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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】車両用フードロックシステム
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/24 20140101AFI20240214BHJP
   E05B 79/20 20140101ALI20240214BHJP
【FI】
E05B83/24 A
E05B79/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020085850
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021179144
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】宮川 正純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久美子
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-54706(JP,A)
【文献】特開平5-33537(JP,A)
【文献】実開昭56-39571(JP,U)
【文献】国際公開第98/45559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 ー 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されると共に、前記車体に開閉可能に枢支されるフード側のストライカが前記フードの閉動作に伴って進入し、開動作に伴って退出するストライカ進入溝を有するベースプレートと、
前記ベースプレートに支持され、前記ストライカ進入溝に進入した前記ストライカに噛合することにより、前記フードを全閉位置に保持可能なプライマリラッチ機構部と、前記ベースプレートに支持され、前記フードが全閉位置よりも僅かに開いた半開位置にあるとき、前記プライマリラッチ機構部から外れた前記ストライカに係合可能な待機位置から前記ストライカに係合不能な退避位置に移動可能で、かつ付勢手段によりそれぞれの位置に弾性保持されるセカンダリラッチを含むフードロック装置と、
運転席近傍に配置されると共に、第1スプリングの付勢力に抗して、予め定めた第1待機位置から一方向へ所定ストローク移動した第1操作位置に移動することにより、第1操作力伝達部材を介して前記プライマリラッチ機構部をアンラッチ状態に変位させるオープナハンドルと、前記オープナハンドルが前記第1スプリングの付勢力に抗して前記一方向へ前記第1操作位置を通過した第2操作位置に移動した場合、第2スプリングの付勢力に抗して、前記オープナハンドルの移動と共に予め定めた第2待機位置から一方向へ移動することにより、第2操作力伝達部材を介して前記セカンダリラッチを前記待機位置から前記退避位置に変位させる連動レバーを含むオープナ装置と、を備えることを特徴とする車両用フードロックシステム。
【請求項2】
前記オープナ装置の前記オープナハンドルを、前記第1操作位置から前記第2操作位置に移動させる場合、前記第1スプリングの付勢力に前記第2スプリングの付勢力を加えた付勢力に抗する操作力を要することを特徴とする請求項1記載の車両用フードロックシステム。
【請求項3】
前記オープナ装置は、さらに、前記運転席近傍に固定されるベースプレートを有し、
前記オープナハンドル及び前記連動レバーは、同軸により前記ベースプレートにそれぞれ独立して回動可能に支持されることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用フードロックシステム。
【請求項4】
前記フードロック装置の前記付勢手段は、一端部が前記セカンダリラッチに掛止され、他端部が前記ベースプレートに掛止されて、前記セカンダリラッチの前記待機位置と前記退避位置との間の中間位置を境にして、前記セカンダリラッチに付与する付勢力の付勢方向が反転するターンオーバースプリングであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車両用フードロックシステム。
【請求項5】
前記セカンダリラッチは、前記退避位置にあるとき、前記ストライカ進入溝内に進入する当接部を有し、前記フードの閉動作により前記ストライカが前記当接部に当接することにより、前記付勢手段の付勢力に抗して前記退避位置から前記待機位置に強制移動させられることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の車両用フードロックシステム。
【請求項6】
前記セカンダリラッチは、前記ストライカが前記プライマリラッチ機構部に噛合しているとき、前記ストライカに当接することにより、前記待機位置から前記退避位置への移動が阻止されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の車両用フードロックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフードを閉鎖位置に保持するためのフードロック装置を備えた車両用フードロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用フードロックシステムにおいては、車体に配置されると共に、フード側のストライカに噛合することにより、フードを閉鎖位置に保持するフードロック装置と、運転席近傍に配置されると共に、ボーデンケーブル等の操作力伝達部材を介してフードロック装置に連結されることで、ユーザの手動操作に基づいて、フードロック装置を解除作動させてフードの開放を可能にするオープナ装置とを備える。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のフードロックシステムにおいては、フード側のストライカに噛合可能なラッチ、及び当該ラッチに係合することによりラッチの開放方向への回転を阻止するラチェットを有するフードロック装置を備える。
【0004】
フードロック装置のラッチは、ストライカに噛合することにより、フードを全閉位置に保持するための第1溝部、及びフードを全閉位置から僅かに開いた半開位置に保持するための第2溝部を有する係合溝を有し、ストライカが第1溝部に噛合するラッチ位置(フードの全閉位置に対応する位置)から、ストライカが第2溝部に係合するハーフラッチ位置(フードの半開位置に対応する位置)を経て、ストライカが第2溝部から離脱したアンラッチ位置(フードの半開位置よりさらに開いた位置に対応)、及びその逆へ回転可能である。
【0005】
ラチェットは、ラッチがラッチ位置にあるとき、ラッチの外周に設けられた第1爪部に係合することで、ラッチをラッチ位置に保持し、また、ラッチがハーフラッチ位置にあるとき、ラッチの外周に設けられた第2爪部に係合することで、ラッチをハーフラッチ位置に保持し、またラッチがアンラッチ位置にあるときには、第1、2爪部のいずれにも係合しない構成である。
【0006】
全閉位置にあるフードを室内から開けるには、先ず、ユーザが運転席近傍に配置されたオープナ装置のオープナハンドルを待機位置から所定方向へ操作する。これにより、ラチェットが解除作動してラッチの第1爪部から離脱することで、ラッチは、ラッチ位置からハーフラッチ位置に回転して、フードが全閉位置から半開位置まで持ち上げられて、ラチェットは、ラッチの第2爪部に係合する。次に、オープナハンドルを待機位置に戻したあとに、前回の操作と同一方向へ再度操作する。これにより、ラチェットが再び解除作動してラッチの第2爪部から離脱することで、ラッチは、ハーフラッチ位置からアンラッチ位置に回転して、ストライカの第2溝部からの離脱を可能にする。次に、ユーザが車両の前方に移動して、半開位置にあるフードと車体との間の隙間に手を差し入れて、そのままフードを持ち上げることで開けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】ドイツ国特許公開公報第10 2010 062 700号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のフードロックシステムにおいては、1回目の操作でオープナハンドルを待機位置から所定方向へ操作することによりフードを全閉位置から半開位置まで開きを可能にし、引き続いて、2回目の操作でオープナハンドルを待機位置に戻したあとに、再び前回と同一方向へ操作することにより、フードの半開位置からさらに開き方向への移動を可能にする操作方法であるため、ユーザがオープナハンドルを1回しか操作していないにも係わらず、2回操作したものと勘違いしたり、又は2回目のオープナハンドルの操作量が不十分である場合には、ユーザがフードの前側に移動したにも係わらずフードを開けることができない、という問題が発生する虞がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、オープナ装置の操作に基づいて、フードを確実に開けることができるようにした車両用フードロックシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
本発明に係る車両用フードロックシステムにおいては、車体に固定されると共に、前記車体に開閉可能に枢支されるフード側のストライカが前記フードの閉動作に伴って進入し、開動作に伴って退出するストライカ進入溝を有するベースプレートと、前記ベースプレートに支持され、前記ストライカ進入溝に進入した前記ストライカに噛合することにより、前記フードを全閉位置に保持可能なプライマリラッチ機構部と、前記ベースプレートに支持され、前記フードが全閉位置よりも僅かに開いた半開位置にあるとき、前記プライマリラッチ機構部から外れた前記ストライカに係合可能な待機位置から前記ストライカに係合不能な退避位置に移動可能で、かつ付勢手段によりそれぞれの位置に弾性保持されるセカンダリラッチを含むフードロック装置と、運転席近傍に配置されると共に、第1スプリングの付勢力に抗して、予め定めた第1待機位置から一方向へ所定ストローク移動した第1操作位置に移動することにより、第1操作力伝達部材を介して前記プライマリラッチ機構部をアンラッチ状態に変位させるオープナハンドルと、前記オープナハンドルが前記第1スプリングの付勢力に抗して前記一方向へ前記第1操作位置を通過した第2操作位置に移動した場合、第2スプリングの付勢力に抗して、前記オープナハンドルの移動と共に予め定めた第2待機位置から一方向へ移動することにより、第2操作力伝達部材を介して前記セカンダリラッチを前記待機位置から前記退避位置に変位させる連動レバーを含むオープナ装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記オープナ装置の前記オープナハンドルを、前記第1操作位置から前記第2操作位置に移動させる場合、前記第1スプリングの付勢力に前記第2スプリングの付勢力を加えた付勢力に抗する操作力を要するものとする。
【0012】
好ましくは、前記オープナ装置は、さらに、前記運転席近傍に固定されるベースプレートを有し、前記オープナハンドル及び前記連動レバーは、同軸により前記ベースプレートにそれぞれ独立して回動可能に支持されるものとする。
【0013】
好ましくは、前記フードロック装置の前記付勢手段を、一端部が前記セカンダリラッチに掛止され、他端部が前記ベースプレートに掛止されて、前記セカンダリラッチの前記待機位置と前記退避位置との間の中間位置を境にして、前記セカンダリラッチに付与する付勢力の付勢方向が反転するターンオーバースプリングとする。
【0014】
好ましくは、前記セカンダリラッチは、前記退避位置にあるとき、前記ストライカ進入溝内に進入する当接部を有し、前記フードの閉動作により前記ストライカが前記当接部に当接することにより、前記付勢手段の付勢力に抗して前記退避位置から前記待機位置に強制移動させられるものとする。
【0015】
好ましくは、前記セカンダリラッチは、前記ストライカが前記プライマリラッチ機構部に噛合しているとき、前記ストライカに当接することにより、前記待機位置から前記退避位置への移動が阻止されるものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、オープナハンドルにおける1段目の一方向への操作により、フードロック装置におけるプライマリラッチ機構部をアンラッチ状態に変位させ、引き続いて、オープナハンドルの2段目の一方向への操作により、セカンダリラッチを退避位置に移動させることができるため、フードを容易かつ確実に開けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る車両用フードロックシステムを装着した自動車の前方から見た斜視図である。
図2】フードロック装置の左斜前方から見た斜視図である。
図3】フードロック装置の左斜前方から分解斜視図である。
図4】フードロック装置の正面図である。
図5】フードロック装置の後面図である。
図6】プライマリラッチ機構部がラッチ状態、セカンダリラッチが待機位置にあるときの要部の拡大正面図である。
図7】プライマリラッチ機構部のラチェットが解除位置、セカンダリラッチが待機位置にあるときの要部の拡大正面図である。
図8】プライマリラッチ機構部がアンラッチ状態、セカンダリラッチが待機位置にあるときの要部の拡大正面図である。
図9】プライマリラッチ機構部がアンラッチ状態、セカンダリラッチが退避位置にあるときの拡大正面図である。
図10】オープナ装置の非操作状態における側面図である。
図11】オープナ装置のプライマリラッチ解除操作時における側面図である。
図12】オープナ装置のセカンダリラッチ解除操作時における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る車両用フードロックシステムは、図1に示すように、自動車等の車両Vのフロント部のエンジンルーム内のラジエータコアサポート(以下、「車体」という)に取り付けられるフードロック装置1と、運転席近傍に配置される手動式のオープナ装置20とを備える。
【0019】
フードロック装置1は、後部が車体に上下方向に開閉自在に枢支されたフードHの前部に設けられたストライカSに係合することにより、フードHを全閉位置に保持可能なプライマリラッチ機構部2と、全閉位置から上方に僅かに開いた半開位置に保持可能なセカンダリラッチ機構部3とを備える。
【0020】
オープナ装置20は、図10~12に示すように、手動により操作可能なオープナハンドル21を有し、当該オープナハンドル21の1段目の第1操作(第1待機位置A1(図10参照)から第1操作位置B(図11参照)に移動させる操作)に基づいて、プライマリラッチ機構部2をアンラッチ状態としてフードHを半開位置とし、引き続いて、オープナハンドル21の2段目の第2操作(第1操作位置Bから第2操作位置C(図12参照)に移動させる操作)に基づいて、セカンダリ機構部3のセカンダリラッチ13を解除作動させてストライカSに対して係合不能な退避位置に保持させることによって、フードHの開放を可能にする。なお、オープナ装置20の詳細説明については、後述する。
【0021】
図2~5に示すように、フードロック装置1は、前述のプライマリラッチ機構部2及びセカンダリラッチ機構部3以外に、プライマリラッチ機構部2及びセカンダリ機構部3を支持するための金属製のベースプレート4を備える。ベースプレート4は、車体に図示略のボルトにより固定されると共に、左右両側部にボルトが螺合する左右の螺合孔41、41を有し、中央上部にフードHの開閉作動に伴って、ストライカSが上下方向に進退し得るように上方が開口したストライカ進入溝42を有している。
【0022】
プライマリラッチ機構部2は、ベースプレート4の後面側に前後方向を向くラッチ軸5により回転可能に支持されるプライマリラッチ6及びリフトレバー7と、ベースプレート4の後面側に前後方向を向くラチェット軸8により回転可能に支持されるラチェット9と、リフトレバー7に対してリフト方向(図4において時計方向、図5において反時計方向)への付勢力を付与するリフトスプリング10と、ラチェット9に対して係合方向(図4において反時計方向、図5において時計方向)への付勢力を付与するラチェットスプリング11とを含む。
【0023】
プライマリラッチ6は、略中央部がラッチ軸5によりベースプレート4の後面側に支持され、図6、7に示すラッチ位置から図8、9に示すアンラッチ位置、及びその逆に回転可能であって、フードHの閉鎖時にストライカ進入溝42に進入するストライカSが係合溝61に噛合することにより、図8、9に示すアンラッチ位置からラッチ方向(図8、9において反時計方向)へ略45度回転して図6に示すラッチ位置に移動する。なお、係合溝61は、プライマリラッチ6に設けた上アーム部62と下アーム部63との間に形成される。
【0024】
ラチェット9は、上端部が前後方向を向くラチェット軸8によりベースプレート4の後面側に支持されると共に、ラチェットスプリング11により係合方向(例えば、図6において反時計方向)に付勢される。フードHが全閉位置にあって、ストライカSがプライマリラッチ6の係合溝61に噛合して、プライマリラッチ6が図6に示すラッチ位置にある場合には、ラチェット9は、図6に示す係合位置にあって、中央部に設けた段差状の爪部91がプライマリラッチ6における下アーム部63の先端に設けられた係合部64に係合することによって、プライマリラッチ6をラッチ位置に保持する。
【0025】
なお、本実施形態においては、図6に示すように、ストライカSがプライマリラッチ6の係合溝61に噛合して、プライマリラッチ6がラッチ位置にあり、かつラチェット9がプライマリラッチ6に係合している状態を、ラッチ状態と定義し、また、図8、9に示すように、ストライカSがプライマリラッチ6の係合溝61から離脱して、プライマリラッチ6がアンラッチ位置にある状態を、アンラッチ状態と定義する。
【0026】
さらに、ラチェット9は、下端部に連結部92を形成し、当該連結部92がオープナ装置20における後述の第1レバー22にボーデンケーブルにより構成される第1操作力伝達部材15を介して連結される。フードHが全閉位置にあるとき、オープナ装置20におけるオープナハンドル21が一方向(例えば、後方への引っ張り操作)へ第1操作されると、当該操作が第1操作力伝達部材15を介してラチェット9に伝達される。これにより、ラチェット9は、ラチェットスプリング11の付勢力に抗して図6に示す係合位置から時計方向へ所定角度回転して図7、8に示す解除位置Dに移動することにより、爪部91がプライマリラッチ6の係合部64から外れて、プライマリラッチ6のアンラッチ方向(図6、7において時計方向)への回転を自由にする。さらに、オープナハンドル21が一方向へ第2操作されると、当該操作が第1操作力伝達部材15を介してラチェット9に伝達される。ラチェット9は、ラチェットスプリング11の付勢力に抗して解除位置から図9に示すオーバートラベル位置Eに移動する。
【0027】
プライマリラッチ6は、アンラッチ方向への回転が自由になると、リフトレバー7に作用するリフトスプリング10の付勢力により、図7に示すラッチ位置からアンラッチ方向へ回転して図8に示すアンラッチ位置に移動して、係合溝61に噛合しているストライカSを上方へ持ち上げる。これにより、フードHは、全閉位置から半開位置まで持ち上げられる。フードHが半開位置にあるときは、フードHの前端部と車体との間の隙間に手を差し入れ可能となる。
【0028】
リフトレバー7は、略中央部がラッチ軸5によりベースプレート4の後面側に支持されて、リフトスプリング10の付勢力によりリフト方向(図6において反時計方向)へ付勢されると共に、プライマリラッチ6に対して回転方向に若干の遊びを介して連結される。リフトスプリング10の付勢力は、リフトレバー7及びストライカSを介してフードHに伝達されて、フードHを全閉位置から半開位置まで持ち上げるリフト力として作用すると共に、プライマリラッチ6をラッチ位置からアンラッチ位置まで回転させる力としても作用する。
【0029】
前述のプライマリラッチ6に対するリフトレバー7の回転方向への若干の遊びは、図6~9から理解できるように、プライマリラッチ6の下アーム部63に後方へ突出するように設けた突部63aをリフトレバー7に設けた係合孔71に対して回転方向に若干の遊びが生じるように係合させることにより達成される。
【0030】
リフトレバー7には、プライマリラッチ6の下アーム部63の後側に重なり合うと共に、プライマリラッチ6の係合溝61に下方から若干進入可能なリフトアーム部72が設けられる。フードHが全閉位置にあって、図6に示すように、プライマリラッチ6がラッチ位置に保持されている場合、リフトアーム部72は、リフトスプリング10の強力な付勢力により、プライマリラッチ6の係合溝61に係合しているストライカSをプライマリラッチ6における係合溝61の上縁、すなわち上アーム部62に対して強く押し付けることで、係合溝61内でのストライカSのガタ付き、ひいてはフードHのガタ付きを抑止する。
【0031】
次に、セカンダリラッチ機構部3について説明する。セカンダリラッチ機構部3は、ベースプレート4の前面側に前後方向を向くセカンダリラッチ軸12により所定角度回転可能に支持されるセカンダリラッチ13と、セカンダリラッチ13の回転により、セカンダリラッチ13の所定の位置を境にして、セカンダリラッチ13に作用させる回転方向への付勢力の付勢方向が反転する付勢手段であるターンオーバースプリング14とを含む。
【0032】
セカンダリラッチ13は、前述のように、下端部がセカンダリラッチ軸12によりベースプレート4の前面側に左右方向へ所定角度回転可能に支持されると共に、上側部に設けた連結部131が第2操作力伝達部材16の一端部に連結されることで、第2操作力伝達部材16を介してオープナ装置20の後述の連動レバー22に連結される。これにより、フードHが半開位置にある場合、オープナ装置20のオープナハンドル21が一方向へ第2操作されると、セカンダリラッチ13は、オープナハンドル21の操作に基づいて、下端部136がベースプレート4の第1ストッパ部43(図4参照)に当接した図8に示す待機位置からターンオーバースプリング14の付勢力に抗して反時計方向へ所定角度回転して、図9に示すように、ベースプレート4の第2ストッパ部44に当接した退避位置に回転することで、ターンオーバースプリング14の付勢力により退避位置に保持される。
【0033】
ターンオーバースプリング14は、トーションスプリングにより構成され、一方のアーム部14aがセカンダリラッチ13に掛止され、他方のアーム部14bがベースプレート4に掛止されることにより、セカンダリラッチ13が回転した際、セカンダリラッチ13の待機位置と退避位置との間の中間位置を境にして、セカンダリラッチ13に作用する回転方向への付勢力の付勢方向が反転する。具体的には、セカンダリラッチ13が中間位置よりも待機位置寄り側にあるときには、セカンダリラッチ13に対して待機方向(図6~8において時計方向)への付勢力を付与し、また、セカンダリラッチ13が中間位置よりも退避位置寄り側にあるときには、セカンダリラッチ13に対して退避方向(図9において反時計方向)への付勢力を付与する。
【0034】
さらに、セカンダリラッチ13は、ストライカ進入溝42に沿うように上方へ延伸するアーム部132と、当該アーム部132の上端部に設けられるフック部133と、ストライカ進入溝42を挟んで、アーム部132に対峙する第1当接部134と、当該第1当接部134の上端から右斜め上方へ延伸する第2当接部135とを有している。
【0035】
フック部133は、図6~8に示すように、セカンダリラッチ13が待機位置に保持されている場合には、フードHの開閉に伴うストライカSのストライカ移動軌跡内に位置して、プライマリラッチ6の係合溝61から外れたストライカSに対して上方から係合することで、フードHを半開位置に保持し、また、図9に示すように、セカンダリラッチ13が退避位置に保持されている場合には、ストライカ移動規制外に退避して、ストライカSに対して係合しない位置でフードHの開閉を自由に行えるようにする。
【0036】
第1当接部134は、フードHが全閉位置にあって、ストライカSがプライマリラッチ6の係合溝61に噛合し、かつセカンダリラッチ13が待機位置にある場合には、図6に示すように、ストライカSの側面に近設し、かつストライカSの側面に当接可能な位置にある。これにより、プライマリラッチ6がラッチ位置にある場合には、セカンダリラッチ13を待機位置から退避方向(図6において反時計方向)へ回転させようしても、第1当接部134がストライカSの側面に当接して、セカンダリラッチ13の待機位置から退避位置への移動を阻止する。したがって、ストライカSがプライマリラッチ6の係合溝61に係合したラッチ状態においては、セカンダリラッチ13を待機位置から退避位置に移動させることはできない。これにより、セカンダリラッチ13の誤作動を抑止できる。
【0037】
第2当接部135は、例えば図6に示すように、セカンダリラッチ13が待機位置に保持されている場合には、ストライカ進入溝42の右側に位置し、図9に示すように、セカンダリラッチ13が退避位置に保持されているときには、ストライカ進入溝42内に進入する。これにより、セカンダリラッチ13がターンオーバースプリング14の付勢力により退避位置に保持されている場合、フードHの閉作動に伴って、ストライカ進入溝42内に上方から進入してきたストライカSが傾斜状態にある第2当接部135の上面に当接することで、セカンダリラッチ13をターンオーバースプリング14の付勢力に抗して、退避位置から待機位置に強制移動させることができる。
【0038】
次に、オープナ装置20について説明する。
オープナ装置20は、運転席近傍に固定されるベースプレート23と、ベースプレート23に左右方向を向く枢軸24によりそれぞれ独立して所定角度回転可能に支持されるオープナハンドル21及び連動レバー22と、オープナハンドル21に対して図10~12において時計方向への付勢力を付与する第1スプリング25と、連動レバー22に対して時計方向への付勢力を付与する第2スプリング26を備える。
【0039】
オープナハンドル21は、枢軸24によりベースプレート23の側面に図10に示す予め定めた第1待機位置A1から反時計方向(一方向)へ所定角度回転可能に支持されると共に、回転中心(枢軸24)の前斜め上方に設けた連結部21aにオープナハンドル21の回転動作をラチェット9に伝達可能な第1操作力伝達部材15の他端部が連結される。
【0040】
さらに、オープナハンドル21は、下端部に設けた掛止部21bに第1スプリング25の端部が掛止されることで、第1スプリング25による時計方向への付勢力が付与され、上端部に設けた当接部21dが連動レバー22の後述の当接部22bを介してベースプレート23のストッパ部23aに当接することで、第1待機位置A1に保持される。
【0041】
さらに、オープナハンドル21は、ユーザの手動操作による第1スプリング25の付勢力に抗する力の1段目の第1操作に基づいて、第1待機位置A1から反時計方向へ第1操作ストローク回動した図11に示す第1操作位置Bに回動することにより、当該回動動作を第1操作力伝達部材15を介してフードロック装置1のラチェット9に伝達して、ラチェット9を係合位置から解除位置Dに移動させる。さらに、オープナハンドル21は、ユーザの手動操作による第1スプリング25の付勢力に第2スプリング26の付勢力を加えた付勢力に抗する力の2段目の第2操作に基づいて、第1操作位置Bを通過した図12に示す第2操作位置C迄回転可能である。
【0042】
オープナハンドル21を待機位置A1から第1操作位置Bに移動させる第1操作は、第1スプリング25の付勢力に抗する力を要し、オープナハンドル21を第1操作位置Bから第2操作位置Cに移動させる第2操作は、第1スプリング25の付勢力に第2スプリング26の付勢力を加えた付勢力に抗する力を要する。
【0043】
連動レバー22は、枢軸24によりベースプレート23の側面にオープナハンドル21と独立して図10、11に示す予め定めた第2待機位置A2から反時計方向(一方向)へ所定角度回転可能に支持されると共に、上部に設けた連結部22aに連動レバー22の回転動作をセカンダリラッチ13に伝達可能な第2操作力伝達部材16の他端部が連結される。
【0044】
さらに、連動レバー22は、第2スプリング26の付勢力により、上端部に設けた当接部22bがベースプレート23のストッパ部23aに当接することで、第2待機位置A2に保持される。さらに、連動レバー22は、オープナハンドル21が第1操作位置Bから第2操作位置Cに回転した場合、オープナハンドル21の当接アーム部21cが連動レバー22の被当接アーム部22cに当接することにより、第2スプリング26の付勢力に抗して、オープナハンドル21の回転に連動して第2待機位置A2から反時計方向へ回転する。これにより、連動レバー22の回転動作が第2操作力伝達部材15を介してセカンダリラッチ13に伝達されて、セカンダリラッチ13は待機位置から退避位置に移動する。
【0045】
なお、オープナ装置20は、上述の構成に限定されるものでなく、種々変更は可能である。例えば、運転席のドアが閉じた状態にあるとき、オープナハンドル21の第1待機位置A1から反時計方向への操作を不能として、ドアを開けた状態でのみ操作を可能にする。このようにすると、車両走行中において、オープナハンドル21の誤操作を防止できる。
【0046】
次に、図6~12を参照して、本実施形態に係る車両用フードロックシステムの作用について説明する。
フードHが全閉位置にある場合には、図6に示すように、フードロック装置1のプライマリラッチ6は、ラッチ位置にあり、ラチェット9は、プライマリラッチ6の係合部64に係合し、ストライカSは、プライマリラッチ6の係合溝61に係合している。この場合には、ストライカSは、リフトレバー7に作用するリフトスプリング10の付勢力により、リフトレバー7のリフトアーム部72とプライマリラッチ6の上アーム部62との間にガタ付きが生じないように挟み込まれている。セカンダリラッチ13は、ターンオーバースプリング14の付勢力により待機位置に弾性保持されている。また、オープナ装置20のオープナハンドル21は第1待機位置A1、連動レバー22は第2待機位置A2にそれぞれ弾性保持されている。
【0047】
さらには、フードHが全閉位置にある状態においては、図6に示すように、ストライカSがセカンダリラッチ13の第1当接部134に対して当接可能な位置にあるため、セカンダリラッチ13の待機位置から退避方向への回転は阻止されている。したがって、この状態においては、プライマリラッチ機構部2をアンラッチ状態に変位させない限り、セカンダリラッチ13を退避位置に移動させることはできない。
【0048】
フードHが全閉位置にある状態において、オープナ装置20におけるオープナハンドル21の1段目の第1操作、すなわち第1スプリング25の付勢力に抗する操作に基づいて、オープナハンドル21を反時計方向へ操作すると、図11に示すように、オープハンドル21が第1操作位置Bに回転することで、当該回転動作が第1操作力伝達部材15を介してラチェット9に伝達される。これにより、ラチェット9は、図6に示す係合位置からラチェット軸8を中心に解除方向(図6において時計方向)へ回転して、図7に示すように、爪部91がプライマリラッチ6の係合部64から外れた解除位置Dに回転する。この結果、プライマリラッチ6は、リフトレバー7に作用するリフトスプリング10の付勢力により、図7に示すラッチ位置から図8に示すアンラッチ位置に回転し、当該回転によりストライカSを上昇させることで、フードHを半開位置まで持ち上げる。上昇したストライカSは、図8に示すように、セカンダリラッチ3のフック部133に対して下方から係合可能となるため、フードHは、半開位置に保持される。
【0049】
引き続いて、オープナ装置20におけるオープナハンドル21の2段目の第2操作、すなわち第1スプリング25の付勢力に第2スプリング26の付勢力を加えた付勢力に抗する力の操作に基づいて、オープナハンドル21をさらに反時計方向へ操作して図12に示す第2操作位置Cへ向けて回転させる。この場合、オープナハンドル21の1段目の第1操作から2段目の第2操作に切り替わる際、オープナハンドル21の操作に対して第1スプリング25の付勢力に第2スプリング26の付勢力を加えた反発力が作用して、オープナハンドル21の操作が急に重くなるため、プライマリラッチ機構部2をアンラッチ状態に変位させて、セカンダリラッチ13を解除作動させていることを確実に確認できる。
【0050】
オープナハンドル21が第2操作位置Cに向けて回転すると、図12に示すように、オープナハンドル21の当接アーム部21cが連動レバー22の被当接アーム部22cに当接することで、連動レバー22も第2待機位置A2から反時計方向へ回転する。これにより、連動レバー22の回転が第2操作力伝達部材16を介してセカンダリラッチ13に伝達される。この結果、セカンダリラッチ13は、図8に示す待機位置から図9に示す退避位置に回転して、ターンオーバースプリング14の付勢力により退避位置に弾性保持される。なお、ラチェット9は、オープナハンドル21が第2操作位置Cに回転することで、図9に示すオーバートラベル位置Eに回転する。
【0051】
その後は、オープナハンドル21を第1待機位置A1に戻して、ユーザがフードHの前側に移動して、フードHの前端とラジエータグリルとの間の隙間に手を差し入れるだけで、フードHをそのまま開けることができる。
【0052】
フードHが開いた状態においては、図9に示すように、プライマリラッチ6は、アンラッチ位置に停止し、セカンダリラッチ13は、退避位置に停止している。この状態で、フードHを閉じると、ストライカSがストライカ進入溝42に進入し、セカンダリラッチ13におけるフック部133の側方を通過して、プライマリラッチ6の係合溝61に係合すると共に、セカンダリラッチ13の第2当接部135に当接する。これにより、セカンダリラッチ3は、ターンオーバースプリング14の付勢力に抗して、図9に示す退避位置から図6に示す待機位置に回転して弾性保持される。また、プライマリラッチ6は、リフトスプリング10の付勢力に抗して、図9に示すアンラッチ位置から図6に示すラッチ位置に回転して、ラチェット9の爪部91がラチェットスプリング11の付勢力により、プライマリラッチ6の係合部64に係合する。これにより、プライマリラッチ機構部2は、図6に示すラッチ状態となって、フードHは全閉位置に保持される。
【0053】
以上のように、本実施形態においては、第1スプリング25の付勢力に抗するオープナハンドル21の一方向への1段目の第1操作により、フードロック装置1におけるプライマリラッチ機構部2をアンラッチ状態に変位させ、さらに、第1操作に引き続いて、第1スプリング25の付勢力に第2スプリング26の付勢力を加えた付勢力に抗するオープナハンドル21の一方向への2段目の第2操作により、セカンダリラッチ13を退避位置に移動させることができるため、フードHを確実に開けることができる。
【0054】
また、セカンダリラッチ13を退避位置に移動させるオープナハンドル21の2段目の第2操作においては、セカンダリラッチ13が待機位置と退避位置との間の中間位置よりも退避位置寄り側に移動した時点で、ターンオーバースプリング14の付勢力により退避位置に移動させられるので、オープナハンドル21の2段目の操作量が不十分であっても、セカンダリラッチ13を確実に退避位置に移動させることができる。これにより、ユーザによるオープナ装置20におけるオープナハンドル21の操作に基づいて、フードHを車外から確実に開けることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 フードロック装置 2 プライマリラッチ機構部
3 セカンダリラッチ機構部 4 ベースプレート
41 螺合孔 42 ストライカ進入溝
43 第1ストッパ部 44 第2ストッパ部
5 ラッチ軸 6 プライマリラッチ
61 係合溝 62 上アーム部
63 下アーム部 63a 突部
64 係合部 7 リフトレバー
71 係合孔 72 リフトアーム部
8 ラチェット軸 9 ラチェット
91 爪部 92 連結部
10 リフトスプリング 11 ラチェットスプリング
12 セカンダリラッチ軸 13 セカンダリラッチ
131 連結部 132 アーム部
133 フック部 134 第1当接部
135 第2当接部 136 下端部
14 ターンオーバースプリング(付勢手段) 14a 一方のアーム部
14b 他方のアーム部 15 第1操作力伝達部材
16 第2操作力伝達部材 20 オープナ装置
21 オープナハンドル 21a 連結部
21b 掛止部 21c 当接アーム部
21d 当接部 22 連動レバー
22a 連結部 22b 当接部
22c 被当接アーム部 23 ベースプレート
23a ストッパ部 24 枢軸
25 第1スプリング 26 第2スプリング
H フード S ストライカ
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図12