(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】生パン粉用油脂組成物および生パン粉用生地、生パン粉用生地の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240214BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20240214BHJP
A21D 2/26 20060101ALI20240214BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20240214BHJP
A23L 7/157 20160101ALI20240214BHJP
【FI】
A23D9/00 502
A21D2/14
A21D2/26
A21D13/00
A23L7/157
(21)【出願番号】P 2020073544
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】難波 真紀子
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-132850(JP,A)
【文献】特表2000-509285(JP,A)
【文献】特表2000-513568(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152099(WO,A1)
【文献】特開2001-136925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 9/00-9/06
A21D 2/00-17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)食用油脂中に、(B)ブランチングエンザイムを含有する生パン粉用油脂組成物。
【請求項2】
(A)食用油脂として、パーム油又はパーム分別油から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の生パン粉用油脂組成物。
【請求項3】
穀粉に請求項1又は2に記載の生パン粉用油脂組成物を含有する生パン粉用生地。
【請求項4】
穀粉に請求項1又は2に記載の生パン粉用油脂組成物を添加することを特徴とする、生パン粉用生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生パン粉に使用することで、作業性が向上し、生パン粉の潰れが抑制され、フライした際にサクサクとした良好な破砕感のある生パン粉が得られる生パン粉用油脂組成物に関する。また、本発明は、前記生パン粉用油脂組成物を含有する生パン粉用生地及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パン粉は各種揚げ物の衣材やハンバーグ等の練り込み材として広く用いられている。特に揚げ物の衣材として生パン粉はドライパン粉よりも破砕感の強いフライ食品が得られる点から要望が高い。
生パン粉の製造方法は、通常の製パン法により製造したパンブロックを12~36時間放冷してパン中のα化澱粉をβ化した後、粉砕するというものである。その後、生パン粉は空気を窒素ガスで置換し袋に包装するもしくは、単純に袋に入れ冷蔵にて保存され流通される。流通時もしくは流通後の保管時に袋の底部の生パン粉は圧縮され潰れることで、袋上部の生パン粉に比べ底部の生パン粉はフライした際の剣立ちが悪くなり破砕感が低下する。
さらに、生パン粉の流通時の物流コストを下げるため、袋に圧縮して生パン粉を詰め込んだ場合、より袋底部の生パン粉の潰れは大きくなり上記問題が発生してしまう。
これら課題を解決する方法として、アルギン酸エステルを含有する生地改良剤が提案されている(特許文献1)。アルギン酸エステルを使用することで生パン粉の潰れを抑制することは出来るが、フライした際の食感がガリガリとした破砕感に欠けるものとなる。さらに、ハイアミローススターチを添加して製造する生パン粉が提案されている(特許文献2)。しかし、ハイアミローススターチを添加することで生地がべたつき、作業性が低下すること、さらにクリスピーな食感や剣立ち性に優れたフライ食品は得られるが、生パン粉の潰れやすさを抑制する効果はない。そのため流通時および保管時における袋底部の生パン粉は潰れ、結果としてクリスピーな食感や剣立ち性は満足のいくものではない。
【0003】
以上のように、作業性が向上し、生パン粉の潰れが抑制され、フライした際にサクサクとした良好な破砕感のある生パン粉が得られる方法は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-208703号公報
【文献】特開2001-211848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生パン粉に使用することで、生パン粉の製造における作業性が向上し、かつ、生パン粉の潰れが抑制され、フライした際にサクサクとした良好な破砕感のある生パン粉が得られる生パン粉用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は鋭意検討を重ねた結果、食用油脂とブランチングエンザイム組み合わせることによって上記課題を解決する知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明である。
【0007】
〔1〕
(A)食用油脂中に、(B)ブランチングエンザイムを含有する生パン粉用油脂組成物。
〔2〕
(A)食用油脂として、パーム油又はパーム分別油から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1記載の生パン粉用油脂組成物。
〔3〕
穀粉に〔1〕又は〔2〕に記載の生パン粉用油脂組成物を含有する生パン粉用生地。
〔4〕
穀粉に〔1〕又は〔2〕に記載の生パン粉用油脂組成物を添加することを特徴とする、生パン粉用生地の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生パン粉に使用することで、生パン粉の製造における作業性が向上し、生パン粉の潰れが抑制され、フライした際にサクサクとした良好な破砕感のある生パン粉が得られる生パン粉用油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[生パン粉用油脂組成物]
本発明の生パン粉用油脂組成物は、(A)食用油脂、(B)ブランチングエンザイムを含有することを特徴とし、(A)食用油脂として、パーム油又はパーム分別油から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。なお、本発明の生パン粉用油脂組成物はショートニング、油中水型乳化物、水中油型乳化物いずれの形態においてもその効果を発揮することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
((A)食用油脂)
(A)食用油脂としては、食用に適する油脂が使用でき、具体的には、牛脂、豚脂、魚油、パーム油、パーム核油、菜種油、大豆油、コーン油等の天然の動植物油脂、及びこれらの硬化油、極度硬化油、エステル交換油等が挙げられ、これらを目的に応じて適宜選択され、1種類又は2種類以上組み合わせて用いられる。
【0011】
食用油脂は生パン粉用生地中のグルテン形成を促し、焼成されるパンのキメを均一にする効果がある。使用する食用油脂の種類により、油脂組成物中の油脂の結晶状態が変化し、油脂の結晶状態の変化によってグルテン形成に影響を与えることから、食用油脂の種類は、パンのキメに影響する。パーム油又はパーム分別油を使用すると油脂の結晶が粗大化し、それによりグルテン形成が変化することで焼成されるパンのキメを大きくする効果がある。キメの大きくなったパンから製造される生パン粉は、フライした際に破砕感に優れたものとなることから、食用油脂中にパーム油又はパーム分別油を少なくとも1種類含有することが好ましい。
【0012】
パーム油とは、アブラヤシの果実から搾油し、精製された食用植物油脂である。パーム分別油とは、パーム油を分別することにより得られる油脂であり、硬質部であるパームステアリン、軟質部であるパームオレイン等が挙げられる。上記パームステアリン及びパームオレインをさらに分別し得られた画分もパーム分別油に含まれ、例えばパームハードステアリン、パームスーパーオレイン、パーム中融点画分等が挙げられる。いずれにおいても、食用に適するように精製、脱臭して用いることができる。
本発明において、パーム油又はパーム分別油をエステル交換した油脂を含有してもよく、パーム油又はパーム分別油とそれ以外の油脂を混合しエステル交換した油脂を含有してもよい。
【0013】
(A)食用油脂100質量%中、パーム油又はパーム分別油を10質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましい。
【0014】
(A)食用油脂に(B)ブランチングエンザイムを含有させることで、生パン粉用生地中にブランチングエンザイムを均一に分散させることができ、製造した生パン粉の潰れを抑制し、フライした際にサクサクとした良好な破砕感向上効果を十分に発揮させることが出来る。反対に、(B)ブランチングエンザイムを(A)食用油脂に含有させず、生パン粉用生地に単体で添加した場合は、本発明の効果を得ることは期待できない。
【0015】
((B)ブランチングエンザイム)
本発明において使用される(B)ブランチングエンザイムは、1,4-α-D-グルカン鎖の一部を受容体1,4-α-Dグルカンの6-OH基に転移させ、アミロペクチンまたはグリコーゲンのようなα-1,6結合の枝分かれ構造を生成する酵素(酵素番号:EC2.4.1.18)である。至適温度は60~75℃、好ましくは65~75℃である。至適pHは5~7であり、好ましくは5.5~7である。澱粉構造が変化することにより、生パン粉用生地の付着性が低下し、製造機器への生パン粉用生地の付着を抑制することから、機器の洗浄労力が大幅に低減し作業性が向上する。また澱粉構造が変化することにより、生パン粉の潰れを抑制するとともに、澱粉の枝分かれ構造が生成されることで、生パン粉中の水を澱粉が均一に保持する効果が高まり、フライ時に生パン粉から素早く水分が蒸発しサクサクとした良好な破砕感向上効果を得ることが出来る。(B)ブランチングエンザイムは単体で生パン粉用生地中に添加するよりも(A)食用油脂に含有させた油脂組成物として生パン粉用生地中に分散させることが好ましい。(B)ブランチングエンザイムを油脂組成物として添加することにより、すばやく均一に生パン粉用生地中に分散することができ、より均一な澱粉構造の変化を促すことが可能となる。その結果、生パン粉の潰れを抑制する効果、フライ時の破砕感向上効果がより一層向上する。
【0016】
(B)ブランチングエンザイムの含有量は、(A)食用油脂100質量部に対して活性量25000u/g基準で、好ましくは0.01~3質量部であり、より好ましくは0.03~0.5質量部である。
また、ブランチングエンザイムが食用油脂に配合され生パン粉用生地中に投入された後、生パン粉用生地へなじみやすく、効果を発揮し易いという点からブランチングエンザイムが溶解した水溶液を用いることがより好ましい。
ブランチングエンザイムは、市販されており、例えばナガセケムテックスの「デナチームBBR LIGHT」や、ノボザイムジャパンの「SenseaForm」等が例示できる。
【0017】
ブランチングエンザイムの酵素活性は以下のように定義される。0.08Mリン酸バッファー(pH7.0)に溶解させた0.1%アミロースB(ナカライテスク株式会社製)50μlに、0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)に溶解させた酵素溶液50μlを加え、50℃、30分間反応後にヨウ素試薬(0.26gI2と2.6gKIを10mlミリQ水にて溶解した液0.5mlと1N HCl 0.5mlを混ぜ、130mlに希釈した液)2mlを添加し、660nm吸光度の変化を測定する。本反応系で反応1分間に660nm吸光度を1%低下させる酵素量を1u(ユニット)と定義する。
【0018】
本発明における生パン粉用油脂組成物には、一般的に使用される添加物である加工澱粉、その他酵素、乳化剤、保存料、pH調整剤、色素、香料等を適宜使用してもよい。
【0019】
本発明における生パン粉用油脂組成物の製法は、通常のショートニング、マーガリン、水中油型乳化物の製造方法において、ブランチングエンザイムを失活しない温度で添加すればよい。例えば以下の製法が挙げられる。
まず油脂および油溶成分を融点温度以上の温度で加熱し、均一溶解後、加温した水および水に十分に溶解した水溶成分を添加し、均一に混合撹拌後、50~55℃まで降温する。次に、酵素を添加し、試作機を用いて急冷可塑化し、30℃以下まで冷却することにより、目的の生パン粉用油脂組成物を得る。上記製造において、高温状態にある均一混合物を冷却する際には均一混合物を入れている容器自身を外部から冷却しても良いが、一般的にショートニング、マーガリン製造に用いられるチラー、ボテーター、コンビネーター等を用いて急冷する方が性能上好ましい。
【0020】
本発明の生パン粉用油脂組成物おいて、生パン粉用生地調製時に添加する本発明の生パン粉用油脂組成物の量は、生パン粉用生地に使用する穀粉100質量部に対して、1~20質量部、好ましくは2~10質量部である。
【0021】
本発明の生パン粉用油脂組成物を使用した生パン粉用生地は電極式もしくは焙焼式により焼成し、焼成したパンは冷却後、粉砕し、生パン粉を製造する。
【0022】
本発明の生パン粉用生地に用いる原料としては、主原料の穀粉として小麦粉の他にイースト、イーストフード、乳化剤、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油糖)、水、加工澱粉、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー等が挙げられる。
【0023】
[生パン粉用生地]
次に本発明の生パン粉用生地の製造方法について説明する。本発明の生パン粉用生地の製造方法は、穀粉に本発明の生パン粉用油脂組成物を添加することを特徴とするものである。
【0024】
より詳細には、本発明の生パン粉用生地の製造方法は、以下の工程(i)、工程(ii)を備えることを特徴とする。
工程(i):(A)食用油脂中に、(B)ブランチングエンザイムを含有する生パン粉用油脂組成物を準備する工程。
工程(ii):穀粉に前記生パン粉用油脂組成物を混練する工程。
【0025】
本発明の生パン粉用生地の製造方法によれば、ブランチングエンザイムを食用油脂中に含有させた生パン粉用油脂組成物として準備した後に、穀粉へ混練するため、ブランチングエンザイムがすばやく均一に生パン粉用生地中に分散し、均一な澱粉構造の変化が生じる。この均一な澱粉構造の変化により、生パン粉用生地の付着性が低減し、製造機器への生パン粉用生地の付着を抑制することによる洗浄労力の大幅な低減がなされ結果として作業が向上する。また焼成、粉砕後に袋詰めされた際、生パン粉の潰れを抑制する。また澱粉の構造が変化し、枝分かれ構造が生成されることで、生パン粉中の水を澱粉が均一に保持する効果が高まり、フライ時に生パン粉から素早く水分が蒸発しサクサクとした良好な破砕感向上効果を得ることができる。一方、ブランチングエンザイムと食用油脂をそれぞれ単体で穀粉へ混練した場合には、本発明の効果を得ることができない。
【0026】
工程(i)において、さらに、(A)食用油脂として、パーム油又はパーム分別油から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。これにより、生パン粉用生地のグルテン形成が変化することで焼成されるパンのキメを大きくする効果がある。キメの大きくなったパンから製造される生パン粉は、フライした際に破砕感に優れたものとなる。
【0027】
工程(ii)において、生パン粉用油脂組成物と穀粉との混練は、ストレート法、中種法、ノータイム法等いずれの製パン法においても、例えば、ミキサーボウルなとの練り上げ装置で混練することができる。練り上げの方法は、装置によって異なるが、適度な撹拌条件、酵素反応に十分な温度と時間で設定することができる。例えば、ストレート法では、生パン粉用生地の原料を低速2分、中速2分で混練するなどの条件を挙げることができる。製造された生パン粉用生地は、例えば、デバイダー等で分割し、モルダー等を通して成形後、型に詰め、ホイロ発酵や焼成がなされる。本発明の製造方法によれば、生パン粉用生地のべたつきを抑えるため、作業性を改善することができる。
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
(実施例1)
表1、2の配合組成で以下の方法により生パン粉用油脂組成物を製造した。実施例1では、ナタネ硬化油(融点42℃)20kg、ナタネ硬化油(融点36℃)30kg、ラード30kg、および菜種油20kg、配合し加熱溶解したのち、50~55℃に降温し、ブランチングエンザイム100gを添加後、十分に撹拌を行い、ついでショートニング試作機を用いて急冷練り上げすることで生パン粉用油脂組成物を得た。なお、酵素の活性u/gは表1~2に示す通りである。
実施例5、6、比較例2に用いたパーム油配合エステル交換油(※)は、パームオレイン85質量%、ヤシ極度硬化油10質量%、ハイエルシン菜種極度硬化油5質量%のエステル交換油であり、定法により精製、脱臭して食用に適したものを用いた。
【0029】
表1及び表2に記した生パン粉用油脂組成物を使用して、以下の製造方法により生パン粉を製造した。作業性として生パン粉用生地の付着性ならびに得られた生パン粉について、潰れ、フライ時のサクサク感を評価した。
【0030】
<生パン粉の製造方法>
強力粉1000g、上白糖50g、イースト30g、脱脂粉乳20g、食塩15g、水700gを投入し製パン用ミキサー AM-20(愛工社製)にて低速2分間中速5分間捏ね上げ、ここで、実施例および比較例において得られた生パン粉用油脂組成物50g投入し、さらに低速3分、中速3分捏ね上げ、捏ね上げ温度28℃の生パン粉用生地を得た。フロアタイム20分取った後、210gに分割し、次いでベンチタイム15分取った後、モルダーを通してコッペパン形に成型した。U字型にした生パン粉用生地を食パン型に4つ入れ、温度38℃、湿度85%のホイロに40分入れて最終発酵を行った。最終発酵後、上火210℃、下火210℃のオーブンに入れ35分焼成した。焼成後、室温にて放冷し、袋詰めした後、冷蔵庫にて24時間保管した。その後厚さ2cmにスライスし、さらにサイコロ状にカットしミキサーで3秒間粉砕し生パン粉を製造した。
【0031】
評価項目としては、生パン粉用生地の作業性、生パン粉の潰れ、フライ時の破砕感を評価項目として設けた。それぞれの評価項目について、評価方法を下記に記す。
【0032】
〔作業性の評価方法〕
生パン粉製造時、焼成前の生パン粉用生地がべたつくと、ミキシング機への生パン粉用生地の付着が多くなり次工程へと進む際の作業量が多くなる、もしくはミキシング、デバイダー、モルダーなどの機器への生パン粉用生地の付着量が多くなり、洗浄作業に対する作業量が多くなることから作業性が低下する。したがって、生パン粉用生地のべたつきを作業性の評価とした。
(株)山電製「RHEONERII」を用いてフロアタイム終了後の生パン粉用生地を30gに分割し、15分間ベンチタイムを経た生パン粉用生地を各10個測定した。生パン粉用生地を測定台に置き、直径3cmの円盤型プランジャーにて5mm/secで2cm圧縮し、プランジャーが上昇する際に生パン粉用生地に引っ張られる最大応力値(N)を測定し付着性の評価を行った。比較例1を使用した場合の応力値を100として、最大応力値(相対値)が110以上を「1」、110未満100以上を「2」、100未満95以上を「3」、95未満90以上を「4」、90未満を「5」として評価した。10個の平均値を作業性の評点とし、3以上を合格とした。
【0033】
〔潰れの評価方法〕
(株)山電製「RHEONERII」を用いて生パン粉の測定をした直径3.5cm、高さ5.5cmの円筒容器に生パン粉を6g入れ、直径3cmの円盤型プランジャーにて1mm/secで0.3(N)の荷重で2分間圧縮変形させた。2分後の変形(mm)を測定し潰れの評価を行った。比較例1を使用した場合の変形(mm)を100として、110以上を「1」、110未満100以上を「2」、100未満95以上を「3」、95未満90以上を「4」、90未満を「5」として評価した。10回の平均値を潰れの評点とし、3以上を合格とした。
【0034】
〔破砕感の評価方法〕
縦30cm×横20cm(マチ無し)の袋に生パン粉を200g入れて封をし、冷蔵庫にて立てて2晩静置した。その後、袋の底部の生パン粉を20g取り出し、180℃で2分間フライし、フライ後1時間放置したフライ済みパン粉で評価した。フライ済みパン粉を食した際の破砕感を10人のパネラーにて評価した。比較例1を使用したフライ済みパン粉の破砕感を基準とし、破砕感を非常に強く感じる(5)、破砕感を強く感じる(4)、破砕感をやや強く感じる(3)、比較例1と同等(2)、破砕感が弱い(1)として評価した。10人のパネラーの平均値を破砕感の評点とし、3以上を合格とした。
【0035】
【0036】
【0037】
〔配合に用いた各種成分〕
1)(商品名)「SenseaForm」(ブランチングエンザイム) ノボザイムジャパン(株)製、活性量25000u/g
2)(商品名)「デナチームBBR LIGHT」(ブランチングエンザイム) ナガセケムテックス(株)製、活性量50000u/g
3)(商品名)「エマルジーMS」(モノグリセリンモノ脂肪酸エステル)理研ビタミン(株)
4)(商品名)「リケマールPB100」(プロピレングリコールモノベヘン酸エステル)理研ビタミン(株)
5)(商品名)「Novamyl-3D」(マルトース生成α-アミラーゼ) ノボザイムジャパン(株)製、活性量1500u/g
6)(商品名)「ダックロイド」(アルギン酸エステル)(株)紀文フードケミファ製
【0038】
表1、2の結果より、(A)食用油脂と(B)ブランチングエンザイムを含有した生パン粉用油脂組成物では、生パン粉製造時の作業性が良好で、生パン粉の潰れにくさ、フライした際の破砕感が良好であることがわかる(実施例1~3)。また、(A)食用油脂として、パーム油又はパーム分別油を含む場合、生パン粉の潰れにくさ、フライ後の破砕感が向上することがわかる(実施例4)。また、パーム油又はパーム分別油を配合したエステル交換油を含む場合も生パン粉の潰れにくさ、フライ後の破砕感が向上する(実施例5、6)。
生パン粉用油脂組成物中に(B)ブランチングエンザイムを含有しない場合、作業性の改善、潰れにくさ、フライ後の破砕感向上効果は得られなかった(比較例1、2、3)。