(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】積層コアの分離装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240214BHJP
H02K 1/16 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02K15/02 Z
H02K1/16 Z
(21)【出願番号】P 2020059339
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 高宏
(72)【発明者】
【氏名】梅 裕希
(72)【発明者】
【氏名】園田 貴大
(72)【発明者】
【氏名】金井 優大
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-051003(JP,A)
【文献】特開2002-262524(JP,A)
【文献】特開平09-233773(JP,A)
【文献】特開2010-104102(JP,A)
【文献】特開昭60-062853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
H02K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円状に連結され、周方向に分離可能な複数の分割コアを有する円形状の積層コアを、複数の前記分割コアに分離する積層コアの分離装置であり、
第一の軸線を中心に放射状配置され、初期位置と前記初期位置よりも外径に位置する作動位置との間を移動する複数の保持部材と、
複数の前記保持部材と同期し、前記初期位置と前記作動位置との間を移動し、複数の前記保持部材を前記初期位置から放射状に移動させる移動機構と、
複数の前記保持部材が前記初期位置に位置する場合、複数の前記分割コアが互いに連結されて前記積層コアを保持し、前記保持部材が前記作動位置に位置する場合、前記積層コアから前記分割コアを個別分離した状態で保持する保持部
と、
複数の前記保持部材を前記初期位置の側に向かって与圧する与圧機構と、
を備え
、
前記移動機構は、棒状の押圧部材と、前記押圧部材を第二の軸線方向に直線移動させる駆動部と、を有し、
前記第二の軸線は、前記押圧部材の中心線であって前記第一の軸線と同方向であり、
複数の前記保持部材のそれぞれの前記第一の軸線に近い側の端部には被押圧面が設けられており、
前記押圧部材の外周には、前記押圧部材が前記駆動部の駆動力によって前記第二の軸線方向に移動する場合に複数の前記保持部材のそれぞれに設けられる前記被押圧面に接触することによって複数の前記保持部材のそれぞれを前記初期位置から前記作動位置へ向かって押す前記保持部材と同数の押圧面が設けられている、積層コアの分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層コアの分離装置であって、
複数の前記保持部材を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材には、前記第一の軸線と同軸で前記押圧部材の先端部を挿抜自在であり、前記押圧部材の前記先端部が挿入されると、前記押圧部材と複数の前記保持部材との前記第一の軸線および前記第二の軸線に直角な方向への相対的な変位を規制される孔が設けられている、積層コアの分離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の積層コアの分離装置であって、
複数の前記保持部材を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材に取り付けられており、前記第一の軸線と同軸な環状の第一凸部が設けられている第一位置決め部材と、
前記押圧部材に同軸に取り付けられており、前記第二の軸線と同軸な環状で、前記第一凸部の内周側に挿入されると前記押圧部材と複数の前記保持部材との前記第一の軸線および前記第二の軸線に直角な方向への相対的な変位が規制される第二凸部が設けられている第二位置決め部材と、
をさらに有する、積層コアの分離装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の積層コアの分離装置であって、
前記保持部材の前記保持部に保持されている前記分割コアに対して前記分割コアに含まれる板状のコア片の積層方向の圧縮力を掛ける押圧機構をさらに有する、積層コアの分離装置。
【請求項5】
円状に連結され、周方向に分離可能な複数の分割コアを有する円形状の積層コアを、複数の前記分割コアに分離する積層コアの分離装置であり、
第一の軸線を中心に放射状配置され、初期位置と前記初期位置よりも外径に位置する作動位置との間を移動する複数の保持部材と、
棒状の押圧部材と、前記押圧部材を第二の軸線方向に直線移動させる駆動部と、を有し、複数の前記保持部材と同期し、前記初期位置と前記作動位置との間を移動し、複数の前記保持部材を前記初期位置から放射状に移動させる移動機構と、
複数の前記保持部材が前記初期位置に位置する場合、複数の前記分割コアが互いに連結されて前記積層コアを保持し、前記保持部材が前記作動位置に位置する場合、前記積層コアから前記分割コアを個別分離した状態で保持する保持部と、
複数の前記保持部材を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材に取り付けられており、前記第一の軸線と同軸な環状の第一凸部が設けられている第一位置決め部材と、
前記押圧部材に同軸に取り付けられており、前記第二の軸線と同軸な環状で、前記第一凸部の内周側に挿入されると前記押圧部材と複数の前記保持部材との前記第一の軸線および前記第二の軸線に直角な方向への相対的な変位が規制される第二凸部が設けられている第二位置決め部材と、
を備え、
前記第二の軸線は、前記押圧部材の中心線であって前記第一の軸線と同方向であり、
複数の前記保持部材のそれぞれの前記第一の軸線に近い側の端部には被押圧面が設けられており、
前記押圧部材の外周には、前記押圧部材が前記駆動部の駆動力によって前記第二の軸線方向に移動する場合に複数の前記保持部材のそれぞれに設けられる前記被押圧面に接触することによって複数の前記保持部材のそれぞれを前記初期位置から前記作動位置へ向かって押す前記保持部材と同数の押圧面が設けられている、積層コアの分離装置。
【請求項6】
請求項5に記載の積層コアの分離装置であって、
複数の前記保持部材を前記初期位置の側に向かって与圧する与圧機構をさらに有する、積層コアの分離装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の積層コアの分離装置であって、
複数の前記保持部材を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材には、前記第一の軸線と同軸で前記押圧部材の先端部を挿抜自在であり、前記押圧部材の前記先端部が挿入されると、前記押圧部材と複数の前記保持部材との前記第一の軸線および前記第二の軸線に直角な方向への相対的な変位を規制される孔が設けられている、積層コアの分離装置。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の積層コアの分離装置であって、
前記保持部材の前記保持部に保持されている前記分割コアに対して前記分割コアに含まれる板状のコア片の積層方向の圧縮力を掛ける押圧機構をさらに有する、積層コアの分離装置。
【請求項9】
円状に連結され、周方向に分離可能な複数の分割コアを有する円形状の積層コアを、複数の前記分割コアに分離する積層コアの分離装置であり、
第一の軸線を中心に放射状配置され、初期位置と前記初期位置よりも外径に位置する作動位置との間を移動する複数の保持部材と、
複数の前記保持部材と同期し、前記初期位置と前記作動位置との間を移動し、複数の前記保持部材を前記初期位置から放射状に移動させる移動機構を有し、
複数の前記保持部材が前記初期位置に位置する場合、複数の前記分割コアが互いに連結されて前記積層コアを保持し、前記保持部材が前記作動位置に位置する場合、前記積層コアから前記分割コアを個別分離した状態で保持する保持部と、
前記保持部材の前記保持部に保持されている前記分割コアに対して前記分割コアに含まれる板状のコア片の積層方向の圧縮力を掛ける押圧機構と、を備えた、積層コアの分離装置。
【請求項10】
請求項9に記載の積層コアの分離装置であって、
前記移動機構は、棒状の押圧部材と、前記押圧部材を第二の軸線方向に直線移動させる駆動部と、を有し、
前記第二の軸線は、前記押圧部材の中心線であって前記第一の軸線と同方向であり、
複数の前記保持部材のそれぞれの前記第一の軸線に近い側の端部には被押圧面が設けられており、
前記押圧部材の外周には、前記押圧部材が前記駆動部の駆動力によって前記第二の軸線方向に移動する場合に複数の前記保持部材のそれぞれに設けられる前記被押圧面に接触することによって複数の前記保持部材のそれぞれを前記初期位置から前記作動位置へ向かって押す前記保持部材と同数の押圧面が設けられている、積層コアの分離装置。
【請求項11】
請求項10に記載の積層コアの分離装置であって、
複数の前記保持部材を前記初期位置の側に向かって与圧する与圧機構をさらに有する、積層コアの分離装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の積層コアの分離装置であって、
複数の前記保持部材を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材には、前記第一の軸線と同軸で前記押圧部材の先端部を挿抜自在であり、前記押圧部材の前記先端部が挿入されると、前記押圧部材と複数の前記保持部材との前記第一の軸線および前記第二の軸線に直角な方向への相対的な変位を規制される孔が設けられている、積層コアの分離装置。
【請求項13】
請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の積層コアの分離装置であって、
複数の前記保持部材を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材に取り付けられており、前記第一の軸線と同軸な環状の第一凸部が設けられている第一位置決め部材と、
前記押圧部材に同軸に取り付けられており、前記第二の軸線と同軸な環状で、前記第一凸部の内周側に挿入されると前記押圧部材と複数の前記保持部材との前記第一の軸線および前記第二の軸線に直角な方向への相対的な変位が規制される第二凸部が設けられている第二位置決め部材と、
をさらに有する、積層コアの分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分割コアを有している環状の積層コアを個別の分割コアに分離するための積層コアの分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機のステータに用いられる環状の積層コアとして、複数の分割コアが環状に結合されているという構成を有するものが知られている。また、積層コアは、複数のコア片(電磁鋼板を所定の形状に成形した板状の部品をいう)が重ねられることにより成形されている。このような環状の積層コアを用いたステータの製造方法として、プレス装置によって複数のコア片を環状に並べた状態で成形し、環状に並べられているコア片を積層して環状の積層コアを成形し、この環状の積層コアを個別の分割コアに分離し、分離した各分割コアにノズルを用いて導線を巻き付け、導線が巻き付けられた分割コアを再び環状に結合する、という方法が知られている。このような分割コアを用いる方法によれば、ノズルがティースと干渉することなく導線を巻き付けることができるから、製品にノズルスペースが残らないようにでき(従来のノズルスペースに相当するスペースにも導線を巻き付けることができ)、その結果、線密度を高くできる。
【0003】
特許文献1には、環状の積層コアを個別の分割コアに分離する方法として、隣り合っている分割コアの結合面の半径方向外側の端部を中心として分割面の半径方向中心側が分離するように回転させるという方法が開示されている。特許文献2には、環状の積層コアに含まれる隣り合う分割コアどうしの結合部を半径方向外側から半径方向中心側に押すことによって、隣り合う分割コアを分離させる方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、前記各特許文献に記載の分離方法では、1回の工程で1つずつの分割コアに分離することができない。このため、環状の積層コアを個別の分割コアに分離する工程を複数回行わなければならず、その結果、この工程に要する時間が長くなる。さらに、工程ごとに積層コアの分離装置が必要になり、設備コストが増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-46499号公報
【文献】WO2019/049486
【発明の概要】
【0006】
(発明が解決しようとする課題)
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数の分割コアが結合している環状の積層コアを1回の工程で個別の分割コアに分離できる積層コアの分離装置を提供することである。
【0007】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、
円状に連結され、周方向に分離可能な複数の分割コア(14)を有する円形状の積層コア(10)を個別の分割コア(14)に分離する積層コアの分離装置(20)であり、
第一の軸線(C1)を中心として放射状配置され、初期位置と前記初期位置よりも外径に位置する作動位置との間を移動する複数の保持部材(21)と、
複数の前記保持部材(21)と同期し、複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置との間を移動し、前記初期位置から放射状に移動させる移動機構(25)を有し、
複数の前記保持部材(21)が初期位置に位置する場合、複数の前記分割コア(13)が互いに連結されて前記積層コア(10)を保持し、複数の前記保持部材(21)が前記作動位置に位置する場合、前記積層コア(10)から前記分割コア(14)を個別分離した状態で保持する保持部(210)と、
複数の保持部材(21)を初期位置の側に向かって与圧する与圧機構(エアシリンダ(22))と、を備え、
前記移動機構(25)は、棒状の押圧部材(26)と、前記押圧部材(26)を第二の軸線(C2)方向に直線移動させる駆動部(204)と、を有し、
前記第二の軸線(C2)は、前記押圧部材(26)の中心線であって前記第一の軸線(C1)と同方向であり、
複数の前記保持部材(21)のそれぞれの前記第一の軸線(C1)に近い側の端部には被押圧面(216)が設けられており、
前記押圧部材(26)の外周には、前記押圧部材(26)が前記駆動部(294)の駆動力によって前記第二の軸線(C2)方向に移動する場合に複数の前記保持部材(21)のそれぞれに設けられる前記被押圧面(216)に接触することによって複数の前記保持部材(21)を前記初期位置から前記作動位置へ向かって押す前記保持部材(21)と同数の押圧面(261)が設けられている。
この場合、移動機構(25)は、複数の保持部材(21)を同一速度且つ同一タイミングで初期位置から作動位置に移動させることができるように構成されていると良い。また、被押圧面(216)と押圧面(261)の少なくとも一方が、前記第一の軸線(C1)に対して傾斜している傾斜面であると良い。
【0008】
本発明がこのように構成されると、複数の保持部材(21)が同期して初期位置から作動位置に移動することにより、第一の軸線(C1)を中心とする円の周方向に隣り合う保持部材(21)の保持部(210)どうしは半径方向の位置が一致する状態のままで周方向の距離が大きくなる。このため、保持部(210)に保持されている分割コア(14)どうしが周方向に離れて分離する。このような隣り合う分割コア(14)どうしの分離は、移動機構(25)が複数の保持部材(21)を同期して初期位置から作動位置に移動させることによって、複数の分割コア(14)に対して一斉に行われる。したがって、円形状の積層コア(10)を分割コア(14)に分離する工程を複数回にわたって行わなくてもよい(複数の工程に跨らない)から、この工程に要する時間を短くできる。さらに、複数の工程のそれぞれに円形状の積層コア(10)の分離装置を配置する必要が無くなるから、設備コストの削減を図ることができる。
また、押圧部材(26)を第二の軸線(C2)方向に移動させることによって、押圧部材(26)に設けられる複数の押圧面(261)のそれぞれが複数の保持部材(21)のそれぞれに設けられる被押圧面(216)を押し、これによって、複数の保持部材(21)が初期位置から作動位置に移動する。このような構成であれば、複数の保持部材(21)を同期して移動させるための移動機構(25)を簡単な構造にできるから、設備コストの削減を図ることができる。
また、押圧部材(26)によって各保持部材(21)を初期位置から作動位置に移動させる際に、各保持部材(21)を初期位置の側に向かって与圧することにより、すべての保持部材(21)の移動の同期の精度を高めることができる。すなわち、円形状の積層コア(10)に含まれる分割コア(14)どうしの連結強度が均一でない場合、連結強度の弱い箇所から分離して、一部の保持部材(21)が残りの保持部材(21)よりも速く移動するおそれがある。その結果、保持部材(21)どうしの半径方向の位置が互いにずれ、周方向に隣り合う分割コア(14)どうしを周方向にのみ相対移動させることができなくなって、隣接する分割コア(14)を分離できないおそれがある。そこで、本発明がこのように構成されることにより、保持部材(21)どうしの半径方向の相対的な位置のずれが生じること(一部の保持部材(21)が残りの保持部材(21)よりも速く移動すること)が防止できる。換言すれば、与圧機構を設けることにより、より確実に、全ての保持部材(21)を同一速度で同期して初期位置から作動位置に直線移動させることができる。
【0009】
本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材(ガイド部材(23))を有し、この支持部材(ガイド部材(23))には、前記第一の軸線(C1)と同軸で前記押圧部材(26)の先端部(位置決め凸部(262))を挿抜自在であり、前記押圧部材(26)の前記先端部(位置決め凸部(262))が挿入されると、前記押圧部材(26)と複数の前記保持部材(21)との前記第一の軸線(C1)および前記第二の軸線(C2)に直角な方向への相対的な変位が規制される位置決め孔(234)が設けられている、という構成であってもよい。
また、本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材(ガイド部材(23))に取り付けられており、前記第一の軸線(C1)と同軸な環状の第一凸部(第一位置決め部(241))が設けられている第一位置決め部材(24)と、
前記押圧部材(26)に同軸に取り付けられており、前記第二の軸線(C2)と同軸な環状で、前記第一凸部(第一位置決め部(241))の内周側に挿入されると、前記押圧部材(26)と複数の前記保持部材(21)との前記第一の軸線(C1)および前記第二の軸線(C2)に直角な方向への相対的な変位が規制される第二凸部(第二位置決め部(272))が設けられている第二位置決め部材(27)と、をさらに有する、という構成であってもよい。
本発明がこのように構成されると、押圧部材(26)と保持部材(21)とが位置決めされた状態(第一の軸線(C1)と第二の軸線(C2)とが一致する状態)で保持部材(21)を初期位置から作動位置に移動させることができる。したがって、保持部材(21)が押圧部材(26)に押されるタイミングが不均一になることが防止または抑制され、保持部材(21)どうしの半径方向の相対的な位置ずれを防止できる。
また、本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、保持部材(21)の保持部(210)に保持されている分割コア(14)に対して分割コア(14)に含まれる板状のコア片(13)の積層方向の圧縮力を掛ける押圧機構(30)をさらに有する、という構成であってもよい。
本発明がこのように構成されると、円形状の積層コア(10)を分割コア(14)に分離する際に、押圧機構(30)によって積層コア(10)に対してコア片(13)(電磁鋼板からなる板状の部品)の積層方向の圧縮力を掛けることにより、コア片(13)どうしが分離することが防止される。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、
円状に連結され、周方向に分離可能な複数の分割コア(14)を有する円形状の積層コア(10)を個別の分割コア(14)に分離する積層コアの分離装置(20)であり、
第一の軸線(C1)を中心として放射状配置され、初期位置と前記初期位置よりも外径に位置する作動位置との間を移動する複数の保持部材(21)と、
棒状の押圧部材(26)と、前記押圧部材(26)を第二の軸線(C2)方向に直線移動させる駆動部(204)とを有し、複数の前記保持部材(21)と同期し、複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置との間を移動し、前記初期位置から放射状に移動させる移動機構(25)と、
複数の前記保持部材(21)が初期位置に位置する場合、複数の前記分割コア(13)が互いに連結されて前記積層コア(10)を保持し、複数の前記保持部材(21)が前記作動位置に位置する場合、前記積層コア(10)から前記分割コア(14)を個別分離した状態で保持する保持部(210)と、
複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材(ガイド部材(23))に取り付けられており、前記第一の軸線(C1)と同軸な環状の第一凸部(第一位置決め部(241))が設けられている第一位置決め部材(24)と、
前記押圧部材(26)に同軸に取り付けられており、前記第二の軸線(C2)と同軸な環状で、前記第一凸部(第一位置決め部(241))の内周側に挿入されると、前記押圧部材(26)と複数の前記保持部材(21)との前記第一の軸線(C1)および前記第二の軸線(C2)に直角な方向への相対的な変位が規制される第二凸部(第二位置決め部(272))が設けられている第二位置決め部材(27)と、
を備え、
前記第二の軸線(C2)は、前記押圧部材(26)の中心線であって前記第一の軸線(C1)と同方向であり、
複数の前記保持部材(21)のそれぞれの前記第一の軸線(C1)に近い側の端部には被押圧面(216)が設けられており、
前記押圧部材(26)の外周には、前記押圧部材(26)が前記駆動部(294)の駆動力によって前記第二の軸線(C2)方向に移動する場合に複数の前記保持部材(21)のそれぞれに設けられる前記被押圧面(216)に接触することによって複数の前記保持部材(21)を前記初期位置から前記作動位置へ向かって押す前記保持部材(21)と同数の押圧面(261)が設けられている。
この場合、移動機構(25)は、複数の保持部材(21)を同一速度且つ同一タイミングで初期位置から作動位置に移動させることができるように構成されていると良い。また、被押圧面(216)と押圧面(261)の少なくとも一方が、前記第一の軸線(C1)に対して傾斜している傾斜面であると良い。
【0011】
本発明がこのように構成されると、複数の保持部材(21)が同期して初期位置から作動位置に移動することにより、第一の軸線(C1)を中心とする円の周方向に隣り合う保持部材(21)の保持部(210)どうしは半径方向の位置が一致する状態のままで周方向の距離が大きくなる。このため、保持部(210)に保持されている分割コア(14)どうしが周方向に離れて分離する。このような隣り合う分割コア(14)どうしの分離は、移動機構(25)が複数の保持部材(21)を同期して初期位置から作動位置に移動させることによって、複数の分割コア(14)に対して一斉に行われる。したがって、円形状の積層コア(10)を分割コア(14)に分離する工程を複数回にわたって行わなくてもよい(複数の工程に跨らない)から、この工程に要する時間を短くできる。さらに、複数の工程のそれぞれに円形状の積層コア(10)の分離装置を配置する必要が無くなるから、設備コストの削減を図ることができる。
また、押圧部材(26)を第二の軸線(C2)方向に移動させることによって、押圧部材(26)に設けられる複数の押圧面(261)のそれぞれが複数の保持部材(21)のそれぞれに設けられる被押圧面(216)を押し、これによって、複数の保持部材(21)が初期位置から作動位置に移動する。このような構成であれば、複数の保持部材(21)を同期して移動させるための移動機構(25)を簡単な構造にできるから、設備コストの削減を図ることができる。
また、押圧部材(26)と保持部材(21)とが位置決めされた状態(第一の軸線(C1)と第二の軸線(C2)とが一致する状態)で保持部材(21)を初期位置から作動位置に移動させることができる。したがって、保持部材(21)が押圧部材(26)に押されるタイミングが不均一になることが防止または抑制され、保持部材(21)どうしの半径方向の相対的な位置ずれを防止できる。
【0012】
本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、複数の保持部材(21)を初期位置の側に向かって与圧する与圧機構(エアシリンダ(22))をさらに有する、という構成であってもよい。
本発明がこのように構成されると、押圧部材(26)によって各保持部材(21)を初期位置から作動位置に移動させる際に、各保持部材(21)を初期位置の側に向かって与圧することにより、すべての保持部材(21)の移動の同期の精度を高めることができる。すなわち、円形状の積層コア(10)に含まれる分割コア(14)どうしの連結強度が均一でない場合、連結強度の弱い箇所から分離して、一部の保持部材(21)が残りの保持部材(21)よりも速く移動するおそれがある。その結果、保持部材(21)どうしの半径方向の位置が互いにずれ、周方向に隣り合う分割コア(14)どうしを周方向にのみ相対移動させることができなくなって、隣接する分割コア(14)を分離できないおそれがある。そこで、本発明がこのように構成されることにより、保持部材(21)どうしの半径方向の相対的な位置のずれが生じること(一部の保持部材(21)が残りの保持部材(21)よりも速く移動すること)が防止できる。換言すれば、与圧機構を設けることにより、より確実に、全ての保持部材(21)を同一速度で同期して初期位置から作動位置に直線移動させることができる。
本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材(ガイド部材(23))を有し、この支持部材(ガイド部材(23))には、前記第一の軸線(C1)と同軸で前記押圧部材(26)の先端部(位置決め凸部(262))を挿抜自在であり、前記押圧部材(26)の前記先端部(位置決め凸部(262))が挿入されると、前記押圧部材(26)と複数の前記保持部材(21)との前記第一の軸線(C1)および前記第二の軸線(C2)に直角な方向への相対的な変位が規制される位置決め孔(234)が設けられている、という構成であってもよい。
本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、保持部材(21)の保持部(210)に保持されている分割コア(14)に対して分割コア(14)に含まれる板状のコア片(13)の積層方向の圧縮力を掛ける押圧機構(30)をさらに有する、という構成であってもよい。
本発明がこのように構成されると、円形状の積層コア(10)を分割コア(14)に分離する際に、押圧機構(30)によって積層コア(10)に対してコア片(13)(電磁鋼板からなる板状の部品)の積層方向の圧縮力を掛けることにより、コア片(13)どうしが分離することが防止される。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、
円状に連結され、周方向に分離可能な複数の分割コア(14)を有する円形状の積層コア(10)を個別の分割コア(14)に分離する積層コアの分離装置(20)であり、
第一の軸線(C1)を中心として放射状配置され、初期位置と前記初期位置よりも外径に位置する作動位置との間を移動する複数の保持部材(21)と、
複数の前記保持部材(21)と同期し、複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置との間を移動し、前記初期位置から放射状に移動させる移動機構(25)を有し、
複数の前記保持部材(21)が初期位置に位置する場合、複数の前記分割コア(13)が互いに連結されて前記積層コア(10)を保持し、複数の前記保持部材(21)が前記作動位置に位置する場合、前記積層コア(10)から前記分割コア(14)を個別分離した状態で保持する保持部(210)と、
保持部材(21)の保持部(210)に保持されている分割コア(14)に対して分割コア(14)に含まれる板状のコア片(13)の積層方向の圧縮力を掛ける押圧機構(30)と、備えている。
この場合、移動機構(25)は、複数の保持部材(21)を同一速度且つ同一タイミングで初期位置から作動位置に移動させることができるように構成されていると良い。
【0014】
本発明がこのように構成されると、複数の保持部材(21)が同期して初期位置から作動位置に移動することにより、第一の軸線(C1)を中心とする円の周方向に隣り合う保持部材(21)の保持部(210)どうしは半径方向の位置が一致する状態のままで周方向の距離が大きくなる。このため、保持部(210)に保持されている分割コア(14)どうしが周方向に離れて分離する。このような隣り合う分割コア(14)どうしの分離は、移動機構(25)が複数の保持部材(21)を同期して初期位置から作動位置に移動させることによって、複数の分割コア(14)に対して一斉に行われる。したがって、円形状の積層コア(10)を分割コア(14)に分離する工程を複数回にわたって行わなくてもよい(複数の工程に跨らない)から、この工程に要する時間を短くできる。さらに、複数の工程のそれぞれに円形状の積層コア(10)の分離装置を配置する必要が無くなるから、設備コストの削減を図ることができる。
また、円形状の積層コア(10)を分割コア(14)に分離する際に、押圧機構(30)によって積層コア(10)に対してコア片(13)(電磁鋼板からなる板状の部品)の積層方向の圧縮力を掛けることにより、コア片(13)どうしが分離することが防止される。
【0015】
本発明に係る積層コアの分離装置(20)において、
前記移動機構(25)は、棒状の押圧部材(26)と、前記押圧部材(26)を第二の軸線(C2)方向に直線移動させる駆動部(204)と、を有し、
前記第二の軸線(C2)は、前記押圧部材(26)の中心線であって前記第一の軸線(C1)と同方向であり、
複数の前記保持部材(21)のそれぞれの前記第一の軸線(C1)に近い側の端部には被押圧面(216)が設けられており、
前記押圧部材(26)の外周には、前記押圧部材(26)が前記駆動部(294)の駆動力によって前記第二の軸線(C2)方向に移動する場合に複数の前記保持部材(21)のそれぞれに設けられる前記被押圧面(216)に接触することによって複数の前記保持部材(21)を前記初期位置から前記作動位置へ向かって押す前記保持部材(21)と同数の押圧面(261)が設けられている、という構成であってもよい。この場合、被押圧面(216)と押圧面(261)の少なくとも一方が、前記第一の軸線(C1)に対して傾斜している傾斜面であると良い。
本発明がこのように構成されると、押圧部材(26)を第二の軸線(C2)方向に移動させることによって、押圧部材(26)に設けられる複数の押圧面(261)のそれぞれが複数の保持部材(21)のそれぞれに設けられる被押圧面(216)を押し、これによって、複数の保持部材(21)が初期位置から作動位置に移動する。このような構成であれば、複数の保持部材(21)を同期して移動させるための移動機構(25)を簡単な構造にできるから、設備コストの削減を図ることができる。
本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、複数の保持部材(21)を初期位置の側に向かって与圧する与圧機構(エアシリンダ(22))をさらに有する、という構成であってもよい。
本発明がこのように構成されると、押圧部材(26)によって各保持部材(21)を初期位置から作動位置に移動させる際に、各保持部材(21)を初期位置の側に向かって与圧することにより、すべての保持部材(21)の移動の同期の精度を高めることができる。すなわち、円形状の積層コア(10)に含まれる分割コア(14)どうしの連結強度が均一でない場合、連結強度の弱い箇所から分離して、一部の保持部材(21)が残りの保持部材(21)よりも速く移動するおそれがある。その結果、保持部材(21)どうしの半径方向の位置が互いにずれ、周方向に隣り合う分割コア(14)どうしを周方向にのみ相対移動させることができなくなって、隣接する分割コア(14)を分離できないおそれがある。そこで、本発明がこのように構成されることにより、保持部材(21)どうしの半径方向の相対的な位置のずれが生じること(一部の保持部材(21)が残りの保持部材(21)よりも速く移動すること)が防止できる。換言すれば、与圧機構を設けることにより、より確実に、全ての保持部材(21)を同一速度で同期して初期位置から作動位置に直線移動させることができる。
本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材(ガイド部材(23))を有し、この支持部材(ガイド部材(23))には、前記第一の軸線(C1)と同軸で前記押圧部材(26)の先端部(位置決め凸部(262))を挿抜自在であり、前記押圧部材(26)の前記先端部(位置決め凸部(262))が挿入されると、前記押圧部材(26)と複数の前記保持部材(21)との前記第一の軸線(C1)および前記第二の軸線(C2)に直角な方向への相対的な変位が規制される位置決め孔(234)が設けられている、という構成であってもよい。
本発明に係る積層コアの分離装置(20)は、複数の前記保持部材(21)を前記初期位置と前記作動位置とに移動可能に支持する支持部材(ガイド部材(23))に取り付けられており、前記第一の軸線(C1)と同軸な環状の第一凸部(第一位置決め部(241))が設けられている第一位置決め部材(24)と、
前記押圧部材(26)に同軸に取り付けられており、前記第二の軸線(C2)と同軸な環状で、前記第一凸部(第一位置決め部(241))の内周側に挿入されると、前記押圧部材(26)と複数の前記保持部材(21)との前記第一の軸線(C1)および前記第二の軸線(C2)に直角な方向への相対的な変位が規制される第二凸部(第二位置決め部(272))が設けられている第二位置決め部材(27)と、をさらに有する、という構成であってもよい。
本発明がこのように構成されると、押圧部材(26)と保持部材(21)とが位置決めされた状態(第一の軸線(C1)と第二の軸線(C2)とが一致する状態)で保持部材(21)を初期位置から作動位置に移動させることができる。したがって、保持部材(21)が押圧部材(26)に押されるタイミングが不均一になることが防止または抑制され、保持部材(21)どうしの半径方向の相対的な位置ずれを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】
図3は、本実施装置の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、ガイド部材および第一位置決め部材の構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、保持部材の配置の例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施装置の動作の例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施装置の動作の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の実施形態に係る積層コアの分離装置を「本実施装置」と記し、円形状の積層コア(複数の分割コアが円状に結合している状態の積層コア)を「環状コア」と記すことがある。この環状コアはモータのステータ(固定子)に使用される。
【0020】
図1は、本実施装置20の適用対象である環状コア10の構成例を示す斜視図である。
図2は、環状コア10に含まれる分割コア14の構成例を示す斜視図である。
図1に示すように、環状コア10は、略円筒形状の円筒部11と、円筒部11からその半径方向中心側に向かって突出する複数のティース部12とを有している。そして、環状コア10は、円形に並んで互いに分離可能に連結されている複数の分割コア14を有している。すなわち環状コア10は、
図2に示すような円筒部11の一部となる外周部15および1つのティース部12を有する複数の分割コア14に分離可能である。
図1においては、環状コア10が12個の分割コア14に分離可能な例を示す。また、分離された複数の分割コア14を再結合することにより、環状コア10を形成することができる。
【0021】
環状コア10は、電磁鋼板からなる板状のコア片13が面方向に円形状に連結されている連結体をプレス装置によって成形し、成形された連結体を厚さ方向に積層することによって製造される。また、モータのステータの製造工程には、製造された環状コア10を1つずつの分割コア14に分離するという工程と、分離された個別の分割コア14にインシュレータを取り付ける工程と、インシュレータが取り付けられた分割コア14に導線を巻き付ける工程と、導線が巻き付けられた分割コア14を再結合する工程とが含まれる。そして、本実施装置20は、環状コア10を複数の分割コア14に分離する工程で使用される。
【0022】
図2に示すように、各分割コア14の外周部15の一方の端部(具体的には、環状コア10の一部に組み込まれた状態における円筒部11の周方向の一方の端部)には連結凸部16が設けられており、反対側の端部には連結凹部17が設けられている。1つの分割コア14の連結凸部16を他の1つの分割コア14の連結凹部17に挿入することによって、分割コア14どうしを互いに連結できる。そして、すべての分割コア14が隣り合う分割コア14に連結されることにより、各分割コア14は、円状に並んで互いに連結される。連結凸部16および連結凹部17は、互いに連結されている分割コア14を外周部15(円筒部11)の周方向(なお、「円状に並んで連結された複数の分割コア14の外周部15により構成される円の接線のうち連結凸部16と連結凹部17との連結部分における接線の方向」ということもできる)に相対移動させることにより連結および分離可能な形状を有している。例えば、連結凸部16はコア片13の積層方向視において外周部15(円筒部11)の周方向に突出する長方形であり、連結凹部17はコア片13の積層方向視において外周部15の周方向に窪む長方形である。ただし、分割コア14の連結凸部16および連結凹部17は、外周部15(円筒部11)の周方向に互いに相対移動させることにより連結および分離可能であればよく、具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0023】
図3は、本実施装置20の構成例を示す斜視図である。
図3に示すように、本実施装置20は、所定の数(具体的には、適用対象である環状コア10に含まれる分割コア14の数と同数)の保持部材21およびエアシリンダ22と、支持部材の例であるガイド部材23と、第一位置決め部材24と、移動機構25と、駆動部204とを有している。移動機構25は、押圧部材26と、第二位置決め部材27と、第二位置決め部材支持機構28とを有している。また、本実施装置20は、各部材を支持するフレームとして、下部フレーム201と、この下部フレーム201の上方に離間して設けられている上部フレーム202と、上部フレーム202を支持する複数の支柱203とを有している。なお、各図においては、本実施装置20の上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示す。
【0024】
保持部材21、エアシリンダ22、およびガイド部材23は、下部フレーム201の上面側に取り付けられている。
図3に示すように、保持部材21およびエアシリンダ22は、上下方向に平行な直線である第一の軸線C1を中心とする円の周方向に沿って円状(第一の軸線C1を中心とする放射状に)に並べて配置されている。移動機構25および駆動部204は上部フレーム202に取り付けられており、保持部材21の上方に位置している。
図3に示すように、移動機構25の押圧部材26の中心線である第二の軸線C2は上下方向に平行である。そして、第一の軸線C1と第二の軸線C2とは略一致している。
【0025】
なお、以下の説明では、特に断らない限りは、「半径方向」とは第一の軸線C1の軸線方向視において第一の軸線C1を中心とする円の半径方向をいうものとし、「周方向」とは第一の軸線C1を中心とする円の周方向をいうものとする。また、「中心側」とは、第一の軸線C1を中心とする円の半径方向中心側というものとし、「外周側」とは、第一の軸線C1を中心とする円の半径方向外側というものとする。
【0026】
図4は各保持部材21の構成例を示す図である。
図5はガイド部材23の構成例および保持部材21とガイド部材23との関係を示す図である。なお、
図4において矢印Cenは中心側を示し、矢印Outは外周側を示す。
図4および
図5に示すように、保持部材21は棒状の部材であり、長尺方向の一方の端部が中心側を向き、他方の端部が外周側を向く向きで配置されている。
【0027】
図4に示すように、各保持部材21の一方の端部(中心側の端部)の近傍には、1つの分割コア14を保持可能な保持部210が設けられている。保持部210は、中心側を向く第一保持面211と、外周側を向く第二保持面212と、周方向の一方の側を向く第三保持面213と、周方向の他方の側を向く第四保持面214と、上側を向く底面215とを有している。第一保持面211と第二保持面212とは半径方向に所定の距離をおいて離間しているとともに互いに対向している。本実施装置20では、第一保持面211が外周側に位置し、第二保持面212が中心側に位置する。第一保持面211と第二保持面212の間隔は、分割コア14の半径方向寸法(ティース部12の突出方向先端側の端面から外周部15の外周面までの寸法)と略同じかまたはそれより大きい寸法に設定される。第三保持面213と第四保持面214は、半径方向において第一保持面211と第二保持面212との間に位置している。第三保持面213と第四保持面214は、周方向に所定の距離をおいて離間するとともに互いに対向している。第三保持面213と第四保持面214との距離は、ティース部12の周方向寸法と略同じかそれよりも大きい寸法に設定される。
【0028】
このような構成の保持部210によれば、1つの分割コア14を第一保持面211~第四保持面214に囲まれる領域に収容することにより、1つの分割コア14を保持できる。そして、第一保持面211が分割コア14の外周部15の外周面に接触し、第二保持面212が分割コア14のティース部12の内周面(突出方向の先端の端面)に接触することにより、分割コア14の半径方向の移動が規制される。また、第三保持面213と第四保持面214とによって分割コア14のティース部12を挟むことによって、分割コア14の周方向への移動が規制される。
【0029】
なお、保持部210は、分割コア14の保持部材21に対する半径方向と周方向の相対移動ができるだけ小さくなるように構成されることが好ましく、分割コア14の保持部材21に対する半径方向と周方向の相対移動ができないように構成されることがより好ましい。したがって、第一保持面211~第四保持面214のそれぞれと保持部210に保持されている分割コア14の外周面とのクリアランスは、保持部210に分割コア14を挿抜できる限りにおいてできるだけ小さいことが好ましい。なお、第一保持面211~第四保持面214の具体的な寸法は、適用対象である環状コア10に含まれる分割コア14の寸法に応じて適宜設定される。
【0030】
保持部材21の中心側の端部には、後述する押圧部材26の押圧面261と係脱自在な被押圧面216が設けられている。例えば、
図4に示すように、保持部材21の中心側の端面の一部が被押圧面216である。ただし、保持部材21の中心側の端面の全域が被押圧面216であってもよい。被押圧面216は、第一の軸線C1に対して傾斜している平面であり、斜め上方を向く面である。なお、被押圧面216は前記のような平面に限定されず、押圧面261が円錐の場合には被押圧面216が曲面であってもよい。
【0031】
各エアシリンダ22は与圧機構の例である。各エアシリンダ22は、各保持部材21の外周側に配置されている。各エアシリンダ22は、各保持部材21に連結されており、各保持部材21を中心側に向かって与圧(付勢)できるように構成されている。なお、各エアシリンダ22は、各保持部材21が後述する押圧部材26から受ける力(初期位置から作動位置へ移動させる力)よりも小さい力で各保持部材21を与圧できるように構成されている。エアシリンダ22の構成は特に限定されるものではなく、公知の各種の構成が適用できる。要は、各エアシリンダ22は各保持部材21を中心側に向かって与圧できる構成であればよい。
【0032】
そして、
図6に示すように、複数の保持部材21およびエアシリンダ22は、第一の軸線C1を中心とする円の周方向に沿って円状に並ぶように配置されている。換言すると、複数の保持部材21およびエアシリンダ22は、第一の軸線C1を中心とする回転対称の位置に配置されている。さらに換言すると、第一の軸線C1方向視において、複数の保持部材21およびエアシリンダ22は、第一の軸線C1を中心として放射状に配置されている。このため、複数の保持部材21の各被押圧面216も、周方向に円状に並ぶ。
【0033】
各保持部材21は、初期位置と作動位置とに直線往復移動可能である。初期位置は、
図6に示すように、環状コア10を個別の分割コア14に分離することなく(換言すると、分割コア14どうしが連結されている状態で)、各保持部材21の保持部210に各分割コア14を保持させることができる位置である。初期位置には、保持部材21が直線往復移動可能な範囲の中心側の端の位置が適用できる。また、各保持部材21が初期位置に位置する場合には、環状コア10が保持部210に保持されると、環状コア10の中心線が第一の軸線C1と略一致する。作動位置は、初期位置と同一の半径方向上の位置であって初期位置よりも外周側(第一の軸線C1を中心とする円の半径方向外側(外径側))の位置である。複数の保持部材21は一方の端部が中心側に位置し他方の端部が外周側に位置する向きで環状に並べて配置されているため、各保持部材21が初期位置から作動位置(すなわち外周側の位置)に移動すると、周方向に隣り合う保持部材21の保持部210どうしの周方向の距離が大きくなる。このため、保持部材21に保持されている分割コア14どうしが周方向に引き離される。すなわち、環状コア10は個別の分割コア14に分離する。
【0034】
なお、初期位置から作動位置までの距離は、互いに連結している分割コア14どうしを分離できる距離であればよい。この距離は、分割コア14に設けられている連結凸部16および連結凹部17の寸法、周方向に隣り合う保持部材21の直線移動の軌跡どうしがなす角度などに応じて適宜設定される。
【0035】
ガイド部材23は、各保持部材21を半径方向に直線移動可能であるが、周方向には移動しないようにガイドする。
図5に示すように、ガイド部材23は、ベース部231と、ベース部231の上面から上方に突出し周方向に等間隔に並ぶ所定の数(保持部材21と同数)のガイド凸部232とを有している。各ガイド凸部232の側面(周方向の両端面)が、各保持部材21を半径方向に直線移動可能にガイドするガイド面233として機能する。周方向に隣り合うガイド凸部232のガイド面233どうしは、保持部材21を半径方向に直線移動可能であるが周方向には移動しないようにガイドできるように、互いに対向しており、かつ平行である。そして、各保持部材21の一部分は、周方向に隣り合うガイド凸部232どうしの間(対向するガイド面233どうしの間)に入り込んでいる。このため、各保持部材21は、ガイド部材23に対して、ガイド面233に沿って相対移動することにより半径方向には直線移動可能であるが、周方向の移動は規制される。
【0036】
ガイド部材23のベース部231には、押圧部材26と各保持部材21とを位置決めするための位置決め孔234が設けられている(
図5参照)。位置決め孔234は、後述する押圧部材26の位置決め凸部262を挿抜自在な孔である。また、位置決め孔234は、第一の軸線C1と同軸であり、保持部材21よりも下側に位置している。なお、「押圧部材26と各保持部材21との位置決め」とは、具体的には、第一の軸線C1と第二の軸線C2を一致した状態に保持することをいう。前述のとおり、第一の軸線C1と第二の軸線C2は一致しているが、外力および負荷などによってずれることがある。ずれが生じないように、すなわち、押圧部材26と各保持部材21とが第一の軸線C1および第二の軸線C2に直角な方向に相対的に変位しないように、押圧部材26と各保持部材21とを位置決めする。
【0037】
ガイド部材23の上側には、第一位置決め部材24が取り付けられている。例えば、第一位置決め部材24は、ガイド部材23のガイド凸部232の上側に、ボルトなどによって固定されている。第一位置決め部材24は環状の形状を有する部材であり、第一の軸線C1と同軸に配置されている。第一位置決め部材24は、各保持部材21の上側に配置する。第一位置決め部材24が各保持部材21の上側に配置されることにより、各保持部材21は第一位置決め部材24によって上下方向(軸線方向)の移動が規制される。
【0038】
第一位置決め部材24には、第一位置決め面242が設けられている。第一位置決め面242は、押圧部材26と保持部材21とを位置決めするための面である。第一位置決め面242は、第一の軸線C1と同軸の円周状の面であり、中心側を向く面である。例えば、第一位置決め部材24には、第一凸部の例であって、上側(移動機構25の側)に向かって突出する環状の第一位置決め部241が設けられており、この第一位置決め部241の内周面が第一位置決め面242となる。なお、第一位置決め面242は、保持部材21よりも上側(第一の軸線C1方向について移動機構25に近い側)に設けられている。
【0039】
次いで、移動機構25について説明する。
図7は、移動機構25の構成例を示す図である。
図7に示すように移動機構25は、押圧部材26と、第二位置決め部材27と、所定の数(保持部材21と同数)の押圧機構30とを有している。そして、移動機構25は、駆動部204(
図3参照)が発生させる駆動力によって、第二の軸線C2の軸線方向(上下方向)に直線往復移動する。
【0040】
押圧部材26は長尺棒状の部材である。押圧部材26の外周には、保持部材21と同数の押圧面261が、第二の軸線C2を中心とする円の周方向に並ぶように設けられている。各押圧面261は、各保持部材21の被押圧面216に接触して各保持部材21を押すための面である。各押圧面261は、第二の軸線C2に対して傾斜する平面であり、斜め下側を向く。例えば、押圧部材26には、第二の軸線C2方向に直角な面で切断した断面が多角形であり、先端側(下側)に向かうにしたがって断面寸法が小さくなる逆錘台形状の部分が設けられている。そして、この逆錘台形状の部分の側面が各押圧面261となる。
【0041】
押圧部材26の先端部であって押圧面261よりも下側には、位置決め凸部262が設けられており、押圧面261よりも基端側(上側)には摺動部263が設けられている。位置決め凸部262は、第二の軸線C2と同軸の円柱状の部分であり、ガイド部材23に設けられている位置決め孔234に挿抜可能に構成されている。そして、押圧部材26の位置決め凸部262がベース部231の位置決め孔234に挿入されることによって、第二の軸線C2と第一の軸線C1が一致する状態となるように押圧部材26と各保持部材21が位置決めされるとともに、押圧部材26と各保持部材21との第一の軸線C1および第二の軸線C2に直角な方向への相対的な変位が規制される。摺動部263は、第二の軸線C2に同軸な円柱状の部分であり、後述する第二位置決め部材27の貫通孔271に挿通されている。
【0042】
第二位置決め部材27は、押圧部材26と各保持部材21とを位置決めする機能を有している。第二位置決め部材27には、第二の軸線C2方向に貫通する貫通孔271が設けられている。この貫通孔271は、第二の軸線C2と同軸の断面円形の孔である。この貫通孔271には押圧部材26の摺動部263が挿通されている。このため、押圧部材26と第二位置決め部材27は、摺動部263が貫通孔271の内周面と摺動することにより、第二の軸線C2方向には相対移動可能であるが、第二の軸線C2と交差する方向には相対移動できない。したがって、第二位置決め部材27は押圧部材26と同軸に保持される。
【0043】
そして、第二位置決め部材27の下端部には、第二の軸線C2に同軸であり下側に向かって突出する環状の第二位置決め部272が設けられている。第二位置決め部272は、第二凸部の例である。第二位置決め部272の外周面が第二位置決め面273である。この第二位置決め部272は、第一位置決め部241に設けられている第一位置決め部241の内周側に挿抜可能に構成されている。そして、第二位置決め部材27の第二位置決め部272が第一位置決め部材24の第一位置決め面242の内周側に入り込むことにより、すなわち、第二位置決め部材27の第二位置決め面273が第一位置決め部材24の第一位置決め面242に対向または接触することにより、押圧部材26と各保持部材21とは、第一の軸線C1および第二の軸線C2に直角な方向への相対的な変位が規制される。すなわち、押圧部材26と各保持部材21とは位置決めされた状態に保持される。
【0044】
第二位置決め部材27は、第二位置決め部材支持機構28によって、押圧部材26に対して第二の軸線C2方向に相対移動可能に支持されるとともに、ガイド部材23の側(下側)に向かって付勢されている。第二位置決め部材支持機構28は、第二位置決め部材支持部材281と、複数のガイドバー282と、複数のストッパー283と、複数の第二位置決め部材付勢バネ284とを有している。第二位置決め部材支持部材281は、第二位置決め部材27よりも上側において押圧部材26に固定されている。複数のガイドバー282は、それぞれ長尺棒状の部材であり、一方の端部(下端部)は第二位置決め部材27に固定されており、他方の端部(上端部)は第二位置決め部材支持部材281に設けられている貫通孔(第二の軸線C2方向に貫通する貫通孔)に挿通されている。複数のストッパー283は、複数のガイドバー282のそれぞれの上端部に固定されており、ガイドバー282を第二位置決め部材支持部材281から脱落しないように保持する。第二位置決め部材付勢バネ284は、弾性圧縮変形可能な圧縮コイルバネであり、第二位置決め部材27と第二位置決め部材支持部材281との間に配置されている。
【0045】
このような第二位置決め部材支持機構28により、第二位置決め部材27は、押圧部材26に対して第二の軸線C2方向に相対移動可能に支持されるとともに、ガイド部材23の側に向かって付勢されている。なお、第二位置決め部材支持機構28の構成はこのような構成に限定されるものではない。第二位置決め部材支持機構28は、第二位置決め部材27を押圧部材26に対して第二の軸線C2方向に直線往復移動可能に支持するとともに、第二位置決め部材27を下側(保持部材21の側)に向かって付勢する構成であればよい。また、第二位置決め部材支持部材281が円盤状の部材である例を示したが、第二位置決め部材支持部材281の形状は限定されない。さらに、第二位置決め部材支持機構28が第二位置決め部材支持部材281を有さず、ガイドバー282が押圧部材26に直接的に取り付けられていてもよい。
【0046】
第二位置決め部材27には押圧機構支持部材31が設けられており、押圧機構支持部材31には所定の数(保持部材21と同数)の押圧機構30が取り付けられている。各押圧機構30は、各保持部材21と一対一で対応しており、対応する保持部材21の保持部210に保持されている環状コア10(分割コア14)を上側から押さえつける(圧縮力を掛ける)ことによって、環状コア10を形成しているコア片13どうしが分離することを防止する。各押圧機構30は、第二の軸線C2を中心とする円の周方向に等間隔に並べて配置されている。そして、各押圧機構30は、対応する保持部材21が初期位置と作動位置のいずれに位置している場合であっても、対応する保持部材21の保持部210の上側に位置する。
【0047】
各押圧機構30は、ローラ301と、ローラ支持部材302と、ローラ付勢バネ303とを有している。ローラ301は、ローラ支持部材302によって回転可能に支持されている。なお、ローラ301の回転中心線は、上下方向視において、対応する保持部材21の移動方向に直角である。ローラ支持部材302は、押圧機構支持部材31に対して第二の軸線C2方向に直線往復移動可能に支持されている。ローラ付勢バネ303は、ローラ301をローラ支持部材302とともに下側(保持部材21の側)に向かって付勢する。ローラ付勢バネ303には、例えば弾性圧縮変形可能な圧縮コイルバネが適用される。
【0048】
なお、各押圧機構30は、対応する保持部材21の保持部210に保持されている分割コア14を上側から押さえること、すなわち、分割コア14に対してコア片13の積層方向の圧縮力を掛けることができる構成であればよく、具体的な構成は限定されない。また、押圧機構支持部材31も、各押圧機構30を支持できる構成であればよく、具体的な構成は限定されない。また、本実施装置20が押圧機構支持部材31を有さず、各押圧機構30が第二位置決め部材27に直接的に支持される構成であってもよい。
【0049】
移動機構25は、駆動部204により第二の軸線C2方向に直線往復移動する。例えば、駆動部204は、回転動力を発生させるモータと、モータが発生させる回転動力を直線運動に変換するボールネジとを有する。この場合、移動機構25の押圧部材26にボールネジのボールナットが固定されており、モータがボールネジのネジ軸を回転させるように構成されている。このような構成によれば、モータが発生させる回転動力によって移動機構25の押圧部材26を第二の軸線C2方向に直線往復移動させることができる。なお、駆動部204は、移動機構25を第二の軸線C2方向に直線往復移動させることができればよく、モータとボールネジの組み合わせに限定されない。
【0050】
次に、本実施装置20の動作について説明する。
図8~
図12は、本実施装置20の動作を示す図である。具体的には、
図8は、すべての保持部材21が初期位置に位置し、環状コア10が各保持部材21に保持されている状態を示す上面図である。
図9はおよび
図10は、保持部材21が初期位置から作動位置に向かって移動している途中の状態を示す断面図である。
図11は、保持部材21が作動位置に位置する状態を示す断面図である。
図12は、すべての保持部材21が作動位置に位置する状態を示す上面図である。
【0051】
まず、
図8に示すように、すべての保持部材21を初期位置に位置させ、その状態で環状コア10に含まれる各分割コア14を各保持部材21の保持部210に保持させる。なお、すべての保持部材21が初期位置に位置すると、各保持部材21の保持部210は、環状コア10に含まれる1つの分割コア14を互いに連結されている状態で保持可能である。また、各エアシリンダ22によって各保持部材21を初期位置に向けて与圧する状態を保持する。
【0052】
次いで、駆動部204を作動させて押圧部材26を下方に移動させる。押圧部材26が下方に移動すると、第二位置決め部材27および各押圧機構30は押圧部材26と一体的に下方に移動する。そして、
図9に示すように、各押圧機構30のローラ301が、各保持部材21の保持部210に保持されている環状コア10(分割コア14)の上面に接触する。
【0053】
図9に示す状態から押圧部材26がさらに下方に移動すると、第二位置決め部材27もさらに下方に移動する。なお、押圧機構30のローラ301が環状コア10の上面に接触する状態であっても第二位置決め部材27が押圧部材26とともに下方に移動できるように、押圧機構30のローラ付勢バネ303の合計の付勢力は、第二位置決め部材支持機構28の第二位置決め部材付勢バネ284の合計の付勢力よりも小さい。そして、
図10に示すように、第二位置決め部材27の第二位置決め部272が第一位置決め部材24の第一位置決め部241の内周側に入り込むとともに、押圧部材26の位置決め凸部262がガイド部材23の位置決め孔234に入り込む。このため、押圧部材26は、複数の保持部材21に対して位置決めされる。そして、本実施装置20においては、押圧部材26が保持部材21の上側と下側の両側において位置決めされるから、位置決めの精度を高めることができる。
【0054】
また、
図10に示す状態では、各押圧機構30のローラ付勢バネ303は弾性圧縮変形している。このため、環状コア10には、コア片13の積層方向に圧縮力が掛かる。したがって、環状コア10を形成するコア片13どうしが分離することが防止される。
【0055】
図10に示す状態から押圧部材26がさらに下方に移動すると、押圧部材26の各押圧面261が、各保持部材21の被押圧面216に接触して被押圧面216を押す。ここで、被押圧面216と押圧面261は、
図10からわかるように、第一の軸線C1及び第二の軸線C2に対してほぼ同じ角度だけ傾斜した面として形成され、押圧部材26の下方移動により両面216,261は第一の軸線C1及び第二の軸線C2に対して傾斜した状態で接触する。このため、
図11および
図12に示すように、各保持部材21は、押圧部材26から受ける力のうち外周側に向かう分力によって、エアシリンダ22の与圧に抗して初期位置から作動位置に向かって移動する。
【0056】
なお、前述のように、押圧部材26の押圧面261は、第二の軸線C2を中心とする円の周方向に並べて設けられている。そして、各保持部材21の被押圧面216は、第一の軸線C1を中心とする円の周方向に並んでいる。このため、各保持部材21の被押圧面216は押圧部材26の各押圧面261に同時に押される。このため、すべての保持部材21は同期して、すなわち、同じタイミングかつ同じ速度で初期位置から作動位置に向かって移動する。換言すると、すべての保持部材21は、半径方向の位置が互いに一致している状態で初期位置から作動位置へ移動する。このため、隣り合う保持部材21どうしは、半径方向には相対変位することなく第一の軸線C1を中心とする円の周方向にのみ相対変位する(互いに離れていく)。したがって、周方向に隣り合っている保持部材21の保持部210どうしは、第一の軸線C1を中心とする円の周方向に互いに離れる向きに相対的に移動する。
【0057】
前述のとおり、分割コア14の連結凸部16および連結凹部17は、周方向に隣接する分割コア14どうしが周方向に相対移動した場合に連結および分離可能に構成されている。このため、各保持部材21が前述のように同期して移動すると、周方向に隣り合う保持部材21の保持部210どうしが第一の軸線C1を中心とする円の半径方向には相対的に移動することなく、周方向に相対的に離れる向きに移動し、その結果、連結凸部16と連結凹部17との連結が解除される。このような連結凸部16と連結凹部17との連結の解除が、すべての隣接する分割コア14どうしの連結に対して、同じタイミングで一斉に行われることにより、環状コア10は分割コア14に分離する。この結果、
図12に示すように、環状コア10は、押圧部材26の1回の移動により個別の分割コア14に分離される。すなわち、1工程で個別の分割コア14に分離できる。
【0058】
そして、本実施装置20によれば、押圧部材26を第二の軸線C2方向に移動させることによって、複数の保持部材21を初期位置から作動位置に同期して移動させることができる。このような構成であれば、複数の保持部材21を同期して移動させるための移動機構25を簡単な構造にできる。したがって、装置の小型化および設備コストの削減を図ることができる。
【0059】
なお、押圧部材26の各押圧面261が各保持部材21の被押圧面216に接触するよりも前に、押圧部材26の位置決め凸部262がガイド部材23の位置決め孔234に入り込むとともに、第二位置決め部材27の第二位置決め部272が第一位置決め部材24の第一位置決め部241の内周側(第一位置決め面242に囲まれる領域)に入り込む。このため、押圧部材26と各保持部材21とが位置決めされた状態で保持部材21を移動させることができる。したがって、各保持部材21を初期位置から作動位置へ移動させる際に、押圧部材26と各保持部材21の位置ずれが防止され、各保持部材21が押圧部材26に押されるタイミングまたは各保持部材21の半径方向の位置が不均一になることを防止または抑制できる。
【0060】
また、第二位置決め部材27の下端面が第一位置決め部材24に接触すると、第二位置決め部材27はその位置よりも下側に移動できない。ただし、第二位置決め部材27は第二位置決め部材支持機構28を介して押圧部材26に対して移動可能に支持されている。このため、第二位置決め部材支持機構28の第二位置決め部材付勢バネ284が弾性圧縮変形することによって、押圧部材26はさらに下方に移動できる。
【0061】
また、各保持部材21はエアシリンダ22によって初期位置の側に向かって与圧されている。このような構成であると、各保持部材21の初期位置から作動位置への移動の同期の精度を高めることができる。換言すると、押圧部材26によって各保持部材21を初期位置から作動位置に移動させる際に、すべての保持部材21が半径方向に相対移動しないこと(同じ速度で移動すること、半径方向の相対速度がゼロであること)の確実性を高めることができる。すなわち、押圧部材26によって各保持部材21を外周側に移動させる構成では、環状コア10に含まれる分割コア14どうしの連結強度が均一でない場合、連結強度の弱い箇所から分離し、分離した部分を含む分割コア14を保持する一部の保持部材21が残りの保持部材21よりも速く移動するおそれがある。ここで、速く移動した保持部材21に保持されている分割コア14とその分割コア14の一方側に隣接する分割コア14が分離されていても、その分割コア14の他方側に隣接する分割コア14が未だ分離されていないこともある。この場合、速く移動した保持部材21とその他方側に隣接する保持部材21の移動速度が異なることにより、保持部材21どうしの半径方向の位置がずれる。保持部材21どうしの半径方向の位置がずれると、それぞれの保持部材21に保持されている分割コア14の連結凸部と連結凹部が干渉しあって、これらの分割コア14を分離できなくなる。このため環状コア10を個別の分割コア14に分離する際に、連結凸部と連結凹部の形状を欠損してしまうおそれがある。本実施装置20によれば、各保持部材21をエアシリンダ22によって中心側に向けて与圧することにより、一部の保持部材21が残りの保持部材21よりも速く移動することを防止して各保持部材21の移動の同期の精度を高めることができる。したがって、環状コア10に含まれる分割コア14どうしの連結強度が均一でない場合であっても、保持部材21の移動の同期の精度を高めることができるから、円形状の積層コア10を個別の分割コア14に分離できる。
【0062】
また、本実施装置20においては、押圧部材26と各保持部材21とは、保持部材21の上側と下側の両側において位置決めされるから、位置決めの精度を高めることができる。そして、第一の軸線C1と第二の軸線C2とが一致する状態で保持部材21を初期位置から作動位置に移動させることができるから、保持部材21の移動の同期の精度を高めることができる。
【0063】
また、各保持部材21が初期位置から作動位置に移動する際に、保持部材21の第二保持面212がティース部12の半径方向内側の面に接触し、この面を半径方向外側に向かって押す。前記のとおり、環状コア10は複数のコア片13が積層して形成されていることから、積層しているコア片13どうしの位置ずれなどによって、環状コア10を形成している複数のコア片13のうちの特定のコア片13が半径方向内側に飛び出していることがある。このような場合、保持部材21の移動時に保持部材21の第二保持面212がその特定のコア片13にのみ接触し、これにより特定のコア片13に大きな力が掛かることがある。そしてその結果、コア片13どうしが分離するおそれがある。本実施装置20では、環状コア10(分割コア14)には押圧機構30によってコア片13の積層方向に圧縮する力が加えられているから、環状コア10(分割コア14)を形成するコア片13どうしが分離することが防止される。
【0064】
また、押圧機構30には回転可能なローラ301が設けられており、このローラ301が環状コア10に接触するように構成されている。このため、保持部材21が初期位置から作動位置に移動する際に、ローラ301が環状コア10の表面上で回転することにより、環状コア10の表面に傷が付くことが防止される。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
例えば、本実施形態では、押圧部材26によって各保持部材21を初期位置から作動位置に移動させる構成を示したが、移動機構25は前記構成に限定されない。要は、移動機構25は、すべての保持部材21を互いに半径方向に相対移動することなく(換言すると、半径方向位置が互いに一致する状態で)初期位置から作動位置へ移動させることができるように構成されていればよい。例えば、移動機構25として複数のリニアアクチュエータが適用されるとともに、積層コアの分離装置がこれら複数のリニアアクチュエータを同期して作動させる制御装置を有していてもよい。この場合には、各リニアアクチュエータに保持部材21が連結されており、制御装置が複数のリニアアクチュエータを同期して作動させることによって、保持部材21が同期して初期位置から作動位置に移動するように構成されていればよい。
【0067】
また、前記実施形態では、第一位置決め部材24の第一位置決め部241の内周側に第二位置決め部材27の第二位置決め部271が入り込む構成を示したが、このような構成に限定されない。第二位置決め部材27の第二位置決め部271の内周側に第一位置決め部材24の第一位置決め部241が入り込む構成であってもよい。要は、第一位置決め部材24と第二位置決め部材27とは、各保持部材21の上側において押圧部材26と各保持部材21とを位置決めできるように構成されていればよい。
【0068】
また、本実施形態では、与圧機構としてエアシリンダ22を示したが、与圧機構はエアシリンダ22に限定されない。与圧機構としてバネが適用される構成であってもよい。要は、与圧機構は、各保持部材21を初期位置から作動位置に移動させる際に、各保持部材21を中心側に向かって移動機構25よりも小さい力で与圧できる構成であればよい。なお、上記のように移動機構25としてリニアアクチュエータが適用される場合には、与圧機構が設けられなくてもよい。
【0069】
また、与圧機構に代えて、保持部材21の半径方向外側への移動の抵抗となる抵抗機構が設けられていてもよい。例えば、保持部材21とガイド部材23の接触面に凹凸などを設けて摺動抵抗を大きくする構成であってもよい。また、抵抗機構としてダンパーが設けられる構成であってもよい。要は、抵抗機構は、保持部材21が外周側に向かって急激に移動することを防止できる構成であればよい。
【0070】
また、前記実施形態では、押圧面261が第二の軸線C2に対して傾斜する傾斜面であり、被押圧面216が第一の軸線C1に対して傾斜する傾斜面である構成を示したが、このような構成に限定されない。すなわち、押圧面261が第二の軸線C2に対して傾斜する傾斜面であるか、または、被押圧面216が第一の軸線C1に対して傾斜する傾斜面であれば、押圧面261が被押圧面216に接触して被押圧面216を押すことができる。したがって、押圧面261と被押圧面216の少なくとも一方が傾斜面であればよい。
【符号の説明】
【0071】
20…環状コアの分離装置(本実施装置)、204…駆動部、21…保持部材、210…保持部、216…被押圧面、22…エアシリンダ、23…ガイド部材、24…第一位置決め部材、25…移動機構、26…押圧部材、261…押圧面、27…第二位置決め部材、272…第二位置決め部、273…第二位置決め面、30…押圧機構、C1…第一の軸線、C2…第二の軸線