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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/54 20110101AFI20240214BHJP
   H01R 13/631 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01R24/54
H01R13/631
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020076457
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021174638
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-199240(JP,A)
【文献】特開2013-093124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0126061(US,A1)
【文献】特開2010-212138(JP,A)
【文献】中国実用新案第205070039(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0301837(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に実装されるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記回路基板に接続される複数の実装端子と、
前記複数の実装端子を支点として個別に揺動可能であり、複数の相手側端子と個別に接続される複数の可動端子と、
導電性を有する材料からなり、貫通形態の複数の保持孔を有し、前記複数の保持孔に前記複数の可動端子を個別に貫通させた形態の連結部材とを備え、
前記複数の可動端子には、前記複数の可動端子を前記連結部材に貫通された状態に保持する保持部が形成され、
前記連結部材は、前記保持部に対して弾性的に係止する弾性保持片と、前記可動端子の可動側外導体に対して弾性的に接触する弾性接触片とを有し、
前記連結部材には、互いに平行をなし、前記保持孔の開口縁に連通する3本のスリットが形成され、
前記3本のスリットによって、前記弾性保持片と前記弾性接触片が形成されているコネクタ装置。
【請求項2】
前記連結部材は、板状をなし、リブ状に突出した補強部を有している請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記補強部が、前記連結部材の外周縁から屈曲状に突出した第1補強リブと、前記連結部材のうち前記外周縁から離隔した領域に前記外周縁に沿うように配置された第2補強リブとを含んでいる請求項2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記第1補強リブと前記第2補強リブが、前記外周縁の長さ方向において部分的に同じ領域に配置されている請求項3に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに対向する第1コネクタと第2コネクタを有し、両コネクタをアダプターを介して接続するコネクタ装置が開示されている。アダプターは、第1コネクタに相対的に揺動し得るように取り付けられる。第1コネクタと第2コネクタが対向方向と交差する方向へ位置ずれしたときには、アダプターが傾くことによって両コネクタの位置ずれが吸収されるので、両コネクタを接続させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8801459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1コネクタと第2コネクタをアダプターを介して接続する上記の接続構造を、多極のコネクタ装置に適用した場合、次のような問題が懸念される。アダプターは第1コネクタに対して自在に揺動可能なので、第1コネクタと第2コネクタが未嵌合の状態では、各アダプターが他のアダプターとは異なる方向へ傾いた状態になり得る。そのため、複数の第1コネクタと複数の第2コネクタを接続しようとしたときに、複数のアダプターを一斉に第2コネクタに接続させることが難しい。
【0005】
本開示のコネクタ装置は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続動作の信頼性に優れたコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタ装置は、
回路基板に実装されるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記回路基板に接続される複数の実装端子と、
前記複数の実装端子を支点として個別に揺動可能であり、複数の相手側端子と個別に接続される複数の可動端子と、
前記複数の可動端子を貫通させた形態の連結部材とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接続動作の信頼性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1のコネクタ装置の斜視図である。
図2図2は、コネクタ装置の分解斜視図である。
図3図3は、コネクタ装置の正断面図である。
図4図4は、コネクタ装置の側断面図である。
図5図5は、可動端子の斜視図である。
図6図6は、連結部材を斜め上から見た斜視図である。
図7図7は、連結部材を斜め下から見た斜視図である。
図8図8は、連結部材の貫通孔に可動端子を取り付けた状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタ装置は、
(1)回路基板に実装されるハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、前記回路基板に接続される複数の実装端子と、前記複数の実装端子を支点として個別に揺動可能であり、複数の相手側端子と個別に接続される複数の可動端子と、前記複数の可動端子を貫通させた形態の連結部材とを備えている。本開示の構成によれば、複数の可動端子が連結部材によって一体的に揺動するので、複数の可動端子は一定の位置関係に保たれる。これにより、複数の可動端子が相手側端子に対して確実に接続されるので、本開示のコネクタ装置は接続機能に優れている。
【0010】
(2)前記複数の可動端子には、前記複数の可動端子が前記連結部材を貫通する状態に保持する保持部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、連結部材が、複数の可動端子を貫通させた状態に保持されるので、ハウジングには、連結部材が複数の可動端子から離脱することを防止するための構造を設ける必要がない。よって、ハウジングを小型化し、ひいては、装置全体を小型化することができる。
【0011】
(3)前記連結部材には、前記保持部に対して弾性的に係止する弾性保持片が形成されていることが好ましい。この構成によれば、複数の可動端子が揺動するのに伴って連結部材と可動端子が相対的に傾いたときに、弾性保持片が保持部に押されて柔軟に弾性変形するので、連結部材と可動端子との間でこじりが生じ難い。これにより、可動端子の揺動が円滑に行われる。
【0012】
(4)前記連結部材が導電性を有する材料からなり、前記連結部材には、前記可動端子の可動側外導体に対して弾性的に接触する弾性接触片が形成されていることが好ましい。この構成によれば、複数の可動側外導体同士が連結部材を介して導通されているので、複数の可動側外導体の間で電位差が生じることがない。したがって、本開示のコネクタ装置は、アース性能に優れている。
【0013】
(5)前記連結部材は、板状をなし、リブ状に突出した補強部を有していることが好ましい。この構成によれば、補強部によって、連結部材が歪むように変形することを防止できるので、揺動中における複数の可動端子の向きや姿勢を揃えることができる。
【0014】
(6)(5)において、前記補強部が、前記連結部材の外周縁から屈曲状に突出した第1補強リブと、前記連結部材のうち前記外周縁から離隔した領域に前記外周縁に沿うように配置された第2補強リブとを含んでいることが好ましい。連結部材の外周縁に連なる部位のうち、外周縁から屈曲状に突出する第1補強リブを形成することができない領域については、第2補強リブによって補強することができる。
【0015】
(7)(6)において、前記第1補強リブと前記第2補強リブが、前記外周縁の長さ方向において部分的に同じ領域に配置されていることが好ましい。この構成によれば、連結部材の外周縁に連なる部位の全領域を、第1補強リブと第2補強リブのうちいずれかの補強リブによって確実に補強することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタ装置を具体化した実施例1を、図1図8を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、図1,2,6における斜め右下方、及び図4,8における右方を前方と定義する。上下の方向については、図1~7にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、図1,2における斜め左下方を左方と定義し、図3にあらわれる向きを、そのまま左方及び右方と定義する。
【0017】
本実施例1のコネクタ装置は、図1,2に示すように、第1コネクタ10と、第2コネクタ30と、可動端子40と、連結部材60とを有する。図3に示すように、第1コネクタ10は第1回路基板Paに実装され、第2コネクタ30は第2回路基板Pbに実装される。第1回路基板Paは、例えば、自動車の屋根に取り付けられたECU(図示省略)に設けられるものであり、実装面を上向き、つまりシャークフィンアンテナ側に向けた状態で水平に配置される。第2回路基板Pbは、例えば、自動車の屋根(図示省略)に取り付けられるシャークフィンアンテナ(図示省略)に設けられるものである。第2回路基板Pbは、実装面を下向き、つまり車内側に向けた状態で水平に配置される。第1回路基板Paと第2回路基板Pbは、双方の実装面同士を平行に対向させた位置関係で配置されている。
【0018】
第1回路基板Paと第2回路基板Pbを接近させると、両回路基板Pa,Pbは、第1コネクタ10と第2コネクタ30と可動端子40とを介すことによって接続される。第1回路基板Paと第2回路基板Pbはワイヤーハーネスを介さずに接続されるので、第1回路基板Paと第2回路基板Pbとの間で高速通信が可能となる。自動車の屋根におけるシャークフィンアンテナの取付部分では、屋根とシャークフィンアンテナとの間の組付け公差が比較的大きいため、両コネクタ10,30の嵌合方向と交差する水平方向において、第1回路基板Paと第2回路基板Pbとの間で位置ずれが生じ得る。本実施例のコネクタ装置は、両回路基板Pa,Pbの位置ずれを可動端子40の揺動によって吸収しながら両コネクタ10,30の嵌合を行えるようになっている。
【0019】
<第1コネクタ10>
図3,4に示すように、第1コネクタ10は、第1ハウジング11と、複数の実装端子13とを備えている。第1コネクタ10を第1回路基板Paに実装した状態では、第1ハウジング11の下面が第1回路基板Paに固定され、複数の実装端子13の下端部が第1回路基板Paのプリント回路(図示省略)に接続される。
【0020】
第1ハウジング11は、直方形をなす合成樹脂製の単一部品である。第1ハウジング11には、実装端子13と同数の複数の第1端子収容室12が形成されている。第1端子収容室12は、第1ハウジング11を上下に貫通した形態である。複数の第1端子収容室12は、左右二列に分かれ、各列において3室ずつ前後方向に一列に整列するように配置されている。複数の第1端子収容室12内には、複数の実装端子13が個別に収容されている。
【0021】
実装端子13は、金属製の実装側内導体14と、合成樹脂製の実装側誘電体17と、金属製の実装側外導体18とを備えている。実装側内導体14は、軸線を第1回路基板Paと直交する上下方向に向けた筒状をなし、実装部15と実装側接続部16とを有する単一部品である。実装側誘電体17は、軸線を上下方向に向けた円筒形をなす。実装側誘電体17の中心孔には、実装側内導体14の実装部15が収容されている。実装側接続部16は、実装側誘電体17の上端面から上方へ突出している。
【0022】
実装側外導体18は、正八角形の角筒部19と、8つの弾性アーム部20とを有する単一部品である。8つの弾性アーム部20は、角筒部19から上方へ延出し、周方向に等角度ピッチで並ぶように配置されている。各弾性アーム部20の上端部(突出端部)には、内周側へ突出するように屈曲した抜止部21が形成されている。実装側誘電体17の上方では、8つの弾性アーム部20が、実装側内導体14の実装側接続部16を包囲している。
【0023】
複数の実装端子13を複数の第1端子収容室12に個別に収容することによって、第1コネクタ10が構成される。第1コネクタ10は、第1回路基板Paに実装される。第1コネクタ10を第1回路基板Paに実装した状態では、実装側内導体14の実装部15が第1回路基板Paの実装面に対して導通可能に溶接され、実装側外導体18の下端部が、第1回路基板Paの実装面のアース回路(図示省略)に対して導通可能に溶接される。
【0024】
<第2コネクタ30>
第2コネクタ30は、図3,4に示すように、第2ハウジング31と、実装端子13と同数の相手側端子36とを備えている。第2コネクタ30を第2回路基板Pbに実装した状態では、第2ハウジング31の上面が第2回路基板Pbの実装面に固定され、複数の相手側端子36の上端部が第2回路基板Pbのプリント回路(図示省略)に接続される。第2ハウジング31は、直方形の端子保持部32と方形の誘導部34とを有する合成樹脂製の単一部品である。
【0025】
端子保持部32には、端子保持部32を上下に貫通した形態の複数(実施例1では6つ)の第2端子収容室33が形成されている。第2端子収容室33は、第1端子収容室12を上下反転させた形態である。複数の第2端子収容室33内には、複数の相手側端子36が個別に収容されている。相手側端子36は、実装端子13と同一の部品であり、実装端子13とは上下反転した向きで第2端子収容室33内に取り付けられている。したがって、相手側端子36のうち実装端子13を構成する部品及び部位と同一の部品及び部位については、説明を省略し、実装端子13を構成する部品及び部位と同じ符号を付す。
【0026】
誘導部34は、端子保持部32の下端外周縁から斜め下方へスカート状に突出した形態である。誘導部34は、両コネクタ10,30の嵌合方向に対し、下方(第1コネクタ10側)に向かって裾広がりとなるように傾斜している。誘導部34の内部空間は、複数の第2端子収容室33と連通しているとともに、第2ハウジング31の下方へ開放されている。第2コネクタ30は、第1回路基板Paに対する第1コネクタ10の実装形態と同様の形態で、第2回路基板Pbの実装面に実装されている。
【0027】
<可動端子40>
図2~5に示すように、可動端子40は、全体として軸線を上下方向(第1回路基板Paと第2回路基板Pbが対向する方向)に向けた細長い形状をなす。本実施例1では、可動端子40の下端部、即ち第1回路基板Pa側及び第1コネクタ10側の端部を、基端部40Pと定義する。可動端子40の上端部、即ち第2回路基板Pb側及び第2コネクタ30側の端部を、先端部40Tと定義する。可動端子40は、金属製の可動側内導体41と、合成樹脂製の可動側誘電体44と、金属製の可動側外導体48とを組み付けて構成された部材である。
【0028】
可動側内導体41は、可動端子40の軸線方向に細長い筒状をなす。可動側内導体41は、円筒形の本体部42と、本体部42の上下両端部に形成された一対の可動側接続部43とを有する単一部品である。可動側誘電体44は、可動側内導体41と同軸状の円筒形をなす。可動側誘電体44の挿通孔45には、可動側内導体41が同軸状に収容されている。可動側誘電体44の軸線方向両端部には、可動側誘電体44の上下両端面を同軸状に凹ませた形態の円形の収容凹部46が形成されている。収容凹部46は、挿通孔45と連通している。可動側接続部43は、収容凹部46内に収容されている。
【0029】
可動側外導体48は、全体として円筒形をなす。可動側外導体48は可動側誘電体44を同軸状に包囲している。可動側誘電体44の下端部は可動側外導体48の下端よりも下方へ突出し、可動側誘電体44の上端部は可動側外導体48の上端よりも上方へ突出している。可動側内導体41と可動側誘電体44と可動側外導体48を組み付けることによって、可動端子40が構成されている。
【0030】
図5に示すように、可動側外導体48には、位置決め突部49と、突起状の第1保持部51と、突起状の第2保持部52と、4つの抜止め突起53が形成されている。位置決め突部49は、可動側外導体48の軸線と平行な上下方向のリブ状をなし、可動側外導体48の外周面から径方向外方へ突出した形態である。第1保持部51は、位置決め突部49の下端部における突出端面から、更に径方向外方へ段差状に突出した形態である。
【0031】
第2保持部52は、可動側外導体48の外周面のうち、上下方向における位置決め突部49の形成範囲内の位置から突出した形態である。第2保持部52は、第1保持部51よりも上方の位置で、かつ周方向において第1保持部51とは異なる位置に配置されている。4つの抜止め突起53は、周方向に等角度間隔を空けて配置されている。4つの抜止め突起53は、第1保持部51及び第2保持部52よりも下方(可動端子40の基端部40P側)の位置に配置されている。
【0032】
可動端子40は、可動端子40の基端部40Pを第1ハウジング11の上方から第1端子収容室12に挿入することによって、第1コネクタ10に取り付けられている。取り付ける過程では、実装側内導体14の実装側接続部16が、収容凹部46内に収容され、可動側内導体41の可動側接続部43に対して弾性的に接触する。
【0033】
可動端子40を第1コネクタ10に取り付ける過程では、抜止め突起53が抜止部21と干渉して弾性アーム部20を径方向外方へ弾性変形させるため、弾性アーム部20と可動側外導体48との間に摩擦抵抗が生じる。しかし、抜止め突起53の数は、弾性アーム部20の数の半分である4つとしているので、8つの抜止め突起53が8つの弾性アーム部20と干渉する場合に比べると、抜止め突起53と抜止部21との干渉に起因する抵抗が小さく抑えられている。可動側外導体48の外周面が抜止部21に接触することによって、可動側外導体48と実装側外導体18とが導通可能に接続される。
【0034】
抜止部21は内周側へ突出した形態なので、抜止部21と抜止め突起53が係止することによって、可動端子40が、実装端子13に対して上方への離脱を規制され、かつ揺動を可能な状態に保持される。可動端子40の軸線方向において、抜止部21と可動側外導体48の接触位置と、実装側接続部16と可動側接続部43の接触位置は、同じ高さである。可動端子40の揺動の支点は、可動側接続部43における実装側接続部16との接触部位である。
【0035】
可動側誘電体44の下端部は、可動側外導体48の下端縁よりも下方へ突出している。したがって、可動端子40が揺動したときに、可動側外導体48が実装側誘電体17の上端面に接触するおそれがなく、金属製の可動側外導体48が合成樹脂製の実装側誘電体17を傷付けるおそれはない。
【0036】
実装端子13に取り付けた可動端子40は、第1ハウジング11から上方へ突出した形態である。可動端子40の上端部(先端部40T)は、第2コネクタ30の相手側端子36と接続するようになっている。1つの可動端子40は1つの実装端子13のみに接触した状態で支持されているので、複数の可動端子40は、他の可動端子40とは異なる方向へ個別に揺動し得るようになっている。そのため、複数の可動端子40を一体的に揺動させるようにするために、本実施例1のコネクタ装置は、連結部材60を有している。
【0037】
<連結部材60>
連結部材60は、金属等の導電性を有する板材をプレス加工によって所定の形状に打ち抜いたものである。図6,7に示すように、連結部材60は、平板状をなす基板部61と、平板状をなす左右対称な一対の斜面部62と、平板状をなす左右対称な一対の垂壁部63とを有する。連結部材60を上から見た平面視において、連結部材60は長方形をなす。連結部材60を前方から見た正面視において、連結部材60は等脚台形をなす。
【0038】
平面視において、基板部61は長方形をなす。一対の斜面部62は、基板部61の左右両側縁部から斜め下外方へ延出している。一対の垂壁部63は、斜面部62の下端縁から基板部61と直角に下方へ突出している。基板部61と斜面部62と垂壁部63の前後方向の寸法は、同じ寸法である。
【0039】
連結部材60には、基板部61を貫通した形態の6つの保持孔64が、第1端子収容室12と対応する配置で形成されている。平面視において、保持孔64は円形に開口している。保持孔64の内径寸法は、可動側外導体48の外径寸法よりも僅かに大きい寸法である。図6~8に示すように、各保持孔64の開口縁部には、それぞれ、周方向に等角度ピッチで配置された3つずつの当接部65と、1つの位置決め凹部66が形成されている。3つの当接部65のうち1つの当接部65は、左右方向に隣り合う保持孔64に最も近い位置に配置されている。3つの当接部65のうち2つの当接部65は、基板部61と斜面部62の前後方向の境界線と平行に間隔を空けて並ぶように配置されている。位置決め凹部66は、保持孔64の前端に配置されている。
【0040】
各当接部65は、保持孔64の開口縁部から径方向内向きに突出した部位を上方へ屈曲させた形態である。保持孔64の開口縁部の内周面には、プレス加工時の破断面が露出しているが、当接部65のうち保持孔64の開口領域に臨む面は、プレス加工時に破断されなかった非破断面である。位置決め凹部66は、保持孔64の開口縁部を部分的に凹ませた形態である。
【0041】
図8に示すように、連結部材60には、6つの保持孔64と個別に対応する6つのスリット群68が形成されている。各スリット群68は、対応する各保持孔64の開口縁に連通する第1~第3の3本のスリット69A,69B,69Cによって構成されている。3本のスリット69A,69B,69Cは、互いに平行をなし、左右方向に延びている。詳細には、3本のスリット69A,69B,69Cは、保持孔64の開口縁のうち前後に並ぶ2つの当接部65の間の領域から、基板部61と斜面部62を通過し、垂壁部63の高さ方向中央部に到達している。
【0042】
連結部材60のうち第1スリット69Aと第2スリット69Bとに挟まれた部位は、弾性変形可能な弾性接触片70として機能する。弾性接触片70は、1つの保持孔64に対応して1つずつ設けられている。弾性接触片70は、正面視において屈曲した形状をなし、垂壁部63から保持孔64に向かって片持ち状に延出した形態である。平面視において、弾性接触片70は、保持孔64の中心に向かって延出している。図3,6,7に示すように、弾性接触片70の延出端部には、下方へ弧状に屈曲した接点部71が形成されている。接点部71のうち保持孔64の開口領域に臨む面は、上記当接部65と同様、連結部材60のプレス加工時に破断されなかった非破断面である。
【0043】
連結部材60のうち第2スリット69Bと第3スリット69Cとに挟まれた部位は、弾性変形可能な弾性保持片72として機能する。第3スリット69Cのうち保持孔64に連通する端部は、保持孔64の径方向と平行をなすように屈曲している。弾性保持片72は、1つの保持孔64に対応して1つずつ設けられている。弾性保持片72は、弾性接触片70と同様、正面視において屈曲した形状をなし、垂壁部63から保持孔64に向かって片持ち状に延出した形態である。平面視において、弾性保持片72は、保持孔64の中心から偏心した位置に向かって延出している。弾性保持片72の延出端部は、接点部71と周方向に隣り合うように配置され、保持孔64の開口領域に臨んでいる。
【0044】
図6~8に示すように、連結部材60は、連結部材60の剛性を高めるための部位として、4つの第1補強リブ74と、2つの第2補強リブ78を有している。第1補強リブ74は、連結部材60の外周縁のうち前縁部60Fと後縁部60Rとに形成されている。詳細には、第1補強リブ74は、基板リブ75と斜面リブ76と垂壁リブ77とから構成されている。基板リブ75は、基板部61の前端端と後端縁のうち左右方向中央部を除いた領域から、下方へ直角に突出している。斜面リブ76は、斜面部62の前端縁と後端縁の全領域から、斜め下方へ直角に突出している。垂壁リブ77は、垂壁部63の前端縁と後端縁の全領域から、反対側の垂壁部63に向かって直角に突出している。基板リブ75と斜面リブ76と垂壁リブ77は、屈曲した形状をなして1本に繋がっている。
【0045】
第2補強リブ78は、基板部61の上面のうち左右方向中央部から、上方へリブ状に突出した形態である。第2補強リブ78は、基板部61の前端縁よりも後方の部位と、基板部61の後端縁よりも前方の部位に配置され、前端縁及び後端縁と平行に左右方向に直線状に延びている。連結部材60の前縁部60Fと後縁部60Rに沿った左右方向において、第2補強リブ78の形成範囲と、第1補強リブ74の形成範囲は重なっている。詳細には、第1補強リブ74の基板部61における端部、即ち基板リブ75の端部と、第2補強リブ78の端部は、正面視において重なるように配置されている。
【0046】
連結部材60の成形工程では、帯状のキャリア(図示省略)に連なった状態の複数の連結部材60が、切り離される。本実施例1の連結部材60は、基板部61の前端縁と後端縁の左右方向中央部において、キャリアに繋がっていたため、基板部61のうちキャリアに繋がった部位には屈曲状の第1補強リブ74を形成することができない。しかし、基板部61のうち第1補強リブ74を形成できない領域については、第2補強リブ78によって補強を図っている。
【0047】
可動端子40を第1コネクタ10に取り付けた後、連結部材60を6つの可動端子40に取り付ける。連結部材60を取り付ける際には、各保持孔64を可動端子40に対して上から嵌合させる。保持孔64と可動端子40との嵌合を開始すると、弾性接触片70の接点部71が可動側外導体48の外周面に接触する。可動端子40に対する連結部材60の取付けが進む過程では、弾性接触片70が弾性変形し、接点部71が可動側外導体48の外周面に摺接する。
【0048】
保持孔64を可動端子40に取り付ける過程で、保持孔64の開口縁部が位置決め突部49の上端部に突き合った場合には、可動端子40を可動端子40の軸線周りに回転させ、位置決め凹部66に位置決め突部49の上端部を嵌合させる。位置決め凹部66と位置決め突部49との嵌合によって、保持孔64に対して可動端子40の周方向の向きを合わせ、連結部材60に対して6つの可動端子40を位置決めする。
【0049】
可動端子40を位置決めした後、さらに連結部材60を下降させると、弾性保持片72の延出端部が第2保持部52と干渉するので、弾性保持片72は、可動側外導体48の外周面から径方向へ遠ざかるように斜め上方へ弾性変位する。弾性保持片72は、弾性変位することによって第2保持部52を通過した後に、弾性復帰する。弾性復帰した弾性保持片72の延出端部は、第2保持部52に対して下から係止し得るように位置する。弾性保持片72の弾性復帰と同時に、又は弾性保持片72の弾性復帰の直後に、保持孔64の開口縁部が第1保持部51に対して上から当接する。
【0050】
以上により、可動端子40に対する連結部材60の取付けが完了し、各可動端子40が連結部材60に対する相対変位を規制されるとともに、6つの可動端子40が連結部材60を介して連結される。連結部材60は、6つの可動端子40の相互間の相対変位を規制するので、いずれか1つの可動端子40に対して揺動方向の外力が作用したときには、6つの可動端子40が、連結部材60と一体となって一斉に同じ方向へ同じ角度だけ揺動する。
【0051】
連結部材60と可動端子40を組み付けた状態では、弾性保持片72と第2保持部52との係止によって、連結部材60が可動端子40に対して上方へ離脱することを規制される。保持孔64の開口縁部と第1保持部51との係止によって、連結部材60が、第1ハウジング11よりも上方へ浮いた高さ、即ち第1ハウジング11と非干渉の状態に保持される。弾性接触片70の接点部71が、可動側外導体48の外周面に対して弾性的に接触するので、6つの可動側外導体48は連結部材60を介して同電位の状態に保持される。
【0052】
<実施例1の作用及び効果>
第1コネクタ10と第2コネクタ30を嵌合するときに、第1回路基板Paと第2回路基板Pbが相対変位していた場合には、いずれかの可動端子40の先端部40Tが誘導部34の内面に当接する。この状態から更に両コネクタ10,30の嵌合を進めると、可動端子40の先端部40Tが、誘導部34の傾斜した内面に摺接することにより、全ての可動端子40の先端部40Tが、一斉に揺動角度を変化させながら、相手側端子36との接続位置へ一体的に誘導される。可動端子40の先端部40Tは、誘導部34を通過した後に、相手側端子36に接続され、第1コネクタ10と第2コネクタ30が正規の嵌合状態となる。両コネクタ10,30が正規嵌合されると、第1回路基板Paと第2回路基板Pbが、実装端子13と相手側端子36を介して接続される。
【0053】
本実施例1のコネクタ装置は、第1回路基板Paに実装される第1ハウジング11と、複数の実装端子13と、複数の可動端子40と、連結部材60とを備えている。複数の実装端子13は、第1ハウジング11に取り付けられており、第1回路基板Paに実装されて接続状態となる。複数の可動端子40は、複数の実装端子13を支点として個別に揺動可能である。複数の可動端子40は、複数の相手側端子36と個別に接続される。連結部材60は、複数の可動端子40を個別に貫通させた形態である。
【0054】
この構成によれば、複数の可動端子40が連結部材60によって一体的に揺動するので、複数の可動端子40の先端部40Tは、一定の位置関係に保たれ、複数の相手側端子36に対して確実に接続される。したがって、本実施例1のコネクタ装置は可動端子40と相手側端子36との接続機能に優れている。
【0055】
複数の可動端子40には、複数の可動端子40が連結部材60を貫通する状態に保持するための第1保持部51と第2保持部52が形成されている。この構成によれば、連結部材60が、複数の可動端子40を貫通させた状態に保持されるので、第1ハウジング11には、連結部材60が複数の可動端子40から離脱することを防止するための構造を設ける必要がない。これにより、第1ハウジング11を小型化できるので、コネクタ装置全体を小型化することができる。
【0056】
連結部材60には、第2保持部52に対して弾性的に係止する弾性保持片72が形成されている。複数の可動端子40が揺動するのに伴って連結部材60と可動端子40が相対的に傾いたときには、弾性保持片72が第2保持部52に押されて柔軟に弾性変形するので、連結部材60と可動端子40との間でこじりが生じ難い。これにより、可動端子40の揺動が円滑に行われる。
【0057】
連結部材60は導電性を有する材料からなる。連結部材60には、可動端子40の可動側外導体48に対して弾性的に接触する弾性接触片70が形成されている。この構成によれば、複数の可動側外導体48同士が連結部材60を介して導通されているので、複数の可動側外導体48の間で電位差が生じることがない。したがって、本実施例1のコネクタ装置は、アース性能に優れている。
【0058】
連結部材60は、板状をなしているため、可動端子40が揺動したときに歪むように変形することが懸念される。しかし、本実施例1の連結部材60は、リブ状に突出した補強部として第1補強リブ74と第2補強リブ78を有しているので、連結部材60が歪むように変形することを防止できる。これにより、揺動中における複数の可動端子40の向きや姿勢を揃えることができる。
【0059】
連結部材60の剛性を高めるための補強部は、第1補強リブ74と第2補強リブ78とを含んでいる。第1補強リブ74は、連結部材60の外周縁(前縁部60Fと後縁部60R)から屈曲状に突出している。第2補強リブ78は、連結部材60のうち前縁部60F及び後縁部60Rから離隔した領域に配置され、前縁部60Fと後縁部60Rに沿うように延びた形態である。連結部材60の前縁部60Fに連なる部位のうち、前縁部60Fから屈曲状に突出する第1補強リブ74を形成することができない領域については、第2補強リブ78によって補強することができる。連結部材60の後縁部60Rに連なる部位のうち、後縁部60Rから屈曲状に突出する第1補強リブ74を形成することができない領域についても、第2補強リブ78によって補強することができる。
【0060】
第1補強リブ74の基板部61における端部と、第2補強リブ78の端部は、連結部材60の前縁部60Fと後縁部60Rの長さ方向において部分的に同じ領域に配置されている。この構成によれば、連結部材60の前縁部60Fに連なる部位の全領域と、連結部材60の後縁部60Rに連なる部位の全領域を、第1補強リブ74と第2補強リブ78のうちいずれかの補強リブ74,78、又は両補強リブ74,78によって確実に補強することができる。
【0061】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、連結部材は、保持部に対して弾性的に係止する弾性保持片を有するが、連結部材は、弾性変形しない部位だけが保持部に係止する形態であってもよい。
上記実施例では、複数の可動側外導体が連結部材を介して導通されるようにしたが、連結部材は、非導電性の材料からなるものであってもよい。
上記実施例では、弾性接触片が連結部材の外面から突出した状態で可動側外導体に弾性接触するが、弾性接触片は、連結部材の外面と面一の状態又は外面よりも内側へ後退した状態で可動側外導体に弾性接触してもよい。
上記実施例では、連結部材に補強部を形成したが、連結部材は、補強部を有しない形態であってもよい。
上記実施例では、補強部が、第1補強リブと第2補強リブとによって構成されているが、補強部は、第1補強リブと第2補強リブのうちいずれか一方の補強リブだけで構成されていてもよい。
上記実施例では、第1補強リブと第2補強リブが、連結部材の外周縁の長さ方向において部分的に同じ領域に配置されているが、第1補強リブと第2補強リブは、連結部材の外周縁の長さ方向において互いに異なる領域のみに配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…第1コネクタ
11…第1ハウジング(ハウジング)
12…第1端子収容室
13…実装端子
14…実装側内導体
15…実装部
16…実装側接続部
17…実装側誘電体
18…実装側外導体
19…角筒部
20…弾性アーム部
21…抜止部
30…第2コネクタ
31…第2ハウジング
32…端子保持部
33…第2端子収容室
34…誘導部
36…相手側端子
40…可動端子
40P:可動端子の基端部
40T:可動端子の先端部
41…可動側内導体
42…本体部
43…可動側接続部
44…可動側誘電体
45…挿通孔
46…収容凹部
48…可動側外導体
49…位置決め突部
51…第1保持部
52…第2保持部
53…抜止め突起
60…連結部材
60F:連結部材の前縁部
60R:連結部材の後縁部
61…基板部
62…斜面部
63…垂壁部
64…保持孔
65…当接部
66…位置決め凹部
68…スリット群
69A:第1スリット
69B:第2スリット
69C:第3スリット
70…弾性接触片
71…接点部
72…弾性保持片
74…第1補強リブ
75…基板リブ
76…斜面リブ
77…垂壁リブ
78…第2補強リブ
Pa…第1回路基板(回路基板)
Pb…第2回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8