(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240214BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J29/38 301
(21)【出願番号】P 2020085881
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】小辻 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】横田 洋志
(72)【発明者】
【氏名】里見 星輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏彦
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-225155(JP,A)
【文献】特開平05-096835(JP,A)
【文献】特開2008-207955(JP,A)
【文献】特開2018-189976(JP,A)
【文献】特開2008-307752(JP,A)
【文献】特開2008-012847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を供給する給紙部と、
前記給紙部から供給された記録紙を載せて搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトにより搬送されている記録紙にインクを吐出して、該記録紙に画像を形成する画像形成部と、
前記給紙部から給紙された記録紙の形状を検出する検出部と、
前記検出部により検出された記録紙の形状に基づき前記画像形成部から吐出されたインクが前記搬送ベルトに付着するか否かを判定し、インクが付着すると判定した場合に、前記画像形成部による前記インクの付着を伴う画像形成が開始される画像形成開始時点から前記搬送ベルトの周回移動の一周期後に記録紙が前記画像形成部による画像の形成位置に到達するタイミングで、前記画像形成部による画像形成を行わせない状態として、前記給紙部により記録紙を給紙させる制御部と、を備えたインクジェット記録装置。
【請求項2】
記録紙を供給する給紙部と、
前記給紙部から供給された記録紙を載せて搬送する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトにより搬送されている記録紙にインクを吐出して、該記録紙に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部から吐出されて前記搬送ベルトに付着したインクを検出する検出部と、
前記検出部により前記搬送ベルトに付着したインクが検出された場合に、前記画像形成部による前記インクの付着を伴う画像形成が開始される画像形成開始時点から前記搬送ベルトの周回移動の一周期後に記録紙が前記画像形成部による画像の形成位置に到達するタイミングで、前記画像形成部による画像形成を行わせない状態として、前記給紙部により記録紙を給紙させる制御部と、を備えたインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像形成部による画像形成を行わせない状態として前記給紙部により記録紙を前記画像形成部による画像の形成位置に到達させるタイミングである、前記画像形成開始時点から前記搬送ベルトの周回移動の一周期が経過するまでに、前記給紙部により複数枚の記録紙を給紙させ、当該複数枚の記録紙に対する画像形成を前記画像形成部により完了させる請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数枚として、前記搬送ベルトの長さを、前記記録紙の長さと該搬送ベルトにより連続して搬送される各記録紙の紙間距離の和で割った商から1を差し引いた値以下の値を設定する請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトにより記録紙を搬送しつつ該記録紙にインクを吐出して、記録紙に画像を形成するインクジェット記録装置に関し、特に搬送ベルトのインクの汚れを除去するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置として、搬送ベルトにより記録紙を搬送しつつ該記録紙にインクを吐出して、記録紙に画像を形成するものがある。しかしながら、記録紙に折れやパンチ孔が生じていたり、記録紙のサイズが規定のサイズと一致しなかったりするなどの記録紙のエラーが生じた場合は、インクの一部が記録紙ではなく搬送ベルトに吐出されて付着し、搬送ベルトが汚れることがあり、搬送ベルトの汚れを除去する必要がある。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置は、電子写真方式のものであるが、ここでは、記録紙へのトナー像の転写が行われている箇所よりも下流側で、残留トナーが浮遊して搬送路等に付着して汚れとなるので、トナー像の転写動作を停止させた状態で記録紙を搬送路に通すという白紙印刷を実行し、記録紙の汚れ度が記録紙再利用閾値を超えるまで同一の記録紙による白紙印刷を繰り返している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、インクジェット記録装置においても、特許文献1に記載の発明と略同様に、インクの吐出を停止させた状態で、記録紙を搬送ベルトに通せば、搬送ベルトのインクの汚れを記録紙に転移させて除去することが可能であると考えられる。しかしながら、搬送ベルトのインクの汚れを効率的にかつ確実に除去することが可能となる記録紙の搬送を実現するための技術が提供されていなかった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、インクジェット記録装置において搬送ベルトの一部にインクが付着したときに、搬送ベルトのインクの汚れを効率的にかつ確実に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るインクジェット記録装置は、記録紙を供給する給紙部と、前記給紙部から供給された記録紙を載せて搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトにより搬送されている記録紙にインクを吐出して、該記録紙に画像を形成する画像形成部と、前記給紙部から給紙された記録紙の形状を検出する検出部と、前記検出部により検出された記録紙の形状に基づき前記画像形成部から吐出されたインクが前記搬送ベルトに付着するか否かを判定し、インクが付着すると判定した場合に、前記画像形成部による前記インクの付着を伴う画像形成が開始される画像形成開始時点から前記搬送ベルトの周回移動の一周期後に記録紙が前記画像形成部による画像の形成位置に到達するタイミングで、前記画像形成部による画像形成を行わせない状態として、前記給紙部により記録紙を給紙させる制御部と、を備えたものである。
【0007】
また、本発明の一局面に係るインクジェット記録装置は、記録紙を供給する給紙部と、前記給紙部から供給された記録紙を載せて搬送する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトにより搬送されている記録紙にインクを吐出して、該記録紙に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部から吐出されて前記搬送ベルトに付着したインクを検出する検出部と、前記検出部により前記搬送ベルトに付着したインクが検出された場合に、前記画像形成部による前記インクの付着を伴う画像形成が開始される画像形成開始時点から前記搬送ベルトの周回移動の一周期後に記録紙が前記画像形成部による画像の形成位置に到達するタイミングで、前記画像形成部による画像形成を行わせない状態として、前記給紙部により記録紙を給紙させる制御部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送ベルトのインクの汚れを効率的にかつ確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係るインクジェット記録装置の主要内部構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】画像形成部による画像形成開始時点tc、搬送ベルトの周回移動の一周期BS、及び給紙カセットからの給紙開始時点taなどを示す模式図である。
【
図4】(A)は記録紙の長さp、各記録紙の紙間距離s、及び搬送区間rなどを示す模式図であり、(B)は搬送ベルトの複数の搬送区間rを示す模式図である。
【
図5】搬送ベルトのインクの汚れを記録紙に移して除去し、またインクの汚れが生じていない搬送ベルトの部分により記録紙を搬送させて、画像を記録紙に形成させるための制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置を示す断面図である。本実施形態のインクジェット記録装置1は、操作部11、原稿読取部12、画像形成部13、給紙部14、搬送部15、及び搬送ユニット16を備えて構成される。
【0012】
操作部11は、インクジェット記録装置1が実行可能な各種動作及び処理の指示を入力するために操作者により操作される。操作部11は、操作者への操作案内等を表示する表示部21を備えている。
【0013】
原稿読取部12では、複数の原稿MSが原稿トレイ22に載置されると、これらの原稿MSを原稿トレイ22から順次引き出して搬送しつつ、該各原稿MSの画像を撮像素子により読取り、該各原稿MSを順次排出する。撮像素子のアナログ出力がデジタル信号に変換されて、原稿MSの画像を示す画像データが生成される。
【0014】
画像形成部13は、上記画像データによって示される原稿MSの画像を記録紙に形成するものであり、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエロー)のインク滴を、給紙部14から搬送されて来た記録紙Pに吐出して、カラー画像を形成する。具体的には、画像形成部13は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するそれぞれのラインヘッド23、24、25、26を有している。従って、インクジェット記録装置1は、ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。
【0015】
給紙部14は、給紙カセット27を備えている。給紙カセット27には、給紙ローラー28が設けられており、給紙ローラー28により給紙カセット27に収容されている記録紙Pが引き出されて搬送路31に搬送される。
【0016】
また、給紙部14は、装置本体の壁面に設けられた手差しトレイ32を備えている。手差しトレイ32にセットされた記録紙Pは、給紙ローラー33により引き出されて搬送路31に搬送される。
【0017】
搬送部15は、給紙部14からの記録紙Pを搬送する搬送路31、各搬送路31、38の適所に設けられた搬送ローラー35、記録紙Pの斜め送りを矯正しつつ搬送ユニット16に送り出すレジストローラー36、搬送ユニット16を通じて搬送されて来た記録紙Pを搬送する搬送路38、及び搬送路38を通じて搬送されて来た記録紙Pを排出トレイ41に排出する排出ローラー42などを備えている。
【0018】
搬送ユニット16は、駆動ローラー43と、従動ローラー44と、テンションローラー45と、搬送ベルト46とを備える。搬送ベルト46は、無端状のベルトであり、駆動ローラー43、従動ローラー44、及びテンションローラー45に架け渡されている。駆動ローラー43は、モーター(図示せず)により反時計回りに回転駆動されるローラーであり、駆動ローラー43が回転駆動されることで、搬送ベルト46が反時計回りに周回移動されると共に、従動ローラー44及びテンションローラー45が反時計回りに従動回転する。
【0019】
テンションローラー45は、搬送ベルト46のテンションを適切な状態で保つためのローラーである。吸着ローラー47は、搬送ベルト46に接触しており、搬送ベルト46を帯電させることで、給紙部14から給紙された記録紙Pを搬送ベルト46に静電的に吸着させる。
【0020】
レジストローラー36と搬送ベルト46の一端の間には、CIS(Contact Image Sensor)48及び先端センサー49が記録紙Pの搬送方向の上流側から順次配置されている。CIS48は、記録紙Pの幅方向(搬送方向と直交する方向)に延びる。CIS48は、該CIS48の上を通過する記録紙Pを撮像してその画像を取得する。また、先端センサー49は、例えば発光素子及び受光素子を備える光学式の反射型又は遮光型のセンサーであり、記録紙Pの先端を検出するためのものである。
【0021】
図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の主要内部構成を示す機能ブロック図である。インクジェット記録装置1は、操作部11、原稿読取部12、画像形成部13、給紙部14、搬送部15、搬送ユニット16、CIS48、先端センサー49、画像メモリー57、記憶部58、及び制御ユニット60を備える。尚、
図1に示したインクジェット記録装置1と同様の構成部分については同一符号を付す。
【0022】
制御ユニット60は、プロセッサー、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び専用のハードウェア回路を含んで構成される。プロセッサーは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はMPU(Micro Processing Unit)等である。制御ユニット60は、制御部61を備えている。
【0023】
制御ユニット60は、内蔵する不揮発性メモリー等に記憶されている制御プログラムに従って上記プロセッサーが動作することにより、制御部61として機能するものである。但し、制御部61等は、制御ユニット60による制御プログラムに従った動作によらず、それぞれハードウェア回路により構成することも可能である。
【0024】
制御部61は、インクジェット記録装置1の全体的な動作制御を司る。制御部61は、操作部11、原稿読取部12、画像形成部13、給紙部14、搬送部15、搬送ユニット16、CIS48、先端センサー49、画像メモリー57、及び記憶部58と接続され、これらの構成要素を制御する。
【0025】
例えば、制御部61は、原稿読取部12における原稿MSを搬送する搬送ローラーを駆動するモーター及び撮像素子等を制御して、原稿読取部12により原稿MSの画像を読取らせ、この原稿MSの画像を画像メモリー57に記憶させる。
【0026】
そして、制御部61は、給紙カセット27の給紙ローラー28、搬送ローラー35、レジストローラー36を駆動するモーターなどを制御して、記録紙Pを給紙カセット27から引き出させてレジストローラー36を通じて画像形成部13へと搬送し、給紙カセット27の給紙ローラー28による記録紙Pの給紙開始時点より一定時間後に画像形成部13の各ラインヘッド23~26の制御を開始して、画像形成部13により画像メモリー57内の原稿MSの画像を記録紙Pに記録させ、更に記録紙Pを、搬送路38を通じて排出トレイ41へと排出させる。
【0027】
また、複数の原稿MSが原稿読取部12の原稿トレイ22に載置された場合、制御部61は、原稿読取部12により各原稿MSの画像を順次読取らせて、これらの原稿MSの画像を画像メモリー57に逐次記憶させ、複数の記録紙Pを給紙部14の給紙カセット27から画像形成部13へと順次給紙させて、画像形成部13により画像メモリー57内の各原稿MSの画像をそれぞれの記録紙Pに逐次記録させる。
【0028】
ここで、給紙カセット27から給紙されて来た記録紙Pに折れやパンチ孔が生じている、斜め給紙である、或いは、記録紙Pのサイズが規定のサイズと一致しなかったりする、等の記録紙Pのエラーが生じ、記録紙P又はその一部が画像形成部13による画像形成の対象とされる場所に搬送されてこない場合は、画像形成部13の各ラインヘッド23~26から吐出されたインクの一部が記録紙Pではなく搬送ベルト46に付着し、搬送ベルト46が汚れることがある。
【0029】
そこで、本実施形態において、制御部61は、CIS48の上を通過する記録紙Pのエラー、例えば記録紙Pの折れや孔が生じていたり、記録紙Pのサイズが規定のサイズと一致しなかったりするなどのエラーを検出する。すなわち、制御部61は、CIS48から送られてくる記録紙Pの画像(CIS48の検出出力)に基づき、給紙カセット27から給紙されて来た記録紙Pのエラーの有無を判定し、記録紙Pのエラーの有の判定を、搬送ベルト46にインクの汚れが生じたことを示す判定とする。例えば、制御部61は、CIS48の検出出力に基づき記録紙Pの画像を抽出し、(1)この画像が示す記録紙Pの輪郭(形状)を、予め定められた輪郭(形状)と比較して、輪郭(形状)が一致しない場合にエラー(この場合は斜め給紙又はサイズ不一致によるエラーとなる)と判定し、(2) 記録紙Pの画像中に、記録紙Pの折れを示す予め定められた不具合画像が存在するか否かを判定し、不具合画像が存在すると判定した場合にエラー(この場合は記録紙Pの折れの存在によるエラーとなる)と判定し、(3) 記録紙Pの画像中に、パンチ孔を示す予め定められた不具合画像が存在するか否かを判定し、不具合画像が存在すると判定した場合にエラー(この場合はパンチ孔の存在によるエラーとなる)と判定する。当該エラー判定は、搬送ベルト46にインクの汚れが生じたことを示すものとする。
【0030】
そして、制御部61は、画像形成部13による搬送ベルト46のインクの汚れを伴う画像形成が開始される画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期BS後に、画像形成部13による画像の形成を停止させる(画像形成部13による画像形成を行わせない状態とする)と共に、画像形成開始時点tcから一周期BS後に記録紙が画像形成部13による画像の形成位置に到達するタイミングで、給紙部14により記録紙Pを給紙させる。すなわち、制御部61は、搬送ベルト46におけるインク汚れ部分が一周して画像形成部13による画像の形成位置に戻ってくるタイミングに合わせて、当該記録紙Pが当該インク汚れ部分に到達するように、給紙カセット27からの記録紙Pの給紙を開始させる。
【0031】
例えば、制御部61は、
図3に示すように、給紙カセット27の給紙ローラー28による記録紙Pの給紙を開始させる給紙開始時点taから、当該記録紙Pの先端が画像形成部13に到着する一定時間Δt1後を、画像形成開始時点tcとする。制御部61は、画像形成開始時点tcで画像形成部13による記録紙Pへの画像の形成を開始させる。また、先端センサー49により、画像形成開始時点tcよりも前の時点tbで記録紙Pの先端が検出されるが、制御部61は、先端センサー49により記録紙Pの先端が検出された時点(時点tb)で、CIS48から送られてくる記録紙Pの画像(CIS48の検出出力)に基づき、給紙カセット27から給紙された記録紙Pのエラーの有無の判定を開始する。
【0032】
そして、制御部61は、エラーの有を判定した場合に(エラーと判定した場合に)、エラーと判定された記録紙Pに重なる搬送ベルト46の部分にインクの汚れが生じるものとして、画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期(画像形成開始時点tcから搬送ベルト46が一周するのに要する時間)BS後(画像形成開始時点tcから搬送ベルト46が一周した時点)、すなわち、搬送ベルト46のインクの汚れが生じているとされるベルト部分の先頭(つまり、エラーと判定された記録紙P一枚分の印刷範囲に相当するベルト部分の先端)が一周して画像形成部13による画像の形成位置(本実施形態では最初にインクが噴射されるマゼンタ(M)のヘッド部分)に戻って来るタイミングで、画像形成部13による画像の形成を停止させる。制御部61は、これと共に、上記戻って来るタイミングよりも一定時間Δt1前となる給紙開始時点taで給紙ローラー28による記録紙Pの給紙を開始させる。これにより、記録紙Pの先端を、画像形成部13による画像の上記形成位置において、搬送ベルト46におけるインク汚れが生じているとされる部分に到着させる。
【0033】
これにより、搬送ベルト46に汚れが発生すると想定される状態が開始する時点(画像形成開始時点tc)から一周期BS後に、記録紙Pが、搬送ベルト46のインク汚れが発生するとされる部分に重ねられ、当該記録紙Pが吸着ローラー47により帯電された搬送ベルト46に静電的に吸着されて、搬送ベルト46のインクの汚れが記録紙Pに移って除去される。この記録紙Pは、搬送路38を通じて排出トレイ41に排出される。
【0034】
また、制御部61は、インクの汚れを伴う画像形成が開始される画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期BSが経過するまでの間に、つまり、搬送ベルト46においてインク汚れが発生するとされる部分が一周して画像形成部13による画像の形成位置に戻って来る前に、給紙カセット27から更なる記録紙Pを供給させて、搬送ベルト46におけるインク汚れが生じていないとされる部分により当該更なる記録紙Pを搬送させ、画像形成部13により当該更なる記録紙Pに更なる画像形成を行わせる。すなわち、制御部61は、画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期BSが経過するまでに、給紙部14により複数枚の記録紙Pを給紙させ、当該複数枚の記録紙に対する画像形成を完了させる。
【0035】
例えば、
図4(A)に示すように記録紙Pの長さpと各記録紙Pの紙間距離sとの和(p+s)を記録紙Pの搬送区間rとすると、搬送ベルト46の全周長Rを搬送区間rで割った商(余り切り捨て)が、搬送ベルト46の一周で搬送させて画像形成可能な記録紙Pの最大枚数S(上記複数枚の値)となる。すなわち、制御部61は、上記更なる記録紙Pの枚数の値として、上記商から1を差し引いた値以下の値を設定する。
【0036】
制御部61が上記のようにしてエラーの有を判定した場合、エラー有と判定した記録紙Pを搬送することなる搬送区間rに相当するベルト部分において搬送ベルト46にインクの汚れが生じているとされる。しかし、この搬送区間rに続く他の各記録紙Pの各搬送区間には、当該他の各記録紙Pにエラー有を制御部61が判定しない限り、搬送ベルト46にインクの汚れが生じていないと想定される。このため、制御部61は、当該他の各搬送区間に更なる記録紙Pを搬送させ、画像形成部13により当該更なる記録紙Pに対する画像を形成させる。
【0037】
これにより、搬送ベルト46にインクの汚れが生じてから除去されるまでの間、インクの汚れが生じていないと想定される搬送ベルト46部分により記録紙Pを搬送させて、当該記録紙Pを汚すことなく、当該記録紙Pに画像形成部13により画像を形成させることができ、これにより、画像形成の生産性の低下を抑制することができる。
【0038】
次に、上記のように記録紙Pのエラーの有を判定した場合に、搬送ベルト46のインクの汚れを記録紙Pに移して除去し、またインクの汚れが生じていない搬送ベルト46の部分により記録紙Pを搬送させて、画像形成部13により画像を記録紙Pに形成させるための制御手順を、
図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0039】
まず、ユーザーは、複数の原稿MSを原稿読取部12の原稿トレイ22にセットし、操作部11のスタートキーを操作する。制御部61は、原稿読取部12を制御して、原稿読取部12により各原稿MSの画像を順次読取らせ、これらの原稿MSの画像を画像メモリー57に逐次記憶させる(S101)。
【0040】
また、制御部61は、給紙カセット27の給紙ローラー28による記録紙Pの給紙を開始させ(S102)、この給紙開始時点を給紙開始時点taとすると、給紙開始時点taから、当該記録紙Pの先端が画像形成部13に到着する一定時間Δt1後を画像形成開始時点tcとして設定する(S103)。そして、制御部61は、この画像形成開始時点tcで画像形成部13の各ラインヘッド23~26の制御を開始して、画像形成部13により原稿MSの画像を記録紙Pに記録させ(S104)、画像形成後の記録紙Pを、搬送部15により排出トレイ48まで搬送させる。
【0041】
また、制御部61は、画像形成開始時点tcよりも前の時点(時点tb)で先端センサー49により記録紙Pの先端が検出されたときに、CIS48から送られてくる記録紙Pの画像(CIS48の検出出力)に基づき、給紙カセット27から給紙された記録紙Pのエラー有無の判定を開始する(S105)。例えば、制御部61は、記録紙Pのエラーの無を判定すると(S105「No」)、未記録の原稿MSの画像が画像メモリー57に残っているか否かを判定し(S106)、未記録の原稿MSの画像が残っていれば(S106「Yes」)、S101からの処理を繰り返する。また、制御部61が、未記録の原稿MSの画像が残っていないと判断した場合(S106「No」)、すなわち記録紙Pのエラーが発生することなく全ての原稿MSの画像の記録が終了した場合は、
図5に示す制御手順は終了する。
【0042】
一方、制御部61は、記録紙Pのエラーの有を判定した場合は(S105「Yes」)、S103で設定した画像形成開始時点tcで開始する画像の形成に伴い搬送ベルト46にインクの汚れが生じるとして、画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期BS後の時間TMを設定して(S107)、画像形成開始時点tcからの経過時間TTの計時を開始する(S108)。更に、制御部61は、次のS110以降に給紙カセット27から供給させて搬送させる記録紙Pの枚数nのカウント値を「0」に初期設定する(S109)。
【0043】
続いて、制御部61は、未記録の原稿MSの画像が画像メモリー57に残っているか否かを判定する(S110)。制御部61は、未記録の原稿MSの画像が画像メモリー57に残っていれば(S110「Yes」)、次の記録紙P用に新たに設定した給紙開始時点taで給紙カセット27の給紙ローラー28による次の記録紙Pの給紙を開始させ(S113)、当該給紙開始時点taより一定時間Δt1後を新たに画像形成開始時点tcとして設定する(S114)。制御部61は、当該画像形成開始時点tcで画像形成部13の制御を開始して、画像形成部13により、上記未記録の原稿MSの画像を上記次の記録紙Pに記録させ(S115)、上記次の記録紙Pを搬送部15により排出トレイ48と搬送させる。
【0044】
これにより、本実施形態では、最初の画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期BSが経過するまでの間に、すなわち搬送ベルト46のインクの汚れが生じているとされる部分が一周して画像形成部13による画像の形成位置に戻って来る前に、搬送ベルト46のインクの汚れが生じていないとされる部分により次の記録紙Pを搬送させ、画像形成部13により次の記録紙Pに画像を形成させる。
【0045】
また、インクの汚れが生じていない部分により記録紙Pを搬送できる搬送ベルト46部分の長さは、搬送ベルト46の全周長Rから、インクの汚れが生じるとされる部分に関する搬送区間rを差し引いた長さに略等しくなる。この搬送ベルト46のインクの汚れが生じていない部分により搬送されて画像が形成される記録紙Pの最大枚数Sは、搬送ベルト46の一周で搬送され得る記録紙Pの枚数N(=搬送ベルト46の全周長R/搬送区間r)から1(ンクの汚れが生じるとされる部分に関する搬送区間r)を差し引いた値となる。制御部61は、当該最大枚数Sを、次に述べる閾値Thに設定する。例えば、この最大枚数Sが「5」であるとすると、この「5」が閾値Thに設定される。
【0046】
制御部61は、画像形成部13により画像を、上記次の記録紙Pに記録させると、給紙カセット27から供給されて搬送された記録紙Pの枚数nを「1」にカウントアップする(S116)。制御部61は、この枚数nが閾値Th(最大枚数S)に達していないと判断したときは(S117「No」)、CIS48から送られてくる上記次の記録紙Pの画像(CIS48の検出出力)に基づき、上記次の記録紙Pについてエラーの有無を判定する(S118)。
【0047】
制御部61が、上記次の記録紙Pのエラーの無を判定すると(S118「No」)、処理はS110に戻る。
【0048】
また、制御部61は、次の記録紙Pのエラーの有を判定すると(S118「Yes」)、この場合は、S114で設定した画像形成開始時点tcからの上記次の記録紙Pに対する画像形成により、上記次の記録紙Pを搬送する搬送ベルト46における次の搬送区間rにインクの汚れが生じるとされるため、当該画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期BS後の時間TMを設定し(S119)、当該画像形成開始時点tcからの経過時間TTの計時を開始する(S120)。この後、処理はS110に戻る。
【0049】
そして、制御部61は、更に未記録の原稿MSの画像が画像メモリー57に残っていれば(S110「Yes」)、更に次の記録紙P用に新たに設定した給紙開始時点taで給紙カセット27の給紙ローラー28による更に次の記録紙Pの給紙を開始させ(S113)、当該給紙開始時点taより一定時間Δt1後を更に新たに画像形成開始時点tcとして設定する(S114)。制御部61は、当該画像形成開始時点tcで画像形成部13の制御を開始して、画像形成部13により、上記更に未記録の原稿MSの画像を上記更に次の記録紙Pに記録させ(S115)、上記更に次の記録紙Pを搬送部15により排出トレイ48と搬送させる。
【0050】
更に、制御部61は、画像形成部13により画像を、上記更に次の記録紙Pに記録させると、給紙カセット27から供給されて搬送された記録紙Pの枚数nを「2」にカウントアップする(S116)。制御部61は、この枚数nが閾値Thに達していないと判断したときは(S117「No」)、CIS48から送られてくる上記更に次の記録紙Pの画像(CIS48の検出出力)に基づき、上記更に次の記録紙Pについてエラーの有無を判定する(S118)。制御部61が、上記更に次の記録紙Pのエラーの無を判定すると(S118「No」)、処理はS110に戻る。
【0051】
また、制御部61は、上記更に次の記録紙Pについてエラーの有を判定すると(S118「Yes」)、上記更に新たに設定した画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期BS後の時間TMを設定し(S119)、上記更に新たに設定した画像形成開始時点tcからの経過時間TTの計時を開始する(S120)。この後、処理はS110に戻る。
【0052】
以降同様に、更なる未記録の原稿MSの画像が画像メモリー57に残っていれば(S110「Yes」)、S113~S120の処理が繰り返され、処理はS110に戻る。
【0053】
そして、制御部61は、給紙カセット27から供給されて搬送された記録紙Pの枚数nが閾値Thに達したと判断したとき(S117「Yes」)、すなわち、枚数nが搬送ベルト46におけるインク汚れが生じていないとされる部分により搬送可能な最大枚数Sに達したときは、これ以上、搬送ベルト46のインクの汚れが生じていないとされる部分による記録紙Pの搬送を続けることができないため、(1)S108で計時が開始された経過時間TTが、S107で設定された一周期BSの時間TMに達するタイミング(S103で設定された画像形成開始時点tcから一周期BS後のタイミング)、及び(2)S120で計時が開始された経過時間TTがS119で設定された一周期BSの時間TMに達するタイミング(S114で設定された画像形成開始時点tcから一周期BS後のタイミング)、の両方のタイミングで、画像形成部13による画像の形成を停止させると共に、このタイミングよりも一定時間Δt1前の時点を給紙開始時点taとして設定して、この給紙開始時点taで給紙ローラー28による記録紙Pの給紙を開始させる(S111)。S111の後、処理は終了する。
【0054】
これにより、搬送ベルト46の一周期BSの間に複数の搬送区間rにインクの汚れが生じたとしても、複数の記録紙Pが各画像形成開始時点tcの一周期BS後にそれぞれの搬送区間rに到着して重ねられて、各搬送区間rのインクの汚れを除去可能となる。
【0055】
なお、制御部61は、上記(1)又は(2)のいずれかのタイミングでのみ、画像形成部13による画像の形成を停止させ、このタイミングよりも一定時間Δt1前の時点を給紙開始時点taとして設定して、この給紙開始時点taで給紙ローラー28による記録紙Pの給紙を開始させるようにしてもよい。
【0056】
また、制御部61は、未記録の原稿MSの画像が画像メモリー57に残っていない場合には(S110「No」)、(1)S108で計時が開始された経過時間TTが、S107で設定された一周期BSの時間TMに達するタイミング(S103で設定された画像形成開始時点tcから一周期BS後のタイミング)で、画像形成部13による画像の形成を停止させ、このタイミングよりも一定時間Δt1前の時点を給紙開始時点taとして設定して、この給紙開始時点taで給紙ローラー28による記録紙Pの給紙を開始させる(S111)。なお、制御部61は、(2)S120で計時が開始された経過時間TTがS119で設定された一周期BSの時間TMに達するタイミング(S114で設定された画像形成開始時点tcから一周期BS後のタイミング)がある場合には、このタイミングでも、画像形成部13による画像の形成を停止させ、このタイミングよりも一定時間Δt1前の時点を給紙開始時点taとして設定して、この給紙開始時点taで給紙ローラー28による記録紙Pの給紙を開始させるようにしてもよい(S111)。S111の後、処理は終了する。
【0057】
このように本実施形態では、S103で設定された画像形成開始時点tc及びS114で設定された画像形成開始時点tcで開始される画像形成に用いられるそれぞれの記録紙Pについて、エラーの有無が判定される。そして、記録紙のエラーの有が判定された場合は、搬送ベルト46の部分にインクの汚れが生じるとして、画像形成開始時点tcから搬送ベルト46の周回移動の一周期BS後に、記録紙Pに対する画像形成が行われない状態で、この記録紙Pが搬送ベルト46のインクの汚れが生じているとされる部分に重ねられる。これにより、搬送ベルト46のインクの汚れを記録紙Pに移して除去する。
【0058】
また、インクの汚れが生じていないとされる搬送ベルト46部分により記録紙Pを搬送させて、画像形成部13により記録紙Pに画像を形成させるので、画像形成の生産性の低下が抑制される。
【0059】
なお、上記実施形態では、制御部61は、CIS48から送られてくる記録紙Pの画像(CIS48の検出出力)に基づき、記録紙Pのエラーを判定した場合に、搬送ベルト46にインク汚れが生じるものとしているが、これに代えて、CIS48が搬送ベルト46の表面を撮像可能な位置に配置されるものとし、CIS48により搬送ベルト46の表面を撮像させて、CIS48から送られてくる搬送ベルト46表面の画像に基づき、この表面の濃度が、予め定められた閾値Th2(汚れを示す濃度として予め定められた値)に達していると判断したときに、搬送ベルト46にインク汚れが生じているものとして、上述した記録紙Pのエラーの有を判定した場合(S105「Yes」,S118「Yes」)に行う処理と同様の処理を行うようにしてもよい。
【0060】
なお、
図1乃至
図5を用いて説明した上記実施形態の構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0061】
1 インクジェット記録装置
11 操作部
12 原稿読取部
13 画像形成部
14 給紙部
15 搬送部
16 搬送ユニット
21 表示部
49 先端センサー
48 コンタクトイメージセンサー(CIS)
57 画像メモリー
58 記憶部
60 制御ユニット
61 制御部