(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】スライド装置用ロック装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2020081174
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 忠佑
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-084336(JP,U)
【文献】特開2019-202572(JP,A)
【文献】特開2007-112399(JP,A)
【文献】実開昭57-022979(JP,U)
【文献】特開2000-272426(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093918(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005003032(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 1/00-1/16
B65D 35/44-35/54;39/00-55/16
E05F 1/00-13/04;17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定レール及び可動レールを有し、前記可動レールが前記固定レールに対してスライド可能なスライド装置に適用され、当該可動レールが当該固定レールに対してスライドすることを規制するためのロック装置において、
前記固定レールに設けられた
第1被係合部及び前記可動レールに設けられた第2被係合部に係合したロック位置と当該係合が解除された非ロック位置との間で変位可能な係合部を有するロック部材であって、前記可動レールに装着されたロック部材と、
前記係合部を前記非ロック位置から前記ロック位置に向けて変位させる弾性力を当該係合部に作用させる第1バネと、
前記係合部を前記非ロック位置から前記ロック位置に向けて変位させる弾性力を当該係合部に作用させる第2バネと、
前記係合部が前記非ロック位置から前記ロック位置に向けて変位するときであって当該係合部が前記ロック位置に到達する前に、前記第1バネが前記係合部に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくする付勢力低下機構とを備え
、
前記係合部が前記非ロック位置より前記ロック位置に近接した位置であって、前記係合部が前記第1被係合部及び第2被係合部のいずれとも係合していないときの位置、又は前記係合部が前記第1被係合部及び第2被係合部係合のうちいずれか一方と係合し、他方と係合していときの位置をハーフロック位置としたとき、
前記付勢力低下機構は、
前記係合部が非ロック位置から前記ハーフロック位置の間にあるときには、常に、前記第1バネの弾性力及び前記第2バネの弾性力を当該係合部に作用させるとともに、
前記係合部が前記ハーフロック位置から前記ロック位置の間にあるときには、前記第2バネの弾性力を当該係合部に作用させ、かつ、前記第1バネの弾性力が当該係合部に作用することを遮断する
スライド装置用ロック装置。
【請求項2】
前記第1バネと前記第2バネとは、互いに並列的に前記係合部に弾性力を作用させ、かつ、前記第2バネは、前記第1バネより小さな弾性力を発揮可能である請求項1に記載のスライド装置用ロック装置。
【請求項3】
前記ロック部材のうち前記第1バネの弾性力を受ける部位を受圧部としたとき、前記付勢力低下機構は、前記第1バネが予め決められた状態まで復元した時に当該第1バネを前記受圧部から離間させる請求項1又は2に記載のスライド装置用ロック装置。
【請求項4】
前記付勢力低下機構は、前記第1バネが予め決められた状態まで復元した時に前記第1バネに接触して当該第1バネが更に復元することを規制する規制部を有して構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライド装置用ロック装置。
【請求項5】
前記固定レールには、前記
第1被係合部を構成するとともに、前記係合部が貫通可能な第1の貫通穴が設けられ、
前記可動レールには、
前記第2被係合部を構成するとともに、前記係合部が貫通可能な第2の貫通穴が設けられ、
前記係合部が前記第1の貫通穴及び前記第2の貫通穴を貫通したときに、当該係合部が前記ロック位置となり、
さらに、前記第1の貫通穴及び前記第2の貫通穴のうち前記非ロック位置側に位置する貫通穴を最初の貫通穴としたとき、
前記付勢力低下機構は、前記係合部が前記最初の貫通穴に到達した時、又は前記係合部が前記最初の貫通穴に到達する前に、前記第1バネが前記係合部に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスライド装置用ロック装置。
【請求項6】
固定レール及び可動レールを有し、前記可動レールが前記固定レールに対してスライド可能なスライド装置において、
前記固定レールに設けられた
第1被係合部及び前記可動レールに設けられた第2被係合部に係合したロック位置と当該係合が解除された非ロック位置との間で変位可能な係合部を有するロック部材であって、前記可動レールに装着されたロック部材と、
前記係合部を前記非ロック位置から前記ロック位置に向けて変位させる弾性力を当該係合部に作用させる第1バネと、
前記係合部を前記非ロック位置から前記ロック位置に向けて変位させる弾性力を当該係合部に作用させる第2バネと、
前記係合部が前記非ロック位置から前記ロック位置に向けて変位するときであって当該係合部が前記ロック位置に到達する前に、前記第1バネが前記係合部に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくする付勢力低下機構とを備え
、
前記係合部が前記非ロック位置より前記ロック位置に近接した位置であって、前記係合部が前記第1被係合部及び第2被係合部のいずれとも係合していないときの位置、又は前記係合部が
前記第1被係合部及び第2被係合部係合のうちいずれか一方と係合し、他方と係合していときの位置をハーフロック位置としたとき、
前記付勢力低下機構は、
前記係合部が非ロック位置から前記ハーフロック位置の間にあるときには、常に、前記第1バネの弾性力及び前記第2バネの弾性力を当該係合部に作用させるとともに、
前記係合部が前記ハーフロック位置から前記ロック位置の間にあるときには、前記第2バネの弾性力を当該係合部に作用させ、かつ、前記第1バネの弾性力が当該係合部に作用することを遮断するスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライド装置に用いられるロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のロック装置では、ロック爪等の係合部がレールと衝突する際に発生する異音を低減すべく、電気式アクチェータ、オイルダンパー又はフリクションダンパー等にて構成された減速装置にて係合部の衝突速度を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の減速装置は、部品点数が多いため、製造原価低減を図ることが難しい。なお、オイルダンパー式の減速装置は、雰囲気温度によって減速特性が変化し易いので、スライド装置用ロック装置には不適切である。
【0005】
さらに、スライド装置は、スライド速度が予め決められた速度以上の状態であっても、確実に係合部を被係合部に係合させてスライド装置をロック状態とする必要がある。しかし、スライド速度が上記速度以上の状態で係合部を被係合部に確実に係合させるには、係合部の変位速度大きくする必要がある。このため、上記の異音が大きくなる。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、異音の発生やスライド装置の製造原価上昇を抑制しながら、係合部を被係合部に確実に係合させることが可能なスライド装置用ロック装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
固定レール(11)及び可動レール(12)を有し、前記可動レール(12)が前記固定レール(11)に対してスライド可能なスライド装置に適用され、当該可動レール(12)が当該固定レール(11)に対してスライドすることを規制するためのロック装置(20)は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0008】
すなわち、当該構成要件は、固定レール(11)に設けられた被係合部(23)に係合したロック位置と当該係合が解除された非ロック位置との間で変位可能な係合部(22)を有するロック部材(21)であって、可動レール(12)に装着されたロック部材(21)と、係合部(22)を非ロック位置からロック位置に向けて変位させる弾性力を当該係合部(22)に作用させる第1バネ(26A)と、係合部(22)を非ロック位置からロック位置に向けて変位させる弾性力を当該係合部(22)に作用させる第2バネ(26B)と、係合部(22)が非ロック位置からロック位置に向けて変位するときであって当該係合部(22)がロック位置に到達する前に、第1バネ(26A)が係合部(22)に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくする付勢力低下機構(25)とである。
【0009】
これにより、当該スライド装置用ロック装置では、係合部(22)がロック位置に到達する前に、第1バネ(26A)が係合部(22)に作用させる弾性力が小さくなるので、係合部(22)の変位速度が過度に大きくなることが抑制される。このため、仮に、係合部(22)がいずれかのレールに衝突した場合であっても、大きな異音が発生することが抑制され得る。
【0010】
付勢力低下機構(25)が作動するまでは、係合部(22)は、第1バネ(26A)及び第2バネ(26B)から弾性力を受けて変位するので、係合部(22)の変位速度が過度に小さくなることが抑制される。したがって、係合部(22)を被係合部(23)に確実に係合させることが可能となり得る。
【0011】
以上のように、当該スライド装置用ロック装置では、特許文献1に記載の減速装置を用いる必要なないので、異音の発生やスライド装置の製造原価上昇を抑制しながら、係合部(22)を被係合部(23)に確実に係合させることが可能となり得る。
【0012】
なお、当該スライド装置用ロック装置は、例えば、以下の構成であってもよい。
【0013】
すなわち、第1バネ(26A)と第2バネ(26B)とは、互いに並列的に係合部(22)に弾性力を作用させ、かつ、第2バネ(26B)は、第1バネ(26A)より小さな弾性力を発揮可能であることが望ましい。これにより、仮に、係合部(22)がいずれかのレールに衝突した場合であっても、大きな異音が発生することが抑制され得る。
【0014】
第2バネ(26B)ており、ロック部材(21)のうち第1バネ(26A)の弾性力を受ける部位を受圧部(21B)としたとき、付勢力低下機構(25)は、第1バネ(26A)が予め決められた状態まで復元した時に当該第1バネ(26A)を受圧部(21B)から離間させることが望ましい。これにより、係合部(22)がロック位置に到達する前に、第1バネ(26A)が係合部(22)に作用させる弾性力を確実に小さくすることが可能となり得る。
【0015】
付勢力低下機構は、第1バネ(26A)が予め決められた状態まで復元した時に第1バネ(26A)に接触して当該第1バネ(26A)が更に復元することを規制する規制部(25A)を有して構成されていることが望ましい。
【0016】
固定レール(11)には、被係合部(23)を構成するとともに、係合部(22)が貫通可能な第1の貫通穴(23)が設けられ、可動レール(12)には、係合部(22)が貫通可能な第2の貫通穴(24)が設けられ、係合部(22)が第1の貫通穴(23)及び第2の貫通穴(24)を貫通したときに、当該係合部(22)がロック位置となり、さらに、第1の貫通穴(23)及び第2の貫通穴(24)のうち非ロック位置側に位置する貫通穴を最初の貫通穴(23)としたとき、付勢力低下機構(25)は、係合部(22)が最初の貫通穴(23)に到達した時、又は係合部(22)が最初の貫通穴(23)に到達する前に、第1バネ(26A)が係合部(22)に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくすることが望ましい。
【0017】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るロック装置を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るロック装置を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係るロック装置を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るロック装置の作動説明図である。
【
図7】第1実施形態に係るロック装置の作動説明図である。
【
図8】第1実施形態に係るロック装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0020】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るスライド装置、及び当該スライド装置用ロック装置(以下、ロック装置という。)が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0021】
したがって、当該スライド装置及びロック装置は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0022】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示されたスライド装置及びロック装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0023】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
乗物用シート1は、
図1に示されるように、シート本体2及びスライド装置10等を少なくとも備える。シート本体2は、シートクッション3及びシートバック5等を少なくとも備える。
【0024】
シートクッション3は着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。シート本体2は、2つのスライド装置10により支持されている。
【0025】
各スライド装置10は、シート本体2をスライド可能に支持する。本実施形態では、シート幅方向一端側及びシート幅方向他端側それぞれにスライド装置10が配置されている。2つのスライド装置10は同一構造である。以下の説明は、シート幅方向他端側に配置されたスライド装置10の詳細構造である。
【0026】
<2.スライド装置の構成>
<2.1 スライド装置の概要>
スライド装置10は、固定レール11、可動レール12及びロック装置20等を少なくとも有する。固定レール11は、乗物に対して固定される部材である。当該固定レール11は、乗物のフロアパネル(図示せず。)に直接的又は間接的に固定される。
【0027】
可動レール12は、シート本体2が固定されるとともに、固定レール11に対してスライド可能な部材である。つまり、シート本体2は、スライド装置10を介してスライド可能に乗物に搭載される。
【0028】
ロック装置20は、可動レール12が固定レール11に対してスライドすることを規制するための装置である。なお、本実施形態に係るスライド装置10は、スライド駆動機構13及び第2のロック装置14も有する。
【0029】
第2のロック装置14もロック装置20と同様に可動レール12が固定レール11に対してスライドすることを規制するための装置である。なお、本実施形態に係る第2のロック装置14は、チップアップ機構(図示せず。)の作動と連動する。
【0030】
チップアップ機構は、シートバック5がシート前方側に倒伏する作動に連動してシートクッション3を着座可能位置から上方側に回転変位させるための機構である。そして、第2のロック装置14は、シートクッション3の仰角が予め決められた角度を超えたときにシート本体2のスライドを規制する。
【0031】
スライド駆動機構13は、可動レール12を固定レール11に対してスライド変位させるための機構である。当該スライド駆動機構13は、駆動装置、ラック及びピニオン等を少なくとも有して構成されている。
【0032】
駆動装置は、ピニオンを回転させる駆動力を発生する。当該駆動装置は、電動モータMo及び減速機構等を有している。減速機構は、電動モータMoで発生した回転力を減速して出力する歯車機構である。
【0033】
ラックは、固定レール11内に固定された状態で当該固定レール11の長手方向と平行な方向に延びる半径が無限大の歯車である。ピニオンは、ラックの上方側に配置されて当該ラックと噛み合う歯車である。
【0034】
これにより、ピニオンが電動モータMoにより駆動されて回転すると、ピニオンはラック上を当該ラックの長手方向に移動する。このため、可動レール12、つまり乗物用シート1が固定レール11に対してスライド変位する。
【0035】
<2.2 ロック装置の構成>
ロック装置20は、
図3に示されるように、ロック部材21、付勢力低下機構25及び付勢体26等を少なくとも備える。
【0036】
<ロック部材等>
ロック部材21は、
図5に示されるように、少なくも1つ(本実施形態では、複数)の係合部22を有しているととともに、ロック位置(
図6参照)と非ロック位置(
図8参照)との間で変位可能である。
【0037】
当該ロック部材21は、
図4に示されるように、ブラケット27により揺動可能に支持されている。ブラケット27は、可動レール12に固定されている(
図3参照)。なお、ロック部材21の揺動中心軸線Loは、可動レール12のスライド方向と平行である。
【0038】
ロック部材21のうち揺動中心軸線Loを挟んで複数の係合部22と反対側には、操作部21Aが設けられている。操作部21Aは、解除レバー(図示せず。)から解除力を受ける部位である。解除力は、ロック部材21をロック位置側から非ロック位置側に変位させる力である。
【0039】
ロック位置は、
図6に示されるように、係合部22が
第1被係合部23に係合した位置である。
第1被係合部23は、固定レール11に設けられた貫通穴により構成されている。なお、以下の説明では、当該貫通穴、つまり
第1被係合部23は第1貫通穴23と記載されている。
【0040】
なお、第1貫通穴23は、固定レール11のうち可動レール12と対向する部位に複数設けられている。それら第1貫通穴23は、
図1に示されるように、係合部22より多い個数であって、固定レール11の長手方向に沿って直列に並んで設けられている。
【0041】
各係合部22は、
図6に示されるように、当該係合部22がロック位置にあるときに、第1貫通穴23を貫通可能な閂にて構成されている。なお、以下の説明では、各係合部22は閂22と記載されている。
【0042】
可動レール12には、
第2被係合部をなす第2貫通穴24(
図3参照)が設けられている。
第2貫通穴24は、各閂22が貫通可能な貫通穴である。なお、第2貫通穴24の個数は、閂22の個数と同じである。そして、ロック部材21がロック位置にある場合には、各閂22は、各第1貫通穴23及び第2貫通穴24を貫通した状態となる(
図6参照)。
【0043】
非ロック位置は、各閂22と各第1貫通穴23との係合状態が解除される位置、つまり、各閂22が各第1貫通穴23から離間した位置をいう(
図8参照)。そして、各閂22が非ロック位置からロック位置に向けて変位する際には、
図8→
図7→
図6に示されるように、各閂22は、各第1貫通穴23を貫通した後に各第2貫通穴24を貫通してロック位置に至る。
【0044】
なお、各閂22が第2貫通穴24に突入していない位置であって、各閂22が非ロック位置よりロック位置に近接した位置(以下、ハーフロック位置という。)では、各閂22は、以下の(a)~(c)のいずれかに位置する(
図7参照)。
【0045】
(a)は、各閂22が第1貫通穴23に突入する直前の位置である。(b)は、各閂22の先端が固定レール11に接触している位置である。(c)は、各閂22が第1貫通穴23は貫通しているが第2貫通穴24は貫通していない位置である。
【0046】
<付勢体>
付勢体26は、
図5に示されるように、各閂22、つまりロック部材21に弾性力作用させる部材である。具体的には、付勢体26は、ロック部材21を非ロック位置からロック位置に向けて変位させる弾性力を発揮する。このため、解除力がロック部材21に作用していない状態では、ロック部材21はロック位置に保持され得る。
【0047】
本実施形態に係る付勢体26は、
図4に示されるように、第1バネ26A及び第2バネ26B等を有して構成されている。第1バネ26A及び第2バネ26Bは、互いに並列的にロック部材21に上記の弾性力を作用させる。
【0048】
本実施形態では、第2バネ26Bは、第1バネ26Aより小さな弾性力を発揮可能である。つまり、第2バネ26Bのバネ定数は、第1バネ26Aのバネ定数より小さい。なお、本実施形態に係る第1バネ26A及び第2バネ26Bは、捻りコイルばねにて構成されている。
【0049】
そして、第1バネ26A及び第2バネ26Bの一端側は、
図4に示されるように、ブラケット27又は可動レール12に係止されている。第1バネ26A及び第2バネ26Bの他端側は、ロック部材21に係止されている。
【0050】
<付勢力低下機構>
付勢力低下機構25は、ロック部材21が非ロック位置からロック位置に向けて変位するときであって各閂22がロック位置に到達する前に、第1バネ26Aがロック部材21に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくするための装置である。
【0051】
すなわち、本実施形態では、第1貫通穴23は第2貫通穴24に対して非ロック位置側に位置する。そして、付勢力低下機構25は、各閂22が第1貫通穴23に到達した時、又は各閂22が第1貫通穴23に到達する前に、第1バネ26Aがロック部材21に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくする。
【0052】
換言すれば、本実施形態に係る付勢力低下機構25は、各閂22がハーフロック位置にある場合に、第1バネ26Aがロック部材21に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくする。
【0053】
付勢力低下機構25は、以下の構成により、第1バネ26Aがロック部材21に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくする。
【0054】
すなわち、付勢力低下機構25は、
図3に示されるように、第1バネ26Aが予め決められた状態まで復元した時に当該第1バネ26Aを受圧部21Bから離間させる。受圧部21Bとは、ロック部材21のうち第1バネ26Aの弾性力を受ける部位、つまり第1バネ26Aの他端側が係止されている部位をいう。
【0055】
これにより、ロック部材21が非ロック位置からロック位置に向けて変位するときであって、第1バネ26Aの他端側が受圧部21Bから離間した時以降、第1バネ26Aの弾性力がロック部材21に作用しなくなる。
【0056】
そこで、本実施形態では、第1バネ26Aの他端側が受圧部21Bから離間するタイミングがハーフロック位置と一致するように付勢力低下機構25が構成されている。具体的には、本実施形態に係る付勢力低下機構25は、第1バネ26Aの他端側が係止可能なストッパ状の規制部25Aにより構成されている。
【0057】
つまり、規制部25Aは、第1バネ(26A)が予め決められた状態まで復元した時に第1バネ26Aに接触して当該第1バネ26Aが更に復元することを規制する。このとき、第1バネ26Aは受圧部21Bから離間する。
【0058】
なお、第2バネ26Bは、ロック部材21の位置によらず、常に、弾性力をロック部材21に作用させている。つまり、第2バネ26Bは、常に、ロック部材をロック位置に向けて変位させる弾性力(以下、ロック力という。)を当該ロック部材21に作用さている。
【0059】
<付勢力低下機構の作動>
操作部21Aに解除力が作用している状態では、
図8に示されるように、ロック部材21は非ロック位置にある。第1バネ26Aの他端側は受圧部21Bに係止されている。つまり、非ロック位置にあるロック部材21は、第1バネ26A及び第2バネ26Bからロック力を受けている。
【0060】
解除力が消失すると、ロック部材21は、第1バネ26Aのロック力及び第2バネ26Bのロック力によりロック位置に向けて変位する。そして、ロック部材21がハーフロック位置となったときに、
図7に示されるように、規制部25Aに第1バネ26Aの他端側が引っ掛かって係止されるため、第1バネ26Aの他端側が受圧部21B、つまりロック部材21から離間する。
【0061】
その後、第2バネ26Bのロック力及びロック部材21の慣性により、ロック部材21がロック位置に向けて変位し、各閂22は第1貫通穴23及び第2貫通穴24を貫通したときに、ロック部材21がロック位置となる(
図6参照)。
【0062】
<3.本実施形態に係るスライド装置の特徴>
ロック装置20は、各閂22が非ロック位置からロック位置に向けて変位するときであって当該各閂22がロック位置に到達する前に、第1バネ26Aが各閂22に作用させる弾性力を予め決められた力より小さくする付勢力低下機構25を備える。
【0063】
これにより、当該ロック装置20では、各閂22がロック位置に到達する前に、第1バネ26Aが各閂22、つまりロック部材21に作用させる弾性力が小さくなるので、各閂22の変位速度が過度に大きくなることが抑制される。このため、仮に、各閂22がいずれかのレールに衝突した場合であっても、大きな異音が発生することが抑制され得る。
【0064】
付勢力低下機構25が作動するまでは、各閂22は、第1バネ26A及び第2バネ26Bから弾性力を受けて変位するので、各閂22の変位速度が過度に小さくなることが抑制される。したがって、各閂22を第1貫通穴23及び第2貫通穴24に確実に係合させることが可能となり得る。
【0065】
以上のように、当該ロック装置20では、特許文献1に記載の減速装置を用いる必要なないので、異音の発生やスライド装置の製造原価上昇を抑制しながら、各閂22を第1貫通穴23及び第2貫通穴24に確実に係合させることが可能となり得る。
【0066】
第1バネ26Aと第2バネ26Bとは、互いに並列的に係合部22に弾性力を作用させ、かつ、第1バネ26Aより小さな弾性力を発揮可能である。これにより、仮に、各閂22がいずれかのレールに衝突した場合であっても、大きな異音が発生することが抑制され得る。
【0067】
付勢力低下機構25は、第1バネ26Aが予め決められた状態まで復元した時に当該第1バネ26Aを受圧部21Bから離間させる。これにより、各閂22がロック位置に到達する前に、第1バネ26Aが各閂22に作用させる弾性力を確実に小さくすることが可能となり得る。
【0068】
付勢力低下機構は、第1バネ26Aが予め決められた状態まで復元した時に第1バネ26Aに接触して当該第1バネ26Aが更に復元することを規制する規制部25Aを有して構成されている。これにより、付勢力低下機構25の構成が単純な構成となる。
【0069】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る付勢体26は、第1バネ26A及び第2バネ26Bにて構成され、かつ、付勢力低下機構25を備えていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0070】
すなわち、当該開示は、例えば、第1バネ26A及び第2バネ26Bを廃止し、非線形特性を有する1つのバネにて付勢体26が構成され、かつ、付勢力低下機構25が廃止された構成のロック装置20であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、第2バネ26Bは、第1バネ26Aより小さな弾性力を発揮可能な構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1バネ26Aと第2バネ26Bとが同一の構成であってもよい。
【0072】
上述の実施形態に係るロック装置20は、付勢力低下機構25を備える構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1バネ26Aが弾性変形していない状態のときに、ロック部材21がハーフロック位置となる構成であってもよい。
【0073】
上述の実施形態に係る第1バネ26A及び第2バネ26Bは捻りコイルばねであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1バネ26A及び第2バネ26Bがコイルばねにて構成されていてもよい。この場合、第1バネ26Aの自然長が第2バネ26Bの自然長より小さく、かつ、第1バネ26Aが第2バネ26B内に収納された構成であってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0075】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1… 乗物用シート 2…シート本体 3… シートクッション
5… シートバック 10…スライド装置 11… 固定レール
12… 可動レール 13…スライド駆動機構 20… ロック装置
21… ロック部材 21A…操作部 21B… 受圧部
22… 係合部 22…閂 23… 第1被係合部、第1貫通穴
24… 第2貫通穴 25…付勢力低下機構 25A… 規制部
26… 付勢体 26A…第1バネ 26B… 第2バネ