも可能である。
エンドキャップ剤である酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸等が、芳香族アミンとしては、p-メチルアニリン、p-メトキシアニリン、p-フェノキシアニリン等が挙げられる。これらエンドキャップ剤である酸無水物、又は芳香族アミンの添加量は5モル%以下であることが好ましい。5モル%を越えると、得られるポリヒドロキシイミドの分子量が著しく低下し、耐熱性や機械的特性に問題を生じる。
【0032】
イミド化反応における酸無水物とビスアミノフェノールの当量比は、得られるポリヒドロキシイミドの分子量を決定する重要な因子である。一般に、ポリマーの分子量と機械的性質の間に相関があることは良く知られており、分子量が大きいほど機械的性質が優れている。従って、実用的に優れた強度のポリヒドロキシイミドを得るためには、ある程度高分子量であることが必要である。本発明では、使用する酸無水物とビスアミノフェノールの当量比を特に制限はしないが、ビスアミノフェノールに対する酸無水物の当量比が0.90~1.06の範囲にあることが好ましい。0.90未満では、分子量が低くて脆くなるため機械強度が弱くなる。また、1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸してガス発生、発泡の原因となり好ましくないことがある。
なお、機械特性を改善する観点からは、ビスアミノフェノールに対する酸無水物の当量比が上記範囲を外れる場合であっても、樹脂を側鎖架橋させることで見かけの分子量を上げることもできる。
【0033】
当該工程(イミド化反応工程)は、有機溶媒中で、公知の方法で行うことができる。
有機溶媒としては、γ-ブチルラクトン(GBL)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒類が挙げられ、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。非極性溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類が挙げられる。混合溶媒における非極性溶媒の割合については、溶媒の溶解度が低下し、反応して得られるポリアミド酸樹脂が析出しない範囲であれば、攪拌装置能力や溶液粘度等の樹脂性状に応じて任意に設定することができる。
【0034】
反応温度は、0℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下で30分~2時間程度反応させた後、100℃以上250℃以下、好ましくは120℃以上200℃以下で1~5時間程度反応させる。
【0035】
以上の工程により本実施形態のポリヒドロキシイミドを含む反応溶液を得ることができ、さらに必要に応じて有機溶媒等で希釈し、ポリマー溶液(塗布用ワニス)として使用することができる。有機溶剤としては、反応工程において例示したものを用いることができ、反応工程と同じ有機溶剤であってもよく、異なる有機溶剤であってもよい。
また、この反応溶液を貧溶媒中に投入してポリイミド樹脂を再沈殿析出させて未反応モノマーを除去し、乾燥固化させたもの再び有機溶剤に溶解し精製品として用いることもできる。特に不純物や異物が問題になる用途では、再び有機溶剤に溶解して濾過精製ワニスとすることが好ましい。
【0036】
ポリマー溶液中(100重量%)のポリヒドロキシイミド濃度は、特に限定されないが、10~30重量%程度である。
【0037】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述のポリヒドロキシイミドと、架橋剤と、感光剤と、を含む。ポリヒドロキシイミドは、ポリマー溶液(ワニス)として添加することができる。
【0038】
(架橋剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、ポリヒドロキシイミドと熱によって反応可能な架橋剤(熱架橋剤)を含む。これにより、感光性樹脂組成物をポストベークした硬化物について、引張破断伸びといった機械的特性を向上できる。また、感光性樹脂組成物により形成される樹脂膜の感度を向上できる観点からも好ましい。
【0039】
架橋剤としては、具体的には、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール(パラキシレングリコール)、1,3,5-ベンゼントリメタノール、4,4-ビフェニルジメタノール、2,6-ピリジンジメタノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール、4,4'-メチレンビス(2,6-ジアルコキシメチルフェノール)などのメチロール基を有する化合物;
フロログルシドなどのフェノール類;1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸メチル、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメトキシメチルフェノール)などのアルコキシメチル基を有する化合物;
ヘキサメチロールメラミン、ヘキサブタノールメラミン等から代表されるメチロールメラミン化合物;
ヘキサメトキシメラミンなどのアルコキシメラミン化合物;
テトラメトキシメチルグリコールウリルなどのアルコキシメチルグリコールウリル化合物;
メチロールベンゾグアナミン化合物、ジメチロールエチレンウレアなどのメチロールウレア化合物;
ジシアノアニリン、ジシアノフェノール、シアノフェニルスルホン酸などのシアノ化合物;
1,4-フェニレンジイソシアナート、3,3'-ジメチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナートなどのイソシアナート化合物;
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂型エポキシ樹脂などのエポキシ基含有化合物;
N,N'-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N'-メチレンジマレイミドなどのマレイミド化合物などが挙げられる。熱架橋剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
感光性樹脂組成物中の熱架橋剤の含有量の上限値は、ポリヒドロキシイミド100質量部に対して、例えば、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましく、10質量部以下であることが一層好ましい。これにより、熱架橋剤がフェノール性水酸基など溶媒和する官能基を備える場合でも、ポストベーク後の耐薬品性が低下することを抑制できる。
【0041】
また、感光性樹脂組成物中の熱架橋剤の含有量の下限値は、ポリヒドロキシイミド100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましく、5質量部以上であることが一層好ましく、8質量部以上であることが殊更好ましい。
【0042】
(感光剤)
感光剤としては、光エネルギーを吸収することにより酸を発生する光酸発生剤を用いることができる。
【0043】
光酸発生剤としては、具体的には、ジアゾキノン化合物;ジアリールヨードニウム塩;2-ニトロベンジルエステル化合物;N-イミノスルホネート化合物;イミドスルホネート化合物;2,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン化合物;ジヒドロピリジン化合物などが挙げられる。これらの中でも、感光性ジアゾキノン化合物を用いることが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の感度を向上することができる。したがって、パターンの精度を向上でき、外観を向上させることができる。なお、光酸発生剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を含むことができる。
【0044】
また、感光性樹脂組成物がポジ型である場合には、感光剤として、上記具体例に加えて、トリアリールスルホニウム塩;スルホニウム・ボレート塩などのオニウム塩などを併せて用いてもよい。これにより、感光性樹脂組成物の感度をさらに向上できる。
感光剤として好ましく用いることができるジアゾキノン化合物の具体例を以下に示す。
【0045】
【化12】
【0046】
【化13】
【0047】
【化14】
【0048】
nは、1以上、5以下の整数である。
【0049】
【化15】
【0050】
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
以上の各ジアゾキノン化合物において、Qは、下式(a)、下式(b)及び下式(c)に表される構造または、水素原子である。ただし、各ジアゾキノン化合物のQのうち少なくとも1つは、下式(a)、下式(b)及び下式(c)によって表される構造である。
【0053】
ジアゾキノン化合物のQとしては、下式(a)または下式(b)を含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の透明性を向上することができる。したがって、感光性樹脂組成物の外観を向上することができる。
【0054】
【化18】
【0055】
感光性樹脂組成物中の感光剤の含有量の下限値は、ポリヒドロキシイミドを100質量部としたとき、例えば、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物は適切な感度を発揮することができる。
【0056】
また、感光性樹脂組成物中の感光剤の含有量の上限値は、ポリヒドロキシイミドを100質量部としたとき、例えば、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。これにより、感光性樹脂組成物は適切に硬化し、プリベーク後、及びポストベーク後においてAl、Cuなどの金属に対して密着性を発現できる。
【0057】
(溶媒)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、溶媒として、ウレア化合物、または、非環状構造のアミド化合物を含むことができる。溶媒としては、例えば、ウレア化合物を含むことが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物と、Al、Cuといった金属との密着性をより向上できる。
【0058】
なお、本明細書において、ウレア化合物とは、尿素結合、すなわち、ウレア結合を備える化合物を示す。また、アミド化合物とは、アミド結合を備える化合物、すなわちアミドを示す。なお、アミドとは、具体的には、1級アミド、2級アミド、3級アミドが挙げられる。
【0059】
また、本実施形態において、非環状構造とは、化合物の構造中に炭素環、無機環、複素環などの環状構造を備えないことを意味する。環状構造を備えない化合物の構造としては、例えば、直鎖状構造、分岐鎖状構造などが挙げられる。
【0060】
ウレア化合物、非環状構造のアミド化合物としては、分子構造中の窒素原子の数が多いものが好ましい。具体的には、分子構造中の窒素原子の数が2個以上であることが好ましい。これにより、孤立電子対の数を増やすことができる。したがって、Al、Cuといった金属との密着性を向上できる。
【0061】
ウレア化合物の構造としては、具体的には、環状構造、非環状構造などが挙げられる。ウレア化合物の構造としては、上記具体例のうち、非環状構造であることが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物と、Al、Cuといった金属との密着性を向上できる。この理由は以下のように推測される。非環状構造のウレア化合物は、環状構造のウレア化合物と比べて、配位結合を形成しやすいと推測される。これは非環状構造のウレア化合物は、環状構造のウレア化合物と比べて、分子運動の束縛が少なく、さらに、分子構造の変形の自由度が大きいためと考えられる。したがって、非環状構造のウレア化合物を用いた場合、強力な配位結合を形成でき、密着性を向上できる。
【0062】
ウレア化合物としては、具体的には、テトラメチル尿素(TMU)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラブチル尿素、N,N'-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメトキシ-1,3-ジメチル尿素、N,N'-ジイソプロピル-O-メチルイソ尿素、O,N,N'-トリイソプロピルイソ尿素、O-tert-ブチル-N,N'-ジイソプロピルイソ尿素、O-エチル-N,N'-ジイソプロピルイソ尿素、O-ベンジル-N,N'-ジイソプロピルイソ尿素などが挙げられる。ウレア化合物としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ウレア化合物としては、上記具体例のうち例えば、テトラメチル尿素(TMU)、テトラブチル尿素、1,3-ジメトキシ-1,3-ジメチル尿素、N,N'-ジイソプロピル-O-メチルイソ尿素、O,N,N'-トリイソプロピルイソ尿素、O-tert-ブチル-N,N'-ジイソプロピルイソ尿素、O-エチル-N,N'-ジイソプロピルイソ尿素及びO-ベンジル-N,N'-ジイソプロピルイソ尿素からなる群より選択される1種または2種以上を用いることが好ましく、テトラメチル尿素(TMU)を用いることがより好ましい。これにより、強力な配位結合を形成でき、密着性を向上できる。
【0063】
非環状構造のアミド化合物としては、具体的には、3-メトキシ-N、N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジブチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0064】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、溶媒として、ウレア化合物、非環状構造のアミド化合物のほかに、窒素原子を備えない溶媒を含んでもよい。
【0065】
窒素原子を備えない溶媒としては、具体的には、エーテル系溶媒、アセテート系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ラクトン系溶媒、カーボネート系溶媒、スルホン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。窒素原子を備えない溶媒としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
上記エーテル系溶媒としては、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0067】
上記アセテート系溶媒としては、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテートなどが挙げられる。
【0068】
上記アルコール系溶媒としては、具体的には、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、2-エチルヘキサノール、ブタンジオール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
上記ケトン系溶媒としては、具体的には、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、2-ヘプタノンなどが挙げられる。
上記ラクトン系溶媒としては、具体的には、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。
上記カーボネート系溶媒としては、具体的には、エチレンカルボナート、炭酸プロピレンなどが挙げられる。
上記スルホン系溶媒としては、具体的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどが挙げられる。
上記エステル系溶媒としては、具体的には、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネートなどが挙げられる。
上記芳香族炭化水素系溶媒としては、具体的には、メシチレン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0069】
溶媒中のウレア化合物及び非環状構造のアミド化合物の含有量の下限値としては、溶媒を100質量部としたとき、例えば、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが更に好ましく、50質量部以上であることが一層好ましく、70質量部以上であることが殊更好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の硬化物と、Al、Cuといった金属との密着性をより向上できる。
【0070】
また、溶媒中のウレア化合物及び非環状構造のアミド化合物の含有量の下限値としては、溶媒を100質量部としたとき、例えば、100質量部以下とすることができる。溶媒中には、ウレア化合物及び非環状構造のアミド化合物の含有量が多いことが、密着性向上の観点から好ましい。
【0071】
(界面活性剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0072】
界面活性剤としては、限定されず、具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;エフトップEF301、エフトップEF303、エフトップEF352(新秋田化成社製)、メガファックF171、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF177、メガファックF444、メガファックF470、メガファックF471、メガファックF475、メガファックF482、メガファックF477(DIC社製)、フロラードFC-430、フロラードFC-431、ノベックFC4430、ノベックFC4432(スリーエムジャパン社製)、サーフロンS-381、サーフロンS-382、サーフロンS-383、サーフロンS-393、サーフロンSC-101、サーフロンSC-102、サーフロンSC-103、サーフロンSC-104、サーフロンSC-105、サーフロンSC-106、(AGCセイミケミカル社製)などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤;オルガノシロキサン共重合体KP341(信越化学工業社製);(メタ)アクリル酸系共重合体ポリフローNo.57、95(共栄社化学社製)などが挙げられる。
【0073】
これらのなかでも、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。パーフルオロアルキル基を有するフッ素系界面活性剤としては、上記具体例のうち、メガファックF171、メガファックF173、メガファックF444、メガファックF470、メガファックF471、メガファックF475、メガファックF482、メガファックF477(DIC社製)、サーフロンS-381、サーフロンS-383、サーフロンS-393(AGCセイミケミカル社製)、ノベックFC4430及びノベックFC4432(スリーエムジャパン社製)から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0074】
また、界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤(例えばポリエーテル変性ジメチルシロキサンなど)も好ましく用いることができる。シリコーン系界面活性剤として具体的には、東レダウコーニング社のSHシリーズ、SDシリーズおよびSTシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越化学工業株式会社のKPシリーズ、日油株式会社のディスフォーム(登録商標)シリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどを挙げることができる。
【0075】
感光性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量の上限値は、感光性樹脂組成物の全体(溶媒を含む)に対して1質量%(10000ppm)以下であることが好ましく、0.5質量%(5000ppm)以下であることであることがより好ましく、0.1質量%(1000ppm)以下であることが更に好ましい。
【0076】
また、感光性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量の下限値は、特には無いが、界面活性剤による効果を十分に得る観点からは、例えば、感光性樹脂組成物の全体(溶媒を含む)に対して0.001質量%(10ppm)以上である。
界面活性剤の量を適当に調整することで、他の性能を維持しつつ、塗布性や塗膜の均一性などを向上させることができる。
【0077】
(酸化防止剤)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、酸化防止剤をさらに含んでもよい。酸化防止剤
としては、フェノ-ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびチオエ-テル系酸化防止剤から選択される1種以上を使用できる。酸化防止剤は、感光性樹脂組成物により形成される樹脂膜の酸化を抑制できる。
【0078】
フェノ-ル系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2-オクチルチオ-4,6-ジ(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-s-トリアジン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチル-6-ブチルフェノール)、2,-2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-s-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-t-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-t-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4-8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-ビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコ-ルビス〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、1,1'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(6-(1-メチルシクロヘキシル)-4-メチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス(2-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルプロピオニロキシ)1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルシクロヘキシル、スチレネイティッドフェノール、2,4-ビス((オクチルチオ)メチル)-5-メチルフェノール、などが挙げられる。
【0079】
リン系酸化防止剤としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペ
ンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイト、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、ビス-(2,6-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ミックスドモノandジ-ノニルフェニルホスファイト)、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシカルボニルエチル-フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-オクタデシルオキシカルボニルエチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0080】
チオエ-テル系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ビス(2-メチル-4-(3-n-ドデシル)チオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィド、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリル)チオプロピオネートなどが挙げられる。
【0081】
(フィラー)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、フィラーを更に含んでいてもよい。フィラーとしては、感光性樹脂組成物によってなる樹脂膜に求められる機械的特性、熱的特性に応じて適切な充填材を選択できる。
フィラーとしては、具体的には、無機フィラーまたは有機フィラーなどが挙げられる。
【0082】
上記無機フィラーとしては、具体的には、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ、微粉シリカなどのシリカ;アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイトなどの金属化合物;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維などが挙げられる。無機フィラーとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
上記有機フィラーとしては、具体的には、オルガノシリコーンパウダー、ポリエチレンパウダーなどが挙げられる。有機フィラーとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
(感光性樹脂組成物の調製)
本実施形態における感光性樹脂組成物を調製する方法は限定されず、感光性樹脂組成物に含まれる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。
例えば、上記各成分を、溶媒に混合して溶解することにより調製することができる。
【0085】
(感光性樹脂組成物)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、該感光性樹脂組成物をAl、Cuといった金属を備える面に対して塗工し、次いで、プリベークすることで乾燥させ樹脂膜を形成し、次いで、露光及び現像することで所望の形状に樹脂膜をパターニングし、次いで、樹脂膜をポストベークすることで硬化させ硬化膜を形成することで使用される。
【0086】
なお、上記永久膜を作製する場合、プリベークの条件としては、例えば、温度90℃以上130℃以下で、30秒間以上1時間以下の熱処理とすることができる。また、ポストベークの条件としては、例えば、温度150℃以上350℃以下で、30分間以上10時間以下の熱処理とすることができる。
【0087】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の粘度は、所望の樹脂膜の厚みに応じて適宜設定することができる。感光性樹脂組成物の粘度の調整は、溶媒を添加することでできる。なお、調整の際、溶媒中のウレア化合物及び非環状構造のアミド化合物の含有量を一定に保つ必要がある。
【0088】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の粘度の上限値は、例えば、2000mPa・s以下でもよく、1800mPa・s以下でもよく、1500mPa・s以下でもよい。また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物の粘度の下限値は、所望の樹脂膜の厚みに応じて、例えば、10mPa・s以上でもよく、50mPa・s以上でもよい。
【0089】
本実施形態の感光性樹脂組成物またはポリマー溶液から得られるフィルム(樹脂膜)は、テンシロン試験機による引張試験により測定された伸び率が、最大値30~200%、好ましくは50~150%であり、平均値15~150%、好ましくは20~100%である。
【0090】
本実施形態の感光性樹脂組成物またはポリマー溶液から得られるフィルムは、引張強度が、30~300MPa、好ましくは50~200MPaとすることができる。
【0091】
このように、本実施形態のポリヒドロキシイミドは、機械強度に優れたフィルム等の硬化物を提供することができる。この理由は明らかでないが、ポリマー鎖間の強いパッキングにより、ポリマー鎖の滑りぬけによる破断が抑えられ、伸びが向上し、可とう性に優れるためと推察される。
【0092】
本実施形態のポリヒドロキシイミドは硬化収縮が抑制されており、当該ポリヒドロキシイミドからなるフィルムは、熱重量示差熱同時測定により測定した重量減少温度(Td5)が、200℃以上、好ましくは300℃以上とすることができる。
【0093】
本実施形態のポリヒドロキシイミドからなるフィルムは、硬化収縮が抑制されており、線熱膨張率(CTE)は200ppm、好ましくは100ppm以下とすることができる。
【0094】
(用途)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、永久膜、レジストなどの半導体装置用の樹脂膜を形成するために用いられる。これらの中でも、プリベーク後の感光性樹脂組成物及びAlパッドの密着性向上と、現像時の感光性樹脂組成物の残渣の発生の抑制とをバランスよく発現する観点、ポストベーク後の感光性樹脂組成物の硬化膜と、金属との密着性を向上する観点、加えて、ポストベーク後の感光性樹脂組成物の耐薬品性を向上する観点から、永久膜を用いる用途に用いられることが好ましい。
【0095】
なお、本実施形態において、樹脂膜は、感光性樹脂組成物の硬化膜を含む。すなわち、本実施形態にかかる樹脂膜とは、感光性樹脂組成物を硬化させてなるものである。
【0096】
上記永久膜は、感光性樹脂組成物に対してプリベーク、露光及び現像を行い、所望の形状にパターニングした後、ポストベークすることによって硬化させることにより得られた樹脂膜で構成される。永久膜は、半導体装置の保護膜、層間膜、ダム材などに用いることができる。
【0097】
上記レジストは、例えば、感光性樹脂組成物をスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の方法で、レジストにとってマスクされる対象に塗工し、感光性樹脂組成物から溶媒を除去することにより得られた樹脂膜で構成される。
【0098】
本実施形態に係る半導体装置の一例を図1に示す。
本実施形態に係る半導体装置100は、上記樹脂膜を備える半導体装置とすることができる。具体的には、半導体装置100のうち、パッシベーション膜32、絶縁層42および絶縁層44からなる群の1つ以上を、本実施形態の硬化物を含む樹脂膜とすることができる。ここで、樹脂膜は、上述した永久膜であることが好ましい。
【0099】
半導体装置100は、たとえば半導体チップである。この場合、たとえば半導体装置100を、バンプ52を介して配線基板上に搭載することにより半導体パッケージが得られる。
【0100】
半導体装置100は、トランジスタ等の半導体素子が設けられた半導体基板と、半導体基板上に設けられた多層配線層(図示せず。)と、を備えている。多層配線層のうち最上層には、層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられた最上層配線34が設けられている。最上層配線34は、たとえば、アルミニウムAlにより構成される。また、層間絶縁膜30上および最上層配線34上には、パッシベーション膜32が設けられている。パッシベーション膜32の一部には、最上層配線34が露出する開口が設けられている。
【0101】
パッシベーション膜32上には、再配線層40が設けられている。再配線層40は、パッシベーション膜32上に設けられた絶縁層42と、絶縁層42上に設けられた再配線46と、絶縁層42上および再配線46上に設けられた絶縁層44と、を有する。絶縁層42には、最上層配線34に接続する開口が形成されている。再配線46は、絶縁層42上および絶縁層42に設けられた開口内に形成され、最上層配線34に接続されている。絶縁層44には、再配線46に接続する開口が設けられている。
【0102】
絶縁層44に設けられた開口内には、たとえばUBM(Under Bump Metallurgy)層50を介してバンプ52が形成される。半導体装置100は、たとえばバンプ52を介して配線基板等に接続される。
【0103】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例
【0104】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例においては以下の化合物を用いた。
【0105】
下記式で示される、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BAPとも示す)
【0106】
【化19】
【0107】
下記式で示される、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、BAFAとも示す)
【0108】
【化20】
【0109】
下記式で示される、4-{[4-(1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-イルカルボニロキシ)フェニル]シクロヘキシル}フェニル 1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-カルボキシレート(以下、BPZ-TMEとも示す)
【0110】
【化21】
【0111】
下記式で示される、4-[4-(1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-イルカルボニロキシ)-2,3,5-トリメチルフェニル]-2,3,6-トリメチルフェニル 1,3-ジオキソイソベンゾフラン-5-カルボキシレート(以下、TMPBP-TMEとも示す)
【0112】
【化22】
【0113】
[実施例1]
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、BAP3.87g(15.0mmol)と、BPZ-TME9.25g(15.0mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにγ-ブチロラクトン(以下、GBLとも示す)30.62gを加えた。
窒素を10分間通気した後、撹拌しつつ温度60℃まで上げ、1.5時間反応させた。その後、さらに180℃で3時間反応させることで、ビスアミノフェノールと酸無水物を重合させ、重合溶液を作製した。
得られた重合溶液を、アセトンで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液を水/メタノール=3/1の混合溶液に滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度120℃で真空乾燥することにより、下記式で表されるポリマーA 8.17gを得た。
ポリマーAをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは45400、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は2.04であり、下記式で表されるポリマーのnは平均値で25であった。
【0114】
【化23】
【0115】
[実施例2]
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、BAP3.87g(15.0mmol)と、TMPBP-TME9.28g(15.0mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにGBL30.69gを加えた。
窒素を10分間通気した後、撹拌しつつ温度60℃まで上げ、1.5時間反応させた。その後、さらに180℃で3時間反応させることで、ビスアミノフェノールと酸無水物を重合させ、重合溶液を作製した。
得られた重合溶液を、アセトンで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液を水/メタノール=3/1の混合溶液に滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度120℃で真空乾燥することにより、ポリマー10.15gを得た。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは142000、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は2.21であり、下記式で表されるポリマーBのnは平均値で73であった。
ポリマーBについて、IR測定を行ったところ、1480、1550、1670cm-1付近のアミド基由来のピークが消失しており、イミド化が完結していることを確認した。
【0116】
【化24】
【0117】
[実施例3]
はじめに、撹拌機および冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下BAFAとも示す)27.47g(75.0mmol)と、TMPBP-TME46.39g(75.0mmol)とを入れた。その後、反応容器に、さらにGBL295.46gを加えた。
窒素を10分間通気した後、撹拌しつつ温度60℃まで上げ、1.5時間反応させた。その後、さらに180℃で3時間反応させることで、ビスアミノフェノールと酸無水物を重合させ、重合溶液を作製した。
得られた重合溶液を、アセトンで希釈して希釈液を作製し、次いで、希釈液を水/メタノール=3/1の混合溶液に滴下することで、白色固体を析出させた。得られた白色固体を回収し、温度120℃で真空乾燥することにより、ポリマーC 66.62gを得た。
ポリマーをGPC測定したところ、重量平均分子量Mwは87200、多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.92であり、下記式で表されるポリマーのnは平均値で46であった。
ポリマーCについて、IR測定を行ったところ、1480、1550、1670cm-1付近のアミド基由来のピークが消失しており、イミド化が完結していることを確認した。
また、H-NMR測定を行ったところ、芳香族領域(6.9ppm~8.8ppm)にプロトン数に対応した面積比でピークを確認した。
【0118】
【化25】
【0119】
<測定法>
(ポリヒドロキシイミドの有機溶媒に対する溶解性)
実施例1~3で得られたポリヒドロキシイミドのγ-ブチルラクトン(GBL)、OK73(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:7/プロピレングリコールモノメチルエーテル:3の混合溶液)に対する溶解性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
(溶解性の評価基準)
○:ポリマーが5質量%以上溶解
△:ポリマーが1~5質量%溶解
×:ポリマー溶解が1質量%未満
(ポリヒドロキシイミドの有機溶媒に対する溶解速度)
【0120】
また、シクロペンタノンに対する溶解速度を下記方法により確認した。
実施例1~3のポリマーの12質量%GBL溶液(ポリマー溶液)を作製し、シリコンウェハ表面にスピンコートした。そして、120℃、3分間のプリベークにより、GBLを乾燥させた。以上により樹脂膜を形成した。
この樹脂膜のシクロペンタノンに対する溶解速度を、温度23℃の条件下測定した。溶解速度については、樹脂膜の初期厚みと、樹脂膜をシクロペンタノンに浸漬したときの樹脂膜が完全に溶解するまでの時間から算出した。
結果を表1に示す。
【0121】
(5%重量減少温度(Td5))
実施例1~3のポリマーの12質量%GBL溶液(ポリマー溶液)をシリコンウェハ表面にスピンコートし、120℃3分間のプリベーク後、170℃120分間、窒素下でのポストベークにより、フィルムを調製した。
熱重量示差熱同時測定により測定した。測定条件は、30ml/分の窒素気流下、昇温速度10℃/分とした。初期から5%の重量が減少した温度を測定し、5%重量減少温度(Td5)とした。結果を表1に示す。
【0122】
(線熱膨張率(CTE))
「5%重量減少温度(Td5)」に記載の方法と同様にして得られたフィルムから長さ13mm×幅5mmの短冊状試験片を切出した。チャック間距離10mmにて引張モードの熱機械測定を行い、熱膨張曲線から平均線熱膨張率(CTE、50℃~200℃)を求めた。結果を表1に示す。
【0123】
(ガラス転移温度:Tg)
「5%重量減少温度(Td5)」に記載の方法と同様にして得られたフィルムから長さ50mm×幅5mmの短冊状試験片を切出した。チャック間距離20mmにて動的粘弾性測定を行い、得られた損失正接(tanδ)のピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。測定条件は30ml/分の窒素気流下、印加周波数0.1Hz速度5℃/分とした。結果を表1に示す。
【0124】
(引張強度、伸び率及び弾性率)
ポリヒドロキシイミドの溶液(ポリマー溶液)を窒素雰囲気下、170℃、120分の条件下で硬化して得られる試験片(6.5mm×60mm×10μm厚)に対して引張試験(延伸速度:5mm/分)を23℃雰囲気中で実施した。引張試験は、オリエンテック社製引張試験機(テンシロンRTC-1210A)を用いて行った。試験片5本を測定し、破断点の応力を平均化したものを強度とした。破断した距離と初期距離から引張伸び率を算出し、伸び率の最大値と平均値を求めた。得られた応力-歪曲線の初期の勾配からそれぞれ引張弾性率を算出し、平均化したものを弾性率とした。結果を表1に示す。
なお、実施例3のポリマー溶液で得られたフィルムについて、図2にひずみ-応力曲線を示した。ひずみ-応力曲線から、降伏点よりも前においてはポリマー主鎖の変形による伸びにより強度が改善されており、降伏点後においてはポリマー鎖間の強いパッキングにより、ポリマー鎖の滑りぬけによる破断が抑えられ、伸びが向上し、可とう性に優れるため強度が改善されたと考えられる。
【0125】
【表1】
【0126】
表1の結果から、本発明のポリヒドロキシイミドは、溶剤への溶解性に優れており前駆体の状態でワニスとする必要がないことから、寸法安定性に優れた樹脂フィルムを得ることができることが明らかとなった。さらに、本発明のポリヒドロキシイミドによれば、機械強度に優れた樹脂フィルムを得ることができることが明らかとなった。
【0127】
[実施例4]
(感光性樹脂組成物の調製)
実施例3のポリマー溶液(ポリマー100質量部)と、架橋剤としてテトラメトキシメチルグリコールウリル(50質量部)を、感光剤としてジ(トリフルオロメタンスルホン)イミド (4,8-ジ-n-ブトキシ-1-ナフチル)ジブチルスルホニウム(3質量部)を、界面活性剤としてFC4432(0.05質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調製した。
【0128】
(パターニング特性に関する評価)
実施例4の感光性樹脂組成物が、露光・現像により十分にパターニング可能であることを、以下のようにして確認した。
実施例4の感光性樹脂組成物を、8インチシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した。塗布後、大気下でホットプレートにて120℃で3分間プリベークし、膜厚約5.0μmの塗膜を得た。
この塗膜に、幅20μmのビアパターンが描かれているマスクを通して、i線を照射した。照射には、i線ステッパー(ニコン社製・NSR-4425i)を用いた。
露光後、ウェハをホットプレートに置き、大気下で120℃、5分間のベーク処理を行った。
その後、現像液としてシクロペンタノンを用い、20秒間スプレー現像し、さらに現像液としてPGMEAを用い、10秒間スプレー現像を行うことによって、未露光部を溶解除去して、ビアパターンを得た。
得られたビアパターンの断面を、卓上SEMを用いて観察した。ビアパターンの底面と開口部の中間の高さにおける幅をビア幅とし、以下基準で評価した。
パターニング性良好:20μmのビアパターンが開口
パターニング性不良:20μmのビアパターンが開口しない
実施例4のパターニング性は良好であった。
図1
図2