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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】カップ式自動販売機
(51)【国際特許分類】
   G07F 13/06 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G07F13/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020089853
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184205
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 洋平
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038624(JP,A)
【文献】特開2001-167350(JP,A)
【文献】特開2002-245537(JP,A)
【文献】特開平10-208143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 13/00 - 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップに対して進退移動する態様で昇降可能に設けられた撹拌部材を有し、前記カップの内部に進出移動した前記撹拌部材をその中心軸回りに回転させることにより該カップの内容物を撹拌する撹拌機構を備え、
前記カップの内部に飲料を生成して提供するカップ式自動販売機であって、
投入されたホイップクリーム用原料と湯水とを撹拌させてホイップクリームを製造する専用のミキシングボウルと、
前記ホイップクリームが層状に乗せられたホイップクリーム入り飲料の生成指令が与えられた場合に、前記カップに粉末状の砂糖を投入してから前記ミキシングボウルで製造したホイップクリームを該カップに投入し、その後に該カップにコーヒー飲料を投入してから前記撹拌機構により前記粉末状の砂糖と前記コーヒー飲料とを撹拌させてホイップクリーム入り飲料を生成する制御部と
を備えたことを特徴とするカップ式自動販売機。
【請求項2】
前記撹拌部材は、上下方向に沿って延在するロッドの下端部に撹拌翼が形成されて構成され、かつ前記撹拌翼が前記カップの底面の近傍に配置される態様で前記進出移動するものであり、
前記制御部は、前記カップに前記コーヒー飲料を投入した後に前記撹拌部材を前記進出移動させて前記撹拌機構により撹拌させることを特徴とする請求項1に記載のカップ式自動販売機。
【請求項3】
前記制御部は、前記ホイップクリーム入り飲料の生成指令が与えられた場合に、前記撹拌機構に対し、その他の飲料の生成時に対して1/3以下の回転数で前記撹拌部材を回転させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカップ式自動販売機。
【請求項4】
前記制御部は、前記撹拌部材を1000rpm以下の回転数で回転させることを特徴とする請求項3に記載のカップ式自動販売機。
【請求項5】
前記ミキシングボウルは、前記撹拌部材が昇降可能に配設された個所に隣接する態様で配置されたことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のカップ式自動販売機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ式自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カップを通じて飲料を提供するカップ式自動販売機においては、高機能化や嗜好の多様化に伴い、例えばカプチーノ等のホイップクリームが層状に乗せられたコーヒー飲料(ホイップクリーム入り飲料)をカップに生成して提供するものが知られている。
【0003】
すなわち、カップに砂糖及びホイップクリーム用原料を投入した後に湯水を投入し、これら砂糖、ホイップクリーム用原料及び湯水を撹拌部材で撹拌してホイップクリームを製造し、これと並行してミキシングボウル内にコーヒー原料と湯水とを供給し、これらコーヒー原料及び湯水を撹拌してコーヒー飲料を製造し、コーヒー飲料をカップに投入してカプチーノを生成するものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3265213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に提案されているカップ式自動販売機では、カップにて砂糖、ホイップクリーム用原料及び湯水を撹拌部材で撹拌してホイップクリームを製造しているため、次のような問題があった。
【0006】
カプチーノを生成する場合、ホイップクリームは、コーヒー飲料に比べて少量でよく、その量はコーヒー飲料の1/4程度である。しかしながら、上述したカップ式自動販売機では、ホイップクリームを製造する際に砂糖を溶解させる必要があるため、砂糖を溶解させるのに十分な量の湯水をカップに投入して撹拌する必要があった。そのため、コーヒー飲料に対してホイップクリームの量が過多となる見栄えの悪いカプチーノを提供することとなり、良好なホイップクリーム入り飲料を生成することが困難であった。
【0007】
これに対し、カップに砂糖、コーヒー原料及び湯水を投入してこれら砂糖、コーヒー原料及び湯水を撹拌部材で撹拌し、これと並行してミキシングボウル内にホイップクリーム用原料と湯水とを供給し、これらホイップ用原料及び湯水を撹拌してホイップクリームを製造し、ホイップクリームをカップに投入してカプチーノを生成することも考えられるが、カップに投入されたホイップクリームがコーヒー飲料に溶解してしまい、結果的に、良好なホイップクリーム入り飲料を生成することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、良好なホイップクリーム入り飲料を生成することができるカップ式自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るカップ式自動販売機は、カップに対して進退移動する態様で昇降可能に設けられた撹拌部材を有し、前記カップの内部に進出移動した前記撹拌部材をその中心軸回りに回転させることにより該カップの内容物を撹拌する撹拌機構を備え、前記カップの内部に飲料を生成して提供するカップ式自動販売機であって、投入されたホイップクリーム用原料と湯水とを撹拌させてホイップクリームを製造する専用のミキシングボウルと、前記ホイップクリームが層状に乗せられたホイップクリーム入り飲料の生成指令が与えられた場合に、前記カップに粉末状の砂糖を投入してから前記ミキシングボウルで製造したホイップクリームを該カップに投入し、その後に該カップにコーヒー飲料を投入してから前記撹拌機構により前記粉末状の砂糖と前記コーヒー飲料とを撹拌させてホイップクリーム入り飲料を生成する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記カップ式自動販売機において、前記撹拌部材は、上下方向に沿って延在するロッドの下端部に撹拌翼が形成されて構成され、かつ前記撹拌翼が前記カップの底面の近傍に配置される態様で前記進出移動するものであり、前記制御部は、前記カップに前記コーヒー飲料を投入した後に前記撹拌部材を前記進出移動させて前記撹拌機構により撹拌させることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記カップ式自動販売機において、前記制御部は、前記ホイップクリーム入り飲料の生成指令が与えられた場合に、前記撹拌機構に対し、その他の飲料の生成時に対して1/3以下の回転数で前記撹拌部材を回転させることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記カップ式自動販売機において、前記制御部は、前記撹拌部材を1000rpm以下の回転数で回転させることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記カップ式自動販売機において、前記ミキシングボウルは、前記撹拌部材が昇降可能に配設された個所に隣接する態様で配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、投入されたホイップクリーム用原料と湯水とを撹拌させてホイップクリームを製造する専用のミキシングボウルを備え、制御部が、ホイップクリームが層状に乗せられたホイップクリーム入り飲料の生成指令が与えられた場合に、カップに粉末状の砂糖を投入してからミキシングボウルで製造したホイップクリームを該カップに投入し、その後に該カップにコーヒー飲料を投入してから撹拌機構により粉末状の砂糖とコーヒー飲料とを撹拌させてホイップクリーム入り飲料を生成するので、砂糖をコーヒー飲料に溶解させつつホイップクリームの形状を維持することができ、良好なホイップクリーム入り飲料を生成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態であるカップ式自動販売機の概要を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施の形態であるカップ式自動販売機の概要を示す正面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態であるカップ式自動販売機の概要を示す正面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態であるカップ式自動販売機の内部構成を示す正面図である。
図5図5は、カップにホイップクリーム入り飲料を生成する手順を示す説明図である。
図6図6は、カップにホイップクリーム入り飲料を生成する手順を示す説明図である。
図7図7は、カップにホイップクリーム入り飲料を生成する手順を示す説明図である。
図8図8は、カップにホイップクリーム入り飲料を生成する手順を示す説明図である。
図9図9は、カップにホイップクリーム入り飲料を生成する手順を示す説明図である。
図10図10は、カップにホイップクリーム入り飲料を生成する手順を示す説明図である。
図11図11は、カップにホイップクリーム入り飲料を生成する手順を示す説明図である。
図12図12は、カップにホイップクリーム入り飲料を生成する手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るカップ式自動販売機の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1図4は、それぞれ本発明の実施の形態であるカップ式自動販売機の概要を示すもので、図1は模式図、図2及び図3は正面図、図4は内部構成を示す正面図である。ここで例示するカップ式自動販売機1は、機器筐体2の内部に制御部R、カップ供給機構C、飲料生成装置ISを備えるとともに、前面扉3に取出口機構S、操作ユニットU、入金処理装置Vを備えて構成されたものである。
【0018】
制御部Rは、図示せぬ記憶部に記憶されたプログラムやデータにしたがってカップ式自動販売機1の各部の動作を統括的に制御するものである。尚、制御部Rは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア及びハードウェアを併用して実現してもよい。
【0019】
取出口機構Sは、前面扉3の下方部に設けた取出口4の近傍に設けられ、該取出口4を開閉する態様で揺動する取出口扉S10を動作するための機構である。このカップ式自動販売機1では、入金処理装置Vによって現金やプリペイドカードによる入金が確認され、かつ操作ユニットUを通じて飲料の選択を行うと、制御部Rからの指令によりカップ供給機構C及び飲料生成装置ISが関連して動作し、所望の飲料がカップWに入れられた状態で提供される。提供された飲料は、取出口機構Sにより開く方向に揺動した取出口扉S10により開成された取出口4を通じて機外に取り出すことが可能となる。
【0020】
図2及び図3に示すように、前面扉3には、上部の見やすく操作のしやすい位置に操作ユニットUが設けられている。操作ユニットUには、提供する飲料の名称やイメージ等の表示とともに対応する操作入力部U1が設けられている。操作入力部U1としては、タッチパネルや押しボタンスイッチを用いることができる。前面扉3の略中央部分には、操作しやすい位置に取出口4が設けられている。取出口4は、飲料の入ったカップWを機外に取り出すための開口である。取出口4に隣接する部位には、入金処理装置Vが設けられている。入金処理装置Vは、金銭表示器V1、硬貨投入口V2、硬貨返却レバーV3、紙幣挿入口V4、硬貨返却口V5等々、利用者との間で金銭の授受を行う部分である。
【0021】
前面扉3の後面周縁部には、図には明示しないが、全周にわたって扉ガスケットが設けられている。扉ガスケットは、扉を閉じた場合に適宜弾性変形することにより機器筐体2に対して圧接され、前面扉3と機器筐体2との間の隙間を密封した状態となるため、機器筐体2の内部に昆虫や塵埃等の異物が進入するのを防止することができる。
【0022】
カップ供給機構Cは、機器筐体2の内部に複数のカップWを収納する一方、飲料を販売する都度飲料生成装置ISに個別にカップWを供給するものである。カップWは、開口を上に向けた状態で多数積み重ねたカップ列となった状態で収納されている。
【0023】
飲料生成装置ISは、原料供給機構D、リザーバE、塩素発生器B、温水タンクF、製氷機G、カップ搬送機構H、撹拌機構J、ミルK、ブリュア機構L、ミキシングボウルM、冷却ユニットN、シロップ供給機構P、カーボネータQ、排水機構Aを備えている。
【0024】
原料供給機構Dは、従来公知のものであり、キャニスタD11に貯留した飲料の原料、例えばインスタントコーヒー、ココア、砂糖等の粉末原料を所定量ずつシュートD12に吐出し、さらにシュートD12からカップWに払い出すようにしたものである。
【0025】
リザーバEは、飲料を生成する際に必要となる飲料水を機器筐体2の内部に貯留する一方、温水タンクF、製氷機G、カーボネータQ等の飲料水が必要となる機構部や、調理位置に搬送されたカップWに対して適宜飲料水を供給するものである。このリザーバEは、機器筐体2に設置された給水タンクE11から供給された飲料水を貯留するものである。
【0026】
塩素発生器Bは、リザーバEに貯留した飲料水を電気分解して塩素殺菌する装置である。塩素発生器Bによる塩素殺菌法は、飲料水に含まれている塩素イオン(塩素イオン自身には殺菌能力はない)を有効利用し、飲料水を電気分解することにより塩素イオンを陽極酸化して塩素を発生させ、この塩素を水中に溶存させて飲料水を殺菌する方法である。
【0027】
温水タンクFは、リザーバEから供給された飲料水によって湯を生成し、これを貯留する一方、ブリュア機構Lや、調理位置に搬送されたカップWに対して適宜湯を供給するものである。製氷機Gは、リザーバEから供給された飲料水によって氷を生成し、これを貯留する一方、図示せぬ氷供給通路を通じてカップWに適宜氷を供給するものである。
【0028】
カップ搬送機構Hは、カップ供給機構Cより供給されたカップWを、各種の受取位置を経由して調理位置に搬送した後、取出口機構Sに臨む販売位置に搬送するものである。カップ搬送機構Hは、例えば機器筐体2の内部において原料供給機構Dの下方に設けられる。カップ搬送機構Hは、カップ式自動販売機1の正面視で左右方向であるX方向と、奥行き方向であるY方向と、高さ方向であるZ方向の3軸動作が可能である。仕様によってはZ方向の機構を省略したXYの2軸動作機構に構成することもできる。
【0029】
ここで受取位置としては、例えばインスタントコーヒーやココア等の粉末原料を受け取る粉末原料受取位置や、粉末状の砂糖を受け取る砂糖受取位置等がある。粉末原料受取位置は、インスタントコーヒー等を貯留するキャニスタD11に接続されたシュートD12の下方部位であり、砂糖受取位置は、砂糖を貯留するキャニスタD11に接続されたシュートD12の下方部位である。
【0030】
撹拌機構Jは、撹拌部材J1、回転駆動部J2及び昇降駆動部J3を備えて構成されている。撹拌部材J1は、ロッドJ11及び撹拌翼J12を有している(図9等参照)。ロッドJ11は、上下方向に沿って延在する長尺状部材である。撹拌翼J12は、ロッドJ11の下端部において、該ロッドJ11の径方向外部に向けて放射状に延在する態様で形成されている。この撹拌部材J1は、良好な飲料撹拌性能を発揮するとともに撹拌時の飲料飛散を防止する形状となっている。
【0031】
回転駆動部J2は、図には明示しないが、ロッドJ11の上端部に取り付けられている。この回転駆動部J2は、駆動する場合に、撹拌部材J1をロッドJ11の中心軸回りに回転させるものである。昇降駆動部J3は、機器筐体2に対して撹拌部材J1を回転駆動部J2とともに昇降させるためのものである。具体的に説明すると、昇降駆動部J3は、機器筐体2に取り付けられており、回転することにより撹拌部材J1を回転駆動部J2とともに待機高さから撹拌高さに下降させ、撹拌高さから待機高さに上昇させるように機能する。つまり、撹拌機構Jは、カップWに対して、撹拌部材J1を進退移動する態様で昇降させるものである。
【0032】
また撹拌機構Jは、待機高さ検出スイッチJ4、撹拌高さ検出スイッチJ5、湯ノズル(図示せず)、コーヒー供給ノズルJ6(図7等参照)を有している。
【0033】
待機高さ検出スイッチJ4は、例えばマイクロスイッチ等により構成されており、撹拌部材J1が待機高さに配置されている場合にオンとなることにより、撹拌部材J1が待機高さに位置しているか否かを検出するものである。
【0034】
撹拌高さ検出スイッチJ5は、例えば光センサ等により構成されており、撹拌部材J1が撹拌高さに配置されている場合にオンとなることにより、撹拌部材J1が撹拌高さに位置しているか否かを検出するものである。ここで撹拌高さは、待機高さから下降した位置であり、本実施の形態では、ロッドJ11の下端部、すなわち撹拌翼J12がカップWの底面W11の近傍に配置される位置である。
【0035】
湯ノズルは湯供給管を介して温水タンクFに接続されており、カップWに湯を供給する機能と、撹拌部材J1に湯を供給して洗浄する機能を有する。湯ノズルは、撹拌部材J1よりもやや高い位置に設けられており、撹拌部材J1だけでなく回転駆動部J2の駆動軸(図示せず)を洗浄することができる。コーヒー供給ノズルJ6は、ブリュア機構Lに接続されており、コーヒーをカップWに供給することができる。
【0036】
そのような撹拌機構Jの直下は、カップ搬送機構Hを構成するカップ把持装置H11(図5等参照)によりカップWが配置され、撹拌部材J1が挿入可能であるとともに、湯、コーヒー等が供給可能となっており、飲料の調理が行われる調理位置として利用される。
【0037】
上記撹拌機構Jの基本動作は次の通りである。すなわち、販売待機状態では、待機高さ検出スイッチJ4がオンとなるように撹拌部材J1を待機高さに停止させている。そして、調理位置にカップWが搬入されると昇降駆動部J3により撹拌部材J1を下降させ、撹拌高さ検出センサがオンとなったタイミングで停止させる。飲料の種類に応じて湯、コーヒー等をカップWに注いだ後、撹拌部材J1を回転駆動部J2によって回転させて飲料の調理を行う。このときの回転駆動部J2の回転数及び回転時間は制御部Rの設定により任意に調整可能である。
【0038】
この後、昇降駆動部J3を逆転させて撹拌部材J1を上昇させるとともに、湯ノズルから放出される湯により撹拌部材J1の洗浄を行う。そして、待機高さ検出スイッチJ4がオンとなったタイミングで昇降駆動部J3を停止させる。カップWを調理位置から移動した後に、撹拌部材J1を下降させて湯をかけて洗浄しても良い。ホット飲料の場合には撹拌部材J1の上昇に合わせて湯洗浄を行って洗浄湯をカップW内に注ぎ、コールド飲料の場合には撹拌部材J1を一時的に上昇させてカップWを退避させた後に撹拌部材J1を下降して洗浄し、洗浄湯は排出させると良い。
【0039】
ミルKは、コーヒー豆等の抽出原料を収納するキャニスタ(図示せず)の下方域に配置され、コーヒー飲料を抽出する際に、その抽出原料であるコーヒー豆を、コーヒー1杯分ずつ粉砕し、コーヒー粉(粉原料)を生成するものである。
【0040】
ブリュア機構Lは、ミルKで粉砕されたコーヒー粉と、温水タンクFからの湯とが投入されることにより、コーヒー飲料を抽出するものである。
【0041】
ミキシングボウルMは、撹拌機構Jに隣接する態様で、すなわち撹拌部材J1が昇降可能に配設された個所に隣接する態様で配置されている。このミキシングボウルMは、ホイップクリーム用原料が貯留されたホイップクリーム原料用キャニスタD21に接続されたシュートD22の下端部に設けられており、更に湯供給管を介して温水タンクFに接続されている。
【0042】
そのようなミキシングボウルMは、シュートD22を通じてホイップクリーム原料用キャニスタD21から投入されたホイップクリーム用原料と、湯供給管を通じて温水タンクFから投入された温水とを、内蔵する撹拌装置(図示せず)で撹拌することによりホイップクリームを製造する専用のものである。そして、ミキシングボウルMは、下方に配置されたカップWに対して、製造したホイップクリームを供給するものである。
【0043】
冷却ユニットNは、製氷機G及び冷却水槽N1を冷却するための冷凍回路である。シロップ供給機構Pは、機器筐体2に配置されたバッグインボックスP11~P13の内部のシロップをカップWに供給する機構である。カーボネータQは、冷却水槽N1に浸漬配置された密閉容器の内部で炭酸水を生成する装置である。排水機構Aは、排水機構Aは、機器筐体2の内部で各機構から溢れた飲料水や飲料、洗浄水等の排水を貯留しておくものである。
【0044】
以上のような構成を有するカップ式自動販売機1においては、入金処理装置Vにより所定額の現金が入金されるとともに、操作ユニットUにおけるカプチーノ(ホイップクリーム入り飲料)が割り当てられた操作入力部U1が操作されることにより、制御部Rがホイップクリーム入り飲料の生成指令が与えられたものとして、次のようにしてカップWの内部にカプチーノを生成して提供する。
【0045】
制御部Rは、カップ供給機構Cより供給されたカップWを、カップ搬送機構Hにより砂糖受取位置まで搬送し、カップWの内部に所定量の粉末状の砂糖を投入させた後に、ミキシングボウルMの下方位置にカップWを搬送させる。これと並行して制御部Rは、ホイップクリーム用原料と温水とをミキシングボウルMに投入し、撹拌装置によりこれらホイップクリーム用原料と温水とを撹拌してホイップクリームを製造する。また制御部Rは、ミルKを駆動させて所定量のコーヒー豆を粉砕し、粉砕したコーヒー豆をブリュア機構Lに供給しつつ、該ブリュア機構Lに温水を供給し、ブリュア機構Lにてコーヒー飲料の抽出を行う。
【0046】
そして、制御部Rは、図5に示すように、粉末状の砂糖11が投入されたカップWに対し、ミキシングボウルMで製造した所定量(例えば30mL)のホイップクリーム12を投入する。これによりカップWの内部においては、図6に示すように、砂糖11の上方にホイップクリーム12が堆積される。
【0047】
このようにカップWに対してミキシングボウルMより所定量のホイップクリーム12が投入された後、制御部Rは、カップ搬送機構Hにより該カップWを調理位置まで搬送する。そして、制御部Rは、図示せぬ弁を開成させることで、図7に示すように、ブリュア機構Lで抽出した所定量(例えば120mL)のコーヒー飲料13をカップWに投入する。これによりカップWの内部においては、図8に示すように、コーヒー飲料13の上にホイップクリーム12が層状に乗せられた状態となる。
【0048】
その後、制御部Rは、撹拌機構Jの昇降駆動部J3を駆動させることにより、撹拌部材J1を回転駆動部J2とともに下降させ、撹拌高さ検出スイッチJ5がオンとなる場合に、昇降駆動部J3を駆動停止にさせる。これにより撹拌部材J1の撹拌翼J12が、図9に示すように、カップWの底面W11の近傍に配置される。
【0049】
このように撹拌高さ検出スイッチJ5がオンとなって昇降駆動部J3を駆動停止にさせた後、制御部Rは回転駆動部J2を駆動させる。より詳細には、制御部Rは、図10に示すように、カプチーノ等のホイップクリーム入り飲料以外の飲料(例えばインスタントコーヒー飲料)等の生成時の1/3以下の回転数、具体的には1000rpm以下の回転数(低速回転数)で撹拌部材J1を回転させる。
【0050】
このように撹拌部材J1を低速回転数で回転させることにより、図11に示すように、撹拌翼J12により砂糖11とコーヒー飲料13とが撹拌されて砂糖11が溶解し、その撹拌翼J12よりも上方側では、該撹拌翼J12から離隔するにつれて撹拌力が弱くなる。そのため、ホイップクリーム12はその形状が維持される。
【0051】
その後制御部Rは、回転駆動部J2を駆動停止にさせてから昇降駆動部J3を逆転駆動させて撹拌部材J1を上昇させ、待機高さ検出スイッチJ4がオンとなったタイミングで昇降駆動部J3を駆動停止にさせる。
【0052】
そして、制御部Rは、カップ搬送機構HによりカップWを販売位置に搬送して取出口扉S10を揺動させて取出口4を開成させることで、図12に示したカプチーノ(ホイップクリーム入り飲料)を提供することができる。
【0053】
以上説明したように、本発明の実施の形態であるカップ式自動販売機1によれば、投入されたホイップクリーム用原料と湯水とを撹拌させてホイップクリーム12を製造する専用のミキシングボウルMを備え、制御部Rが、ホイップクリーム12が層状に乗せられたホイップクリーム入り飲料の生成指令が与えられた場合に、カップWに粉末状の砂糖11を投入してからミキシングボウルMで製造したホイップクリーム12を該カップWに投入し、その後に該カップWにコーヒー飲料13を投入してから撹拌機構Jにより粉末状の砂糖11とコーヒー飲料13とを撹拌させてホイップクリーム入り飲料を生成するので、砂糖11をコーヒー飲料13に溶解させつつホイップクリーム12の形状を維持することができ、良好なホイップクリーム入り飲料を生成することができる。
【0054】
特に、撹拌機構Jにより砂糖11とコーヒー飲料13とを撹拌させる際に、撹拌部材J1を低速回転数で回転させるので、砂糖11だけをコーヒー飲料13に溶解させてホイップクリーム12がコーヒー飲料13に溶解させてしまうことを抑制でき、良好なホイップクリーム入り飲料を生成することができる。
【0055】
またカップ式自動販売機1によれば、撹拌部材J1が昇降可能に配設された個所に隣接する態様でミキシングボウルMが配置されているので、ミキシングボウルMによりホイップクリーム12が投入される位置と、調理位置との離間距離を小さくすることができ、カップWに投入されたホイップクリーム12の形状を良好に維持しながら調理位置まで搬送することができる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0057】
上述した実施の形態では、制御部Rが、コーヒー飲料13をカップWに投入した後に、撹拌機構Jの昇降駆動部J3を駆動させて撹拌部材J1を撹拌高さまで下降させていたが、本発明においては、コーヒー飲料をカップに投入する前に撹拌部材を撹拌高さまで下降させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…カップ式自動販売機、2…機器筐体、3…前面扉、4…取出口、A…排水機構、B…塩素発生器、C…カップ供給機構、D…原料供給機構、E…リザーバ、F…温水タンク、G…製氷機、H…カップ搬送機構、IS…飲料生成装置、J…撹拌機構、K…ミル、L…ブリュア機構、M…ミキシングボウル、N…冷却ユニット、P…シロップ供給機構、Q…カーボネータ、R…制御部、S…取出口機構、U…操作ユニット、V…入金処理装置、W…カップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12