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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】容積式加減圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/0533 20200101AFI20240214BHJP
   F04B 1/0421 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
F04B1/0533
F04B1/0421
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020061848
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161886
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】原田 智夫
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-062817(JP,A)
【文献】実開昭61-084179(JP,U)
【文献】国際公開第2019/138858(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/0533
F04B 1/0421
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの移動により液圧室の容積が変化するように構成された容積可変機構と、前記液圧室に開口する第1ポート及び第2ポートと、前記ピストンの移動に応じて前記第1ポートを開閉させる弁機構と、を有するフルード送出部と、
2つの前記フルード送出部に対して一方の前記フルード送出部の前記第1ポートと他方の前記フルード送出部の前記第2ポートとが接続された状態を直列接続と定義すると、3つ以上の前記フルード送出部が直列接続されて形成されたポンプ流路と、
電気モータの駆動により各前記ピストンを移動させる駆動装置と、
を備え、
直列接続された前記3つ以上の前記フルード送出部は、前記電気モータの駆動により回転する出力軸の回りの周方向に並んで配置され、
前記ポンプ流路の一端部に位置する前記フルード送出部の前記第1ポートが第1出入口を構成し、
前記ポンプ流路の他端部に位置する前記フルード送出部の前記第2ポートが第2出入口を構成し、
各前記ピストンの移動範囲には、前記第1ポートの状態が開口状態であり且つ前記液圧室の容積が最大となる容積最大位置と、前記第1ポートの状態が閉鎖状態であり且つ前記液圧室の容積が最小となる容積最小位置と、前記容積最大位置から前記容積最小位置に向けて前記ピストンが移動した際に前記第1ポートの状態が開口状態から閉鎖状態に切り替わる位置である切替位置と、が含まれ、
前記ポンプ流路は、前記電気モータの駆動により前記出力軸が周方向一方に回転した場合に、前記ピストンが前記切替位置と前記容積最小位置との間を移動する閉鎖移動工程が前記第1出入口から前記第2出入口に向けて前記フルード送出部間を順番に移り、かつ、前記電気モータの駆動により前記出力軸が周方向他方に回転した場合に、前記閉鎖移動工程が前記第2出入口から前記第1出入口に向けて前記フルード送出部間を順番に移っていくように構成されている容積式加減圧ポンプ。
【請求項2】
位相が異なる複数の前記ポンプ流路が並列に接続されている請求項1に記載の容積式加減圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積式加減圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用制動装置には、例えば独国特許出願公開第10 2017 214 859号明細書に記載されているように、ホイールシリンダの液圧を調整するための電動シリンダが設けられているものがある。この車両用制動装置は、ホイールシリンダを加減圧する際、電動シリンダ内のピストンを電気モータで移動させ、シリンダとピストンで区画された出力室の容積を減少又は増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第10 2017 214 859号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電動シリンダは、構成上、出力室の容積によって加圧及び減圧の限界値が決まる。つまり、ピストンがシリンダの底面に当接して出力室の容積が最小値になると、それ以上は電動シリンダによりホイールシリンダを加圧することはできない。減圧の場合も同様に、例えば、ピストンが底面と反対側の面に当接するとそれ以上減圧できない。加減圧の範囲(加減圧可能な液圧の範囲)を広くするためには出力室の容積を大きくする必要があり、装置が大型化してしまう。
【0005】
本発明の目的は、装置を大型化することなく加減圧の範囲を広くすることができ、且つ液圧制御対象を加減圧可能な新たな容積式加減圧ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の容積式加減圧ポンプは、ピストンの移動により液圧室の容積が変化するように構成された容積可変機構と、前記液圧室に開口する第1ポート及び第2ポートと、前記ピストンの移動に応じて前記第1ポートを開閉させる弁機構と、を有するフルード送出部と、2つの前記フルード送出部に対して一方の前記フルード送出部の前記第1ポートと他方の前記フルード送出部の前記第2ポートとが接続された状態を直列接続と定義すると、3つ以上の前記フルード送出部が直列接続されて形成されたポンプ流路と、電気モータの駆動により各前記ピストンを移動させる駆動装置と、を備え、直列接続された前記3つ以上の前記フルード送出部は、前記電気モータの駆動により回転する出力軸の回りの周方向に並んで配置され、前記ポンプ流路の一端部に位置する前記フルード送出部の前記第1ポートが第1出入口を構成し、前記ポンプ流路の他端部に位置する前記フルード送出部の前記第2ポートが第2出入口を構成し、各前記ピストンの移動範囲には、前記第1ポートの状態が開口状態であり且つ前記液圧室の容積が最大となる容積最大位置と、前記第1ポートの状態が閉鎖状態であり且つ前記液圧室の容積が最小となる容積最小位置と、前記容積最大位置から前記容積最小位置に向けて前記ピストンが移動した際に前記第1ポートの状態が開口状態から閉鎖状態に切り替わる位置である切替位置と、が含まれ、前記ポンプ流路は、前記電気モータの駆動により前記出力軸が周方向一方に回転した場合に、前記ピストンが前記切替位置と前記容積最小位置との間を移動する閉鎖移動工程が前記第1出入口から前記第2出入口に向けて前記フルード送出部間を順番に移り、かつ、前記電気モータの駆動により前記出力軸が周方向他方に回転した場合に、前記閉鎖移動工程が前記第2出入口から前記第1出入口に向けて前記フルード送出部間を順番に移っていくように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、閉鎖移動工程が実行されると、ピストンはポンプ流路を遮断しつつ液圧室の容積を変化させる。閉鎖移動工程での液圧室の容積減少によりフルードが第2ポートから吐出され、閉鎖移動工程での液圧室の容積増大によりフルードが第2ポートに吸入される。各フルード送出部での閉鎖移動工程の実行がポンプ流路で順番に移っていくことで、フルードが一方の出入口から吸入され他方の出入口に吐出される。これにより、フルード吸入対象(例えばリザーバ)のフルードがなくなるまで液圧制御対象を加圧することができる。液圧制御対象を減圧する場合、加圧とは逆の順番で閉鎖移動工程が移るように駆動装置を駆動させればよい。このように、本発明によれば、装置を大型化することなく加減圧の範囲を広くすることができ、且つ液圧制御対象を加減圧可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の構成を示す構成図である。
図2】第1実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図3】第1実施形態の構成を示す構成図である。
図4】第1実施形態のフルードの出力流量を示す図である。
図5】第1実施形態の容積式加減圧ポンプの適用例を示す概念図である。
図6】第2実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図7】第3実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図8】第4実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図9】第5実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図10】第6実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図11】第7実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図12】第8実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図13】第9実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図14】第10実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図15】第11実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
図16】第12実施形態の容積可変機構を説明するための概念断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。第1実施形態の説明及び図面は、各実施形態の対応する部分の説明及び図面として援用できる。また、説明に用いる各図は概念図である。
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態の容積式加減圧ポンプ1は、図1に示すように、第1ポンプ101と、第1ポンプ101に並列に接続された第2ポンプ102と、を備えている。後述するが、第1ポンプ101のカム(42)の位相と、第2ポンプ102のカム(43)の位相とは、180度異なっている。第1ポンプ101と第2ポンプ102とは、同じ構成であるため、第1ポンプ101を例として説明する。
【0011】
第1ポンプ101は、7つのフルード送出部21~27と、7つのフルード送出部21~27が直列接続されて形成されたポンプ流路3と、駆動装置4と、これらを収容する金属製のハウジング9と、を備えている。7つのフルード送出部21~27は、ハウジング9の環状部91に周方向に等間隔に配置されている。7つのフルード送出部21~27は、互いに同一の構成であるため、フルード送出部21の構成について説明する。また、以下の説明において、ハウジング9の環状部91の径方向外側を「前方」とし、当該環状部91の径方向内側を「後方」とする。
【0012】
(フルード送出部)
フルード送出部21は、図2に示すように、容積可変機構5と、第1ポート61と、第2ポート62と、弁機構7と、を備えている。容積可変機構5は、ピストン51と、凹部52と、液圧室53と、付勢部材54と、シール部材55と、を備えている。ピストン51は、金属製の円柱状部材であって、凹部52内に前後方向に摺動可能に配置されている。前後方向は、ピストン51の軸方向に相当する。
【0013】
凹部52は、ハウジング9の一部であって、後方に開口し前方に底面を有している。凹部52は、ハウジング9に形成された貫通孔にプラグ521が固定されることで形成されている。プラグ521は、凹部52の底面を構成している。プラグ521は、後方に開口し前方に底面を有する有底円筒状に形成されている。
【0014】
液圧室53は、ピストン51と凹部52とにより区画されている。液圧室53の容積は、ピストン51の移動に応じて変化する。後述するが、液圧室53は、ピストン51の移動に応じて、前方部位53aと後方部位53bとに区画される。付勢部材54は、ピストン51とプラグ521との間に配置されたばねであり、ピストン51を後方に付勢する。ピストン51の後端部は、後述する第1カム部材42に当接している。シール部材55は、樹脂製の環状部材であって、付勢部材54の外周側に配置されている。シール部材55は、ピストン51と同軸的に配置されている。
【0015】
シール部材55の外周面は、プラグ521の内周面に、軸方向に摺動可能に当接している。シール部材55の前端部とプラグ521の底面との間には、付勢部材551が配置されている。付勢部材551は、シール部材55を後方に付勢する。シール部材55の外周側には、環状のプレート552が配置されている。プレート552は、プラグ521の後端部に当接している。プレート552は、シール部材55に当接し、シール部材55が後方に移動しないように位置決めしている。シール部材55の後端部は、プレート552よりも後方に位置している。
【0016】
第1ポート61は、凹部52のうちプレート552よりも後方の部位に設けられ、液圧室53に開口している。第2ポート62は、凹部52のうち第1ポート61よりも前方の部位に設けられ、液圧室53に開口している。プラグ521には、第2ポート62に対応して貫通孔が設けられている。第1ポート61は液圧室53のうち環状部91の周方向一方側に位置し、第2ポート62は液圧室53のうち環状部91の周方向他方側に位置する。
【0017】
凹部52内における第1ポート61の後方には、ピストン51が挿通されたシリンダ部材56が配置されている。シリンダ部材56の内周側には、ピストン51の外周面に当接する環状のシール部材561(例えば樹脂製部材)が配置されている。シリンダ部材56及びシール部材561の外周面には、第1ポート61に対応する貫通孔56aが形成されている。貫通孔56aは、シリンダ部材56、561とプレート552とにより区画されている。プレート552は、シリンダ部材56とプラグ521とに挟まれて配置されている。
【0018】
また、凹部52内におけるシリンダ部材56の後方には、ピストン51の外周面に当接する環状のシール部材562が配置されている。シール部材562は、内周側に配置された樹脂製のシールシャフト562aと、外周側に配置されたゴム製のOリング562bとで構成されている。凹部52内におけるシール部材562の後方には、樹脂製のバックアップリング563が配置されている。このように、シール部材561、562は、ピストン51の前後方向への摺動を許容しつつ、液圧室53と外部との間をシールしている。
【0019】
弁機構7は、ピストン51の移動に応じて第1ポート61を開閉させる機構である。ピストン51が後端位置にある場合、第1ポート61は液圧室53全体に対して開口し、第1ポート61と第2ポート62とは連通している。ピストン51が後端位置から前進してシール部材55に当接すると、第1ポート61は、液圧室53のうちシール部材55の後端部から前方の部位(以下、前方部位53aという)に対して閉じられる。つまり、この場合、液圧室5を介した第1ポート61と第2ポート62との接続は遮断される。このように、第1ポート61が液圧室53全体に対して開くことで第1ポート61と第2ポート62とは連通し、第1ポート61が液圧室53の前方部位53aに対して閉じることで第1ポート61と第2ポート62とは遮断される。
【0020】
(ピストンの移動範囲)
ピストン51の移動範囲には、容積最大位置P1、容積最小位置P3、及び切替位置P2が含まれている。容積最大位置P1は、図2の上段に示すように、第1ポート61の状態が開口状態であり且つ液圧室53の容積が最大となる位置である。容積最小位置P3は、図2の下段に示すように、第1ポート61の状態が閉鎖状態であり且つ液圧室53の容積が最小となる位置である。切替位置P2は、図2の中段に示すように、容積最大位置P1から容積最小位置P3に向けてピストン51が移動した際に、第1ポート61の状態が開口状態から閉鎖状態に切り替わる位置である。弁機構7は、ピストン51と、切替位置P2においてピストン51と当接する部材(第1実施形態ではシール部材55)と、を備えて構成される。
【0021】
ピストン51は、移動範囲の後端である容積最大位置P1と移動範囲の前端である容積最小位置P3との間を、前後方向に往復移動する。容積最大位置P1と容積最小位置P3との間には、切替位置P2が存在する。ピストン51の動作には、容積最大位置P1と切替位置P2との間を移動する連通移動工程、及び切替位置P2と容積最小位置P3との間を移動する閉鎖移動工程が含まれている。
【0022】
(駆動装置)
駆動装置4は、ピストン51を移動させる装置である。駆動装置4は、図3に示すように、電気モータ41と、第1カム部材42と、第2カム部材43と、を備えている。第1カム部材42及び第2カム部材43(以下、カム部材42、43とも略称する)は、電気モータ41の出力軸411の異なる位置に固定されている。第1カム部材42は、第1ポンプ101の各ピストン51に当接している。第2カム部材43は、第2ポンプ102の各ピストン51に当接している。
【0023】
各カム部材42、43は、出力軸411に対して偏心している。各カム部材42、43は、偏心ベアリングを含んで構成されている。第1カム部材42の位相と第2カム部材43の位相とは、180度異なっている。カム部材42、43は、ハウジング9の中心部に形成された収容室92内に配置されている。ハウジング9の環状部91は、収容室92によって環状に形成されている。出力軸411及びカム部材42、43は、カムシャフトを構成している。なお、図3は、各ポンプ101、102で1つのフルード送出部21~27が表示されるように切断面が設定された断面図である。また、図2は、出力軸411の軸方向に直交する平面を切断面とした断面図である。
【0024】
(ポンプ流路)
ポンプ流路3は、3つ以上の(本実施形態では7つ)フルード送出部21~27が直列接続されて形成されている。直列接続は、2つのフルード送出部に対して一方のフルード送出部(例えばフルード送出部22)の第1ポート61と他方のフルード送出部(例えばフルード送出部21)の第2ポート62とが接続された状態と定義される。直列接続における第1ポート61と第2ポート62とを接続する各流路30は、ハウジング9に形成されている。
【0025】
ハウジング9の外周面には、ポンプ流路3の2つの出入口として、外部に開口した第1出入口31及び第2出入口32が形成されている。ポンプ流路3の周方向一端部に位置するフルード送出部21の第1ポート61が第1出入口31を構成している。第1出入口31は、フルード送出部21の第1ポート61と、ハウジング9の外周面と当該第1ポート61とを接続する流路31aとにより構成されている。ポンプ流路3の周方向他端部に位置するフルード送出部27の第2ポート62が第2出入口32を構成している。第2出入口32は、フルード送出部27の第2ポート62と、ハウジング9の外周面と当該第2ポート62とを接続する流路32aとにより構成されている。
【0026】
(フルード送出部の動作)
電気モータ41の出力軸411が回転してカム部材42、43が回転すると、カム部材42、43に当接している各ピストン51が前後方向に移動する。動作について第1カム部材42を例に説明する。第1カム部材42のうち出力軸411から最も離れた部位である最大偏心部は、出力軸411の回転により回転移動する。第1カム部材42の最大偏心部がピストン51に当接している場合、当該ピストン51は容積最小位置P3に位置している。
【0027】
第1カム部材42のうち出力軸411に最も近い部位である最小偏心部は、最大偏心部と180度位相が異なり、出力軸411の回転により回転移動する。第1カム部材42の最小偏心部がピストン51に当接している場合、当該ピストン51は容積最大位置P1に位置している。出力軸411が回転することで、ピストン51が容積最大位置P1又は容積最小位置P3に位置する状態は、周方向に並んだフルード送出部21~27に対して、周方向に順番に移っていく。したがって、ピストン51が切替位置P2に位置する状態も、フルード送出部21~27に対して、周方向に順番に移っていく。
【0028】
このように、ポンプ流路3は、駆動装置4の駆動により、ピストン51が切替位置P2と容積最小位置P3との間を移動する閉鎖移動工程が、第1出入口31から第2出入口32に向けて又は第2出入口32から第1出入口31に向けて、フルード送出部21~27間を順番に移っていくように構成されている。
【0029】
例えば図1の第1ポンプ101において、第1カム部材42が時計回りに回転した場合、閉鎖移動工程は、フルード送出部21、フルード送出部22、フルード送出部23、フルード送出部24、フルード送出部25、フルード送出部26、フルード送出部27、フルード送出部21の順番で移っていく。閉鎖移動工程は、例えば2つの隣接するフルード送出部21~27で同時に発生し得る。駆動装置4の駆動により、フルード送出部21~27の少なくとも1つが閉鎖移動工程を実行する。
【0030】
閉鎖移動工程がフルード送出部21からフルード送出部22に移った場合、フルード送出部21の液圧室53のフルードは、フルード送出部22の液圧室53を介してフルード送出部23の液圧室53に流入する。つまり、閉鎖移動工程がフルード送出部21~27を時計回りに順番に移ることで、フルードは第1出入口31からポンプ流路3に吸入され、第2出入口32から吐出される。
【0031】
反対に、閉鎖移動工程がフルード送出部21~27を反時計回りに順番に移ることで、フルードは第2出入口32からポンプ流路3に吸入され、第1出入口31から吐出される。ただし、第1実施形態の場合、後述する構成上の理由により、第1カム部材42の1回転当たりのフルード吐出量は、時計回りの方が反時計回りよりも大きい。
【0032】
(閉鎖移動工程の詳細)
図2に示すように、ピストン51が切替位置P2から容積最小位置P3に移動する際、ピストン51がシール部材55を前方に押圧する。そして、ピストン51とシール部材55とは、当接した状態で前方に移動する。これにより、液圧室53の前方部位53aが第1ポート61から遮断された状態で、前方部位53aの容積は減少する。つまり、前方部位53aのフルードは、前方部位53aの容積減少に応じて、第2ポート62から隣のフルード送出部21~27の第1ポート61に送出される。
【0033】
この原理を利用すると、第1カム部材42の回転方向が時計回りである場合、フルード送出部21の前方部位53aのフルードは、前方部位53aの容積減少に応じて、第2ポート62からフルード送出部22の第1ポート61に送出される。フルード送出部22のピストン51は、フルード送出部21のピストン51が閉鎖移動工程を開始した後に、閉鎖移動工程を開始する。つまり、フルード送出部21の閉鎖移動工程とフルード送出部22の連通移動工程とが重なるタイミングがある。これにより、順々にフルードが時計回りに移動していく。
【0034】
一方、ピストン51が容積最小位置P3から切替位置P2に移動する際、前方部位53aが第1ポート61から遮断された状態で、前方部位53aの容積は増大する。これにより、前方部位53aの容積増大に応じて、フルードが第1ポート61から吸入される。この原理を利用すると、第1カム部材42の回転方向が反時計回りである場合、フルード送出部21の前方部位53aの容積増大に応じて、フルードがフルード送出部22の第1ポート61からフルード送出部21の第2ポート62に送出される。時計回り同様、順々にフルードが時計回りに移動していく。ただし、第1カム部材42の回転方向が反時計回りである場合、ピストン51が切替位置P2から容積最小位置P3に移動する際に、フルードが時計回りにも送出(逆流)される。したがって、第1カム部材42の1回転当たりのフルード吐出量は、時計回りの方が反時計回りよりも大きくなる。
【0035】
(第1ポンプと第2ポンプとの並列接続)
容積式加減圧ポンプ1は、位相が異なる複数のポンプ流路3が並列に接続されている。第1実施形態では、第1ポンプ101と、第1ポンプ101と180度位相(カムの位相)が異なる第2ポンプ102とが並列接続されている。つまり、第1ポンプ101の第1出入口31と第2ポンプ102の第1出入口31とが接続され、第1ポンプ101の第2出入口32と第2ポンプ102の第2出入口32とが接続されている。2つの第1出入口31が容積式加減圧ポンプ1の1つの第1出入口31を構成し、2つの第2出入口32が容積式加減圧ポンプ1の1つの第2出入口32を構成している。図4に示すように、180度位相が異なる2つのポンプ101、102が並列接続されていることで、容積式加減圧ポンプ1の出力は平滑化される。
【0036】
(容積式加減圧ポンプの適用例)
容積式加減圧ポンプ1は、図5に示すように、車両用制動装置8に適用することができる。車両用制動装置8は、マスタシリンダユニット81と、リザーバ82と、容積式加減圧ポンプ1と、ホイールシリンダ83と、を備えている。容積式加減圧ポンプ1の第1出入口31は、マスタシリンダユニット81を介してリザーバ82に接続されている。容積式加減圧ポンプ1の第2出入口32は、ホイールシリンダ83に接続されている。
【0037】
容積式加減圧ポンプ1の各ポンプ101、102が時計回りに作動することで、フルードは、位相差に応じた時間差で、リザーバ82から第1出入口31を介して各ポンプ流路3に吸入され、各ポンプ流路3から第2出入口32を介してホイールシリンダ83に送出される。これにより、容積式加減圧ポンプ1は、ホイールシリンダ83を加圧することができる。第1実施形態の構成では、第1ポート61は相対的に低圧側の液路(リザーバ82)に接続され、第2ポート62は相対的に高圧側の液路(ホイールシリンダ83)に接続されることが好ましい。
【0038】
容積式加減圧ポンプ1の各ポンプ101、102が反時計回りに作動することで、フルードは、位相差に応じた時間差で、ホイールシリンダ83から第2出入口32を介して各ポンプ流路3に吸入され、各ポンプ流路3から第1出入口31を介してマスタシリンダユニット81及びリザーバ82に送出される。これにより、容積式加減圧ポンプ1は、ホイールシリンダ83を減圧することができる。
【0039】
(第1実施形態の構成まとめ)
第1実施形態の容積式加減圧ポンプ1は、ピストン51の移動により液圧室53の容積が変化するように構成された容積可変機構5と、液圧室53に開口する第1ポート61及び第2ポート62と、ピストン51の移動に応じて第1ポート61を開閉させる弁機構7と、を有するフルード送出部21~27と、3つ以上のフルード送出部21~27が直列接続されて形成されたポンプ流路3と、各ピストン51を移動させる駆動装置4と、を備えている。ポンプ流路3の一端部に位置するフルード送出部21の第1ポート61が第1出入口31を構成し、ポンプ流路3の他端部に位置するフルード送出部27の第2ポート62が第2出入口32を構成している。各ピストン51の移動範囲には、容積最大位置P1と、容積最小位置P3と、切替位置P3と、が含まれている。ポンプ流路3は、駆動装置4の駆動により、ピストン51が切替位置P2と容積最小位置P3との間を移動する閉鎖移動工程(P2-P3間移動)が、第1出入口31から第2出入口32に向けて又は第2出入口32から第1出入口31に向けて、フルード送出部21~27間を順番に移っていくように構成されている。
【0040】
(第1実施形態の効果)
本実施形態によれば、閉鎖移動工程が実行されると、ピストン51はポンプ流路3を遮断しつつ液圧室53(前方部位53a)の容積を変化させる。閉鎖移動工程での液圧室53の容積減少によりフルードが第2ポート62から吐出され、閉鎖移動工程での液圧室53の容積増大によりフルードが第2ポート62から吸入される。各フルード送出部21~27での閉鎖移動工程の実行がポンプ流路3で順番に移っていくことで、フルードが一方の出入口から吸入され他方の出入口に吐出される。これにより、フルード吸入対象(例えばリザーバ82)のフルードがなくなるまで液圧制御対象を加圧することができる。液圧制御対象を減圧する場合、加圧とは逆の順番で閉鎖移動工程が移るように駆動装置4を駆動させればよい。このように、第1実施形態によれば、装置を大型化することなく加圧の限界値を高くすることができ、且つ液圧制御対象を加減圧することができる。
【0041】
また、シール部材55の前端面は、前方部位53aの液圧により押圧力を受ける。つまり、シール部材55は、液圧室53の前方部位53aの液圧が高圧になるほど、液圧により後方に押圧される。これにより、シール部材55とピストン51とが当接した状態で前方部位53aの液圧が高圧になると、ピストン51とシール部材55とのシール力が向上する。シール部材55は、前方部位53aが高圧である場合、第1ポート61の閉鎖に対してセルフシールするように構成されている。図4の接続によれば、閉鎖移動工程において、前方部位53aは相対的に高圧が想定されるホイールシリンダ83の液圧の影響を受け、第1ポート61側の部位(後方部位53b)はマスタシリンダユニット81又はリザーバ82の液圧の影響を受ける。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態の容積可変機構5Aについて図6を参照して説明する。容積可変機構5Aは、第1実施形態の容積可変機構5に対して、シール部材553を追加した構成になっている。シール部材553は、環状の樹脂部材であって、プレート552の後端面に当接している。シール部材553は、シリンダ部材56とプレート552とに挟まれて配置されている。
【0043】
シール部材553の内周部分には、後方に湾曲したリップ部553aが形成されている。ピストン51は、閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、シール部材553の内側を摺動する。この際、後方部位53bが高圧になると、リップ部553aがピストン51に向けて押圧され、シール力が向上する。つまり、シール部材553は、後方部位53bが高圧になった場合に、第1ポート61の閉鎖に対してセルフシールするように構成されている。なお、前方部位53aが高圧になった場合、第1実施形態同様、シール部材55がセルフシール機能を発揮する。第2実施形態の容積式加減圧ポンプの動作は、第1実施形態と同様である。
【0044】
<第3実施形態>
第3実施形態の容積可変機構5Bは、図7に示すように、ピストン51の前端面にシール部材550が配置されている。シール部材550は、円盤状の樹脂部材である。シール部材550の外周部には、前方に湾曲したリップ部550aが形成されている。シール部材550は、付勢部材54により後方に付勢されている。容積可変機構5Bには、第1実施形態のシール部材55、付勢部材551、及びプレート552が設けられていない。
【0045】
第3実施形態において、切替位置P2は、ピストン51が容積最大位置P1から前方に移動している状態で、シール部材550のリップ部550aがプラグ521の内周面に当接した位置(当接開始位置)となる。閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、前方部位53aが高圧になった場合、リップ部550aがプラグ521の内周面に押圧され、シール力が向上する。つまり、シール部材550は、前方部位53aが高圧になった場合、セルフシール機能を発揮する。閉鎖移動工程でピストン51が前進することで、第2ポート62からフルードが送出される。第3実施形態の容積式加減圧ポンプの動作は、第1実施形態と同様である。
【0046】
<第4実施形態>
第4実施形態の容積可変機構5Cは、図8に示すように、第3実施形態のシール部材550がバルブシール59に置換されて構成されている。バルブシール59は、前方に開口し後方に底面を有する有底円筒状の樹脂部材である。バルブシール59の外周面には、貫通孔59aが複数形成されている。
【0047】
連通移動工程(P1-P2間移動)において、フルードは、貫通孔59aを介して第1ポート61と第2ポート62との間を流通可能となる。バルブシール59は、ピストン51の前端面と付勢部材54とに挟まれて配置されている。バルブシール59は、付勢部材54により後方に付勢されている。
【0048】
切替位置P2は、ピストン51が容積最大位置P1から前方に移動している状態で、すべての貫通孔59aが完全にプラグ521の内周側に位置する位置(貫通孔閉鎖位置)となる。閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、貫通孔59aが閉鎖された状態すなわち第1ポート61が閉鎖された状態で、ピストン51が移動する。閉鎖移動工程でピストン51が前進することで、第2ポート62からフルードが送出される。第4実施形態の容積式加減圧ポンプの動作は、第1実施形態と同様である。つまり、この構成であっても、第1実施形態同様、液圧制御対象を加減圧することができる。
【0049】
<第5実施形態>
第5実施形態の容積可変機構5Dは、図9に示すように、第4実施形態のバルブシール59をバルブシール58に置換して構成されている。バルブシール58は、環状の樹脂部材である。バルブシール58の内周部には、後方に延びる円筒部581が形成されている。円筒部581には、複数の貫通孔582が形成されている。バルブシール58は、プラグ521の後端面に当接している。
【0050】
連通移動工程(P1-P2間移動)において、フルードは、貫通孔582を介して第1ポート61と第2ポート62との間を流通可能となる。切替位置P2において、すべての貫通孔582がピストン51により閉鎖される。閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、貫通孔582が閉鎖された状態すなわち第1ポート61が閉鎖された状態で、ピストン51が移動する。閉鎖移動工程でピストン51が前進することで、第2ポート62からフルードが送出される。第5実施形態の容積式加減圧ポンプの動作は、第1実施形態と同様である。つまり、この構成であっても、第1実施形態同様、液圧制御対象を加減圧することができる。
【0051】
<第6実施形態>
第6実施形態の容積可変機構5Eのプラグ521Eは、図10に示すように、第3実施形態におけるプラグ521の筒状部分を第1ポート61に対向する位置まで伸ばした構成になっている。プラグ521Eには、第1ポート61に対応する複数の貫通孔521Ea、及び第2ポート62に対応する複数の貫通孔521Ebが形成されている。
【0052】
容積最大位置P1において、シール部材550は貫通孔521Eaの後方に位置している。連通移動工程(P1-P2間移動)において、第1ポート61と第2ポート62とは貫通孔521Ea、521Ebを介して連通する。切替位置P2において、ピストン51及びシール部材550がすべての貫通孔521Eaを完全に閉鎖する。閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、貫通孔521Eaが閉鎖された状態すなわち第1ポート61が閉鎖された状態でピストン51は移動する。閉鎖移動工程でピストン51が前進することで、第2ポート62からフルードが送出される。第6実施形態の容積式加減圧ポンプの動作は、第1実施形態と同様である。つまり、この構成によっても、第1実施形態同様、液圧制御対象を加減圧することができる。
【0053】
<第7実施形態>
第7実施形態の容積可変機構5Fは、図11に示すように、第2実施形態からシール部材55、付勢部材551、及びプレート552を無くし、且つピストン51をピストン51Fに置換して構成されている。ピストン51Fの前端部分には、ピストン51Fの軸方向に交差する方向に延びる貫通孔51Faと、貫通孔51Faと前方部位53aとを連通させる液路51Fbとが形成されている。なお、図11では、流路をより明確に表示するために、ピストン51Fにハッチングが付されている。
【0054】
連通移動工程(P1-P2間移動)において、第1ポート61と第2ポート62とは貫通孔51Fa及び液路51Fbを介して連通する。切替位置P2において、貫通孔51Faはシール部材553とプラグ521とにより完全に閉鎖される。閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、貫通孔51Faが閉鎖された状態すなわち第1ポート61が閉鎖された状態でピストン51Fは移動する。
【0055】
閉鎖移動工程でピストン51Fが前進することで、第2ポート62からフルードが送出される。第7実施形態の容積式加減圧ポンプの動作は、第1実施形態と同様である。この構成によっても、第1実施形態同様、液圧制御対象を加減圧することができる。なお、第7実施形態では、第1ポート61が相対的に高圧な液路(例えばホイールシリンダ83)に接続され、第2ポート62が相対的に低圧な液路(例えばリザーバ82)に接続されることが好ましい。
【0056】
<第8実施形態>
第8実施形態の容積可変機構5Gは、図12に示すように、第7実施形態のピストン51Fをピストン51Gに置換し、プラグ521をプラグ521Gに置換し、シール部材553を無くして構成されている。
【0057】
ピストン51Gの前端部には、前方に開口した凹部が形成されている。ピストン51Gの凹部内には、ゴム製且つ環状のバルブシール511と、金属製のストッパ512とが配置されている。ストッパ512は、バルブシール511の内周側に配置され、バルブシール511と前後方向に係合している。バルブシール511の前端部は、ストッパ512及びピストン51Gの凹部よりも前方に突出している。付勢部材54は、ストッパ512に当接し、ストッパ512を介してピストン51Gを後方に付勢している。
【0058】
プラグ521Gは、前後方向において、バルブシール511と対向するように構成されている。つまり、プラグ521Gの内径は、第7実施形態のプラグ521の内径よりも小さく、且つピストン51Gの径よりも小さい。
【0059】
連通移動工程(P1-P2間移動)において、バルブシール511とプラグ521Gとが離間しており、第1ポート61と第2ポンプ102とは連通する。切替位置P2において、バルブシール511とプラグ521Gとが当接し、第1ポート61が閉鎖される。閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、ピストン51Gの移動に応じてバルブシール511が弾性変形することで、第1ポート61が閉鎖された状態でピストン51Gが移動する。閉鎖移動工程でピストン51Gが前進することで、第1ポート61及び第2ポート62からフルードが送出される。第8実施形態の容積式加減圧ポンプの動作は、第1実施形態と同様である。つまり、この構成によっても、第1実施形態同様、液圧制御対象を加減圧することができる。
【0060】
<第9実施形態>
第9実施形態の容積可変機構5Hは、図13に示すように、ピストン51Hと、付勢部材513と、ストッパ514と、バルブシール515と、プラグ516と、を備えている。ピストン51Hは、前方に開口し後方に底面を有する有底円筒状に形成されている。付勢部材513は、ピストン51Hの内側に配置されている。ストッパ514は、付勢部材513とプラグ516の底面との間に配置されている。ストッパ514は、円盤状に形成された後端部514aと、後端部514aから前方に延びる棒状部514bとで構成されている。付勢部材513は、ストッパ514に支持されてピストン51Hを後方に付勢している。
【0061】
バルブシール515は、環状のゴム部材であって、ピストン51Hの環状の前端部に対向するようにプラグ516に固定されている。バルブシール515の後端部は、プラグ516の後端面よりも後方に位置している。プラグ516の内径は、第1実施形態のプラグ521の内径よりも小さく、且つピストン51Hの径よりも小さい。なお、容積可変機構5Hは、第1実施形態同様、シリンダ部材56、シール部材561、562、及びバックアップリング563を備えている。
【0062】
連通移動工程(P1-P2間移動)において、ピストン51Hとバルブシール515とは離間しており、第1ポート61と第2ポート62とは連通する。切替位置P2において、ピストン51Hとバルブシール515とが当接し、第1ポート61が閉鎖される。閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、ピストン51Hの移動に応じてバルブシール515が弾性変形することで、第1ポート61が閉鎖された状態でピストン51Hが移動する。閉鎖移動工程でピストン51Hが前進することで、第1ポート61及び第2ポート62からフルードが送出される。第9実施形態の容積式加減圧ポンプの動作は、第1実施形態と同様である。つまり、この構成によっても、第1実施形態同様、液圧制御対象を加減圧することができる。
【0063】
<第10実施形態>
第10実施形態の容積可変機構5Lは、図14に示すように、ピストン51と、皿ばね571と、プレート572と、付勢部材54と、シール部材573と、プラグ574と、シール部材593、594と、を備えている。皿ばね571は、環状の金属部材である。皿ばね571は、板ばねともいえる。皿ばね571は内周に向かうほど後方となるように形成されている。皿ばね571は、ピストン51の前端面とプレート572とに挟まれて配置されている。皿ばね571の内周縁がピストン51の前端面に当接している。皿ばね571は、ピストン51の移動に応じて弾性変形する。
【0064】
プレート572は、金属製の円盤状部材であって、皿ばね571と付勢部材54との間に配置されている。プレート572は、付勢部材54により後方に付勢されている。シール部材573は、プラグ574の前端面に固定された環状のゴム部材である。シール部材573は、プレート572の外周縁に対向するように、プラグ574とシール部材593とに挟まれて配置されている。シール部材573の後端部は、プラグ574よりも後方に位置している。プラグ574の内径は、第1実施形態のプラグ521の内径よりも大きく、ピストン51の径よりも大きい。
【0065】
シール部材593は、樹脂製の円筒状部材である。シール部材593の後端部の内周面には、ピストン51の外周面と当接するようにリップが形成されている。シール部材593には、第2ポート62に対応するように貫通孔593aが形成されている。シール部材593の前端部は、プラグ574及びシール部材573に当接している。シリンダ部材594は、金属製の円筒状部材であって、シール部材593とシール部材562との間に配置されている。
【0066】
容積可変機構5Lは、第1実施形態同様、シリンダ部材56、シール部材561、562、及びバックアップリング563を備えている。また、第10実施形態では、第1実施形態と異なり、第1ポート61は凹部52の前方側に設けられ、メインの吐出ポートである第2ポート62は凹部52の後方側に設けられている。第10実施形態において、第1ポート61は相対的に低圧側の液路(例えばリザーバ82)に接続され、第2ポート62は相対的に高圧側の液路(例えばホイールシリンダ83)に接続されることが好ましい。
【0067】
連通移動工程(P1-P2間移動)において、プレート572とシール部材573とは離間しており、第1ポート61と第2ポート62とは連通する。切替位置P2において、プレート572とシール部材573とが当接し、第1ポート61は液圧室53の後方部位53bに対して閉鎖される。
【0068】
閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、第1ポート61が閉鎖された状態で、ピストン51の移動に応じて皿ばね571が弾性変形する。これにより、後方部位53bの容積が変化する。また、ピストン51の移動に応じて、シール部材573も弾性変形し、変化量は相対的に小さいが前方部位53aの容積も変化する。
【0069】
閉鎖移動工程でピストン51が前進している場合、皿ばね571が平板状に変形し、後方部位53bの容積が減少して、第2ポート62からフルードが吐出される。また、この場合、プレート572がシール部材573を押圧して変形させることで、プレート572が若干前進し、液圧室53の前方部位53aから第1ポート61にフルードが若干吐出される。この構成によっても、第1実施形態同様、液圧制御対象を加減圧することができる。
【0070】
また、第10実施形態の構成によれば、第1ポート61と第2ポート62とを接続する流路の流路断面積を大きくすることができ、フルードの流通抵抗を低減させることができる。第10実施形態は、プラグ574の内径すなわち流路の流路断面積を大きくしやすい構成となっている。
【0071】
例えば第1実施形態の構成において、シール部材55の内径を大きくして流路断面積を大きくする場合、プラグ521の内径を大きくする必要がある。さらに、シール部材55を押圧するために、ピストン51の前端面の径も大きくする必要がある。ピストン51の径が大きくなるほど、閉鎖移動工程で前進するにあたり、液圧によりピストン51が受ける後方への押圧力は大きくなる。これにより、閉鎖移動工程におけるピストン51への押圧力が大きくなり、カム部材42、43への負荷すなわち電気モータ41への負荷が大きくなる。
【0072】
しかし、第10実施形態によれば、第2ポート62が液圧室53の後方部位53bに開口しており、閉鎖移動工程において後方部位53bが相対的に高圧となる。閉鎖移動工程において、液圧(相対的に高圧)によりピストン51が受ける後方への押圧力は、ピストン51の前端面が受けることになる。第10実施形態によれば、相対的に高圧による押圧力はピストン51の径で決まり、プラグ574の内径にかかわらずピストン51の径を設定することができる。第10実施形態によれば、ピストン51の負荷を大きくすることなく、プラグ574の内径を大きくし流路の流路断面積を大きくすることができる。
【0073】
<第11実施形態>
第11実施形態の容積可変機構5Jは、図15に示すように、第10実施形態の皿ばね571及びプレート572を皿ばね575に置換して構成されている。皿ばね575は、金属製であって、円盤状の中央部分が後方に膨らんだ形状となっている。皿ばね575は、ピストン51と付勢部材54とに挟まれて配置されている。シール部材573は、皿ばね575の外周縁に対向するようにプラグ574に固定されている。シール部材573の後端部は、プラグ574よりも後方に位置している。
【0074】
連通移動工程(P1-P2間移動)において、皿ばね575とシール部材573とは離間しており、第1ポート61と第2ポート62とは連通する。切替位置P2において、皿ばね575とシール部材573とが当接し、第1ポート61は液圧室53の後方部位53bに対して閉鎖される。
【0075】
閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、第1ポート61が閉鎖された状態で、ピストン51の移動に応じて皿ばね575が弾性変形する。これにより、後方部位53bの容積が変化する。また、ピストン51の移動に応じて、シール部材573も弾性変形し、変化量は相対的に小さいが前方部位53aの容積も変化する。つまり、閉鎖移動工程でピストン51が前進することで、第2ポート62からフルードが送出され、且つ第1ポート61からも相対的に少量のフルードが送出される。第11実施形態によれば、第10実施形態同様の効果が発揮される。
【0076】
<第12実施形態>
第12実施形態の容積可変機構5Kは、図16に示すように、ピストン51Kと、バルブシール591と、ストッパ592と、シール部材593、594と、プレート595と、バルブシール596と、ストッパ597と、プラグ598と、を備えている。第12実施形態では、第10実施形態同様、第1ポート61は液圧室53の前方部位53aに開口し、第2ポート62は液圧室53の後方部位53bに開口している。なお、容積可変機構5Kは、第1実施形態同様、シール部材562及びバックアップリング563を備えている。
【0077】
ピストン51Kの前端部には、前方に開口した凹部が形成されている。バルブシール591は、ピストン51Kの凹部内に配置されたゴム製の環状部材である。ストッパ592は、バルブシール591の内周側に配置され、バルブシール591と前後方向に係合している。バルブシール591の前端部は、ストッパ592及びピストン51Kの凹部よりも前方に突出している。付勢部材54は、ストッパ592に当接し、ストッパ592を介してピストン51Kを後方に付勢している。
【0078】
シール部材593は、樹脂製の円筒状部材である。シール部材593の後端部の内周面には、ピストン51Kの外周面と当接するようにリップが形成されている。シール部材593には、第2ポート62に対応するように貫通孔593aが形成されている。シール部材593の前端部は、プラグ598に当接している。シリンダ部材594は、金属製の円筒状部材であって、シール部材593とシール部材562との間に配置されている。
【0079】
プレート595は、金属製の円盤状部材である。プレート595の内周部は、バルブシール591の前方にバルブシール591に対向して配置されている。プレート595の外周部は、バルブシール596の後方にバルブシール596に対向して配置されている。ピストン51Kの前端部には、径方向外側に突出した突出部51Kaが形成されている。プレート595の後端部には、突出部51Kaに前後方向に係合する凹部595aが形成されている。突出部51Kaは、凹部595a内に、凹部595aに対して所定量だけ前後方向に相対移動可能に配置されている。
【0080】
プラグ598は、第1ポート61に対応する貫通孔598aを有するとともに、凹部52の底面を構成している。プラグ598の後端部(貫通孔598aよりも後方)には、バルブシール596を配置するために、径方向内側に突出した突出部598bが形成されている。
【0081】
バルブシール596は、ゴム製の環状部材である。バルブシール596は、プラグ598の突出部598bの後端面、及びプラグ598の後端部の内周面に当接している。ストッパ597は、金属製の円筒状部材である。ストッパ597は、バルブシール596の内周面及び突出部598bの内周面に当接している。ストッパ597の外周面には、径方向外側に突出する突出部597aが設けられている。ストッパ597は、突出部597aにより、バルブシール596と前後方向に係合している。ストッパ597は、例えばプラグ598の突出部598bに対して圧入されて固定されている。バルブシール596は、ストッパ597によりプラグ598に固定されている。バルブシール596の後端部は、ストッパ597の後端部よりも後方に位置している。
【0082】
容積最大位置P1では、バルブシール591とプレート595とが離間し、バルブシール596とプレート595とも離間している。ピストン51Kが容積最大位置P1から前進すると、ピストン51Kがプレート595に接近し、バルブシール591がプレート595に当接する。その後、連通移動工程(P1-P2間移動)において、ピストン51Kの前進に伴い、プレート595も前進する。
【0083】
ピストン51Kが前進し切替位置P2に到達すると、プレート595がバルブシール596に当接する。切替位置P2において、第1ポート61と第2ポート62との間は、ピストン51K、プレート595、及びバルブシール591、596により遮断される。つまり、第1ポート61の開口が、液圧室53の後方部位53bに対して閉鎖される。
【0084】
閉鎖移動工程(P2-P3間移動)において、ピストン51Kの前進により、バルブシール591が弾性変形し、後方部位53bの容積が減少する。これにより、第2ポート62からフルードが吐出される。また、この際、ピストン51Kの前進により、バルブシール596も弾性変形し、前方部位53aの容積も相対的に変化量は小さいが減少する。したがって、第1ポート61からもフルードが微小量吐出される。ピストン51Kの後進時には、ピストン51Kの突出部51Kaとプレート595の凹部595aとの係合により、プレート595はピストン51Kの後進とともに後進する。
【0085】
第12実施形態において、ストッパ597の内径(流路幅)は、ピストン51Kの径よりも大きい。閉鎖移動工程において、ピストン51Kは、前端面(突出部51Ka)で後方部位53bの液圧による後方への押圧力を受ける。したがって、ストッパ597の内径を大きくしても、後方部位53bの液圧(例えばホイール圧)に対するピストン51Kの受圧面積には影響がない。つまり、この構成によっても、第10実施形態同様、ピストン51Kの負荷を大きくすることなく液圧室53内の流路幅を大きくすることができる。また、上記のとおり、この構成においても、液圧制御対象を加減圧することができる。
【0086】
<その他>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えばフルード送出部の数は、7つに限らず、3つ以上であればよい。フルード送出部の数は、フルードの出力波形(安定供給)の観点から、7つ以上であることが好ましい。また、ポンプ101、102の位相の違いは、180度でなくてもよい。また、容積式加減圧ポンプは、1つのポンプ101で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…容積式加減圧ポンプ、21~27…フルード送出部、3…ポンプ流路、31…第1出入口、32…第2出入口、4…駆動装置、5…容積可変機構、51…ピストン、61…第1ポート、62…第2ポート、7…弁機構、P1…容積最大位置、P2…切替位置、P3…容積最小位置。
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