(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】空気袋及び車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240214BHJP
B60N 2/02 20060101ALI20240214BHJP
A47C 7/14 20060101ALI20240214BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/02
A47C7/14 A
A47C7/46
A47C7/14 B
(21)【出願番号】P 2020086063
(22)【出願日】2020-05-15
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019146748
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】榑松 靖人
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢志
(72)【発明者】
【氏名】関 誠雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正明
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】水野 量介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0251572(US,A1)
【文献】特開2018-069799(JP,A)
【文献】特開2015-221604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 4/54,7/00-7/74,27/08
B29D 22/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚のシート材を貼り合わせてなるとともに該各シート材の厚み方向に重ねて配置された複数の袋部と、
前記厚み方向に重ねて配置された前記各袋部の互いに当接する前記シート材間を接合する溶着接合部と、を備え、
前記溶着接合部は、
前記互いに当接する前記各シート材を貫通することにより前記重ねて配置された前記各袋部間を連通する連通孔と、
前記連通孔の径方向外側において前記溶着接合部の溶着表面から前記厚み方向に突出するリブ形状部と、を備えるとともに、
前記リブ形状部は、
前記連通孔を囲む環状リブと、
前記環状リブに設けられた切欠き部と、を備え
、
前記リブ形状部は、前記環状リブよりも径方向内側の位置において前記連通孔を囲んで放射状に設けられた該連通孔の径方向に延びる複数の放射リブを備え、
前記切欠き部は、周方向に隣り合う前記放射リブに対して周方向にずれた位置であって且つ該周方向に隣り合う前記放射リブの隙間に対応する位置に設けられている空気袋。
【請求項2】
二枚のシート材を貼り合わせてなるとともに該各シート材の厚み方向に重ねて配置された複数の袋部と、
前記厚み方向に重ねて配置された前記各袋部の互いに当接する前記シート材間を接合する溶着接合部と、を備え、
前記溶着接合部は、
前記互いに当接する前記各シート材を貫通することにより前記重ねて配置された前記各袋部間を連通する連通孔と、
前記連通孔の径方向外側において前記溶着接合部の溶着表面から前記厚み方向に突出するリブ形状部と、を備えるとともに、
前記リブ形状部は、
前記連通孔を囲む環状リブと、
前記環状リブに設けられた切欠き部と、を備え、
前記リブ形状部は、前記環状リブよりも径方向内側の位置において前記連通孔を囲んで放射状に設けられた該連通孔の径方向に延びる複数の放射リブを備え、
前記各放射リブが前記環状リブよりも前記厚み方向に突出してい
る空気袋。
【請求項3】
請求項2に記載の空気袋において、
前記切欠き部は、前記各放射リブに対して周方向にずれた位置に設けられること、
を特徴とする空気袋。
【請求項4】
請求項
2又は請求項3に記載の空気袋において、
前記各放射リブは、径方向内側に向かって前記厚み方向の突出量が大きくなるように構成されること、を特徴とする空気袋。
【請求項5】
請求項
1~請求項
4の何れか一項に記載の空気袋において、
前記各放射リブのうちの少なくとも何れか1つが、前記連通孔から径方向に離間した位置に配置されていること、を特徴とする空気袋。
【請求項6】
請求項
5に記載の空気袋において、
全ての前記放射リブが、前記連通孔から径方向に離間した位置に配置されていること、
を特徴とする空気袋。
【請求項7】
請求項
5又は請求項
6に記載の空気袋において、
前記連通孔からの離間距離が異なる第1及び第2の前記放射リブが前記連通孔の周方向に沿って交互に配置されていること、を特徴とする空気袋。
【請求項8】
請求項1~請求項
7の何れか一項に記載の空気袋をシート表皮の内側に配置する
車両用シート装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の車両用シート装置において、
前記リブ形状部は、前記厚み方向の一方に突出して設けられるものであって、
前記空気袋は、前記リブ形状部を有した前記溶着表面が前記シート表皮側を向いた状態で該シート表皮の内側に配置されること、を特徴とする車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気袋及び車両用シート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二枚のシート材を貼り合わせてなる複数の袋部を、そのシート材の厚み方向に重ねて配置した空気袋がある。例えば、特許文献1に記載の空気袋は、シート材の厚み方向に重ねて配置された複数の袋部を有している。また、この空気袋は、その厚み方向に重ねて配置された各袋部の互いに当接するシート材間を接合する溶着接合部を備えている。そして、この溶着接合部は、その互いに当接する各シート材を貫通することにより厚み方向に重ねて配置された各袋部間を連通する連通孔と、この連通孔を囲んで放射状に並ぶ複数のリブ形状部と、を備えている。
【0003】
即ち、このような溶着接合部に設けられた連結孔を介して空気が流入する袋部においては、この袋部に空気を充填する初期段階において、その厚み方向に貼り合わされた二枚のシート材間に空気が入り込み難い傾向がある。しかしながら、上記構成によれば、その溶着接合部に設けられた各リブ形状部が、それぞれ、その周方向に隣り合う他のリブ形状部との間に、連通孔から延びる空気の流路を形成する。そして、上記従来例の空気袋は、これにより、その各袋部に対して、円滑且つ速やかに空気を充填することのできる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両等の工業製品においては、あらゆる構成部品について、常に、その更なる性能の向上が追求されている。そして、上記のような空気袋についてもまた、上記従来技術の構成が、必ずしも、その進化する要求水準を満足し得るとは言い切れないことから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より円滑に拡張させることのできる空気袋及び車両用シート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する空気袋は、二枚のシート材を貼り合わせてなるとともに該各シート材の厚み方向に重ねて配置された複数の袋部と、前記厚み方向に重ねて配置された前記各袋部の互いに当接する前記シート材間を接合する溶着接合部と、を備え、前記溶着接合部は、前記互いに当接する前記各シート材を貫通することにより前記重ねて配置された前記各袋部間を連通する連通孔と、前記連通孔の径方向外側において前記溶着接合部の溶着表面から前記厚み方向に突出するリブ形状部と、を備えるとともに、前記リブ形状部は、前記連通孔を囲む環状リブと、前記環状リブに設けられた切欠き部と、を備える。
【0008】
即ち、二枚のシート材を貼り合わせてなる複数の袋部を各シート材の厚み方向に重ねて配置する構成では、その互いに当接する一方側の各シート材に対して貼り合わされた他方側の各シート材が、それぞれ、その溶着接合部に設けられた連通孔に対向することになる。そして、これにより、例えば、空気袋内の空気が排出された全収縮状態にある場合等、この空気袋に空気を充填する際、連通孔を挟んで下流側に位置する袋部のシート材が、その厚み方向に対向する連通孔を閉塞する可能性がある。
【0009】
しかしながら、上記構成によれば、連通孔の径方向外側を囲む環状リブが、その連通孔に対向するシート材に当接することにより、このシート材と連通孔との間に隙間が形成される。そして、これにより、そのシート材による連通孔の閉塞を回避することができる。
【0010】
更に、環状リブに対してシート材が当接した状態においても、連通孔を介して上流側の袋部から下流側の袋部内に流入した空気が、その切欠き部を介して環状リブの内側から外側に流出する。そして、これにより、その連通孔を介して上流側の袋部から下流側の袋部に流れ込む空気の流路を確保することで、これらの各袋部を円滑に拡張させることができる。
【0011】
上記課題を解決する空気袋において、前記リブ形状部は、前記環状リブよりも径方向内側の位置において前記連通孔を囲んで放射状に設けられた該連通孔の径方向に延びる複数の放射リブを備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、連通孔を介して上流側の袋部から下流側の袋部内に流入した空気が、その周方向に隣り合う各放射リブの隙間に流れ込む。そして、これにより、効果的に、その連通孔を介して上流側の袋部から下流側の袋部に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0013】
上記課題を解決する空気袋において、前記切欠き部は、前記各放射リブに対して周方向にずれた位置に設けられることが好ましい。
上記構成によれば、連通孔を介して上流側の袋部から下流側の袋部内に流入した空気を、より円滑に、その切欠き部を介して環状リブの内側から外側に流出させることができる。
【0014】
上記課題を解決する空気袋は、前記各放射リブが前記環状リブよりも前記厚み方向に突出していることが好ましい。
上記構成によれば、環状リブよりも先に、各放射リブが、その連通孔に対向するシート材に当接する。そして、これにより、その連通孔に対向するシート材と環状リブとの間に隙間が形成されることで、より効果的に、その連通孔を介して上流側の袋部から下流側の袋部に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0015】
上記課題を解決する空気袋において、前記各放射リブは、径方向内側に向かって前記厚み方向の突出量が大きくなるように構成されることが好ましい。
上記構成によれば、より効果的に、その連通孔を介して上流側の袋部から下流側の袋部に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0016】
上記課題を解決する空気袋は、前記各放射リブのうちの少なくとも何れか1つが、前記連通孔から径方向に離間した位置に配置されていることが好ましい。
即ち、溶着型を用いた溶着接合部の形成時、その溶融したシート材の肉が、各放射リブを形成する溶着型の凹部から溢れる可能性がある。そして、これにより、その周方向に隣り合う各放射リブを連結するような壁部が連通孔の周縁に形成されることで、これら各放射リブの隙間に流れ込む空気の流れが遮断されてしまう可能性がある。
【0017】
しかしながら、上記のように連通孔から径方向に離間した放射リブを設けることで、少なくとも、この連通孔から離間した放射リブが設けられた周方向位置においては、溶着接合部の形成時、その周方向に隣り合う各放射リブ間を連結するような壁部が形成され難くなる。そして、これにより、その連通孔から各放射リブ間に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0018】
上記課題を解決する空気袋は、全ての前記放射リブが、前記連通孔から径方向に離間した位置に配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、効果的に、その連通孔から各放射リブ間に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0019】
上記課題を解決する空気袋は、前記連通孔からの離間距離が異なる第1及び第2の前記放射リブが前記連通孔の周方向に沿って交互に配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、第1及び第2の放射リブのうち、その連通孔からの離間距離の短い、つまりは、その径方向内側の長手方向端部が連通孔の近くに配置された一方の各放射リブの作用によって、効果的に、そのシート材による連通孔の閉塞を回避することができる。更に、連通孔からの離間距離が長い、つまりは、連通孔の周縁に径方向内側の長手方向端部を有しない他方の各放射リブの作用、換言すると、連通孔に近い径方向位置においては、上記一方の各放射リブのみが存在することにより、これら一方の各放射リブの間隔を広げることができる。そして、これにより、効果的に、その連通孔から第1及び第2の放射リブ間に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0020】
上記課題を解決する車両用シート装置は、上記何れかの空気袋をシート表皮の内側に配置する。
上記構成によれば、より円滑に、そのシート表皮の内側に配置された空気袋を拡張させることができる。
【0021】
上記課題を解決する車両用シート装置において、前記リブ形状部は、前記厚み方向の一方に突出して設けられるものであって、前記空気袋は、前記リブ形状部を有した前記溶着表面が前記シート表皮側を向いた状態で該シート表皮の内側に配置されることが好ましい。
【0022】
即ち、車両用のシート装置においては、例えば、乗員が手をついた場合等、そのシート表皮に対して局所的に大きな荷重が印加されることがある。そして、これにより、そのシート表皮の内側に配置された空気袋のシート材が押し曲げられることで、このシート材によって、その厚み方向に対向する溶着接合部の連通孔が閉塞される可能性がある。
【0023】
しかしながら、上記構成によれば、このような場合においても、そのシート表皮側を向いた溶着接合部の溶着表面に設けられたリブ形状部によって、そのシート材が連通孔を閉塞する状態を回避することができる。そして、これにより、その連通孔を介して上流側に位置する袋部から下流側に位置する袋部に流れる空気の流路を確保することで、これらの各袋部を円滑に拡張させることができる。
【0024】
また、各シートの厚み方向一方側のみにリブ形状部を突出させることで、このリブ形状部の形成が容易になる。更に、そのリブ形状部に対し、より大きな突出量を付与することが可能になる。そして、これにより、より効果的に、その連通孔を介して上流側の袋部から下流側の袋部に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、より円滑に空気袋を拡張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】シート表皮の内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図。
【
図2】シート表皮の内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、空気袋及び車両用シート装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に設けられたシートバック3と、を備えている。そして、そのシートバック3の上端には、ヘッドレスト4が設けられている。
【0028】
また、本実施形態のシート1において、シートバック3は、その両サイド部3a,3bが、それぞれ、前方に向かって膨出した形状を有している。更に、シートクッション2もまた、両サイド部2a,2bが、それぞれ、上方に向かって膨出した形状を有している。そして、本実施形態のシート1は、これにより、乗員の良好な着座姿勢を確保し及びその着座姿勢を維持することが可能になっている。
【0029】
また、このシート1には、シートクッション2及びシートバック3の内側で拡縮することにより、シート1のサポート形状を変更する複数の空気袋10が設けられている。更に、このシート1には、同じくシートクッション2及びシートバック3の内側で拡縮することにより、そのシート表皮1xを内側から押圧する複数の空気袋20が設けられている。そして、本実施形態では、これにより、そのシート1のサポート形状を変更し、及びシート1に着座する乗員に対してリフレッシュ効果を付与することが可能なシート装置30が形成されている。
【0030】
具体的には、本実施形態のシート1において、シートバック3の内側には、その背もたれ面3sの肩部、腰部及び下端部に対応する位置に、それぞれ、独立したシートサポート用の空気袋10が設けられている。尚、これら各空気袋10の配置位置は、それぞれ、ショルダ部、ランバ部、及びバックペルビス部等と、呼称されることがある。また、シートバック3の両サイド部3a,3bに対応する位置にも、それぞれ、独立したシートサポート用の空気袋10が設けられている。そして、シートクッション2についてもまた、その着座面2sにおける後端部の内側、及び両サイド部2a,2bの内側に、それぞれ、独立したシートサポート用の空気袋10が設けられている。
【0031】
更に、シートバック3の内側には、その背もたれ面3sに沿うように複数のリフレッシュ用の空気袋20が設けられている。そして、シートクッション2についてもまた、その着座面2sに沿うように複数のマッサージ用の空気袋20が設けられている。具体的には、シートバック3側の各空気袋20は、それぞれ、背もたれ面3sの上下方向に沿って二列に並んで設けられている。そして、シートクッション2側の各空気袋20も同様に、その着座面2sの前後方向に沿って二列に並んで設けられている。
【0032】
また、
図3に示すように、本実施形態のシート装置30は、これらシートサポート用の各空気袋10及び各マッサージ用の空気袋20に空気を圧送する空気ポンプ31を備えている。更に、この空気ポンプ31と各空気袋10,20との間には、給排気バルブ装置32が介在されている。そして、本実施形態のシート装置30において、これらの空気ポンプ31及び給排気バルブ装置32は、制御装置33によって、その作動が制御されている。
【0033】
具体的には、本実施形態の空気ポンプ31には、モータ34を駆動源とする電動ポンプが用いられている。更に、給排気バルブ装置32は、可撓性を有する樹脂製のエアチューブ35を介して各空気袋20及び空気ポンプ31に接続されている。即ち、本実施形態のシート装置30は、これらのエアチューブ35及び給排気バルブ装置32の内部通路によって、その各空気袋10,20と空気ポンプ31との間を連通する空気の流路(給排気流路Lo)が形成されている。そして、本実施形態の給排気バルブ装置32は、これにより、その給気バルブ36及び排気バルブ37を給排気流路Loの途中に配置する構成になっている。
【0034】
また、本実施形態の制御装置33には、シート1に設けられた操作スイッチ38に対する操作入力信号Scr、イグニッション信号Sig、或いはドアロック信号Sdl等が入力されるようになっている。そして、本実施形態の制御装置33は、これらの制御信号に基づいて、各空気袋10,20を拡縮させるべく、その空気ポンプ31及び給排気バルブ装置32の作動を制御する構成になっている。
【0035】
詳述すると、本実施形態の制御装置33は、シートサポート用の各空気袋10について、その内圧Pを検出し、及びその内圧Pの目標値を保持する。尚、この内圧目標値は、利用者が、そのシート1に設けられた操作スイッチ38を用いて最適なシートサポート形状を設定することにより更新される。そして、本実施形態の制御装置33は、車両の始動時、例えばIGオン時等に、この内圧目標値に各空気袋10の内圧Pを一致させるべく、空気ポンプ31及び給排気バルブ装置32の作動を制御することにより、そのシートサポート用の各空気袋10を拡張させる構成になっている。
【0036】
また、本実施形態の制御装置33は、予め定められた動作パターンに基づいて、その拡張状態となるマッサージ用の各空気袋20を切り替える。そして、本実施形態のシート装置30は、これにより、シート1に着座する乗員が所望のリフレッシュ効果を得られるようになっている。
【0037】
(リフレッシュ用の空気袋)
次に、本実施形態のシート装置30におけるリフレッシュ用の空気袋20について、その構成を説明する。
【0038】
図4~
図6に示すように、本実施形態のシート装置30において、リフレッシュ用の各空気袋20は、それぞれ、二枚のシート材40,40を貼り合わせてなる複数の袋部50を有している。具体的には、本実施形態の空気袋20は、その袋部50として、第1袋部51及び第2袋部52を有している。更に、この空気袋20は、これらの第1袋部51及び第2袋部52が、各シート材40の厚み方向に重ねて配置された構成を有している。そして、本実施形態の空気袋20は、これにより、その各シート材40の厚み方向に大きく拡張する構成となっている。
【0039】
詳述すると、
図4に示すように、本実施形態の空気袋20において、第1袋部51及び第2袋部52は、それぞれ、その各シート材40の厚み方向から見た平面視において略矩形状の外形を有している。更に、本実施形態の空気袋20においては、その第1袋部51の方が第2袋部52よりも大きな矩形形状を有している。そして、
図5に示すように、本実施形態のシート装置30は、その第2袋部52をシート表皮1x側に向けた状態で、このシート表皮1xの内側に各空気袋20を配置する構成になっている。
【0040】
また、
図4に示すように、本実施形態の空気袋20において、各袋部50を構成するシート材40には、可撓性を有した樹脂素材が用いられている。そして、本実施形態の各袋部50は、それぞれ、その厚み方向に重ねられた各シート材40,40の周縁部を互いに溶着することにより形成されている。
【0041】
尚、これら各シート材40,40の溶着には、例えば、高周波溶着が用いられる。そして、
図4中には、ハッチングによって、その各シート材40,40の周縁部に設けられた溶着部α,βが示されている。
【0042】
また、
図5及び
図6に示すように、本実施形態の空気袋20は、その各シート材40の厚み方向に重ねて配置された第1袋部51及び第2袋部52の互いに当接するシート材40a,40b間を接合する溶着接合部60を備えている。更に、この溶着接合部60は、これらの各シート材40a,40bを貫通することにより第1袋部51及び第2袋部52を連通する連通孔65を有している。そして、本実施形態の空気袋20は、この溶着接合部60に設けられた連通孔65を介して、その第1袋部51及び第2袋部52内に充填された空気が、これら第1袋部51と第2袋部52との間を流通する構成になっている。
【0043】
具体的には、
図4に示すように、本実施形態の空気袋20は、その第1袋部51を構成する各シート材40,40の熱溶着時、これらの各シート材40,40間に挟み込まれるかたちで第1袋部51の内部空間に一端が挿入された略円筒状のエアチューブ67を有している。尚、本実施形態の空気袋20において、第1袋部51は、その矩形形状の一辺を延長するかたちで設けられた延長部68を有しており、エアチューブ67は、この延長部68の先端部分に設けられている。そして、本実施形態の空気袋20は、このエアチューブ67を給排気流路Loに用いる構成になっている。
【0044】
即ち、本実施形態の空気袋20において、エアチューブ67を介して第1袋部51内に流入した空気は、その溶着接合部60に設けられた連通孔65を介して第2袋部52内に流入する。そして、本実施形態の空気袋20は、これにより、その第1袋部51及び第2袋部52が拡張する構成になっている。
【0045】
また、本実施形態の空気袋20は、そのエアチューブ67を介して第1袋部51内の空気を外部に排出する。更に、第2袋部52内に充填された空気もまた、溶着接合部60に設けられた連通孔65を介して第1袋部51内に流出することにより、エアチューブ67を介して外部に排出される。そして、本実施形態の空気袋20は、これにより、その第1袋部51及び第2袋部52が収縮する構成になっている。
【0046】
さらに詳述すると、
図7~
図9に示すように、本実施形態の溶着接合部60は、各シート材40の厚み方向から見た平面視において略円形状の外形を有している。また、この溶着接合部60は、その円形状の中心部分に連通孔65を有している。更に、この溶着接合部60は、その第1袋部51内(
図7及び
図9中、下側)に臨む溶着表面Sa、及び第2袋部52内(同図中、上側)に臨む溶着表面Sbのうち、その第2袋部52側の溶着表面Sbから各シート材40の厚み方向に突出するリブ形状部70を有している。そして、本実施形態の溶着接合部60は、この連通孔65の径方向外側に設けられたリブ形状部70によって、その連通孔65を介して上流側の第1袋部51から下流側の第2袋部52に流れ込む空気の流路を確保する構成になっている。
【0047】
具体的には、本実施形態のリブ形状部70は、略円環状の外形を有して連通孔65の径方向外側を囲む環状リブ71と、この環状リブ71よりも径方向内側の位置において、その連通孔65を囲んで放射状に設けられた複数の放射リブ72と、を備えている。本実施形態のリブ形状部70において、各放射リブ72は、連通孔65の径方向外側において、その径方向に延びる略直線形状を有している。更に、本実施形態のリブ形状部70は、その連通孔65の周方向に均等角度間隔で設けられた八本の放射リブ72を備えている。そして、本実施形態のリブ形状部70は、これらの各放射リブ72に対して周方向にずれた位置において、その環状リブ71の周方向に均等角度間隔で設けられた4つの切欠き部73を備えている。
【0048】
即ち、本実施形態の溶着接合部60は、連通孔65を介して第1袋部51側から第2袋部52内に流入した空気が、その周方向に隣り合う各放射リブ72の隙間に流れ込むように構成されている。そして、本実施形態の空気袋20は、これにより、例えば、この空気袋20内の空気が排出された全収縮状態にある場合においても、円滑に、その第1袋部51に充填された空気が連通孔65を介して第2袋部52内に流入する構成になっている。
【0049】
また、本実施形態の空気袋20は、その互いに当接する各シート材40a,40bに貼り合わされることにより第1袋部51及び第2袋部52を構成する各シート材40c,40dが、それぞれ、その溶着接合部60に設けられた連通孔65に対し、各シート材40の厚み方向に対向する構成になっている。このため、例えば、空気袋20が全収縮状態にある場合等、この空気袋20に空気を充填する際、連通孔65を挟んで下流側に位置する第2袋部52側のシート材40dが、その厚み方向に対向する連通孔65を閉塞する可能性がある。そして、これにより、その第1袋部51及び第2袋部52の円滑な拡張が妨げられるおそれがある。
【0050】
即ち、例えば、全収縮状態から空気袋20を拡張させる際、その第2袋部52のシート材40dが連通孔65を閉塞することで、この空気袋20は、そのエアチューブ67を介して空気が流入する第1袋部51のみが拡張しやすい状態になる。そして、この状態は、その後、第1袋部51内の空気圧が、その第2袋部52側のシート材40dを連通孔65に押し付ける力、つまりは外気圧を上回るまで維持される。
【0051】
更に、連通孔65を閉塞していたシート材40dが脱離する際には、その第1袋部51から大量の空気が第2袋部52に流れ込むことになる。そして、これにより、その第2袋部52が急峻に拡張することで、音が発生する可能性がある。
【0052】
この点を踏まえ、本実施形態の溶着接合部60は、連通孔65の径方向外側を囲む環状リブ71が、その連通孔65に対向するシート材40dに当接することで、このシート材40dと連通孔65との間に隙間が形成されるように構成されている。そして、本実施形態の空気袋20は、これにより、そのシート材40dによる連通孔65の閉塞を回避する構成になっている。
【0053】
更に、本実施形態の溶着接合部60は、環状リブ71にシート材40dが当接した状態においても、連通孔65を介して第2袋部52内に流入した空気が、その各切欠き部73を介して環状リブ71の内側から外側に流出するように構成されている。そして、本実施形態の空気袋20は、これにより、その連通孔65を介して上流側の第1袋部51から下流側の第2袋部52に流れ込む空気の流路を確保することで、これらの第1袋部51及び第2袋部52を円滑に拡張させることが可能になっている。
【0054】
さらに詳述すると、
図10及び
図11に示すように、本実施形態のシート装置30は、上記のような構成を有する複数の空気袋20を一体に成形してなるリフレッシュ用の空気袋ASSY75を備えている。
【0055】
具体的には、本実施形態のシート装置30において、この空気袋ASSY75は、3つの空気袋20を一体化したサブASSY77と2つの空気袋20を一体化したサブASSY78との組み合わせにより形成されている。また、これらの各サブASSY77,78は、それぞれ、各空気袋20の第1袋部51を構成する二枚のシート材40a,40cのうち、上記連通孔65を有した溶着接合部60が形成される一方のシート材40aを一体化したシート材80aと、他方側のシート材40cを一体化したシート材80cと、を備えている。即ち、本実施形態のシート装置30においては、これらのシート材80aとシート材80cとを厚み方向に重ねて熱溶着することにより、その各サブASSY77,78を構成する各空気袋20の第1袋部51が形成されている。そして、本実施形態の各サブASSY77,78は、それぞれ、その一方のシート材80aに対し、一体に設ける各空気袋20の数に対応した組数、その第2袋部52を構成するシート材40b,40dが積層された構成になっている。
【0056】
また、本実施形態のシート装置30においては、このような空気袋ASSY75が、シートクッション2とシートバック3、及びシート1の左右に分かれて設定された配置区分ごとに形成されている。尚、本実施形態のシート装置30において、シートバック3に設定された左右の配置区分には、それぞれ、上記サブASSY77,78を直列に連結することにより5個の空気袋20を有した空気袋ASSY75aが配置される。そして、シートクッション2に設定された左右の配置区分には、それぞれ、3個の空気袋20を有したサブASSY77が、その空気袋ASSY75として配置される構成になっている。
【0057】
更に、本実施形態のシート装置30において、各空気袋ASSY75は、それぞれ、各空気袋20の第2袋部52をシート表皮1xに向けた状態で、その対応する上記各区分に配置される。そして、本実施形態のシート装置30は、これにより、そのリブ形状部70が設けられた溶着接合部60における一方の溶着表面Sbをシート表皮1xに向けた状態で、このシート表皮1xの内側に各空気袋20を配置する構成になっている。
【0058】
即ち、車両のシート1には、例えば、着座面2sや背もたれ面3sに乗員が手をついた場合等、そのシート表皮1xに対して局所的に大きな荷重が印加されることがある。そして、これにより、そのシート表皮1xの内側に配置された空気袋20のシート材40dが押し曲げられることで、このシート材40dによって、その厚み方向に対向する溶着接合部60の連通孔65が閉塞される可能性がある。
【0059】
しかしながら、本実施形態のシート装置30においては、このような場合においても、そのシート表皮1x側を向いた溶着表面Sbに設けられたリブ形状部70によって、そのシート材40dによる連通孔65の閉塞が回避される。そして、本実施形態のシート装置30は、これにより、その連通孔65を挟んで上流側に位置する第1袋部51から下流側に位置する第2袋部52に流れる空気の流路を確保することで、各空気袋20が円滑に拡張する構成になっている。
【0060】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)空気袋20は、二枚のシート材40,40を貼り合わせてなるとともに各シート材40の厚み方向に重ねて配置された第1袋部51及び第2袋部52と、これら第1袋部51及び第2袋部52の互いに当接するシート材40a,40b間を接合する溶着接合部60と、を備える。また、この溶着接合部60は、その互いに当接する各シート材40a,40bを貫通することにより第1袋部51及び第2袋部52間を連通する連通孔65と、この連通孔65の径方向外側において溶着接合部60の溶着表面Sbから各シート材40の厚み方向に突出するリブ形状部70と、を備える。そして、このリブ形状部70は、その連通孔65を囲む環状リブ71と、この環状リブ71に設けられた切欠き部73と、を備える。
【0061】
即ち、二枚のシート材40,40を貼り合わせてなる第1袋部51及び第2袋部52を各シート材40の厚み方向に重ねて配置する構成では、その互いに当接する一方側の各シート材40a,40bに貼り合わされた他方側の各シート材40c,40dが、それぞれ、その溶着接合部60に設けられた連通孔65に対向することになる。そして、これにより、例えば、空気袋20内の空気が排出された全収縮状態にある場合等、この空気袋20に空気を充填する際、連通孔65を挟んで下流側に位置する第2袋部52側のシート材40dが、その厚み方向に対向する連通孔65を閉塞する可能性がある。
【0062】
しかしながら、上記構成によれば、連通孔65の径方向外側を囲む環状リブ71が、その連通孔65に対向するシート材40dに当接することにより、このシート材40dと連通孔65との間に隙間が形成される。そして、これにより、そのシート材40dによる連通孔65の閉塞を回避することができる。
【0063】
更に、環状リブ71に対してシート材40dが当接した状態においても、連通孔65を介して第2袋部52内に流入した空気が、その切欠き部73を介して環状リブ71の内側から外側に流出する。そして、これにより、その連通孔65を介して上流側の第1袋部51から下流側の第2袋部に流れ込む空気の流路を確保することで、これらの第1袋部51及び第2袋部52を円滑に拡張させることができる。
【0064】
(2)リブ形状部70は、環状リブ71よりも径方向内側の位置において、その連通孔65を囲んで放射状に設けられた径方向に延びる複数の放射リブ72を備える。
上記構成によれば、連通孔65を介して第1袋部51側から第2袋部52内に流入した空気が、周方向に隣り合う各放射リブ72の隙間に流れ込む。そして、これにより、効果的に、その連通孔65を介して上流側の第1袋部51から下流側の第2袋部52に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0065】
(3)切欠き部73は、各放射リブ72に対して周方向にずれた位置に設けられる。
上記構成によれば、連通孔65を介して第1袋部51側から第2袋部52内に流れ込む空気を、より円滑に、その切欠き部73を介して環状リブ71の内側から外側に流出させることができる。
【0066】
(4)リブ形状部70は、各シート材40の厚み方向一方側に突出して設けられる。そして、車両用のシート装置30は、そのリブ形状部70を有した溶着接合部60における一方の溶着表面Sbが、シート表皮1x側を向いた状態で、このシート表皮1xの内側に空気袋20を配置する。
【0067】
即ち、車両のシート1においては、例えば、乗員が手をついた場合等、そのシート表皮1xに対して局所的に大きな荷重が印加されることがある。そして、これにより、そのシート表皮1xの内側に配置された空気袋20のシート材40dが押し曲げられることで、このシート材40dによって、その厚み方向に対向する溶着接合部60の連通孔65が閉塞される可能性がある。
【0068】
しかしながら、上記構成によれば、このような場合においても、シート表皮1x側を向いた溶着表面Sbに設けられたリブ形状部70によって、そのシート材40dが連通孔65を閉塞する状態を回避することができる。そして、これにより、その連通孔65を介して上流側の第1袋部51から下流側の第2袋部52に流れ込む空気の流路を確保することで、これらの第1袋部51及び第2袋部52を円滑に拡張させることができる。
【0069】
また、各シート材40の厚み方向一方側のみにリブ形状部70を突出させることで、このリブ形状部70の形成が容易になる。更に、そのリブ形状部70に対し、より大きな突出量を付与することが可能になる。そして、これにより、より効果的に、その連通孔65を介して上流側の第1袋部51から下流側の第2袋部52に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0070】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0071】
・上記実施形態では、リブ形状部70は、環状リブ71と、この環状リブ71の径方向内側に設けられた八本の放射リブ72と、を備える。そして、環状リブ71には、これらの各放射リブ72に対して周方向にずれた位置において、その環状リブ71の周方向に均等角度間隔で4つの切欠き部73が設けられることとした。しかし、これに限らず、切欠き部73の数、及び形成位置は、任意に変更してもよい。例えば、切欠き部73の数は、一つでもよい。また、放射リブ72の数に依らず、任意に設定してもよい。そして、各放射リブ72が設けられた周方向位置に重複して、その切欠き部73が配置される構成であってもよい。
【0072】
・また、
図12に示す溶着接合部60Bのリブ形状部70Bのように、各放射リブ72Bが環状リブ71よりも各シート材40の厚み方向に突出した構成としてもよい。即ち、このように、そのリブ形状部70Bが設けられた溶着表面Sbを基準とした各放射リブ72Bの突出量Hを大きくすることで、環状リブ71よりも先に、これらの各放射リブ72Bが、その連通孔65に対向するシート材40dに当接する。そして、これにより、このシート材40dと環状リブ71との間に隙間が形成されることで、より効果的に、その連通孔65を介して上流側の第1袋部51から下流側の第2袋部52に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0073】
・更に、
図13に示す溶着接合部60Cのリブ形状部70Cのように、径方向内側に向かって各放射リブ72Cの突出量Hが大きくなるように構成してもよい。そして、これにより、より効果的に、その連通孔65を介して上流側の第1袋部51から下流側の第2袋部52に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0074】
・また、放射リブ72の数や形状は、任意に変更してもよい。
例えば、
図14に示す溶着接合部60Dのリブ形状部70Dのように、4本の放射リブ72を略均等角度間隔で十字状に配置してもよい。
【0075】
・更に、
図15に示す溶着接合部60Eのリブ形状部70Eのように、各放射リブ72Eを周方向に拡幅して、略扇状の外形を有するものとしてもよい。
・各放射リブ72の配置についてもまた、任意に変更してもよい。必ずしも、周方向に等間隔に配置されていなくてもよい。そして、そのリブ形状部70が、放射リブ72を有しない構成であってもよい。
【0076】
・また、各放射リブ72のうちの少なくとも何れか1つが、連通孔65から径方向に離間した位置に配置された構成としてもよい。
例えば、
図16に示す溶着接合部60Fのリブ形状部70Fは、径方向における連通孔65からの離間距離Dが異なる第1及び第2の放射リブ72Fa,72Fbが、その連通孔65の周方向に沿って交互に配置された構成を有している。
【0077】
具体的には、このリブ形状部70Fは、上記第1の実施形態における放射リブ72と略等しい形状を有した第1の放射リブ72Faと、この第1の放射リブ72Faよりも連通孔65から離間した位置に配置された第2の放射リブ72Fbと、を有している。第1の放射リブ72Faは、その連通孔65からの離間距離Dが略ゼロ(D≒0)、即ち連通孔65の周縁に、その径方向内側の長手方向端部を配置する構成となっている。また、第2の放射リブ72Fbは、第1の放射リブ72Faと同様、直線状に延びる突条形状を有するとともに、その径方向の長さLが第1の放射リブ72Faよりも短く設定されている。更に、第2の放射リブ72Fbは、その第1の放射リブ72Faに対する長さLの違いに相当する離間距離D、連通孔65から径方向に離間した位置に配置されている。そして、この別例のリブ形状部70Fは、これら第1及び第2の放射リブ72Fa,72Fbを、それぞれ、4本ずつ、その連通孔65の周方向に沿って交互に配置した構成となっている。
【0078】
即ち、図示しない溶着型を用いた溶着接合部60の形成時、その溶融したシート材42bの肉が、各放射リブ72を形成する溶着型の凹部から溢れる可能性がある。そして、これにより、その周方向に隣り合う各放射リブ72を連結するような壁部が連通孔65の周縁に形成されることで、これら各放射リブ72の隙間に流れ込む空気の流れが遮断されてしまう可能性がある。
【0079】
しかしながら、上記のように連通孔65から径方向に離間した第2の放射リブ72Fbを設けることで、少なくとも、この第2の放射リブ72Fbが設けられた周方向位置においては、溶着接合部60の形成時、その周方向に隣り合う第1及び第2の放射リブ72Fa,72Fb間を連結するような壁部が形成され難くなる。そして、これにより、その連通孔65から第1及び第2の放射リブ72Fa,72Fb間に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0080】
特に、連通孔65からの離間距離Dが異なる第1及び第2の放射リブ72Fa,72Fbを交互に配置することで、その連通孔65からの離間距離Dが短い、つまりは径方向内側の長手方向端部が連通孔65の近くに配置された第1の各放射リブ72Faの作用によって、効果的に、そのシート材40dによる連通孔65の閉塞を回避することができる。更に、連通孔65からの離間距離Dが長い、つまりは、連通孔65の周縁に径方向内側の長手方向端部を有しない第2の各放射リブ72Fbの作用により、連通孔65の周縁においては、その周方向に隣り合う第1の各放射リブ72Faの間隔を広げることができる。そして、これにより、効果的に、その連通孔65から第1及び第2の放射リブ72Fa,72Fb間に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0081】
・また、
図17に示す溶着接合部60Gのリブ形状部70Gのように、全ての放射リブ72Gが、連通孔65から径方向に離間した位置に配置されている構成であってもよい。このような構成を採用しても、効果的に、その連通孔65から各放射リブ72G間に流れ込む空気の流路を確保することができる。
【0082】
・更に、径方向に延在する各放射リブ72の長さL、及び、その連通孔65からの離間距離Dについては、任意に設定してもよい。例えば、
図16に示す上記リブ形状部70Fにおいて、その第1の放射リブ72Faが連通孔65から離間した位置に配置されていてもよい。
【0083】
・上記実施形態では、空気袋20を拡張させる際、連通孔65を挟んで第1袋部51が上流側に位置し、第2袋部52が下流側に位置することとしたが、第2袋部52が上流側に位置し、第1袋部51が下流側に位置する構成に適用してもよい。そして、この場合には、下流側となる第1袋部51内に臨む溶着表面Sa側にリブ形状部70を設けるとよい。
【0084】
・また、上記実施形態では、各シート材40の厚み方向一方側のみにリブ形状部70を突出させることとしたが、その厚み方向の両側にリブ形状部70が突出する構成、つまりは、その第1袋部51内に臨む溶着表面Sa及び第2袋部52内に臨む溶着表面Sbの両方にリブ形状部70が設けられる構成であってもよい。
【0085】
・上記実施形態では、空気袋20は、各シート材40の厚み方向に重ねて配置された第1袋部51及び第2袋部52を有することとしたが、3つ以上の袋部50を各シート材40の厚み方向に重ねて配置する構成に適用してもよい。即ち、この場合、その厚み方向に重ねて配置された各袋部50の互いに当接するシート材40,40の各組について、それぞれ、その溶着接合部60を設ける。そして、この場合、各シート材40の厚み方向から見た平面視において、これらの各溶着接合部60を重複して配置する構成であっても、互いに異なる位置に配置する構成であってもよい。
【0086】
・空気袋20の各袋部50を構成する各シート材40の材質や形状、或いは、その貼り合わせ方法については任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、車両のシート1に設けられたシート装置30を構成するリフレッシュ用の空気袋20に具体化したが、シートサポート用の空気袋10に適用してもよい。そして、シート装置30以外の用途に用いられる空気袋に適用してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…シート、1x…シート表皮、2…シートクッション、2a,2b…サイド部、2s…着座面、3…シートバック、3a,3b…サイド部、3s…背もたれ面、4…ヘッドレスト、10,20…空気袋、30…シート装置、31…空気ポンプ、32…給排気バルブ装置、33…制御装置、34…モータ、35…エアチューブ、36…給気バルブ、37…排気バルブ、38…操作スイッチ、40,40a,40b,40c,40d…シート材、50…袋部、51…第1袋部、52…第2袋部、60,60B,60C…溶着接合部、65…連通孔、67…エアチューブ、68…延長部、70,70B,70C…リブ形状部、71…環状リブ、72,72B,72C…放射リブ、73…切欠き部、75,75a…空気袋ASSY、77,78…サブASSY、80a,80c…シート材、Sa,Sb…溶着表面、H…突出量、α,β…溶着部、Lo…給排気流路、P…内圧、Scr…操作入力信号、Sdl…ドアロック信号、Sig…イグニッション信号。