(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ステータ、モータ、及びステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20240214BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K1/18 B
H02K15/02 E
H02K15/02 F
(21)【出願番号】P 2020063481
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019169803
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】一円 明
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 侑典
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-261247(JP,A)
【文献】特表2004-505595(JP,A)
【文献】特開2011-067055(JP,A)
【文献】特開2016-214000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状に打ち抜いた電磁鋼板を積層したステータであって、
前記ステータは、円環状に並ぶ複数の分割コアを有し、
複数の前記分割コアを円環状に並べたときに、複数の前記分割コアのうち周方向に隣接する一部の前記分割コア
同士の圧延方向が
平行であり、周方向に隣接する他の一部の前記分割コア
同士の圧延方向が
平行でなく、
複数の前記分割コアのそれぞれは、周方向に延びるコアバックを有し、
周方向に隣接し圧延方向が互いに平行な前記分割コア同士において、一方の前記分割コアにおける前記コアバックの周方向一方側の端面には、周方向他方側に向かって凹む連結凹部が設けられ、他方の前記分割コアにおける前記コアバックの周方向他方側の端面には、周方向他方側に向かって凸となり前記連結凹部に嵌る連結凸部が設けられ、
周方向に隣接し圧延方向が互いに平行な前記分割コア同士は、前記連結凸部が前記連結凹部に嵌ることによって互いに接合され、
周方向に隣接し圧延方向が互いに平行ではない前記分割コア同士において、一方の前記分割コアにおける前記コアバックの周方向一方側の端面は、第1の連結面であり、他方の前記分割コアにおける前記コアバックの周方向他方側の端面は、前記第1の連結面と面接触する第2の連結面であり、
前記第1の連結面及び前記第2の連結面は、軸方向及び径方向に沿って延びる平面である、ステータ。
【請求項2】
複数の前記分割コアのうち周方向に隣接する一部の前記分割コアの線状疵同士は連続する、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
複数の前記分割コアのうち周方向に隣接する他の一部の前記分割コアの線状疵同士は交差し、
前記線状疵の交差は、周方向において等間隔に位置する、請求項1又は2に記載のステータ。
【請求項4】
複数の前記分割コア
は、3n(nは自然数)組のグループに分けられ、
前記3n(nは自然数)組のグループのそれぞれは、隣接して並ぶ2つ以上の前記分割コアからなり、
複数の前記分割コアを円環状に並べたときに、同一の前記グループに設けられた前記分割コア同士の前記線状疵は
、互いに同じ方向に延び、
複数の前記分割コアを円環状に並べたときに、異なる前記グループに設けられた前記分割コア同士の前記線状疵は、互いに交差する方向に延びる、請求項2又は3に記載のステータ。
【請求項5】
前記線状疵が連続する前記分割コアの個数は4n(nは自然数)個である、請求項2から4のうちいずれか一項に記載のステータ。
【請求項6】
前記線状疵が連続する前記分割コアの個数は、コイルが装着される部位であるスロット数に対して相数で割った数である、請求項2から5のうちいずれか一項に記載のステータ。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか一項に記載のステータと、
前記ステータに対向配置されるロータと、を有するモータ。
【請求項8】
電磁鋼板から打ち抜かれるX個(Xは
4以上の自然数)の分割コアが円環状に並ぶステータの製造方法であって、
前記分割コアは、X個より少ないY個(Yは2以上の自然数)のグループ単位で、円弧状のコアバックが同一周方向に延び、且つ互いに連結された状態で前記電磁鋼板から打ち抜かれ、
複数の前記分割コアを円環状に並べたときに、複数の前記分割コアのうち周方向に隣接する一部の前記分割コア同士の圧延方向が平行であり、周方向に隣接する他の一部の前記分割コア同士の圧延方向が平行でなく、
周方向に隣接し圧延方向が互いに平行な前記分割コア同士において、一方の前記分割コアにおける前記コアバックの周方向一方側の端面には、周方向他方側に向かって凹む連結凹部が設けられ、他方の前記分割コアにおける前記コアバックの周方向他方側の端面には、周方向他方側に向かって凸となり前記連結凹部に嵌る連結凸部が設けられ、
周方向に隣接し圧延方向が互いに平行な前記分割コア同士は、前記連結凸部が前記連結凹部に嵌ることによって互いに接合され、
周方向に隣接し圧延方向が互いに平行ではない前記分割コア同士において、一方の前記分割コアにおける前記コアバックの周方向一方側の端面は、第1の連結面であり、他方の前記分割コアにおける前記コアバックの周方向他方側の端面は、前記第1の連結面と面接触する第2の連結面であり、
前記第1の連結面及び前記第2の連結面は、軸方向及び径方向に沿って延びる平面である、ステータの製造方法。
【請求項9】
一のグループを構成し周方向一方側の端部に位置する前記分割コアが、他のグループを構成し周方向両端部に位置する前記分割コアの間に互い違いに配された状態で、前記分割コアは、前記電磁鋼板から打ち抜かれる、請求項8に記載のステータの製造方法。
【請求項10】
一のグループを構成し周方向一方側の端部に位置する前記分割コアは、他のグループを構成し周方向両端部に位置する前記分割コアの径方向内側の部位同士を結んだ線分よりも他のグループを構成する前記分割コアの
前記コアバック側に位置した状態で、複数の前記分割コアは、前記電磁鋼板から打ち抜かれる、請求項8又は9に記載のステータの製造方法。
【請求項11】
前記分割コアは、前記コアバックから径方向内側に延びるティースを有し、
一のグループを構成する前記分割コアと、他のグループを構成する前記分割コアとが、互いの前記ティース側よりも互いの前記コアバック側に位置する、請求項8から10のうちいずれか一項に記載のステータの製造方法。
【請求項12】
一のグループを構成するY個の前記分割コアは、プッシュバック加工される、請求項8から11のうちいずれか一項に記載のステータの製造方法。
【請求項13】
一のグループを構成するY個の前記分割コアは、前記プッシュバック加工された後、前記電磁鋼板から打ち抜かれる、請求項12に記載のステータの製造方法。
【請求項14】
一のグループを構成するY個の前記分割コアは、前記電磁鋼板から打ち抜かれた後、前記プッシュバック加工される、請求項12に記載のステータの製造方法。
【請求項15】
前記プッシュバック加工により、
前記連結凹部
及び前記連結凸部をそれぞれ形成する、請求項13又は14に記載のステータの製造方法。
【請求項16】
前記プッシュバック加工された前記分割コアは、隣接する前記分割コアと切り離されてコイルが装着された後、再度切り離される前の前記分割コアと接合される、請求項15に記載のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、モータ、及びステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁鋼板から打ち抜いた分割コアを環状に組み合わせることにより、ステータコアを構成するステータがある。特許文献1のステータは、一直線に並び、且つコアバックの一部が連結された状態で電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを備える。一直線に並んだ状態の分割コアは、コアバック同士の間に隙間がないように円弧状に並べられる。そして、円弧状の分割コアは、互いに組み合わされて環状のステータコアを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のステータの場合、一直線に並んだ分割コアを連結された部位を中心に曲げて円弧状に並べるので、歪が生じるおそれがある。ひいては、コギングトルクが大きくなるなどのおそれがあり、当初想定していたモータの回転特性が発揮されないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、モータが設計通りの性能を発揮しやすいステータ、モータ、及びステータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するステータは、ロータに対して対向配置されるものであって、前記ステータは、電磁鋼板から打ち抜かれ、円環状に並ぶ複数の分割コアを有し、複数の前記分割コアのうち周方向に隣接する一部の前記分割コアは圧延方向が同一方向であり、周方向に隣接する他の一部の前記分割コアは圧延方向が異方向である。
【0007】
上記課題を解決するモータは、上記ステータと、上記ステータに対向配置されるロータとを備える。
【0008】
上記課題を解決するステータの製造方法は、電磁鋼板から打ち抜かれるX個(Xは2以上の自然数)の分割コアが円環状に並ぶステータの製造方法であって、前記分割コアは、X個より少ないY個(Yは2以上の自然数)のグループ単位で、円弧状のコアバックが同一周方向に延び、且つ互いに連結された状態で前記電磁鋼板から打ち抜かれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータが設計通りの性能を発揮しやすいステータ、モータ、及びステータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態のモータの断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のステータの斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のステータの平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の分割コアの平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の分割コアの平面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の分割コアの平面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態のステータの製造工程を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本実施形態において、線状疵を図示した電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態において、線状疵を省略した電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。
【
図12】
図12は、変形例において、電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。
【
図13】
図13は、変形例において、電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。
【
図15】
図15は、変形例において、電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ステータ、及びモータの一実施形態を図面にしたがって説明する。
【0012】
【0013】
図1に示すように、モータ1は、円筒状のハウジング2と、ハウジング2の内周面に固定されるステータ3と、ステータ3の内側に収容され当該ステータ3に対して相対回転するロータ4と、を備える。ロータ4は、中心軸Jに沿って延びるシャフト5を有する。シャフト5の軸方向両端部とハウジング2との間には、ベアリング6が介在される。ロータ4は、ベアリング6を介してハウジング2に回転可能に軸支されている。
【0014】
図2は、本実施形態のステータの斜視図である。
図3は、本実施形態のステータの平面図である。
【0015】
図2及び
図3に示すように、ステータ3は、周方向に並ぶ12個の分割コア10を備える。
図1に示すように、分割コア10のそれぞれは、導線が巻回されたコイル7がインシュレータとともに装着される。
【0016】
図2及び
図3に示すように、分割コア10は、電磁鋼板ESS(
図7参照)から打ち抜かれた素材を軸方向に重ねたものであり、第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14の総称である。
【0017】
図4は、本実施形態の分割コアの平面図である。詳細には、
図4は、第1分割コアの平面図である。
図5は、本実施形態の分割コアの平面図である。詳細には、
図5は、第2分割コア及び第3分割コアの平面図である。
図6は、本実施形態の分割コアの平面図である。詳細には、
図6は、第4分割コアの平面図である。
【0018】
まず、第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14の共通構成について説明する。
【0019】
図4、
図5、及び
図6に示すように、分割コア10は、周方向に延びるコアバック15と、コアバック15の周方向中央部から径方向内側に向かって延びるティース16と、ティース16の径方向内側の先端部から周方向両側に向かって延びるアンブレラ部17と、を有する。
【0020】
次に、第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14において異なる構成について説明する。なお、異なる構成とは、コアバック15の周方向両端部の形状である。
【0021】
図4に示すように、第1分割コア11において、コアバック15の周方向一方側の端面は、周方向他方側に向かって凹む連結凹部21を有する。第1分割コア11において、コアバック15の周方向他方側の端面は、軸方向及び径方向に沿って延びる平面である連結面20である。
【0022】
図5に示すように、第2分割コア12において、コアバック25の周方向一方側の端面は、周方向他方側に向かって凹む連結凹部21を有する。第2分割コア12において、コアバック25の周方向他方側の端面は、周方向一方側に向かって凸となる連結凸部22を有する。
図2及び
図3に示すように、連結凸部22は、第1分割コア11の連結凹部21に嵌る。
【0023】
図5に示すように、第3分割コア13は、第2分割コア12と同様の構成である。
図2及び
図3に示すように、第3分割コア13の連結凸部22は、第2分割コア12の連結凹部21に嵌る。
【0024】
図6に示すように、第4分割コア14において、コアバック45の周方向一方側の端面は、軸方向及び径方向に沿って延びる平面である連結面20である。第4分割コア14において、コアバック45の端面は、周方向他方側に向かって凸となる連結凸部22を有する。
図2及び
図3に示すように、連結凸部22は、第3分割コア31の連結凹部21に嵌る。
【0025】
なお、本実施形態では、連結凹部21に連結凸部22が嵌る各分割コア10同士の境界を第1境界部31と規定する。
【0026】
図3に示すように、12個の分割コア10は、4個ずつ第1コアグループ100、第2コアグループ200、及び第3コアグループ300の3組に分類される。
【0027】
詳述すると、第1コアグループ100、第2コアグループ200、及び第3コアグループ300は、周方向一方側に向かうにしたがって、この記載の順番に並ぶ。
【0028】
第1コアグループ100は、第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14を有する。第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14は、周方向一方側に向かうにしたがって、この記載の順番に並ぶ。
【0029】
第2コアグループ200は、第1コアグループ100と同様の構成であって、第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14を有する。第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14は、周方向一方側に向かうにしたがって、この記載の順番に並ぶ。
【0030】
第3コアグループ300は、第1コアグループ100と同様の構成であって、第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14を有する。第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14は、周方向一方側に向かうにしたがって、この記載の順番に並ぶ。
【0031】
第1コアグループ100に含まれる第4分割コア14の連結面20は、第2コアグループ200に含まれる第1分割コア11の連結面20と面接触する。第2コアグループ200に含まれる第4分割コア14の連結面20は、第3コアグループ300に含まれる第1分割コア11の連結面20と面接触する。第3コアグループ300に含まれる第4分割コア14の連結面20は、第1コアグループ100に含まれる第1分割コア11の連結面20と面接触する。
【0032】
なお、本実施形態では、連結面30同士が面接触する各分割コア10同士の境界を第2境界部32と規定する。
【0033】
図3及び
図7に示すように、分割コア10は、圧延材である電磁鋼板ESSを積層させたものである。圧延材である電磁鋼板ESSの表面には無数の線状疵LFがある。したがって、電磁鋼板ESSから打ち抜かれる各分割コア10の表面には線状疵LFがある。
【0034】
次に、ステータの製造方法について説明する。
【0035】
図7は、本実施形態のステータの製造工程を示す概略図である。
図8は、本実施形態において、線状疵を図示する電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。
図9は、本実施形態において、線状疵を省略する電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。
図10及び
図11は、プッシュバック加工を示す断面図である。
【0036】
図7に示すように、ステータ3は、プッシュバック工程S1、打ち抜き工程S2、積層工程S3、切り離し工程S4、コイル装着工程S5、及び接合工程S6を経て製造される。次に、各工程について詳細に説明する。
【0037】
プッシュバック工程S1では、
図10及び
図11に示すように、工具Ms1と対向して配された押上工具Ms2で第2分割コア12を金型MDで保持された第1分割コア11及び第3分割コア13に対して突出している方向と逆方向に押し戻す。そして、第2分割コア12を、元の位置まで、すなわち第1分割コア11及び第3分割コア13の位置まで押し戻す。次に、第3分割コア13に対しても同様の加工を行う。これにより、
図8及び
図9に示すように、電磁鋼板ESSに第1境界部31が形成される。
【0038】
打ち抜き工程S2では、分割コア10をグループ単位で電磁鋼板ESSから打ち抜く。すなわち、分割コア10は、第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コア14の4つを一組として電磁鋼板ESSから打ち抜かれる(グループ打ち抜き工程)。なお、プッシュバック加工された第1分割コア11と第2分割コア12との間、第2分割コアと第3分割コア13、第3分割コア13と第4分割コア14との間は、電磁鋼板ESSから打ち抜かれた後でも互いに連結された状態が維持される。
【0039】
なお、
図8及び
図9に示すように、分割コア10は、グループ単位で電磁鋼板ESSから打ち抜かれる。この際、一方のグループを構成し周方向両側に位置する分割コア10のアンブレラ部17を結ぶ線分SLよりも当該一方のグループを構成する分割コア10のコアバック15側に、他方のグループを構成する分割コア10が進入した状態で、各グループの分割コア10を打ち抜く。本例では、一方のグループにおける線分SLが延びる方向と、他方のグループにおける線分SLが延びる方向とが互いに平行である。これにより、ステータ3の製造にかかる電磁鋼板ESSの歩留りが向上する。
【0040】
また、電磁鋼板ESSからの打ち抜き位置によらず、分割コア10の線状疵LFが一定になる。より正確には、打ち抜き位置によらず、グループが異なっていても、第1分割コア11の線状疵LFは、同一方向に延びる。同様に、第2分割コア12、第3分割コア13、第4分割コア14においても、それぞれ線状疵LFは、同一方向に延びる。
【0041】
積層工程S3では、グループ単位で打ち抜かれた4つを一組とする分割コア10を軸方向に必要枚数を積層させ、例えば軸方向に加締める等して、これらを一体化させる。
【0042】
切り離し工程S4では、軸方向に加締められた分割コア10を第1境界部31で切り離す。
【0043】
コイル装着工程S5では、切り離し工程S4において切り離された分割コア10にコイル7を装着する。
【0044】
接合工程S6では、コイル装着工程S5においてコイル7が装着された分割コア10に関し、第1境界部31同士を再度突き合わせる。第1境界部31は、プッシュバック加工された部位であるため、また、連結凹部21に連結凸部22が嵌りこむため、再度の接合も容易であるとともに位置ずれも発生しにくい。これにより、コイルが巻回された各グループが製造される。そして、上記工程を経て製造された3つのグループ同士を接合する。詳述すると、ステータ3は、3つの第2境界部32を突き合わせた後、当該付き合わせた部位を溶接する。
【0045】
以上の工程を経ることにより、ステータ3が製造される。
【0046】
電磁鋼板ESSは圧延材である。したがって、
図3に示すように、電磁鋼板ESSの表面には線状疵LFがある。このため、電磁鋼板ESSから打ち抜かれる各分割コア10の表面には線状疵LFがある。
【0047】
各グループの各分割コア10は、一体となって電磁鋼板ESSから打ち抜かれる。このため、分割コア10の線状疵LFは、各グループ内の分割コア10を区画する第1境界部31を跨いで連続する。言い換えれば、各グループ内の分割コア10を区画する第1境界部31を跨いで周方向に隣接する分割コア10の線状疵LF同士は連続する。一方、分割コア10の線状疵LFは、グループ同士の分割コア10を区画する第2境界部32を挟み、交差する。
【0048】
次に、当該製造工程を経て製造されたステータ3の作用及び効果について説明する。
【0049】
(1)(2)ステータ3は、電磁鋼板ESSから打ち抜かれ、円環状に並ぶ12個の分割コア10を有する。
図3に示すように、12個の分割コア10のうち、第1境界部31を挟み周方向に隣接する第1分割コア11、第2分割コア12、第3分割コア13、及び第4分割コアの圧延方向は同一方向である。すなわち、第1境界部31を挟み線状疵LFが連続する。また、第2境界部32を挟み周方向に隣接する第1分割コア11と第4分割コア14の圧延方向は異方向である。すなわち、第2境界部32を挟み線状疵LFが交差する。
【0050】
この構成によれば、ステータ3は、周方向に4個の分割コア10が連続した状態で電磁鋼板ESSから打ち抜かれる。このため、周方向に連続し、円弧状に並ぶ4個の分割コア10は、設計通りの曲率で配置されやすい。ひいては、円環状に並ぶ12個の分割コア10は、設計通りの曲率で配置されやすい。これにより、ステータ3を有するモータ1は、設計通りの性能を発揮しやすい。
【0051】
また、第1境界部31はプッシュバック加工されているため、第1境界部31で分割コア10を切り離したり再度組付けたりすることが容易である。さらに第1境界部31における分割コア10同士の位置ずれも発生しにくい。
【0052】
(3)(4)(5)線状疵LFが交差する第2境界部32は3か所設けられる。3か所の第2境界部32は、周方向において等間隔に位置する。分割コア10の線状疵LFは、第1コアグループ100、第2コアグループ200、及び第3コアグループ300の3組である。各コアグループは4個ずつ分割コア10を有しているので、第2境界部32は、周方向において120°間隔で設けられるため、コギングトルク等、モータの回線特性に影響を与える成分が互いに打ち消しあう。これにより、モータ1は、より設計通りの性能を発揮しやすい。
【0053】
(7)12個より少ない4個の分割コア10は、円弧状のコアバック15が同一周方向に延び、且つ互いに連結された状態で電磁鋼板ESSから打ち抜かれる。この方法によれば、従来必要とされた分割コアを連結された部位を中心に曲げて円弧状に並べる工程が不要である。連結される分割コア10のコアバックにおいても歪みが生じにくいので、モータが設計通りの性能を発揮しやすい。
【0054】
(8)一のグループを構成し周方向一方側の端部に位置する分割コア10が、他のグループを構成し周方向両端部に位置する分割コア10同士の間に位置するように互い違いに配された状態で、複数の前記分割コア10は、電磁鋼板ESSから打ち抜かれる。互い違いに配された状態で打ち抜かれることから電磁鋼板ESSの歩留りがよい。なお、互い違いに配された状態とは、
図8及び
図9に示すように、一のグループを構成する第1分割コア11、他のグループを構成する第1分割コア11、一のグループを構成する第4分割コア14、他のグループを構成する第4分割コア14、というように交互に配されている状態のことを指す。
【0055】
(9)また、一のグループを構成し周方向一方側の端部に位置する分割コア10は、他のグループを構成し周方向両端部に位置する分割コア10の径方向内側の部位同士を結んだ線分よりも他のグループを構成する分割コア10のコアバック15側に位置するように配された状態で、複数の分割コア10は、電磁鋼板ESSから打ち抜かれる。より、分割コア10同士が密集した状態で打ち抜かれることから電磁鋼板ESSの歩留りがよい。
【0056】
(10)(14)一のグループを構成するY個の分割コア10は、プッシュバック加工される。各分割コア10は、隣接する分割コア10と切り離されてコイル7が装着された後、再度切り離される前の分割コア10と接合される。同じダイにより加工された分割コア10同士が接合されるため、精度よく接合されやすい。
【0057】
(11)なお、一のグループを構成するY個の分割コア10は、プッシュバック加工された後、電磁鋼板ESSから打ち抜かれる。打ち抜き加工前のダイで加工されるため、精度がよい。
【0058】
(13)また、プッシュバック加工により、隣接する分割コア10の一方には連結凹部21が形成され、隣接する分割コア10の他方には連結凹部21に嵌る連結凸部22が形成される。この方法によると、分割コア10同士を再度嵌め合わせたときの嵌め合いがよく、隣接する分割コア10のガタツキが抑制される。
【0059】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0060】
(12)一のグループを構成するY個の分割コア10は、電磁鋼板ESSから打ち抜かれた後、プッシュバック加工されてもよい。すなわち、プッシュバック工程S1と打ち抜き工程S2とが逆であってもよい。電磁鋼板ESSから分割コア10を打ち抜く装置と、プッシュバック加工を施す装置とを別々にすることにより、各装置のメンテナンスが容易になる。
【0061】
打ち抜き工程S2において、分割コア10は、次の
図12及び
図13ように打ち抜かれてもよい。
【0062】
図12及び
図13は、変形例において、電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。
【0063】
図12に示すように、一のグループを構成する第4分割コア14のティース16が延びる方向と、他のグループを構成する第4分割コア14のティース16が延びる方向とが平行となる状態で、各グループの各分割コア10を打ち抜いてもよい。また、
図12では、一のグループを構成する第4分割コア14と、他のグループを構成する第4分割コア14とが周方向において対向する状態で、各グループの各分割コア10を打ち抜く。なお、この変形例においても、上記実施形態と同様に、一方のグループを構成し周方向両側に位置する分割コア10のアンブレラ部17を結ぶ線分SLよりも当該一方のグループを構成する分割コア10のコアバック15側に他方のグループを構成する分割コア10が進入した状態で、各グループの各分割コア10を打ち抜く。これにより、ステータ3の製造にかかる電磁鋼板ESSの歩留りが向上する。
なお、上記実施形態及び変形例では、電磁鋼板ESSに分割コア10が互い違いに配された状態として、一のグループを構成する分割コア10と、他のグループを構成する分割コア10とが、互いのコアバック15側よりもティース10側に位置する場合について説明したが、分割コア10の配置は、この配置に限らない。
図15は、変形例において、電磁鋼板から打ち抜かれる分割コアを示す平面図である。例えば、
図15に示すように、電磁鋼板ESSに分割コア10が互い違いに配された状態として、一のグループを構成する分割コア10と、他のグループを構成する分割コア10とが、互いのティース10側よりも互いのコアバック15側に位置する場合であってもよい。
詳述すると、
図15に示すように、線分SLと平行な線分SL2をコアバック15の接線として記載した場合、各グループの分割コア10を、互いに他のグループの分割コア10に記載される線分SL2と交差する状態に配置する。このように各グループの各分割コア10を電磁鋼板ESSに配置すれば、さらに歩留りが向上する。
このように、一のグループを構成する分割コア10と、他のグループを構成する分割コア10とが、互いのティース10側よりもコアバック15側に位置させるとともに、互いのコアバック15側よりもティース10側に位置させることにより、より電磁鋼板ESSの歩留りが向上する。
【0064】
図13に示すように、一のグループを構成する分割コア10のティース16が延びる方向と、他のグループを構成する分割コア10のティース16が延びる方向とが、いずれも並行にならない状態で、各グループの各分割コア10を打ち抜いてもよい。この変形例においても、上記実施形態と同様に、一方のグループを構成し周方向両側に位置する分割コア10のアンブレラ部17を結ぶ線分SLよりも当該一方のグループを構成する分割コア10のコアバック15側に他方のグループを構成する分割コア10が進入した状態で、各グループの各分割コア10打ち抜く。これにより、より一のグループを構成する分割コア10を、他のグループを構成する分割コア10に近づけた状態で、各分割コア10を打ち抜くことができるので、ステータ3の製造にかかる電磁鋼板ESSの歩留りが向上する。なお、この変形例で示すように、一のグループを構成する分割コア10と、他のグループを構成する分割コア10とが、反転した状態で電磁鋼板ESSから打ち抜かれてもよい。
【0065】
なお、
図12及び
図13に示す、分割コア10が配されている状態も、上記実施形態の
図8に示す分割コアと同様に、互い違いに配された状態である。
【0066】
一のグループを構成し周方向一方側の端部に位置する分割コア10は、他のグループを構成し周方向両端部に位置する分割コア10の径方向内側の部位同士を結んだ線分よりも他のグループを構成する分割コア10のコアバック15側とは反対側に位置するように配された状態で、複数の分割コア10は、電磁鋼板ESSから打ち抜かれてもよい。
【0067】
連結凹部21及び連結凸部22は省略されてもよい。
【0068】
プッシュバック加工された分割コア10は、隣接する分割コア10と切り離されてコイル7が装着された後、再度切り離される前の分割コア10と接合されなくてもよい。
【0069】
上記実施形態の分割コア10は、プッシュバック加工されることにより、第1境界部31が成形されたが、第1境界部31の成形方法はプッシュバック加工に限らない。例えば第2境界部32の成形方法である打ち抜き加工により第1境界部31が成形されてもよい。また、第1境界部31は、種々の折り曲げ加工により成形されてもよい。周方向に隣接する分割コア10の線状疵LFが第1境界部31を跨いで連続する構成であれば、加工方向は種々の方法をとることができる。
【0070】
分割コア10は、4個で一のグループを構成したが、一のグループを構成する分割コア10の数は任意に設定できる。なお、分割コア10の個数は、全てのグループで同一であることが望ましい。分割コア10の個数が、全てのグループで同一でない場合、線状疵LFの交差は、周方向において等間隔とはならない。
【0071】
ステータ3は、3つのグループで構成されたが、ステータ3を構成するグループの数は任意に設定できる。また、上記実施形態では、12スロットのステータ3に設けられる分割コア10の線状疵LFは3n(n=1)組であった。これにより、第2境界部32を等角度間隔に配することができ、コギングトルク等を低減させる効果が得られたが、n=2であっても同様の効果を得ることができる。
【0072】
ステータ3は、電磁鋼板から打ち抜かれるX個、すなわち上記実施形態ではX=12個の分割コア10を有していたが、この数には限らず任意の数に設定されればよい。また、X個より少ないY個、すなわち上記実施形態ではY=4個の分割コア10で一つのグループが構成されたが、この数には限らず任意の数に設定されればよい。
なお、上記実施形態では、12スロットのステータ3に設けられる分割コア10において、線状疵LFが連続する分割コア10の個数は4n(n=1)個であった。これにより、第2境界部32を等角度間隔に配することができ、コギングトルク等を低減させる効果が得られた。例えば、24個の分割コア10を有する場合、すなわち24スロットのステータ3である場合、線状疵LFが連続する分割コア10の個数が4n(n=1,2,3)個であれば、第2境界部32を等角度間隔に配することができ、コギングトルク等を低減させる効果が得られる。
図16は、変形例のステータの平面図である。
図16に示すように、ステータ3Aは、円環状に並ぶ15個の分割コア10を有する。ステータ3Aは、電磁鋼板から打ち抜かれるX個、すなわち本変形例ではX=15個の分割コア10を有し、X個(15個)より少ないY個、すなわち本変形例ではY=5個の分割コア10で一つのグループが構成される。つまり、上記実施形態と同様に、ステータ3Aにおける分割コア10の線状疵LFは、第1コアグループ100、第2コアグループ200、及び第3コアグループ300の3組である。上記実施形態及び本変形例のように、コイルが装着される部位であるスロット数に対して相数で割った数の分割コアで一つのグループを構成すれば、同じ向きの線状疵を有する分割コア10の数が等しくなるとともに、同じ向きの線状疵を有する分割コア10で構成されるグループを等角度間隔に配置することができる。これにより、コギングトルク等を低減させる効果が得られる。
【0073】
【0074】
図14に示すように、コアバック15に溝部18を設けてもよい。例えばコアバック15の周方向中央部に溝部18を設けた場合、分割コア10、ひいてはステータ3を軽量化することができる。また、溝部18を有する分割コア10は、溝部18を有しない分割コア10と比較して磁気特性への影響も少ない。なお、溝部18を設ける場合、プッシュバック工程S1の前に電磁鋼板ESSから打ち抜くことが好ましい。
【0075】
アンブレラ17は、省略してもよい。
【0076】
上記実施形態において、モータの適用先は、電動パワーステアリング装置に限らない。モータは、オイルポンプや車両の走行用の駆動源に使用されるモータ等、他の装置に適用されてもよい。
【0077】
上記実施形態及び変形例は、技術的に矛盾しない範囲において互いに組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0078】
ESS・・・電磁鋼板
J・・・中心軸
LF・・・線状疵
SL,SL2・・・線分
1・・・モータ
2・・・ハウジング
3,3A・・・ステータ
4・・・ロータ
5・・・シャフト
6・・・ベアリング
7・・・コイル
10・・・分割コア
11・・・第1分割コア
12・・・第2分割コア
13・・・第3分割コア
14・・・第4分割コア
15・・・コアバック
16・・・ティース
17・・・アンブレラ
18・・・溝部
20・・・連結面
21・・・連結凹部
22・・・連結凸部
31・・・第1境界部
32・・・第2境界部
100・・・第1コアグループ
200・・・第2コアグループ
300・・・第3コアグループ