IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7435242動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム
<>
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図1
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図2
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図3
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図4
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図5
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図6
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図7
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図8
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図9
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図10
  • 特許-動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240214BHJP
【FI】
A61B6/00 330A
A61B6/00 360Z
A61B6/00 350B
A61B6/00 350C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020085930
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178111
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 健一
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-030608(JP,A)
【文献】特開2018-148964(JP,A)
【文献】特開2018-078974(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082635(WO,A1)
【文献】特開2008-052544(JP,A)
【文献】特開2013-081579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0330501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/01 、 6/00 - 6/14 、
G06Q50/22 、
G16H10/00 -80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体における対象部位を含む被写体を放射線撮影することにより得られ一撮影のデータが複数のフレーム画像で構成される動態画像について、前記動態画像の類別に資する項目についてタグ付けを行うタグ設定部と、
前記動態画像を構成する1以上のフレーム画像から特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出する特徴変化量算出部と、
第1の前記動態画像と同じ前記対象部位を含む別撮影により得られた第2の前記動態画像が入力された場合に、前記タグ設定部により設定されたタグから前記第2の動態画像と関連性があると判断される前記第1の動態画像である関連動態画像、及び前記第1の動態画像、前記第2の動態画像から抽出可能な特徴量を選定するデータ選定部と、
前記動態画像の前記一撮影を構成する前記フレーム画像間における経時変化を表示可能であるとともに、前記第2の動態画像及び前記第2の動態画像から抽出される特徴量と、前記データ選定部によって選定された前記関連動態画像及び前記関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を表示可能である表示部と、
前記表示部の表示を制御する表示制御部と、
を備え
前記タグ設定部は、撮影時のポジショニング、撮影時の撮影条件のうち少なくともいずれかの項目について前記動態画像にタグ付けを行うものであることを特徴とする動態画像解析装置。
【請求項2】
前記放射線撮影は、撮影時の動作方法について所定の撮影プロトコルに則り、撮影時の条件同一性を確保した状態で行われることを特徴とする請求項1に記載の動態画像解析装置。
【請求項3】
前記タグ設定部は、前記動態画像の類別に資する項目について、単一で又は複数の項目の組み合わせでタグ付けを行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動態画像解析装置。
【請求項4】
前記特徴変化量算出部は、前記1以上のフレーム画像から変化量を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項5】
前記特徴変化量算出部は、前記1以上のフレーム画像間の時間方向における変化に基づいて変化量を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項6】
前記特徴変化量算出部は、過去に取得された前記動態画像について画像取得時とは異なるアルゴリズムを適用した上で前記特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出することが可能であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記動態画像の前記一撮影を構成する前記フレーム画像間における経時変化を表示させるように前記表示部の表示を制御するとともに、前記第2の動態画像及び前記第2の動態画像から抽出される特徴量と、前記データ選定部によって選定された前記関連動態画像及び前記関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を比較評価可能な状態で表示させるように前記表示部の表示を制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記対象部位の機能的な変化における基点を揃えて前記特徴量の変化を表示させるように前記表示部の表示を制御することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の動態画像解析装置。
【請求項9】
生体における対象部位を含む被写体を放射線撮影することにより得られ一撮影のデータが複数のフレーム画像で構成される動態画像について、前記動態画像の類別に資する項目についてタグ付けを行うタグ設定工程と、
前記動態画像を構成する1以上のフレーム画像から特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出する特徴変化量算出工程と、
第1の前記動態画像と同じ前記対象部位を含む別撮影により得られた第2の前記動態画像が入力された場合に、前記タグ設定工程において設定されたタグから前記第2の動態画像と関連性があると判断される前記第1の動態画像である関連動態画像、及び前記第1の動態画像、前記第2の動態画像から抽出可能な特徴量を選定するデータ選定工程と、
表示部に、前記動態画像の前記一撮影を構成する前記フレーム画像間における経時変化を表示させるとともに、前記第2の動態画像及び前記第2の動態画像から抽出される特徴量と、前記データ選定工程において選定された前記関連動態画像及び前記関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を表示させる表示工程と、
を含み、
前記タグ設定工程では、撮影時のポジショニング、撮影時の撮影条件のうち少なくともいずれかの項目について前記動態画像にタグ付けが行われることを特徴とする動態画像解析方法。
【請求項10】
コンピューターに、
生体における対象部位を含む被写体を放射線撮影することにより得られ一撮影のデータが複数のフレーム画像で構成される動態画像について、前記動態画像の類別に資する項目についてタグ付けを行うタグ設定機能と、
前記動態画像を構成する1以上のフレーム画像から特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出する特徴変化量算出機能と、
第1の前記動態画像と同じ前記対象部位を含む別撮影により得られた第2の前記動態画像が入力された場合に、前記タグ設定機能により設定されたタグから前記第2の動態画像と関連性があると判断される前記第1の動態画像である関連動態画像、及び前記第1の動態画像、前記第2の動態画像から抽出可能な特徴量を選定するデータ選定機能と、
表示部に、前記動態画像の前記一撮影を構成する前記フレーム画像間における経時変化を表示させるとともに、前記第2の動態画像及び前記第2の動態画像から抽出される特徴量と、前記データ選定機能によって選定された前記関連動態画像及び前記関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を表示させる表示機能と、
を実現させ
前記タグ設定機能は、撮影時のポジショニング、撮影時の撮影条件のうち少なくともいずれかの項目について前記動態画像にタグ付けを行うものであることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線撮影により、極短時間の連続撮影を行うことで生体における対象部位(検査および診断の対象となる部位)の動きを捉えた画像(動態画像という)を取得することが可能となっている。
例えば胸部を撮影した動態画像に対して画像解析を行うことにより、横隔膜や肺野辺縁の一撮影内における経時的変化を把握することのできる情報を取得することが可能である。
【0003】
しかし、疾病の診断等を正確かつ効果的に行うためには、対象部位の状態について,術前術後の比較や治療開始からの経過観察等、ある程度の期間をおいての複数回の撮影における経時的な変化を知ることも重要である。
この点、例えば特許文献1には、骨密度分布を示す情報を測定日とともに記憶しておき、同じ患者の同一部位について測定日の異なる骨密度分布を比較し、骨密度の変化量を取得することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5520078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように一般的な放射線撮影では、異なる時点に取得された瞬間的な撮影画像間での対象部位の状態の経時変化を把握することはできるが、一撮影内における経時変化を捉えることは困難である。
診断が進展するに連れて、診察内容も変わっていくものである。このため、診断等に有用な情報を医師等に提供するためには、こうした変化していく診察内容に応じて必要となる様々な観点から経時変化を捉えたいとの要望があるところ、既存の一般的な放射線撮影では、その画像の用途、検査目的等が確立され、診断に供される情報がある程度固定化してしまっているために、他の用途等に柔軟に適用し活用することが難しい。
【0006】
本発明の課題は、様々な観点から捉えた対象部位の状態の経時変化の情報を提供することのできる動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の動態画像解析装置は、
生体における対象部位を含む被写体を放射線撮影することにより得られ一撮影のデータが複数のフレーム画像で構成される動態画像について、前記動態画像の類別に資する項目についてタグ付けを行うタグ設定部と、
前記動態画像を構成する1以上のフレーム画像から特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出する特徴変化量算出部と、
第1の前記動態画像と同じ前記対象部位を含む別撮影により得られた第2の前記動態画像が入力された場合に、前記タグ設定部により設定されたタグから前記第2の動態画像と関連性があると判断される前記第1の動態画像である関連動態画像、及び前記第1の動態画像、前記第2の動態画像から抽出可能な特徴量を選定するデータ選定部と、
前記動態画像の前記一撮影を構成する前記フレーム画像間における経時変化を表示可能であるとともに、前記第2の動態画像及び前記第2の動態画像から抽出される特徴量と、前記データ選定部によって選定された前記関連動態画像及び前記関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を表示可能である表示部と、
前記表示部の表示を制御する表示制御部と、
を備え
前記タグ設定部は、撮影時のポジショニング、撮影時の撮影条件のうち少なくともいずれかの項目について前記動態画像にタグ付けを行うものであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項9に記載の動態画像解析方法は、
生体における対象部位を含む被写体を放射線撮影することにより得られ一撮影のデータが複数のフレーム画像で構成される動態画像について、前記動態画像の類別に資する項目についてタグ付けを行うタグ設定工程と、
前記動態画像を構成する1以上のフレーム画像から特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出する特徴変化量算出工程と、
第1の前記動態画像と同じ前記対象部位を含む別撮影により得られた第2の前記動態画像が入力された場合に、前記タグ設定工程において設定されたタグから前記第2の動態画像と関連性があると判断される前記第1の動態画像である関連動態画像、及び前記第1の動態画像、前記第2の動態画像から抽出可能な特徴量を選定するデータ選定工程と、
表示部に、前記動態画像の前記一撮影を構成する前記フレーム画像間における経時変化を表示させるとともに、前記第2の動態画像及び前記第2の動態画像から抽出される特徴量と、前記データ選定工程において選定された前記関連動態画像及び前記関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を表示させる表示工程と、
を含み、
前記タグ設定工程では、撮影時のポジショニング、撮影時の撮影条件のうち少なくともいずれかの項目について前記動態画像にタグ付けが行われることを特徴とする。
【0009】
また、請求項10に記載のプログラムは、
コンピューターに、
生体における対象部位を含む被写体を放射線撮影することにより得られ一撮影のデータが複数のフレーム画像で構成される動態画像について、前記動態画像の類別に資する項目についてタグ付けを行うタグ設定機能と、
前記動態画像を構成する1以上のフレーム画像から特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出する特徴変化量算出機能と、
第1の前記動態画像と同じ前記対象部位を含む別撮影により得られた第2の前記動態画像が入力された場合に、前記タグ設定機能により設定されたタグから前記第2の動態画像と関連性があると判断される前記第1の動態画像である関連動態画像、及び前記第1の動態画像、前記第2の動態画像から抽出可能な特徴量を選定するデータ選定機能と、
表示部に、前記動態画像の前記一撮影を構成する前記フレーム画像間における経時変化を表示させるとともに、前記第2の動態画像及び前記第2の動態画像から抽出される特徴量と、前記データ選定機能によって選定された前記関連動態画像及び前記関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を表示させる表示機能と、
を実現させ
前記タグ設定機能は、撮影時のポジショニング、撮影時の撮影条件のうち少なくともいずれかの項目について前記動態画像にタグ付けを行うものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、様々な観点から捉えた対象部位の状態の経時変化の情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における動態画像解析装置を含む医用画像システムのシステム構成を示す要部構成図である。
図2】撮影プロトコルの一例を示す説明図である。
図3】本実施形態における動態画像解析方法の全体的な手順を示すフローチャートである。
図4】本実施形態における動態画像解析方法における経時変化の表示処理の手順を示すフローチャートである。
図5】(a)は、一撮影内における経時変化を模式的に示す説明図であり、(b)は、一撮影内における経時変化の特徴量の一例を示す説明図であり、(c)は、異なる時点に撮影された画像の経時変化を模式的に示す説明図である。
図6】複数時点に撮影された各画像から抽出される特徴量の一例を示す説明図である。
図7】元画像と元画像から抽出される特徴量の例を示す説明図である。
図8】横隔膜の最大変位量の一例を示す表である。
図9】肺野面積の変位の一例を示す表である。
図10】複数時点に撮影された画像から抽出された肺野面積の変化率を時系列的に示すグラフの一例である。
図11】複数時点に撮影された画像から抽出された肺野面積の最大/最小の変化を時系列的に示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1から図11を参照して、本発明にかかる動態画像解析装置、動態画像解析方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
本実施形態における動態画像解析装置は、医用画像システム内に設けられて、各種のモダリティーによって取得された画像(医用画像)のうち特に動態画像D(図5参照)の解析を行うものであり、
図1は、本実施形態における医用画像システム100の全体構成を示す図である。
図1に示すように、医用画像システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。医用画像システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
後述するように、本実施形態では診断用コンソール3が動態画像解析装置として機能する。
【0014】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、生体の動態を撮影する撮影手段である。
図1に示すように、撮影装置1は、放射線源11、放射線照射制御装置12、放射線検出部13、読取制御装置14を含んでいる。
【0015】
ここで動態撮影とは、生体における対象部位(例えば胸部の肺野周辺や心臓等)を含む被写体を放射線撮影することにより画像を得るものであり、被写体に対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像を動態画像Dと呼ぶ。動態画像Dは、一撮影のデータが複数の画像で構成されており、動態画像Dを構成する画像をフレーム画像(図5においてフレーム画像d1~dn)と呼ぶ。
なお、以下の実施形態では、パルス照射により動態撮影を行う場合を例にとり説明する。また、以下の実施形態では、診断の対象となる対象部位を胸部の肺野周辺(肺野や横隔膜)とした場合を例にとり説明するが、これに限定されるものではない。例えば、胸部であればこのほか心臓、肺血管、肋間筋、胸郭、胃部であれば腸類や食道等、その他例えば膝、肘、首、背骨等、様々な整形部位や各種組織等を対象部位としてもよい。
【0016】
放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、パルスレート、パルス幅、パルス間隔、一撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、付加フィルター種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0017】
放射線検出部13は、FPD等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。FPDにはX線をシンチレーターを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。本実施形態において、放射線検出部13において生成される画像データの画素値(濃度値)は、放射線の透過量が多いほど高いものとする。
放射線検出部13は、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられている。
【0018】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データを取得する。この画像データがフレーム画像d1~dnである。そして、読取制御装置14は、取得したフレーム画像を撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0019】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。
【0020】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された動態画像を撮影技師等の撮影実施者によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。
撮影用コンソール2は、図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0021】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0022】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、図2に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、記憶部22は、撮影部位に対応付けて放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0023】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0024】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0025】
通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0026】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から動態画像Dを取得し、取得した動態画像Dを解析して解析結果としての画像や各種のデータを生成し、生成した解析結果を表示して医師の診断を支援する情報を提供する動態画像解析装置である。
診断用コンソール3は、図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0027】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する画像解析処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3各部の動作を集中制御する。
【0028】
本実施形態の制御部31は、後述するように、動態画像Dの類別に資する項目についてタグ付けを行うタグ設定部として機能する。
また制御部31は、動態画像Dを構成する1以上のフレーム画像から特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出する特徴変化量算出部として機能する。
また制御部31は、過去に撮影されたある動態画像D(これを「第1の動態画像」という)と同じ対象部位を含む別撮影により得られた新たな動態画像D(これを「第2の動態画像」という)が入力された場合に、タグ設定部として機能する制御部31により設定されたタグから第2の動態画像Dと関連性があると判断される第1の動態画像Dである関連動態画像(すなわち関連する過去の動態画像D)、及び第1の動態画像D、第2の動態画像Dから抽出可能な特徴量を選定するデータ選定部として機能する。
さらに制御部31は、表示部34の表示を制御する表示制御部としても機能する。
なお、制御部31の上記各機能については、後に詳述する。
【0029】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で画像解析処理等を実行するためのプログラムを始めとする各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
また記憶部32には、過去に取得された動態画像Dや動態画像Dを解析することで得られた特徴量、特徴量の変化量等の各種データが格納される。なお、動態画像Dや動態画像Dを解析することで得られる各種データは、診断用コンソール3内の記憶部32に記憶されている場合に限定されない。例えば診断用コンソール3の外部に設けられた記憶部やサーバー等に記憶されていてもよい。
【0030】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0031】
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種表示を行う。
本実施形態の表示部34は、動態画像Dの一撮影を構成するフレーム画像d1~dn間における経時変化を表示可能であるとともに、第2の動態画像D及び第2の動態画像Dから抽出される特徴量と、データ選定部としての制御部31によって選定された関連動態画像及び関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化等を表示可能となっている。
なお、表示部34における具体的な表示については、後に詳述する。
【0032】
通信部35は、LANアダプターやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0033】
〔動態画像解析装置としての診断用コンソールの動作〕
次に、上記動態画像解析装置としての診断用コンソール3の動作について説明する。
【0034】
まず前提として、動態画像を取得するための撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
【0035】
撮影を行う際には、まず撮影実施者により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、被検者(被写体M)の患者情報(患者の氏名、身長、体重、年齢、性別等)や検査情報等の入力が行われる。
検査情報としては、例えば、撮影対象となる対象部位(例えば肺野や横隔膜等)や、対象部位の動作・組織変化の種類・方法(拡縮動作なのか、上下動なのか等)、撮影時のポジショニング(正面、側面等)、撮影時の撮影条件(管電圧、照射角度、撮影時間等)である。
次に、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定され、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される状態となる。
ここで、撮影実施者は、被写体Mを放射線源11と放射線検出部13の間に配置してポジショニングを行う。
【0036】
また、例えば肺野の拡縮動作や横隔膜の上下動を動態画像Dとしてとらえる場合には、呼吸状態下で撮影を行うため、被検者(被写体M)に楽にするように指示し、安静呼吸を促す。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
なお本実施形態では、後述するように、新たな撮影が行われた際に過去画像との比較評価が行われる。この比較評価においては経時変化が起こる条件を同一にしないと誤診に繋がるおそれがある。このため、検査時の対象部位や、体位・方向といったポジショニングの条件(例えば胸部側面を撮影する場合には被検者(被写体M)を所定の位置に立たせる等)、撮影時間等を一定に揃えることが好ましい他、呼吸等の撮影時の動作方法についても所定の撮影プロトコルに則って行うことで、撮影時の条件同一性を確保した状態で撮影を行うことが好ましい。
このように撮影時の条件を揃えておくことにより、画像解析について将来新たなアルゴリズムが登場した場合に、過去に撮影された画像であっても当該新たなアルゴリズムを用いて再処理を行うことができ、解析データを新たなアルゴリズムに基づいたものに最新化することが可能となる。
【0037】
例えば、図3は、肺野の拡縮動作や横隔膜の上下動を動態画像としてとらえる際の撮影プロトコルの一例を模式的に示した説明図である。
図3に示す例では、自動の音声案内(図中「オートボイス」)によって息を吸うタイミング、息を止めるタイミング、息を吐くタイミングの誘導を行う。
そして、音声による呼吸タイミングの誘導に合わせてX線等の放射線をパルス照射することにより動態撮影を行う。
このようにすることで、被検者(被写体M)が大きく息を吸った後の息止めから息を吐いていく「呼気相」、息を吐き切った後の息止めから息を吸っていく「吸気相」という、呼吸における一サイクルを一撮影内に収めることができる。
【0038】
操作部23により放射線照射指示が入力されると、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像d1~dnが取得される。
【0039】
予め定められたフレーム数の撮影が終了すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。撮影されるフレーム数は特に限定されないが、例えば図3に示すような呼吸による部位の変化を撮影する場合であれば、少なくとも1呼吸サイクルが撮影できる枚数からなる動態画像Dを取得する。
【0040】
次に、本実施形態における動態画像Dの解析方法について図3及び図4等を参照しつつ説明する。
撮影装置1により動態画像Dが撮影されると、動態画像Dを構成するフレーム画像d1~dnが順次撮影用コンソール2に入力され、撮影順を示す番号(フレーム番号)と対応付けられる。
そして、通信部35を介して撮影用コンソール2から動態画像Dの一連のフレーム画像d1~dnが診断用コンソール3において受信される。これによって動態画像D(第1の動態画像)が診断用コンソール3に取得され(ステップS1)、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により図3及び図4に示す動態画像解析処理が実行される。
【0041】
具体的にはまず、取得した動態画像Dについて、制御部31がタグ設定部として、動態画像Dの類別に資する項目についてタグ付けを行う(ステップS2)。
ここで「類別に資する項目」は、記憶部32等に蓄積されていく動態画像Dを後日検索することを可能とするためのインデックスとしての機能を果たすものである。
タグ設定部としての制御部によって設定されるタグは、例えば撮影時のポジショニング(正面か側面か、右方向か左方向か等)、対象部位(例えば肘や膝等の整形部位や胸部、腹部等)の動作・組織変化の種類や方法(例えば呼吸による肺野の拡縮、横隔膜の上下動、腸の蠕動、心臓や血管の拍動、脈動、関節等の曲げ伸ばし、部位の左右動等)や実際の組織の内容、各種の検査条件(例えば撮影時間、撮影間隔(フレームレート)、照射角度、線量、管球位置等の各種撮影条件等、撮影機器の型番等の情報)のうち少なくともいずれかの項目について設定されることが好ましい。
この他、例えば患者情報(例えば患者氏名や患者ID、患者の性別、年齢等)、撮影日、撮影時刻等、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれる付帯情報についてもタグ付けされる。
【0042】
なお、タグ設定部としての制御部31は、これら動態画像Dの「類別に資する項目」について、単一の項目についてタグ付けを行ってもよいし、複数の項目の組み合わせについてタグ付けを行ってもよい。
例えば、ある動態画像Dについて、胸部の画像であるとの単一のタグを付してもよいし、胸部の画像かつ肺野の拡縮を捉えた画像であるとの複数項目の組み合わせでタグを付してもよい。
タグが設定されると、制御部31は動態画像Dをタグと対応付けて記憶部32に記憶させる(ステップS3)。
【0043】
そして、新たに動態画像D(第2の動態画像)が取得されると(ステップS4)、当該動態画像D(第2の動態画像)についても同様に、タグ設定部としての制御部31が各種の「類別に資する項目」についてタグ付けを行い(ステップS5)、動態画像Dをタグと対応付けて記憶部32に記憶させる(ステップS6)。
【0044】
そして制御部31は、一撮影で得られた動態画像D内の経時変化の表示を行うか否かを随時判断する(ステップS7)。なおこの判断は、新たな動態画像D(第2の動態画像)が取得されるごとに行ってもよいし、それ以外の所定のタイミングで行ってもよい。
一撮影内での経時変化の表示を行う場合(ステップS7;YES)には、動態画像Dを構成するフレーム画像d1~dn間の経時変化を表示部34に表示させる(ステップS8)。
【0045】
他方、一撮影内での経時変化の表示を行わない場合(ステップS7;NO)及び一撮影内での経時変化の表示を行う場合にはさらに、異なる時点で撮影された複数の動態画像D間における経時変化の表示を行うか否かを判断する(ステップS9)。
異なる時点で撮影された動態画像間での経時変化の表示を行う場合(ステップS9;YES)には、動態画像D間における経時変化の比較評価を行い、その結果等を表示部34に表示させる(ステップS10)。
【0046】
動態画像Dの一撮影内での経時変化の表示と、異なる時点で撮影された動態画像D間での経時変化の比較評価及びその結果の表示とを行う場合の手順について、図4等を参照しつつ説明する。
この場合、制御部31はデータ選定部として機能し、タグの情報に基づいて、記憶部32内の動態画像D(過去に撮影された第1の動態画像)のうちから、第2の動態画像Dと関連性があると判断されるものを関連動態画像として選定・抽出する(ステップS21)。
例えば、制御部31は、第2の動態画像Dと同じ被検者(被写体M)に対する胸部の動態画像で、正面を向いたポジショニングで撮影されたもの、といったタグで検索をかけることにより、既に取得されている第1の動態画像Dの中から関連動態画像を選定・抽出する。
なお、検索に用いるタグは医師等が自分の求めるデータに応じて入力してもよいし、第2の動態画像に付されているタグに基づいて、自動的に選定するようにしてもよい。
【0047】
なお、選定・抽出する範囲は関連性があると判断された動態画像D全てでもよいし、例えば直近2年以内に取得された画像等、範囲を限定してもよい。また本実施形態では、新たに取得された(すなわち最新の)動態画像Dを第2の動態画像とし、これに関連する動態画像Dを過去画像から選定する場合を例示するが、第2の動態画像Dは新たな動態画像に限定されず、例えばある手術の直後に撮影された動態画像Dがある場合に、これを第2の動態画像として、当該動態画像Dに関連する過去から直近までの(すなわち第2の動態画像の前後の)動態画像Dを関連動態画像として選定してもよい。
【0048】
そしてデータ選定部としての制御部31は、動態画像D(第2の動態画像及び第1の動態画像(関連動態画像))を構成する複数のフレーム画像d1~dn間の経時変化(一撮影内の経時変化)を解析し、比較評価可能なデータを得る(ステップS22)。
例えば図5(a)は、呼吸動作を行いながら動態撮影を行うことで一撮影内に呼吸によって生じる横隔膜の上下動(経時的な変化)の様子を取得した例を説明する図である。
図5(a)に示すように、動態画像Dを構成するフレーム画像d1~dn間における横隔膜の上下動を解析してグラフに表すと、図5(a)の右端の図に示すような、一撮影内の経時変化を比較評価可能なグラフとなる。
【0049】
動態画像Dからどのような比較評価可能なデータを解析・抽出できるかは、動態画像Dに適用されるアルゴリズムによって異なる。また本実施形態では、前述のように、撮影条件等を揃えて撮影を行うことにより、過去の画像に新たなアルゴリズムを適用することで、抽出可能な特徴量のデータをアップデートすることができるように構成されている。
図6は、動態画像に適用されるアルゴリズムによって解析・抽出することのできる比較評価可能なデータの違いを示す説明図である。
図6に示す例は、2018年12月時点に適用されていたアルゴリズムでは、動態画像Dから強調画像Dh、画像信号値のデータ(信号値グラフGa)、左右の横隔膜の位置(高さ位置)を追跡したデータ(横隔膜追跡グラフGb)を解析・抽出可能であったことを示している。これに対して、2019年12月時点のアルゴリズムを動態画像Dに適用すると、強調画像Dh、左右の横隔膜の位置(高さ位置)を追跡したデータ(横隔膜追跡グラフGb)、肺野辺縁検出データDolを解析・抽出することができるようになっている。
【0050】
このため、2019年12月時点のアルゴリズムが適用されるようになる前に取得され、記憶されていた動態画像Dについても、画像取得時とは異なる2019年12月時点のアルゴリズムを適用することにより、例えば画像取得時には得られなかった肺野辺縁検出データDolを過去に取得された動態画像Dから抽出することが可能となる。
これにより、関連動態画像として選定した画像が古いアルゴリズムの下で解析されたものであって、新たな動態画像(第2の動態画像)と共通する比較評価可能なデータがない場合でも、新たな動態画像と同じアルゴリズムを関連動態画像に適用することで、共通する比較評価可能なデータを得ることが可能となる。
このように、本実施形態では、新たなアルゴリズムによってデータをアップデートすることにより、過去の動態画像Dのデータも有効に活用することができる。
【0051】
各動態画像Dの一撮影内の経時変化を解析すると、特徴変化量算出部としての制御部31は、動態画像D(第2の動態画像及び第1の動態画像(関連動態画像))を構成する複数のフレーム画像d1~dnから動態画像D同士を比較評価することが可能な特徴量を抽出し、各動態画像Dをサマライズする(ステップS23)。
本実施形態では、動態画像D内の経時変化に関する各種のデータについて、データの収集、保存、表示等、あらゆる場面においてサマライズ(集約)することが可能となっている。
【0052】
例えば図7に示すように、ある動態画像Dから横隔膜追跡グラフGb及び肺野辺縁検出データDolを解析・抽出することができた場合、左右の横隔膜の最大移動量(最大の移動地点を図中破線丸印で示す)を抜き出すことで、複数のフレーム画像d1~dnからなる動態画像Dに関するデータを1つの値に集約することができる。
すなわち、複数のフレーム画像d1~dn間で経時的に変化しばらつきのある数値を、図8に示すように、右の横隔膜の最大移動量32mm、左の横隔膜の最大移動量49mmという単一の数値にまとめることができる。
同様に、肺野辺縁検出データDolについて、肺野辺縁の検出座標から最大/最小面積を抜き出すことで、複数のフレーム画像d1~dnからなる動態画像Dに関するデータを1つの値に集約することができる。また肺野の面積は経時変化するため、面積の最大/最小という変化をさらに定量化して観察するということもできる。
【0053】
例えば図5(a)に示すような、一撮影内における横隔膜の上下動の経時変化からは、何に着目するかによって様々な特徴量を抽出することができる。
例えば、グラフの始点(左端)から終点(右端)までの振幅の平均値をとっていく手法もある。図5(b)に示す例では、横隔膜が最も高い位置に来た時の値(最高位hp)と横隔膜が最も低い位置に来た時の値(最低位lp)とを特徴量として抽出する。このように一撮影内における最高位hpと最低位lpとを抽出することで、複数のフレーム画像d1~dnからなる動態画像Dを他の動態画像Dと比較評価することが可能な1つの値に集約(サマライズ)する。
【0054】
一撮影内の動態画像Dの経時変化をすべてデータとして抽出して、これをそのまま動態画像D同士の比較に用いると、比較対象が明確とならず、動態画像D同士を正しく比較評価することができない。
この点、各動態画像Dを着目すべきポイントを絞ってサマライズ(集約)することで、意味のある比較評価を行うことができるようになる。
すなわち、各動態画像D(第2の動態画像及び第1の動態画像(関連動態画像))が1つの値に集約(サマライズ)されることによって、特徴変化量算出部としての制御部31は、容易に各値の変化量を算出する(ステップS24)ことが可能となる。
特徴変化量算出部としての制御部31は、1以上のフレーム画像d1~dn間の時間方向における変化に基づいて各値の変化量を算出する。
なお、制御部31は、動態画像Dを構成する1以上のフレーム画像d1~dnから変化量を算出すればよく、必ずしも動態画像Dに含まれるデータがサマライズ(集約)されている場合に限定されない。
【0055】
例えば図5(c)に示す例では、異なる時点(図5(c)では、右から左に向かって順に最新のデータ、1か月前、2か月前、3か月前、4か月前)に撮影された複数の動態画像D同士を1つのグラフ等の上に比較評価可能に表現している。
同様に、肺野辺縁検出データDolから、肺野辺縁の検出座標に基づき、図9に示すように、右の肺野の最大/最小面積、左の肺野の最大/最小面積、左右の肺野を合計した場合の最大/最小面積、右の肺野の面積変化率、左の肺野の面積変化率、左右の肺野の面積変化率を特徴量として得ることができる。
【0056】
肺野辺縁検出データDolから抽出されるこれらの値の経時的な変化を動態画像D同士で比較評価することで、図10図11のようなグラフを得ることができる。
このうち図10は、肺野面積の変化率の、動態画像D間での経時的な変化を示すグラフであり、グラフの左から右に行くにつれて新しいデータとなっている。図10では、2018年3月1日から2019年の7月26日までの約16か月の間の肺野面積の変化率の推移を見ることができる。
また、図11は、肺野面積の最大/最小値の、動態画像D間での経時的な変化を示すグラフであり、グラフの左から右に行くにつれて新しいデータとなっている。図11では、2018年3月1日から2019年の7月26日までの約16か月の間の肺野面積の最大/最小値の推移を見ることができる。
【0057】
制御部31は表示制御部として、表示部34の表示を制御し、一撮影内の経時変化を表示部34に表示させる(ステップS25)。
具体的には、動態画像Dの一撮影を構成する各フレーム画像d1~dnや、図5(a)に示すグラフ、図6に示す強調画像Dh、信号値グラフGa、横隔膜追跡グラフGb、肺野辺縁検出データDol、数値を一覧とした図8図9に示すような各種の表等、動態画像Dを解析することで得られる一撮影内の経時変化を示す各種データを表示部34に表示させる。
【0058】
さらに制御部31は表示制御部として、表示部34の表示を制御し、撮影時点の異なる複数の動態画像D間(すなわち、第2の動態画像とデータ選定部としての制御部31によって選定された関連動態画像との間)における経時変化を表示部34に表示させる(ステップS26)。
具体的には、図5(c)に示すグラフ、図10図11に示すグラフのように、各動態画像D(第2の動態画像及び第1の動態画像(関連動態画像))についてサマライズ(集約)された数値同士を比較評価可能な状態で表示部34に表示させる。また、第2の動態画像や関連動態画像の画像そのものを表示させてもよい。
【0059】
また、表示部34に表示される解析結果は医学的な評価に用いられるものであるため、医師等が見たときに医学的な観点から違和感を覚えることのないような表示を行う必要がある。
この点、例えば横隔膜の周辺には一般的に左側に心臓という大きな部位が配置される。このために、常に右側が低く左側が高い、というように画像上の絶対値としては必ず左右差が生じてしまう。しかし、左右の横隔膜がどの程度上下動するか、という機能的な観点からは、図7に示す横隔膜追跡グラフGbのように、左右の最低値を揃えて、横隔膜が機能的にどこまで上昇するかを表現することが好ましい。
そこで本実施形態では、表示制御部としての制御部31は、対象部位の機能的な変化における基点を揃えて(すなわち、横隔膜の上下動を見る場合であれば左右の横隔膜の最低値をゼロ等に揃えて)特徴量の変化を表示部34に表示させるようになっている。
また例えば、図10図11のようなグラフにおいて、ある時点をクリックすると、当該時点のデータと、過去のデータや最新のデータとを比較可能に表示させてもよい。
【0060】
このように、動態画像Dの一撮影内の経時変化と、撮影時点の異なる複数の動態画像D間における経時変化とを表示部34に表示させることで、診断に役立つ資料として医師等に提供することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態における動態画像解析装置である診断用コンソール3によれば、動態画像Dにタグ付けを行うとともに、動態画像Dを構成する複数のフレーム画像d1~dnから特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出し、第1の動態画像Dと同じ対象部位を含む別撮影により得られた第2の動態画像Dが入力された場合に、タグから第2の動態画像Dと関連性があると判断される第1の動態画像Dである関連動態画像、及び第1の動態画像D、第2の動態画像Dから抽出可能な特徴量を選定する制御部31と、動態画像Dの一撮影を構成するフレーム画像d1~dn間における経時変化を表示可能であるとともに、第2の動態画像D及び第2の動態画像Dから抽出される特徴量と、選定された関連動態画像及び関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を表示可能である表示部34と、を備える。
これにより、一撮影内において経時変化を捉えることのできる動態画像Dを用いて、動態画像D間における経時変化を捉えることが可能となる。
このため、例えば呼吸の一サイクル等、一撮影で得られるごく短い時間内での対象部位の経時的変化(例えば横隔膜の移動変化、肺野面積の拡縮変化等)と、こうした一撮影における経時変化を定量化して、複数時点での撮影で得られた動態画像D同士を比較したときの経時変化との両方を診断のための情報として提供することができ、両者を組み合わせた診断を可能とする。
例えば、肺等の活動状況の比較を行うためには、術前術後や治療開始から現在までの経過等、比較的長いスパンでの比較検討、状況把握が必要であるとともに、いつの時点ではどのような動き方をしていたのか、といったある時点での動作状況を適切に把握することも重要である。本実施形態における動態画像解析装置によれば、こうした両者を組み合わせた視点で患者の経過観察を行うことが可能となり、優れた臨床価値を実現する。
【0062】
また本実施形態では、タグ設定部としての制御部31が、撮影時のポジショニング、対象部位の動作・組織変化の種類、方法、撮影時の撮影条件のうち少なくともいずれかの項目について動態画像Dにタグ付けを行う。
このため、多角的な視点で画像を分類することができ、適切な関連動態画像を選定することが可能となる。
【0063】
また本実施形態では、タグ設定部としての制御部31が、動態画像Dの類別に資する項目について、単一で又は複数の項目の組み合わせでタグ付けを行う。
このように、単一のタグのみならず複数のタグを組み合わせるため、より適切な関連動態画像を選定することが可能となる。
【0064】
また本実施形態では、特徴変化量算出部としての制御部31が、1以上のフレーム画像d1~dnから変化量を算出する。
このため、適切に定量化された動態画像Dから変化量を算出することができる。
【0065】
また本実施形態では、特徴変化量算出部としての制御部31が、1以上のフレーム画像間の時間方向における変化に基づいて変化量を算出する。
これにより、動態画像D内における経時的変化を適切に捉えることができる。
【0066】
また本実施形態では、特徴変化量算出部としての制御部31が、過去に取得された動態画像Dについて画像取得時とは異なるアルゴリズムを適用した上で特徴量を抽出し、この特徴量の時間方向における変化量を算出することが可能となっている。
これにより、新たに発見され適用されるアルゴリズムがあり、当該アルゴリズムを用いれば過去の画像取得時には抽出できなかった新たなデータ等がある場合に、当該アルゴリズムを過去に取得された動態画像Dに適用することでデータをアップデートすることができる。
これにより、過去に取得された動態画像Dについても有効に利用することができる。
【0067】
また本実施形態では、表示制御部としての制御部31が、動態画像Dの一撮影を構成するフレーム画像d1~dn間における経時変化を表示部34に表示させるとともに、第2の動態画像及び第2の動態画像から抽出される特徴量と、データ選定部によって選定された関連動態画像及び関連動態画像から抽出される特徴量との間の経時変化を比較評価可能な状態で表示部34表示させる。
これにより、一撮影で得られるごく短い時間内での対象部位の経時的変化と、複数時点での撮影で得られた動態画像D同士を比較したときの経時変化との両方を、診断を支援する情報として提供することができる。
【0068】
また本実施形態では、表示制御部としての制御部31が、対象部位の機能的な変化における基点を揃えて特徴量の変化を表示部34表示させる。
このため、絶対値で見たときには医学的な見地から必ず差異が生じるような場合に、違和感なく分かりやすい表示を行うことができる。
【0069】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0070】
例えば、本実施形態では、医用画像システム100内の診断用のコンソール3が動態画像解析装置として機能する場合を例示したが、動態画像解析装置はこれに限定されない。例えば医用画像システム100外に、独立した動態画像解析ワークステーションが設けられ、各種ネットワーク等を介して医用画像システム100から動態画像Dを取得する構成としてもよい。
【0071】
また例えば、動態画像解析装置において解析処理が行われる動態画像Dは、医用画像システム100内で取得されたものではなく、各種ネットワークを介して外部の装置から提供されたものであってもよい。
このように構成することで、1人の患者が複数の医療機関を受診しているような場合に、過去に受診した別の医療機関で撮影された動態画像Dも有効に活用することが可能となる。
なお、この場合、経時的変化を適切に比較することができるように、同一の撮影プロトコル等、共通のルールに則って撮影時の条件の同一性が確保された撮影された動態画像Dであることが好ましい。
【0072】
また例えば、表示部34において経時変化をグラフ等で表示する場合に、正常値を示しているデータと異常値となっているデータとで色を変える等により、変化の状況、傾向等を区別して表示させてもよい。
これにより、症状が改善傾向であるか否か等を視覚的に分かりやすく伝えることができる。
【0073】
その他、動態画像解析装置(本実施形態では診断用コンソール3)を構成する各部の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0074】
100 医用画像システム
1 撮影装置
11 放射線源
12 放射線照射制御装置
13 放射線検出部
14 読取制御装置
2 撮影用コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス
3 診断用コンソール
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11