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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】地盤改良体の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020059936
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021156119
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 敏巳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】幸山 大己
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-081527(JP,A)
【文献】特開2008-057117(JP,A)
【文献】特開昭56-003713(JP,A)
【文献】特開昭57-123322(JP,A)
【文献】特開昭55-055719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイト液を供給しながら地盤を削孔し、地中孔を前記ベントナイト液と掘削土砂が混じった掘削泥水で満たす工程と、
前記地中孔を満たす掘削泥水に、高炉スラグ微粉末を主材とするスラグ混合液を添加する工程と、
アルカリ刺激剤の存在下で、前記掘削泥水と前記スラグ混合液を攪拌混合する工程と、を備える地盤改良体の構築方法であって、
前記ベントナイト液に含まれるベントナイト量は、前記掘削土砂が混じった掘削泥水の比重が約1.5となるように調整され、
前記高炉スラグ微粉末とアルカリ刺激剤の合計重量は、比重調整された掘削泥水の1m あたり250kg以上400kg以下に調整されていることを特徴とする地盤改良体の構築方法。
【請求項2】
ベントナイト液を供給しながら地盤を削孔し、地中孔を前記ベントナイト液と掘削土砂が混じった掘削泥水で満たす工程と、
前記地中孔を満たす掘削泥水に、高炉スラグ微粉末を主材とするスラグ混合液を添加して混合し中間液を作液し、該中間液で前記地中孔を満たす工程と、
前記地中孔を満たす前記中間液に、アルカリ刺激剤を添加し攪拌混合する工程と、を備える地盤改良体の構築方法であって、
前記ベントナイト液に含まれるベントナイト量は、前記掘削土砂が混じった掘削泥水の比重が約1.5となるように調整され、
記高炉スラグ微粉末とアルカリ刺激剤の合計重量は、比重調整された掘削泥水の1m あたり250kg以上400kg以下に調整されていることを特徴とする地盤改良体の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉スラグ微粉末を利用して地盤改良体を構築するための地盤改良体の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土留め杭や土留め壁等の地中構造物に地盤改良体を利用することが広く知られている。例えば、特許文献1では、ソイルセメント構造物を構成する地盤改良体を、小型の地盤改良装置にて造成する方法が開示されている。
【0003】
具体的には、下端部近傍に掘削ビットを備えるロッドに起振力を伝達する起振装置を接続し、ロッドに上下方向の起振力を付与しながら回転させることにより地盤を削孔しつつロッドの先端よりセメント系固化液を吐出し、掘削土とセメント系固化液を混合攪拌して地盤中にソイルセメントよりなる地盤改良体を造成する。
【0004】
このような地盤改良体は、大深度地下構造物の構築予定領域を取り囲む土留め壁として使用する場合、掘削による周辺構造物への影響を抑制するべく、ソイルセメント壁の設計基準強度を高く設定する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5443928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地盤改良体の圧縮強度を向上させる方法として、例えば、掘削土と混合攪拌するセメント系固化液の注入量を増加させる方法が考えられる。しかし、この方法では、注入量の増加に伴って排泥量も増加することから、処分費用が嵩むこととなり経済的とは言えない。
【0007】
一方で、セメント系固化液に含まれるセメント量を増加させる方法も採用可能だが、環境への負荷が大きい。つまり、セメントはその製造段階で、地球温暖化の原因となるガスの一つとして知られているCO2を大量に排出することが知られている。
【0008】
また、上記のいずれの方法であっても、地盤改良体を構築する際にセメントを用いると、地盤中への六価クロムの溶出といった課題が生じやすい。これは、土中に粘土鉱物や水和物の生成を阻害する有機物が存在する場合、セメントに含まれる六角クロムが水和物に固定されないことに起因する。このため、地盤改良施工を実施する際には、改良対象の地盤と使用するセメントとの相性を把握するべく六価クロム溶出試験を行う必要があるなど、作業が煩雑である。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、環境に配慮しつつ所望の圧縮強度を発現させることの可能な、地盤改良体の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の地盤改良体の構築方法は、ベントナイト液を供給しながら地盤を削孔し、地中孔を前記ベントナイト液と掘削土砂が混じった掘削泥水で満たす工程と、前記地中孔を満たす掘削泥水に、高炉スラグ微粉末を主材とするスラグ混合液を添加する工程と、アルカリ刺激剤の存在下で、前記掘削泥水と前記スラグ混合液を攪拌混合する工程と、を備える地盤改良体の構築方法であって、前記ベントナイト液に含まれるベントナイト量は、前記掘削土砂が混じった掘削泥水の比重が約1.5となるように調整され、記高炉スラグ微粉末とアルカリ刺激剤の合計重量は、比重調整された掘削泥水の1m あたり250kg以上400kg以下に調整されていることを特徴とする。また、ベントナイト液を供給しながら地盤を削孔し、地中孔を前記ベントナイト液と掘削土砂が混じった掘削泥水で満たす工程と、前記地中孔を満たす掘削泥水に、高炉スラグ微粉末を主材とするスラグ混合液を添加して混合し中間液を作液し、該中間液で前記地中孔を満たす工程と、前記地中孔を満たす前記中間液に、アルカリ刺激剤を添加し攪拌混合する工程と、を備える地盤改良体の構築方法であって、地盤改良体の構築方法であって、前記ベントナイト液に含まれるベントナイト量が、前記掘削土砂が混じった掘削泥水の比重が約1.5となるように調整され、前記高炉スラグ微粉末とアルカリ刺激剤の合計重量が、比重調整された掘削泥水の1m3あたり250kg以上400kg以下に調整されていることを特徴とする。
【0011】
上述する本発明の地盤改良体の構築方法によれば、高炉スラグ微粉末の潜在硬化性を利用して掘削泥水を硬化することから、セメントを無使用もしくはアルカリ刺激剤として使用する程度にとどめることができる。これにより、セメントを製造することにより生じるCO2の排出や、セメント系固化液を用いることにより生じる恐れのある地中への六価クロムの溶出を抑制できる。したがって、従来のような地盤改良にセメント系固化液を用いる場合と比較して、環境への負荷を大幅に低減することが可能となる。
【0012】
また、セメントをアルカリ刺激剤として使用する場合にも、セメントの使用量は高炉スラグ微粉末を刺激する程度の微量とすることができる。これにより、地盤改良工法に広く用いられ、セメントと高炉スラグ微粉末があらかじめ混合されている高炉セメントB種を採用する場合と異なり、高炉スラグ微粉末に対するセメントの添加量を調整しつつ、地盤改良に要求される圧縮強度を精度よく発現させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高炉スラグ微粉末の潜在硬化性を利用して地盤改良体を構築することから、セメントを無使用もしくはアルカリ刺激剤として使用する程度にとどめることができ、環境負荷を低減しつつ所望の圧縮強度を発現する地盤改良体を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における地中構造物に用いる地盤改良体を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における地盤改良体の一軸圧縮強度試験の結果を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における地中削孔する様子を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における第1の地盤改良体の構築方法を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における地中孔に芯材を建て込む様子を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における第2の地盤改良体の構築方法を示す図である(その1)。
図7】本発明の実施の形態における第2の地盤改良体の構築方法を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、地中構造物を構成する地盤改良体を、潜在硬化性を有する高炉スラグ微粉末を利用して構築するものである。本実施の形態では、地盤改良体を芯材を貫入した支持杭に用いる場合を事例に挙げ、以下に図1図7を参照しつつその詳細を説明する。
【0016】
≪地中構造物≫
図1で示すように、支持杭1は円柱状に形成された地中構造物であり、本実施の形態では、断面径400mm~800mm程度の地中孔Hに建て込まれた芯材2と、芯材2を内包するように地中孔Hに造成される地盤改良体3とにより構成されている。
【0017】
なお、地中孔Hの断面径は、必ずしも限定されるものではなく、例えば800mm以上の断面径を採用してよい。また、芯材2は、長尺鋼材であれば鋼管等いずれを採用してもよいが、本実施の形態では、H型鋼を採用している。
【0018】
地盤改良体3は、地盤中に設けられた地中孔Hを満たす地盤改良液W4を硬化させたものであり、地盤改良液W4は、掘削土砂Gが混じった地中孔Hを満たす掘削泥水W2に、スラグ混合液Mとアルカリ刺激剤Aを添加し、混合攪拌することにより作液されている。
【0019】
スラグ混合液Mは、高炉スラグを冷却して造られるガラス質の砂状スラグである高炉水砕スラグを、乾燥・微粉砕し成分調整を行った高炉スラグ微粉末Bと、水Wとを混合したものである。高炉水砕スラグは、CaO、SiO2、Al23、を主要化学成分とし、それ自体は水と混合させても硬化しない。しかし、アルカリ刺激剤Aの存在下では、SiO2及びAl23が水和反応が進行して硬化する、いわゆる潜在硬化性を有する。
【0020】
アルカリ刺激剤Aは、石灰、消石灰、セメント、あるいはアルカリ化合物等、高炉スラグ微粉末Bの水和反応を促進することの可能な材料であれば、いずれを採用してもよい。また、アルカリ刺激剤Aに相当する材料が地盤中に含まれている場合には、必ずしもアルカリ刺激剤Aを添加しなくてもよい。
【0021】
上記の潜在硬化性を有する高炉スラグ微粉末Bは、アルカリ刺激剤Aを添加すると安定な水和物を生成するだけでなく、硬化体組織を緻密化することが一般に知られている。このため、製造時にCO2を排出するセメントの代替材料として広く用いられており、特に、コンクリート製品を製造する際、細骨材及び粗骨材を結合するための結合材として一般に採用されている。
【0022】
CO2排出量は、セメント1tあたり約772kgであるのに対し、高炉スラグ微粉末Bで1tあたり約36kgとされている。したがって、高炉スラグ微粉末Bをセメントの代替材料として使用することにより、環境負荷低減に大きく寄与できる。また、高炉スラグ微粉末Bは、製造時のCO2排出量が少ないだけでなく、セメントのように地盤中で六価クロムを溶出する恐れの生じる物質ではない。
【0023】
そこで、地盤改良体3を構築するに際し、セメントを主材とするセメント系固化液の代替材料として、高炉スラグ微粉末Bを主材とするスラグ混合液Mを採用することとした。
【0024】
これにより、掘削泥水W2を硬化させる材料としてスラグ混合液Mを使用することにより、掘削泥水W2に水和反応を阻害する腐植土や火山灰質粘性土が多く含まれていても、地盤中への六価クロムの溶出を抑制できる。つまり、地盤改良対象領域の地盤性状によらず、環境への影響に配慮した地盤改良体3を構築でき、ひいては地盤改良体3を用いた支持杭1を構築することが可能となる。
【0025】
上記の地盤改良液W4を作液するにあたっては、まず、ベントナイト液W1に含むベントナイト量を、掘削土砂Gの混じった掘削泥水W2の比重が1.5程度になるよう調整する。次に、比重調整がされた掘削泥水W2の1m3あたり、高炉スラグ微粉末Bとアルカリ刺激剤Aとの合計が重量が250kg~400kg程度となるように、高炉スラグ微粉末Bの重量を調整し、水と混合してスラグ混合液Mを作液する。
【0026】
このとき、高炉スラグ微粉末Bとアルカリ刺激剤Aが、重量比で70~85:30~15程度に調整することが好ましい。なお、高炉スラグ微粉末Bは、比表面積が4000cm2/g程度と大きいものを採用すると、アルカリ刺激による硬化反応性を、より促進させることができる。
【0027】
そして、地盤改良体3に所望の圧縮強度を発現させるには、アルカリ刺激剤Aに用いる材料の選択と、その材料に応じて適宜、高炉スラグ微粉末Bとアルカリ刺激剤Aの和に対する高炉スラグ微粉末Bが占める割合の調整を適宜行えばよい。
【0028】
≪地盤改良体の一軸圧縮強度試験≫
図2に、高炉スラグ微粉末Bが占める割合やアルカリ刺激剤Aとして採用する材料を変更して地盤改良液W4を作液し、これを硬化した地盤改良体3よりなる支持杭1に対して一軸圧縮強度試験を実施した結果を示す。試験対象の支持杭1は、断面径が750mm、設計体長が約15m、地盤改良体3の設計強度が1000kN/m2に設定されたものを対象とした。
【0029】
また、高炉スラグ微粉末Bとして、株式会社ディ・シィ製のセラメント(登録商標)を採用し、アルカリ刺激剤Aには、普通ポルトランドセメントを採用した場合と消石灰を使用した場合の試験を行った。さらに、比較例として、普通ポルトランドセメントを主材とするセメント系固化液を添加して地盤改良体3を構築し、同じく一軸圧縮試験を行った。
【0030】
図2を見ると、高炉スラグ微粉末Bを70%に設定した実施例1では一軸圧縮強度が4204kN/m2、高炉スラグ微粉末Bを85%に設定した実施例2では一軸圧縮強度が3542kN/m2となっている。これらはいずれも、設計基準強度1000kN/m2を大きく超えているだけでなく、普通ポルトランドセメントを主材とするセメント系固化液を使用した比較例の一軸圧縮強度3094kN/m2をも大きく上回っている。
【0031】
また、アルカリ刺激剤Aとして普通ポルトランドセメントに代えて消石灰を用いた実施例3では、一軸圧縮強度が4195kN/m2と設計基準強度及び比較例の一軸圧縮強度を大きく上回っている。
【0032】
このように、高炉スラグ微粉末Bを刺激するために適切な量のアルカリ刺激剤Aを用いた地盤改良液W4を作液することにより、セメントを無使用もしくはアルカリ刺激剤Aとして使用する程度にとどめても、地盤改良体3に所望の圧縮強度を発現させることが可能となる。
【0033】
なお、アルカリ刺激剤Aとして用いるセメントは、水和反応により水酸化カルシウムCa(OH)2を生じて高炉スラグ微粉末Bを刺激する。また、水和反応を生じることなく地盤中に残存した場合にも、セメントに含まれる六価クロムは高炉スラグ微粉末Bに含まれる還元物質に還元され、地盤への溶出が抑制される。
【0034】
≪地盤改良体の構築方法≫
上記の構成を有する地盤改良体3の構築方法を、支持杭1を構築する手順と併せて以下に説明する。なお、地盤改良体3を構築するにあたっては、アルカリ刺激剤Aの存在下で、スラグ混合液Mと掘削泥水W2とを混合攪拌できれば、アルカリ刺激剤Aはいずれの段階で添加してもよい。以下に、2通りの構築手順を事例に挙げて説明する。
【0035】
≪≪第1の構築方法≫≫
第1の構築方法では、スラグ混合液Mとアルカリ刺激剤Aとを同時に添加して地盤改良液W4を作液する場合の手順を示す。
【0036】
≪第1の工程≫
まず、図3で示すように、支持杭1の施工対象領域の所定位置に後述する削孔攪拌装置10を据え付け、ベントナイト液W1を供給しながら削孔攪拌装置10を介して地盤を削孔する。
【0037】
<削孔攪拌装置>
地中削孔に使用する削孔攪拌装置10は、図3で示すように、キャタピラからなる移動機構11と、移動機構11によって移動可能な台座部12と、台座部12により鉛直方向に延びるように支持されたリーダー13とを備えている。
【0038】
また、リーダー13に沿って上下方向に移動可能に設置された起振装置14と、頭部が起振装置14に接続されたロッド15と、ロッド15の先端に取り付けられた掘削攪拌部16とを備えている。さらには、掘削攪拌部16の先端から吐出されるベントナイト液W1をロッド15の内部に供給するベントナイトの調整液供給装置17と、ロッド15に回転力を付与する回転装置18と、を備えている。
【0039】
起振装置14は、偏芯重錘を回転させることで上下方向の起振力を発生させる装置であり、リーダー13に沿って鉛直移動可能に設置されている。なお、起振装置14は、ロッド15に対して上下方向又は横方向のうち少なくとも何れかの成分を含む振動を伝達可能な起振力を発生できる装置であればいずれを用いてもよい。
【0040】
回転装置18は、その内方に備えられた図示しないロッド把持部にてロッド15の周面を把持し、ロッド15に対してその軸を中心とした正方向もしくは逆方向の回転力を付与する装置である。その配置位置は、起振装置14の下側に位置し、起振装置14とともにリーダー13に沿って鉛直移動可能に設置されている。
【0041】
ロッド15は、中空を備える一重管よりなり、起振装置14にて頭部を支持された状態で立設され、中間部に設置されたスイベル151を介してベントナイト液W1を調整し供給する調整液供給装置17に接続されるとともに、先端部に掘削攪拌部16が接続されている。
【0042】
掘削攪拌部16は、ロッド15に接続される軸部161と、軸部161の先端部近傍であって側方に延びるように取り付けられた掘削翼本体162と、掘削翼本体162に取り付けられた掘削ビット163とを備える。また、軸部161の先端には、先端ビット164が取り付けられるとともに、吐出口(図示せず)が設けられている。
【0043】
ベントナイト液W1を調整し供給する調整液供給装置17は、前述したベントナイト液W1を製造するプラント171と、製造されたベントナイト液W1をロッドに供給するためのベントナイト泥水供給管172とを備える。本実施の形態では、地中孔Hを満たす掘削泥水W2が比重1.5程度となるよう、ベントナイト液W1の比重を地盤の性状等を考慮しつつ調整管理している。
【0044】
上記の構成により削孔攪拌装置10の掘削攪拌部16は、余掘りした口元管P内に貫入させた状態で作動させると、起振装置14により上下方向の振動を付与されつつ回転装置18によりロッド15の軸を中心に正回転する。これと同時に、調整液供給装置17から供給されベントナイト液W1が、ロッド15を介して掘削攪拌部16の軸部161先端に設けられた吐出口より吐出される。
【0045】
なお、本実施の形態では、支持杭1の構築予定位置にあらかじめ、孔壁保護のため地表面から口元管Pを貫入し、口元管P内をあらかじめ余掘りをしておく。こののち、削孔攪拌装置10にて支持杭1の構築予定位置を削孔しているが、口元管Pは必ずしも適用する必要はない。
【0046】
例えば、作業地盤が強固であれば、素掘りおよび敷き鉄板等による整備のみでもよい。また、地中孔Hを構築するべく削孔作業を開始する際には、ベントナイト液W1を利用して削孔により発生した余剰な掘削土砂Gを排泥するための排泥管Sを、地中孔Hの孔口近傍に設置しておく。
【0047】
これにより、掘削攪拌部16に備えた掘削ビット163および先端ビット164にて地盤が回転掘削されることにより掘削土砂Gとベントナイト液W1が混合攪拌され、地中孔H内は掘削土砂Gが混じった掘削泥水W2で満たされる。なお、上記の削孔攪拌装置10を用いた削孔作業は、余剰な掘削泥水W2を排泥管Sを介して排泥しつつ行う。
【0048】
≪第2の工程≫
次に、図4で示すように、掘削泥水W2で満たされた地中孔H内で、掘削泥水W2の一部をスラグ混合液Mとアルカリ刺激剤Aに置換し、これらを攪拌混合して地盤改良液W4を作液する。
【0049】
スラグ混合液Mとアルカリ刺激剤Aは、ベントナイトの調整液供給装置17に代えて削孔攪拌装置10に接続された混合水供給装置19で製造され、地中孔Hに注入される。なお、混合水供給装置19は、スラグ混合液Mにアルカリ刺激剤Aを添加した混合物を製造するプラント191と、この製造した混合物をスイベル151を介してロッド15に供給するための混合液供給管192とを備える。
【0050】
削孔攪拌装置10による攪拌作業は、回転装置18によりロッド15を軸周りに正回転しつつ、スラグ混合液Mとアルカリ刺激剤Aの混合液を吐出する。この混合液は、混合水供給装置19から掘削攪拌部16に供給され、軸部161先端に設けられた吐出口(図示せず)より吐出される。こうして、地中孔H内で掘削攪拌部16により、掘削泥水W2、スラグ混合液M及びアルカリ刺激剤Aが混合攪拌され、地中孔H内は地盤改良液W4で満たされる。
【0051】
このとき、スラグ混合液Mとアルカリ刺激剤Aを地中孔Hに吐出することで余剰となった掘削泥水W2は、排泥管Sを介して排泥する。なお、前述した一軸圧縮強度試験の結果からも明らかなように、スラグ混合液Mとアルカリ刺激剤Aを添加すると、セメント系固化液を添加する場合と同程度の置換率でありながら高い圧縮強度を発現できる。つまり、小さい置換率で同程度の一軸圧縮強度を発現させることができるため、セメント系固化液を採用する場合と比較して排泥量を大幅に削減できる。
【0052】
≪第3の工程≫
こののち、図5で示すように、クレーン等で吊り下げた芯材2を、地盤改良液W4で満たされた地中孔H内に吊り下ろし、建込み作業を行う。芯材2が所定の高さ位置に建て込まれたことを確認したのち、地盤改良液4を所定期間にわたって養生することにより、地盤改良液4が硬化して地盤改良体3となり、図1で示すような支持杭1が構築されることとなる。
【0053】
≪≪第2の構築方法≫≫
第2の構築方法では、掘削泥水W2にスラグ混合液Mとアルカリ刺激剤Aとを別途添加して、地盤改良液W4を作液する場合の手順を示す。
【0054】
≪第1の工程≫
まず、第1の構築方法と同様で、図3で示すように、支持杭1の施工対象領域の所定位置に据え付けた削孔攪拌装置10を用いて、ベントナイト液W1を供給しながら地盤を削孔し、掘削土砂Gが混じった掘削泥水W2で地中孔H内を満たす。
【0055】
≪第2の工程≫
次に、図6で示すように、掘削泥水W2で満たされた地中孔H内で、掘削泥水W2の一部をスラグ混合液Mに置換して混合攪拌し、掘削泥水W2とスラグ混合液Mが混合した中間液W3で地中孔Hを満たす。ここでは、混合水供給装置19のプラント191で、スラグ混合液Mのみを作液する。
【0056】
そして、削孔攪拌装置10による攪拌作業は、回転装置18によりロッド15を軸周りに正回転しつつ、スラグ混合液Mを吐出する。スラグ混合液Mは、混合水供給装置19から掘削攪拌部16に供給され、軸部161先端に設けられた吐出口(図示せず)より吐出される。こうして、地中孔H内で掘削攪拌部16により、掘削泥水W2及びスラグ混合液Mが混合攪拌され、地中孔H内は地盤改良液W4で満たされる。
【0057】
≪第3の工程≫
地中孔Hが、掘削泥水W2とスラグ混合液Mが混合した中間液W3で満たされたのち、図7で示すように、アルカリ刺激剤Aを投下し攪拌混合する。
【0058】
攪拌混合は、削孔攪拌装置10の回転装置18によりロッド15を軸周りに正回転して行う。これにより、地中孔H内は、掘削泥水W2、スラグ混合液M及びアルカリ刺激剤Aが混合した地盤改良液W4で満たされる。なお、アルカリ刺激剤Aは、採用する材料に応じて粉体で投下してもよいし、水と混合させた混合液として投下してもよい。
【0059】
≪第4の工程≫
こののち、第1の構築方法と同様に、クレーン等で吊り下げた芯材2を地盤改良液W4で満たされた地中孔H内に吊り下ろし、図5で示すように建込み作業を行う。
【0060】
上述する本発明の地盤改良体の構築方法によれば、高炉スラグ微粉末Bを主材とするスラグ混合液Mを利用することから、セメントを無使用もしくはアルカリ刺激剤Aとして使用する程度にとどめることができる。
【0061】
これにより、セメントを製造することにより生じるCO2の排出や、セメント系固化液を用いることにより生じる恐れのある地中への六価クロムの溶出を抑制できる。したがって、従来のような地盤改良にセメント系固化液を用いる場合と比較して、環境への負荷を大幅に低減することが可能となる。
【0062】
また、セメントをアルカリ刺激剤Aとして使用する場合にも、セメントの使用量は高炉スラグ微粉末Bを刺激するために最適な量を添加することができる。これにより、地盤改良工法に広く用いられ、セメントと高炉スラグ微粉末があらかじめ混合されている高炉セメントを採用する場合と異なり、高炉スラグ微粉末に対するセメントの添加量を調整しつつ、地盤改良に要求される圧縮強度を精度よく発現させることが可能となる。
【0063】
なお、本発明の地盤改良体の構築方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0064】
例えば、本実施の形態では、地盤改良体3を支持杭1に用いる場合を事例に挙げたが、これに限定されるものではなく、地盤改良体3はいずれの地中構造物に採用されるものであってもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、削孔攪拌装置10を用いて地中孔Hを構築したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ベントナイト液W1を供給しつつ地盤を削孔し、掘削土砂Gが混じった掘削泥水W2で満たされた地中孔Hを構築可能であれば、いずれの掘削装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 支持杭(地中構造物)
2 芯材
3 地盤改良体
10 削孔攪拌装置
11 移動機構
12 台座部
13 リーダー
14 起振装置
15 ロッド
151 スイベル
16 掘削攪拌部
161 軸部
162 掘削翼本体
163 掘削ビット
164 先端ビット
17 調整液供給装置
18 回転装置
19 混合水供給装置

S 排泥管
P 孔壁保護管
W1 ベントナイト液
W2 掘削泥土
W3 中間液
W4 地盤改良液
G 掘削土砂
M スラグ混合液
B 高炉スラグ微粉末
A スラグ刺激剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7