(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】切替装置
(51)【国際特許分類】
H01H 1/06 20060101AFI20240214BHJP
H01H 50/54 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01H1/06 M
H01H50/54 S
(21)【出願番号】P 2020063823
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019209806
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】豊田 良
(72)【発明者】
【氏名】辻 啓介
(72)【発明者】
【氏名】入江 正雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 慶伍
(72)【発明者】
【氏名】川本 真千子
(72)【発明者】
【氏名】林 由清
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-128762(JP,A)
【文献】特開昭57-103219(JP,A)
【文献】特開昭56-112023(JP,A)
【文献】特開平05-303921(JP,A)
【文献】特開昭60-198013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06 - 1/66
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定端子と可動端子との接触/非接触により、オン/オフが切り替えられる切替装置であって、
前記固定端子および/または前記可動端子は、それぞれ頭部と足部とを備え、
前記頭部において、端子バネの撓み方向の長さYと、前記端子バネの撓み方向と直交する方向の長さXとの間に、Y>Xの関係が成立
し、
前記足部において、Y≦Xの関係が成立し、
前記固定端子および/または前記可動端子の、前記端子バネの撓み方向と直交する方向の長さが、前記足部より前記頭部の方が大きいことを特徴とする切替装置。
【請求項2】
前記頭部は、長辺の長さがY、短辺の長さがXの長方形であることを特徴とする請求項
1に記載の切替装置。
【請求項3】
前記Yと前記Xの比Y/Xは、1.1以上であることを特徴とする請求項
2に記載の切替装置。
【請求項4】
前記固定端子および/または前記可動端子は、前記端子バネに設けた孔部にかしめて固定されたワイヤからなることを特徴とする請求項
1~3のいずれかに記載の切替装置。
【請求項5】
前記固定端子および/または前記可動端子は、互いに異なる材料の積層構造からなることを特徴とする請求項
1~4のいずれかに記載の切替装置。
【請求項6】
前記固定端子および/または前記可動端子は、銀、ニッケル、スズ、インジウム、亜鉛、タングステン、テルル、銅、炭素、鉄、コバルト、モリブデン、タンタル、バナジウム、マグネシウム、ビスマス、パラジウム、ランタン、セリウム、ソリウム、イットリウム、およびジルコニウムからなる元素の1つまたは2つ以上の組み合わせからなることを特徴とする請求項
1~5のいずれかに記載の切替装置。
【請求項7】
前記足部は、記固定端子および/または前記可動端子に対して、それぞれ1箇所のみに設けられたことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リレーやスイッチのような切替装置に関し、特に、接点を開閉することにより電気の導通をオン/オフする切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワーエレクトロニクス製品や車載用製品に用いられるリレーやスイッチにおいて、高接点容量化や小型化が求められる。ここで、リレー等の端子の接点には、通常、端子バネにリベットをかしめて固定したリベット接点や、端子バネの上にワイヤを溶接したワイヤ接点が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リベット接点は、リベットの作製工程上、リベットの頭部が円板形状となり、固定接点と可動接点との接触位置は円板の頭部の範囲内に制限される。またリベットの作製工程で形成された歪応力のため、リベット接点の頭部周辺が反り上がり、開閉時のアーク放電がリベット接点の周辺部に集中する。このため、リレー等の開閉時に接点の局所消耗や早期溶着が発生するという問題があった。
また、リベット接点は足部が小さいため、端子バネに固定しても端子バネのバネ定数は大きくならず開閉時の接圧や解離力が小さく、また放熱性能も低い。このため、リレー等の開閉時に接点の消耗が早く、早期に接点が溶着するという問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、端子の接点の局所的な消耗やアーク放電の集中を防止することにより、開閉する端子間の早期溶着を防止し、長寿命の切替装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例は、
固定端子と可動端子との接触/非接触により、オン/オフが切り替えられる切替装置であって、
前記固定端子および/または前記可動端子は、それぞれ頭部と足部とを備え、
前記頭部において、端子バネの撓み方向の長さYと、前記端子バネの撓み方向と直交する方向の長さXとの間に、Y>Xの関係が成立することを特徴とする切替装置である。
【0007】
本開示の他の一例は、
固定端子と可動端子との接触/非接触により、オン/オフが切り替えられる切替装置であって、
前記固定端子および/または前記可動端子は、それぞれ頭部と足部とを備え、
前記足部において、端子バネの撓み方向の長さYと、前記端子バネの撓み方向と直交する方向の長さXとの間に、Y>Xの関係が成立することを特徴とする切替装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる切替装置では、端子バネの頭部および/または足部において、端子バネの撓み方向の長さYと、端子バネの撓み方向と直交する方向の長さXとの間に、Y>Xの関係が成立することとにより、開閉動作(リレー/スイッチング)中の接点の局所的な消耗やアーク放電の集中を防止し、切替装置の長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1にかかるリレーの斜視図である。
【
図3】リレーがオンになる場合の端子の動きの概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態1にかかる第1の固定端子の製造工程である。
【
図6】固定端子の製造に用いるワイヤの斜視図である。
【
図7】固定端子の大きさに切断したワイヤの斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態1にかかる第2の固定端子の製造工程である。
【
図9】本発明の実施の形態1にかかる第3の固定端子の製造工程である。
【
図10】本発明の実施の形態1にかかる第4の固定端子の製造工程である。
【
図11】本発明の実施の形態1にかかる端子を用いた場合の開閉寿命である。
【
図12】本発明の実施の形態1にかかる端子を用いた場合の開閉寿命である。
【
図13】本発明の実施の形態2にかかる固定端子の平面図および断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態2にかかる固定端子の製造工程である。
【
図15】固定端子の大きさに切断したワイヤの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、全体が100で表される、本発明の実施の形態1にかかるリレーの斜視図である。リレー100は、各部品を搭載するためのベース1を含む。ベース1には、可動片端子10と固定片端子20が、ほぼ並行になるように配置されている。可動片端子10は、可動バネ11と、可動バネ11に設けられた可動接点12とを含む。一方、固定片端子20は、固定バネ21と、固定バネ21に設けられた固定接点22とを含む。
【0011】
ベース1の上には、更に、鉄芯4と、鉄芯4の周囲に巻かれたコイル5が配置される。コイル5は、ベース1の下方に設けられたコイル端子3に接続されている。コイル5の上方には、ヒンジバネ7に固定された鉄片6を備える。鉄片6は、ヒンジバネ7により、鉄芯4から離れて配置される。鉄片6は、折り曲げられ、鉄芯4と可動片端子10の間まで延びる。さらに、鉄片6と可動片端子10との間には、絶縁性のカード8が設けられている。
【0012】
リレー100では、コイル端子3からコイル5に電流を流すことにより、鉄芯4が磁化される。磁化された鉄芯4に発生した電磁力により、鉄片6が鉄芯4に吸引される。これにより、ヒンジバネ7により鉄芯4から離れて配置されていた鉄片6が、鉄芯4に吸着される。
【0013】
鉄片6が鉄芯4に吸着されると、鉄片6の曲げられた他端がカード8を介して可動片端子10を押して、可動端子12と固定端子22とを接触させる。これにより、リレー100はオン状態となる。
【0014】
オン状態のリレー100は、コイル5に供給する電流をオフにすることにより、鉄片6が鉄芯4から離れ、可動片端子10が元の位置に復元する。これにより、可動端子12と固定端子22とが離れ、リレー100がオフとなる。
【0015】
図2は、リレーに用いられる固定端子の比較であり、(a)は本発明の実施の形態1にかかる「ワイヤ接点かしめ」を用いた固定端子、(b)は従来の「リベット接点かしめ」を用いた固定端子、(c)は従来の「ワイヤ接点溶接」を用いた固定端子を示し、左図は平面図、右図はA-A方向に見た場合の断面図である。ここで、「かしめる」とは、圧力を加えることでもたらされる塑性変形を利用して、2つの部材を強固に密着ないし接合することをいう。
【0016】
図2(a)に示す、本発明の実施の形態1にかかるワイヤ接点かしめを用いた固定端子では、固定端子として後述のワイヤが用いられ、この固定端子が固定バネにかしめられて固定されている。(a)の左図に示すように、固定端子は略長方形であり、固定バネの水平方向の長さXと垂直方向(撓み方向)の長さYとは、Y>Xの関係になっている。ここで、撓み方向とは、固定端子が可動端子に押された場合に、固定バネが変形する方向の、固定バネの面内での成分をいう。
【0017】
これに対して、
図2(b)に示す、従来のリベット接点かしめを用いた固定端子では、固定端子は略円形であり、固定バネの水平方向の長さXと垂直方向(撓む方向)の長さYとは、Y=Xの関係になっている。
【0018】
図2(b)のリベット接点かしめを用いた固定端子では、円板状の頭部と柱状の足部とからなり、いわゆるリベット形状の端子を準備し、固定バネに設けられた円形の孔部に端子の足部を通して、足部をかしめることにより、固定バネに端子を固定して固定端子を形成する(
図2(b)の右図の断面形状を参照)。
【0019】
リベット形状の端子は、線材をヘッダ加工して形成するため、リベットの頭部は円板形状となると共に、頭部に加工歪が導入される。
【0020】
一方、
図2(c)に示す、従来のワイヤ接点溶接を用いた固定端子では、固定端子は略正方形であり、固定バネの水平方向の長さXと垂直方向(撓む方向)の長さYとは、Y=Xの関係になっているが、固定端子は略長方形で、Y>Xとなっても構わない。
【0021】
図2(c)のワイヤ接点溶接を用いた固定端子では、ワイヤが固定バネの上に溶接されて固定端子となる。
【0022】
なお、本発明の実施の形態1では、便宜的に、端子のうち、端子が固定されているバネより固定端子と可動端子が接触する側の部分を頭部、反対側の部分を足部と呼ぶ。つまり、固定端子と可動端子は、それぞれの頭部が対向するように設けられる。
【0023】
図3は、リレー100がオンになる場合の、可動片端子10と固定片端子20の動きを示す。(a)のオフ状態から、コイル5に電流を流し、鉄片6が鉄芯4に吸引されることにより、カード8に押されて可動片端子10が固定片端子20の方向に傾き、(b)のように可動片端子10の可動端子12と固定片端子20の固定端子22とが接点25で接触する。
【0024】
さらに、固定バネ21が撓むことで、可動端子12と固定端子22との接点25が、固定端子22の表面上で下方にずれる。このように、可動端子12と固定端子22との接点25を移動させることで、固定端子22および可動端子12の局所的な消耗や両端子の融着を防止できる。
【0025】
図4は、可動端子12と固定端子22との接点25におけるアークの発生状態を示す写真である。
図4(a)は、接点25が移動しない場合で、アークが上端に集中している。一方、
図4(b)は、接点25が下方向に移動する場合で、アークの発生が分散している。このように、固定端子22の上で接点25を移動させることにより、アーク放電の集中を防止し、固定端子22および可動端子12の局所的な消耗や両端子の融着を防止できる。
【0026】
図2(a)に示す、本発明の実施の形態1にかかるワイヤ接点かしめを用いた固定片端子20では、固定端子22は、固定片端子20の長手方向が長辺となる長方形(Y>X)からなる。このため、可動端子12と固定端子22との接点25の移動距離を大きく取ることが可能となり、アーク放電を分散させ、端子の局所的な消耗や両端子の融着を防止できる。
【0027】
これに対して、
図2(b)のリベット接点かしめを用いた固定端子では、上述のように、端子は円形状(X=Y)であり、可動端子12と固定端子22との接点25の移動距離を大きく取ることは難しく、端子の局所的な消耗や両端子の融着を有効に防止できない。
【0028】
また、リベット接点かしめを用いた固定端子では、リベットの頭部に加工歪が導入されるため、固定端子の頭部の周辺が熱により反り上がり、この部分にアーク放電が集中し、端子の局所的な消耗や両端子の融着が発生する。
【0029】
さらに、
図2(b)に示すように、裏側の端子の足部の体積が小さくなるため、熱容量が小さくなり、放熱性が低くなる。
【0030】
一方、
図2(c)のワイヤ接点溶接を用いた固定端子では、固定端子を長方形(Y>X)とすることはできるが、固定端子は固定バネの上に溶接されているため、放熱特性が悪くなる。このため、接点25の温度が高くなり、両端子の融着を有効に防止できない。
【0031】
このように、本発明の実施の形態1にかかるワイヤ接点かしめを用いた固定端子では、固定端子としてワイヤが用いられ、この固定端子が固定バネにかしめられて固定されているため、加工歪による端子の変形が発生せず、放熱特性を大きくし、さらに長方形(Y>X)にすることができる。これにより、アーク放電の集中を防止し、端子の局所的な消耗や両端子の融着を防止することができる。
【0032】
また、固定バネより固い固定端子の長辺が固定バネの撓み方向となるため、固定バネのバネ定数が増加する。これにより、開閉時の固定バネの不要な撓みを抑制して、接点の接圧および解離力を向上させ、端子同士の早期溶着を防止できる。
【0033】
また、固定端子の長辺が固定バネの撓み方向となるため、端子の開閉中の固定端子の反り上がりを防止し、端子の局所的な消耗や両端子の融着を防止することができる。
【0034】
さらに、裏側においても端子の足部を大きくできるため、放熱特性の高い端子を得るここができる。
【0035】
なお、
図2では、固定端子が長方形(Y>X)の場合について説明したが、楕円形状であっても構わない。
【0036】
次に、
図5を用いて、本発明の実施の形態1にかかる第1の固定端子の製造方法について説明する。
図5(a)~(c)の左図は、固定片端子20を表側(可動端子側)から見た場合の平面図であり、
図5(a)~(c)の右図は、左図をB-B方向に見た場合の断面図である。
図5中、
図1と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0037】
まず、
図5(a)に示すように、固定バネ21に矩形の孔部15を形成する。孔部15は、長辺が上下方向(撓み方向)となる長方形であることが好ましい。
【0038】
次に、
図6(a)に示すようなワイヤ30を準備する。ワイヤ30の幅(
図5では、左右方向の長さ)は、孔部15の幅と等しくなるように選択する。ワイヤの材料は、銀、ニッケル、スズ、インジウム、亜鉛、タングステン、テルル、銅、炭素、鉄、コバルト、モリブデン、タンタル、バナジウム、マグネシウム、ビスマス、パラジウム、ランタン、セリウム、ソリウム、イットリウム、およびジルコニウムからなる元素の1つまたは2つ以上の組み合わせからなる。
図6(a)では、ワイヤ30は足部31と頭部32の2層構造となっているが、1層または3層以上でも構わない。
【0039】
次に、
図7(a)に示すように、ワイヤ30を、孔部15の長辺の長さ(
図5(a)では上下方向の長さ)と等しくなるように切断し、
図5(a)の右図に示すように、孔部15の中に配置する。
【0040】
次に、
図5(b)に示すように、表側をカバー17で覆い、裏面から力(
図5(b)では矢印で表示)を加えてワイヤ30を変形させる。これにより、表側がカバー17の形状に変形すると共に、ワイヤ30がかしめられて孔部15に固定され、固定端子22となる。
【0041】
最後に、カバー17を外すことで、
図5(c)に示すように、固定バネ21にかしめられて固定された固定端子22を得ることができる。
【0042】
図8は、本発明の実施の形態1にかかる第2の固定端子、即ち、断面がT型形状の固定端子の製造工程を示す。
図8中、
図5と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0043】
まず、
図8(a)に示すように、固定バネ21に矩形の孔部15を形成する。孔部15は、長辺が上下方向(撓み方向)となる長方形であることが好ましい。
【0044】
次に、
図6(b)に示すようなワイヤ40を準備する。ワイヤ40は、足部41と頭部42からなり、断面がT型形状となっている。ワイヤ40の足部41の幅(
図8では、左右方向の長さ)は、孔部15の幅と等しくなるように選択する。
【0045】
ワイヤ40の材料は、銀、ニッケル、スズ、インジウム、亜鉛、タングステン、テルル、銅、炭素、鉄、コバルト、モリブデン、タンタル、バナジウム、マグネシウム、ビスマス、パラジウム、ランタン、セリウム、ソリウム、イットリウム、およびジルコニウムからなる元素の1つまたは2つ以上の組み合わせからなる。
図6(b)では、ワイヤ40が足部41と頭部42の2層構造となっているが、1層または3層以上でも構わない。
【0046】
次に、
図7(b)に示すように、ワイヤ40を、孔部15の長辺の長さ(
図8(a)では上下方向の長さ)と等しくなるように切断し、
図8(a)の右図に示すように、孔部15の中に配置する。
【0047】
次に、
図8(b)に示すように、表側をカバー17で覆い、裏面から力(
図8(b)では矢印で表示)を加えてワイヤ40を変形させる。これにより、ワイヤ40の足部41がかしめられて孔部15に固定され、固定端子22となる。
【0048】
最後に、カバー17を外すことで、
図8(c)に示すように、固定バネ21にかしめられて固定された固定端子22を得ることができる。
【0049】
図8の固定端子では、固定端子の足部が固定バネの撓み方向に延びているため、固定バネのバネ定数が増加し、接点の接圧および解離力を向上させ、端子同士の早期溶着を防止できる。また、端子の開閉中の固定端子の反り上がりを防止し、端子の局所的な消耗や両端子の融着を防止することができる。
【0050】
図9は、本発明の実施の形態1にかかる第3の固定端子、即ち、断面が台形形状の固定端子の製造工程を示す。
図9中、
図5と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0051】
まず、
図9(a)に示すように、固定バネ21に矩形の孔部15を形成する。孔部15は、長辺が上下方向(撓み方向)となる長方形であることが好ましい。
【0052】
次に、断面が台形形状のワイヤ(図示せず)を準備する。ワイヤの形状は、
図9(a)の右図に示すように、上端の幅は孔部15の幅より大きく、下端の幅は孔部15の幅より小さくなるように選択される。ワイヤの材料は、銀、ニッケル、スズ、インジウム、亜鉛、タングステン、テルル、銅、炭素、鉄、コバルト、モリブデン、タンタル、バナジウム、マグネシウム、ビスマス、パラジウム、ランタン、セリウム、ソリウム、イットリウム、およびジルコニウムからなる元素の1つまたは2つ以上の組み合わせからなり、1層構造でも、多層構造でも良い。
【0053】
次に、ワイヤを、孔部15の長辺の長さ(
図9(a)では上下方向の長さ)と等しくなるように切断し、
図9(a)の右図に示すように、孔部15の中に配置する。
【0054】
次に、
図9(b)に示すように、表側をカバー17で覆い、裏面から力(
図9(b)では矢印で表示)を加えてワイヤを変形させる。これにより、ワイヤの下方がかしめられて孔部15に固定され、固定端子22となる。
【0055】
最後に、カバー17を外すことで、
図9(c)に示すように、固定バネ21にかしめられて固定された固定端子22を得ることができる。
【0056】
ここでは、固定端子22を、側面がテーパ状の台形形状としたが、側面を階段状にしても構わない。
【0057】
図10は、本発明の実施の形態1にかかる第4の固定端子の製造工程を示す。
図10中、
図5と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0058】
ここでは、
図10(a)に示すように、固定バネ21に設けられた長方形の孔部15は、長辺が左右方向(撓み方向と直行する方向)となるように形成される。そして、断面がT字形状のワイヤ40を切断して、足部が孔部15に入るように配置する。
【0059】
即ち、ワイヤ40の足部の長手方向が、
図8では固定バネ21の撓み方向に配置されるのに対し、
図10の製造工程では、撓み方向に垂直になるように配置される。他の製造工程は、
図8の製造工程と同じである。
【0060】
なお、
図5、8は、固定端子22の頭部が長方形(Y>X)であるのに対して、足部がY>Xの場合であり、
図10は、固定端子22の頭部が長方形(Y>X)であるのに対して、足部がY<Xの場合であるが、いずれの場合も、足部を正方形(Y=X)としても構わない。
【0061】
図10(b)、(c)は、それぞれ
図10(a)をD-D方向およびC-C方向に見た場合の断面図である。
図10(b)、(c)から分かるように、
図10の固定端子22は、断面がT形形状で、足部の長手方向が固定バネ21の撓み方向に垂直になるように、かしめられている。
【0062】
図11、12は、
図8(c)に示す断面がT字形状の固定端子22について、固定端子22の縦方向(固定バネの撓み方向)の長さYと横方向(撓み方向に垂直な方向)の長さXの比と、端子の開閉寿命との関係を示す図である。
【0063】
実験条件は、リレーにAC250V/10Aの電力を供給し、1秒毎に端子のオン/オフを行い、端子が溶着するまでの開閉回数を測定して行った。固定端子はASI系材料、可動端子はAgNi系材料から形成した。
【0064】
図11、12において、縦軸は開閉寿命、即ち端子が溶着するまでの開閉回数であり、横軸は端子の縦横比(Y/X)である。
図11はT字形状の端子の頭部の縦横比を変化させた場合であり、一方、
図12はT字形状の端子の足部の縦横比を変化させた場合である。
図11、12とも、(a)はXを固定してYを変化させた場合、(b)はYを固定してXを変化した場合である。
【0065】
端子の頭部の縦横比については、
図11(a)に示すように、Xを固定してYを変化させると、Yが大きくなるほど開閉寿命が長くなる。一方、
図11(b)に示すように、Yを固定してXを変化させた場合は、開閉寿命はあまり変化しない。
【0066】
これは、Yを変化させた場合には、固定バネより固い固定端子の長辺の長さYが変化し、固定バネのバネ定数に影響するため、縦横比の変化に伴い端子の接点の接圧および解離力が変わり、開閉寿命が変化するものである。一方、Xを変化させた場合は、固定バネのバネ定数への影響は小さく、開閉寿命が変化は小さい。
【0067】
図11において縦横比が1.0の場合は、
図2(b)のリベットと同じ頭部形状(X=Y)となる。
図11(a)より、縦横比は1.1以上が好ましい。なお、開閉寿命2.5万回以上が推奨値である。
【0068】
同様に、端子の足部の縦横比についても、
図12(a)に示すように、Xを固定してYを変化させると、Yが大きくなるほど開閉寿命が長くなる。一方、
図12(b)に示すように、Yを固定してXを変化させた場合は、開閉寿命はあまり変化しない。ただし、開閉寿命への影響は、頭部の縦横比を変化させた場合の方が大きい。
【0069】
図12においても、縦横比が1.0の場合は、
図2(b)のリベットと同じ足部形状となる。
図12(a)より、縦横比は1.2以上が好ましい。なお、開閉寿命2.5万回以上が、推奨値である。
【0070】
<実施の形態2>
実施の形態1では、リレー端子の頭部の縦横比(Y/X)が1より大きい(Y>X)場合について説明したが、端子の頭部の縦横比(Y/X)は1で、端子の足部の縦横比(Y/X)のみを1より大きくしても良い。
【0071】
図13は、全体が120で表される、本発明の実施の形態2にかかるワイヤ接点かしめを用いた固定片端子であり、(a)は表側(可動端子側)から見た場合の平面図、(b)、(c)はそれぞれG-G方向、H-H方向に見た場合の断面図である。固定端子122は、固定バネ21に設けられた孔部15を通してかしめることにより、固定バネ21に固定されている。
【0072】
固定片端子120では、固定端子122の頭部は、縦方向(固定バネの撓み方向)の長さY1と横方向(撓み方向に垂直な方向)の長さX1の縦横比(X1/Y1)が1で、
図13(a)のような正方形となっている。一方、固定端子122の足部は、縦方向の長さY2が横方向の長さX2より長い長方形となっている。
図13では、頭部の縦方向の長さY1と、足部の縦方向の長さY2とは等しくなっている。
【0073】
先に述べた、
図2(b)に示すような従来構造のリベット接点かしめでは、固定端子の頭部および足部の縦横比(Y/X)が双方とも1であった。これに対して、本発明の実施の形態2にかかる固定端子122では、頭部は縦横比(X1/Y1)が1の正方形であるが、足部は縦方向に長い長方形(Y2>X2)となっている。
【0074】
これにより、固定バネ21より固い固定端子122の足部の長辺が固定バネ21の撓み方向となり、従来構造のリベット接点かしめに比べて、固定バネ21のバネ定数が増加する。この結果、リレーの開閉時の固定バネ21の不要な撓みが抑制でき、接点の接圧および解離力を向上させ、端子同士の早期溶着を防止できる。
【0075】
次に、
図14を用いて、本発明の実施の形態2にかかる固定片端子120の固定端子122、即ち、横方向の断面が略T型形状の固定端子122の製造方法について説明する。
図14(a)~(c)の左図は、固定片端子120を表側(可動端子側)から見た場合の平面図であり、
図14(a)~(c)の右図は、左図をI-I方向に見た場合の断面図である。
図14中、
図1と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0076】
実施の形態1の第2の固定端子の製造方法(
図8参照)と同様に、
図14(a)に示すように、固定バネ21に矩形の孔部15を形成する。孔部15は、長辺が上下方向(撓み方向)となる長方形である。
【0077】
次に、
図15に示すような、足部の幅(
図15では、左右方向の長さb2)が、孔部15の幅と略等しい、断面がT型形状のワイヤを準備した後、孔部15の長辺の長さと等しい長さ(
図15では、上下方向の長さa1)にこのワイヤを切断する。切断したワイヤは、
図14(a)の右図に示すように、孔部15の中に配置される。
【0078】
次に、
図14(b)に示すように、表側をカバー17で覆い、裏面から力(右図に矢印で表示)を加えてワイヤを変形させる。これにより、ワイヤの足部がかしめられて孔部15に固定され、固定端子122となる。
【0079】
最後に、カバー17を外すことで、
図14(c)に示すように、固定バネ21にかしめられて固定された固定端子122を得ることができる。固定端子122は、頭部が正方形(X1=Y1)、足部が長方形(X2<Y2)となる。ここでは、頭部と足部の縦方向の長さは等しい(Y1=Y2)が、足部が縦方向に長い長方形であれば、Y1=Y2で無くても良い。
【0080】
なお、本発明の実施の形態1、2では、リレーを例に説明したが、スイッチ等の他の切替装置に適用しても構わない。また、本発明の実施の形態1、2では、固定端子を例に説明したが、可動端子、あるいは固定端子と可動端子の双方に本発明を適用しても構わない。
【0081】
以上、図面を参照して本開示にかかる実施の形態1、2について説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。なお、以下の説明では、一例として、参照符号を添えて記載する。
【0082】
本開示の第1の態様の切替装置100は、
固定端子22と可動端子12との接触/非接触により、オン/オフが切り替えられる切替装置であって、
前記固定端子22および/または前記可動端子12は、それぞれ頭部と足部とを備え、
前記頭部において、端子バネ11、21の撓み方向の長さYと、前記端子バネ11、21の撓み方向と直交する方向の長さXとの間に、Y>Xの関係が成立する。
【0083】
本開示の第1の態様の切替装置100によれば、開閉動作(リレー/スイッチング)中の接点の局所的な消耗やアーク放電の集中を防止し、切替装置の長寿命化が可能となる。
【0084】
本開示の第2の態様の切替装置100では、
前記足部において、Y>Xの関係が成立する。
【0085】
本開示の第2の態様の切替装置100によれば、接点の接圧および解離力を向上させ、端子同士の早期溶着を防止できる。
【0086】
本開示の第3の態様の切替装置100では、
前記足部において、Y<Xの関係が成立する。
【0087】
本開示の第3の態様の切替装置100によれば、接点の局所的な消耗やアーク放電の集中を防止し、切替装置の長寿命化が可能となる。
【0088】
本開示の第4の態様の切替装置100では、
前記足部において、Y=Xの関係が成立する。
【0089】
本開示の第4の態様の切替装置100によれば、接点の接圧および解離力を向上させ、端子同士の早期溶着を防止できる。
【0090】
本開示の第5の態様の切替装置100では、
前記固定端子22および/または前記可動端子12の、前記端子バネ11、21の撓み方向と直交する方向の長さが、前記足部より前記頭部の方が大きい。
【0091】
本開示の第5の態様の切替装置100によれば、端子の作製が容易に行える。
【0092】
本開示の第6の態様の切替装置100では、
前記頭部は、長辺の長さがY、短辺の長さがXの長方形である。
【0093】
本開示の第6の態様の切替装置100によれば、可動端子12と固定端子22との接点25の移動距離を大きく取ることが可能となり、アーク放電を分散させ、端子の局所的な消耗や両端子の融着を防止できる。
【0094】
本開示の第7の態様の切替装置100では、
前記Yと前記Xの比Y/Xは、1.1以上である。
【0095】
本開示の第7の態様の切替装置100によれば、端子の局所的な消耗や両端子の融着を防止し、開閉寿命を長くすることができる。
【0096】
本開示の第8の態様の切替装置100は、
固定端子と可動端子との接触/非接触により、オン/オフが切り替えられる切替装置であって、
前記固定端子および/または前記可動端子は、それぞれ頭部と足部とを備え、
前記足部において、端子バネの撓み方向の長さYと、前記端子バネの撓み方向と直交する方向の長さXとの間に、Y>Xの関係が成立する。
【0097】
本開示の第8の態様の切替装置100によれば、開閉動作(リレー/スイッチング)中の接点の局所的な消耗やアーク放電の集中を防止し、切替装置の長寿命化が可能となる。
【0098】
本開示の第9の態様の切替装置100では、
前記頭部において、Y=Xの関係が成立することを特徴とする。
【0099】
本開示の第9の態様の切替装置100によれば、接点の接圧および解離力を向上させ、端子同士の早期溶着を防止できる。
【0100】
本開示の第10の態様の切替装置100によれば、足部は、長辺の長さがY、短辺の長さがXの長方形である。
【0101】
本開示の第10の態様の切替装置100によれば、接点の接圧および解離力を向上させ、端子同士の早期溶着を防止できる。
【0102】
本開示の第11の態様の切替装置100では、
前記固定端子22および/または前記可動端子12は、前記端子バネ11、21に設けた孔部15にかしめて固定されたワイヤ30からなる。
【0103】
本開示の第11の態様の切替装置100によれば、端子の反りによるアーク放電の集中を防止し、切替装置の長寿命化が可能となる。
【0104】
本開示の第12の態様の切替装置100では、
前記固定端子22および/または前記可動端子12は、互いに異なる材料の積層構造からなる。
【0105】
本開示の第12の態様の切替装置100によれば、抵抗等の端子の特性の調整が可能となる。
【0106】
本開示の第13の態様の切替装置100では、
前記固定端子22および/または前記可動端子12は、銀、ニッケル、スズ、インジウム、亜鉛、タングステン、テルル、銅、炭素、鉄、コバルト、モリブデン、タンタル、バナジウム、マグネシウム、ビスマス、パラジウム、ランタン、セリウム、ソリウム、イットリウム、およびジルコニウムからなる元素の1つまたは2つ以上の組み合わせからなる。
【0107】
本開示の第13の態様の切替装置100によれば、これらの材料を組み合わせることにより、端子の特性の調整が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示の切替装置は、パワーエレクトロニクス製品や車載用製品に利用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 ベース
3 コイル端子
4 鉄芯
5 コイル
6 鉄片
7 ヒンジバネ
8 カード
10 可動片端子
11 可動バネ
12 可動端子
15 孔部
17 カバー
20 固定片端子
21 固定バネ
22 固定端子
30、40 ワイヤ
31、41 足部
32、42 頭部
100 リレー
120 固定片端子
122 固定端子