IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大真空の特許一覧

<>
  • 特許-圧電発振器 図1
  • 特許-圧電発振器 図2
  • 特許-圧電発振器 図3
  • 特許-圧電発振器 図4
  • 特許-圧電発振器 図5
  • 特許-圧電発振器 図6
  • 特許-圧電発振器 図7
  • 特許-圧電発振器 図8
  • 特許-圧電発振器 図9
  • 特許-圧電発振器 図10
  • 特許-圧電発振器 図11
  • 特許-圧電発振器 図12
  • 特許-圧電発振器 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240214BHJP
   H01L 23/42 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
H01L23/42
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020055357
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158463
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森脇 徹
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177732(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/110727(JP,A1)
【文献】特開2015-139053(JP,A)
【文献】特開平05-335875(JP,A)
【文献】特開2010-154227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
H01L 23/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部が気密封止されている圧電振動子と、
前記圧電振動子を加熱する発熱体と、
発振回路を構成する集積回路素子と、
少なくとも前記圧電振動子を気密封止するパッケージ体とを備え、
前記パッケージ体は、少なくとも前記圧電振動子を気密封止する第1パッケージと、前記集積回路素子を収容する第2パッケージとを有し、
前記第1パッケージは、前記圧電振動子を収容する収容凹部が、上下両面のうちの一方の面側に形成されたベースを備え、
前記第2パッケージは、前記集積回路素子を収容する収容凹部が、上下両面のうちの一方の面側に形成された基板を備え、
前記第1パッケージの前記ベースの前記上下両面のうちの他方の面側と前記第2パッケージの前記基板の前記上下両面のうちの他方の面側とが接合されている、
ことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記圧電振動子は、両主面に励振電極がそれぞれ形成された圧電振動板と、該圧電振動板の一方の主面の励振電極を覆って封止する第1封止部材と、前記圧電振動板の他方の主面の励振電極を覆って封止する第2封止部材とを備え、
前記圧電振動板は、前記両主面に、接合用金属膜をそれぞれ有し、前記第1封止部材は、前記圧電振動板の前記一方の主面の前記接合用金属膜に対応する接合用金属膜を有し、前記第2封止部材は、前記圧電振動板の前記他方の主面の前記接合用金属膜に対応する接合用金属膜を有し、
前記第1封止部材と前記圧電振動板とが、前記接合用金属膜によって接合され、前記第2封止部材と前記圧電振動板とが、前記接合用金属膜によって接合され、前記圧電振動板の前記両主面の前記励振電極を含む前記振動部が、前記第1封止部材及び前記第2封止部材によって気密封止される、
請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記第2パッケージは、前記第1パッケージに比べて平面サイズが大きく、
前記第2パッケージの外周部に接合されて、前記第1パッケージを収容する収容空間を構成するカバー体を備える、
請求項1または2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
前記発熱体は、前記圧電振動子に接合されたヒータ基板であり、前記パッケージ体は、前記圧電振動子と共に、前記ヒータ基板を気密封止する、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項5】
前記発熱体は、前記圧電振動子に接合されたフィルムヒータであり、前記パッケージ体は、前記圧電振動子と共に、前記フィルムヒータを気密封止する、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項6】
前記第1パッケージは、前記圧電振動子を収容して気密封止する密封空間を有し、前記第1パッケージの前記ベースは、基板部と該基板部の外周部に形成された枠部とを有し、前記密封空間は、前記第1パッケージの前記ベースと、該ベースの前記枠部に接合される蓋部とによって構成され、前記ベースの前記基板部に、前記発熱体が設けられる、
請求項1ないしのいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項7】
温度センサを備え、
前記集積回路素子は、前記温度センサの検出温度に基づいて、前記発熱体の発熱を制御する、
請求項1ないしのいずれか一項に記載の圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器などの圧電発振器として、外部の温度変化に影響されることなく高安定な周波数を出力する恒温型圧電発振器が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-177732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の恒温型圧電発振器では、圧電振動片(水晶振動片)が振動子用パッケージ内に収容されて気密封止されてなる圧電振動子を、ベース基板及びカバー体からなるパッケージ内に収納している。
【0005】
この恒温型圧電発振器では、圧電振動子の圧電振動片は、振動用パッケージに気密に封止されているが、圧電振動子は、ベース基板及びカバー体からなるパッケージ内に収納されているものの、気密封止されていない。
【0006】
このため、圧電振動片は、外部の温度変化等の影響を受け易く、圧電発振器の発振特性が変動するという課題がある。
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、外部の温度変化等に起因する特性変動を可及的に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0009】
すなわち、本発明の圧電発振器は、振動部が気密封止されている圧電振動子と、前記圧電振動子を加熱する発熱体と、発振回路を構成する集積回路素子と、少なくとも前記圧電振動子を気密封止するパッケージ体とを備え、
前記パッケージ体は、少なくとも前記圧電振動子を気密封止する第1パッケージと、前記集積回路素子を収容する第2パッケージとを有し、
前記第1パッケージは、前記圧電振動子を収容する収容凹部が、上下両面のうちの一方の面側に形成されたベースを備え、前記第2パッケージは、前記集積回路素子を収容する収容凹部が、上下両面のうちの一方の面側に形成された基板を備え、
前記第1パッケージの前記ベースの前記上下両面のうちの他方の面側と前記第2パッケージの前記基板の前記上下両面のうちの他方の面側とが接合されている
【0010】
本発明によれば、振動部が気密封止された圧電振動子を、パッケージ体に気密封止するので、圧電振動子の振動部は、二重に気密封止されることになる。これによって、圧電振動子の振動部に対する外部の温度変化等の影響を抑制することができ、外部の温度等が変化しても、圧電発振器の特性変動を抑制して発振周波数の安定化を図ることができる。
また、本発明によれば、圧電振動子は第1パッケージに、集積回路素子は第2パッケージに、それぞれ個別に収容されるので、圧電振動子に対する集積回路素子の影響を抑制することができる。
【0011】
本発明の圧電発振器の好ましい実施態様では、前記圧電振動子は、両主面に励振電極がそれぞれ形成された圧電振動板と、該圧電振動板の一方の主面の励振電極を覆って封止する第1封止部材と、前記圧電振動板の他方の主面の励振電極を覆って封止する第2封止部材とを備え、前記圧電振動板は、前記両主面に、接合用金属膜をそれぞれ有し、前記第1封止部材は、前記圧電振動板の前記一方の主面の前記接合用金属膜に対応する接合用金属膜を有し、前記第2封止部材は、前記圧電振動板の前記他方の主面の前記接合用金属膜に対応する接合用金属膜を有し、前記第1封止部材と前記圧電振動板とが、前記接合用金属膜によって接合され、前記第2封止部材と前記圧電振動板とが、前記接合用金属膜によって接合され、前記圧電振動板の前記両主面の前記励振電極を含む前記振動部が、前記第1封止部材及び前記第2封止部材によって気密封止される。
【0012】
この実施態様によれば、圧電振動子は、両主面に励振電極が形成された圧電振動板と、一方の主面の励振電極を覆って封止する第1封止部材と、他方の主面の励振電極を覆って封止する第2封止部材とを、互いの接合用金属膜を接合させて積層される。したがって、圧電振動片を、収容凹部を有する容器内に収容し、導電性接着剤によって、容器内の電極に接合して気密封止するパッケージ構造のように、導電性接着剤を使用する必要がない。これによって、導電性接着剤から発生するガスの影響を受けることがなくなり、周波数特性が安定する。
【0013】
更に、圧電振動子は、圧電振動板及び第1,第2封止部材の三層の積層構造であるので、上記パッケージ構造に比べて、薄型化(低背化)を図ることができる。
【0016】
本発明の圧電発振器の他の実施態様では、前記第2パッケージは、前記第1パッケージに比べて平面サイズが大きく、前記第2パッケージの外周部に接合されて、前記第1パッケージを収容する収容空間を構成するカバー体を備える。
【0017】
この実施態様によれば、振動部が気密封止された圧電振動子は、第1パッケージによって気密封止され、第1パッケージは、第2パッケージとカバー体とによって構成される収容空間内に収容されるので、圧電振動子の振動部は、二重に気密封止された上に、第2パッケージとカバー体とによって構成される収容空間内に収容されることになる。これによって、圧電振動子の振動部の断熱を図って、外部の温度変化の影響を効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の一実施態様では、前記発熱体は、前記圧電振動子に接合されたヒータ基板あるいはフィルムヒータであり、前記パッケージ体は、前記圧電振動子と共に、前記ヒータ基板を気密封止する。
【0021】
この実施態様によると、ヒータ基板あるいはフィルムヒータは、圧電振動子に接合されているので、圧電振動子を効率的に加熱することができる。
【0022】
本発明の他の実施態様では、前記第1パッケージは、前記圧電振動子を収容して気密封止する密封空間を有し、前記第1パッケージの前記ベースは、基板部と該基板部の外周部に形成された枠部とを有し、前記密封空間は、前記第1パッケージの前記ベースと、該ベースの前記枠部に接合される蓋部とによって構成され、前記ベースの前記基板部に、前記発熱体が設けられる。
【0023】
この実施態様によると、基板部に設けられた発熱体によって、圧電振動子が封止された密封空間を加熱することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様では、温度センサを備え、前記集積回路素子は、前記温度センサの検出温度に基づいて、前記発熱体の発熱を制御する。
【0025】
この実施態様によると、温度センサで検出される温度に基づいて、発熱体の発熱を制御することによって、圧電振動子の温度を一定に制御することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、振動部が気密封止された圧電振動子を、パッケージ体に気密封止するので、圧電振動子の振動部は、二重に気密封止されることになり、圧電振動子の振動部に対する外部の温度変化等の影響を抑制することができ、外部の温度等が変化しても、圧電発振器の特性変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る水晶発振器の概略構成図である。
図2図2は、図1の水晶振動子の拡大断面図である。
図3図3は水晶振動板の両主面の概略平面図である。
図4図4は第1封止部材の両主面の概略平面図である。
図5図5は第2封止部材の両面の概略平面図である。
図6図6は第2基板の概略平面図である。
図7図7は第2基板に第1パッケージを搭載した状態の概略平面図である。
図8図8は本発明の他の実施形態の概略構成図である。
図9図9は本発明の更に他の実施形態の概略構成図である。
図10図10図9のヒータ基板の概略平面図である。
図11図11は本発明の他の実施形態の概略構成図である。
図12図12は本発明の参考例の概略構成図である。
図13図13は本発明の他の参考例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、圧電発振器として、恒温槽型の水晶発振器に適用して説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る恒温槽型の水晶発振器の概略構成図である。
【0030】
この実施形態の水晶発振器1は、水晶振動子2と、集積回路素子としてのICチップ3と、それらを収容するパッケージ体4と、水晶振動子2を加熱する発熱体としてのヒータ5とを備えている。
【0031】
パッケージ体4は、水晶振動子2を気密に封止する第1パッケージ6と、ICチップ3を収容すると共に、第1パッケージ6を収容する収容空間を構成する第2パッケージ7とを備えている。
【0032】
第1パッケージ6は、上部が開口し、水晶振動子2を収容する収容凹部8aを有するベース8と、シールリング9を介してベース8に接合されて上部の開口を閉塞して収容凹部8aを気密に封止する蓋部としてのリッド10とを備えている。
【0033】
ベース8は、平板状の基板部と、基板部の外周から上方へ突出した上枠部とによって、収容凹部8aを構成する。気密封止は、真空雰囲気中または窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行われ、第1パッケージ6の内部の空間は、真空または不活性ガス雰囲気とされる。
【0034】
ベース8は、アルミナ等のセラミック材料からなり、セラミックグリーンシートを積層して上部が開口した凹状に一体焼成して構成される。このベース8の基板部には、水晶振動子2を加熱するヒータ5が、セラミックグリーンシートに挟み込まれるようにして埋め込まれている。このヒータ5は、例えば、ニクロム等の金属材料から成り、通電することにより電気抵抗で発熱する。
【0035】
第2パッケージ7は、第1基板11と、下面側に収容凹部12aを有する第2基板12と、第1基板11と共に、第1パッケージ6及び第2基板12を収容する収容空間を構成するカバー体13とを備えている。第1基板11には、カバー体13が被せられるように接合されている。
【0036】
第1基板11及び第2基板12は、平面視略矩形であり、例えば、アルミナ等のセラミック材料からなる。カバー体13は、収容空間が、周囲温度の影響を受けないように、熱伝導率の低い絶縁材料、例えば、樹脂材料から構成される。
【0037】
図2は、図1の水晶振動子2の拡大断面図である。この水晶振動子2は、圧電振動板である水晶振動板14と、水晶振動板14の一方の主面側を覆って気密に封止する第1封止部材15と、水晶振動板14の他方の主面側を覆って気密に封止する第2封止部材16とを備えている。
【0038】
この水晶振動子2では、水晶振動板14の両主面側に、第1,第2封止部材15,16がそれぞれ接合されて、いわゆるサンドイッチ構造のパッケージが構成される。この水晶振動子2のパッケージは、直方体であって、平面視矩形である。この実施形態の水晶振動子2のパッケージサイズは、平面視で、例えば、1.0mm×0.8mmであり、小型化及び低背化を図っている。
【0039】
なお、パッケージサイズは、上記に限定されるものではなく、異なるサイズであっても適用可能である。
【0040】
次に、水晶振動子2を構成する水晶振動板14及び第1,第2封止部材15,16の各構成について説明する。
【0041】
図3(a)は水晶振動板14の一方の主面側を示す概略平面図であり、図3(b)は水晶振動板14の一方の主面側から透視した他方の主面側を示す概略平面図である。
【0042】
この実施形態の水晶振動板14は、ATカット水晶板であり、その両主面が、XZ´平面である。
【0043】
水晶振動板14は、略矩形の振動部20と、この振動部20の周囲を、空間(隙間)21を挟んで囲む外枠部22と、振動部20と外枠部22とを連結する連結部23とを備えている。振動部20、外枠部22及び連結部23は、一体的に形成されている。図示していないが、振動部20及び連結部23は、外枠部22に比べて薄く形成されている。
【0044】
振動部20の両主面には、一対の第1,第2励振電極24,25がそれぞれ形成されている。第1,第2励振電極24,25からは、第1,第2引出し電極26,27がそれぞれ引出されている。一方の主面側の第1引出し電極26は、連結部23を経て外枠部22に形成された接続用接合パターン28まで引出されている。他方の主面側の第2引出し電極27は、連結部23を経て外枠部22に形成された接続用接合パターン30まで引出されている。
【0045】
水晶振動板14の一方の主面には、水晶振動板14を第1封止部材15に接合するための接合用金属膜としての第1封止用接合パターン31が、外枠部22の全周に亘って、水晶振動板14の外周縁に略沿うように環状に形成されている。水晶振動板14の他方の主面には、水晶振動板14を第2封止部材16に接合するための接合用金属膜としての第2封止用接合パターン32が、外枠部22の全周に亘って、水晶振動板14の外周縁に略沿うように環状に形成されている。
【0046】
水晶振動板14には、両主面間を貫通する第1貫通電極29が形成されている。第1貫通電極29は、貫通孔の内壁面に金属膜が被着されて構成されている。第1貫通電極29は、環状の第1,第2封止用接合パターン31,32の内側であって、平面視矩形の水晶振動板14の一方の短辺寄りの外枠部22に形成されている。水晶振動板14の一方の主面側の第1貫通電極29の周囲には、第1励振電極24から引出された第1引出し電極26に連なる上記接続用接合パターン28が延びている。第1貫通電極29は、接続用接合パターン28に電気的に接続されており、したがって、第1貫通電極29は、第1励振電極24に電気的に接続されている。
【0047】
水晶振動板14の第1,第2励振電極24,25、第1,第2引出し電極26,27、第1,第2封止用接合パターン31,32、及び、接続用接合パターン28,30は、例えば、TiまたはCrからなる下地層上に、例えば、Auが積層形成されて構成されている。
【0048】
図4(a)は第1封止部材15の一方の主面側を示す概略平面図であり、図4(b)は第1封止部材15の一方の主面側から透視した他方の主面側を示す概略平面図である。
【0049】
第1封止部材15は、水晶振動板14と同様のATカット水晶板からなる直方体の基板である。この第1封止部材15の他方の主面には、図4(b)に示すように、水晶振動板14の一方の主面の第1封止用接合パターン31に接合して封止するための接合用金属膜としての第1封止用接合パターン33が、第1封止部材15の全周に亘って、第1封止部材15の外周縁に略沿うように環状に形成されている。
【0050】
この第1封止用接合パターン33は、例えば、TiまたはCrからなる下地層上に、例えば、Auが積層形成されて構成されている。
【0051】
図5(a)は第2封止部材16の一方の主面側を示す概略平面図であり、図5(b)は第2封止部材16の一方の主面側から透視した他方の主面側を示す概略平面図である。
【0052】
第2封止部材16は、水晶振動板14や第1封止部材15と同様のATカット水晶板からなる直方体の基板である。
【0053】
第2封止部材16の一方の主面には、図5(a)に示すように、水晶振動板14の他方の主面の第2封止用接合パターン32に接合して封止するための接合用金属膜としての第2封止用接合パターン34が、第2封止部材16の全周に亘って、第2封止部材16の外周縁に略沿うように環状にそれぞれ形成されている。
【0054】
第2封止部材16には、その両主面間を貫通する2つの第2,第3貫通電極42,43が、環状の第2封止用接合パターン34の内側に形成されている。各貫通電極42,43は、貫通孔の内壁面に金属膜が被着されて構成されている。
【0055】
第2封止部材16の環状の第2封止用接合パターン34の内側の一方の短辺寄りには、接続用接合パターン37が、水晶振動板14の他方の主面の第1貫通電極29に対応するように形成されている。水晶振動板14と第2封止部材16とが後述のように接合されることによって、第1貫通電極29は、接続用接合パターン37に接合されて電気的に接続される。第1貫通電極29は、図3(a)に示すように、水晶振動板14の第1励振電極24に電気的に接続されている。したがって、第2封止部材16の一方の主面の接続用接合パターン37は、水晶振動板14と第2封止部材16との接合によって、第1励振電極24に電気的に接続される。
【0056】
この接続用接合パターン37は、図5(a)に示すように、接続用配線パターン36を介して、他方の短辺寄りの第2貫通電極42に電気的に接続されている。したがって、第2貫通電極42は、水晶振動板14と第2封止部材16との接合によって、接続用配線パターン36、接続用接合パターン37、水晶振動板14の第1貫通電極29、接続用接合パターン28及び第1引出し電極26を介して第1励振電極24に電気的に接続される。
【0057】
第2封止部材16の一方の主面の第3貫通電極43は、水晶振動板14の他方の主面の接続用接合パターン30に対応するように形成されている。水晶振動板14の他方の主面の接続用接合パターン30は、図3(b)に示されるように、第2励振電極25に電気的に接続されている。したがって、水晶振動板14と第2封止部材16とが後述のように接合されることによって、第2封止部材16の第3貫通電極43は、水晶振動板14の接続用接合パターン30、第2引出し電極27を介して第2励振電極25に電気的に接続される。
【0058】
第2封止部材16の他方の主面には、図5(b)に示すように、外部に電気的に接続するための一対の第1,第2外部接続端子40,41が設けられている。第1,第2外部接続端子40,41は、第2封止部材16の長辺方向の両端側において、それぞれ短辺方向に沿って延びている。
【0059】
第1,第2外部接続端子40,41は、第2,第3貫通電極42,43にそれぞれ電気的に接続されている。第2,第3貫通電極42,43は、上記のように、水晶振動板14の第1,第2励振電極24,25にそれぞれ電気的に接続されるので、第1,第2外部接続端子40,41は、第1,第2励振電極にそれぞれ電気的に接続される。
【0060】
第2封止部材16の第2封止用接合パターン34、接続用接合パターン37、接続用配線パターン36、及び、第1,第2外部接続端子40,41は、例えば、TiまたはCrからなる下地層上に、例えば、Auが積層形成されて構成されている。
【0061】
この実施形態の水晶振動子2は、水晶振動板14と第1封止部材15とが、それぞれの第1封止用接合パターン31,33を重ね合わせた状態で拡散接合されると共に、水晶振動板14と第2封止部材16とが、それぞれの第2封止用接合パターン32,34を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図1に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これによって、水晶振動板14の振動部20が収容された収容空間が、両封止部材15,16によって気密に封止される。
【0062】
このように水晶振動板14及び第1,2封止部材15,16の3枚の水晶板を積層して、振動部20を収容したパッケージが構成されるので、収容空間となる凹部を有するセラミック製の容器内に、水晶振動片を収容して蓋を接合して封止する構成の水晶振動子に比べて、薄型化(低背化)を図ることができる。
【0063】
水晶振動子2は、第2封止部材16の第1,第2外部接続端子40,41が、図示しない半田等の接合材によって、図1に示される第1パッケージ6のベース8の内底面に形成された図示しない振動子接続端子に接合されて搭載される。
【0064】
第1パッケージ6の底面、すなわち、ベース8の外底面には、複数の外部接続端子が備えられている。これら複数の外部接続端子は、ベース8の内部配線を介して、水晶振動子2の第1,第2励振電極24,25に接続された振動子接続端子及びヒータ5に接続されている。
【0065】
図6は、第1パッケージ6が搭載される第2パッケージ7の第2基板12の概略平面図である。第2パッケージ7の第1基板11上に搭載された第2基板12の上面には、第1パッケージ6の底面の複数の外部接続端子に対応する複数の接続電極が形成されている。具体的には、第2基板12の上面には、水晶振動子2用の接続電極50,51と、ヒータ5用の接続電極52と、GND(接地)用の接続電極53,54,55と、コンデンサや抵抗等の周辺回路部品用の接続電極56が形成されている。
【0066】
この第2基板12上に、図7に示されるように、第1パッケージ6及びコンデンサや抵抗等の周辺回路部品62が、半田等の接合材によって搭載される。
【0067】
図1に示されるように、第2基板12の下面側には、上記のようにICチップ3を収容する収容凹部12aが形成されている。この収容凹部12aは、第2基板12を第1基板11に搭載することによって、第1基板11で閉塞される。
【0068】
第2基板12の収容凹部12aには、内周壁に、底面よりも高い段部が設けられている。この段部の上面には、ICチップ3の接続用の導体配線パターンからなる複数の接続電極がそれぞれ形成されている。
【0069】
ICチップ3は、その能動面(上面)とは反対側の非能動面(下面)が、第2基板12の収容凹部12aの底面に、接着剤によって接合されている。ICチップ3の能動面には、その周縁部に、第2基板12の上記接続電極にそれぞれ接続される複数の電極パッドが形成されている。
【0070】
ICチップ3の各電極パッドは、第2基板12の段部上に形成された対応する接続電極にボンディングワイヤー47によって電気的に接続されている。ボンディングワイヤー47の素材としては、信頼性の観点からAuが好ましいが、Cuなどであってもよい。
【0071】
ICチップ3は、平面視矩形であって、発振回路、温度センサ、及び、温度センサの検出温度に基づいて、ヒータ5の発熱を制御する温度制御回路を内蔵している。このICチップ3は、第2基板12の内部配線を介して第1パッケージ6の水晶振動子2の第1,第2励振電極24,25及びヒータ5に接続されている。また、このICチップ3は、第2基板12の内部配線及び第1基板11の内部配線を介して第1基板11の底面の、電源端子、出力端子、制御端子、GND端子等の複数の外部接続端子、すなわち、当該水晶発振器1の実装用の外部接続端子に接続されている。
【0072】
この実施形態の水晶発振器1では、ICチップ3によって、ヒータ5の発熱量が制御されて、水晶振動子2の温度が制御される。
【0073】
上記構成を有する本実施形態の水晶発振器によれば、水晶振動板14の振動部20が、第1,第2封止部材15,16によって気密封止されると共に、水晶振動子2が、第1パッケージ6によって気密封止されているので、水晶振動板14の振動部20の周囲を、外部に対して極めて効果的に断熱した構造とすることができる。これによって、外部の温度変化等の影響を低減して、安定した発振周波数を得ることができる。
【0074】
また、水晶振動子2は、両主面に第1,第2励振電極24,25が形成された水晶振動板14と、第1励振電極24を覆って封止する第1封止部材15と、第2励振電極25を覆って封止する第2封止部材16とを、互いの接合用金属膜を接合させて積層されるので、水晶振動片を、収容凹部を有する容器内に、収容して導電性接着剤を用いて容器内の電極に接合し、蓋体で気密封止するパッケージ構造のように、導電性接着剤を使用する必要がない。これによって、導電性接着剤から発生するガスの影響を受けることがなく、周波数特性が安定する。
【0075】
更に、振動部20が気密封止された水晶振動子2は、第1パッケージ6によって気密封止され、この第1パッケージ6は、第2パッケージ7の第1基板11とカバー体13とによって構成される収容空間内に収容されるので、水晶振動子2の振動部20は、二重に気密封止された上に、収容空間内に閉じ込まれた状態となる。これによって、水晶振動子2の振動部20は、三重に断熱されることになり、外部の温度変化の影響を効果的に抑制することができる。
【0076】
図8は、本発明の他の実施形態の図1に対応する概略構成図である。
【0077】
この実施形態の水晶発振器1では、第1パッケージ6のベース8は、上下両面に収容凹部8a,8bをそれぞれ有する断面H構造である。
【0078】
このベース8の上面側の収容凹部8aには、上記実施形態と同様に、水晶振動子2を収容し、下面側の収容凹部8bには、上記実施形態のヒータ5に代えて、水晶振動子2を加熱するためのチップ抵抗体57を収容している。
【0079】
その他の構成は、上記図1の実施形態と同様である。
【0080】
図9は、本発明の更に他の実施形態の図1に対応する概略構成図である。
【0081】
この実施形態の水晶発振器1では、ベース8の収容凹部8aに収容された水晶振動子2の上面には、当該水晶振動子2を加熱するヒータ基板58が接合されている。なお、水晶振動子2の上面だけでなく、水晶振動子2の下面にも、水晶振動子2を加熱するヒータ基板が接合されていてもよい。
【0082】
このヒータ基板58は、図10に示すように、水晶等の基板64に、蛇行した抵抗配線59が形成されており、その両端部59a,59bが、ベース8の内底面に形成された接続電極にボンディングワイヤー60によって電気的に接続されている。抵抗配線59には、例えば、ニクロム、クロム、タングステン等が使用される。
【0083】
また、第2パッケージ7の第1基板11は、その上面側にキャビティ61が形成されており、第1基板11と第2基板12との接触面積、すなわち、熱の伝導路の面積を小さくし、第2基板12から第1基板11への放熱を抑制している。キャビティ61は、熱の伝導路の面積を小さくできればよく、その形状は任意である。
【0084】
その他の構成は、上記図1の実施形態と同様である。
【0085】
この実施形態によれば、ヒータ基板58を水晶振動子2に接合しているので、水晶振動子2を効率的に加熱することができる。
【0086】
なお、ヒータ基板58に代えて、例えば、ポリイミドフィルム等に金属箔の抵抗パターンを形成したフィルム抵抗を用いてもよい。
【0087】
上記各実施形態では、第2パッケージ7のカバー体13を、第1基板11に接合したが、本発明の他の実施形態として、図11に示されるように、第1基板11を省略し、カバー体13を、第2基板12に接合してもよい。
【0088】
すなわち、この実施形態の水晶発振器1では、第2パッケージ7は、ICチップ3が搭載された第2基板12と、この第2基板12と共に、第1パッケージ6を収容する収容空間を構成するカバー体13とを備えており、第1基板11は備えられていない。
【0089】
この実施形態では、第2基板12の底面(下面)に、ICチップ3に接続された電源端子、出力端子、制御端子、GND端子等の複数の外部接続端子、すなわち、当該水晶発振器1の実装用の外部接続端子が形成されている。
【0090】
その他の構成は、上記図1の実施形態と同様である。
【0091】
上記各実施形態では、第1パッケージ6,6,6は、第1基板11,11又は第2基板12,12と、カバー体13,13とによって構成される収容空間に収容されたが、本発明の他の実施形態として、第2基板12,12とカバー体13,13とを省略して、第1パッケージ6を露出させる構成としてもよい。
【0092】
図12は、本発明の参考例図1に対応する概略構成図である。
【0093】
この参考例の水晶発振器1は、第1パッケージ6を備えている。この第1パッケージ6は、上下両面に収容凹部8a,8bをそれぞれ有する断面H構造のベース8を備えている。このベース8の上面側の収容凹部8aに水晶振動子2を収容し、下面側の収容凹部8bに、ICチップ3を収容し、ベース8の中間の基板部にヒータ5を内蔵している。
【0094】
ベース8の底面(下面)に、ICチップ3に接続された電源端子、出力端子、制御端子、GND端子等の複数の外部接続端子が形成されている。
【0095】
その他の構成は、上記図1の実施形態と同様である。
【0096】
この参考例によれば、第2基板12,12とカバー体13,13とを省略して、小型化、薄型化を図ることができる。
【0097】
図13は、本発明の他の参考例図1に対応する概略構成図である。
【0098】
この参考例の水晶発振器1では、パッケージ体6のベース8の収容凹部8aは、内周壁に段部8cが形成されている。この段部8cに、水晶振動子2が半田等で接合されて搭載される。また、収容凹部8aの内底面に、ICチップ3が、金属バンプ63を介してフリップチップ実装されている。
【0099】
ベース8の底部には、水晶振動子2を加熱するヒータ5が内蔵されている。
【0100】
この参考例によれば、水晶振動子2とICチップ3とを同一の収容凹部8a内に収容することによって、水晶振動子2の温度を、ICチップ3の内蔵の温度センサによって正確に検出することができ、水晶振動子2の温度制御を高精度に行うことができる。
【0101】
上記各実施形態では、第1,第2封止部材15,16には、水晶を用いたが、これに限定されるものではなく、ガラス等の他の絶縁性材料を用いてもよい。
【0102】
上記実施形態では、水晶振動板14にATカット水晶を用いたが、これに限定されるものではなく、ATカット水晶以外の水晶を用いてもよい。
【0103】
上記実施形態では、各貫通電極29,42,43は、貫通孔の内壁面に金属膜が被着されて構成されているが、これに限らず、貫通孔を導電材料によって埋めてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1,1~1 水晶発振器
2 水晶振動子
3 ICチップ(集積回路素子)
~4 パッケージ体
5,5,5 ヒータ
6,6,6,6,6 第1パッケージ
7,7,7 第2パッケージ
14 水晶振動板
15 第1封止部材
16 第2封止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13